【降臨53日目】 所持金3422億2765万0000円 「日英ポンジ戦争!」
明け方に目が覚めてしまったので、皆が上げてくれた報告書に目を通す。
相変わらず、ホモの話題ばかりで気が滅入る。
俺は経済問題に専念する為に地球に帰還した筈なのだが、LGBTに関する問い合わせの比率があまりに多く辟易させられている。
最初、おちょくられているのかと思っていたのだが、どうやら世界は本気らしい。
《同性愛の自由を憲法に盛り込むべきか?》
《同性愛弾圧国家に対しての経済制裁は必要か?》
《同性愛者の養子縁組に関しての意見が欲しい。》
問い合わせの実に半数がこれである。
質問の体を装っているが、要はLGBT陣営に参加表明せよとの強要。
大抵が欧米の活動家団体。
厄介な事に議席を持っている者が多いので、あまり粗略にも出来ない。
俺が回答に応じない場合は反日運動グループへの合流もあり得る旨を仄めかされている。
本音を言えば、これらの問いには興味が無い。
きっと世の中のストレートの大半は俺と同じ意見なのではないだろうか。
少なくとも世界にはもっと話し合うべき議題があるのだから。
寝起きの気配に気付いた寺之庄が入室して来たので、再度俺の本名で検索して貰う。
奇姓なので苗字を入力した瞬間に不快なサジェストが並ぶ。
《遠市 ホモ》
《遠市 ゲイ》
《遠市 詐欺師》
《遠市 ショタコン》
《遠市 ハッテン場》
《遠市 ずんだもん》
《遠市 ルナルナ》
《遠市 トランプ》
《遠市 LGBT》
俺も我慢強い方だとは思うのだが、これだけ好き勝手言われると流石に不快感を隠せない。
地球に帰還した頃は、俺と言えば異世界だった気もするのだが…
今や、遠市厘と言えばカネでも宗教でもなく…
ホモ野郎としてのみ認識されている。
男としてこれ程の屈辱もない。
俺のWikipedia欄も再度確認。
…酷いな、特に英語版はひど過ぎだろ。
英語が読めない俺でも、その悪意が伝わって来るぞ。
『もうネットは見ない事にしたいのですが…
そうもいかないのでしょうね。』
「そうだね。
今の政治経済ってネット抜きじゃ成立しないからさ。
トイチ君には、申し訳ないけど向かい合って貰いたい。」
『はい。
冷静に対処して行きます。』
「幾らなんでもゲイ扱いは酷いと思うよ。
僕らも可能な限りフォローするから。
我慢強く世論に訴えて行こう。」
寺之庄と善後策を練っていると隣で寝ていた光戦士が目を覚ましたので、シャワーを浴びて食卓に向かった。
朝食は七感が全員分作ってくれた。
男所帯なので非常に助かる。
「打算や。
恩に着る必要はない。」
『ですが、七感さんには助けられっ放しです。』
「ウ↑チ→はズルいから、助けて得な人間しか助けへん。 ただそれだけの話や。」
『私なんか、もっとズルいですよ。
傷まない自腹を切って恩を売ってますから。』
2人で笑い合う。
もしも俺に母親が居たら、食卓ではこんな会話をしていたのだろうか?
金本光宙にコミュ力があって、俺がコミュ障なのはこの辺の差なのだろうか。
その疑問を率直に伝え、これからも旅に同行して欲しい旨を頼んだ。
「アホ。
ウ↑チ→は裏社会ナンバー1漫画家様やぞ?
どれだけ忙しいと思ってるねん。
ナイジェリア人なんか、ウ↑チ→が描いてる方のHUNTER×HUNTER(偽)を公式版やと思っとんねんで?」
『す、すみません。』
「キミの味方をしたってるんは、あくまで連載の合間だけや。
そこは勘違いせんとってな。」
『で、ですよね。』
「ウチの休載も冨樫義博の連載再開までだけの話や。
HUNTER×HUNTER(真)が本誌に掲載され次第、ウ↑チ→はパーティー抜けるから。
キミとの縁はそれまでの間の繋ぎに過ぎん。」
『…え、そ、それって。』
「短い間やけど仲良くしたってや、相棒。」
『は、はいっ!!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、今日は英国大阪領事館主催のパーティーに顔を出さなければならないそうだ。
会場はJR大阪駅直結のインターコンチネンタルホテル。
(同ホテルが英国資本であることが会場に選ばれた理由なのだろう。)
英国領事館が主催という体だが、実際の運営は久保田オッペンハイマー証券を筆頭とした外資金融7社。
《世界平和祈念パーティー》と銘打ってはいるが、案内に目を通す限りどう考えても理想郷ファンドを売り捌きたいだけである。
どうやらオッペンハイマー卿なるロンドン金融界の大ボスみたいな爺さんが来日中であることと関連があるらしい。
(昨夜は宮中晩餐会に出席していたらしい。)
皆、大ボスの前で少しでも点数を稼ぎたいのだろう。
『坊門さん。
1つ謎なんですけど、どうして私に御指名が?』
「申し訳ありまへん。
彼らが関西財界のトップを出せと言っているので。
外交も絡んでるんで無下にも出来ず…」
『トップは斑鳩会長なのでは?』
「いや、斑鳩の奴があちこちで
《ボクは猊下の下に付いてる》
って言って回ってるんで…
自動的に猊下がトップかと。」
…あの爺さん、本当にロクなことしないな。
「アイツ気質的に子分肌なんですよ。
上座に座らせるとソワソワして、まともに応対出来なくなる奴なんです。
ナンバー1の後ろを小判鮫の様にくっついて歩くのが、あの男の精神衛生上ベストなんです。
猊下の下にアイツを付けてやってくれませんか?」
参ったなぁ、俺だって子分肌なんだよなあ。
あんなジジーに粘着されたら、こっちの精神がもたんぞ。
『じゃあ、斑鳩会長には大阪を任せます。
私は関東に帰るので、持ち場を死守するように伝えて下さい。』
「あははは、厳しいでんなぁw
アイツ、猊下を追って東京に引っ越したいって言ってましたよ。」
『えー、あの人来るんですか。
参ったなあ。』
「アイツ、物件だけは腐る程持ってますから。
例えば猊下の御地元の神奈川県でしたら、横浜駅直結の横浜グランドレジデンス。
4棟全て斑鳩不動産の所有ですよ。」
…マジかー。
そりゃあ4000億集めても不思議じゃないわ。
カネってある所にだけはあるんだよなぁ。
やはり断固として是正しなきゃだな。
『それで…
イギリスのパーティーなんて行きたくないんですけど、やはり出席しなくちゃ駄目ですか?』
「実は元凶はワシらなんですわ。
猊下と会う前に、英国系の投資信託やら何やらを引き受けたる流れやったんです。
所詮、口約束ですけどね。
それでいきなりワシらが約束を反故にして、仲間全員が猊下の傘下に入りましたやろ?
そういう経緯もあったんで、これ以上向こうを刺激したくないんです。」
聞けば、俺と出逢うまでの坊門グループは久保田オッペンハイマー証券と親密であり、お互いに融通を効かせ合う間柄ではあったらしい。
(坊門グループの新年会に同社の役員が挨拶に来たりしていた。)
それにも関わらず一斉に資金を引き揚げて俺の周囲を固め始めた。
坊門に至っては相手社長からの電話もスルーする程の徹底ぶりだ。
彼らにしたら絶対に譲れない局面で背中から撃たれた心境らしい。
『じゃあ、まあ、顔を出す程度なら。
タキシードを持っていないので会場に入れないと思いますけど。』
「白装束で来て欲しいとのことです。」
『あんな粗末な衣装でパーティー会場に入るのは良くないでしょう。』
「いや、逆なんです。
彼らはこれから全世界で債券を売り捌かなくてはならないんやから。
少しでも日本人から支持されてるように見せたいんですよ。
彼らからすると猊下は究極の多様性枠やから、日本っぽい恰好して欲しいんやと思います。」
…まあ、ゲイの異世界坊主なんて、ダイバーシティカードバトル的にかなりの持ち点だろうからな。
俺の広告塔としての価値は案外高いかもだな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、幾ら豪邸と言えど屋内でカネを出す愚行はあれっきりにしたい。
ガラスや壁面が割れて危険極まりないからである。
何せ俺は魔王時代にコンビナートを爆発炎上させているからな。
どうせ地球でも似たような事態は起こるに決まっているが、可能な限りは人命を尊重したい。
【複利】の厳密なルールは所有者の俺にも不明なのだが、経験上は昨日案内された住之江区の倉庫にカネが噴き出すはずである。
倉庫にカネが噴き出すのであれば、どこに居ても良い。
ただ、不発が考えられるので箕面に戻ることに決める。
理由は至ってシンプル。
俺が斑鳩翁にシンパシーを感じていないからである。
無論、彼は悪人ではなく俺に対しても然したる悪意は持っていない。
だが、資本主義に強い疑念を持ち続けて来た俺の仮想敵こそがまさしく斑鳩翁のような《持つ側に生まれた老人》なのである。
なので彼の用意した倉庫を私物と思い込む自信がない。
いや、きっとあの倉庫にカネが噴き出す事は未来永劫ないだろう。
大阪市の一等地から北辺の箕面に本陣を移す理由。
邸宅とキャンプ場の面積の違いもあるが、資本家と距離を置きたいという心理的な要素の方が遥かに大きい。
馬車に揺られた日々、ゲルを本拠としていた日々。
今思えば、一番楽しく有意義だった。
きっと俺は定住や安住を望んでいないのだろう。
そんな動機から周辺に散っていたメンバー全員を集めて車列を組み直すことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【遠市キャラバン】 箕面市同行チーム
遠市厘 (オーナー)
後藤響 (相談役・護衛)
寺之庄煕規 (相談役・予備運転手)
金本光戦士 (記録係)
金本七感 (相談役)
坊門万太郎 (出資者)
堀内堅造 (護衛)
浦上衛 (イベントコンサル)
国重辰馬 (報道担当)
石賀一博 (執事)
小牧晃 (防諜顧問)
大西竜志 (運転手)
伊地知義和 (運搬担当)
沢下球児 (運搬担当)
【所持金】
2506億1177万0000円
↓
2501億1177万0000円
↓
2501億1100万0000円
※坊門総業に伊地知・沢下の移籍料として5億円を支払い。
※大西竜志に遊興費として77万円を贈呈。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
箕面までの車中。
「リン君。」
『はい?』
「君の命令やったら、いつでも運転するけど。
何で俺の車ばっかり乗るの?」
『あんまり意識したことなかったんですけど。
私はDQNのオッサンが好きなのかも知れません。』
「お、おう。
…あのぉ、そりゃホモ的な意味じゃないわいなぁ?
一応確認しとくけど、俺はそなん趣味はないけんなぁ?」
『既に伝わっていると思うのですけれど、私はゲイではありません。
大西さん同様、女が好きです。』
「DQN好きで女好きじゃったら、もう少しルナルナに優しゅうしたれよ。」
『えー、私は結構アイツに気を遣ってるつもりなんですけど。』
「本当にぃー?」
『本当ですよぉ。
つい先日なんかは梨羊羹(税込み450円)を送ってやったくらいですから。』
「お、おう。
何か自分が大金貰うとる事がルナルナに申し訳のう思えてきたわ。
そなん数百円の菓子じゃのうて、もう一声優しゅうしたれやよ。」
『いやー、結構その他にも色々してますよ?
あ! 思い出した!
鷹見の配信に相談系のメッセージが来て持て余してたから、私が代わりに返答してやったんです。
それなんかはファインプレーだと自負してるんですけど。』
「へー、どんな相談?」
『新潟の自動車屋さんが社会保険料が高過ぎて生活出来ないって相談です。』
「払わんかったらええんちゃう?」
『その人は御家族を養ってるんですよ。』
「養わんかったらええんちゃう?」
『大西さんと違ってちゃんとした人なんですよ。
ほら、新潟って雪国だし。』
「ああ、確かに東北は糞真面目なイメージがあるよな。
ほんで? 何て答えたんや?」
『元々、私の公約に《労働者の可処分所得を増やす》という項目があるんです。
なので、労使双方の負担額を減らす方向に持って行きます。
財源としては富裕層への課税強化、不要官庁の削減で賄います。
また、その為の布石として治療と延命の峻別を世論に訴えて行く所存です。
ただ我が国の憲法で政教分離が定められている以上、宗教家の私がどこまで踏み込むべきかは慎重な判断が求められると考えております。』
「へー、何言うとるのかはわからんが
君って真面目だよな。」
『ありがとうございます。』
「やけど、ルナルナも奈々ちゃんも、社会改善なんか1ミリも望んでないと思うぞ?」
『アイツらの逆をやれば普通に良い社会が築けるのではないか。
そんな仮説を立てているんです。』
「否めんな。
つまり、リン君がええ世の中作る為にはルナルナに逢わん方がええって事?」
『…うーーーん。
言語化する事は敢えて避けてましたが。
そうですね、為政者たるもの妻妾にリソースを割いてはならないと考えます。』
「ちょっと位、構ってやったら?」
『うーーーん。
大西さん、私の名義で女が喜びそうな土産でも送っておいてくれません?』
「えーーー。
俺も生活費入れんで、パチと風俗に全額つぎ込んで来た人間やけんなぁぇ。
…いや、リン君には世話になっとるけんな。
ここで逃げたら男が廃る。
よし! 女が喜ぶプレゼントの情報をソープで集めて来る!」
『ありがとうございます!』
よし、奴らへの対応はこのオッサンに丸投げだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
箕面への布陣を終えたので、土産の鳥取和牛を皆で焼いて食べる。
贈答の酒も全て出し切る。
もっとも、夜にパーティーを控えているので皆は口を付ける程度しか飲まない。
ゆっくりするのも久々なので、同行者個々と意思の擦り合わせを行っておく。
俺の生命線はカネではなく、周囲に取り巻くこのパーティーメンバーである。
断じて粗略には出来ない。
孤立した資本家がどんな末路を辿るか、俺は異世界で見て来たからな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【後藤響】 (相談役・護衛)
《大阪市東淀川区出身。》
《野球U-18元日本代表主将。》
《配達員時代に邂逅し以降は大学を休学し同行。》
「俺、遠市さんと出会ってから、まだ2か月も経ってないんですよ?
それでこの出世ペースは凄いです。
まさか領事館から打診があるなんて。」
『後藤さんのおかげですよ。
初動で貴方に会えなければ、今の金利は得られてなかったことでしょう。
烏天狗仮面を紹介して下さったのも後藤さんですし。』
「アイツのことはホンマに申し訳ないです。
あの病気さえ発症しなければ、不動のエースなんですけどね。」
『いやいや、あのパッションが《Endia》を発明させたのでしょう。
偉人ですよ、エモやんさんは。』
「次は何を発明させます?」
『女を黙らせる発明を頼んでおいて下さい。』
「あっはっは。
承知しました、アイツのSNSに送っておきます。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【寺之庄煕規】 (相談役・予備運転手)
《福井県南越前町出身。》
《メンズモデル。》
《千葉県で邂逅し以降は大学を休学し同行。》
『随分、グルグルと回りましたねぇ。』
「色々あり過ぎて、まだ頭が整理出来ていないよ。」
『印象に残った土地はありますか?』
「うーーん。
鳥取かな。」
『あ、そうなんですね。』
「僕、福井の出身でしょ?
田舎に育った事が嫌で嫌で仕方なかったんだけど。
君が地元よりも人口が少ない鳥取県で大盛況イベントを実現して見せたからさ。
言い訳だったんだなって、自分を恥じている。」
『ヒロノリさんがインスタで告知してくれたおかげですよ。
財界人や猟師組との連絡を全てお任せしてしまっていますしね。』
「君の役に立てているのなら嬉しいよ。」
『こちらの方こそ貴方には我儘ばかり申し上げている事を恐縮しています。
何か私で叶えられる希望はありますか?』
「うーーん。
僕の夢はもう叶ってしまっているからね。
個人的にはこの状況が長いものである事を望むのだけど…
進むんだろ、前に?」
『はい、進みます。
ロクな未来にはならないと思いますが、進みます。』
「君の未来は悲観的なの?」
『富が増えれば増える程つまらなくなりますから。
将棋で打てる手がどんどん無くなって来るような、そんな恐怖との戦いです。』
「じゃあ、僕ももっと励まなくちゃね。」
『?』
「打てる手は増やせないかもだけど、退屈しのぎ位の役には立ってみせるよ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
坊門万太郎 (出資者)
《高知県四万十市出身。》
《坊門総業代表取締役。》
《天空院イベントで邂逅、大口出資者兼同行者に。》
「猊下がイギリス嫌いやという事は伝わっております。」
『忌憚なく言えば真のラスボスですからね。』
「猊下の反資本主義は今も変わらずですか?
現時点で猊下は人類の上位0.01%くらいの資本家ですけど。」
『まあ、その資本にしたって資本主義社会のルールに基づいて貯めたものではないですからね。』
「資本主義社会のルールは金額だけでっせ?」
『それは困りましたね。
そんなルールが適用されるなら、来月には私がトップに立ってしまいます。』
「なるでしょうねえ。」
『私もまだまだ準備が足りてないので、イギリスさんにはもう少し粘って頂かないと。』
「え?
じゃあ、理想郷ファンドを買うんですか?」
『え?
買う訳ないじゃないですか。
そこは、アレですよ。
自己責任なんだから、彼ら自身に頑張って貰わないと。』
「もう無理やから、日本に来たんとちゃいますかね?」
『…いや、それを私に言われても。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
堀内堅造 (護衛)
《岡山県英田郡出身。》
《TVアニメ「大都会学園マタギ部」原作者。》
《早くからSNS上で遠市派のレベリングに協力。》
『すみません。
堀内さんのセミナー打診、ちゃんとした返事を出来ずにズルズルと。』
「いやいやいや!
今や猊下は英国領事館から招待されるような御身分ですから。
私如きが、そんなそんな!」
『アイツらのパーティーに出席したところで、世の中の為にはならないですよ。
仮に私が彼らの債券を引き受たとしても、一般の英国民には一切還元されないと思います。』
「…でしょうね。」
『堀内さんの故郷も訪問させて頂いて、地方の皆様の御苦境も少しは理解出来たつもりです。
私は優先順位を間違えるつもりはありません。
マネーゲームは手段であって目的にしてはならないと考えています。
なので一次産業を軸とした実業への支援、これが私の為すべきところです。
堀内さんにはこれからも色々と助けて欲しいと考えております。』
「猊下とは思春期の頃に出会いたかったです。
その所為でアニメ化の未来が消滅していたとしてもね。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
金本七感 (相談役)
《大阪市旭区出身。》
《洋菓子のカネモト常務取締役・漫画家。》
《遠市厘の級友・金本光宙の叔母。》
『え!?
七感さんもパーティー来るんですか?』
「漫画のネタにするんや。」
『なりますかね?』
「いや漫画で豪華パーティーが舞台になることって意外と多いで?」
『確かに、言われてみれば。』
「最近はGoogleで大抵の資料は集まるんやけどな。
上流の写真はあんまり出回ってないんや。」
『そりゃあそうでしょうね。
ガードも固いでしょうし。』
「なので!
オバチャンもドレス買って来た! (バーン!)」
『う、うわあ。』
「Lesson1!
地球はタテマエで回っている!」
『お、お綺麗ですね。』
「Lesson2!
自分の嫁に言うたれ!」
『いやー、鷹見ってAV女優やってるらしいですからね。
そこを褒めてもいいのでしょうか?』
「Lesson3!
貞操を強いろ!」
『うーーん。
別にお互い大人なんですから好きに生きればいいんじゃないでしょうか?』
「Lesson4!
せめて興味を持つ素振りを見せろ!」
『まあ、時間がある時にでもアイツの動画見ときますよ。』
「あ! これは未来永劫見ないパターン!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
浦上衛 (イベントコンサル)
《大分県大分市出身。》
《浦上工務店代表取締役》
《早くからSNS上で遠市派のレベリングに協力。》
『すみません。
浦上さんは一番遠方から来て下さったのに…
全然お構いできなくて。』
「いえいえ!
現にこうやって時間を割いて下さっているではないですか。
寧ろ、感動してるんです。
もっと大勢の中の1人として扱われるイメージがあったので。」
『本当は大分市に伺って、正式に挨拶するべきだとは考えておりました。』
「もう猊下は身動き取れないでしょう。
自分で言うのも何ですが、流石に大分は遠過ぎます。
博多の連中にとってすら僻地なんですよ?」
『九州も一度は上陸しておくべきだったのですが。』
「九州なんて落ち武者が流れ着く土地ですよ。
足利尊氏しかり平家一門しかり。」
『じゃあ私が逃げる先は九州で決まりですね。』
「縁起でもないことを言っちゃ駄目ですよぉw」
『「あっはっはっはwww」』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
国重辰馬 (報道担当)
《徳島県三好市出身。》
《金毘羅TV代表取締役》
《四国滞在中に取材申込、同行取材権を付与。》
「じゃ、じゃあ、カメラ回しちゃってオッケーなんですね?」
『国重社長も地元を置いて来て下さったんです。
撮れ高位は提供しますよ。』
「で、では回します!
…ここからの会話は後世に残ってしまうと思いますが、インタビューを開始して宜しいでしょうか?」
『あ、はい。
一問一答式であれば助かります。』
「…では、第一の質問。
LGBT運動についての猊下の所感を伺わせて下さい!」
『回答します。
まず、現在のLGBT運動は明らかに行き過ぎであると認識しております。
特に、同性愛の許容を強要しようとする姿勢。
これに私は反対の立場を表明します。』
「おお、そうなんですね。
掘り下げて伺わせて下さい。」
『ここからは全ての自由を求める人への呼び掛けなのですが、他者の自由を侵害する事を解放とは呼びません。
同性愛に権利があるのだとしたら、それを忌避する権利も存在するのではないでしょうか?
人類の歴史上、多くの国家・民族が同性愛を禁忌として来ました。
これには生物学的・政治的な理由があったのでしょう。
同性愛を論じるにあたっては、単に我々の世代だけで話し合おうとするのではなく、先人達の歩みも学び合って行きたいですね。
いずれにせよ、現在行われているような暴力や恫喝による運動形態には、強く反対しております。
LGBT問題に関しては、建設的な形であれば議論の余地はあるでしょう。』
「ありがとうございます。
我々に与えられた持ち時間をオーバーする可能性はあるのですが…
もう一点、非常に問い合わせが多かった件について宜しいでしょうか?」
『どうぞ、延長を許可します。』
「ありがとうございます。
国内に限ればLGBTよりこちらの問い合わせが遥かに多かったのですが、《猊下の選挙に対するスタンス》こちらを伺わせて下さい。
特に、猊下の活動が来年2024年の都知事選に焦点を合わせているのではないか、と考えておられる方が非常に多いです。」
『回答します。
まず、私自身について。
私が信仰する神聖教では、聖職者が選挙や仕官といった手段を通じて世俗権力を取得する行為が禁止されております。
また、日本国憲法においても政教の分離が規定されております。
これは20条ですね。
戒律、憲法の両方で禁止されている以上、私自身が出馬することは不可能です。
ただ、世間の皆様が私の出馬について疑義を持たれる事も理解しております。
その理由は、きっと私に政治的なコメントが多い所為でしょう。
特に社会保障や富の再分配に関しては、くどい程に繰り返しております。
改めて意見を表明しますと、私は再分配論者です。
富は誰かに独占させるよりも、天下万民に広く行き渡らせるべきと考えております。
これは神聖教の教義にもあるので、少なくとも聖職者としては矛盾はないと捉えていることも補足させて下さい。』
「ありがとうございます。
個人的には素晴らしいお考えであると感じております。
恐縮ですが、ミクロの話を掘り下げさせて下さい。
来年の都知事選は小池都政、ひいては自民党政治の総決算になると言われておりますが、猊下は小池知事の再選に賛成ですか? 反対ですか?
差し支えなければ、理由も含めてお答え下さい。
少なくとも首都圏では、猊下が都知事選に独自の候補を擁立する意図があるのではないか、との噂が流れております。」
『回答します。
小池知事の再選については、反対の立場を取ります。』
「おお!
り、理由をお伺いして宜しいでしょうか?」
『これは小池都政云々ではなく、私は首長の再選そのものに対して、反対だからであります。』
「なるほど。」
『皆さんご存知の通り、都道府県知事は任地においては首相以上の大きな権限を所有しております。
一種の独裁官といっても過言ではないでしょう。
そんな強い権限を8年も12年も特定個人が独占する事は民主主義の理念に相反しております。
首長・議員は行政を厳しく監査する、そして彼ら自身も1期毎に法務・税務の観点から厳正な監査を受ける。
本来、議会と行政はそれくらいの緊張感をもって運営されるべきであると、私は考えます。
小池都知事は現在2期目、つまり8年もの間に渡って都政を動かしていた訳です。
再選云々の前に、まずは厳正なチェックを行うべきではないでしょうか?
これは都知事のみの話ではありません。
都議会も他の都道府県知事も衆参両議院も、皆に対して等しく厳格な監査を遂行すべきであると、私は考えます。
相互監視の緊張なくして為政などなし得ない!
それが私の持つ大原則であります。』
「ありがとうございます。
ここまで真剣に応対して下さるとは思いませんでした。
申し訳ありません。
私ばかり持ち時間を多目に取ってしまって。」
『明らかに公事です。
不服を持つ者はありませんよ。』
「では約束通り、マスターテープを猊下に提出し、編集済の物を弊社で…」
『その話なのですがね。
見ての通り多忙の身です。
チェックは国重社長にお願いさせて下さい。』
「は!?
いえ! それでは実質的に私のフリーハンドになってしまいます!」
『国重社長なら上手く纏めて下さるでしょう。』
「無編集もアリですか?
テロップも敢えて付けません。」
『どうぞ。』
「無編集に関しては、歴史的意義があると思っての発言です!
…そのまま流させて貰います!」
『私の発言にそこまでの価値があるとも思いませんが、どうぞ。
問題はありません。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
石賀一博 (執事)
《鳥取県東伯郡出身。》
《公証役場勤務(退職申請中)》
《鳥取市内でのイベントにて邂逅。》
「何で連れて行ってくれるの?」
『石賀さん執事ですし。
執事と言えば英国でしょ?』
「いや、まあ、映画とか漫画ではそがなイメージだけど。
ワシなんか入れて貰えるのか?」
『この白装束を着てれば入れてくれます。
向こうは日本アピールをしたくてしたくて仕方ないので。』
「いや、そがな主旨ではのう。」
『?』
「何でワシなんかにそこまでしてくれる?
単なるクレーマーだでぇ?」
『自覚があるならクレーマーではないのでは?』
「論点を逸らさんで欲しい。
どうして、赤の他人のワシにここまでしてくれるのかわからん。
アンタはワシのことなんて何も知らんだら?」
『うーーーん、怒らないで聞いて下さいね。
石賀さんに関してはガチャです。
私、スマホ持ってないんで詳細は間違ってるかもですけど。
人間が社会で生きて行くには、絶対に仲間が必要だと思うんです。
1人では生きていけませんから。』
「…。」
『石賀さんというガチャが見えた瞬間、引く事を決めました。
理由は上手く言語化出来ません。
…あー、何とか言葉に起こしてみますね。
うーん、つまり…
私って頑固な人と相性がいいんです。
割と気難しいオジサンに気に入られる事が多くて…
なので、如何にも頑固そうな石賀さんになら気に入って貰える確率は高いかな、と。』
「ワシは、アタリか? ハズレか?
どっちだ?」
『うーーーん、私が決めることではないですよ。
それを決めるのは石賀さんなので。
石賀さんが私を気に入ってくれれば積極的に助けてくれるでしょうし、嫌われたら不利益的な行動を取られてしまうかもです。
そこにはタッチ出来ないんです。
私に出来るのは、石賀さんに恥じない自分であり続ける事、それだけです。』
「そっか。
この白装束、貰うでぇ。
背中だけ括ってごせぇ。」
『喜んで。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
大西竜志 (運転手)
《香川県坂出市出身。》
《とび職》
《四国渡海時に邂逅。》
「パーティーやろ?
もっとちゃんとした車でいかな。
センチュリーとかリムジンとか。」
『だって私、大西さんを一番信用してますもの。
貴方に送って貰いたいんです。』
「気持ちは嬉しいけど。
ドレスコードってモンがあるじゃろう。
俺だってソープ行く時は、ジャケット羽織るぞ?
アルファードはないんやないか?
これ、族車やぞ?
今からノーマルに戻すんは無理やし。 」
『もしも追い返されたら2人でメシでも行きましょうよ。
焼肉食べ放題とかどうですか?』
「…いかん。
君を無事に会場に連れて行く方法を考える!」
『いやあ、ここだけの話、私はイギリスが大嫌いなんですよ。
追い返してくれるなら、そっちの方が嬉しいかなと。』
「そのパーティーに出る事にメリットはあるの?」
『まあ、領事館主催ですから…
箔付けとしてはベターなんじゃないですか。』
「男は箔付けてナンボやぞ。
行っとけ。
騙された思うて素直に行っとけ。
きっと君のプラスになる。
…その白装束、俺にもくれ。
車については寺之庄君と相談して来る。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
伊地知義和 (運搬担当)
《鹿児島県鹿屋市出身。》
《トラック運転手》
《坊門総業から移籍。》
「移籍って、ああいうモンはスポーツ選手のするものだと思ってました。」
『坊門会長に怒られませんでした?
私がかなり我儘言ったから。』
「猊下を褒めておられました。
《カネの使い方を知っている。》と。
会長の言葉として最高の褒め言葉ですよ。」
『伊地知さん。
結果として短期決戦となるかも知れません。
最悪、貴方のミッションが今日で最後になってしまうかも知れません。
ですが、伊地知さんにお願いするポジションは私にとって極めて重要…
いえ、文字通り命運が懸かってます。』
「でしょうね。
あの札束は、もはや洒落にならないでしょ。」
『万が一、遠市一党が逮捕されるような情勢になったら
《上の人同士の指示で作業してただけなので、よくわからない》
これで通して下さい。
貴方に負担を掛けたくないんです。』
「…お断りします。」
『え!?』
「言ったでしょ、私の夢は仲間と一緒に冒険することだって。
私は心の弱い人間ですが…
それでも自分の夢だけは裏切れません!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
沢下球児 (運搬担当)
《和歌山県東牟婁郡出身。》
《トラック運転手》
《坊門総業から移籍。》
「俺、昔から仕事が続かないんです。」
『え? そうなんですか?』
「飽きっぽい性格で、親や教師からもいつも叱責されていました。
堪え性がないって。
特にルーチンワークと絶望的に相性が悪くて、バイト先でいっつも喧嘩ですよ。
《こんな下らねー仕事やってられっか》ってね。」
『…。』
「運転手なんか一番向いてない仕事ですよ。
今だから言えることですけどw
…でも、猊下の荷物を運んでる時に退屈は感じません。
上手く言えませんけど、何かの役に立ってる実感があるんです。
さっきの徳島のTVのインタビューを拝見して、改めて確信しました。」
『これからもそう思って頂けるよう精進します。』
「猊下!」
『はい?』
「俺を見つけてくれてありがとうございます。
やっと人生が始まりました。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
小牧晃 (防諜顧問)
《出身地非公開。》
《所属部署非公開。》
《某局某部署から出向中》
「さて。」
『はい。』
「あちらに居られるのが、公安庁の皆さんです。」
『でしょうね、やっぱり雰囲気ありますね。
防諜分野の人って、武官の威圧感と文官の粘着性を備えてますよね。』
「それ思っても言わないでね。
真人間は全員気にしてるから。」
直訳すれば《小牧以外はそれを侮辱と認識する感性を持ち合わせていない》ということである。
『えっと、どうして敷地の外に?』
「いや、君が入場許可を出さなきゃ、向こうも立ち入りようがないでしょ。」
『ああいう部署の人ってズカズカ入って来る印象あるんですけど。』
「予算を割り振ってくれるかも知れない君に対して、そんな馬鹿なことする役人は居ないと思うぞ?」
『え?
公安庁にも予算割り振った方がいいですか?』
「彼らは当然自分達も貰えるものだと考えてる。」
『えー!
そうなんですか?』
「いや、弊局に1000億くれたじゃない。」
『そんなこともありましたねえ。
え? ひょっとして連絡局が貰えたんだからウチもって理論ですか?
いやいや、子供じゃあるまいし、そんな。』
「役人って幼稚だよ。
霞が関って大人の幼稚園だから。
特に予算が絡むとねぇ、感情論が前面に出るよ。」
『じゃあ、まあ、あの中から代表1名の入場を認めると伝えて来て下さい。
小牧さんの同席を認めるなら挨拶も許すと。』
「ああ、それだと河西部長が来ちゃうなぁ。」
『怖い人なんですか?』
「真面目な人。」
『私との相性はどうですか?』
「良くはないんじゃないかな。
君、ふざけたオッサンか不器用なオッサンが好きでしょ?」
『…好きですね。』
「河西部長は仕事の上では器用だけど、ふざける才能は無い人。
ちな東大法学部。」
『ちなみに小牧さんは、どうしてそんなに面白いのですか?』
「役人が嫌いだからじゃないかな?」
『だったら何も公務員にならなくても。』
「まったくだよ。
入省する前に自覚したかったなあ。」
小牧が小走りでキャンプ場の門前に向かい…
何やら怒鳴り合っている。
まあ、似たような任務内容の部署が予算絡みでかち合っちゃうとね、嫌でも喧嘩になっちゃうよね。
「河西で御座います。」
『遠市厘で御座います。』
河西は横目で小牧を睨み続けている。
「…内々にお耳に入れたい事があるのですが。」
『はぁ。』
その情報の内容は知らないが、聞く価値がないことだけは知っている。
河西はきっと俺が小牧を退去させるのを待っているのだろう。
チラチラと河西が目線で意思を送って来る。
俺は気付かないフリを続ける。
「猊下の利益にも叶う情報で御座います。」
その情報の内容は知らないが、利益がないことだけは知っている。
河西は横目で小牧を睨みつけたままニッコリと笑う。
『河西部長。』
「あ、はい!」
『私は、防諜こそが国家の基幹であると信じております。』
「おお!」
『なので防衛省さんや公安庁さんには、もっと適切な額の予算が割り振られるべきだと考えております。
国際的に見ても我が国の防諜予算は低すぎですよ。
何よりもっと職員の方の地位を向上させるべきです。』
河西は一瞬喜び掛けてから慌てて表情を殺す。
本来、こんな風に感情を出す男ではないのだろう。
だが、人間と言うのは職務をストレートに評価されると、やはり歓びを感じてしまう生き物なのだ。
『河西さん、これは独り言です。
私は日本国の為に資産を使いたい。』
「…はい。」
『インテリジェンスに関連する分野…
どうですか?
現在、予算は足りてますか?
足りているなら、こちらとしても喜ばしいことなのですが。』
まあ、そういう話の運び方だ。
別に俺の駆け引きが特別に優れている訳ではない。
最初からカネというカードを無限に持っている上に、異世界で最高権力者である魔王職を務めていた。
なので部長クラスの思考は手に取るように読めるし、転がし方の想像も付く。
そしてこの話の持って行き方は小牧を練習台に念入りにシミュレーションして来た。
幾ら河西がベテラン役人とは言え、たかだか部長クラスに高額寄付を受領する権限はない。
従って現場で処理し切れない金額(今回は1000億)を提示したら、自動的に上司を連れて来ざるを得ないのだ。
そもそも出所不明のキャッシュを寄付として受け取っていいのか、それを判断する権限を河西は持たされていない。
下手をすると総理大臣でも独断を許されないピーキーな提案である。
勿論逆に、これだけの寄付額をこの場で断るなどもってのほかである。
河西はこの案件を持ち帰らざるを得ないのだ、そして金額が金額なだけに、次の交渉にこの男は出席すらさせて貰えないだろう。
役所はこういう原理で動いている。
なので役人から上役を引き出す必要がある場合、直ちに上司に報告しなければ官僚生命が絶たれるような案件をぶつけ続けるのが好ましい。
今回、俺は河西に対して宇野局長の名前を出した。
そう、内閣国際連絡局は局長が既に挨拶をしているのに、公安庁は部長級を寄越して来たのだ。
俺は別に何とも思わないのだが、役人の感性ではこれは大失態となる。
うっかり下っ端なんかを派遣してしまったから、一部局如きの風下に甘んじざるを得ないのだ、と。
今、河西が見せている怯えの色。
別に俺如きに怯えている訳ではない。
帰還してから上司に責任を擦り付けられるのではないか、と危惧しているのだ。
手に取るようにわかる。
ドナルド・キーンという天才は、役人のこの心理を読み切った上で操縦する術に長けていたのだが、鈍劣たる俺はそんな烏滸がましい事はしない。
ただ無言でペコペコ頭を下げ続ける。
俺の年齢・俺のルックスに操縦されたいと思う人間など居る筈が無い。
東大を出たような人間なら尚更である。
なので相手の判断には関与せずに、称賛とヒントだけを投げ掛け続ける。
何故、小牧は特別扱いされているのか?
河西の性格ではわからないと思うが、そこは必死に考えて欲しい。
俺は役所のルールを摂理か何かのように誤解している馬鹿が大嫌いなのだ。
小牧はそうではないと真理を知っている上で、役所のルールに沿って卓越した評価を自部署から得ている。
つまり、役所の内外で通用するタイプ。
本来は部外者と調整させるのは、最低でもこの水準であるべきなのだ。
自由都市の省庁でははっきりとそうだった。
役人としての優劣に加えて、人間としての賢愚が緻密にランク付けされていた。
馬鹿が喋れないシステムが見事に確立されていたのだ。
日本は人事評価があまりにぬる過ぎる。
小牧は馬鹿でないから俺の側に居る事を許されている。
俺も担当を変えられたくないから、小牧を通して皆に誠実に振舞っている。
他の省庁もこれに合わせて欲しい。
カネはやる。
代わりに俺の負担は極限まで減らして欲しい。
『河西部長、最後に補足宜しいでしょうか?』
「はい、何なりと。」
『ここに居る小牧氏は連絡局から派遣の体ですが…
私個人は私的な防諜顧問と認識して接しております。
無論、彼の上司である宇野局長にその旨は伝えております。
なので、連絡局さんと公安庁さんを比較する意図はないです。
その点だけご理解頂けるとありがたいです。』
直訳すれば、《これからも省庁同士で忠誠合戦をさせる》という意味である。
河西も馬鹿ではないので、ちゃんと意図を汲み取ってくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
金本光戦士 (記録係)
《大阪市旭区出身。》
《動画配信者。》
《遠市厘の級友・金本光宙の弟。》
「ねえ、リン兄ちゃん。」
『んー?』
「さっきの人はお巡りさん?
いよいよ兄ちゃんも年貢の納め時?」
『公安庁。』
「スパイ?」
『私はそれに準ずる部署だと解釈している。
諜報というより監視かな?』
「兄ちゃんが逮捕される話なのだ?」
『いや、寄付をしたいって持ち掛けた。』
「オイオイ、また金権政治っスか?
偽札なんて寄付して逆に怒られないのだ?」
『さあ、受け取る受け取らない。
怒る怒らないは向こうが決める事だから。』
「今日の偽札はどうするのー?」
『運が良ければ住之江区の倉庫に自動的に収まるかも知れない。』
「くすくす。
じゃあ、きっといつも通り兄ちゃんの周囲に噴き出すんだw」
『だろうねw
私、近いうちに札束に溺れて死ぬと思う。』
「やれやれ仕方ねーな。
ボクが浮き輪でも用意しといてやるのだ。」
『あはは、心強いな。
私はずっと君に助けられている気がするよ。』
「…ねえ、リン兄ちゃん。」
『ん?』
「もしもボクがピンチになったら…
兄ちゃんは、また助けてくれる?」
『無論だ。』
「…今、かなりヤバい状況なんでしょ?」
『関係ないさ。
君は俺が絶対に守る。』
光戦士はそれには何も答えずに、はにかんだように笑うだけだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
16時30分。
眼前の巨大なモニター。
住之江の倉庫にはヘルメットを被った田名部と斑鳩が居た。
『田名部さん! 斑鳩さん!
一番危険なポジションに居られる事だけは御自覚下さい。
そちら側に射出する場合、倉庫のどこに紙幣が噴き出すか予想が付きません。』
「猊下!
それでは射出中は倉庫の外側に!
屋根のある箇所で待機します!」
『そうですね、カメラを残して外側に退避していて下さい。
くれぐれも事故防止を最優先して下さいね!』
『了解!』
俺は何度も脳内で今までの事例を振り返る。
この【複利】なるスキルはカネを扱っている癖に結構アバウトである。
金額に関してはキッチリ支払ってくれるが、出現場所が緻密ではない。
今までも遠隔地にエリクサーを噴出させたり、清磨箱の中に狙ってカネを出した事はある。
だが、再現性に自信がない。
きっとこれは極めて俺の主観に左右される能力なのだろう。
沢下の4㌧車が静かにバックして来て定位置に着いた。
そして伊地知は今日から10㌧車。
双方免許は持っていたが、このサイズの車両を運転した経験が殆ど無い。
なので昨日から猛練習してくれていた。
「猊下ー!
全部拾いますからー!」
沢下の声がここまで響く。
俺はゆっくりと人の輪から離れ、広場の最中央に起立した。
もう迂闊にしゃがみこめない。
座った姿勢だと、射出時に圧死する確率が上がるからである。
ふと、ホースを握り締めたコレットの真剣な表情がフラッシュバックする。
そうだな、君は優秀だよ。
『後藤さん!
モニター近すぎます。
一旦下げて!!』
「了解!!」
16時55分。
最後にゆっくり周囲を見渡す。
斑鳩には預り金の増加禁止を厳しく言い渡してある。
なので今日は200億しか増えていない。
(斑鳩一族を筆頭に皆が俺のカネを複利で回してるから多少の増加は目を瞑る。)
もしそうなら、恐らく事故は起こらない。
『ふーーー。』
最後に深呼吸。
向こうで寺之庄がカウントダウンに入った。
俺は脚を無言で肩幅まで広げ、やや腰を落とす。
射出反動での転倒さえなければ、大きな負傷はしない筈だ。
万が一転んでも、あの距離なら後藤が1秒で助けてくれる。
「5・4・3・2・1…」
《1005億1665万0000円の配当が支払われました。》
『グッ!!』
やはり射出反動は日に日に大きくなる。
異世界では無邪気に硬貨だけを噴出させていたが、地球で射出させている紙幣。
これに苦しめられている。
滞空時間が長い為、視界が著しく奪われるのだ。
しかも結構風圧がある。
配当額が100億を越えた辺りから、俺は日本国銀行券の風圧に怯え始めている。
そして今日はとうとう1000億を突破…
『ぐおおおおおおッ!!』
ヤバい!
重心を持って行かれる!!
これは1000億円を射出した経験のある方ならご理解頂けると思うのだが、射出額が1000億を越えると顔の周囲の空気が紙幣の渦に僅かに奪われる。
不規則に舞い散る紙幣が口や鼻を塞ぐ恐怖と戦いながら姿勢を保持する。
舞い散った一万円札がゆっくりと俺の鼻に張り付く!
…死の気配!?
「トイチさあああああああん!!!!!」
背後で後藤が絶叫する。
きっと彼の位置からだと俺が紙幣に呑まれたように映るのだろう。
乱暴に拳で口元の福沢を振り払う。
「想定なぁーーーーーい!!!!」
予め決めておいた合図。
そう、これはまだ何とか想定内。
今日の俺は溺死しない。
『ふーーーー、ふーーーーー。』
恐怖に見開いた目で周囲を見渡す。
収拾用に広げておいたシートを遥かにはみ出している。
背中が熱い。
これは汗なのか?
まるで湯でも掛けられたように汗をかいていた。
…恐怖。
どんなに強がっても死ぬのは怖い。
違うな、もはや俺には予定外の死は許されない。
『ふうう。』
呼吸を整える。
駆け寄って来た光戦士が背中をさすってくれる。
『大丈夫、私は大丈夫だ。』
そう俺はまだ大丈夫。
先に死ぬのは俺か?経済か?
どっちだろう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
2501億1100万0000円
↓
6701億1100万0000円
↓
7706億2765万0000円
↓
3506億2765万0000円
↓
3422億2765万0000円
※合計4200億円の預託を目視確認
※配当1005億1665万0000円
※元本4200億円の確認。
※配当用の84億円を別途保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『お2人共、無駄足を踏ませてしまいました。』
モニター越しに田名部・斑鳩の両名に詫びる。
やはり斑鳩翁の用意した倉庫など、俺は私物として認識出来なかった。
異世界で母娘や四天王に用意させた倉庫には簡単に射出出来たのに。
その倉庫を俺に預託したのが身内か他人かで判定は変わるのだろうか?
或いは不動産契約を自分の名義で行う事で、俺は俺の不動産であると認識出来る?
線引きが謎だ。
誰しも自分の所有権感覚など日頃考えていないのだから。
ふと思いつく。
…俺の身内判定はパーティーを組んだ経験の有無なのだろうか?
もしそうなら腑に落ちる。
母娘は身内判定、俺が婿入りに関しては納得しているから。
キャラバン旅のダグラス組・グリーブ隊も仲間判定。
そして四天王。
クュ医師やマーティンや(株)エナドリを託したベーカー社長なんかも仲間判定はあると思う。
人間関係に齟齬を来たす可能性がある為に口外する気はないが、
パーティーメンバーが用意してくれた倉庫なら、そこに射出出来る気がする。
安宅が用意してくれた木更津の倉庫、きっと俺はそこなら《自分の倉庫》と認識出来る気がする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
メンバーは白装束で統一した。
宗教的な意図はない。
万が一乱戦が発生した場合の誤射を防ぐ為の措置である。
後藤にだけその真意を伝えた。
公式なパーティーなので当然彼はゴルフボールを所持していない。
何故かゴルフボールと同サイズの鉄球を連ねた数珠を首から掛けさせているが、宗教用具なのでセーフ。
最後に《襲って来たら全員殺してもいいよ》と伝えた。
俺はそれ程の敵意を資本家に対して持っている。
資本主義の総本山がロンドンであることも重々承知している。
そんな奴を呼ぶなよ、と声を大にして言いたい。
眼前に聳えるコンチネンタルホテルを見上げながら、そんな事を考えていた。
18時45分。
車は付近にある坊門総業所有の立体駐車場に停めた。
JR大阪駅直結・グランフロント大阪。
英国系ホテルのインターコンチネンタルホテル大阪はこの総合ビルに併設されている。
単独の建物でない分、ややセキュリティに不安がある。
1階フロアのショッピングセンターを歩きながら、そう思う。
白装束の一団が現れた瞬間、群衆が静まりかえって道を開けた。
そして最中央に遠市厘が居ることを認識した瞬間、群衆は興奮の笑みを隠さずにスマホで撮影し始めた。
誰一人として俺達に撮影許可を申請した者は居なかった。
俺達が群衆の中央をのんびり歩いていると、ホテルの職員っぽいオジサンが飛び出して来て誘導してくれた。
流石に20階のレセプションでスマホを向けて来る無礼者は居なかったが、すれ違う者全員が凝視して来るのは同じだった。
まあ、この格好だしな。
2人だけ俺達を見ても全く動揺の気配の無い者が居たので、小牧にチェックさせる。
隠し撮りしてた後藤が2名の背格好を全員に共有。
俺には近づけない事に決まる。
レセプションの奥にお洒落なバーが見えたので少し覗いてみようとすると、礼服のオジサンがバタバタと走って来て坊門や俺に挨拶をした。
どうやら久保田オッペンハイマー証券の偉い人らしい。
全メンバーが俺の盾となっているのでオジサンが何を言っているのか分からなかったのだが、黙礼しておく。
向こうが驚いたのは、こちらの人数が多い事。
何せ、俺・坊門・斑鳩・後藤・寺之庄・光戦士・七感・国重・浦上・石賀・大西・小牧の12人で来ている。
恐らく主催側が呼びたかったのは、俺・坊門・斑鳩の3人だけ。
随員はメイン会場にまでは入場させて貰えないと踏んでいたのだが、全員上がる事が許された。
「猊下がゴネたそうな顔で待ち構えていたからでっせ。」
エレベーターの中で坊門に耳打ちされる。
嘘、俺また顔に出てた?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺達がパーティー会場に足を踏み入れた途端。
喧騒が静まった。
怖い位に物音がしない。
そりゃあそうだろう。
俺がパーティー客でも白装束の一団が乗り込んで来たら脳が停止する。
「カネカネカネカネナンマイダー。」
恐らく七感はギャグとして言ったのだと思うが、ますます会場の雰囲気が冷える。
本来俺達を迎えたかった筈の証券会社のオジサン達が完全に固まってしまった。
「カネカネカネカネナンマイダー。」、坊門。
「カネカネカネカネナンマイダー。」、後藤。
「カネカネカネカネナンマイダー。」、浦上。
声の大きい3人が続いた事によって、会場は極度の緊張状態に陥る。
『カネカネカネカネナンマイダー。』
俺も申し訳程度の声量で唱える。
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
いつの間にか証券会社の人も唱和していた。
きっと体育会系採用なのだろう、アドリブの割に声が朗々と響いて来る。
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
「カネカネカネカネナンマイダー。」
ゴメン! 完全に方針ミスった!
パーティーをぶち壊してゴメン!
これ、外交問題に発展してもおかしくないぞ!
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
奥の方に陣取っていたガイジンさんの1人が叫ぶ。
声のトーンからして怒っている事は確実!
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
「KANE・KANE・KANE・KANE・NANMAIDARRRRR!!!!」
奥からわらわらとガイジンさん達が唱和しながら湧いて来る。
俺達に合わせている訳ではない。
《喧嘩売ってるのかテメーら!?》というニュアンスを込めた返答である。
「HAHAHAHAHA!!」
中央の恰幅の良い老紳士(典型的なアングロ顔)が形式的に笑いながら歓迎のジェスチャーを取るが、目にはちゃんと憎悪が宿っていた。
そりゃあね、俺が貴方の立場でも喧嘩を売られたと解釈するよね。
騒然とする会場の中で七感だけが満足気に笑っている。
あ、このオバサンこのシーンを漫画にするつもりだ!
誰だこんな女を連れて来たのは、俺だけど!
会場のどこからか《威風堂々》が鳴り始める。
いや、違うな。
《威風堂々》の演奏が始まった瞬間に俺達が念仏を唱えてしまったのだ。
そりゃあ怒るよな。
詫びとして会場の掲げられたユニオンジャックに南無南無と手を合わせる。
メンバー全員が無言で俺を真似る。
これは捉え方によっては、おちょくっている様にも見えるジェスチャーである。
現に会場の日本人達は《え? そんなポーズとって良いの?》と非難と驚愕の目でこちらを見ているが、ガイジン勢は額面通りに受け取ってくれたらしく僅かに殺気を緩めてくれた。
《威風堂々》をバックに極めて身なりの良い老ガイジンが英語でスピーチを始めた。
【ジャパン】とか【コングラチュエーション】とか断片的に聞き取れているので多分あれは英語なのだろう。
脳味噌を総動員してスピーチを聞き取ろうと試みた結果。
どれだけ相手がゆっくり話してくれても、そもそも英単語を知らなきゃ聞き取れないよね、との結論に辿り着いた。
遠市一党がキョロキョロしているので、途中から通訳が入る。
まあ要するに《西側諸国は団結してロシアの脅威に立ち向かいましょう》という趣旨だった。
後、オマケ程度に《多様性がどうたらこうたら》《地球環境がどうたらこうたら》という話題に飛んでから話は終わった。
ガイジン勢が全員感嘆した様な表情で大きく頷き合っていたので、原語で理解出来れば名演説だったのかも知れない。
皆が拍手していたので俺も拍手する。
内容がわからないスピーチに賛意を示すのは苦痛だが、どうせ共感出来ない内容なので中身は分からない方が精神衛生上好ましい。
俺が拍手するのが余程意外だったのかガイジン勢がこちらを見て驚いた顔をしている。
いや、拍手くらいするよ。
何だと思ってるんだ。
このパーティーは立食形式であり、椅子は壁沿いに並んでいるだけだったのだが、疲れたので座らせて貰う。
隣を見ると90歳くらいの老人(年を取り過ぎていて日本人なのか外国人なのかよく分からない)が憔悴した表情で放心していた。
「perape-ra.」
突然、その老人に話し掛けられる。
声が皺がれている上に、英語なので全く聞き取れない。
『sorry, I can not speak english.』
俺なりに誠実に拒絶するのだが、会話への同意と解釈されてしまったのか老人は嬉しそうに会話を続けて来る。
「perape-ra♪ perape-ra♪」
コミカルなジェスチャーを交えてフレンドリーに話し掛けて来るが、老人が全く何を言っているのかわからない。
機嫌が良さそうなので、怒ってはいないようだが。
俺はペコペコと頭を下げながら、誰か親切な人が通訳を引き受けてくれるのを待っていた。
勿論、世の中というのは厳しいものだった。
「perape-ra♪ perape-ra♪」
『haha-ha♪ haha-ha♪』
無限とも思える時間を耐え凌いでいると、僅かに日本語を喋れるっぽいガイジンさんが駆け寄って来た。
聞くところによると老人の息子さん(古希を越えているが)らしい。
息子さん曰く、若き日の老人は下士官として太平洋戦争に参加。
シンガポールで山下奉文の軍団と死闘を繰り広げたとのこと。
《かつては憎んでも憎み切れなかった日本人と対露戦を共闘するのだから、人生というのは分からないものだ。》
そういう意図で俺に笑い掛けていたらしい。
途中で老人が行った奇妙なジェスチャーは、《あの時の日本人はボートや自転車であちこちから攻めて来たんだ、死ぬかと思ったよ。》という意味だったらしい。
俺が感心していると、坊門がやって来て証券会社の人達を紹介してくれる。
言質を取らせない為、基本的に直答は許さない。
後藤の背中越しに頭だけペコペコ下げておく。
やはり運営一同の皆の俺に対する態度が硬い。
仕方ないよね、君達の顧客を引き抜き続けているのが俺だもんね。
今日俺が預かった4200億。
あの中の7割程度は坊門一派が君達から引き上げた投資資金らしいね。
そりゃあ、刺されても文句言えないね。
最初、形式的な挨拶かと思ったのだが、ずっと坊門とヒソヒソ話している。
どうやら本当に経営がマズいらしい。
なので再び証券口座に幾らか入れて貰えないか頼んでいるとのこと。
入金してやればいいと思うのだが、坊門も斑鳩も遠市厘という玩具で遊ぶのにすっかり夢中になってしまっている。
証券口座に預けるカネがあるのなら、少しでも俺への元金を増やしたいらしい。
もはや理屈ではないのだ。
俺の【複利】は見ていて楽しいらしい。
坊門曰く、膨大な紙幣が噴出する様子、俺が懸命に圧死や窒息を免れようとする姿、何より若者達が遠市厘を中心に苦悩しながらも前進する有様。
老人から見てこれ以上の愉悦はないらしい。
証券会社から投信を買ったとしても、年に一度だけ資産報告書が送られて来るだけ。
一方、俺にカネを預けて同行していれば公安とか烏天狗とかどんどん新キャラが増えて、実際に話す事が出来る。
しかも俺には寿司ペロ鷹見との接点もあり、あの女の配信にたまに出演する。
老い先短い老人にとっては究極の玩具なのだろう。
「猊下、彼らが猊下の証券口座を作らせて貰えないかと。」
坊門が戻って来て耳打ちする。
『あ、いや…
戒律で作れないと伝えて下さい。』
無論、神聖教にそんな戒律は存在しない。
何なら異世界にも普通に投資信託や債券市場が存在して坊主共が嬉々として利殖に勤しんでいた。
でもまあ、異世界の風習なんて誰にも確かめようがないからね。
これからも面倒になれば《戒律です》でゴリ押ししよう。
大体、俺が口座作っちゃうとデジタル的な不具合が出そうだし、日本の金融業界ってIT回り弱いから絶対にリカバリー出来ないでしょ。
『坊門さん。
彼らは幾ら位の入金を希望してるんですか?』
「…まあ文脈からして10億くらいでしょうか?
それも理想郷ファンドで買わせたいらしいですな。
勿論、買いまへんで。
流石に年利1%の元本保証なしは…」
『買った方が政治的には好ましいですか?』
「…無難ではありますな。
バタバタと金融機関がポシャったら、関西の地力が大幅に落ちますよってに。」
話の流れを聞いているうちに後藤と目が合い2人で笑う。
不本意極まりないが、まあ《大阪を滅ぼさない。》という約束だからな。
後藤響には世話になりっ放しだから、ここで義理を返す。
『坊門さん。
私が200億出資するので、お2人の名義で各社に注入しておいて下さい。』
「え!?
いや、そんな、猊下にメリットないでしょ。
えっと、発生した利息を猊下に納めれば宜しいでしょうか?」
『いやいや、あくまで掛け捨ての保険ですので。
生じた利益は全て坊門さん達のものです。』
そんなヒソヒソ話をして200億の譲渡を決める。
斑鳩は真顔で恐縮しているが…
ぶっちゃけ、元々はコイツラのカネだしな。
「せめて17時以降に!!!」
必死な顔で坊門が訴えるので思わず笑ってしまう。
そう、もはや問題は名義や金額ではないのだ、この歪な奇跡をどれだけ巧妙に社会と整合させるか、彼らの関心はその一点にしかない。
傍目には狂気以外の何物でもないが、正直楽しい。
だって俺達男の子だもん。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
壇上には日本人・英国人が代わる代わる登り、ウクライナ戦争が如何に順調に進行しているかを力強いスピーチで訴えている。
彼ら曰く、年内にもロシアはクリミア半島を放棄し国際社会に和を乞うてくるそうだ。
中国やイランも慌ててロシアへの賛意を取り消し、西側社会の永遠の勝利が約束されるらしい。
朝、ウクライナの高名な指揮官が戦死したニュースを見たばかりなのでリアクションに困る。
ちなみに昨夜は中国が最新式の自爆ドローンをロシアに提供する事を決定したニュースを見た。
画面の中ではプーチン大統領と習主席が満面の笑みで握手を交わしていた。
というか、地図を見る限りロシアがウクライナ領の2割以上を占領しているのだが、それを年内に放逐出来るものなのだろうか?
俺は戦争の素人なので、実際は誰が優勢なのかはわからない。
ただ、カネには困らない身分になったので、誰がカネに困っているかだけは手に取るようにわかる。
本当に皆の懐事情が何となく見えてしまうのだ。
このパーティーの主催側に後が無いことまでも嫌でも伝わって来る。
俺は壁際の席から殆ど動かない。
隣の元下士官老人と共に植物のようにボーっとしている。
たまに老人が機嫌良さげに「perape-ra♪ perape-ra♪」と話し掛けて来るので、『いえーす』とか『そーりー』とか愛想よく話を合わせておく。
たまに老人が壇上に拍手を送るので、それにも同調しておく。
途中、老人がワインを溢したので白装束の袖でゴシゴシ拭いてやった。
コレットが寝たきりの俺をそうやって介護していたからな。
「トイチさん、ご歓談中失礼します。」
いつの間にか反対側に回り込んでいた後藤が耳打ちしてくる。
『はい、どうぞ。』
「主催が、猊下を歓迎する為のスピーチを行いたいと。」
『え? 私を?
いや、別に、反対はしませんが。』
「登壇して頂けないか、という意図です。」
気が付くと、主催達が不安気にこちらを見ている。
『参ったな。
本当に顔を出しに来ただけなので、別に登壇とかは…』
婉曲に断れないか考えていた所、隣の老人が満面の笑みで自転車を漕ぐようなジェスチャーをする。
マジかー。
『いえーす、いえーす、さんきゅーべりまっち。』
俺は自転車を漕ぐジェスチャーで立ち上がると老人にウィンクをした。
成程、彼にとっては銀輪部隊こそが日本の象徴なのだろうな。
老い先短い老兵に俺からのささやかなサービスをくれてやろう。
何がおかしいのか老人はずっとケラケラ笑っていた。
メンバーで固まって演台まで移動。
差し出された握手には気付かないフリで通す。
1人だけ真正面に回り込んで強引に握手を求めて来たガイジン(燕尾服を着ていた)が居たので、丁寧にニコニコとお辞儀してスルー。
握手は絶対にしない。
切り取られて悪用される事が目に見えている。
主催側。
司会者は関西きょうせいアプター証券の孝文・J・ゴールドバーグ氏。
顔は東洋人とも西洋人とも取れる顔だが、体つきが完全に東洋系のそれである。
きっと日英ハーフである事が人選の理由なのだろう。
ちゃんと通訳が翻訳音声を出してくれているので、俺でも聞き取れる。
孝文が爽やかな笑顔でスポットライトを俺に誘導する。
和風な雰囲気のBGMも鳴り始める。
何を言っているかは聞き取れないが、どうやら俺を好意的に紹介してくれてるっぽい。
笑顔で促されたので
『神聖教団の遠市で御座います。
本日はお招き頂いてありがとうございました。』
と型通りの挨拶をする。
カメラマンが困った表情をしているのは、俺が全く笑顔を見せていなからだろう。
彼らとしては、世界的有名人の俺が英国主催のパーティーで親英的に振舞う絵が欲しいのだ。
気持ちは痛い程理解出来る。
でも表情って情緒に引き摺られるものじゃない?
登壇するとこまで妥協したんだから、もう勘弁してよ。
業を煮やした孝文が、さも円滑に進行しているような表情でスピーチを再開する。
降壇して良いのかと周囲を見回すが、まだ駄目らしい。
要は孝文のスピーチは《日本国は西側社会の一員としてウクライナ支援を貫徹し世界に自由をもたらすべき》という趣旨。
先程小牧に教わったのだが、米軍の偉い人とか外務省の偉い人もこの会場に来ているらしい。
多分あそこのガタイのいい連中が軍人グループなのだろうな。
要はここは外交の前線なのだ。
「遠市猊下。」
隣から突然話しかけられて驚く。
…孝文、オマエ日本語喋れたのか。
『あ、はい。』
「驚くべきことにプーチン大統領はLGBTを認めない発言を繰り返しているのですよ!」
『あ、はあ。
そうらしいですね。』
「こともあろうにですよ!
プーチンは同性愛や性別適合手術の権利を悪魔崇拝とまで非難しているんです!
しかもロシア最高裁はLGBT運動を過激派認定する判決を今まさに出そうとしております!」
『あ、そうなんですね。』
「これは単にウクライナだけの話ではありません!
我々西側世界の自由に対する侵略なのですよ!」
『はあ。』
「御安心下さい猊下。
我々はLGBTの人権を守る為に戦っております!」
会場の一部から突然拍手が沸き起こる。
なるほどあの一角がリベラル席なのか。
反対側には苦虫を噛みつぶしたような表情の連中がいた。
ふふっ、ちゃんと保革を隔離している辺り配慮が行き届いてて素晴らしいな。
「歴史を鑑みれば!
侵略の火種は常にモスクワから起こっております!
反対に!
正義と自由の気風は常にロンドンから立ち上がっているのです!」
『…ボーア戦争。』
「御安心下さい、猊下!
西側社会は多様な価値観を護る正義の砦です!」
会場から盛大な拍手が…
違うな、リベラル席の連中が会場中に分散して全力拍手を周囲に強要しているだけだ。
あ、何か見えて来た。
黄色人種の血が混じった孝文は英国内における《多様性枠》なんだ。
本国では日本進駐要員程度にしか扱われていないのだろう。
それ故に、この男は自らの存在に肯定的なLGBT運動に好意的だし、恐らくはリベラル勢からも支援を受けている。
きっと彼にとってウクライナ戦争とは領土の侵略ではなく、価値観の侵略なのだ。
だからロシア側のLGBT排除の動きに敏感でそれを争点の様に捉えている。
無論、西側首脳やプーチン大統領にとってそちらは枝葉末節に過ぎないのだろうが、この男にとっては自らの存在を脅かされるほどの恐怖を感じさせられるのだろう。
そして英国内の保守派は、孝文のこの思考に強い不快感を持っている。
「猊下、ロシアのLGBT弾圧については如何なる所感をお持ちでしょうか?」
孝文が期待のこもった目でこちらを見て来る。
…アレ?
こいつら思想調査とかしないのか?
俺、鷹見の配信でLGBT運動に対して批判的なコメントをしてるぞ?
『えーっと。
私が小学生くらいの時でしょうか。
カトリック教会とロシア正教会の法王同士が会談を行ったニュースを覚えております。
確か500年ぶりだか1000年ぶりだか、そんな歴史的会談だったようですね。
手元に資料がないのでうろ覚えですが、同性愛に反対する共同声明を出したんじゃなかったかな。』
小学生の時に見たというのは勿論嘘だ。
LGBT議論に巻き込まれた時の防衛策として、一応各国・各勢力の同性愛への姿勢は頭に入れている。
「…。」
孝文は驚愕の表情で俺を見ている。
まるで裏切者に向けるような目だ。
どうやら彼は俺を勝手に仲間認定していたらしい。
『そもそもキリスト教って同性愛を禁忌としているので、そのキリスト教圏で同性愛が違法化されるのは自然なことでは?』
「あ、いや!」
『ウクライナ戦争の争点は宗教でも思想でも無く、ロシアが軍事力を用いて国境線の変更を企図しようとした事に対しての是非です。
同性愛云々は枝葉の議論に過ぎません。
スタンスをはっきりさせておきますね。
軍事力を用いての国境線変更、これに対して私は反対の姿勢を取ります。
世界全体の調和を乱す侵略行為であるからです。』
俺は保守席だけを見て話している。
『同様の理由で移民行為にも反対します。
ロシアも攻撃手段に使ってますよね。』
会場が静まり返る。
そりゃあそうだろう、英国史=移民史だからな。
『他国へのプロパガンダ工作にも反対します。
ロシアも攻撃手段に使ってますよね。』
更に静まる。
オマエラのパーティーなのにゴメンな。
だって仕方ないだろ。
俺の嫌いなことをコンプリートしてるのがオマエラなんだから。
『そして何よりタックスヘイブンにも反対です。
ロシアも攻撃手段に使ってますよね。』
会場から、敵意のスイッチが入った音が聞こえる。
まあな、もはや誤魔化すつもりはない。
君達の主敵はウラジミール・プーチンではなく、この遠市厘なのだ。
隣の孝文が早口の英語で何事か喋り始めている。
顔付きからして俺の発言を切り上げさせたいのだろう。
『租税回避なんて最悪の侵略行為でしょ。』
一番言いたかった台詞だが…
どういう仕掛けかマイクの電源は切られていた。
だが、趣旨は伝わっているだろう。
この会場には俺以外に馬鹿が居ない。
会場がざわざわしている。
よく分からないまま、演台から追い出される。
色々な勢力が俺を遠目に見ながらヒソヒソと話している。
殆どが英語で聞き取れないのだが、たまに日本語で「話が違うじゃないか。」と聞こえて来る。
元の席に戻るまで、聴力を総動員して彼らのヒソヒソ話を聞き取ることを試みる。
彼らの目論見はシンプルだった。
《遠市厘はゲイだから、ロシアのLGBT弾圧を非難すれば必ず同調して来る筈》
そう考えていたのだ。
というより、何故か俺を我が国におけるLGBT勢力の首魁だと誤認していた。
なのに俺がロシアの同性愛違法化を許容する発言をしてしまった為に、彼らの戦略が根底から覆されてしまった。
「wikiでもちゃんと確認しましたよ!」
ヒソヒソ声の中にそんな発言もあった。
あのなあ。
Wikipediaって嘘ばっかりだぞ。
その証拠に俺はゲイではない。
「リン兄ちゃん、お疲れー♥」
『光戦士君、初パーティーの感想は?』
「ローストビーフばっかり食べてたら怒られたのだ♪」
『それはギルティだなぁw』
「だって他はマズそうな料理ばっかりだったのだ。
パルキーを煮込んだだけのものとか。」
『伊藤ハムさんに謝っておきなさい。』
「はい、兄ちゃんの分♪
全然、食べてないでしょ?」
『料理卓に行ったら、どんな絡まれ方するかわからないもの。』
「ほら、あーんなのだ♥」
『あーん、ムシャムシャ。
うん、これは私の好きな味だな。』
先程の老人が羨ましそうに見ていたので、光戦士の皿の中で喉に詰まらなさそうなプリンを喰わせてやる。
「perape-ra♪ perape-ra♪」
『you're welcome.』
老人が眠そうな様子で身体をカクカクし始めたので、息子さんを呼んで引き取らせる。
身なりからして息子さんもかなりの大物なのだろうが、顔中を汗まみれにして俺にペコペコしながら、老父と共に去って行った。
…介護って大変だよな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一応の顔も立てた気がするので帰り支度を始める。
まずはメンバーを俺の下に集めて点呼。
欠員なし。
じゃあ帰りますか、とエレベーターまで移動したところでガイジンさんに呼び止められる。
この人とはさっき挨拶した気もするのだが、周囲曰く新キャラらしい。
参ったな、異世界人は割と識別出来たのだが、英国人の見分けがイマイチ難しい。
「perape-ra! perape-ra!」
目が合うなりいきなり怒鳴られる。
相手のガタイが良いので結構怖い。
『あい、きゃーん、のっと、すぴーく、いんぐりしゅ。』
英語が分からない旨を英語で伝えたのが拙かったらしい。
火に油を注いでしまったようで、相手は顔を真っ赤にして咆哮している。
参ったなー。
「グランツ卿です。」
不意に耳元で囁かれる。
あ、孝文。
『あ、ども助かります。
グランツ卿にお伝え下さい。
私の友人が貴方と同姓でとても親近感があると。』
孝文が卿を宥める。
どうやら偉い人だったらしい。
…いや、それはいいんだが。
海外キャラ増えると困るな。
俺の脳内で異世界とごっちゃになってしまう。
グランツと言えば我が畏友カイン・D・グランツのことだったのだが、グランツ(英)が出現した事によってカインをグランツ(異)と識別せざるを得なくなった。
地味に脳が疲れる。
『あの、孝文さん、ゴールドバーグさんとお呼びした方がいいですか?』
「日本人同士なので孝文で結構ですよ。」
嘘じゃん、オマエさっき英国人って名乗ってたじゃん。
『あ、じゃあ孝文さん。
グランツ卿は何と仰ってるんでしょうか?』
「いやあ…
何と申しましょうか。」
『是非、お聞かせ下さい。』
「えっと。
英国が経済破綻したら猊下の所為だぞ、と。」
『えー、私の所為ですかー?
なーんか皆が責任を私に押し付けて来るんですよねー。
いい加減傷付くというか。』
「perape-ra! perape-ra!」
「いや! グランツ卿も普段は冷静な方ですよ!
紳士の鑑と表現しても差し支えない程に、上品で寡黙な方です。」
『…ええ、まあ。
私には確かめようがないですけどね。』
「perape-ra! perape-ra!」
「私の口から申し上げにくいのですが…
猊下が理想郷ファンドの売り出し日にぶつけてファンドを起ち上げられたでしょう?
それで我が国の財界としては、ちょっと、流石に… ねえ。」
『ファンドなんて起ち上げた記憶はありませんけどね。』
「perape-ra! perape-ra!」
「いやいや、今更とぼけるのは無しにしましょうよ。
異世界ファンド、有名ですよ。」
『えー、有名なんですか?』
「perape-ra! perape-ra!」
「この期に及んで何を仰っているんですか!
猊下が理想郷ファンドを引き合いに出して、御自身の宣伝をされるから!
みんな困ってるんですよ!」
前も天空院とこんなやり取りしたぞ?
『ご、誤解ですよ!
私が理想郷ファンドを知ったのはつい最近ですし!
宣伝もしてませんって!』
「perape-ra! perape-ra!」
「調べは付いてるんですよ。
猊下が日利1%を喧伝して年利1%の弊ファンドを皮肉っている話は!」
『いやいやいや!
本当ですって!
信じて下さいよ!』
「perape-ra! perape-ra!」
「猊下、御存知の通り…
我が国は危機的状況にあります。
英国第二の都市バーミンガム市すらも財政破綻してしまいました。
もう形振り構っていられないんです。」
『…まあ財政破綻は御愁傷様ですけど。
私に八つ当たりするのはやめて下さいよ。
大体、私が日本国内で何をしようが貴国には関係ないでしょう。』
「perape-ra! perape-ra!」
「…ポンジスキームですよね?」
『は?』
「perape-ra! perape-ra!」
「猊下の異世界ファンド、典型的なポンジスキームですよ。
どうして日本政府が動かないのか理解出来ない。」
『あ、その点は私も理解出来ません。』
「perape-ra! perape-ra!」
「この先も猊下が妨害行為を続けられるなら、告発せざるを得ません。」
『は? 告発?
何の罪状で?』
「perape-ra! perape-ra!」
「詐欺罪に決まってるじゃないですか。
貴方はポンジスキームを現在進行形で行っている。
我が国が、友好国である日本の犯罪者を糾弾するのは何ら不自然ではない。」
『え!?
イギリスって友好国だったんですか!?』
「No!!」
「いや、ロイヤルファミリー同士の交流とか、記念式典とか…
後G7の時とか、我が国とてつもなく気を遣ってるんですよ!」
『うーーん、保留で。』
「perape-ra! perape-ra!」
「兎に角。
妨害行為をやめて頂けませんか?」
『妨害も何も…
こちらは皆様からお借りしたおカネに心づけを乗せて返済しているだけですからね。
利息じゃなくて心づけね、心づけというか神様の恩寵ね。
そこは誤解しないで下さいね。』
「perape-ra! perape-ra!」
「うーーん、そこまで強弁されますか。
金融の世界では嘘は最も憎悪されます!
このままでは甚大な不利益を蒙りますよー!」
『そうは仰られましても。
私は友人たちにこれからも誠実に接していくだけの話です。
というより、理想郷ファンドこそポンジスキームでしょ?』
「perape-ra! perape-ra!」
「ちょっと待って下さい!!!
その発言は看過出来ませんよ!!!
発言を撤回して下さい!!」
『撤回の必要がありません。
年利1%?
100年経たないと償還出来ないじゃないですか!
ちゃんと払われる保証がない。』
「perape-ra! perape-ra!」
「払われますよ!
国家が保証するんですよ!?
誰かさんの姑息な詐欺商品と一緒にしないで貰いたい!」
『100年後に貴国が存続していれば良いですね。』
「perape-ra! perape-ra!」
「…詐欺師の典型的な言い掛かり論法だ!
恥を知りなさいよ!」
『先に言い掛かりをつけたのは貴方でしょう!』
「perape-ra! perape-ra!」
「…ねえ、猊下。
自分で仰ってること分かってます?
日利1%って年利に換算したら37倍を越えるんですよ!?」
『まあ、おカネを1年も借りるってそういう事でしょ?』
「perape-ra! perape-ra!」
「じゃあ私が預金したら毎日1%配当するとでも仰るんですか!!」
『そりゃあ、そういう約束ですから。』
「perape-ra! perape-ra!」
「ポンジスキームの典型的な誘い文句だ!
そして頃合いを見て、元本を持って疾走する段取りという訳ですね!」
『え? いや、元本は毎日返してますよ?』
「What!?」
「は?」
『いや、持ちっぱなしだと預ける人も怖いでしょう?』
「perape-ra! perape-ra!」
「…意味がわかりません。
運用する素振りすらも見せないということですか?」
『まあ、手の内は当然見せませんけど。
配当と元本は毎日返済してます。
お互い不安でしょう。
大金を預かったり預けられたり。』
「You are a scammer!!」
「…貴方は詐欺師だ。」
『まあ私の名前で検索するとサジェスト欄に《詐欺師》とは表示されてましたね。』
「perape-ra! perape-ra!」
「じゃあ仮にですよ?
この場で100万ポンドを預けたら、明後日には102万ポンドを頂戴出来るということですか?」
『ポンドって見た事がないんで確約は出来ませんけど。
理論上そうなるんじゃないですか?』
「perape-ra! perape-ra!」
「はははは!
そいつは傑作だ!!
じゃあ1億ポンド預ければ、毎日100万ポンド支払うとでも言うんですか貴方は!」
『まあ、払うんじゃないですか?
あ、カネって重いんでトラックはそっちでチャーターして下さいね。』
「You are a liar!!」
「貴方は嘘つきだッ!!!!」
『参ったなぁ。
じゃあ、どうしろと。』
「perape-ra! perape-ra!」
「それではこうしましょう。
明後日、英国大使館で理想郷ファンドの発表パーティーが開かれます。
本日のプレパーティーなんかとは異なり、政財界の貴賓を集めた大規模な催しです!」
『はあ、凄いですね。』
「perape-ra! perape-ra!」
「その会場に持参して頂けませんか?
今からお預けする金額の日利と元本を!」
『まあ、別にどのみち関東に戻るつもりでしたので。
出せと言われれば顔くらいは出しますけど。』
「perape-ra! perape-ra!」
「それは挑戦を受けると解釈して宜しいのですね!?
言い逃れは出来ませんよー!!!」
『預かったカネを返すだけの事でしょう?
まあ、今日の返礼にお付き合いしますけど。』
「perape-ra! perape-ra!」
何か凄い話の展開になって来た。
というか孝文…
アンタにそんな権限があるようには思えないが?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰ろうと思っていたのに、別室で待機させられる。
部屋は豪勢だが、こんなもん軟禁と変わらないじゃないか。
光戦士と大英帝国鬼畜打線を作って遊んでいると、大量のガイジンがニヤニヤしながら入ってくる。
物凄く敵対的な意地の悪い笑顔だ。
「perape-ra! perape-ra!」
さっきのグランツ卿が俺に顔を目一杯近づけて怒鳴る。
この人肩幅とかゴツイので本当に怖い。
「ここに100万ポンドありまぁす!!」
「perape-ra!!!!!!!!」
孝文が鬼の形相で俺を睨みながら叫ぶ。
アタッシュケースがドンと置かれる。
『あ、はあ。
そうなんですね。』
「発言を撤回するなら今のうちですよ?
本当は日利1%なんて嘘なんですよね?
ポンジスキームなんですよね?」
「perape-ra! perape-ra!」
『いやあ、たかが1%程度で嘘を吐いても仕方ないじゃないですか。』
「じゃあ、この100万ポンドに利子を払えるとでも言うのですか!!!」
「perape-ra!!!!! perape-ra!!!!」
『まあ、預かれば払うんじゃないですか?』
「明後日のパーティーに2パーセント+元本を黙って支払うとでも仰りたい?」
「perape-ra,perape-ra.」
『まあ2日分の利子なら2%になるんでしょうね。』
「2万ポンドはポンジの広告費にしては過大だと思いますが?」
「perape-ra,perape-ra?」
『私、宣伝した事がないのでよくわかりません。』
「…今更、謝罪しても受け入れませんからね!!
ここに居る全員が証人です!!!」
「perape-ra!!!!!!!!」
『あ、はあ。
みたいですね。』
「では、お預けします。
無論、証文をサインをして頂きますよ。」
「perape-ra! perape-ra!」
『あ、すみません。
文章の類は発行していないので。』
「いやいや!
おカネを預けるのに借用書が存在しないなんてあり得ない!」
「perape-ra!!!!!!!!」
『私、それでも良い方としか付き合ってないので。
あ、この遣り取り恐らく録画されておられるのだと思いますが…
カメラに正対して預かり額と金利を宣言する分には構いませんよ。』
「猊下、一応確認しておきますが。
録画でも十分証拠能力はありますからね?」
「perape-ra,perape-ra?」
『みたいですね。』
100万ポンドという話だったが、何人かの英国人が意地悪そうに笑いながら札束を上乗せしていく。
俺がカメラに向かって金額を宣言しようとする度に、英国人達が駆け込んで札束を置いて行く。
ギャンブル好きな民族とは聞いていたが、いやオマエラ財布に幾ら入れてるんだよ。
「はははは!
これで500万ポンドだああ!!!
もう降参は許しませんよ!
明後日のパーティー、是が非でも出席して頂きます!
そして皆の見ている前で利息と元本併せて510万ポンド払って貰おうじゃありませんか!!!」
「perape-ra!!!!! perape-ra!!!!」
『だから、払いますって。
じゃあ、私はこれで。』
「おっと、待って下さい。
このまま持ち逃げする算段ですね?
その手には乗りませんよ?」
「perape-ra! perape-ra!」
『そうは仰られましても。
私も帰って眠りたいですからね。』
「担保が欲しいです。」
「perape-ra,」
『は? 担保…?
参ったな、私は土地も株券も持っていないので。』
英国人達は光戦士を一斉に見る。
「オマエラ、ちょっと待てなのだーー!!!」
『いやいや、野蛮人じゃあるまいし…
そんな人質じみた事はやめましょうよ。』
「勘違いしないで下さい。
あくまで我々は猊下のパートナー様のドレスアップをお手伝いするだけの話。
別に人質とか、ふふふ。」
「perape-ra♪ perape-ra♪」
「やめて! 酷い事するつもりなのだ!
ショタ同人みたいに!」
『ところで光戦士君。』
「何なのだ?」
『本当はどうしたい?』
「ちょっと興味はあるっすね。」
『七感さん、どうします?』
「東京への交通費浮くからええんちゃう?」
『彼の安全は保証して頂けるのですね?』
「いやいやいや!
参りましたねえ、まるでお姫様を誘拐する海賊みたいな扱いだ。
あくまでエスコートですよ。
何せ大使館でのパーティーですから。」
「perape-ra♪」
『彼、配信が趣味なんですけど、それは大丈夫?』
「ええ存じております。
光戦士氏は世界的にも有名人ですから。」
「perape-ra♪」
マジか?
娯楽に飢えすぎだろ、世界。
『あの、マジでやるんですか?』
「おやおや、今更10万ポンドが惜しくなりましたか?」
「perape-ra?」
『いや、別に私は光戦士さえ無事なら…』
周囲に居た英国人達が心底嬉しそうに笑う。
うん、オマエラが楽しそうで何よりだ。
いや、それはいいんだが、我招待客ぞ?
「これは面白いことになって来ましたなー。
ワシが今の財産を築いたんはな?
英国債を空売りし続けたんが始まりや。
今でもポン円の研究を欠かした事はない。」
坊門翁も楽しそうで何よりだ。
俺と一緒に居ると、こういう面白アクシデントが起こるからなあ。
老後の退屈しのぎには最高なんだろうなあ。
結局、光戦士は大使館見学ツアーの名目で本当に英国人の手に落ちてしまう。
都合の悪い事に七感が満面の笑みで保護者同意書にサインしてしまう。
この女もついでに人質になるつもりらしい。
英国勢と金本一族が肩を抱き合って爆笑している光景を確認してから、俺は会場を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
3422億2765万0000円
500万ポンド
※日英友好基金を500万ポンドで設立。
友好大使として金本七感・金本光戦士を同国に派遣。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰りの車内。
小牧と後藤から凄く怒られる。
誰がどう考えても俺が悪いので素直に平身低頭。
『ねえ後藤さん、まだ怒ってます?』
「いや、大丈夫です(怒)。」
『反省してますよお。』
「もうあんな風に無用な口論をしちゃ駄目ですよ(怒)。」
『はい。』
「それで?」
『はい?』
「この先、どうするおつもりなんですか?」
『いや、普通に英国の経済破綻が早まっちゃうんじゃないでしょうか?
…結果として日英ポンジ戦争になっちゃいました。
大体、アイツら幼稚過ぎるんですよ!
いや私も人の事は言えませんけど!』
「ポンド札を無防備にトイチさんに渡した時は
《あー、コイツら死んだな。》って思いましたけど。」
『まあ仕方ないんじゃないんですか。
人間なんていつかは死ぬ生き物ですし。』
「トイチさんだけには死んで欲しくないですねえ。」
『ははは、この虚弱児を捕まえて何を仰いますやらw』
「トイチさんの御力なら不老不死も買えるんやないですか?
アメリカの金持ちは自分の脳機能をサーバーの中に移植する実験を行っているみたいですよ。」
『金持ちなんて嫌な奴ばっかりですから。
長生きはして欲しくないなあ。』
「俺は、トイチさんだけには長生きして欲しいです。」
…わかってるんだろ?
年内生き残れる保証すらないってさ。
今晩撃たれても不思議じゃないよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰宅後。
金本宇宙に急ぎ連絡し、七感と光戦士が人質に取られてしまった旨を謝罪する。
案の定、画面の向こうから爆笑が沸き起こった。
「お笑い的に美味しいやんww
これでズンの奴も配信のネタに困らんなww」
現代ネット社会って発信意欲のある奴には極めて有利に出来てるよな。
【名前】
遠市・コリンズ・厘
【職業】
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 15
《HP》 左頬骨亀裂骨折
《MP》 万全
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 ライジング・カード!
《魔力》 悪の王器
《知性》 悪魔
《精神》 吐き気を催す邪悪
《幸運》 的盧
《経験》 237455
本日取得 0
本日利息 30972
次のレベルまでの必要経験値90215
※レベル16到達まで合計327670ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利15%
下4桁切り上げ
【所持金】
3422億2765万0000円
500万ポンド
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
荒木のカバン
白装束
天空院翔真写真集 Complete!!
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
『100倍デーの開催!』
× 「一般回線で異世界の話をするな。」
『世襲政権の誕生阻止。』
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
「空飛ぶ車を運転します!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
『遠市王朝の建国阻止。』
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 『日当3万円。』
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
×警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
「オマエだけは絶対に守る!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げたのんます。」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 『子ども食堂を起ち上げます。』
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
〇DJ斬馬 『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
金本聖衣 「同上。」
金本七感 「17歳メインヒロインなので旦那との復縁を手伝って。」
天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
〇小牧某 「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」
阿閉圭祐 「日本国の赤化防止を希望します。」
〇坊門万太郎 「天空院写真集を献納します!」
宋鳳国 「全人類救済計画に協力します!」
堀内信彦 『和牛盗難事件を解決します。』
〇内閣国際連絡局 『予算1000億円の確保します』
毛内敏文 『青森に行きます!』
神聖LB血盟団 「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」
〇大西竜志 「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」
坂東信弘 「四国内でのイベント協力」
国重辰馬 「四国内でのイベント協力」
涌嶋武彦 「畜産業界の総力を挙げて遠市派議員を衆議院に最低10名押し込みます!」
斑鳩太郎 『処刑免除を保証します。』
志倉しぃ 「カッコいいホモの人を紹介して下さい。」
孝文・j・G 「英国大使館パーティーにて利息支払い」
グランツ(英) 「perape-ra!!!!!!!!」
金本光戦士 「どんな危機からも必ず救い絶対に守る。」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
◎鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」
土佐の局 「生まれた子が男子であればリイチ。
女子であればリコと命名する。」