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【顛末記20】 狡兎

「敵騎兵2個師団が急速接近中!

渡河地点を探している模様です!!」



そう叫びながら俺の陣地に駆け込んで来た伝令兵も明らかにローティーンの少女。

ひょっとすると摂政よりも年下かも知れない。



『…情報の共有に感謝する。

我が軍も1種配備へ移行する。

ニック! 全軍に通達!!』



  「了解!

  第1種戦闘配備ーーッ!!!!

  ゴブリン師団は2時の方向に展開せよッ!!」



『伝令殿。

カロッゾ卿にお伝え頂きたい。

以降、我が軍は貴殿の指揮で動く。

指示を頼む、と。』



「よ、宜しいのですか!?」



『驚く事はあるまい。

この状況なら、最も戦争経験が豊富なカロッゾ卿の判断に皆が従うべきである。』



「しょ、承知しました!

直ちに主君に伝えます!」



ある程度は予測されていた事だが、領地接収に反対する王国貴族が戦力を糾合して襲撃して来た。

俺達魔王軍は王国内で王国軍の決戦を強いられている、ただそれだけのこと。



「それにしても意外でゴザった。」



『ん?』



「いえ、ポール殿は日頃カロッゾ卿を毛嫌いされておられるので。」



『…あんな奴のことは何とも思っちゃいないさ。

ただ、民間人への虐殺行為が気に入らないだけだ。

奴の能力は誰よりも俺が知っているから従う、ただそれだけのこと。


それより、渡河命令があるぞ。

準備を始めておけ。』



「大河を渡るのでゴザルか!?」



『最短で鎮圧するなら、こちらが渡るしかない。

なら、誰かが渡って防衛陣形を引くべきだろう。

俺がカロッゾでもそう考える。

ジミー、リャチリャチ師団に簡易バリケードを準備させておけ!

渡り次第、馬防柵を組むぞ!!』



「承知ッ!」



5分も経たないうちにカロッゾの伝令兵が再度飛び込んで来る。



「公王様!

御主君からの依頼です!


誠に申し訳ないのですが、公王軍は…」



『渡ればよいのだな!?』



「え…

あ、はい!」



『全軍前進ッ!!!』



準備が整ってない部隊もあったので俺が先に本営を動かす。

俺の旗本は1000騎。

既に子のいる者だけで構成してある。

つまり、討ち死にさせても次代は残る算段。


俺も含めて人生に後腐れの無い1000騎なので無駄に早い。

さっさと河を渡り切ってしまった。

渡河直後に王国軍の斥候騎兵が100騎ほど接近するが、数の優位を活かして大半を討ち取ってしまう。

振り返るとカロッゾ軍の一部が秘かに上流に疾走しているのが見えた。

きっとあの奇襲は成功するだろう。

摂政やカロッゾは本軍と別動隊を分ける場合に必ず別動隊を陣頭指揮する。

最も優秀な軍人が少数精鋭で作戦行動を取るのだから、その作戦が成功しない訳がないのだ。



雄叫びを挙げてリャチリャチ師団が渡河し馬防柵を組み始めた頃に、王国軍の主力が襲い懸かって来る。

動きは極めて俊敏。

流石は天下の王国軍である。



問題は王国軍お得意の大弩がいつまで待っても飛んで来ないことだった。

おかしい。

彼らは突撃前に必ず大弩の大量射出を行い陣形を崩しにかかる筈なのに。

俺達は盾にしがみついたまま訝しむ。



「兄さん!

随伴歩兵が見当たりません!」



小高い土手から敵軍を観察していたロベールが戻るなり言う。



『いや、あり得ない。

背後に隠しているのではないか?』



「そう思ったのですが…

背後に合図を送っている形跡もなく、この地形で伏せさせておくポイントも見当たりませんので。」



『では、騎兵だけで来たということか?

それでは意味がないだろう。

陣地を陥とせないじゃないか。』



「彼らは合戦そのものを目的に攻めて来たように見えます。

死ぬ前に1戦したいというか…

…区切りを付けることを望んでいるのではないでしょうか。」



『ロベールが言うならそうなのだろうな。

だったら尚更、渡河は阻止せねば。

渡られてしまえば魔王様まで一直線だ。』



東を抑えたゴブリン師団が王国の別動隊と競り合い。

犠牲は見えるものの5分程で潰走させた。



…全てが虚しい。

この合戦に何の意味があるのだろう?

敵も味方もどうしてオマエらはそんなに楽しそうなのだ?

理解に苦しむ。



「流石は公王様です!!

我が軍の将兵もみな感激しております!」



先程の少女伝令が俺に追い付くなり頬を紅潮させて叫ぶ。

世も末だな。

こんな小娘の馬蹄に世界が蹂躙されている。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



これは後から判明したことだが、俺達が戦っていたのは厳密な王国軍ではなく王国貴族有志だったらしい。

それぞれの領内で民衆が蜂起し収拾不可能な状態となった為、一部の勇気ある貴族達が臨時騎兵団を結成し、乾坤一擲を賭けて魔王殺しを狙ったとのこと。

だが農兵達は誰も従わず、俺達への通謀が続出する始末。

そして自国の河さえ渡れず勇者達は壊滅した。

結果だけ見えれば、俺の軍団のみに一蹴されたワンサイドゲームだった。


仕方ない。

駱駝は騎馬の天敵なのだ。

そして王国人は駱駝を見た経験が絶無。

全騎を駱駝で固めた俺の軍団とは相性が悪すぎるのだ。



「兄貴。

カロッゾ軍はこの先の伯爵領をそのまま占領するらしい。」



『ああ、高台を確保する為だな。

という事は、あそこに摂政親衛隊が入城するということだ。

…もう王都陥落も時間の問題だな。』



「アンタはこれからどうする?」



『…さあ、ジェノサイドの防止でも呼び掛けておくよ。』



「呼びかけ?

カロッゾやノーラが聞く耳を持つのか?」



『…違うよ。

俺達が呼び掛けるのは王国民に対してだ。

それ以外の選択肢はない。』



「…そうだな。」



今回、地形や補給の関係もありカロッゾ軍はトルーパーを用意出来ていない。

だからこそ、王国軍有志は総攻撃に踏み切ったのだろう。

もっとも、伯爵領方面から薄く立ち上り始めた白煙を見ている限り、カロッゾ軍が意に介している形跡はない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



最前線で戦っていると意外に分からないものなのだが、この合戦は我が軍の圧勝だったらしい。

蜂起した王国軍有志はその大半が討ち死にし、戦場から離脱し付近の山に逃げ込んだ連中も殆どが自害して果てたとのこと。

伯爵領の中心にあった高台の城はカロッゾ軍が陥落させ、要衝の運河要塞はエルデフリダ軍が占領してしまった。



「此度の戦勝は公王様こそが一番手柄であると我が主が申しております。

陣頭で采を振るう公王様の勇戦振り、まさしく古今無双の驍将であると我が軍の陣中が湧き立っておりました。」



『…カロッゾ卿の御指示が的確だった。

それだけのことだ。』



カロッゾ軍の伝令官は話を続けたそうだったが、適当な所で打ち切って戦況報告書を提出する。



『37名。』



「は?」



『今日の我が軍の戦死者だ。』



「おお!

流石は公王様です!!

そんな僅かな損害で作戦領域を制圧なさったとは!

どうりで摂政殿下の信頼が篤い訳ですよ!」



『…私にとっては掛け替えのない仲間だった。』



「は?」



疲れていたので近隣住民からの祝辞はジミーに受けさせる。

そして本陣の脇に並べられた仲間の遺骸の前に跪いて祈る。


祈る? 誰に? 何を?


しばらく思考が止まる。

ふと自分が大魔王の友人だったことを思い出し、神聖教の礼式で死者を悼んだ。



「公王陛下。

地元の者が献上品を持参したのですが如何しましょう。」



俺が瞑目していると背後から声が掛かる。



『チャップマン准尉。

休憩を取れと命じた筈だが。』



「あ、いえ。

申し訳ありません。」



『まずは彼らに摂政が贈答を嫌っておられる事を教えてやってくれ。

…女を差し出そうとして斬られた領主の前例もあるとな。』



「…恐らく、地元民は陣中に婦人を供出するつもりです。」



少しは想像力を働かせて欲しいな。

今の天下人は14歳の潔癖な少女なのだ。

何が相手を最も刺激するかなんて説明するまでもないだろうに…


チャップマン准尉は小一時間走り回って地元民に道理を説き解散させた。

何通かの陳情書を渡されたそうなので、封を開けずに魔王城に提出することを決める。

地元民達は落ち武者狩りを開始したらしく、王国貴族有志の首級第一号も陳情書と同時に届けられたとのこと。

つまり、王国人のチャップマンはしばらく同胞の首実験に立ち会わされ続ける羽目になる。



『すまないな。

王国人の君に同胞を害させている。』



「お気遣いありがとうございます。

ですが、公王陛下が祖国に色々と配慮をして下さっていることが伝わっているので…

従軍を申し出て正解だったと考えております。」



『そうか。

…准尉が励んでくれていると皆から聞かされている。

その褒賞という訳ではないのだが、少しでも王国の損害が軽減されるように努める事を約束しよう。』



「痛み入ります!」



しばらく仲間の遺骸の前で合掌していると、ニックが背後から声を掛けて来る。

諸将から祝辞が届いているらしい。



『祝辞?』



「兄貴が一番槍だからな。」



『一番槍?』



「自覚無かったのかよ。

それも魔王軍全軍の中での一番槍だ。

アンタが一騎で突出した時は肝が冷えたぜ。」



『そうかスマン。

すぐ横を皆が固めてくれているのかと思っていたよ。』



「勝手に死ぬの禁止な。」



『…うん、わかった。』



「わざと死ぬのも禁止な。」



『…。』



「禁止な。」



『善処する。』



「ははは。

俺達だって我慢してるんだ。

アンタも…

そりゃあ辛いとは思うが…」



『なあ、ニック。』



「んー?」



『ゴメンな。』



「謝るのも禁止。」



やれやれ、じゃあ何なら許されるんだよ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【コレット・コリンズ北征記録】  



魔王城 (大陸最南端の人工島)

  ↓

コリンズタウン (魔王ダンの私領)

  ↓

旧自由都市検問所 (憲兵総監ノーラ・ウェイン管轄)

  ↓

ノーラ・ウェイン所領フライハイト (旧連邦首都)

  ↓

御天領   (旧連邦ライナー侯爵【族滅済】領)

  ↓

人民農場地帯 (旧連邦オルデンブルク侯爵【族滅済】領)

  ↓

御天領   (旧連邦ミュラー伯爵【未族滅】領)

  ↓

人民牧場地帯 (旧連邦アウグスブルグ侯爵【族滅済】領)

  ↓

魔王城    (旧称・非武装中立地帯)

 ↓

王国側国境検問所  (摂政親衛隊が駐屯大隊を殲滅)

  ↓

王国軍都     (摂政親衛隊が将校居住区を殲滅。)

  ↓

諸貴族領混在地  (魔王軍が接収、二公七民令布告)  ←イマココ

  ↓

マキンバ公爵領  (周辺諸勢力の侵攻に苦慮)

  ↓

旧伯爵領   (チャップマン家が統治権を魔王軍に献上)

  ↓

王国天領  (大魔王が摂政に求婚した聖地)

  ↓

教団自治区  (諸侯入り乱れる争奪戦の舞台)

  ↓

大草原   (諸侯が武力接収)

  ↓

侯爵領  (七人の僭王が乱立)

  ↓

中継都市ヒルズタウン  (諸侯の草刈り場)

  ↓

王都   (情報錯綜)



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



王国側からの大規模攻撃はないと踏んだ俺達魔王軍は横一線に薄く広い陣を敷いた。

東側の運河を占領中のエルデフリダ軍、伯爵領を占領したカロッゾ軍、大河を背に陣を敷いた俺、ハロルド皇帝から先鋒を任されたアンドロポフ中将の軍、そして遥か西側の丘陵を電撃占拠したノーラ軍。

全長100キロにも達しようかという横陣を敷き、面で王国側にプレッシャーを掛ける。



「壮観でゴザルな。」



『今週中にはエルデフリダが占拠した運河経由でトルーパーも搬入される。

王国人からすれば悪夢でしかないだろうな。』



「拙者が子供の頃。

王国と言えば超大国の代名詞でゴザった…

それがこんなにあっさりと侵攻を許すとは…

寂しいものですな。」



『凄い国だよ。

実質的にはとっくに滅びているのに、ここまでの地力を見せて来る。』



「賢王エドワードが健在なら、彼らはもっと上手く立ち回れたでゴザロウか?」



『どうかな。

王国貴族達がエドワード王の指示に真面目に従っていれば内戦も起きてなかっただろうし…

そもそも彼なら大魔王を手放さなかっただろうからな。』



「大魔王が王都で優遇されていれば、摂政殿下という天下人が誕生することも無かったですしな。」



『それなら案外、大魔王夫妻がソドムタウンに攻め込んでいたかもな。』



「ふふふ、恐ろしいですな。

到底抗える気がしません。」



『敵味方なんて巡り合せに過ぎないさ。

今日、討ち取った連中もタイミング次第ではこちらの陣営に居た可能性だってある。』



俺とジミーはレーションを齧りながら瓢箪に詰めた水を回し飲んで喉を潤す。



『ふふっ。』



「おや、久し振りの笑顔ですな。」



『レーションも随分マシになった。』



「ああ、昔は酷かったようですな。

ロベールが根を上げる程の不味さだったとか。」



『…こんな時代だけどさ。』



「はい。」



『マシになってる点も多いよな。』



「不敬罪(笑)」



『今のは褒めたんだぜ?』



「摂政殿下のご治世を《マシ》とか言っちゃうのはポール殿くらいのものですぞ。」



『俺なりに評価はしてるんだけどな。』



いや、俺が評価したところで意味はない。

そう思わないから王国人が挙兵したのだろう。

彼らの反発も痛い程理解出来る。


自分達が召喚した大魔王を自由都市に盗られた。

盗ったのはドナルド・キーン、純血の帝国人である。

そして今回の遠征軍の主力はその妻エルデフリダと嫡男ハロルド。

この2人も共に純血の帝国人である。

そして俺の母と妻は帝国貴族。


王国人からすれば、宿敵の帝国人に国土を蹂躙されているようにしか見えないのだろう。

俺の軍がゴブリンやダークエルフで構成されているのも、彼らの感情を大いに刺激しているに違いない。

その証拠に、必死の作り笑いで献上品を運び込む地元民さえもゴブリンが視界に入った時だけは完全に表情が凍りついていた。


他にも大魔王夫妻が王国内の遊牧民に資金援助していた点も憎まれる理由だ。

御一新と同時に摂政は遊牧民マキンバに公爵位を与えた。

俺はマキンバ氏と直接の面識はなかったが、彼の配下の遊牧民が大魔王夫妻に王国情報を逐一報告しており、対王国工作の主力を担っているのを目の当たりにしていた。

(というより俺のbarが遊牧系工作員の溜まり場だった。)

つまりマキンバはコリンズ王朝にとっては建国の功臣だが、王国にとっては獅子身中の虫以外のなにものでもない。

なので周辺諸侯は統一政府の警告を無視してマキンバ領を侵掠し続けた。

流石に天下人に真正面から敵対する気にはならなかったのか、周辺諸侯は所属を隠し軍旗を伏せてマキンバ領を騎馬でゲリラ的に襲った。

マキンバ達遊牧民は堀を深く掘り土塁を固めて籠城戦を耐え続けている。

奇妙なことに、農耕民と遊牧民が完全に立場を入れ替えて闘争を繰り広げていた。

もし彼らの先祖がその光景を見ればさぞかし驚くことだろう。


以上の経緯があるので、マキンバ公爵の救出は摂政の主目的でもある。

以前から摂政がそうアナウンスし続けているのだが、王国人が信じない。



「遊牧民の救援は口実。

あんな連中を助ける為に軍を動かす訳がない。

王国領土を奪う魂胆に決まっている。」



王国人の反発も分からないでもないが、マキンバは特別だからな。

御一新前から一貫してコリンズ夫妻に尽くして来たマキンバを見殺しにしてしまった場合の信用棄損は計り知れない。

そして何より、摂政はマキンバ公爵をリン・コリンズとの数少ない想い出の1つとして認識しているフシがある。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



その夜。

我が軍の壕に何者かが投石を行ったとの報告を受ける。

気付いたのはリャチリャチ師団であり、地元の子供(幼年学校生くらいの年齢)が何発が陣幕に当てて逃げ去ったらしい。



「申し訳ありません。

逮捕すべきか迷ったのですが…

公王様のご命令を思い出しまして。」



『よく堪えてくれた。

この状況では、どうしても政治になってしまうからな。』



「犯人が逃げる際に履物を落としていきました。

…こちらです。」



『おいおい、これノーラなら特定してしまうぞ。』



「サイズからしても幼年学校生ですね。

どうしましょう?

必要であれば調査に着手しますが…」



『うーん。』



かなり判断に迷う。

児童用のサンダルでここまで来れたと言う事は、近所の子供だ。

軍隊が真面目に犯人探しをすれば、恐らくは簡単に特定出来てしまうだろう。


…どうしよう。

こういうケースが一番困る。

軍人としての観点で見れば、この事件は絶対に友軍全体で共有しなければならない。

何故なら、侵攻軍は地元民の感情をより正確に把握しておかなければならないからだ。

反面、政治家としての俺は絶対に問題化させてはならない事を理解している。

ここで子供の投石に大袈裟に騒いでしまえば、侵攻軍vs地元民の構図が完成してしまうからだ。

子供が処罰されてしまえば、修復が極めて困難なレベルでの禍根が残る。



『フリーハンドでやらせて貰えれば、丸く収める自信があるんだけどな。

臨時barとか開いちゃってさ(笑)』



俺の言葉を締め括りの冗談と解釈したのか、リャチリャチ兵は箝口を誓約してから自陣に戻っていった。

いや、結構マジな話なんだけどな。

俺に一任してくれれば、今頃もっとスムーズに王国を沈静化出来ていた。



「随分な自信ですね。」



報告書を書き終えたロベールが俺の独り言を聞いて笑う。



『我ながら大言壮語だとは自覚しているけどさ。

今回の長い遠征で侵略のコツが分かっちゃった。』



「ははは、そのコツは歴史上の君主達が一番知りたがったことですよ。

僕は中世に生まれた兄さんを見てみたかったです。」



『勘弁してくれよw

そんな大した話じゃないんだ。』



「そう言って兄さんはいつも大功を挙げますからね。」



『いやいや、本当に些細なことさ。

侵略に大軍は不要だって理解した。』



「そうなんですか?

敵側の3倍の兵力が揃えるまでは、本格侵攻は控えるべきであると士官学校では教わるのですが。」



『それは主な侵略手段に戦闘を用いると決めている場合だな。』



「ああ、なるほど。」



『大魔王夫妻を見て分かったよ。

国を陥落させたいなら、大軍は足手纏いだ。

僅かな馬回りだけの方が良い。

俺ならロベール、ニック、ジミーの3人だけで良い。』



「ははは、4人で国盗りですか?」



『でもロベールだってそう思わないか?

オマエが王国全体を占領しなければならないとして、4個師団と4兄弟どちらを選ぶ?』



「…その兄弟というのが兄さん達を指しているのであれば、間違いなく4兄弟で攻め込みます。

勿論、その場合は政治交渉がメインになるとは思いますが。」



『ソドムタウンにやって来た大魔王が丁度そんな感じだったんだよ。

ドナルドとカイン・D・グランツ、あの母娘。

コアメンバーはその4人だけだった。

護衛も多少は居たが、ポールソン清掃会社より少なかった筈だ。

ちなみにその時の護衛隊長がケネス・グリーブな。

堂々とした統率ぶりだったよ。』



まさしく万夫不当の豪傑だった。

何も殺す事はなかっただろうに。

…コレット・コリンズめ。



「思い出しました。

傭兵会社の若社長と聞いたから、どんな豪傑が来たのかと思って遠目に拝見したのですよ。

その時は、戦傷で下半身に障害を負っておられて。」



『…懐かしいなあ。』



「怪我の直後だったからかも知れませんが、非常に態度がソフトで…

兎に角、腰の低い印象でした。

僕が知っている傭兵会社のCEO達とは真逆でしたね。」



『うん、あれが侵略者の完成形。』



「あ!」



『大魔王はねえ。

ソドムタウンに来た月には政治局や治安局を従えていたから。

ほら、政治局のウェーバーさんが居たじゃない。

あの頃に局長だった。』



「惜しい人を失くしましたねえ。」



『摂政も切腹までさせることもなかったのになぁ。


…そのウェーバーさんだって、かなりの堅物だったんだぞ?

融通が利かない事で有名だった。

それでも大魔王には全賭けして、考え得る限りの便宜を図ってたからな。』



「思い出しました。

退役軍人会も早々に押さえてましたよ。」



『あれは家族で来たから出来たことなんだと思う。

皆は大魔王の経済力ばかりに着目するけどさ。

あの男の本質はそこじゃないんだ。

腰の低さ、口調の柔らかさ、見ている方が不安になるレベルの頼りのなさ。

あれこそが侵略の奥義だ。』



「ははは。

頼りない人間に街は獲れますか?

征服事業なら威圧感も必要でしょうに。」



『俺も昔はそう思ってたけど、武威なんて外注可能だしな。』



「ああ、確かに。

あの頃の大魔王様はほぼ丸腰でしたものね。」



『丸腰のうちに入るのかな?

両脇にあの2人が居たから。

俺も含めてみんな結構ビビってたよw』



「ああ、名前を言ってはいけないあのお2人。

御一新前からあんな感じでしたか?」



『…今思えばさあ。』



「はい。」



『そりゃあ天下も獲るわって位には気合が入ってた。

あの頃の摂政12歳だぜ?』



「ふふふ、幼年学校ですよね。」



『俺が大魔王を夜の街に誘おうとすると滅茶苦茶怖い顔で睨まれるんだ。

いやー、怖かったねえ。』



「そして現在に至ると。」



『魔王城で会う時さあ。

あの時のこと、今でもネチネチ責められるよ。

本人は《親睦の為の冗談だ》って言うんだけど、目が全然笑ってないのね。』



「あー、これは切腹確定ですねえ。」



『俺は王国が一段落したらヤバいと思ってるw』



「…狡兎死して走狗烹らる。」



『本来、狡兎なんて世の中にはもっといるんだがな。

摂政がクレバー過ぎて、狩るほどの価値のある者が殆どおらんのだ。

結果、俺の処刑名簿順位が上がること上がること。』



「じゃあ、おとなしく腹を切るしかないですね。」



『だな。

世の兎達が頑張らなかったのがポール君の死因、と。』



「あの世でどんな顔をしてお義父さんに会えばいいんでしょうね。」



『…結局、なーんも孝行しなかったな、俺。』



「出世したじゃないですか。」



『多分なあ、あの世でジャック・ポールソンと再会したら。

《思ってたのと違う》って言われるぞ』



「兄さんいつもそんな事言われてましたものね。」



『ああいう言い方、地味に傷付くからやめて欲しいんだよな。

親に言われ続けると人格が歪むぞ。』



「それだけ期待されていたんですよ。

僕の前じゃ、嬉しそうに兄さんのことを語っておられました。」



『本人の前でそういう顔見せろよなぁw』



「昔の人だから仕方ないですよぉw」



2人で肩を叩き合って笑う。

何でもない日々だったが、きっとあれこそが幸福だったのだろう。

まだ父さんが生きていて、まだ母さんから勘当される前で。

たまにロベールと昼飯を食いに行って。

ポーラは… 

うん、アイツは生まれつきキチガイだな。

そして俺の側にはいつも■■■が居てくれた。

俺の幸福はもう戻らない。



「大丈夫!

どこかに狡兎が居ます!

そいつに頑張って貰いましょう!」



『…そうだな、少しは寿命が延びるかもな。』



いや、寿命なんてもういらない。

もう疲れた。

或いは周囲が言うように俺には政治や戦争の才能があるのかも知れない。

だが俺はその2つが大嫌いだ。

所詮は人殺しの道具だからな。

だが、今は不本意な政権に参加させられている。

俺の憎む政治手法、俺が蔑む戦略思想。

その遂行を強いられている。


今回の出陣にしたってそうだ。

俺は王国人に何の恨みもないし、本音で言えば興味すらなかった。

どうしてそんな相手を殺さなきゃならないのだ。

そもそも大魔王夫妻なんかが存在しなければ…

いや、俺も同罪だな。


…もう疲れた。

いっそのこと潔く煮られるか。


罪状は「摂政殿下の旦那様を夜遊びに誘った罪」あたりかな。

うん、極刑は免れない。


狡兎が現れたのは、そのタイミングだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



深夜の訪問客。

人払いを終えたジミーは無言で周辺を警戒している。



『グランツ…?』



言いながらも脳が否定する。

眼前にはカイン・D・グランツに酷似した男。

風貌は完全再現されているが、それが偽物であることは明白だった。

表情の卑しさ、口調の狡さ…



「この姿で申し訳ありません。

実はボクは…」



『変身スキルかね?』



「うおっ、一発で見破られてもうた(笑)

恐れ入ります!

いやー、怖いわー(笑)

流石は公王様ですね。」



『グランツさんとは同じ釜のメシを食った間柄だからな…

紛い物は嫌でも分かるよ。』



【紛い物】と聞いて、眼前の偽グランツは口元をゆっくりと歪めた。

わかるよ、オマエは本物とは異なるタイプの怪物だ。



『で?

私は君を何と呼べばいい?

グランツとでも呼んでやれば満足するのか?』



「あっはっは、それやと代わりに処刑されてまいますやんw

ネズミ、とでも呼んで下さい。」



『友の顔を持つ者にその呼び掛けは出来ないよ。

なあ、地球人君。』



「ッ!?」



『驚くことはないさ。

消去法だよ。

キミ、大魔王の御学友だろ?』



「あははは。

参りましたっ!

仰る通りです!

ボクはトイチ君のクラスメートです。

自己紹介はここで区切らせて下さい。」



『顔も名も隠していると言うことは、存在そのものを伏せていると言うことだ。

なるほど。

君は死者名簿に載っている地球人だね?』



「…いやぁ、どうでっしゃろう?」



『ヒラハラ ハヤト、イワタ コウタロウ、ワタナベ ヨウスケの3人ではない。

大魔王から聞いていた人物像から大きくかけ離れている。

転移直後にヨシオカ リュウゴが殺されたと聞くが、衆人環視だったそうだから異なるだろう。

そしてハシモト ユウサクでもないな。

彼は大魔王を嫌っていたらしいからね、そんなに懐かしそうな表情でトイチ リンを語らないだろう。』



「…。」



『じゃあ後は簡単だ。

イマイ ナオヒロ・カネモト ピカチュウ・ミヤモト イッペイ・フカワ ショウ・マエダ ノリヒロの5名のいずれかが君だ。

私はウラベ ユキとも面識がある。

その気になれば明日にでも特定出来てしまうな。』



「…参りました。

ボクの負けです。」



『安心しろ、詮索するつもりはない。

それで用件は?』



「王国民の命乞いです。」



偽グランツの口元から歪んだ笑いが消えた。

きっとこの男は偽物界の本物なのだろう。



『どうして私の元に?』



「消去法ですよ。

決まってますやん(笑)」



『ふっ、気に入った。

では、具体的な話に移ろう。』



偽グランツは王国の内情を簡潔に解説する。

強い叛意を持っている貴族が誰か、という話。

内容は緻密だったが、語り口は極めて軽妙。

馬鹿ではないがお調子者なのだろう。

いや、そういうキャラを演じるのが彼なりの処世術なのだろうな。



『要は、名前を挙げてくれた貴族連中が蜂起のタイミングを狙っている訳だな?』



「はい。

昨日の決戦で主力は壊滅したようですから、少数での要人襲撃を狙うでしょう。」



『…襲われるとしたら、彼らの領地を通過するタイミングだな。』



「ボクなら要人を討ち取ったと報告して、首実検に来た所を狙います。」



『それは良い手だな。

賢王エドワード辺りの名を出せば、摂政に近い者を釣り出せるかもな。』



「今、名前を挙げた連中を殺して下さって結構ですんで、ジェノサイドは勘弁して貰えませんか?

信じて頂けないのであればボクが手を汚します。」



『…分かった、今から全軍に伝令を飛ばす。』



「ありがとうございます。」



『君の存在は秘匿するが、情報の真偽を確かめるまでは陣中に居てもらうぞ?』



「ええ、しゃーないですわ。」



『その顔は変えれるか?

流石に手配書の顔を匿っていたら、私の身が危ない。』



偽グランツはクスクス笑うと、身体を軽く翻した。

驚いたことに、瞬時に身長が縮んで…



『ィオッゴ!?

凄いな、ゴブリンにも化けられるのか?』



かなり精度高い偽ィオッゴに舌を巻くも、やはり表情の狡猾さだけは消えなかった。

本物は正々堂々とした男だからな。



「能力名は【剽窃(パクり)】。

御覧の通り、自在に変身出来ます。

まあ、ボクはイケメンにしか変身したことないんですけどね。

ゴブリン化可能なのも、今初めて知りました。」



『イケメンになってどうするんだ?』



「決まってますやん。

女とヤルんですわ。

他に何をせえっちゅーんですか(笑)」



『そうだな。

まあ、変身能力を使うとしたらガールハントかテロくらいだよな。

後者を選ばなかった君には一応の敬意を表しておこう。』



「ははは、本当は大量殺人を犯してるかも知れませんよー(笑)」



『それはないな。』



「…断言しますやん。」



『わざわざ殺す価値のある人間なんて居ないよ。

…だから君は王国軍を脱走したんだろ?』



「そこまで見通しますか。

ええ、仲間を見捨てて抜けました。

皆が死んだ日、ボク王都の美人人妻と普通にセックスしてましたわ。」



『気にする必要はないんじゃないか?

単なるクラスメートだろ?』



「ですね。

たまたま学校や神聖教団に割り振られただけの間柄です。

でもねえ、それがわからんアホばっかりで辛いんですわ。

《ボクはキミらなんかに1ミリも仲間意識持ってない》って何度も説明してやったんですけど…

アイツら勝手にボクを弁護しおってからに…

反吐が出るわ。

トイチ君くらいのものですよ、道理を弁えてくれたのは。」



『諦めろ。

人間は仲間意識という錯覚を前提に社会を構成する生き物だ。

君や大魔王が異端なんだよ。』



「まあ、そういう訳で勝手に押し付けられた義理を勝手に返しに来たんですわ。

ホンマにしょーもない奴らやで、因縁残して勝手にくたばりやがって…

この手の面倒事を回避するコツって無いんですかね?」



『んー?

そういう面倒事を抱えずに済むように他の連中はクラスメートとつるむんじゃないか?

今からでも仲良くしなよ。

まだ何人か生き残ってるだろう。』



「ははは、まっぴらゴメンなんで当面は王国人を救って回ります。」



『病気だよキミは。』



「それにボク、王国内でヤリまくってますからね。

ハメまくりの孕ませまくりなんです。

生まれた我が子はなるべく生き残らせたいですやん。」



『健常だな、キミは。』



そんな遣り取りがあったので、この男をィオッゴの影武者名目で少しの間陣中に置く事にした。

証言通り、逮捕された貴族達の館からは大量の暗器や毒物が発見されたので、この男も少し押し付けられた義理を返せたのだろう。


この狡兎もいずれは狩られるのだろうが、この世に疲れている俺にとってはもはやどうでも良いことである。

【異世界紳士録】



「ポール・ポールソン」


コリンズ王朝建国の元勲。

大公爵。

永劫砂漠0万石を所領とするポールソン大公国の国主。



「クレア・ヴォルコヴァ・ドライン」


四天王・世界銀行総裁。

ヴォルコフ家の家督継承者。

亡夫の仇である統一政府に財務長官として仕えている。



「ポーラ・ポールソン」


ポールソン大公国の大公妃(自称)。

古式に則り部族全体の妻となる事を宣言した。



「レニー・アリルヴァルギャ」


住所不定無職の放浪山民。

乱闘罪・傷害致死罪・威力業務妨害罪など複数の罪状で起訴され懲役25年の判決を受けた。

永劫砂漠に収監中。



「エミリー・ポー」


住所不定無職、ソドムタウンスラムの出身。

殺人罪で起訴されていたが、謎忖度でいつの間にか罪状が傷害致死にすり替わっていた。

永劫砂漠に自主移送(?)されて来た。



「カロッゾ・コリンズ」


四天王・軍務長官。

旧首長国・旧帝国平定の大功労者。



「ジミー・ブラウン」


ポールソン大公国宰相。

自由都市屈指のタフネゴシエーターとして知られ、魔王ダン主催の天下会議では永劫砂漠の不輸不入権を勝ち取った。



「テオドラ・フォン・ロブスキー」


ポルポル族初代酋長夫人。

帝国の名門貴族ロブスキー伯爵家(西アズレスク39万石)に長女として生まれる。

恵まれた幼少期を送るが、政争に敗れた父と共に自由都市に亡命した。



「ノーラ・ウェイン」


四天王・憲兵総監。

自由都市併合における多大な功績を称えられ四天王の座を与えられた。

先々月、レジスタンス狩りの功績を評されフライハイト66万石を加増された。



「ドナルド・キーン」


前四天王。

コリンズ王朝建国に多大な功績を挙げる。

大魔王の地球帰還を見届けた後に失踪。



「ハロルド・キーン」


帝国皇帝。

先帝アレクセイ戦没後に空位であった帝位を魔王ダンの推挙によって継承した。

自らを最終皇帝と位置づけ、帝国を共和制に移行させる事を公約としている。



「エルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ」


四天王筆頭・統一政府の相談役最高顧問。

前四天王ドナルド・キーンの配偶者にして現帝国皇帝ハロルド・キーンの生母。

表舞台に立つことは無いが革命後に発生した各地の紛争や虐殺事件の解決に大きく寄与しており、人類史上最も多くの人命を救済していることを統計官僚だけが把握している。



「リチャード・ムーア」


侍講・食糧安全会議アドバイザー。

御一新前のコリンズタウンでポール・ポールソンの異世界食材研究や召喚反対キャンペーンに協力していた。

ポールソンの愛人メアリの父親。



「ヴィクトリア・V・ディケンス」


神聖教団大主教代行・筆頭異端審問官。

幼少時に故郷が国境紛争の舞台となり、戦災孤児として神聖教団に保護された。

統一政府樹立にあたって大量に発生した刑死者遺族の処遇を巡って政府当局と対立するも、粘り強い協議によって人道支援プログラムを制定することに成功した。



「オーギュスティーヌ・ポールソン」


最後の首長国王・アンリ9世の異母妹。

経済学者として国際物流ルールの制定に大いに貢献した。

祖国滅亡後は地下に潜伏し姉妹の仇を狙っている。



「ナナリー・ストラウド」


魔王ダンの乳母衆の1人。

実弟のニック・ストラウドはポールソン大公国にて旗奉行を務めている。

娘のキキに尚侍の官職が与えられるなど破格の厚遇を受けている。



「ソーニャ・レジエフ・リコヴァ・チェルネンコ」


帝国軍第四軍団長。

帝国皇帝家であるチェルネンコ家リコヴァ流の嫡女として生を受ける。

政争に敗れた父・オレグと共に自由都市に亡命、短期間ながら市民生活を送った。

御一新後、オレグが粛清されるも統一政府中枢との面識もあり連座を免れた。

リコヴァ遺臣団の保護と引き換えに第四軍団長に就任した。



「アレクセイ・チェルネンコ(故人)」


チェルネンコ朝の実質的な最終皇帝。

母親の身分が非常に低かったことから、即位直前まで一介の尉官として各地を転戦していた。

アチェコフ・リコヴァ間の相互牽制の賜物として中継ぎ即位する。

支持基盤を持たないことから宮廷内の統制に苦しみ続けるが、戦争家としては極めて優秀であり指揮を執った全ての戦場において完全勝利を成し遂げた。

御一新の直前、内乱鎮圧中に戦死したとされるが、その詳細は統一政府によって厳重に秘匿されている。



「卜部・アルフォンス・優紀」


御菓子司。

大魔王と共に異世界に召喚された地球人。

召喚に際し、超々広範囲細菌攻撃スキルである【連鎖】を入手するが、暴発への危惧から自ら削除を申請し認められる。

王都の製菓企業アルフォンス雑貨店に入り婿することで王国戸籍を取得した。

カロッゾ・コリンズの推挙により文化庁に嘱託入庁、旧王国の宮廷料理を記録し保存する使命を授けられている。



「ケイン・D・グランツ」


四天王カイン・D・グランツの長男。

父親の逐電が準叛逆行為と見做された為、政治犯子弟専用のゲルに収容されていた。

リベラル傾向の強いグランツ家の家風に反して、政治姿勢は強固な王党派。



「ジム・チャップマン」


候王。

領土返納後はコリンズタウンに移住、下士官時代に発案した移動式養鶏舎の普及に尽力する。

次男ビルが従軍を強く希望した為、摂政裁決でポールソン公国への仕官が許された。



「ビル・チャップマン」


准尉。

魔王軍侵攻までは父ジムの麾下でハノーバー伯爵領の制圧作戦に従事していた。

現在はポールソン大公国軍で伝令将校として勤務している。



「ケネス・グリーブ(故人)」


元王国軍中佐。

前線攪乱を主任務とする特殊部隊《戦術急襲連隊》にて隊長職を務めていた。

コリンズ朝の建国に多大な貢献をするも、コリンズ母娘の和解に奔走し続けたことが災いし切腹に処された。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



異世界事情については別巻にて。

https://ncode.syosetu.com/n1559ik/

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― 新着の感想 ―
能力的にも関西弁的にも光宙しか該当者がいねぇw お前生きとったんか!!
おまっ……確率的にぴかちゅう!? やっぱりあの召喚やばすぎんだろ。というかあの自称底辺高校やばたにえん過ぎる。なんでこんな異常事態にのみ効果を発揮する人材しかいないんや。しかも教師はアレ。
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