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【顛末記11】 最高顧問

何もかもが変わってしまった。


あまりに変わり果てていたので、旧ソドムタウンの領域に入った事にしばらく気付けなかった程だった。

少なくとも、貴族区・富裕区・中央区にかつての面影はない。

立ち並んでいた豪邸は全て人民住宅と公営施設に変わった。

特権階級が独占していた富が貧民達に分配されたのだ。


かつて我が父ジャック・ポールソンとドナルドの父トッド・キーンが邪悪な地上げ行為で人民から奪った富は、半世紀の歳月を経て見事に奪還された。

泉下の2人は息子達の存在が全てを白紙に戻す切っ掛けになったと知ったらどんな反応をするのだろう。


大魔王の経済テロによって、この街の上流階級は文字通り壊滅した。

生き延びた元貴族・元富豪もいるが、体制に不満を唱えることはない。

これは彼らが従順なのではなく、そうでない者があらかた殺され尽くした事を意味する。

改めて、四天王ノーラ・ウェインの歴史的功績の大きさに驚かされる。

後は俺さえ殺せば完璧じゃないか。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そんな旧中央区に1箇所だけ奇妙な区画がある。

居並ぶ人民住宅の合間に一軒だけ、昔ながらの大豪邸が残っているのだ。

旧キーン邸。

名義人のドナルド・キーンが生死不明なので政権側が接収タイミングを逃したらしい。

それにしても巨大な邸宅だ。

ファミリー向けの人民住宅が2棟、単身者向けなら3棟建ってもおかしくはない敷地面積である。

ああ、懐かしい。

つい数年前までは、頻繁に呼びつけられたものだ。

あの頃は空いた時間に気心の知れた社員さん達と向かいのカフェでお洒落なブランチを楽しんだものだ。


当然、カフェがあった土地はもっと社会的意義のある活用をされている。

今では運送労働者用の人民住宅が建てられ、その一階は公営配給所となっているのだ。

労働者には多めに配給切符が支給されるので、意欲と体力のある者はポーターや馬丁となってこの街を支えている。

最も配給切符が多く支給されるのは屎尿処理の従事者である。

当然、彼らには最も広い住宅が割り当てられ、職業差別の根絶の為に消臭技術に対しては潤沢な研究予算が確保されている。


なまじ摂政に慈悲や理想が無かったのが幸いしたのだろう。

彼女は大魔王が無邪気に語った楽土を実に淡々と築き上げた。

微塵ほどの思い入れもないので、粛々と革命は進行し、実質2年で歯向かう者は根絶された。

肉屋が豚に情状酌量の余地を与えないように、摂政も世界に対して同様だった。


知己を大量に殺された俺が摂政を心の底から憎めないのは、行き交う労働者達の表情があまりに明るいからだ。

運送労働者棟の隣は清掃労働者棟だったが、そこに多くの家族連れが出入りしている事に驚かされる。

若い夫婦連れが多い。

御一新前、清掃業への差別は極めて激しく所帯が持てないことで有名だった。

俺は清掃会社の役員だったにも関わらず従業員に対して一件の縁談も準備出来なかったが、摂政はそれをあっさりと成し遂げてしまった。

どう考えても、大義はあの少女にある。


未曽有の大量殺戮を続けている摂政が絶大な消極的支持を得ているのも、結局はそういうことなのだ。

恐らくは人類史上初であろう政治的正義がリアルタイムで成し遂げられている。

故に万民は摂政を心の底から憎悪しながら全面的に支持するのだ。



「あら、ポールじゃない。」



俺が屋敷を眺めていると不意に頭上から声が聞こえた。

そう言えば、変わらないものが1つだけあったな。



『エル!

今は御評議の時間だろう!

他の四天王達は魔王城に帰還したと聞いているぞ!』



不敵に笑いながらバルコニーから俺を見下す姿は御一新前から何も変わらない。

いつの間にか開かれていた正門扉からメイドが手招きしていたので、気が進まないながらも勝手知ったるキーン邸に足を踏み入れる。



エルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ



帝国皇帝ハロルド・キーンの生母。

賞金首ドナルド・キーンの妻。

統一政府の相談役最高顧問にして四天王筆頭。



「ポール、貴方も付合いなさい。」



エルデフリダのテーブルには驕奢なアフタヌーンティセットが一式だけ用意されていた。

俺を無理矢理に隣席に座らせるも、こちらに茶菓を勧める素振りすら見せない。

なるほど、この女だけは不変だ。



『御評議はいいのか?

今からでも魔王城に送ろうか?』



「貴方って本当にお馬ぁ鹿さん。

あのねえ、ポール。

今はもう令和なのよ?

少しはアップデートなさい。」



エルデフリダはそう言い捨てると鈴を鳴らしてメイドを呼びつける。

そして運ばれて来たのは…

見慣れない魔道具…

中央に据えられているのはモニター?

映った女性の胸元に《通信部》のプレートが見えたとという事は、きっと新しい型式の通信機なのだろう。



  「相談役、おはようございます。」



「おはよう。

会議はもう始まってるの?

四天王は集まってる?」



  「はい。

  30分ほど前から。

  財務長官と憲兵総監が御出席されています。」



「ジョインするわ。

繋いで頂戴。」


 

  「畏まりました。

  1分後、玉座の間のモニターに表示します。」


  

エルデフリダは何事もない表情で紅茶で喉を潤している。

俺の喉も乾いているのだが、今更この女の気遣いに期待するほど馬鹿でもない。



『なあ、エル。』



「何よ。」



『魔王城近いんだから直接行けよ。』



「嫌よ。

馬車で40分も掛かるのよ?」



『オマエ、いつも通信機で済ませてる訳?』



「ワタクシの勝手でしょ。

あのねえポール。

貴方が砂漠で羽根を伸ばしてる間に技術は格段に進歩しているの。

これからはリモートの時代よ。」



『俺は別に遊んでる訳じゃあない!

オマエには分らんのだろうが、砂漠での生活は大変なんだよ!』



「あら、羽根を伸ばせて良かったじゃない。

貴方のことだから年甲斐もなく大冒険を楽しんでいるのでしょうね。」



『…楽しんではいない。


あのなあ!

俺の言いたいのはそういうことじゃなくて!』



「あーらゴメンあそばせ。

もう通信機が繋がっちゃった。

ワタクシ、貴方と違って忙しいの♪」



エルデフリダが意地悪そうに微笑みながら、俺を突き飛ばす。

相変わらずホスピタリティの欠片もない女である。


そして魔王城とモニター越しに繋がった瞬間、エルデフリダはモニターの向こうを煽り始めた。

誰かを攻撃している時の彼女は生気に満ちていて、愚かにも俺は淡い初恋を思い出していた。


怒鳴り返して来たのはクレアであろうか。

その声色には憎悪と殺意が満ち溢れていた。

とてつもなく険悪な雰囲気だが、この2人の不仲は30年来の伝統ではある。

クレアの他にはノーラの声も聞こえる。

口論はエスカレートし、3人は醜悪に顔を歪めて罵倒し合い始めた。

四天王の不仲は世界的に有名なので統一政府を憎む者は政権分裂への発展を期待しているのだが、残念ながら4人は政治的には完全に一枚岩である。

単に攻撃性が激しく狷介極まりない4人が順当に憎み合っているだけの話なのだ。



「うふふ♥

ワタクシも本当は御評議に顔を出したかったのですけど♪

今日わぁ♪

とってもとっても忙しかったんですの♥」



エルデフリダが邪悪極まりない笑顔をモニターに近づける。

嫌な予感がした俺が逃げようとするのだが、いつの間にか手首が強く握られていた。

相変わらず無駄に膂力が強い。



「紹介しますわ♪

ワタクシの永遠の恋人♪

ポールソンでーーーす♥

本当は会議ゴッコに付き合ってあげたかったのですけど、カレがベットから解放してくれなかったのですわ♪」



離脱を図ろうともがく俺をエルデフリダは片手だけで軽々とモニターの前まで引きずり出すと、慈母のような笑顔でカメラ目線キスを敢行した。

モニターの向こうの元老連中(女ばかりである)の鋭い怒声が響き渡る。

議長席の摂政は例によって表情を変えないまま、「ポールソン卿か…」と呟く。


御簾の奥には魔王ダン、その隣の人影は侍従長。

そうだよな。

これだけ全員揃ってるんだから、近所に住んでるエルデフリダは顔を出すべきだよな。


しばらく物騒な遣り取りが続いた後、会議に最初から興味がなかったエルデフリダは爪や巻髪を触り始める。

出席権が無い筈の俺だが、摂政から幾つかの諮問を受けたので分かる範囲で所見を述べておいた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『じゃあ、俺はもう行くから。』



「どこへ?」



『魔王城への参勤に決まってるだろ。

直接報告したいことも山ほどあるしな。』



「じゃあ、ワタクシも行くわ。」



『え?

オマエも魔王城に行くの?』



「ええ、直接言いたい文句が山ほどありますの。」



『エルに限ってはリモートに徹するべきだな。』



「だからさっきもそう言ったじゃない。」



エルデフリダは強引に俺を専用馬車に乗せると、当然の権利のような表情で頭を持たれさせて来た。

こういう女である。



『なあ、エル。』



「なあに?」



『皇帝陛下にオマエの出禁を解くように嘆願しておいたぞ。』



「え!?

ワタクシのハロルドは何と!?」



『普通に断られた。』



「キー!

貴方が不甲斐ないから!!(ぽかぽか)

この役立たず!!」



エルデフリダは息子のハロルド皇帝によって帝国から永久追放された。

生母に対してあまりに酷い仕打だが政治的に極めて正しい判断なので、世論はいっそう皇帝への支持を強めた。

そりゃあね、皆で封建制の着地点を模索している時にこんな女にしゃしゃり出られたら纏まる話も纏まらなくなるよね。



「責任取りなさいよ。」



『え!?

責任!?』



「当たり前でしょ!

貴方の所為でハロルドの機嫌を損ねたのだから!」



…俺の所為も何も、皇帝陛下は物心ついた頃から両親を嫌ってるぞ。

嫌われて当然の夫婦なので俺も窘めようがなかったが。

ちなみに一番嫌われているのは夫婦共用のパシリを務めていた俺なのだが、あまりに妥当過ぎる感性に反論の余地は微塵もない。



「代わりに側に居て!」



『え!?

代わり?』



「息子とも夫とも逢えてないのよ?

責任を取ってワタクシと暮らすの!

ポールは永遠に側にいなさい!」



永遠!?

いやいやいや、普通に嫌なんだが。

この女と一緒に暮らすとか、悪夢でしかないだろう。

オマエの夫や息子ですら心底うんざりしていたんだぞ?

ちなみに俺の初恋相手はオマエで今でも淡い恋心は密かに継続中だが、そんな俺ですらオマエなんぞ願い下げだ。



『…あ、うん。

俺、仕事忙しいし。

報告と調整が終わったら、国元への交代だから。』



「キーキーキー!!」



『痛! 痛! 痛い!

やめなさい! 子供じゃあるまいし!

痛い! 痛い!』



ドナルド・キーンが寝食を忘れて国事に奔走した気持ちが理解出来る。

アイツ、帝国や連邦はおろか合衆国なんぞにまで出張してたからな。

最後は王都まで行って大魔王を連れ帰ってきたし…

悪妻は革命の母だよなぁ、ドニー。



「ギャオーンッ!!!」



『オマエ、それ絶対に更年期障害だろ。』



「キーーーーーッ!!!!

ワタクシはまだ若い!!!

若若若若若いッ!! お肌も綺麗っていつも言われる!!!」



『痛痛痛痛痛いッ!

わかった! わかった!

オマエは若い! 美しい!』



「もっと言って!!!」



『天下無双の美貌!!

女神!!! 妖精!!』



「心がこもってない!!!」



『時代はオマエが作ったぁあああ!!!!』



「…ハアハア。

今のは気持ちが入っていたわ。」



…事実だからな。

オマエに1ミリでも可愛気があれば、流石のドナルドも王都までは行かなかった筈だ。

そうなれば大魔王&摂政がソドムタウンを拠点とすることもなく、御一新は起こらなかった。

理由はどうあれ革命原因の6割くらいはオマエだからな。



『なあエル。』



「…何?」



『前から思ってたんだけどさ。

オマエって四天王筆頭で相談役最高顧問な訳じゃない。

摂政はオマエなんかに何を相談するの?』



「ワタクシになんか相談しているようじゃ、あの子も末期でしょう。」



『いや、勿論そうなんだけどさ。

他の3人と比較してオマエが役に立ってる場面って見たことないから。

少しは貢献した方がいいんじゃないかって。』



「…じゃあ、今から砂漠に行ってアロサウルスを駆除するわ。」



『おい馬鹿やめろ!』



「貴方が貢献しろって言ったからよ。」



『エルはいつも極端すぎる!

もう少し無難になれんのか。』



「ほらね。

皆がそうやってワタクシが何かしようとする度に怒るから、仕方なくおとなしくしてあげてるの。

こっちはニーズに応えてるだけなのに、怠け者扱いされて迷惑だわ。」



『…。』



「安心なさい。

これからもお姫様で居てあげるから。

それで丸く収まるのでしょ。」



『…収まる。』



「ねえ、ポール

【何もするな】と言ったのは貴方なのよ?

だから言いつけを守っておとなしくしてるの。

それだけは忘れないでね。」



『俺、そんな酷いこと言うかな?』



「言ったでしょッ!!!

6歳の時も7歳の時も9歳の誕生会の日もッッ!

11歳の時にワタクシを仲間外れにしてダンジョン見物に行ったァッ!

ミドルスクールの郊外学習の行き先にまで干渉して来た癖に!」



『え? 干渉?

俺が君に?

いや、そんな昔の話をされても覚えてないし…』



「ギャオーーーンッ!!

男の人ってみんなそう。

女を束縛する癖に、縛り終わった後は動かない事を責めるの!

貴方が怒るから乗馬体験会も我慢したんでしょ!!」



『いや、え?

乗馬? え? 何の話?』



「誤魔化さないで!

スワロフ家の牧場お披露目パーティーにポールが行くなって言ったからワタクシ一人が行けなかったんじゃない!

大恥かいた恨みは忘れてないのだからね!」



『え?

スワロ…?

ごめん、記憶にない。』



「貴方のジュニアスクールのクラスメイトのエミリア・フォン・スワロフよ!

第五学年の後期ッ!

男に媚びるしか能が無い嘘つき女!

貴方やけにあの女の肩ばっかり持ってたわよね!

ワタクシのハープ演奏会は途中で帰った癖にエミリアの展覧会は千秋楽まで通ってたわよね!

ワタクシのやる事には全部反対してた癖に!

それも含めて許してないのだからね!」



『え? え? え?

エミ? 誰?

ゴメン、そんな昔の話を持ち出されても…』



「ギャオーーーーンッ!!!

何度そうやってワタクシを裏切れば気が済むのッ!!」



『え? え? え? 裏切る?

そうかなぁ。

エルの被害妄想だと思うがなぁ。

仮にキツイ表現があったとしても、オマエの為を思ってだと思うぞ?

ウラジミール陛下からもお願いされたことだし。』



「キーーーーッ!!

ほら、そういうところ!

男同士で勝手に結託して女を檻に閉じ込めようとする!!」



『はいはい、わかったわかった。

オマエはいつも正しいよ。

末永く達者で暮らせよ。』



「待ちなさい!

まだ話は終わってないわ(ガシッ)!」



馬車の中だと言うのにエルデフリダは発狂して俺の首を締め上げてくる。

相変わらず無駄に怪力である。



『ゴホッ! ゴホッ!

死ぬ! 死ぬ!』



「地獄に堕ちろポール・ポールソン!

2人は死後に永遠伴侶として結ばれるのよ!

そしてワタクシだけは極楽浄土にイクゥッ!!」



『ゲボォォ、グヘェ!!』



何とか蹴り飛ばして凶手から逃れる。

参勤する以上死は覚悟しているが、戦争も政治も無関係な場面での死までは想定外。



「嗚呼、ワタクシってなんて不幸なのかしら。

まさしく悲劇のヒロインッ!」



『ゴホッ! ゲホッ!』



そんな茶番を繰り広げているうちに、馬車は魔王城のある人工島に入る。

さっきまで鼻水を垂らして泣き叫んでいたエルデフリダはいつの間にか、よそ行きのお姫様スマイルに変貌し車窓の向こうに手を振っていた。



『…流石に魔王城では暴れないんだな。

いつもギャオギャオ言ってるのかと思った。』



「女が素顔を見せるのは愛する男の前だけよ♡

お行儀のいい澄まし顔はどうでもいい他人にだから出来るの。」



『…今からでも面識消去して貰えませんかね。』



「ねぇ、ポールゥ♪

もっと窓の側に来てぇ♥

ワタクシ、小娘共に幸せを見せつけたいの♪」



『オマエ、さっき世界一不幸を自称してたじゃないか。』



「うふふ♪

お馬ぁ鹿さん♥

実際に幸福か不幸かなんてどうでもいいの♪

如何に己が幸福かを見せつけて、周りに不幸を味あわせるのが大切なのよ♥」



『あ、うん。

マジでクソだな。』



「酷い言い方しちゃ嫌!

女はみんなそうなのよ!」



『いや、全員ではないだろう。』



「でも、あのアレはそうでしょ!」



『ポーラは生まれつきキチガイだから。』



「あっちのアレもそうでしょ!」



『クレアは単なる異常者だから。』



「ほぉら御覧なさい!

女はみんなそうなのよ!」



…いや、世界キチガイトップ3を一般化して語るのは無理があるだろ。



「だからキスして!」



『え?!』



「自慢したいの!

激務に追われて心身共に疲れ切ってる小娘共に幸せを見せつけて絶望のドン底に叩き落としたいのよ!」



『絵巻物とかで悪の親玉が言うセリフだぞ、それ。』



「キスしてくれないと馬車を降りてあげないんだからね!」



仕方がないので馬車を門前に放置して、魔王城に歩いて進む。

城と言っても遊牧民から贈られたゲルなのでサイズは極めて小さい。

俺も短い期間、大魔王や他の四天王と暮らした事もあるが、本来は一個分隊が暮らすのがやっとの広さだ。


その魔王城の背後に建てられたゲルで魔王ダンは摂政と暮らしている。

無論、摂政は極めて多忙なので我が子を抱く暇すらなく、育児は侍従長に丸投げしているとの噂である。

確かに、政治的パフォーマンス以外の場で摂政が魔王を抱いている場面はまだ見ていない。


俺は着到報告用のゲルで登城の旨を申告し、男性待機用ゲルにて呼び出しを待つ。

幸運にも以前から面識のあったトハチェフスキー卿も待機していたので皆を紹介して貰いペコペコと頭を下げ合う。

確実に盗聴されているので政治の話は当然しない。

途中、メイドがやって来てエルデフリダのゲルに招待されるが、謝絶。


恐らく順番優遇があったのだろう。

先着の諸侯達より先に俺が呼び出されてしまう。

俺は恐縮して詫びるが、諸侯達は表向きにこやかに見送ってくれる。

彼らの本音を知っているだけに心苦しい。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



14歳の頃の俺はクラスの女子からオタク趣味を軽蔑されている事に気を病み、モテる方法が存在しないかを必死に模索していた。

どれだけ頑張っても、ギークはモテないという残酷な真実に辿り着いたのも、その位の年頃だ。

フェンシングチームの花形選手だったドナルド・キーンと己の格差にただただ絶望する日々だった。


さて、そんな少年時代を送った自分が恥ずかしくなる程に、眼前の少女は老成している。

コレット・コリンズ。

魔王ダンの生母にして、文字通り世界を統べる天下人である。

この歳の少女が国際社会の頂点に上り詰めることは本来あり得ないのたが、コレット・コリンズを知っていた者や会った中で疑義を呈する者はいない。

最初に会った時、彼女の立場は単なる亡命富豪の幼妻に過ぎなかったのだが、既に振る舞いに妙な太々しさがあった。

そして大魔王がソドムタウンで急速に頭角を伸ばすのと同じ速度で彼女も飛躍的な成長を遂げ、大魔王と1対の怪物である事を世間に認めさせるに至った。

その時期を支えたのがまさしくエルデフリダなのである。



「大公爵の忠勤、魔王様も摂政殿下もお喜びです。」



若きコボルト婦人のクュ07が言うと、脇息にもたれていた摂政がにこやかに頷く。

この少女が笑っている時は不快を堪えているシグナルなので、胃が痛くなる。

(ちなみに摂政が表情に不快を浮かべたら、不快のシグナルである。)



「あまり風紀を乱さないように。

大公爵は皆の模範となって欲しい。」



クュに促された摂政はため息混じりにそうコメントすると再び黙り込んでしまった。

さっきのエルデフリダ通信はよくないよなあ、俺の所為じゃないけど。

彼女の口数が少ないのは、単に俺を嫌っているからだけでなく、発言力が強くなり過ぎてしまったからだ。

最近では私的な会話すらも関係各省庁との事前調整を済ませてから行うらしい。

素晴らしい心掛けに頭が下がる。

死者数にさえ目を瞑れば理想の名君であろう。



後はクュ07と砂漠拡大問題や王国鎮定スケジュールを打ち合わせる。

摂政が退席せずに遣り取りを見守っていると言うことは、《この案件に関心がある》というシグナルであるので、俺も警戒度を高めて話す。

一度だけ、「私でも魔族を魔界から出す時は細心の注意を払っている」と指摘されたので、慌てて砂漠諸種族の運用厳格化を約束した。


ようやく世間に知られて来た事だが、摂政は極めて保守的な人物である。

好きでゴブリン衣装を纏っている訳でもなければ、好きで革新政権を樹立した訳でもない。

そもそも彼女は女が政治の場に立つこと自体を慎みがないと嫌っている。

単に夫の政治理念を尊重しつつ子を守ろうとすると、こうなってしまうのだ。



「政治に奇矯も突飛も必要ありません。」



俺が退出しようとすると、珍しく摂政がそう呟いた。

独り言のようにも俺に語り掛けているようにも感じたので、再度平伏する。



「世の中の事は殿方が決め、女はそれに従い黙って子を産むのが自然の姿なのです。」



俺の口から世間に流布させたいのだろうか?

解釈に苦しんでいると、摂政と目が合う。



「大公爵は最高顧問の人事に不満を漏らしているようですが。」



『あ、いえ。

政権のカラーとやや異なるのではないかと。』



そもそもコリンズ王朝は封建制度のソフトランディングを公約している封建王朝だからな。

エルデフリダのような貴族主義者の存在はノイズとなっている。



「皆の本音を代弁する者が存在するに越した事はない。」



『…最高顧問は発言が政権方針と異なり過ぎております。

この令和の世に封建的な価値観に寄り過ぎていると申しましょうか…

婦人の政治参加を批判したり、諸国の旧習を尊んだり…』



「皆の本音を代弁する者が存在するに越した事はない。」



摂政は再度言い聞かせるように繰り返す。



『…。』



なるほど、摂政達の本音を代弁する者も必要ではあろうな。



「大公爵は引き続き皆と上手く連携するように。」



話はそれで終わりである。

退出した俺は魔王城の周囲に設置されている各省庁のゲルに挨拶回りをした。

いつも通り、領地への補助を申請し幾つかのノルマを課された。

実質的な用事は終わっているのだが、予定通り5泊する。

大諸侯が首都に長めに滞在しておく事は、政権の安定にとってプラスになるからね。

本当は俺と摂政の協議などもリモートでやらせて貰えれば捗るのだが、これ以上不仲説が広まればお互いの致命傷になるからね、仕方ないね。



「あ、ポール。」



『まだ居たのか!?』



人工島の入り口にはエルデフリダの馬車が停車していた。

窓にもたれ掛かって退屈そうに唇を尖らせている姿は、30年前であれば可憐にも見えただろう。



「ねぇ、ポール。」



『何だ?』



「いい子にしてたからご褒美を頂戴。」



…本当にいい子で居てくれたなら、周囲の役人達はあんなにも憮然としないのだけれどもな。

これ以上交通の邪魔になりたくなかったので、エルデフリダの馬車に乗り込む。



「ねぇねぇ、お願いがあるの。」



『手短にな。』



「アマンダの息子を貴方の領地に仕官させて欲しいの。

勿論、将校待遇でね♪」



『え?

アマ、誰?』



「ワタクシのお友達よ。

ほら、年始のダンスパーティーを開いた時にピアノを弾いてくれてたじゃない。」



要はこの女の取り巻き連中の子弟の話である。

まあな、俺達世代の息子なら仕官の年頃になってるよな。

聞けば、めぼしい者はハロルド皇帝に推挙し終わったらしい。

残った箸にも棒にもかからないボンクラ共をこの女は俺に押し付け、俸禄まで支払わせようとしている。



「あ、それとリリアンヌの甥御クンには会ったことあるでしょ?」



『?』



「一緒にスカッシュしてあげてたじゃない。」



『…ああ、言われてみれば居たなぁ。』



「実家が改易されたから困ってるのよ。

もう19歳なのに仕官先が決まってないの。

何とかしてあげて。」



『アカデミーに入ったら?』



「実力で入学試験に受かるような頭はしてないの。」



『普通に働いたら?』



「普通の労働に向かない子なの。」



『軍隊に入ったら?』



「通用する訳ないでしょ!」



そんな少年ばかりの面倒を頼まれる。

まあ、この女の無茶振りは今に始まったことではないが。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



俺も眠かったのだがキーン邸に引き留められ、少年達の面接を強要された。

最強の14歳と話した直後に凡人の応対をするのは辛い。

俺もそうだったから理解出来るのだが、少年達はモラトリアム以外の何も求めておらず、仕官にしてもヒステリックな母親に強いられているだけであった。

母親の過干渉が少年達から覇気を奪い、少年達に覇気がないから母親が過干渉する。

悪夢のような循環である。

この状況で必要なのは仕官先ではなく父性なのだが、父親が存命の者は1人も居なかった。

(彼らの父の仇が摂政であることは言うまでもない。)

父親のいる家庭は、何だかんだで新時代に適応しているらしかった。


なあ大魔王、やっぱり家庭に父親は必要だよ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そんな義理もなかったのだが少年達だけを陣屋に招いた。

(俺も周囲に生かされてタイプの子供だったからね。)

案の定、母親さえ除外してしまえば彼らは健常な若者だったので、ジミーやロベールも交えて常識的な進路相談に応じる。

没落貴族のセオリーは彼らの方が詳しかったので、特に俺の助言が必要ない程であった。

話してみると彼らは愚鈍でも無気力でもない、単に怪物と同じ時代に生まれてしまっただけの被害者だった。

そりゃあね、摂政殿下やらハロルド皇帝やらと比較されても困るよね。

あんなローティーンが増えたら大変だよね。

なのに世間は自分の愚昧な少年時代を棚に上げて、現代の若者が統一政府の首班のように勤勉ではない事を責めるのだ。

人の能力は生まれつき決まっているというのに。

まずオマエらが摂政の母親や皇帝の父親の1%の功績でも挙げてから我が子を責めろよ。


そんな趣旨の愚痴を代弁してやると、若者たちの表情が少しずつ和らいでくる。

夜が更けるにつれ、徐々に彼らの本音も引き出せるようになった。

家名という負債さえなければ、ある程度は生活していけそうな雰囲気はあった。

ジミーが昔の若社長仲間の生き残りを集めて現在のリアルな経済構造をレクチャーしてくれた。

若社長グループも昔は大所帯だったが、コレット・コリンズの粛清から逃れた者は今ではたったのこれだけである。

話が盛り上がるうちに、若者達が漠然と抱いていたキャリアビジョンが徐々に浮かんでくる。

彼ら同士のディスカッションも僅かではあるが活気を帯びる。

1人計数に明るい者が居り、その者は建設会社の見学に行くこととなった。

永劫砂漠への赴任を志願した者も居るが流石に謝絶。



「大公爵閣下。

やはり危険だからでしょうか?」



『いえ、どうしても兵卒としての扱いとなってしまいますので。

皆さんにとって、きっとお辛い環境になってしまうと思います。』



「…やはり、そうですよね。

先程は母が無理を申し上げてしまいました。」



『兵卒になる覚悟があるのであれば、ハロルド陛下の徴募に応じるのが賢明でしょう。

一般的な労働を望むのであれば、職業安定センターに行けば幾らでも。』



無論、彼らの母親の望みは真逆である。

彼女達は身分が欲しいのだ。

それも貴族としての。


当然、無理がある。

現四天王や帝国皇帝ですら世襲を否定しているのだから。

例えばクレアが死ねば現在の副長官が財務長官に暫定昇格する事が明文化されている。

(副長官は合衆国の元財務官僚なのでクレアとは一切の血縁関係がない。)

ノーラやカロッゾは「戦場で斬り死する。」と公言し、実際に各地で前線指揮を執り続けている。

政権が落ち着いた今でも、自部隊の兵士達と同じ食事を取り同じ宿舎で暮らしている程である。

どうしても母親たちが身分を求めるのなら、一兵卒として従軍すれば良いだけなのだ。

摂政親衛隊の入隊試験に年齢制限はないのだから。



『栄爵は一代のみ。

そういう時代となりました。

意欲や能力のある者にとっては素晴らしい時代になったと思います。

現に実務能力・コミュニケーション能力の欠如した者が区長に成れなくなりましたからね。』



昔は酷かった、と冗談めかして付け加えると若者達が初めてリラックスした笑顔を見せる。

だが彼らも馬鹿ではないのでよく知っている。

酷かったのは昔ではなく、彼らの父達なのだ。

それを摂政が殺して回ったので社会は極めて効率化した。

彼ら以外の殆どの人民が本当に豊かになったのだ。

つまり彼らの苦境とは単に実家の没落とか仕官先の不足という次元の話ではない。

自分達の存在自体が社会正義の対極にあったという事実を突きつけられている現状。

恐怖などという陳腐な表現では到底表現しえないだろう。



『捨てれる負債は捨てていきましょう。

皇帝陛下ですらそうなさったのですから。』



リスキーな発言だが彼らにとって必要だったので最後にそう締めくくった。

若者達は「やはりそれしかないよね。」という表情をしていた。

もう結論は出ているのだ。

母親に死刑判決を出すような天下人の治世で求められている振る舞いなど1つしかないではないか。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



翌朝、キーン邸に呼びつけられる。

こちらは寝てないにも関わらず、エルデフリダは幸せそうに熟睡していた。



「ねえ、ポール♥

おはようのキスがないとワタクシ起きられなーい♪」



『…俺、君と違って忙しいんだけどな。』



こちらは本当にスケジュールが詰まっているのだが、引き留められる。

曰く、溜まった鬱憤を俺で晴らしたいそうだ。

(じゃあ、俺の鬱憤はどう晴らせばいいんですかね?)

食べ残しの冷めたスコーンを恩着せがましく押し付けながら媚態と狂態を交互に見せる様は圧巻であり、廃棄に成功したドナルドや皇帝を心底羨ましく感じた。


…参ったな。

財務部や広報部にもう一度顔を出しておきたいんだけどな。

明日はコリンズ大学で講演しなくちゃいけないし、明後日は国際運輸規格シンポジウムで祝辞を任されてるんだけど…



「まあ、いいわ。

お友達もワタクシに涙を流して感謝していたし♪」



『…あの、彼らの進路相談に乗ったのは俺なんだけど。』



「?

だから、ポールにそうお願いしたのはワタクシでしょ?

ワタクシが感謝されて当然じゃない。

あー、善行を積むと朝日が眩しいわぁ♡」



『あっそ。

それは良かったね。』



俺にはよく分からないのだが、女社会というのはそういうルールで動いているらしかった。

父親の権威は自分の権威、旦那の手柄は自分の手柄、息子の功績は自分の功績。

全員がそういう厚かましさを身に着けることによって、女の群れにも秩序が生まれるとのことである。

なので自身の才覚で権威を打ち立ててしまった摂政殿下は同性から激しく憎まれ、エルデフリダの様な寄生虫は崇敬されているのだ。


《夫と公認間男が四天王だったのだから、2枠与えられて当然!》


信じ難い話だが、エルデフリダはそう公言し続けている。

取り巻き達が真顔でフンフン頷いていたので、それなりの理屈は通っているのかも知れなかった。



「ねえ、ポール。

どうして貴方、いつもワタクシに怒ってるの?」



『…俺は世界の構造に腹を立てているだけだ。』



「あははは。

貴方って相変わらずお馬ぁ鹿さん♪

人生なんて決まり事通りに生きていればそれで済むのに♪」



『…オマエはいつも決まりなんか無視している癖に。』



「あーら、心外ね。

ワタクシ、女の法に誰よりも忠実よ。」



『女の法?

そんなものは聞いたことがない!』



「クスクス。

ワタクシ、法学部よ♪

卒論で賞を取ったこともあるのだから。

ポールが知らないのも仕方ないかも♥」



『オマエの卒論書いたの俺だっつーーの!!!

あの時期、どれだけ苦労したと思ってるんだ!!!』



「あらあらゴメンなさいね♪

それも女の法で決まっていることなの♥

ワタクシも本当は自分で頑張りたかったのよ?」



『だからぁ!!!

女の法って何なんだよ!!!』



「うふふふ♪

何十年もワタクシと過ごしてまだわからないの?」



『知るか!』



「こうやってぇ♪

優れた殿方に甘えることでーす♥

それが女の法律であり最適解でーす♪」



そう言うとエルデフリダは媚びた瞳で俺にもたれ掛かって来た。

ああ、思い出した。

昔の君はそんな瞳でドナルド・キーンに媚び諂っていたな。



『下らん。

それが法だというのか?

じゃあ甘える相手が居ない女はどうなる!?』



一瞬だけ邪悪に歪んだ唇だが、次の瞬間には誤魔化すように俺に重ねられていた。



「ねえ、ポール。

それこそ殿方が考えることじゃない?」



『…そうだな、その点だけは同意する。』



「ワタクシ達は、こうやっておねだりするだけ♪」



『願いは自分で叶えろよ。』



「くすくす。

ワタクシは全然構わないのよ?

コレットちゃんもネームバリューのある軍隊司令官を増やしたがっているしね♪

どうしようかなー?

ポールがそこまで言うのなら願いを自力で叶えるのも悪くないかな♥

丁度、ワタクシも一門衆の庇護を検討していたところだし。」



『…わかった。

アチェコフ流に関してはこれ以上不当な弾圧を受けないように配慮する。

摂政にも嘆願してみる。』



「あはははは。

いつも悪いわね。

ねえ、愛してるわよポール。

貴方だけ♥

ずっと貴方だけを慕っていたの♪」



懐かしいな。

昔の君はドナルドに同じ台詞を吐いていた。



「ねえ、ちょっとどこに行くの!?

泊まっていくんでしょ!?」



『…男の法を守りに行くだけだ。』



「ねえ、ポール!!

待って!!!

どうして怒ってるの!!

ゴメンなさい!!

謝るから許して!!!」



悪いなエルデフリダ。

オマエの我儘を叶える為には、オマエなんぞに構っている暇はないのだ。

【世間様に迷惑を掛けない範囲で女の戯言に耳を貸してやる。】

それが男の法なのだから。



エルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ



帝国皇帝ハロルド・キーンの生母。

賞金首ドナルド・キーンの妻。

統一政府の相談役最高顧問にして四天王筆頭。


昔、一度だけキスをした。

【異世界紳士録】



「ポール・ポールソン」


コリンズ王朝建国の元勲。

大公爵。

永劫砂漠0万石を所領とするポールソン大公国の国主。



「クレア・ヴォルコヴァ・ドライン」


四天王・世界銀行総裁。

ヴォルコフ家の家督継承者。

亡夫の仇である統一政府に財務長官として仕えている。



「ポーラ・ポールソン」


ポールソン大公国の大公妃(自称)。

古式に則り部族全体の妻となる事を宣言した。



「レニー・アリルヴァルギャ」


住所不定無職の放浪山民。

乱闘罪・傷害致死罪・威力業務妨害罪など複数の罪状で起訴され懲役25年の判決を受けた。

永劫砂漠に収監中。



「エミリー・ポー」


住所不定無職、ソドムタウンスラムの出身。

殺人罪で起訴されていたが、謎忖度でいつの間にか罪状が傷害致死にすり替わっていた。

永劫砂漠に自主移送(?)されて来た。



「カロッゾ・コリンズ」


四天王・軍務長官。

旧首長国・旧帝国平定の大功労者。



「ジミー・ブラウン」


ポールソン大公国宰相。

自由都市屈指のタフネゴシエーターとして知られ、魔王ダン主催の天下会議では永劫砂漠の不輸不入権を勝ち取った。



「テオドラ・フォン・ロブスキー」


ポルポル族初代酋長夫人。

帝国の名門貴族ロブスキー伯爵家(西アズレスク39万石)に長女として生まれる。

恵まれた幼少期を送るが、政争に敗れた父と共に自由都市に亡命した。



「ノーラ・ウェイン」


四天王・憲兵総監。

自由都市併合における多大な功績を称えられ四天王の座を与えられた。

先々月、レジスタンス狩りの成功を評されフライハイト66万石を加増された。



「ドナルド・キーン」


前四天王。

コリンズ王朝建国に多大な功績を挙げる。

大魔王の地球帰還を見届けた後に失踪。



「ハロルド・キーン」


帝国皇帝。

先帝アレクセイ戦没後に空位であった帝位を魔王ダンの推挙によって継承した。

自らを最終皇帝と位置づけ、帝国を共和制に移行させる事を公約としている。



「エルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ」


四天王筆頭・統一政府の相談役最高顧問。

前四天王ドナルド・キーンの配偶者にして現帝国皇帝ハロルド・キーンの生母。

表舞台に立つことは無いが革命後に発生した各地の紛争や虐殺事件の解決に大きく寄与しており、人類史上最も多くの人命を救済していることを統計官僚だけが把握している。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



異世界事情については別巻にて。

https://ncode.syosetu.com/n1559ik/


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