【降臨94日目】 所持金19億0286万0283円 「ワタクシが頼れるのはオマエだけなの。」
夜中、異世界スマホが鳴る。
俺は慌てて飛び起き、装束を改めながら画面に話し掛けた。
『もしもし大魔王です!
ポールは無事!?』
「やっほー。
大魔王様どうもー♪」
画面を覗き込むもポールはいない。
ダークエルフのアネモネが妙に明るいテンションで手を振っている。
やけに後ろを気にしているということは、私用でこっそり使ってるな。
『ねえ、アネモネさん。
ポールは?』
「え?
いや、あれから状況は動いてないですよ?
私達はこの恐竜墓場でゴロゴロしてます。」
『…それで、何の御用かしら?』
「え?
退屈だから通話しようかなと(キョトン)。」
『あのねえ…
殿方が一生懸命頑張ってるのに不謹慎でしょう!』
「あ、すみません。
でも、女がウロチョロするくらいなら
井戸端会議の方が無難だと思いません?」
『…否めないわね。』
「なので!
何か面白いものを見せて下さい。」
『やれやれワタクシは貴女の専属ピエロではないのだけどね。』
「その代わり!
私も大魔王様を楽しませる一発芸やります!」
『え?
いらないけど?』
「一生の思い出になりますよ!?
全宇宙で私しか出来ない芸ですよ!?」
『あ、じゃあそこまで仰るのなら。』
「ふふふ、流石は大魔王様!
柔軟な対応ですね!
私達、相性いいと思いません?」
『いえ、全然。』
「あーん、塩対応!
じゃあ、1番アネモネ!
アロサウルスの物真似やります!」
『あ、はい。』
言うなりアネモネは四つん這いになり、変顔をしながら獣のように咆哮し始めた。
そして不意に立ち上がり、猫背でドスドスと足を踏み鳴らす。
『…。(ポカーン)』
どう反応すれば良いのか分からなかったので、呆然と少女の狂態を見守る。
コイツ、頭がおかしいのではないだろうか?
「どうです大魔王様!
似てたでしょ!」
『アネモネさん、ごめんなさいね。
地球にはアロサウルスなんて生物は存在しないの。
だから似ているかどうか見当もつかないわ。』
3分ほど気まずい沈黙が流れる。
アネモネは不貞腐れたような表情で唇を尖らせている。
えー、これ俺が悪いのか?
物真似なんて身内ネタの最たるものじゃん。
時空の果てに住んでる相手に見せてウケると思う方がおかしいじゃん。
『ま、まあ。
迫真の演技ではありましたね。
では、こちらもアネモネの暇潰しに付き合いましょう。』
少し褒めただけで、アネモネはドヤ顔で機嫌を直した。
俺も人のことは言えないが、コイツはガキなのだろう。
『江本ー!
江本は居ますか?
ちょっと来て頂戴。』
「あ、はい。
リン子お嬢様。
何か御用でしょうか?
ちなみに俺は寝る寸前でした。」
『ごめんなさい、ワタクシは悪くないの。
異世界人が話し相手になれとしつこくて。』
「えー!?
また異世界スマホ触ってはるんですか?
アイツらとは距離を取りましょうよ。
山火事問題も解決してへんねんから。」
『怒らないで。
悪いのはあの子なの!
ワタクシは悪くないの。』
「うーん、まあそういうことにしときますけど。
えっと、画面に映ってるのは?」
「どもー、アネモネちゃんでーす♡」
「え?
この人、耳とか尖ってるんですけど。
服装も浮世離れしてエロいし。」
『ああ、この子ダークエルフだから。』
「そ、そうですか。
ダ、ダーク…
スマホゲーとかではよく見ますけど…
異世界側がジワジワとライン越えて来ますね。
1人の良識的地球人としてこの上ない危機感を感じてるんですけど。」
『アネモネさん。
これがワタクシの近侍の江本です。
そちらと正式に外交関係を結ぶ際は、全権大使としてそちらに送るので魔王城への案内をお願いするわね。
駐在中は面倒みてあげて。』
「え? 大使?
え? 俺?
え? 駐在?
え? え? え?」
「おお!
大使閣下の案内役を割り振って下さるとは!
流石大魔王様!
アロサウルスを頑張った甲斐がありました!
いやー、私にも運が向いて来ましたね♪」
「え? ちょ?
え? いや!
え? 待っ?」
『江本。
アネモネが退屈してるの。
何か面白いことをしてあげて。』
「えー!?
今日び明徳◯塾でも後輩にそんな無茶振りしませんよ!」
『アネモネ、貴女はどんな芸が見たいの?』
「えーっとですね。
今は夜ですしぃ。
ムラムラしてるんで爆笑下ネタが見たいです!」
「え?え?え?
ちょ? え? 何で俺?」
『ふむ、一理あるわね。』
「昭和時代のPL○園でも、もう少し筋道が通ってると思いますよ。」
ブツブツ文句を言いながらも、江本は一旦別室に引っ込むと、3分ほどしてから戻ってきた。
下半身にペインティングを施している。
「では、1番江本昴流!
エレファントの舞を披露します!」
流石は体育会系の上澄みである。
ちゃんと下ネタ芸もストックしている上に、きっちり笑いを獲得した。
画面の向こうにはいつの間にかポールの縁者の女性達が集まっており、皆で手を叩いて笑っている。
「大魔王様のお心遣い。
我ら大公国民一同恐縮至極で御座います。」
奥から出てきたのは、ポールの后のポーラ大公妃、
以前会った時は妹と紹介された気もするのだが、ややこしそうなのでスルー。
だって俺には関係も興味もないからね。
きっと大公妃が俺の女性化をスルーしているのも同様の理由なのだろう。
『ポーラさん。
これなる江本はワタクシの参謀を務める程の重臣です。
そちらに向かわせた時はくれぐれもお願いしますよ。』
「承知致しました。
このポーラ・ポールソン。
命に代えてもエモト大使をお助け致します。」
『良かったわね江本。
ちゃんとポーラさんへのお土産も持っていくのよ?』
「えっと、逆に言えば命に代えなければならない政治状況なんですかね?
てか、ホンマに俺が大使なんですか?
あれはギャグではなく?」
軽いパニックに陥っている江本を置いて、俺とポーラ大公妃は改めて挨拶。
ポールの愚痴で笑い合う。
俺が地球で【本当は最強だったボク、無敵パワーで無尽蔵ハーレム!9999人のヒロインと共に綴るラブラブ建国日誌】が刊行される旨を告げると、「あの話は半分実話ですのよ。」と学生時代のポールがチアガールに手酷く振られた逸話を聞かせてくれた。
成程、そんなに酷い振られ方をしたらラノベの一本でも書き上げなきゃ感情が整理出来んわな。
「あの人、昔から全然モテませんでしたの。
だから女を見る目がないのよねー。
ワタクシというものがありながら、まったく。」
最後にそう締め括る。
駄目出ししている時の瞳があまりに輝いていたので、余程ポールを愛しているのだろう。
「ところで大魔王様。
その喋り方はエルデフリダの真似ですか?」
『あら?
わかります?』
「わかりますわよ。
髪型まで似せてらっしゃるんだから。」
『いやですわポーラさんったら。
おほほほほ♪』
「ごめんなさいね大魔王様
おほほほほ♪」
それから小一時間ほどポーラとエルデフリダの悪口を言って盛り上がる。
途中でテオドラなるよく喋る女も混ざって、3人で爆笑しながら親交を深めた。
最後にポーラが一礼して下がると、アネモネが笑顔で手を振って別れを告げながら通信を切った。
純粋に異世界女共の暇潰しに付き合っただけの一時だった。
『江本♪』
「あ、はい。」
『天晴大手柄ですわ!
オマエは地球男子の面目を保ちました!』
「…むしろ逆では?
まあ、ええですけど。」
『ポーラさんはワタクシの大切なお友達です。
向こうに行ったらちゃんと挨拶するのですよ。』
「あ、はい。」
その後、江本と外交戦略を語り合ってから朝までぐっすり眠った。
プリキュアの声真似をしてやったら随分喜んでいたので、激務に対する正当な俸禄は支払えているものとする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めると昼。
変な時間に眠ったので首が痛い。
なので被災者ボランティアに行く予定だった毛内翁を呼び止めてマッサージをお願いする。
結構、気持ちいい。
「リン子様。
山火事の死者が50名を越えたそうです。」
『まあ、可哀想。
レニーには厳しく注意しておかないと。』
「はい、2度とこの様な事が…」
『ねえ、今日のランチはなぁに?』
「は?
…あ、いえ。
リン子様のお召し上がりになりたい物が御座いましたら。」
『そうねぇ。
ワタクシ、珍しいスイーツが食べたいですわ!
折角北海道に来たのですもの。
ここでしか食べれないものが食べたいわ♪』
「…承知しました。」
『あ!
後、鮭が食べたいですわ!』
「…承知しました。」
そんな遣り取りがあったので、毛内翁が新車の慣らし運転も兼ねて俺とレニーをドライブに連れて行ってくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「オヒョヒョー♪
ウニ丼(4700円)×5杯の喉越しっ!
気ん持ちいーーーーーーーーっ❤」
『レニー、貴女そんなに食べるのに全然お腹が出ませんのね?』
「アタシは昔から、食ったら食っただけ筋肉に変わる体質なんすよ。
筋肉が暴発しない為にも暴れなきゃいけないから大変っス。」
『何を言ってるのかさっぱりわからないけど、迷惑行為もほどほどにね。』
「はーい、わかったっスー♪」
絶対にわかってないので、その後も5万円分ほどの食料を食わせておとなしくさせる。
この女は猛獣だと思って対処するのが一番である。
苫小牧から車で30分ほど北上した所に新千歳空港があり、飛行機が見えることを売り物にしたネイルサロンがあったので、レニーと2人で人生初ネイルを楽しむ。
「へー、地球では爪に絵まで描くんスね。
いやあ、マジ都会っス。
《りんこりん》はどんな絵を描いて貰うんスか?」
『ワタクシ、コテコテとしたデザインは苦手ですの。
オフィスネイルの範疇から逸れるのは抵抗がありますから…
そうね、このスキニーフレンチをお願いしようかしら。
爪先のラインはカタログよりも、もう少し細く仕上げたいわぁ。』
「えー、もっと派手な柄にしましょうよー。
あ!
いい事思いついた!
アタシは爪ごとに色を変えるっス!!
蛍光レインボーフルアートラメネイルにします!!」
『そういうの殿方は嫌がるわよ。
ねえ、毛内はどう思う?』
「…自分は華美な女性は苦手です。
綺麗と感じる事もありますが。」
『ねえ、あまりワタクシを怒らないでね?
なるべく毛内が気に入ってくれるファッションをするから。』
「恐縮です。
服装の話からは逸れますが…
思い遣りのある女性は素敵だと思います。」
『前向きに善処しますわ。
怒らないでね? 怒らないでね?
ワタクシ、毛内に嫌われたら生きていけませんわ。』
仕上がったネイルは悪くはないのだが、イマイチ俺の手にフィットしていない。
全体のバランスなのかなぁ。
俺、童顔だから大人っぽい配色は合わないのかなぁ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
小高い丘から新千歳空港を見下ろす。
俺も航空行政に詳しい訳ではないので、特に為になる解説はしてやれない。
「ふーん。
つまり、北から順に並んでる訳っスね。
…外港オタル、州都サッポロ、シンチトセ空港、外港トマコマイが基幹ラインになるのかな?」
『ええ、この北海道は我が国の中でも本州と呼ばれる中心島嶼の次に巨大な島ですが。
札幌はその中でも一強都市ですわね。』
「ふーん。
じゃあ、外港のトマコマイは当分安泰ッスね。
エスコンフィールドでしたっけ?
そこは上手く行くんじゃないッスか?
他の島からサッポロに来るためにはシンチトセかトマコマイを経由するんですよね?
通り道にエスコンがあるなら、そりゃあ有利でしょう。
話を聞く限り興行には向いた一等地と思ったッス。」
レニーは辺境の田舎者である。
子供時代は経済の導線から最も離れている山地に住んでいた事により多大な不利益を受け続け、成人してソドムタウンに移り住んだことで大都市に住む絶大なメリットを知った。
異世界の話とは言え、最辺境と最中央の両方で生活した経験があるのだ。
必然、立地や流通について異常に敏感である。
新千歳空港にも苫小牧港にもかなり強い関心を持っている
「あの飛行機には何人くらい収容出来るッスか?」
何もない遠方の空を眺めながらレニーが効く。
いや、俺達の目には見えないだけで、彼女には視認出来ているだろう。
「今、調べました。
500名前後です。」
毛内翁の返答にレニーは「ゴヒャク」とのみ呟く。
目線を見る限り相当の集中している。
「これは補足ですが。
1日5万人前後が空港を利用しております。」
レニーは初めて驚いたような顔で振り返り、優しく笑った。
「モーナイさん、ありがとうございますッス♪」
「いえ、お役に立てたのなら恐縮です。」
その後、毛内がサーモンパーク千歳なる道の駅に連れて行ってくれる。
「ンッッンーーーーー♪
このキングオーシャンタワーサラダ(5478円)は旨いッスねえ♪
アタシ山育ちなんで、魚介と野菜を合わせるってだけで贅沢感に浸れるっス♥」
『それ普通は6人前で食べるそうよ?』
「じゃあおかわりするから12人前ッスね!
食事中恐縮なんスが、ちょっと小腹がすいたんで、鮭の遡上丼 (6050円)と海鮮どっさり旨塩ラーメン(1680円)とメガばくだんおにぎりメガ鮭いくら(3420円)を二皿ずつ食べるッス!」
『貴女がお相撲さんなら褒めてあげるのですけどねぇ。』
レニーが強く希望したので、エスコンフィールドにも足を運んでみる。
30分だけ西武ライオンズ戦を一緒に見物した。
球技に興味はないらしいが、野球場の面積や立地や職員人数には異常な関心を示す。
『随分熱心ですのね。』
「公人としてのポールさんは僅かなヒントから最適解を創造出来る人ッスから。
アタシらの仕事はあの人に思考の材料を持ち帰ることッス。
ポーラの糞BBAがそこら辺うるさくて。」
『良い心掛けですわ。』
「《りんこりん》はアタシらの世界から何を学んだんスか?」
『うーん。
女の子が売春せずに済む方法かしら。』
「ええ、売春カード禁止されちまうんスか?
勘弁して下さいよぉ。
具体的にはどうするんスか?」
『皆にお金を配りますの。』
「それ《りんこりん》にしか出来ないじゃないッスか。
再現性ないッスよ。」
『あらあ、ゴメンなさい。』
「結局あの後、アタシらの世界では売春が盛んになりました。」
『あらあ、そうなんですの。』
「上位0.1%の上澄みメスが兵隊になってイキりまくってます。
それ以下の99.9%のゴミは人民住宅でゴロゴロしながら、セックスと引き換えに男に配給切符や服を貢がせてます。
どいつもこいつも、結構好きに生きてますよ。
男の人はちょっと大変かな。」
『あらあ、じゃあ次は男の人が幸せになれる方法を考えなきゃ。』
「ああ、それは簡単っス。
女を締め付ければいいだけなんで。」
『まあ、それは困るわ。
政治って本当に難しいわねぇ。
誰か賢い人が最適解を出してくれればいいのだけれど。』
「いや、《りんこりん》の男女をコロコロ使い分ける戦法が既に生物の究極解でしょう。
そりゃ、こんなバケモンなら天下も獲りますわ。」
帰路、レニーはエスコンフィールドで買った土産菓子を一通り貪ると、大麻をスパスパ吸ってから幸せそうにイビキを立て始めた。
この女はよほど前世で徳を積んだのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
エスコンから1時間ほど掛けてキャンプに戻る。
出航は今夜なので荷物は早めに整理しておかなければならない。
カネを出し終わったら、物資の再チェックを済ませて苫小牧港だな。
『寒河江、首尾はどう?』
「1週間分の水と食料は確保済みです。
レニーさんを頭数に入れても丸1日程度なら耐えれます。
日本酒以上にコニャックを好む様ですので、そちらも買い足しておきますね。」
『ゴメンね。
寒河江にばかり負担を掛けてしまって。
ワタクシが頼れるのはオマエだけなの。
本当にごめんなさいね。』
「いえ、リン子お嬢様の為ならお安い御用ですよ。」
今夜23時30分の便で敦賀に出航する。
敦賀港には明日の20時30分に到着予定。
つまり明日は船内で恩寵の儀を迎えなくてはならない。
現在の保有資産なら船舶のバランスを損なうことはないだろうが…
全盛期の俺はコンビナートを破壊したことすらあるので、乗り物の中でスキルを発動する事への恐怖がある。
船や飛行機にはなるべく乗りたくないな。
万が一、何らかのイレギュラーが発生した場合は海中に紙幣を投棄して事故を防ぐと決めていた。
法律には違反しているが、事故が起こるよりはマシだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時間が押しているので坐禅を組んで精神集中。
カネを出すしか取り柄の無い俺は、堅実に事故の無い射出を心掛けなくてはならない。
今まであまり考えずにドバドバ出していたからな。
今日は修行パートと洒落込もう。
「修行?」
『ええ、福田が持って来てくれたスーツケース。
ここに直接おカネを出せるか試してみますわ。』
「珍しゅう向上心ば発揮するじゃなかか。
どぎゃん風ん吹き回しや?」
『レニーがあんな風に迷惑を掛けたでしょう?
改めて地球にとってスキルが脅威だと思い至りましたの。
せめてワタクシくらいは制御を心掛けなくては。』
「なるほど。
出来れば、死人が出る前に至って欲しかったな。
まあ、よか。
レニーは早めに送り返せや?
居座られてはかなわんけんな。」
『ええ、送り返す方法があれば良いのですが。』
「もうキサンがアイツば連れて異世界に行け。」
『それしかないですわよねえ。』
レニーの目的は大魔王たる俺を異世界に連れ帰ること。
それを取引材料として、ポールを救おうとしている。
なので、俺が同意するまでは地球に居座るだろう。
昨日の火事も恫喝戦術の一環だと俺は考えている。
火事を咎める俺にニコニコしながら、エミリーとの合体スキルならこの数百倍の範囲を焼くことが出来ると豪語しやがった。
恫喝と捉えるのが妥当だろう。
俺が異世界人の生死に興味がなかったように、レニーも地球人のそれに頓着がない。
ただそれだけの話だ。
「1分前!」
石賀が短く叫ぶ。
俺は坐禅を崩さず、無言でスーツケースに集中。
「ほええ、今日はどんな珍プレーを見せてくれるんスか?」
「キサンは少し黙っちょれ。」
レニーが1人でペラペラ喋っているのを除けば誰も喋らない。
今後、金額や種目が増えることを鑑みれば、俺の精密性がパーティー全体の安否を左右する場面
も予想されるからだ。
…俺、このスキルを授かってから半年以上経つんだよな。
今更こういう初歩的な検証に取り掛かるあたり、資本家って気楽な商売だよな。
《4億4633万円の配当が支払われました。》
数千万円分の紙幣がはみ出た以外は全て空のキャリーケースに収まってくれた。
ただ、キャリーケースの中の紙幣の並び方はかなり乱雑で、そこら辺に俺の気質が集約されている気もした。
「キチキチしてないから人が付いて来るんじゃないっスか?
話してて楽なのが《りんこりん》のいい所だと思いますよ。
あ、今日は10万円下さい。」
それがレニーの率直な感想。
俺が債務者ならこの大雑把な性格は命取りになっただろうし、周囲の怒りを買っただろう。
だが俺は分配者である。
ゴチャゴチャ言わずにカネをバラ撒く姿勢に皆が安堵しているらしい。
まあな、俺は証文や念書の類を一度たりとも要求したことがないし、配ったカネの使用用途を尋ねたこともない。
ソドムタウンの官僚達は涙を流して拝んでいたので、俺の気質はパトロン向きではあるのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
17億1663万0283円
↓
21億6296万0283円
↓
20億9296万0283円
↓
21億0286万0283円
↓
20億0286万0283円
↓
19億0286万0283円
※配当4億4633万円を取得
※臣下に日当として計7000万円ずつを支給
※レニー・アリルヴァルギャの日当から990万円を天引き
※苫小牧市に義援金として1億円を匿名寄付
※ログハウス破損への謝罪金として1億円を施設側に支払い
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
メンバーは苫小牧への義援金を称賛しつつ表情が暗い。
まあな。
異世界からの侵略者が日本人を大量に殺害している訳だからな。
しかも、魔王軍先遣隊の指揮系統を手繰っていくと総大将は俺となる。
まさかと思ったが、ポーラ曰く異世界の法律ではそうなっているそうだ。
【俺→コレット→侍従長→ポール→ニック→ダークエルフ族長→アネモネ→レニー】
信じ難い話だが、軍法上はこういう流れの指揮系統図になっているらしい。
なので、今回の山火事も最終責任は俺に帰すとのこと。
パーティーメンバーの表情が暗い理由はまさしくそれで、俺への加担が祖国に対する攻撃と直結してしまっている点に悩んでいるのだ。
取り敢えず、早急にレニーを送り返さなくてはならない。
北国で集めたメンバーは俺の生命線だ。
見限られてしまうと完全に詰む。
『ひっく、ぐすん。』
「り、リン子お嬢様!
どうされましたか!?」
『ぐすんぐすん。
ワタクシの所為で大勢の貴い人命が失われてしまいました。
それが申し訳なくて、悲しくて…
心が張り裂けそうですの!』
「い、いや!
あれはレニーさんが勝手にやったことで!」
『いえ、レニーはワタクシに元に参じた兵士です。
ワタクシには使用者責任があります!
う、う、う。
ごめんなさい! ごめんなさい!』
「リン子お嬢様!
涙を拭いて下さい!
あれは不幸な事故です!
リン子お嬢様の補償の意志は我々に伝わっております!
どうかどうか!
お気を確かに!!」
『う、う、ぐすんぐすん。
ちゃんと叱ってくれる仲間を持って、ワタクシ幸せですわ。
これからも至らぬワタクシを厳しく指導して下さいね。
ワタクシにはオマエ達しかいないの。
見捨てられたら生きていられない!
うわーーーーん!!!』
「「「「「「リン子お嬢様ーーッ (号泣)!!」」」」」」
『みんなーーーッ(号泣)!!』
さてと、よくやく本州に帰還出来るな。
羽黒衆から紹介された白山修験の偵察によると敦賀港に異変はないようだ。
少なくとも東日本の各港と異なり、ヤクザの襲撃はまだない。
鷹見のトレイルカメラ戦法に警戒しながら上陸を計ろう。
敦賀に到着した後のルート選定は皆に任せているが、俺が判断を仰がなくてはならない場面があれば、山を越えて滋賀に入り…
畿内に潜伏しながら戦力を整えるか。
【名前】
大魔王りんこりん
(俗名) 遠市・コリンズ・リン子・厘
【職業】
お嬢様
便所紙
ホステス
パチンコ台
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
淫売
賞金首
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 26
《HP》 ネイルしたら回復しましたわ。
《MP》 お喋りをしたら回復しましたわ。
《力》 深窓の令嬢
《速度》 神出鬼没
《器用》 変幻自在(♀限定)
《魔力》 悪の王器
《知性》 脳味噌エルデフリダ
《精神》 絶対悪
《幸運》 天佑
《経験》 3億7897万1709
本日取得 0
本日利息 7820万0511
次のレベルまでの必要経験値 2億9211万6921
※レベル27到達まで合計6億7108万8630ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利26%
下4桁切り上げ
【所持金】
19億0286万0283円
757万BTC (下4桁切り上げ)
↓
954万BTC
322万XRP (下4桁切り上げ)
↓
406万XRP
322万SOL (下4桁切り上げ)
↓
406万SOL
※ユーロ・ポンド・ルーブル・バーツ・ペソ・ドルも保有。
※ユーロ・ポンド・ルーブル・ドルの保管権を孝文・j・Gに付与。
※仮想通貨の運用権を孝文・j・Gに付与。
※米国債・タイバーツ・フィリピンペソの保管権を児玉繭子に付与。
【残り寿命】
535万8500日 (下4桁切り上げ)
↓
675万8500日
【所持品】
Maison Margiela ショルダーバッグ 白
Archi Diorリング ホワイトゴールド×ダイヤモンド
ティファニー ビクトリア グラジュエイテッド ネックレス
カルティエ Juste un Clou ブレスレット
【約束】
〇古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
『100倍デーの開催!』
× 「一般回線で異世界の話をするな。」
『世襲政権の誕生阻止。』
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
「空飛ぶ車を運転します!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
『遠市王朝の建国阻止。』
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 『日当3万円。』
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
×警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
「オマエだけは絶対に守る!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
×今井透 「原油価格の引き下げたのんます。」
「小麦価格の引き下げをお願いします」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 『子ども食堂を起ち上げます。』
「紙幣焼却によりインフレを阻止する。」
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
「共に地獄に堕ちましょう。」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
〇DJ斬馬 『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
金本聖衣 「同上。」
金本七感 「17歳メインヒロインなので旦那との復縁を手伝って。」
〇天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
「再戦するまで勝手に死ぬな。」
〇小牧某 「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」
阿閉圭祐 「日本国の赤化防止を希望します。」
〇坊門万太郎 「天空院写真集を献納します!」
宋鳳国 「全人類救済計画に協力します!」
堀内信彦 『和牛盗難事件を解決します。』
〇内閣国際連絡局 『予算1000億円の確保します』
〇毛内敏文 『青森に行きます!』
神聖LB血盟団 「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」
Top Girls 「招待ホモ枠の仲間として色々便宜を図ってあげマース♥」
〇大西竜志 「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」
『貴方の遺族に篤く報います。』
坂東信弘 「四国内でのイベント協力」
国重辰馬 「四国内でのイベント協力」
涌嶋武彦 「畜産業界の総力を挙げて遠市派議員を衆議院に最低10名押し込みます!」
斑鳩太郎 『処刑免除を保証します。』
志倉しぃ 「カッコいいホモの人を紹介して下さい。」
〇孝文・j・G 「英国大使館パーティーにて利息支払い」
「永遠の忠誠と信仰を(以下略)」
〇グランツ(英) 「perape-ra!!!!!!!!」
E・ギャロ 「農政助言」
「王都で星を見る。」
福永史奈 「出産すれば1億円支給」
野上絵麻 「以下同文」
桂川風香 「以下同文」
久能木瀬里奈 「ジャンジャンバリバリ!!」
児玉繭子 「ウチの旦那に色目を使うな。」
「アメリカ経済を破綻させないように努力する。」
古河槐 「jetの救済をお願い。」
カミーラ・B 「perape-ra♪」
故バーゼル卿 「perape-ra!」
〇有村拓我 「福田魁との連絡を取る。」
×福田魁 「男らしゅうせー!」
竹内遊馬 『異世界に飛ばしてあげますわ♪』
ポーラ・P 「いつか一緒にお茶しましょう。」
金本光戦士 「どんな危機からも必ず救い絶対に守る。」
古河槐 「シンママで産む」
◎木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
× 「ウンコは便器の中にするニャ♪」
「未来永劫ずっと一緒♥
ずっとずっとずっとずーーと×∞
厘を守ってあげるね♥」
◎鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」
土佐の局 「生まれた子が男子であればリイチ。
女子であればリコと命名する。」