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【降臨86日目】 所持金6億0124万0783円 「あの月だけは俺の味方だ。」

…深夜0時19分

まだ一日が始まって19分しか経過していない事実に俺は激しく絶望していた。



「ジャンバリー♥」



「ニャガニャガー♥」



『2人共…

まずは便器内への排便を成功させるところから始めましょう(真顔)!

ああッ! ちゃんと手洗いもして!』



…おかしい。

ここは保育園か? 

それとも介護施設か?

俺は何故朝から晩までウンコの世話をさせられている?

理解出来ない、納得出来ない、そもそもこれは現実なのか?

極度の睡眠不足で悪夢を見せられている?

いや、それとも幻覚系のスキル攻撃を受けているのではないか!?



「ジャンバリー♥」



「ニャガニャガー♥」



『はーい、ちゃんと自分でお着替えましましょうねー。

ん? 脱いだ靴下はどうするんだったかなー?』



「ジャーン?」



「ニャー?」



『ん? 

脱いだお洋服はどうするんだったかなー?

さっきも注意したよね?』



「バリー♪」



「ニャガー♪」



『うん、そうだね♪

脱いだお洋服は自分の名前が書かれている袋に折りたたんで入れるんだったね。

ちゃんと出来て偉いねー♪』



「ジャン♪」



「ニャっへん♪」



『あっはっはっはっは。』



「ジャッジャッジャ♪」



「ニャッガッガ♪」



…いや、笑い事じゃないんだよ。

俺、本当に詰んだかも知れない。

松村奈々と久能木瀬里奈、この2人の相性が(俺にとっては悪い意味で)良過ぎる。

似た者同士だとは感じていたが…

ここまで意気投合して来るとは思わなかった。



「ジャンジャンバリバリー♥」



「ニャガーッシュ♥

ニャガラーッシュ♥」



…オマエらさぞかし人生楽しいだろうな。

俺のこの絶望を1ミリだけでも分けてやりたいよ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



キチガイ染みた言動で巧妙にカモフラージュしているが、この2人はまだ人間性を手放してはいない。

あの狂態は緻密な計算に基づいているのだ。


ずっとニャガバリ言っているコイツらだが、これは完全なる擬態である。

例えば昨夜のコイツらは俺が寝たと判断した途端に普通に人語を用いて会話し始めた。

厚生年金や更年期障害についての相談話が淡々と展開されていて、コイツらが社会経験豊富な大人である事を忘れさせられていた現状に戦慄させられた。


特に瀬里奈は一男一女の子育てを終えている。

(結婚が早かった事もあり息子さんは俺より年上だ。)

つまり俺にとっては親世代なのだ。

コミカルな仕草でジャンバリ言っているのを見せつけられると、ついついギャグキャラか何かのように錯覚してしまうが、実態は旦那の貯金6000万を盗んでFXとホスト遊びで溶かした屑選手権の優勝候補である。

断じて警戒を解いて良い相手ではない。


「ジャンジャンバリバリー♥」


それが声優のように作った媚声で擦り寄って来るのだから、魂胆がない筈もないだろう。


ちなみに時刻は深夜1時20分。

異常に遅い時の流れに今日も絶望する。

(これは絶対に誰かのスキル攻撃だろ…)

脳が悲鳴を上げていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



俺の目的は地球人類全員に10億円ずつ配ること。

配れば世界はどうなるか?

まず、エッセンシャルワーカーが離職してインフラは崩壊する。

そう、真っ先に人が抜ける業界は【清掃】。

それは間違いない。

君だってそうだろう?

カネに困ってもいないのに、他人の出したゴミやウンコを片付ける仕事をするかい?


逆に議員や官僚といった権力者は地位にしがみつく。

それらの職業には報酬価値以上に、ステイタスが備わっているからである。


すると、どんな現象が発生するか?

この目で見た訳ではないが断言出来る

権力者が強権を以て大衆を使役しようとするのだ。

まずは高額紙幣の無効化と、自分達にだけ適用される抜け道作り。

奴らは必ずそうする。

それこそが聖戦の号砲であると頭で分かっていたとしても。


分配後の社会では正統性・軍事力・大衆支持の3つを兼ね備えた指導者しか生き残れない。

いや、元来指導者とはそうあらねばならないのだ。

俺の分配を起点に地球上から全ての紛い物を抹殺し、後世に語り継ぐ規範を作り上げる。

この浄化作業は第一段階なので10年以内に済ませてしまいたい。


無論、地球圏は大混乱に陥るだろう。

だが、混迷に対して傍観者であってはならない。

人道を無視した変革など、唾棄すべき蛮行に過ぎないのだから。

よって、俺は地球改革の死者を10億以内に収めると決めている。

そこが長く苦しい人類再生のスタート地点。


その為にも、異世界で行った実験の結果を知りたいのだが…

この2人がいる限り、ポール直通スマホは触れない。

一応ロックは掛けたが突破されるのは時間の問題だろう。

(松村は俺の就寝中に指紋を採取して来たしな。)

なので早急にコイツらを撃破する必要がある。

一応手は打ってあるのだが、どうなるかな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



時計を見ると、2時13分。

時間が一向に進まない。

秒針って、もう少しスムーズに刻むものじゃなかったか?



「なあ、トイチィ。」



「ジャンバリィ。」



『何ですか、2人とも。』



「奈々ちゃんがカネ出してやるから、もっと都会で暮らそうぜ♪」



「バリバリ♪」



『あいにく、誰かさんの所為で指名手配中でしてね。

身動きがとれません。』



「あ、パチ子の旦那に匿って貰うってのはどうニャ?」



「ジャンジャン❤」



『いやいや。

カネを盗まれた上に厄介事を持ち込まれるとか、旦那さん可哀想じゃないですか。』



「わかったわかった。

じゃあ、奈々ちゃんがパチ子の旦那にカネを恵んでやるニャ。」



「バリバリ―❤」



「え!?

取り分は97%でいいって?

パチ子、オメーは欲が深すぎだニャ。」



『旦那さんへの補償は賛成ですけど、私から盗んだカネを自分の物みたいに言わないで下さいね。』



「ギクッ。

さ、さあて、何を言ってるのか分からないニャ。

ピロピ~♪ (すっとぼけ口笛)」



「バリリ~♪ (海物語BGM口笛)」



…くっそ、俺だけ難易度高すぎだろ。

このスキルを持った時から抱いていた虜囚への危惧。

またもや陥ってしまったな。

しかもコリンズ母娘に比べて、コイツらは人間としての質が異常に低くて疲れる。

今思えばアイツらは上澄みだった。

まあ、政治に口を出さない分、ニャガバリの方が遥かにマシなのだが。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



午前2時32分。

もう時計は見ないと固く決意。



「なあ、トイチィ。」



「ジャンバリィ。」



『何ですか、お二方。』



「あんまりカリカリするとお肌に悪いニャぞ。」



「バリバリ。」



『ご安心下さい。

私は至って冷静です。』



「ほっ、良かった。

焦らせるなよー♪

奈々ちゃんがFX会社を破綻させた件を怒ってるのかと思ったニャガよ❤」



「ジャンジャン❤」



『え?』



「ニャ?」



「ジャ?」



「「『…。』」」



『…先生、その話は初耳ですが?』



「えー、そうだったかニャ?

単にトイチの所為でFX会社が破綻しちゃっただけニャ。

ニャハッハッハ♪」



「ジャッジャッジャ♪」



『…それは先日、先生が私に《FX口座を預ける》と仰られた話ですか?』



「ニャガーハッハッハwww

ついうっかり大手金融機関の子会社を潰しちゃったニャ❤」



「バリバリ❤」



『いや、絶対最初から奪い尽くすつもりでしたよね?

貴方ってそういう人ですよね?』



「まあまあ♪

オメーの大嫌いな資本家を代わりにやっつけてやっただけニャ♪

そう怖い目するなよぉww」



「ジャンジャンww」



『詳細な報告を要求します!』



「ハイハイ、報告すればいいんニャろ報告すれば。」



「バリバリ、オレノナヲイッテミロオレノナヲ。」



松村が俺に一筆書かせたFX会社は3000倍というハイレバレッジで取引が可能な会社だったそうなのだが、同社にはにレバ無制限のオプションもあったらしい。

この女は本当に無制限攻撃を敢行して、洒落にならない金額を仮想通貨で引き出したとのこと。



「なあ、トイチ。

奈々ちゃんがオメーの事を気に入ってるのは本当のことニャ。

ん? 時計買ってやろうか?

あ、車買ってやるニャ。

ん?

ロータスとかジャガーとかはどうニャ?

2人で深夜のエロエロドライブと洒落こもうぜ❤

それともタワマン?

タワマン買ってやろうか?

一緒に六本木に住もうぜ♪」



『…。』



「えーーー、何その反応?

HEY!HEY!HEY!

折角大金ゲットしたんだから楽しくやろうぜー。」



「バリバリ―❤」



「よっしゃ、パチ子にはパチンコ屋買ってやんよ♪」



「アニヨリスグレタオトウトナドイネー❤

アニヨリスグレタオトウトナドイネー❤」



「いやあ、それにしてもアプターFX様様だよニャ―www

親会社もヤバいらしいし、養分乙ーーーーwwww」



アプター!?

聞き覚えがある。

孝文の勤め先がそんな名前だった気がする。

ということは、英国資本?

と言うより、子会社の破綻は親会社にまで波及するんだよな?



『先生、その話を詳しく教えて頂けませんか?』



「あーーん?

吸い尽した抜け殻には興味ないニャ。

自分で勝手にニュース見ればぁ↑?

そんな事より、青森脱出計画練っとけよ。

こんな糞田舎、二度と来ねーからな。


おいパチ子、オメーも連れてってやるから、遊びに行く国決めようぜー❤」



「ジャンジャンバリバリーーーーー❤」



「あ、分かる!

やっぱり海外旅行と言えばバリ島だよニャ!」



「ジャンジャンパリパリーーーーー❤」



「お、フランスもいいねえ。

パリは治安悪いって聞くけど大丈夫かニャ?」



瀬里奈が無造作に差し出してきたタブレットの記事を読む。

(そう、この女は経済ニュースを把握する知能はちゃんと残っている。)

英国最大手(欧州3位)のFX会社であるアプターFXトレード社の資金繰りが突如として悪化、顧客に対して預かり資産の引出停止を一方的に宣言したとのこと。

不足金額は80億ポンド以上にも及ぶとみられ、親会社のアプター銀行が火消しに奔走中とのこと。

その為、英国は阿鼻叫喚の地獄に陥っており、この破綻劇の被害者と思われる自殺者が大量に発生している模様。



『…先生、ロンドンが大変な事になってるみたいです。』



「へー、そいつは大変ニャガねw

おいパチ子、英語圏はやめてタイで遊ぼうぜ♪」



「ジャンジャンパタパター❤」



「お?

パタヤ希望?

わかってるニャガねーww」



「ジャーッジャッジャww」



「ニャーッガッガww」



『先生。

これ以上の狼藉は認めません。

直ちにFXを停止するように。

少しは世間を憚って下さい!』



「チッ うっせーな。

反省してニャーす。」



「パチッ パッチージャン。

ジャンジャカジャーン。」



やれやれ、今度こそイギリスは本当に駄目かもな。

ビックベンの鐘の音、諸行無常の響きあり。

猛き者も遂には滅びる、か。

敵とは言え亡国に立ち会うのは空しいものだ。

今夜は脳内でブリカス鬼畜所業打線を組んで奴らの冥福を祈るとしよう。


…それにしても松村め、人の獲物に勝手に手を出しやがって。




「なあ、トイチー。」



『何ですか先生。』



松村の声に振り向いた表紙に時計が目に入ってしまう。

午前2時59分。

認めたくはないが、この一日が終わるまで21時間も耐えなければならない。



「解放してやるから手錠の外し方調べとけニャ。

でも、オメーとのパーティーは未来永劫解消しねーから。

オメーは一生奈々ちゃんのウンチ係な。」



『どういう風の吹き回しですか?

この手錠、外さないとか言ってませんでした?』



「飽きたニャ!」



『分かりやすい理由ですね。』



「でもオメーの身体にはまだ飽きてねーニャ❤」



『私は貴方の尻拭いに辟易しているんですけどね。』



「ニャハッハw

じゃあ、小峠事件の尻拭いをしてやった件はチャラにしてやんよ。」



『…そいつはどうも。』



「なあ、もう手錠プレイは十分だろ。

1時間だけ自由時間と行こうぜ。」



『え!?

1時間!?』



「ニャ?」



『じゃあ1時間経ったらどうするんですか?』



「いや、普通に再逮捕するニャ。」



『先生、よくこんな不自由な生活続ける気になれますね。』



「女は好きな人と一緒に居れるなら、どんな困難でも乗り越えられるニャ!

なあ、パチ子!」



「ジャンジャンバリバリ?」



「マジかー。

オメーにとって旦那の命はパチンコ玉より軽いのかー。」



「ジャンバリ❤」



「カネ盗られた上にこの態度、幸春さん可哀想ニャ。」



「ジャッジャッジャww」



「トイチー。

オメーは恩師様に対してゴチャゴチャ言うけど

奈々ちゃんはまだ穏健派だからな?

主婦は全員もっとエグイからな?」



『もう私、人間という生き物に絶望しそうです。』



「安心しろ、トイチ。

奈々ちゃんの愛情でオメーを救ってやるからな。

とりあえず1時間だけ手錠外せ。

それで後は未来永劫無限輪廻な。」



『え!?

未来永劫無限輪廻!?』



「奈々ちゃんパーティーメンバーぞ?

後、マスコットキャラにしてメインヒロイン。

だから、ずっといっちょ♥」



『1人そんなに独占して欲張り過ぎでしょ。』



「大谷に言えニャ。」



『大体、先生の恋人って荒木や鷹見でしょ?

アイツらに悪いとか思わないんですか?』



「だってトイチが一番カネ持ってるし。

ケツの拭き方も上手いし。

今年のノーベル尻拭き賞にオメーを推薦しといてやるニャ。」



『そいつはどうも。

貴方達、似た者同士なんだからもっと仲良くすればいいのに。』



「一応、付き合いはあるニャ。

関係を完全に絶ってる訳じゃないニャ。」



『へえ。』



「例えば、夜色とヒルダ。

3人でLINEグループを作ってるニャ。

ちなみにグループ名は「BBA回覧板」ニャ。

あの2人に対して同時に連絡を取れるのは奈々ちゃんだけ。

その一点だけでも、計り知れない価値があるニャ。」



『…ふーん。

あんなに派手な殺し合いをしておいて、繋がってるんですか?』



「あんなもん軽いジャレ合いみたいなもんニャ。」



『いや、昭和の工業高校じゃあるまいし。

じゃあ、人間関係は上手く行ってるんですね?』



「ほれ、見てみ。」



無造作に松村がスマホ画面を見せて来る。

鷹見とヒルダが煽り合ったり、そうかと思えばファッションブランドの話題で盛り上がっていた。

たまにメイク相談などもあり、内容が案外と女子っぽい。



『いやいや!

アイツら滅茶苦茶仲いいじゃないですか!!!』



「あの2人は《同性との慣れ合い大嫌いコンビ》だニャ。

慣れ合いへの嫌悪を通じて慣れ合ってるニャ。」



『何ですか、そのトンチ話は。』



画面をよく見ると、レインボーブリッジ事件の後にお互いの傷跡をアップし合って、楽し気に殺害予告を交わしている。

満面の笑みでのファッキンジェスチャーを送り合う2人。

相思相愛じゃねーか!

俺は分かりたいとすら思わないが、鎌倉武士なら理解可能なのかも知れない。



『ん?

これは動画?』



「ああ、これは大BBAがアップしたオメーのハメ撮りだニャ。」



『え?』



「え?」



『いやいや!

この動画、私が映ってるじゃないですか!!!

モザイクすらなしで!!!

どうしてこんな酷いことするんですか!!!』



「え?

女はみんなやってるけど?」



『え?

そういうもんなんですか?』



「女の仕事はトロフィの誇示だからニャ。

オメー程のレア物をハメたら普通は撮るだろ?

あ、奈々ちゃんも撮ってたの気づかニャかった?」



『え!?

いや! そんなの聞いてないですよ!!』



「ジャンジャンバリバリー❤」



『うわっ!!!

瀬里奈さんまで!!!』



「おいおい、トイチー。

今はもう令和だぜ?

ハメ撮りくらいでゴチャゴチャ騒ぐニャよー。

アップデートして行こうぜ♪」



「イマハアクマガホホエムジダイナンダー❤

イマハアクマガホホエムジダイナンダー❤」



『ちょ!!!

その動画消して!!!

消して下さい!!!』



「ニャッハッハ♪

安心しろニャ。

全宇宙に拡散するとしても、まずはあの2人の脳を焼き終わってからニャ❤」



『私、スマートホン利用犯罪の厳罰化も公約に加えます。』



「えー、厳罰化やめようぜー。

奈々ちゃんに不利じゃーん。」



『特にリベンジポルノ行為は徹底的に取り締まらせますから。

非親告罪化に向けて尽力します。』



「えー。

恩師三大奥義の一つ、奈々ちゃんリベンジャーが制限されちゃうニャ―。」



『ロクなことしないですね、貴方は。』



あまりの苦痛に時計を見ようとして寸前の所で留まる。

危ない危ない、どうせまだ1時間しか経ってないってオチだろ?

その手には乗らねーよ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



その後、俺との会話に飽きた松村は瀬里奈と談笑を始める。

話題はホストとFXを延々ループ。

あまりの下らなさに、更なる時間系攻撃を実感する。

長い地獄に晒され、俺の精神が崩壊しようかという寸前。

福田魁入室。

あまりの頼もしさに思わず抱き付いて号泣してしまう。



「トイチー。

そぎゃんのは男色趣味ん奴にしてやれ。」



『ひっぐひっぐ辛かったですぅ。』



「そう言えば福田はTSトイチに動じないけど、ヘテロ徹底してる感じニャのか?」



「俺達肥後人はそん手口で国ば盗られとるけんな。」



「フフフ、いずれトイチが日本武尊になるとでも言いたいのかニャ?」



「既に功績も移動距離も遥かに超えとる。

それにコイツは騙し討ちもしとらんしな。」



「おっ、随分高く買ってるニャ♪」



「キサンらもそう思うとるけん必死にしがみついとるとじゃろ?」



「ははは、そんな所ニャ♪」



「ただ、所詮女んやり方ばい。」



「…何が言いたいニャ?」



「金ん卵欲しさに腹ば裂く馬鹿ん話ば思い出したってことばい。」



「安い挑発は無駄ニャ。

奈々ちゃんは死んでもトイチを手放さないニャ。」



「手放した方が有益になったらどぎゃんする?」



「ニャハハw

その時は紙屑ポイっニャ♥」



「なら、もだえた方がよかかもな。」



「テメーはさっきから何を言ってるニャ?」



「神奈川にあるキサンの自宅マンションに家宅捜索が入る。」



「ニャッ!?」



「どうせ、見られて困る物があるとじゃろ?

早めに帰った方がよかとじゃなかか?」



「…そ、その手には乗らないニャ!

初歩のブラフで奈々ちゃんを動揺させる作戦だニャ!

大体ッ、神奈川県警が仕事する訳ないニャ!」



「そう思うなら勝手にそう思えばよかとじゃなかか?

俺なら県警ん公式SNSば見てから判断するがな…」



「くっ!?

SNSぅ〜!?

そんなモンで何が…。 (スマホポチポチ)」



「キサンも俺ん同類やろうけん、摘発発表ん偏りば見れば、何ば重点的に取り締まろごたるか分かるやろう?」



「グッ!!

県警の狙いは明らかに大麻!

しかもこのペースは明確に数値目標が設定されているパターン!」



「うん、俺もそら感じた。

そんタイミングで通報があったとすりゃ?

令状なしでも踏み込むる口実ば絡めた通報やったとしたら?」



「ま、マズいニャ!

今、立ち入られたら奈々ちゃん自慢のAI搭載全自動大麻量産プラントが発見されてしまうニャ!

しかも70㌔相当の備蓄を見られるのはマズい!

おまけにリビングに誇らしげに貼ってある生徒ハメ撮りコレクションは未成年者の性的搾取が問題視されてる昨今!

裁判員の印象を著しく損ないかねないニャ!!!

ぐぬぬ、これは確実に一発実刑コース!!!」



それにしてもこの女は悪い事ばっかりしてるな。

誰だよコイツに教員免許交付した馬鹿は。



「どぎゃんする?

今ならたまたま手元に工具あるばってん。

切断してやったっちゃ構わんぞ?」



「グニュニュニュ!

折角、太い金蔓を確保したのにぃ!!」



「ふっ、なんもかんも思い通りぎゃ行くとは思わん事ばい。

週内には家宅捜索あるらしいぞー。

トイチば連れて首都圏に戻るんなやおいかんとじゃなかか?」



「ニュニュニュニュ!!!

今から戻って証拠隠滅!!

大急ぎで関係者との口裏合わせを済ませても…


…ハッ!?

この絵を描いたのは、まさか…

図ったニャ! トイチッ!?」



『くすくす。

さあ、何のことでしょう。

すかすー♪ (口笛を吹こうとして失敗)』



「おにょれおにょれおにょれ!!

トイチの分際で生意気な手を使いニャガって!!

県警まで動かすとは!!

この卑怯者がああああ!!!!」



『うふふふ♪

卑怯? 最高の誉め言葉ですぅ~↑www❤』



「キーーーーーーー!!!!

口笛一つ吹けないボンクラにいっぱい食わされるとはああ!!!!

しかも煽られるとわぁああああ!!

ぐや゛じい゛ー!!! (ジタバタジタバタ)」



結局、松村は手錠の切断に同意。

一筆書かせた上で、手錠の残骸はこちら側で回収。

(この女に渡すと法廷闘争の道具にされかねない。)

瀬里奈の車に乗せて貰って急ぎ神奈川に戻るらしい。



「ぐおおおおおおお!!!!!!

折角、金蔓確保したニョにいいい!!!!

悔しい悔しい悔しい悔しいーーーーッ!!!!」



『くすくすくすww

安心して下さい❤

刑務所には千羽鶴でも送ってあげますからぁ↑www』



「うっきーーーーーーーー!!!!

トイチの分際で生意気だニャーーー!!!!」



『あははは♥

負け猫の遠吠えが心地良いですぅ↑ww♥』



「ハアッハア!!

これで勝ったと思うニャよ!!!


例え奈々ちゃんが滅びても

人の心に闇がある限り第二第三の…」



「ジャンジャンバイバイーーー♪」



瀬里奈が爽やかに笑うと、冗談めかした投げキスを挟んでから車を発進させた。



「ちょっ!!!

パチ子!!!!

まだ奈々ちゃんのターンは終わっ (声が遠くなる)」



『くすくす♥

これにて一件落着ですぅ、ぶい♥』



やれやれ一時はどうなるかと思ったが…

福田→羽黒衆→江本のリレーが上手く機能したな。

何とか県警を動かす事が出来た。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



さて、茶番は終わりだ。

俺は松村が去るのを確認してから、入れ違いに地元・神奈川からの来客を迎える。

神奈川県警本部のベテラン刑事。

古屋正興警部補。

江本が上手く接触してくれた。

この古屋に松村退治を遂行させる様に福田経由で指示していたのだ。

第一候補は新宿署の水岡警部だったのだが、彼は既にヒルダ派に認知されている。

なので第二候補の古屋に繋いだ。

この男は俺にとっての奥の手として最終局面まで温存しておきたかったのだが…

…松村の所為で意味のない場面での投入を強いられてしまった。



「し、しかし…

本当に意外でした。」



『えー❤

何がですかぁ❤?』



「あ、いや。

遠市猊下がまさか女性化してしまうとは…

いやラノベでは散々見た展開ですし、TSジャンルも網羅はしているのですが…

まさか自分がTSヒロインから性的な接待を受けてしまうとは…」



『うふふ❤

古屋さんが県警を動かしてくれたおかげで助かってますからぁ❤

公務員におカネを払えない以上、Hなご褒美をあげなきゃ、でしょ❤』



「…いやあ、女房なんかより遥かに良かったです。」



『もー❤

奥さんが可哀そうー♪』



「では手筈通りに神奈川に戻り、松村奈々の調査を…」



『あ、その前にですねぇ❤

古屋さんにはもう一つご褒美を用意していたんですぅ❤』



「え!?

こんな事までして下さって、更に何か!?」



『じゃーーーん❤

リン子の秘密道具の一つ♪

異世界スマホーーーっ❤』



「え!? え!? え!?」



『うふふふ❤

見た目は普通のスマホなんですけどぉ❤

超テクノロジーなんですぅ❤』



「ゴクリ!!」



これで繋がらなかったら、どう謝ろうと思いながらも電源を入れる。

ポールがまだ死んでませんように。



《ザーザー ザーザー》



雑音が砂っぽかったので、少し安堵する。

数秒してスマホ画面に砂漠が映る。

何かを察した古屋が昂奮混じりの笑みを浮かべた。



『えっと、ポール…』



言い掛けた瞬間、受話器から緊張した声が飛び込んで来る。



「大魔王様でありましょうか!?」



『あ、はい。

とお…  リン・コリンズです。』



「おお!!

話が本当だったとは!

コリ… ソドムタウンのミスリル配布ではお世話になりました。

ポールソンの義弟、ニックです。

ニック・ストラウド。」



『ああ!

ニックさん!

御無沙汰しております!

葬儀の時は大変お世話になりました!』



俺は異世界で合同慰霊祭を開催した事がある。

その時、このニックなるスラムの顔役が葬式饅頭の配布を手伝ってくれたのだ。

俺と1歳しか違わないのに、既に男としての風格が備わっており羨望した記憶がある。



「大魔王様!

連絡は光栄なのですが、兄ポールは未曽有の政治的窮地にあります!

最近では隣領の領主が我々の通信を傍受しようと画策しているのです!

手短に!」



『ああ!

申し訳ありません!

では手短に2点だけ!

一点目はポールさんの安否確認!』



「ご安心下さい!

先程、容体が峠を越えました!

まだ意識は戻りませんが、命に別状はないということです!

私の背後に居られるのが治療に尽力して下さった、遊牧ゴブリンの呪術師・イビラジャン老師です。」



背後には懐かしいゴブリンの顔立ち。

《遊牧》と言う事は魔界に居たゴブリンとは民族が異なるのだろうか。

少なくとも、ここまで角を伸ばしているゴブリンを見たのは初めてである。



『ありがとうございます!

その確認が出来て安堵致しました!

イビラジャン老師!

我が盟友を救って下さったことに深く感謝致します!』



  「おお!

  これは大魔王様!!

  この愚老に温かいお言葉…

  冥途の土産とさせて頂きます!」



『次に2点目!

私からそちらに人員を派遣する場合!

これなる古屋正興を使わせます!

地球では警吏の職務に30年従事しており、現在は12名の部下を監督する管理職。

加えて、学生時代は柔道なる体術のトーナメントで優勝した経験もあります。

この体格を見て頂ければ分かる通り、オーラロードを渡り切るだけのタフネスは備えているものと考えます。』



「申し訳ありません!

傍受対策で画像受信機能は切らせて頂いております!

ですので、私からは御尊顔を伺う事が出来ておりません!」



『それは失礼いたしました!

では話を続けます!

また、そちらが止む無く地球人を召喚しなければならない事態に陥った時も。

個別召喚が可能であれば、必ずこの古屋を呼び出されますように。

私の分かる範囲で引継ぎを行っておきますので!


古屋さん、ちゃんと挨拶して!』



  「は、はい!

  自分は古屋正興であります!

  神奈が… 大魔王様の居住する県で…

  警吏を務めております!」



「ご丁寧な挨拶痛み入ります!

私はニック・ストラウドと申します。

義兄ポール・ポールソンの馬廻衆を監督しております。

古屋様、略式でありますがパスを開きます!

概念としてのニック・ストラウドに古谷様の魂魄を紐づけることの許可を頂きたい!」



  「はい!

  私、古屋正興はニック・ストラウド様の概念に魂魄の紐づけを許可します!」



「宣誓します!

私、ニック・ストラウドは自らの概念と古屋正興氏の魂魄を紐づけ致します!


自分は無学者ですので、これから話す内容は全て耳学問に基づいた事ですが!

以降、召喚行為に私が立ち会った場合。

それがどれほどランダムな術式であったとしても、9割以上の確率で古屋様が呼び出されます。

或いは不本意なタイミングになってしまうかも知れませんが、宜しくお願い致します。」



  「はい!

  心の準備は出来ております!

  いつでもお呼びつけ下さい!

  そちらに骨を埋める覚悟です!」



「ご理解のある発言に感謝します。

古屋様にお目に掛かれる日を楽しみにしておりますね。


それでは大魔王様!

今回の大魔王様との交信、兄の安否を心配して下さった事。

また武官の派遣をご提案下さった事!

必ずや家中で共有する事を約束致します!

大魔王様直々にお声掛け下さったにも関わらず、最小限の往還となってしまった事を心よりお詫び申し上げます!」



『いえいえ!

こちらこそ突然一方的に申し訳御座いませんでした!

ポールさん、ニックさん、その他の皆様の御好運を心よりお祈り申し上げております!』



「早急に通信体制を整えることを約束致します!

それでは!」



俺は何か気の利いた事を言おうとしたが、通信は切れていた。

こちらの主電源は入ったままなので、向こうが通信機を切ったのだろう。

まあいい。

ポールの無事を確認出来た上に、即興ながら連絡体制構築への道筋も整った。

出た目は悪くない。



「あ、あの…

遠市猊下。」



『古屋さん。

サプライズになっちゃってゴメンなさい。』



「あ、いえ。

それは構わないのですが…」



『ん?』



「大魔王様… というのは?」



『向こうでの私の呼称です。

カネで買った肩書ですので、敬意は不要ですよ。』



「あ、いえ!

彼らの口ぶりから、そういう域の話ではないと理解出来てしまいました。

信じます!」



『あははは。

警察庁全体で詐欺防止キャンペーン中でしょ。

古屋さんはプロなんだからもっと猜疑心持ってもらわなきゃw

ここは《異世界なのに日本語通じるのおかしいだろー》とかツッコむ場面ですよ。』



「…詐欺も何も我々地球人と顔立ちの彫りが違うじゃないですか。

さっきのストラウド氏は、ゲルマン系に近かったですが、あの眼窩は見た事がありません。

また、言語と唇の動きが全く異なっておりました。

聞こえていたのは音声ではなく、指向性の思考でした。

…なので詐欺ではありません。

そもそも、あんな高度な技術があっても、日本の末端警官如きに使ってくれませんので。

流石にそこは身の程を弁えております。」



『そうですか。

じゃあ、これで約束は半分果たせたものと認識して構わないですね?』



「ええ、半分なんてものじゃありません。

まさか人生でゴブリンを見る機会があるなんて…

感動です。

あの、大魔王様とお呼びした方がいいですか?」



『あはは。

ここは地球ですよ。

気軽にリン子と呼んで下さい。』



「はい、リン子様!」



その後、古屋に簡単な引継ぎを行う。

集団転移事件の真相、王国と神聖教団。

スキルによる天下平定、魔界と自由都市。

四天王を始めとした人間関係、俺が重要だと思った順に伝達しておく。



「その体験!

なろうに書いたら書籍化狙えますよ!!!」



『あ、いや。

流石に皆のプライバシーを晒す訳には。

遺族感情も刺激してしまうでしょうし。』



「た、確かに。」



『何らかの事情があって向こうでの体験を発表する場合ですが。

私に印税は不要ですので、金銭的利益が発生してしまった場合、級友達の御遺族様に分配するとしましょう。』



「流石のご高配です!

一生リン子様に付いて行きます!!」



まあな。

ヤラせてくれた相手がカネと権力持ってて、かつ異世界にも飛ばしてくれるのなら、大抵の厭世者は服従するよな。

俺だってそんな相手には逆らわない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



必要な情報を交換し終わると古屋はすぐに関東に帰る。

明日の出勤に備える必要があるからな。

勤め人の日常は過酷だ、ライトノベルに救いを求める気持ちも痛いほど理解出来る。



皆が居なくなって随分広くなった寝室に大の字になって寝転ぶ。

ようやく一人になれた。

…俺は元来、リーダーや家庭人に向いてないのだろう。

こうして1人で居るのが堪らなく心地良い。

荒木の言う通り、山奥で念仏でも唱えているのが性に合ってるんだろうな。



目を閉じて寝返りを打った時に異物感を感じる。

ポケットに覚えのない何かが入っていたのだ。



…何だ?

ルアー?



あ!

これはエドワードのルアー!!

…そうか、瀬里奈はこれを渡しに来たのか。

エドワード→児玉秀峰→児玉繭子→久能木瀬里奈の流れだな。


つまり現在の所、エドワードが無事であるという意味だろうか?

しかし、何故ルアー。

何らかの意味付け?

【釣り】 【罠】 【トラップ】 【誘因】

…まあ、順当に考えて俺が安否報告にわざわざルアーを持たせるとしたら、《監視下にあるから、俺は釣り餌だから会いに来るな》というメッセージを伝えたい時だけだよな。


俺はルアーを慎重に見返す。

傷が2本平行に長く入っている。

釣りの途中についた傷ではない。

明らかに人為的に付けられたものだ。

エドワードが咄嗟に付けたとしか考えられない。

これだけ長い平行線は《気づいてくれ》という意図だ。

少なくとも俺なら、そういう感情を伝えたい時にそうする。

ならば、児玉夫妻を含む千葉組に逢いに行くのは控えた方が良さそうだな。


瀬里奈の意図は分からないが…

このルアーに関しては松村の目を盗んで託してくれたと考えても間違いないだろう。

あの女は典型的な両天秤タイプ。

俺が一定の力を保持している限り、完全な敵に回る事もないだろう。


ただ、魅力も能力も俺よりも松村の方が遥かに上なんだよなあ。

俺が瀬里奈なら、松村に軸足を置くかな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『福田さん。

ちょっと相談いいですか?』



「男色以外ならな。」



『今から超常するんですけど、立ち合います?』



「ああ、そろそろ17時ばい。」



『あの糞猫が居ないと一瞬で日が暮れるんです。』



珍しく福田がクスクスと笑う。



「面白か教師ではあるな。」



『まあ、何だかんだで恩師ですよ。』



福田は「何かあったら呼べ」とだけ言って隣室に戻る。

そうだな。

ようやく一人になれたのだ、頭を整理したい。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


5億9125万0783円

  ↓

4億9125万0783円


※1億円が紛失。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



まず銭勘定。

何度数え直しても丁度1億円足りない。

アイツら最後の最後まで糞だったな。


まあいい。

17時までは思考整理に勤しもう。


まず現在の状況だ。

俺は八甲田山の麓に潜伏中。

今は観光シーズンだが、すぐに寒くなるので古傷のある俺が長居するべきではないだろう。

軍人が遭難死した事件で有名になるほどの土地だからな。

何より松村が出発と同時に俺を売った可能性が高い。

(先程見せて貰ったヒルダ・鷹見との3人LINEグループを思い出して思わずクスリとする。)


安全策を取って八甲田からは距離を取るべきだろう。

問題は、この立地から陸路で繋がる都市が、八戸市・青森市・弘前市・盛岡市と限られていることだ。

夜陰に紛れて大きく距離を取るべきだろうな。

海路は止めた方がいいと思う。

つい先日に仙台港や大洗港が鷹見派に襲撃されている以上、各港湾の監視は継続されていると認識すべきだからである。


まあいい。

この辺の思考は福田に丸投げしよう。

俺はただカネを出す事に専念する。


幸い、16時58分。

まずはカネを出す!



《1億1299万円の配当が支払われました。》



俺は素早くカネをかき集めて数える。

何度も頭の中で銭勘定して複利の増幅具合を整理する。


…驚いた。

松村さえいなければ、こんなにもスムーズに作業が進むのか。

やっぱり仕事って誰とやるかが重要だよな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


4億9125万0783円

  ↓

6億0424万0783円

  ↓

6億0324万0783円

  ↓

6億0224万0783円

  ↓

6億0124万0783円



※配当1億1299万円を取得

※福田魁に特に理由なく100万円支給

※寒河江尚元に特に理由なく100万円支給

※毛内敏文に特に理由なく100万円支給



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「あの、リン子様。」



『ああ、寒河江さん。

お疲れ様です。

何か?』



「あ、いえ。

さっき福田さんからこんな大金を頂いて。

リン子様が下さったと。」



『ああ、言葉足らず恐縮です。

えっと、そのおカネは休業補償という形で受け取って下さい。』



「いえいえいえ!

私、しがないタクシー運転手ですよ!?

こんな大金を頂く訳には。」



『まあまあ。

先日、寒河江さんが助けて下さったポールソン。

彼、一命を取り留めたらしいです。』



「おーーーー!!!

それは良かった!

気になってたんですよ!」



『改めて御礼申し上げます。

友の力になって下さり、ありがとうございました。』

そのおカネは謝礼です。

貴方には感謝しているので、後日正式な御礼をさせて下さい。』



「いやいや!

私、何の役にも立ててませんし。


あ、そうだ!

じゃあ何か仕事を割り振って下さいよ。

報酬分は働かないと面目が立ちません。」



期せずして、そんな話の流れになったので福田・毛内と3人で俺を安全圏に逃がす算段を図らせる。

3人に話し合わせている間、俺は淡々と荷物整理。

それが終わると仮眠。

ここ数日、糞猫に見せられていた悪夢を取り戻さなければならないからな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



久々の熟睡。

夢すら見なかった。

余程、脳が疲れていたのだろう。


目覚めた今、背中の寝汗すらも心地良い。

窓の外に浮かぶ八甲田の月。

美しい。

そう、あの糞猫さえ居なければ、世界はこんなにも美しいのだ。

気が付けば涙が流れていた。

ああ、これが自由なのだ。

俺、幸せだよな。

零れ落ちる涙を拭いもせずに、ぼやけた月を眺め続ける。



「トイチ、起きたんか?」



『はい。』



「俺もここから離るるとは賛成や。

飛行機は当然使えんとして、繁華街は避けよごたるばいばい?」



『ええ、繁華街はヤクザとセットですし、我が国のヤクザは鷹見シンパらしいので。』



「かて言うて田舎もいかんよな?」



『目立ちますからね。

この八甲田も長居すればすぐに噂になります。』



「よし、一旦北へ向かうぞ。」



『…北海道ですか?』



「ああ、東北ん中はどぎゃんしてん目立ってしまうけんな。

文字通り転々と動いた方が賢か。

こん季節、北海道なら観光客の多かけん余所者でん誤魔化しやすか。

但し札幌市街は避くる。

特にすすきんには組関係者も多かし、キサンの言う通り鷹見シンパやろう。」



『了解しました。

ルートも宿もお任せします。

私はカネを払う事に専念させて下さい。』



「わかった。

今、出発するばってん大丈夫か?」



『ええ、支度は全て終わっております。』



俺、先週位まで東京に電撃帰還する計画を練ってたんだけどなぁ。

北海道かぁ…

なーんか、どんどん追いやられるよな。

まあ砂漠で遭難するよりマシだけどさ。


松村経由で俺の足取りを追われそうなので、これからはもう少し曲線的な逃げ方をしてもいいかもな。

まあいい、あの月だけは俺の味方だ。

【名前】


遠市・コリンズ・リン子・厘



【職業】


便所紙

ホステス

パチンコ台


神聖教団 大主教

東横キッズ

詐欺師



【称号】


淫売

賞金首



【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)


《LV》 23

《HP》 ポールよりはマシ

《MP》 気分スッキリ♪

《力》  メスガキ

《速度》 神出鬼没

《器用》 ライジング・カード!

《魔力》 悪の王器

《知性》 奸佞邪智

《精神》 絶対悪

《幸運》 的盧


《経験》 6673万3045


本日取得  0

本日利息 1247万8537


次のレベルまでの必要経験値1715万3025


※レベル24到達まで合計8388万6070ポイント必要

※キョンの経験値を1と断定

※イノシシの経験値を40と断定

※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定

※クジラの経験値を13000と断定

※経験値計算は全て仮説




【スキル】


「複利」 


※日利23%

下4桁切り上げ 




【所持金】


6億0124万0783円




138万BTC  (下4桁切り上げ)

  ↓

170万BTC



56万XRP (下4桁切り上げ)

 ↓

69万XRP



56万SOL (下4桁切り上げ)

 ↓

69万SOL



※ユーロ・ポンド・ルーブル・バーツ・ペソ・ドルも保有。

※ユーロ・ポンド・ルーブル・ドルの保管権を孝文・j・Gに付与。

※仮想通貨の運用権を孝文・j・Gに付与。

※米国債・タイバーツ・フィリピンペソの保管権を児玉繭子に付与。




【残り寿命】


93万4500日 (下4桁切り上げ)

  ↓

115万4500日

  ↓

115万1500日 (松村奈々に3000日吸い取られる)

  ↓

114万8500日 (久能木瀬里奈に3000日吸い取られる)



【所持品】


Maison Margiela ショルダーバッグ 白

Archi Diorリング ホワイトゴールド×ダイヤモンド

ティファニー ビクトリア  グラジュエイテッド ネックレス




【約束】


〇古屋正興     「異世界に飛ばして欲しい。」

 飯田清麿     「結婚式へ出席して欲しい。」

〇         「同年代の友達を作って欲しい。」

          『100倍デーの開催!』

×         「一般回線で異世界の話をするな。」

          『世襲政権の誕生阻止。』

〇後藤響      「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」

          「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」

          「空飛ぶ車を運転します!」

 江本昴流     「後藤響を護って下さい。」

          『遠市王朝の建国阻止。』

×弓長真姫     「二度と女性を殴らないこと!」

×         「女性を大切にして!」   

〇寺之庄煕規    「今度都内でメシでも行きましょう。」

×森芙美香     「我ら三人、生まれ(拒否)」

×中矢遼介     「ホストになったら遼介派に加入してよ。」

          「今度、焼肉でも行こうぜ!」

〇藤田勇作     『日当3万円。』

〇堀田源      「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」

〇山田典弘     「一緒にイケてる動画を撮ろう。」

〇         「お土産を郵送してくれ。」

          「月刊東京の編集長に就任する。」

 楢崎龍虎     「いつかまた、上で会おう!」

×警視庁有志一同  「オマエだけは絶対に逃さん!」

          「オマエだけは絶対に守る!」

×国連人権委員会  「全ての女性が安全で健(以下略)」

〇安宅一冬     「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」

 水岡一郎     「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」

×平原猛人     「殺す。」

          「鹿児島旅行に一緒に行く。」

          「一緒にかすうどんを食べる」

 車坂聖夜Mk-II   「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」

×今井透      「原油価格の引き下げたのんます。」

          「小麦価格の引き下げをお願いします」

〇荒木鉄男     「伊藤教諭の墓参りに行く。」

 鈴木翔      「配信に出演して。」 

×遠藤恭平     「ハーレム製造装置を下さい。」

〇         『子ども食堂を起ち上げます。』

          「紙幣焼却によりインフレを阻止する。」

〇田名部淳     「全財産を預けさせて下さい!」

          「共に地獄に堕ちましょう。」

 三橋真也     「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」 

〇DJ斬馬      『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』

 金本宇宙     「異世界に飛ばして欲しい。」

 金本聖衣     「同上。」

 金本七感     「17歳メインヒロインなので旦那との復縁を手伝って。」

〇天空院翔真    「ポンジ勝負で再戦しろ!」

          「再戦するまで勝手に死ぬな。」

〇小牧某      「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」

 阿閉圭祐     「日本国の赤化防止を希望します。」

〇坊門万太郎    「天空院写真集を献納します!」

 宋鳳国      「全人類救済計画に協力します!」

 堀内信彦     『和牛盗難事件を解決します。』

〇内閣国際連絡局  『予算1000億円の確保します』

〇毛内敏文     『青森に行きます!』

 神聖LB血盟団   「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」

 Top Girls     「招待ホモ枠の仲間として色々便宜を図ってあげマース♥」

〇大西竜志     「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」

          『貴方の遺族に篤く報います。』

 坂東信弘     「四国内でのイベント協力」

 国重辰馬     「四国内でのイベント協力」

 涌嶋武彦     「畜産業界の総力を挙げて遠市派議員を衆議院に最低10名押し込みます!」

 斑鳩太郎     『処刑免除を保証します。』

 志倉しぃ     「カッコいいホモの人を紹介して下さい。」

〇孝文・j・G   「英国大使館パーティーにて利息支払い」

          「永遠の忠誠と信仰を(以下略)」

〇グランツ(英)  「perape-ra!!!!!!!!」

 E・ギャロ     「農政助言」

          「王都で星を見る。」

 福永史奈     「出産すれば1億円支給」

 野上絵麻     「以下同文」

 桂川風香     「以下同文」

 久能木瀬里奈   「ジャンジャンバリバリ!!」

 児玉繭子     「ウチの旦那に色目を使うな。」

          「アメリカ経済を破綻させないように努力する。」

 古河槐      「jetの救済をお願い。」

 カミーラ・B   「perape-ra♪」

 故バーゼル卿   「perape-ra!」

〇有村拓我     「福田魁との連絡を取る。」

×福田魁      「男らしゅうせー!」 





 金本光戦士    「どんな危機からも必ず救い絶対に守る。」



 古河槐      「シンママで産む」



◎木下樹理奈    「一緒に住ませて」



×松村奈々     「二度と靴は舐めないにゃ♥」

〇         「仲間を売るから私は許して♥」

×         「ウンコは便器の中にするニャ♪」

          「未来永劫ずっと一緒♥

          ずっとずっとずっとずーーと×∞

          厘を守ってあげるね♥」



◎鷹見夜色     「ウ↑チ↓を護って。」

〇         「カノジョさんに挨拶させて。」

〇         「責任をもって養ってくれるんスよね?」



×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」

          「王国の酒…。」

          「表参道のスイーツ…。」 

×         「ポン酢で寿司を喰いに行く。」



 土佐の局     「生まれた子が男子であればリイチ。

          女子であればリコと命名する。」

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― 新着の感想 ―
古屋さん良かったね。
なんだろう、明らかなモーホーなのに、すげーとしか思えないw TSとかBlとかじゃなくて、女装リン子がヤバすぎる。 カレのチートって、実は破壊されている脳みその働きの方では、とすら思えたw
散々ケツマンコ言われてたけど本当に掘らせてるの?
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