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【顛末記01】 大公爵

暑い…

いや、熱い。

全身が痺れるように痛い。

この感覚が暑さなのか、熱さなのか、痛みなのか。

それすら分からない。



「兄貴! 2時の方向に岩場らしき物を発見!

斥候に行かせてくれ!」



『いつもすまないねぇ。』



見事な馬術(今乗ってるのはラクダだが)で飛び出して行ったのは、義弟のニック・ストラウド。

十代の頃から数えきれない修羅場を潜り抜けて来た猛者である。

この男が居たから、俺はこうやって生き延びれている。



「兄さん! 10時の方向にダーク・スコーピオン4体視認!

進路を右に15度ずらします!」



『いつもすまないねぇ。』



双眼鏡で敵影を睨み付けているのは、義弟のジャン・ロベール。

士官学校を次席で卒業し、三帝会戦・火竜事件を生き延びた猛者である。

この男が居たから、俺は何とか生き延びれている。



「ポール殿、飲料水の精製完了!

戦列に戻るでゴザル!」



『いつもすまないねぇ。』



この炎天下の中、水系スキルをフル活用しているのは、幼馴染のジミー・ブラウン。

幼少の頃は背負ってやったものだが、今ではすっかり立場は逆転している。

現在の俺はこの男に生かされていると言っても過言ではない。



見渡す限りの大砂漠。

砂と太陽と死だけが無限に在る為、《永劫砂漠》と呼称されている。

帝国全体よりも広大な砂漠。

永劫砂漠0万石。

認めたくはないが、ここが俺の封土。

故に地図面積上では、俺こそが世界最大にして史上最大版図を支配する封建諸侯となる。


前四天王にしてポールソン大公国の国主。

ポールソン大公爵。

それが現在の俺の肩書。



『なあ、ジミー。』



「なんでゴザルか?」



『ひょっとしてこれ、実質的には流刑じゃね?』



「惜しい、これは実質的には処刑でゴザル。」



『マジかー。

俺も薄々そう思ってたんだわー。』



「ここだけの情報でゴザルが…

ポール殿以外の全人類が知っておりますぞ。」



『えー、そうなのー?

毎回毎回、俺だけ仲間外れにするのやめようよ。』



「うーん、というよりは。

毎回毎回、ポール殿だけ常識を外れるのやめませんか?」



『えー、悪いの俺ぇ~?』



「大丈夫、悪いのは頭だけでゴザル。

世界から糾弾されても拙者だけは味方でゴザルからな。」



『いつもすまないねぇ。』



「いえいえ、これが拙者達の仕事でゴザルから。」



ニック・ロベール・ジミー。

何度数えてもポールソン騎士団のメンバーは総員3騎。

俺を含めても4騎か…

少数精鋭にも程があるよな。

俺の居城である、《ひんやりとした岩場》に帰れば、数名の臣民が居るのだがな…

恰好付かないよなあ。

俺の口癖もすっかりこれで定着した。



『いつもすまないねぇ。』



俺がこんな境遇に追いやられたのには深い事情がある。

なんと、この世界の実質的な支配者であられる摂政殿下に初対面から壮絶に嫌われていたのだ。

事情説明終わり。



「えー!

回想それで終わりー?

終わりでゴザルか!?

浅っ! 限りなく浅っ!」



『えてして左遷の理由ってシンプルだからね。』



「それではポール殿に質問です。

貴方はどうして摂政殿下に嫌われているのですか。」



『はい!

殿下の旦那様から小遣いをせびったり、夜遊びに誘ったりしてたからです!』



「それではポールソン被告、反省のコメントをどうぞ!」



『えー、この度は誠に…  

うんこーww』



「コイツ全然懲りてねーーーwww」



斥候から戻って来たニックの報告で遠影が広めの岩場である事を確認。

思いがけない幸運である。

これで寿命が2日は伸びた。

フォーメーションを組み直してから、ラクダに鞭を入れる。



『それでは皆さん、ご一緒にー。

さんはい!』



「「「欲しがりません死ぬまでは!!」」」



…多分、遺骨すらも帰れないだろうなぁ。

我が兄弟達よ、いつもすまないねぇ。

【異世界紳士録】


「ポール・ポールソン」


コリンズ王朝建国の元勲。

大公爵。

永劫砂漠0万石を所領とするポールソン大公国の国主。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



異世界事情については別巻にて。

https://ncode.syosetu.com/n1559ik/


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― 新着の感想 ―
どうしてこんな事になってしまったのですか?(現場猫感 いや本当、どうして……ドウシテ……
もし、わしの味方になれば世界の半分をポールにやろう。 どうじゃ? わしの味方になるか? >はい 本当だな? >はい では世界の半分、永劫砂漠を与えよう! >うんこーww
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