【転移22日目】 所持金18億4908万ウェン 「坊主共には憎悪しかないが、共通の敵として君臨してくれているのは実にありがたい。」
不思議とカインが来ないので、先にキーンに配当を支払う。
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【所持金】
8億5600万ウェン
↓
8億5400万ウェン
※ドナルド・キーンに200万ウェンの利息を支払。
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キーンと話し合って自由都市行きの調整を行う。
正直、もはや金額はどうでもいい。
何故なら、他ならぬキーンが屋敷や移動費の提供を持ちかけているからだ。
気持ちは理解出来る。
俺が彼でも同じ提案をするだろうし…
まあ人並みの才覚のある商人なら、どんな手段を使ってでも俺を囲い込もうとするだろう。
『女連れの旅になる様ですし…
まずは安全を確実に買える費用を算出しましょう。』
「キャラバンの規模ですが、弊社の馬車が2台。
弊社契約中の戦闘馬車が1台が基本となります。
ここにコリンズ家の馬車が1台加わりますから、最小4台編成となります。
ただ、それだと傭兵のカバー範囲が広がり過ぎるので…
最低でも腕利きの傭兵チームを搭載した戦闘車両が2から3台欲しいですね。」
『契約中の戦闘馬車というのは傭兵のグリーブ氏ですか?』
「いえ、グリーブ氏はこちらに到着してから契約した相手なので…
往路は別の傭兵に護衛を頼んで参りました。
復路は王都の冒険者ギルドが選別した傭兵がその馬車に搭乗します。
もうグリーブ氏を決め打ちで指名しますか?
彼は人格的にも能力的にもかなり秀逸だと思うんです。
昨日も彼と討伐に行かれたんですよね?」
『ええ、改めて感じたのですが。
彼は仕事も気遣いも出来る人物ですね。
長旅の同行者は、ああいう信頼出来るタイプが望ましいです。
是非、彼に打診しましょう!
彼であればチームに対して年棒を支払ってもいいと思ってます。』
「では農作業が落ち着きそうな時間帯に2人で交渉しに行きましょう。」
『ですね。
もう1台、ダグラス組に声を掛けてもいいですか?』
「ああ、私は別に構わないけど…
彼らは地元から出たがらなさそうだよ?」
『まあ駄目元で頼んでみます。』
他に知り合いも居ないしな…
見慣れている人間が一番楽だよ。
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「駄目だ。」
ダグラスに一蹴される。
『…駄目ですか?』
「オマエと違って俺達は忙しい。
御覧の通り、商売替え直後でな?
早めに義理を通すべき相手が多い。」
『あ、はい。』
「一般的に自由都市までは標準的な速度で20日掛かる。
替え馬を贅沢に使って急いでも2週間は掛かるだろう。
つまりオマエの護衛を引き受けた場合。
最低1か月縄張りを空にする必要性が出て来る訳だ…
正直、このタイムロスが痛いな。」
『カネで解決出来ますか?』
「…護衛なんて他に幾らでもいるだろう?」
『俺はダグラスさんがいいんですよ。』
「商人の生命線は人を見る目だ。
オマエはもう少し色々と学べ。」
『で、でもあんな売春婦なんかより
ダグラスさんの方が余程信用出来ます!』
「流石にあんなのと比較されてもな…」
俺はそこまでダグラス組から嫌われている訳ではない。
ただ地場に根差したヤクザである彼らは、この王都近辺に確固たる生活基盤を築いているので遠出するメリットが無いのだ。
新婚の者も居れば家業が繁忙期の者も居る。
パトロンは大事だが、去る者に肩入れしても仕方ない。
俺が消えるのなら、彼らは新しいパトロンの確保を急がなくてはならないのだから。
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グリーブ傭兵団の参加が決定。
交渉も何も即答だった。
そもそも彼は、農場主・軍人の両方の立場から王国に見切りを付けていた。
「祖国への義理は十分果たしております。」
何か悟ったような表情で彼は最後に、そう締め括った。
息子の為に外国への伝手が作れる仕事ならば…
それこそ無報酬でも喜んで参加させて欲しい、とのこと。
『もしも、あちらに居場所を作れそうなら…
あなた方の御一家も…』
言い終わらないうちに、グリーブは確信に満ちた目で力強く頷き、俺に握手を求めた。
契約成立である。
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【護衛契約】
「契約者氏名」
依頼者 リン・コリンズ
請負者 ケネス・グリーブ
「依頼目内容」
コリンズキャラバン(以下甲)の自由都市への移動護衛任務にグリーブ傭兵団(以下乙)は従事する。
「依頼報酬」
3000万ウェン
※前払金1000万ウェン、成功報酬2000万ウェン。
※違約金設定6000万ウェン。
※軍備に必要な経費は甲が負担する。
「特約事項」
1、甲から他者への戦闘を仕掛ける場合、乙は参戦の義務を負わない。
2、乙は契約地である王都への帰還義務を負わない。
3、甲は契約業務内における乙の死傷に対して一切の責任を負わない。
4、コリンズ家3名・キーン家1名の計4名が生存状態で自由都市に到達する事を任務成功の定義とする。
5、違約金の請求元は農業協同組合信託部とする。
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もう出立は決定事項なので、前金を渡しておく。
グリーブは恐縮したが、準備にカネを掛けて貰わないとこちらも困るのだ。
数名居た傭兵団のメインメンバーと握手を交わし、複利で増えたポーション水筒もプレゼントしておく。
『教団には内緒にして下さいね。』
と冗談っぽくウインクすると、一気に場の雰囲気が和んだ。
坊主共には憎悪しかないが、共通の敵として君臨してくれているのは実にありがたい。
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【所持金】
8億5400万ウェン
↓
8億4400万ウェン
※グリーブ傭兵団に護衛契約前払金として1000万ウェンを支払い
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決行当日まで、グリーブの部下のトッドという男が連絡役の任務に当たる。
有名人のグリーブと頻繁に往来していれば、周囲に意図を勘づかれ妨害を試みる者が現れかねないからだ。
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夕刻近くなって、カインが胡桃亭に顔を出す。
開口一番。
「この袋に8億ウェンある!
確かめて頂きたい!」
目は爛々と輝き頬は紅潮しきっている。
かなりの興奮状態のようだ。
とりあえず、コレットに茶菓子を出させて落ち着かせようとするが、謝絶されてしまう。
「まあまあ。
まずは計算をお願いさせて下さいよ。」
仕方がないので、カネを数えてやる。
3度数えたが、間違いなく8億。
貨幣の真偽を確かめたいのは山々だが、今使っている鑑定機はどれもカインからの贈答品だしな。
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【所持金】
8億4400万ウェン
↓
16億4400万ウェン
※カイン・R・グランツから8億ウェンの追加預金
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『8億ウェンの追加預金を入金致しました。
これにてカインさんからの預かり金は合計11億ウェンとなります。
約束通り、本日から日利2%を適用致します!』
「しゃああああああ!!!!!!」
わかる。
その年甲斐もない雄叫び、凄く共感できる。
日利2%とか脳汁噴射するレベルの奇跡だよな。
ちなみに俺は差し引き12%の日利を貴方の元金から享受させて貰うがな。
『では早速本日の配当。
2%でお支払いします!』
「うーーーーーーーーーーーッ。 やったぜ!!!!」
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【所持金】
16億4400万ウェン
↓
16億2200万ウェン
※カイン・R・グランツに2200万ウェンの利息を支払。
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聞けば、カインは全てを投げ打ったようである。
家を突然追い出されて泣き叫ぶ妻子もビジネス宿に押し込めてしまったとのこと。
美術品も戦利品も思い出の品も、何もかも売り払ってしまったようだ。
狂気しか感じないレベルの正気である。
まあ、仮に俺が破綻したとしても。
この男の才覚なら今日の配当2200万ウェンだけで一財産築けるだろうしな。
極めて割のいい博打である。
50日俺をキープし続ければ彼は元を取れて、それ以降は富が増えるだけなのだ。
故に、俺は自由都市に到着するまではこの腕利きから命を懸けて守って貰える算段だ。
一見、狂気のカインだが。
戦士としては極めて冷静で、ダグラス組同行の必要性に賛成してくれた。
すぐに説得に行ってくれる。
カイン・ダグラス間の用心棒契約は未だ残っているようなので、上手く丸め込んでしまう算段らしい。
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その後、俺はヒルダ・コレットを両脇に抱えて、移住後の腹案を語り合った。
庭の広さだの、調度品の趣味だの、そういう女が好む話だ。
これまであまり話して来なかった地球の話もした。
《機会があれば帰る》とも正直に伝えた。
俺の意志は最初から一貫しているので、2人も表立っての反対はしない。
無論、俺が去った後の補償の話もした。
背中から斬られるのは怖いからな。
《2億2708万ウェンの配当が支払われました。》
…カインありがとう。
貴方のお陰で、また一つ資本の壁を越えたよ。
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【所持金】
16億2200万ウェン
↓
18億4908万ウェン
※2億2708万ウェンの配当を受け取り。
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夜、寝入り際。
訪れたカインが「話は付いたよ」とだけ言って帰って行った。
よし。
後は日程調整だけだな。
【名前】
リン・トイチ・コリンズ
【職業】
法人会員用宿屋の婿養子
【ステータス】
《LV》 14
《HP》 (3/3)
《MP》 (2/2)
《腕力》 1
《速度》 2
《器用》 2
《魔力》 2
《知性》 3
《精神》 2
《幸運》 1
《経験》 118222
次のレベルまで残り44834ポイント。
【スキル】
「複利」
※日利14%
下4桁切上
【所持金】
18億4908万ウェン
※カイン・R・グランツから11億ウェンを日利2%で借用
※ドナルド・キーンから2億ウェンを日利1%で借用