【転移20日目】 所持金7億5530万ウェン 「その後の詐欺師はポンジさんの劣化コピーばかりです。」
行きの馬車内で何度も確認して理解した事だが、ダグラス一派は俺に対しても腹を立てていた。
「…あのなあ、コリンズ。
俺達は暴力を売り物にして生きている。
それはわかるな?」
『あ、はい。
そりゃあ、もう。』
流石に、こうやって馬車の外を柄の悪いマッチョなお兄さん達に囲まれると…
いやでもわかっちゃうよね?
「オマエから年棒やボーナスの話を持ちかけて来てくれた事自体には感謝してるんだ。
ヤクザ稼業ってパトロン見つけてナンボの世界だからな。
あの小娘を雇う前に俺達に許可を取ろうとしてくれたのも、正直嬉しかった。」
『あ、はい。』
「ただなあ。
オマエ、俺達の戦闘力知らんだろ?
自分で言う事ではないが、俺達のチームは王国内ではかなり名が通っているし
都城の中に居るチンピラ共は全部シメて来た。
そういうポジションなんだよ?
オマエから見りゃあ下らない事かも知れないが
俺達は腕っぷしにプライドを持ってるんだ。
だから、こっちの実力も知らない癖に年棒だのボーナスだのを勝手に決められるのは
あまりいい気が…
違うな。
ハッキリ言おう。
舐められていると感じた。
その点で俺達はオマエに腹を立てている。」
『いやいやいや!!
舐めるとか誤解ですよ!!
勝手に色々気を回したのが不快だったら謝罪します!』
「…今日の駆除作業。
馬車の中からで構わないんで、しっかりと見ていて欲しい。
俺達の実力を知った上で評価して欲しいんだ。
別に値段を釣り上げてやろうとか、そういうケチ臭い意図はない。
既にボスから十分な待遇を受けているからな。
給料以外の優遇措置も凄いんだぜ。」
『あ、いえ。
こっちも値切る意図はないです。』
「あの小娘。
技量は相当なものだ。
正規の訓練を受けた形跡はある。
才能だけなら俺など足元にも及ばんだろう。
あの小娘が獅子ならば、俺はせいぜい犬だな。
謙遜している訳じゃない。
本当にアレは別格なんだ。
で。
それはそれとして、俺達チームの動きを見て欲しい。
俺達の用心棒としての価値を分かってくれると思う。」
本音を言えば、護衛同士の能力比較などどうでもいい。
娼婦にしてもダグラス一派にしても、両方腕利きなのは素人目にも明らかなのだから。
俺としては両方にカネを払って、後は仲良くやって欲しい。
だが、暴力の世界に生きている彼らにすれば、格付行為や実力誇示は必須なのだろう。
正直、よくわからん感性だ。
もしも俺に他人に誇れるくらいの腕っぷしがあれば、ダグラスのような価値観で生きていたかも知れない。
まあ、要するに彼らはいじけているのだ。
その実力を知りもしない俺が気軽に護衛だの用心棒を頼もうとしたのが、彼らからすると軽侮しているように映ってしまったのだろう。
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『皆さん、今回の勝負なのですが。
俺にトドメだけ譲って貰えませんか?』
「おい、コリンズの若旦那よぉ!
それはおかしくねーか?
普通討伐勝負ってのは、トドメ刺した数で優劣を付けるもんだぜ!」
ダグラス組から非難の声が挙がる。
顔に刺青を入れたマッチョハゲのお兄さんに凄まれる。
…怖い。
そして娼婦も不満そうだ。
「うん、わかるーw
ワタシもモンスターをガンガン仕留めて実力見せたいッスよ!!」
『いや、違うんですよ。
俺は皆さんと違って子供の頃から病弱で!
こんな時に強い人のお慈悲に縋るしかレベリングの機会がないんです!
俺の腕力ステータス1なんですよ!?
何とか助けて下さいよ~。』
ダグラス一派は、懸命に怖い表情を保とうとしていたが、俺のこの発言を聞いて明らかに雰囲気が弛緩する。
何人かの者が笑いを堪えている。
(娼婦に至っては腹を抱えて笑い転げている。)
そりゃあなあ。
アンタらみたいなゴツイ大男集団から見たら、俺の弱弱ステータスなんて嘲笑の対象以外の何物でもないだろう。
…願わくば同情もしてくれるとやり易いのだが。
「まあ、ダグラスの兄貴がいいって言うなら
俺達は従うだけだが?」
副官らしきモヒカンのお兄さんがダグラスを見る。
「コリンズ。
俺達もガキの遣いじゃねえんだ。
確かにボスからはオマエに従う様に指示を受けているが…
いきなりトドメを譲れって言われてもな…」
『まず部位と討伐チップは全て御譲りします。』
少しだけコリンズ一派が安堵したような雰囲気を出す。
討伐チップは単に換金手段ではなく、男としての力の証明である。
彼らにとって譲りようがない点である事は重々承知。
『当然、謝礼も用意して来ました!
俺にトドメを譲って下されば!!
ウルフ1匹につき1万ウェン!
ジャイアントタートルなら10万ウェンをお支払いします!』
一同が真剣な顔で黙り込む。
頭の中で銭勘定を始めた表情だ。
娼婦の口元からも笑顔が消える。
「わかった。
ボア系やベア系はどうすればいい?」
『ボアは5000ウェン。
ベアは2万ウェンです!』
「ん?
強さと報酬が滅茶苦茶じゃねーか?
ボアの方がウルフより格上だぞ?」
『ボアは硬すぎて、トドメを刺そうとするとすぐに腱鞘炎が発動するんです!!
経験値も妙に少ないし!』
ようやく、ダグラス一派が笑顔を見せる。
腱鞘炎ネタは結構みんなのツボに刺さってくれるようなので、ありがたい。
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要は。
《これを機に経験値を買っておきたい。》
それだけの話である。
カネを出す側の俺からすれば、誰が強かろうが弱かろうが、どうでも良い話である。
どうせ俺より弱い奴なんて存在しないのだから。
ダグラス一派と娼婦の顔を程々に立てて、この先の護衛業務を円満に行ってくれればいい。
全ての許可は単騎先行中のカインにとってある。
(資本家階級のカインには周辺の地権者に話を通して貰わなくては困るからな。)
経験値40(ボア系)を5千ウェンで買う。
経験値50(ウルフ系)を1万ウェンで買う。
経験値300(ベア系)を2万ウェンで買う。
経験値800(ジャイアントタートル)を10万ウェンで買う。
割が悪い買い物なのは100も承知。
だが、ここでダグラス一派の印象を上方修正しておきたい。
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やがて農業地区近くの森の入り口に差し掛かる。
街道まで狼が溢れている。
あまり良い状況では無さそうだ。
馬車を停めると、すぐにカインが肩幅の広い農夫を連れて来る。
アランの隣で事務をしている場面を何度か見た事がある。
農業委員の一人だ。
「おお、トイチ君。
婿入りしたんだって?」
『あ、そうなんですよ。
今はコリンズ姓を名乗らせて頂いてます。』
「そうかー。
入り婿は大変だけど、お互い頑張ろうな。」
どうやら彼も入り婿の身だったらしく、親近感のある笑顔を向けてくる。
この親近感は同じ立場の人間にしか通じんだろうなあ。
俺もさあ。
胡桃亭に入ってから解かったことなんだけど。
婿養子なんてなるもんじゃないよな。
24時間アウェイで気の休まる瞬間がない。
「じゃあ、トイチ君改めコリンズ君。
討伐チップの分配は前と一緒でいいんだな?」
『はい!
全てトドメを刺させてくれた方の権利として下さい。
ダグラスさん!
希少部位以外は村落に寄付でいいんですね?』
「ああ、さっきの打ち合わせ通りだ!
ただ、申し訳ないがベアを狩った場合、胆嚢はこちらで貰うぞ?」
『OKです!
では食肉は農業地区への寄贈とさせて下さい。』
そして狩猟による力比べが始まった。
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俺が驚いたのは、カインが馬車に入って来るなり腰を落ち着けてしまった点についてだ。
微笑を湛えて俺にハーブティを勧めてくれる。
『あの、てっきりカインさんも狩猟に参加されるのかと思っておりました。』
「え?
今日はダグラス達を連れて来たし…
私も出なきゃ行けない?」
『あ、いえ。
無理にとは…』
よくみると、カインは普段付けている籠手を今日は付けていないし、剣も帯革ごと馬車の隅に放り出してしまっている。
顔付にも全く戦意は見られない。
「ダグラス達の人件費だけどさ?」
『あ、はい!』
「彼らはチームとしてかなり結束が高い。
だから、個々に年棒って決められないんだ。
外部からチームに支給した総額を彼ら自身の話し合いで分割するシステムを取っている。」
『ああ、そうだったんですね。』
「ニコニコ金融の業務も、ダグラス達に…
ああ、先日から《ダグラス組》の看板を掲げているのか…
ダグラス組に丸ごと業務委託していた。
年間総額8000万ウェン。」
『へえ、そういうシステムだったんですね。』
「諸経費込みで1億チョイでニコニコ金融を運営していたんだ。
親父の代で純利5億弱、私の代では純利1億強だね。」
『利益かなり下がってません?』
「親父が暴利を貪り過ぎてたんだよ。
その息子としてはさ?
遺産はきっちり頂きつつ、恨みは故人に押し付けないと割に合わないだろ?」
なるほど。
強欲な父との対比で、寡欲な跡取り息子としてのキャラを立てて不要な恨みは買わない。
だが強欲の成果物はきっちり自分の物にしているし、地元の大物ヤクザを用心棒として囲い込んでいる。
かなりクレバーな男だな。
そしてクレバーが故に日利1%を確保した今、余計なリスクを一切負う気は無いと。
「コリンズさん!
獲物引き摺って来ましたッス!
ワタシが一番ッスよ!!!」
娼婦の大声で会話が中断させられる。
ああ、今の《発声》で素人の俺でも理解出来た。
この女は正規の士官教育をみっちり受けた人間だ。
それなりの規模の集団を日常的に指揮する立場にもあった事も推測できる。
地球で例えれば、防衛大学の卒業生をイメージすれば良いのかも知れない。
カインも気づいたらしく、密かにアイコンタクトで互いの理解度を確認し合う。
《ッス》という語尾。
こちらの世界ではスラングらしいが、恐らく部下の口癖を冗談半分に真似しているのではないだろうか?
後からカインに教わった所、《ッス》は兵卒言葉らしいので、俺の推理もまんざらではなさそうだ。
この若さの女で士官教育を経験出来る身分、ここまで腕が立つにもかかわらず娼婦に身をやつしていた理由、何より全く物怖じしないこの傲岸なキャラクター。
これはもう答え合わせが完了したようなものだ。
「あははははwww
あの人達、まだモタモタしているww
大口叩いてた癖に情けないですね~ww
じゃあ、もう少し狩って来るッス!」
モタモタ?
ダグラス組が?
おれの眼には整然と担当を割り振っているように思えるが?
「ダグラス組の持ち味は、あの鉄の結束なんだよ。
私が興味を持ったのは、卓絶した統制力だしね。
兄貴分のダグラスを中心に見事に纏まっている。」
そうなんだ。
何か動きがヤクザっていうより、生真面目なライン工なんだよな。
即興でフォーメーションを組んで、流れ作業で駆除を進めている。
弓矢を使う2人、大盾のブロック係、小盾を持った囮兼斥候2人。
ダグラスさんと両脇の2人が槍で戦う主攻なんだろう。
長い竹竿を何本を抱えている4人は年齢がやや若そうだ、あれは見習い組員なのだろうか?
ああ、あの2人が瀕死の獲物をこちらに持ってくる係か?
『まるで軍隊みたいですね。』
「全員軍隊経験がある訳じゃないんだけど
傭兵団とコラボ活動とかする時もあったみたいだからねえ。
そういうの抜きにしても。
…強いよ?」
そうこうしているうちに、瀕死ギリギリの狼が続々と運ばれてきた。
遠目では娼婦も派手に無双しているが、ただそれだけだ。
もうカインと雑談する余裕も無く、絶え間ないトドメ作業に忙殺される。
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【討伐勝負第1ラウンド】
《ダグラス組》
・ワイルドウルフ39匹×50経験値=1950経験値
謝礼ウェン支払39万ウェン
・レッドウルフ8匹×70経験値=560経験値
謝礼ウェン支払8万ウェン
※合計取得経験値 2510ポイント
※合計支払謝礼 47万ウェン
《娼婦》
・ワイルドウルフ6匹×50経験値=経験値300経験値
謝礼支払6万ウェン
・ジャンピングディア1匹×40経験値=40経験値
謝礼保留
・ワイルドボア1匹×40経験値=経験値40経験値
謝礼支払い5000ウェン
※合計取得経験値 380ポイント
※合計支払謝礼 6万5000ウェン
【ステータス】
《経験》 36297
次のレベルまで残り5179ポイント。
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ダグラス組は大所帯の14名で47匹討伐。
娼婦は1人で8匹討伐。
戦闘コスパだけで言えば娼婦の方が優っているのだが、単独ということもあり効率が悪い。
引き摺っているうちに死亡してしまう獲物も多く、尻すぼみに戦果が落ちてくる。
逆にダグラス組は機械のように緻密に機能し続けペースを落とさない。
しかも俺が嫌がっていたボア系は仕留めてもストックに回してこちらに持ってこない気遣いもある。
何より、娼婦は心身のスタミナが切れたのか勝手に馬車に入ってきて休憩し始めた。
肩で息をしているので咎める気も湧かない。
その後もダグラス組は淡々と獲物を運び続けて来る。
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【討伐勝負第2ラウンド】
《ダグラス組》
・ワイルドウルフ61匹×50経験値=3050経験値
謝礼ウェン支払61万ウェン
・レッドウル12匹×70経験値=840経験値
謝礼ウェン支払12万ウェン
※合計取得経験値 3890ポイント
※合計支払謝礼 73万ウェン
《娼婦》
・ワイルドウルフ1匹×50経験値=経験値50経験値
謝礼支払1万ウェン
※合計取得経験値 50ポイント
※合計支払謝礼 1万ウェン
【ステータス】
《経験》 40237
次のレベルまで残り1239ポイント。
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娼婦が座り込んでいるのを見かけて、ダグラスが戻って来た。
「嬢ちゃん大したもんだ。
遠目に手並みを見せて貰ったが、アンタほどの剣捌きはそうそう見れるものじゃない。
剣士としては俺なんかより遥かに格上だ。」
娼婦が気まずそうに称賛に謝辞を述べた。
「…大口叩いて悪かったッスよ。
ワタシじゃ本職の護衛としては通用しないと思うッス。」
そう、通用しない。
幾ら腕が立ったとしても集中力の続かないタイプに警護を任せる勇気は俺にはない。
一方、ダグラス組は別格だった。
これだけ無数の獲物を狩り続けながら、みな平然としている。
当然、手傷は微塵も負っていない。
「ボス。
どうしますか?」
ダグラスが俺とカインを見る。
《もう結果は出た筈だが、これ以上続けるか?》
というニュアンスだ。
「そうだな。
討伐勝負という話だったが…
お嬢さん。
続けますか?
彼らも中々の物でしょう?」
「…ワタシの負けよ。
アンタらの言う意味がよくわかったわ。」
娼婦は大きくため息をついて、寝転んでしまった。
心身共に疲れたのだろう。
「コリンズ?
オマエはどうしたい?」
『すみません、後1200ちょっとでレベルアップするんですが…』
「おお、そうか。
それじゃあ折角だから上げてしまおう。
おう、オマエラ!
作業続行!」
「「「応ッ!!!」」」
ダグラス組は何事も無かったようにポジションに戻っていった。
足取りは力強く、一切の疲労感は見られない。
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【討伐勝負第3ラウンド】
《ダグラス組》
・ワイルドウルフ33匹×50経験値=1650経験値
謝礼ウェン支払33万ウェン
・レッドウルフ4匹×70経験値=280経験値
謝礼支払4万ウェン
※合計取得経験値 1930ポイント
※合計支払謝礼 37万ウェン
《娼婦》
不参加
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ありがたい。
もう1人でレベルアップ出来る段階ではないからな。
こうしてカネで買わせて頂けると、感謝しかない。
『皆さん!
おかげさまでレベルアップ出来ました!
改めてお礼申し上げます!』
「おう、おめでとうな。」
ダグラス組があまり表情を変えずにまばらな拍手を贈ってくれる。
娼婦が気まずそうにこちらの表情を窺って来たので、一応フォローも入れておく。
『貴方の腕前も相当なものだった。
路銀の件だが、帰宅したら支払いの許可を養母に求める事を約束する。
まとまったカネが必要なら別途に妻と義母に相談して欲しい。
俺からも口添えしておこう。』
「…ありがとッス。」
直訳すると、《2度と俺に絡むな》、と言う事だ。
まあそこら辺はヒルダに言い聞かせておいて貰おう。
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【ステータス】
《LV》 13
《HP》 (3/3)
《MP》 (2/2)
《腕力》 1
《速度》 2
《器用》 2
《魔力》 1
《知性》 3
《精神》 2
《幸運》 1
《経験》 42167
次のレベルまで残り39869ポイント。
【スキル】
「複利」
※日利13%
下4桁切上
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よし!
13%達成!
現在の手持ちが6億万強。
1日辺りの収益が600万強も増えた計算になる。
正直、馬車代やら傭兵代など安いものだ。
『皆さん、報酬はどうします?
今払いましょうか?
それとも安全圏まで戻ってからの方がいいですか?』
「そうだな…
俺達は落ち着いた場所で分配したいな。
嬢ちゃん、王都に着いてからの分配でも構わないか?」
「ええ、ワタシもそれでいいッス。」
その後、やって来たアランの息子さんに挨拶。
皆で狼の死骸を焼き払う。
「申し訳ありません。
父がここに居れば火魔法で処理してくれるのですが…」
『いえいえ、お父様は忙しいでしょうから。』
「実は地区の反対側でも駆除を行っているのですが…
怪我人が多く出てしまって、父も対処に追われているのです。」
『強い魔物が出たのですか?』
「農業水路にジャイアントタートルが湧いてしまったんです。
確認出来ただけでも10匹以上いまして、住民総出で駆除を行ってます。
ただ手ごわい相手なので、かなりの負傷者が出てしまって。」
『…あの、差し出がましいようですが。
こちらを皆さんに提供させて頂いて宜しいですか?』
「!?
ポーション?
しかも炸裂弾まで!?」
『ポーションを10本。
これは司祭様から支援として頂いたものです。
後、炸裂弾10個。
こちらもお役立て下さい。』
「よ、宜しいんですか!?」
『今日の私はチームで来ておりますし、馬車の返却義務もあります。
なのでお手伝い出来ないのが、恐縮なのです。
皆様に宜しくお伝え下さい。』
ポーションをバラ撒いた事により、司祭への顔も立っただろう。
最後に入婿仲間の農業委員から討伐チップも受け取った。
俺は息子さんに《ポーションは教団から》と念を押してから帰路に就いた。
司祭には頼まれたが、勿論自腹で買ったとは言わない。
そこまでの義理はない。
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【所持金】
6億3000万ウェン
↓
6億2815万ウェン
※ダグラスチームに討伐支援報酬として157万ウェン支払
(47万+73万+37万)
※娼婦に討伐支援報酬として8万ウェン支払
(7万+1万+0)
※農業組合厩舎サービス部に大型馬車リース代として20万ウェン支払
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『あー、では皆さん。
いっぱい害獣駆除したので農家の方も助かったとのではないかと思います。
農業ギルドさんからも、更なる駆除を求められましたので、これからも頑張って行きましょう。
お疲れ様でした~。』
カインから締めの挨拶をするように促されたので、無難に締める。
解散と言っても全員帰る方向は同じなので、あくび混じりに帰った。
『ダグラスさーん。
次のレベルまで4万弱あるんですけど。
楽なレベリング方法ありますか?』
「オマエ、確か13レベルになったんだよな?
ああ、そこら辺でみんな成長止まるよなあ。
初心者の壁って言われてるから。」
『ダグラスさんは何レベルなんですか?』
「61。」
『…おお。』
「対人戦は経験値高いぞ?
負け=死だけど。」
『た、対人戦ですか。』
「オマエには向いてない。
やめておけ。」
『やっぱりダグラスさんは人を斬った事があるんですか?』
「無い訳が無いだろう?」
『ですよね。』
「4万だったら…
ジャイアントタートルとかランニングスネークみたいな中級の魔物を駆除するのがコスパ良いかもな。
あー、ウルフ系が異常進化したケルベロスは1万だが…
スマン、今のは忘れろ。
リスクとリターンが釣り合ってない。」
『じゃあ、今度ジャイアントタートル狩りに行きましょうよ!
ここから東に行ったところのブライアン農園が困ってるんですよ!』
「わかったわかった。
付き合ってやるから、先にボスの許可を取ってくれ。
今日は店じまいだ、じゃあな。」
今日の討伐で、プロにトドメさえ譲って貰えればコスパ良くレベリング(日利UP)出来る事が解かった。
日利20%くらいいけないかな~?
《8166万ウェンの配当が支払われました。》
お、配当か。
じゃあ、カインにも分け前をくれてやらなければな。
この男は微笑を湛えながら、ずっと俺の後ろを犬の様に付いて来ている。
今日もずっと上の空だったしな。
『あ、カインさん。
この後、配当をお支払いしますね。』
「はいっしゅ!!」
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【所持金】
6億2815万ウェン
↓
7億0981万ウェン
↓
7億0681万ウェン
※8166万ウェンの配当を受け取り。
※カイン・R・グランツに300万ウェンの利息を支払。
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これ、カインだけに配当払ってるのは、キーンに申し訳ないなあ。
夜、キーンを見つけてディナーに誘う。
超大型のソーセージをテーブル上で切り分けるスタイルの居酒屋だった。
ソーセージが焼き上がる度に
「上がりましたー! 切り分けまーす!」
と店員が叫ぶ。
俺達も500グラム程度のソーセージを肴に薬用酒を飲む。
喉がスーっとして気持ちいい。
『単刀直入に言います。
キーンさんに利息払いましょうか?
いや、払わせて頂けると助かるんですけど。』
「利息?」
『実はプライベートバンクを開業しようかと考えてます。
王国に居る間は看板を掲げませんが、移住先で開業しようと…』
「まあ確かに自由都市は金融業が盛んだけど…
競争滅茶苦茶激しいよ?
しょっちゅう金融機関が過当競争に負けて破綻してるし。」
『ああ、それじゃあ勝ち目がないか…
俺、日利1%位を想定してました。』
「日利? 日利? 日利!?
ごめん意味が解らない!?」
『ええ、日利1%くらいなら商売になるかな?
と。』
「異常だよ!!」
『異常?
ああ、安すぎるってことですよね?』
「逆ゥ!
高すぎィ!!
いや、そんな法外な利息を払う金融機関が出来たら…
他が全部潰れてしまうぞ!?」
『いや、そこまで手広くやらないですよ?
1人に配当払うのは面倒なんで。
懇意な大口客だけを相手にしたいんです。
最低預金額5億で1%
10億以上で2%
100億以上で3%
何となくそんな感じで。』
「…マジっすか?」
『需要があれば。』
「100億預けていいんですか?」
『毎日3億払います。』
「そういう詐欺が王国では流行ってるんですか?」
『俺の故郷では流行してたんですけど。
騙すより普通に配当出した方がコスパいいんですよ。』
「あの…
私、今1億強しか預けてないんですけど。
今の手持ちを全部預ければ2億チョイにしかならずに…」
『端数計算が面倒なので2億預けて下さい。
1%の日利を払います。』
「あ、いや。
話が急で付いていけない。」
『気が向いたらでいいですよ。』
「いや、向いてるけど。
ちょっと待って!
帰ったら2億になるように金庫に入れる!
え?
これ酒の上の話とかではなく!?」
『いや、本当は酒場なんかでする話でもない事は理解してますよ?
ただ、こういう話ってこっそりしたいじゃないですか?』
「え?
これギャグ?
新手の王国ギャグ?」
『あ、スミマセン。
俺、王国出身じゃないので、ちょっとジョークの流行とか疎くて。』
===============================
【所持金】
7億0681万ウェン
↓
7億5730万ウェン
↓
7億5530万ウェン
※ドナルド・キーンから5049万1000ウェンの追加預金
端数1000ウェンを返却
※ドナルド・キーンに200万ウェンの配当支払
===============================
「ええ!?
いきなりくれるの!?」
『まあ、日利ですから。』
「そ、それ元本を崩してるとかじゃなくて!?」
『俺の故郷にポンジさんって人が居て、その人は切り崩した元本を配当と偽って、みんなからカネを搔き集めてました。』
「そ、それでポンジさんはどうなったの!?」
『普通に破綻して普通に逮捕されました。』
「そ、そりゃあ破綻するよな。」
『その後の詐欺師はポンジさんの劣化コピーばかりです。』
「凄い詐欺師だな。」
『なので、預り金はこれまで通り金庫に入れっぱなしでいいです。
いつでも元金を確認して下さってOKですよ。』
「いやいやいや!
それ、君に何のメリットがあるの!?」
『うーーん。
どのみち自由都市で金融業始めるならキーンさんのナビが必要でしょ?』
「…まあ、いきなり国外からやって来て金融業開業は現実的じゃないかもね。」
『嫌になったらいつでも元金を引き上げて貰って構わないので
とりあえずそれまで配当を払わせて下さい。』
「いや!
そりゃあ、配当が貰えるのは嬉しいけど。
でもだって…
まあ、どのみちカネはどこかに預けたかったけど…
それで配当が貰えるなら、凄く嬉しいけど…
まあ、あれだ。
うーむ。
じゃあ明日も配当貰えるってこと!?
貰えるってこと!?」
『そりゃあ日利ですから。』
「わ、わかった。
話が急すぎて脳が混乱している。
とりあえず、これからの事は明日正式に相談させてくれ!」
キーンの混乱はわかる。
明らかに異常だよな?
パニックになるよな?
でもまあ、この男は絶対に資金を引き揚げないだろうけどさ。
【名前】
リン・トイチ・コリンズ
【職業】
法人会員用宿屋の婿養子
【ステータス】
《LV》 13
《HP》 (3/3)
《MP》 (2/2)
《腕力》 1
《速度》 2
《器用》 2
《魔力》 1
《知性》 3
《精神》 2
《幸運》 1
《経験》 47649
次のレベルまで残り34387ポイント。
【スキル】
「複利」
※日利13%
下4桁切上
【所持金】
7億5530万ウェン
※カイン・R・グランツから3億ウェンを日利1%で借用
※ドナルド・キーンから2億ウェンを日利1%で借用