【降臨50日目】 所持金1095億0160万0000円 「憲法でも規定されていますからね!」
早朝、目が覚める。
どうやらカプセルドームのブラインドを下げ忘れていたらしい。
朝日に照らされた池が鮮やかな白に染まっていた。
「んー、むにゃむにゃ。
朝なのだー?」
『ああ、すまない。
起こしてしまったな。
まだ寝ていて構わないぞ?』
「おしっこー。」
光戦士がトイレのある管理棟にフラフラと歩いていく。
寝直そうとするも、頭が冴えてしまって眠れない。
今日、明日と湖畔に座り続ける事を決めているからだ。
脳内で想定問答を繰り返す。
「どうして鳥取に来たの?」
「あちこち旅行していい身分だね。」
「女性を殴るなんて最低、差別主義者!」
「中学生の少年を連れ回すのは法律違反。」
「寿司ペロ事件の責任を取るべき。」
「所詮、宗教の宣伝でしょ?」
「子供食堂の支援は民業圧迫。」
日頃の自問をもう一度繰り返す。
これらの疑義が大衆から上がった時に、俺はどう答えるべきか。
1つ1つ脳内に並べて、回答を練り続ける。
この問いに正答は存在しない。
だからこそ、せめて真摯に回答しなければならないのだ。
「ねえ、リン兄ちゃん。
目が冴えちゃったのだ。
まだ6時なのに二度寝出来ない!」
『ちょっと損した気分だよな。』
特にやる事もないので、ベッドの上に寝転んでいる光戦士の配信に付き合う。
途中、何度も欠伸が出る。
睡眠を取っておきたいのに眠れない。
疲労が蓄積されているのか?
あまり良い兆候ではないな。
「ねえ、兄ちゃん。」
『んー?』
「本当に鳥取でイベントやるの?
ってコメ欄で聞かれてるけど。」
『ああ、配信してるんだったか。
何? カメラもう回ってるの?』
「いや、既に画角に入ってるって、さっきも言ったのだ。」
『ふわあ。
朝は頭が回らないなあ。
やるよー。
本当にこんな時間から視聴者さん居るのか?』
「朝だから1000人ちょっとしか同接ないのだ。」
『ふーん。
じゃあ、皆さんに伝えておいて。
今日、明日と鳥取市内の湖山池でイベントします。
本番は明日かな。』
「右の方のテキストがリアルタイムで流れてるコメントなのだ。(ヒソヒソ)」
『ああ、これの事ね。
《ホモ》
《ホモ》
《なんJ公認宗教神聖教》
《同衾ーーー!!!》
《アーッ》
《LGBT配慮っすかw》
《まさかのホモベッド配信》
《野獣先輩》
《これ絶対入ってるよね。》
《ショタホモ》
んー?
何故かみんなホモの話しかしてないぞ?』
「兄ちゃんがボクとずっと居るから、風評被害凄いんスよ。
これでモテなくなったら、どう責任取ってくれるのだ!」
『ああ、ゴメンゴメン。
光戦士君、いつもモテたいって言ってるもんな。』
「カメラの前で言うななのだ!」
『ああ、ゴメンゴメン。
まあ確かに変な評判立ったら、彼女も出来にくくなるか。
コメ欄の民度も低そうだし。』
「視聴者批判はやめろなのだ!」
『えー?
鷹見はいつも視聴者ディスってない?』
「ルナ姉ちゃんはああ見えてヘイトコントロールが天才的に上手いのだ。
兄ちゃんは愚鈍だから真似しようとしちゃ駄目っすよ。」
『難しいものだなー。
お、またコメントだ。
《ホモ死ね。》
えっと私、ホモではないので。』
「罵倒は読まなくていいのだ。
建設的なコメントを読めなのだ。」
やはり配信は難しい。
鷹見や光戦士が何気なくやっている事が全然出来ない。
改めてその偉大さを痛感させられる。
結局、俺が居ない方が配信がスムーズになりそうだったので、画角から外れる。
備え付けのソファーに腰掛けてペットボトルのお茶をゴクゴク。
光戦士は30分程雑談してから、眠くなったのか配信を打ち切って二度寝した。
俺も昼に備えてその隣で目だけ閉じる。
せめてベッドは2つないと辛いよな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて。
皆が起きて俺のドームにやって来た。
狭い部屋なので、先に来た者はベッドの縁に腰掛け、
後から来た者はソファや床に座り込む。
「トイチさん。
もう会場に人が集まってますよ?
と言うより、ドームテントの周りも普通に写メ撮られてますし。」
『距離感近いですねー。』
「この旅で1番のノーガード状態です。
管理人さんがカラーコーンを並べてくれたからマシにはなってますけど。」
『そもそも、この池自体が大量の見物人を想定してないですものね。』
先程、後藤が見て来た所によると、湖山池南岸のローソンが既にパンク状態で、世間に顔の割れている後藤は近づく事すら出来なかったらしい。
元々後藤は野球の功績で世代ナンバー1有名人だった上に、俺の取り巻きとしての知名度も上がって来ている。
結果、サングラスを掛けていても遠目に特定されるような、そんな存在になってしまった。
なので、迂闊に人気の多い所に立ち寄れない。
『後藤さんの行動、かなり制限されてしまいましたね。』
「お気遣いなく。
プロに行ってたら似たような状況やったでしょうから。」
…気を遣うよ。
野球選手は敬愛されるけど、俺の取り巻きなんて不名誉でしかないだろうからな。
金本七感が戻って来て「ドームテント周辺の野次馬を減らして来た。」と言う。
聞く所によると、野次馬が嫌がるような距離の詰め方があるそうなのだ。
七感から相手が逃げるような間合いで話し掛けに行ったらしい。
客商売が長いと、自然にそういう技術が身につくそうだ。
宿屋の婿としては、肩身の狭い限りである。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ラフな服装に着替えて屋外に出る。
池を伝う風が生暖かく僅かに泥臭い。
やはり普通に敷地内に幾人かの見物人(?)が紛れ込んでいて、俺と目が合った瞬間に「あ!」と声を上げて逃げ出してしまう。
うーん、あの中に刺客が居たら殺されてるな。
見物人の顔を眺める。
みんな普通のオジサン・お兄さんだが、中に1人だけ見覚えのある顔がある。
猫背で大きな眼鏡を掛けている。
他の者は俺の姿を認めると興味深そうに見物して来たが、猫背氏だけはこちらから顔を逸らせて木立に紛れようとした。
俺に言わせれば準刺客である。
一応声を掛けておく。
『どうも、御無沙汰しております。
高松ではお世話になりました。』
確か、高松のクラブで会った気がするのでカマを掛けてみる。
相手は驚いたような観念したような言い訳を考えるような複雑な表情。
「お!
…あ、いえ。
ど、どうも。」
やはりそうか。
高松のクラブでもこの男は俺の視界のギリギリ外側を陣取り続けていた。
今朝のポジショニングも同様。
逆に目立つぞ、それ?
『わざわざ四国から来て頂いたんですか?』
「あ、いや。
実家が倉敷でして。
あの日はたまたまツレが回してたんで四国に渡ってました。」
実家が倉敷は事実か、事実に準ずる情報。
但しツレが回してるというのが嘘。
『ああ、そうなんですか。
御縁がありますね。』
「いやあ、ははは。
1ファンですよ。」
相手の反応を見て、単なる見物人ではない事を確信する。
多分この男はマスコミとか警察とか、そういう任務を持って近づいて来ている輩。
『眼鏡、お洒落ですね。』
「あ! いえ!
いつもの眼鏡が壊れてしまって!」
…俺は前の眼鏡の話はしていない。
『用件あるなら担当を付けましょうか?』
十中八九、相手が防諜関係(残りの1割は外資系マスコミ)だと見当をつけて打診してみる。
男はいつの間にか背筋を伸ばしていた。
きっと猫背設定を忘れているのだろう。
「え!? いや!?」
『ああ、上司の方に許可を取ってから再訪して貰っても構わないですよ?』
男は汗をダラダラと流して硬直してしまう。
かなり目が泳いでいる。
気の毒だが、俺も仕事だからな。
『まあ、無理強いはしません。
そちら方面に関しては窓口を連絡局さんに一本化する予定ですので。』
「あ!」
その反応で彼が内閣国際連絡局以外の防諜機関の人間であると確信する。
正直、呆れたので、思わず溜息が出てしまう。
後藤がいつの間にか俺の側に寄り添っていたので
『では私は別件ありますので、何かありましたらこちらの後藤へお願いします。』
と言ってからトイレに入った。
いや、俺だってウンコくらいするよ。
リフレッシュも兼ねて15分ほどトイレに籠る。
魔王城時代もそうだったが、数少ない俺の息抜きだ。
『え! まだ居たんですか!?』
思わず声が出てしまった。
さっきと同じ立ち位置のまま、男と後藤が対峙していたからである。
「あの…
トイチさん、こちらの方は?
さっきから口を利いてくれなくて困っているんです。」
嘘だな。
後藤がそんな事で困る訳がない。
相手の挙動から十分な情報を収集してくれている筈だ。
『お役所の方ですよ。』
「そうでしたか(棒)。」
男に『折角だから朝食でも食べて行きますか?』と尋ねるが、汗をダラダラかいたまま「いや…」を連呼するだけだった。
あー、後でコイツ、上司からこっぴどく叱られるな。
きっと極秘監視とかそういう任務を受けて来ているのだ。
『見なかった事にしましょうか?
貴方も大変でしょう?』
「…あ、いえ。
虚偽の報告は… ちょっと流石に…
出来ないと言いましょうか。」
『助け船出しましょうか?
貴方の御職場、かなり厳しいんですよね?
パワハラと指導の区別も付かない人間がのさばってるんじゃないですか?』
「…あ、いえ。」
男の顔色がどんどん蒼白になっていく。
参ったな、これでは俺が虐待しているように見えてしまう。
『あのぉ。
そこに居座られても迷惑なので、退去か入室を選んで頂けませんか?
ここ国立公園ですので、私も我儘が効かないんですよ。
目撃者も増えて来ましたし。』
男は観念したように、俺のドームに付いて来た。
一応、後藤が身体を挟んでくれている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺が男と戻ると一斉に皆が顔を上げる。
便所にしては長かったからな。
『安心して下さい。
この人物は単なる暗殺者です。』
「いや! それは違いますって!」
『…。』
数秒経ってから男は、俺の発言が分析に足るリアクションを引き出す為の仕掛けであったことに気づく。
「…あ、あ、あ。」
『足の踏み場も無くて申し訳ありません。
私は床に座りますから、そちらのソファーにどうぞ。
日本一の美女の隣をお譲りしますよ。』
「千林令嬢でーす(棒)。」
余程、動揺しているのか男は椅子に座ってしまった。
仕方ないので俺は床に座る。
自分で言いだした事なので仕方ない。
『丁度、みんなで記念撮影するところだったんです。
貴方もどうですか?』
「あ! いえ!」
『じゃあ、みんな!
折角、鳥取に来たことだし記念写真を撮りましょう!
ヒロノリさん、イケメンに撮って下さいね~。』
「了解でーす♪」
寺之庄が冷ややかな目で男を視界の端に捉えながら回答する。
「じゃあ、トイチ君。
椅子をバックに皆で撮ろうか?
ポーズはどうする?」
『じゃあ、陽気にサムズアップで。』
「お。
君もわかって来たじゃなーい♪」
皆で笑う。
笑いながら男を囲むように椅子の前に並んだ。
「あ! いえ! 自分は!」
逃げ出す男を尻目に全員で撮影タイム。
「はーい、1足す1はー?」
「「「「『ニッ♪』」」」」
見せて貰ったが、中々爽やかな集合写真である。
『お!
いいですねえ。
珍しく私がイケメンに映ってる。』
「奇跡の一枚なのだww」
『じゃあ、今日のインスタにアップしておいて下さい。』
男が驚いたようにこちらを振り返る。
『大丈夫大丈夫、顔は半分くらいしか映ってませんから。』
俺が男にそう告げると、男は固く目を瞑って床に座り込んでしまった。
「…所属の規則で写真をオンライン上にアップロードする事が禁止されております。」
男は眉間に深く皴を寄せ声を絞り出した。
要するに、《防諜要員である事を認めるからアップはしないでくれ》という意味だ。
『これはこれは!
存じ上げないこととは言え申し訳ないことをしました。
ヒロノリさん、彼の立場を尊重しましょう。
削除に立ち会って貰って下さい。』
寺之庄が男に無造作にスマホを渡す。
そして男が目を見開き、こちらをゆっくり振り返る。
そりゃそうだ。
社会通念上、名前も知らない他人を集合写真に入れる訳がないじゃないか。
『今から皆で腹ごしらえをします。
貴方はどうしますか?』
「…上司の判断を仰ぎます。」
『もしも上司様が付近に居られるのでしたら、是非お誘い下さい。
食事は皆で食べた方が楽しいですから。』
男は深々と一礼して逃げる様に立ち去った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どうしてあの人が公安っぽい部署の人だと思ったの?」
鳥取和牛の切り落しを上品に飲み込んでから寺之庄が尋ねてくる。
『異世界では自由都市同盟という国家に滞在していたのですが、その国の治安局のトップに諜報担当者の見分け方を教わったんです。
ああ、治安局というのはKGBの様なスパイ機関のことです。』
「へえ、異世界にもスパイがいるんだ。」
『各国の諜報員が選挙に相当干渉してたみたいなんで。
必要不可欠だったらしいですよ。』
「どこも変わらないねえ。」
『全くです。
一応、スパイの見分け方を伝授しておきますね。』
「いいの?
奥義なんでしょ?」
『ヒロノリさんの方が私より勘がいいので知っておいて欲しいです。』
「自分ではそうは思わないけどなあ。」
『上司に怒られるのを恐れてるのがスパイです。』
「…いや、誰だって怒られたくないでしょ。」
『遠市見物って道楽なんですよ。
ほら、対岸に集まってる連中。
アイツらなんて完全に娯楽で来てる訳じゃないですか?』
「まあ、仕事ではないよね。」
『だから、見物人は私と目が合うと気まずそうな素振りを装いながらも…
《遠市を見れた》って、どこかに嬉しそうな感情が出るんですよ。
遊びなんだから、そこに緊張がある訳がないんです。
本来は。』
「確かに。
早くから駆けつけて来たのにトイチ君に逢えなければ…
それって完全に無駄足だもんね。」
『なので、私と目が合って気まずいと感じながらも喜ぶのは極めて自然です。
逆に《怒られるかも!》という困惑や恐懼の気配が漏れるのは不自然です。
それはただのファンではなく、任務で派遣されている役人なんです。
身元を明かす事を禁じられている役人が私に発見され、更にはその事実が上司の耳に入ってしまったら、どうなると思います?』
「まあ、凄く怒られるだろうね。
特に日本の組織って過度の減点法だから。
ああ、言われてみれば彼はずっと怯えた様子だったものね。」
『彼の上司か…
或いは組織全体がパワハラ気質なんじゃないですか?
私の目にはそう映りました。』
「…流石だね。」
『いえいえ、私などは未熟未熟。
私の友人の不動産業者は、その場で敵諜を丸め込む天才だったので。』
ドナルド・キーンのどこか人をおちょくったような笑顔が不意にフラッシュバックする。
彼から学んだ多くを俺はちゃんと活かせているのだろうか?
「これからどうするの?」
『さあ、彼の直属の上司…
多分、課長クラスが出て来て、その翌週あたりに部長クラスが挨拶に来るんじゃないですか?』
「異世界でもそうだったの?」
『まさか。
彼らはもっと利口ですよ。』
鳥取がキノコの名所である事を管理人のお兄さんは強調する。
大きな椎茸を香ばしく焙ってくれた。
「リン兄ちゃん。
ボクは椎茸が嫌いだから絶対に食べないのだ!」
『うん。
好みは人それぞれだ、無理はせずともいい。』
「好き嫌いするなって怒らないのだ?」
『…私も好き嫌いは激しい。
実は椎茸が苦手だ。』
「え!? その割に美味しそうに食べてるのだ?」
『これブランド椎茸なんだよ。
最高級品ってやつ?
1つ4000円以上するんだってさ。』
「肉より高いのだ!」
『私は貧乏性でね。
味覚が値札に引きずられてしまう。
多分、この地を去れば一生食べられないだろうし。』
「やっぱりボクも食べるのだ!
うめえ! うめえ!
マズい気がするけどうめえ!
舌は拒絶してるのに、脳が歓喜しているのだ!」
和牛に続いて椎茸も我々一同が全て平らげてしまった。
仲間に美味を振舞えるのは幸いだ。
七感などは、いい歳をして鶏の丸焼きをほぼ一羽喰い尽くしてしまったほどである。
「見事や、トイチ君。
ズンに椎茸食わす人間が現れるとは思いも寄らんかった。
君が女やったらズンの嫁に貰いたい所やで。」
『私は不器用なので…
漫画のお役には立てないと思いますが。』
「舌は回るみたいやんか。」
『子供に嘘を吐くのは気が引けるのですがね。』
「役人を騙すのはOK?」
『政治って半分は役人操縦ですよ。』
「後の半分は大衆操縦なんか?」
『…ええ、恐らくは。』
「卑下する必要はない。
ウ↑チ→は君を評価しとる。
少なく見積もっても最強の二十歳やで。」
『同年代には幾らでも怪物が居ますよ。』
「鷹見夜色や後藤響を知った上で言っとる。」
『それは…
光栄ですね。
ですが灯台下暗し。
金本光宙は私なんかより遥かに偉大な男でした。』
「リップサービスは嬉しいけどな。」
『彼、ずっとニコニコしてたんです。』
「ピカはヘラヘラしとるだけや。」
『それも、場の空気を和ませる為にです。』
「…まあ、子供の頃から店頭で接客しとったからな。」
『私には…
友人たちのささやかな美徳を認識し評価する器量がありませんでした。
自分を賢いと思って、不必要に周囲を見下しておりました。
…それが最も愚かな姿勢だとも知らずに。』
「人間は皆、そういう生きモンや。」
『彼の美徳から学ばなければならない。
そして光戦士君に振舞を以て伝えなければならない。』
「やめとき。
君には無理や。」
『そうでしょうか?』
「君の口癖、《ねばならない》やで?
自覚あったか?」
『…いえ。』
「その点、ピカの口癖は《しゃーない》や。
すぐに諦める、すぐに逃げる、すぐに隠れる。」
『ああ、彼は教師からもそんな風に叱責されてました。
テスト中でも途中で答案用紙を枕に寝てましたし。』
「ええねん、それで。
だから君も逃げてええねんで?
世界が滅びても、人類全員死に絶えても…」
『…。』
「しゃーない。
君が背負う事やないよ。」
『胸に留めておきます。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、今日も湖畔に腰掛けるか。
と言っても、既に湖山池の東岸には群衆が形成されつつあった。
少なく見積もっても100人は居た。
『おはようございまーす!』
俺が大声で挨拶すると群衆ははにかんだように鎮まった。
何人かの元気の良い者が通る声で挨拶を返した事で、場の雰囲気が和む。
『さて、SNSでも告知した通りイベントは明日です。』
群衆が頷く。
『ただ、鳥取にお土産を持って来たので。
今日配っちゃいます。』
土産と聞いて群衆が顔を綻ばせる。
そりゃあね、物が貰えるのは嬉しいよ。
『えっと、正確に集計するように言われているので、この場に居る人の人数を数えて貰って良いですか?
カウント終了次第、プレゼント企画を開始します。』
点呼のスムーズさで理解した。
この街は民度が比較的高い。
城下町でコミュニティが狭いせいだろう。
逆に民度の低い場所を探したいなら、歴史が浅く統一したコミュニティが生まれにくい…
…俺の地元がそうだな。
189人。
聞けば鳥取市の突発イベントとしては異例の人手らしい。
現時点で駐車スペースがなくなっており、湖山池の外周に沿って路駐車が数珠繫ぎになっているとのこと。
その全員に恋辻占を配っていく。
俺と光戦士でざっくりと説明。
案外盛り上がっている。
特に、こういうのに興味がなさそうな70代とか80代の老人が仲間内でキャーキャーはしゃいでいるのが印象的だった。
老人も普通に恋バナをする、というのは俺にとって大きな発見だった。
会場に居る者は殆ど帰らないし、来場者は増える一方だった。
途中、パトカーが2回来て拡声器で警告しながら駐禁切符を切り始める。
(俺も軽く怒られた。)
『イベントは明日なんですけどねー。』
笑いを取るために言った訳では無いのだが、何故かウケる。
ここら辺まで来ると、少し打ち解けて来て、来場者は俺の写真を勝手に撮ったり、勝手に土産の地酒を俺の側に置いたりする。
「明日は何をしてくれるんですかー!」
50代位のオジサンが甲高く叫んだ。
『じゃあ、合コンでも主催しますね。』
輪の中から歓声が上がる。
「猊下はお坊さんなのに合コンなんかやっていいんですか!?」
『縁結びは、聖職に従事する者の義務なんです。
ほら、大抵どこの国でも結婚式って宗教施設で行うでしょ?』
「ああ、確かにそうですね!
あの、ウチの息子40過ぎて独身なんですけど!」
『じゃあ、オシャレをして遊びに来て下さい。』
この話題になった途端、皆が喰い付いて来たので需要は相当あるらしい。
鳥取に向かって疾走中の浦上に電話して、合コンのコツを教えて貰う。
(この豊前人は、ドライブ合コンなる形態の発明者として知られているそうなので。)
『はい、聞き取りの結果。
女性は勤務先と年収、そして年齢さえ明示してくれれば構わないそうです!
なので男性陣は車にメモでも貼り付けておいて下さい。』
一部の男性から歓声が上がり、一部から悲鳴が上がる。
『大丈夫です!
世の中にはボンクラフェチの女性も稀に居るらしいので!』
群衆が笑う。
『目を覚ませ、と強く訴えたい!』
湖畔が爆笑に包まれ、良い形で解散出来た。
恋辻占、残数699。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
4㌧車の伊地知、2㌧車の沢下。
両名既に駐車場に戻って来てくれている。
これに加え、田名部も目張りをしたハイエースで駆けつけてくれている。
『田名部さん、トンボ返りさせてしまうお詫びのお土産セットです。
伊地知さんと沢下さんにも渡しておりますので、ご安心下さい。』
「おお!
和牛セット!」
『奥様とお子様にあげて下さいねー。』
「えへへ。
直接言われてしまったら仕方ないですね。」
大阪のコンサル業者・田名部は俺と出逢った瞬間に妻子を捨てている。
実質的に全ベッドと言っても差し支えない。
逆に俺もこの男に何もかも任せている。
この男だけではなく、坊門翁に対してもノーガードで全てを委ねている。
ほぼ全財産を預けている聖徳太子に至っては、本名すら覚えてない。
互いにノーガードで抱き合っているのだ、そりゃあ仕事が早い早い。
「あのぉ、猊下。
そろそろ置き場が無くなって来たんですけど。
斑鳩会長のご自宅を金庫に変えてもいいですか?」
『は? いか? 何?』
あ、そうか思い出した。
聖徳太子の本名が斑鳩太郎だ。
大阪では坊門同様に有名人らしいが。
『あの人って本業は何なのですか?』
「いや、普通に地主さんですよ。」
『ああ、なるほど。』
そりゃあ、地主ならあれだけアホみたいにカネを持っててもおかしくないだろうな。
聞けば大阪中の繁華街に斑鳩ビルが建っており、スナックや風俗店に貸し出してるそうだ。
アホほど儲かるらしい。
そりゃあ儲かるだろう。
運転組を労う為に、BBQを振舞う。
管理人のお兄さんに頼み込んで自分で焼かせて貰う。
「猊下、そんなことは我々がしますから!」
『たまには鍋奉行やらせて下さい。
さ、田名部さん焼けましたよー。
栄養付けて下さいね。』
「猊下には敵いませんねぇ。
そちらも少し御やつれのようですが、ご体調大丈夫ですか?」
『やや疲労が溜まってます。』
「そりゃあ、これだけ転々としておられたら。」
『そろそろ落ち着きますよ。
経験上、動きようのない金額になって参りました。』
「やはり東京に?」
『この金額ですと、首都に居ざるを得ません。』
「でしょうねえ。」
『沢下さん、ビールお好きなんでしょ。
ずっと我慢させて恐縮です。
また時間を空けて一席設けさせて下さい。」
「いえいえ!
俺は全然大丈夫です!
…今、最高に充実してますから!」
『伊地知さんは芋焼酎ですか?』
「私、逆張り人間なので蕎麦焼酎飲んでます。
鹿児島に帰る度に、皆から変人扱いされちゃってますw」
一同笑い。
さて、お仕事だ。
「野次馬多いですけど、やるんですか?」
後藤が耳打ちして来る。
『運が良ければ、何とかなるでしょう。』
「現金が散っちゃったら…
どうします?」
『そりゃあ、拾ったもの勝ちですよ。』
「…そろそろ噂を立てるステージですか?」
『いえ、噂は自然に立つものなので…
可能な限り隠蔽ですね。』
「ここから15分の距離にあるキャンプ場を抑えました。
完璧ではありませんが、視界を切れます。
せめてそちらに移動させて頂けませんか?」
『はい、後藤さんの判断に従います。』
恐らく後藤と寺之庄が合議してキープしたのだろう。
利用者以外に侵入出来ない高台のキャンプ場である。
俺・寺之庄・伊地知・沢下・田名部の5名だけで現地へ移動。
湖山池の拠点は後藤と七感に一任する。
キャンプ場に到着して早々、車の後部ハッチ同士を向かい合わせてブラインドとする。
田名部が走り回って周辺警戒。
追尾者は見当たらずとのこと。
寺之庄が金本家から寄贈された、カメラ探知機を起動させるも反応はブルー。
『ヒロノリさん、私ちょっと認識甘かったです。
湖山池でやってたら騒動になってました。』
寺之庄は驚いたように振り向いてから
「そうなったとしても、上手く対処するでしょ。」
と微笑んだ。
…流石にそれは過大評価だよ。
俺達が警戒するのはドローン撮影。
対空監視は怠れない。
沢下が荷台の上に飛び乗って、幌の様な物で荷台を覆った。
「少しでも視界を塞いだ方がいいんですよね!?」
『助かります!!』
さて、58分だ。
警戒は仲間に任せる。
旅行気分で浮かれてしまっているのだろうか。
ちょっと雑になって来たな。
深呼吸して気分を引き締める。
《572億9347万8000円の配当が支払われました。》
『昨日より多くないか!?』
思わず悲鳴を挙げてしまう。
4㌧車・2㌧車に入りきらなかったので、田名部のハイエースに余りを積む。
『ヒロノリさん。
逆算したら預金総額いくらですか?』
「多分、3500億円。
昨日より更に300億増えてる。」
聖徳太子め、もう増やすなって言ったのに。
こっちにはこっちの段取りがあるんだよ。
少し気が立っていたので、その場で電話を掛けて貰う。
『もしもし斑鳩会長。
今、宜しいですか?』
「あ、もしもし。
あのぉ、ひょっとして猊下。
怒ってます?」
『怒るとか怒らないとかではなく!
もう増やさないで下さいって言いましたよね?
私、あれだけ念を入れましたよね!』
「ち、ち、ち違うんですう。
私も断りたいんですけどぉ。
皆さんが強引に押し掛けて来てぇ。
猊下に挨拶させろって脅されてるんですぅ。」
『ですから。
大阪でもう一度詐欺イベントをすると言ったじゃないですか!』
「ち、違うんですよお。
皆さん、個別で猊下にお目に掛かりたいみたいで…
外国からも人が来ちゃってるんです。
来年は大阪で市長選と市議選もありますし。」
『政教分離って言っておいて下さい。
憲法でも規定されていますからね!』
「あ、いやぁそうなんですけど。
みんな守ってないじゃないですか?」
『他所は他所、ウチはウチ!』
「ひっ!」
『とはいえ、私が行かなくては収まらないようですから。
鳥取のイベントが一区切り次第、そちらに伺います。』
「あのぉ、猊下。」
『はい?』
「どうして鳥取なんかに?」
『…実は日本の中心なんですよ。』
「え!? うそおお!?」
そんなアホらしい会話。
結局、聖徳太子にノラリクラリと躱されただけだった。
気弱に見せて来る老人は怖い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
592億3912万2000円
↓
4092億3912万2000円
↓
4665億3260万0000円
↓
1165億3260万0000円
↓
1095億3260万0000円
↓
1095億0260万0000円
※合計3500億円を預託との報告
※配当572億9347万8000円を取得
※元本3500億円の確認。
※配当用の70億円を別途保管
※運転手当として田名部・伊地知・沢下に計3000万円を支給
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
またもや1000億円を越えたか…
定住するまでは3桁億以内に収めたいんだがな。
どうしよう。
誰か預かってくれる人いないかな?
…当然、私利私欲の徒では駄目だ。
生真面目で公益を追及する者でなくてはならない。
…財務省?
消去法でそうなるんだよなあ。
向こうから連絡官を寄越してくれないかな…
『ではお三方。
坊門・斑鳩両会長に、くれぐれも預金を増やさないようにお伝え下さいね。
私は本気ですから!
しつこいようなら国税庁を呼びますよ!
そうお伝え下さい!』
…感情で喋っては駄目だ。
いや、違うな。
理性で判断しても、もう財務当局と協調する段階だろう。
拒むのなら死んで貰うしかないが、資本と行政は本来密接に連携するべきなのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
伊地知・沢下・田名部の3車両が出発する。
概算で2時間半の行程。
俺はチップとして1人1億を贈呈するつもりだったのだが、強硬に拒絶された。
どうやら退職金的なニュアンスを感じ取られてしまったらしいのだ。
俺が預金を全て返金したがっているのは周知なので、そう思われても仕方ない。
宥め賺して1人1000万を受け取って貰った。
本音を言えば、そろそろ身軽になりたい。
平原にスマホを買って貰ったら、どこかに数日だけ1人で引き籠ろうか。
エロサイトはロシアのハッカーが網を張っているらしいのだが、一生に一度くらいスマホでエロ動画を見てみたいなぁ。
それが今の俺のささやかな望み。
どうせ死ぬんだから、それくらい大目に見てくれよ。
「トイチ君。
この間、お役所の人に1000億あげてたじゃない。」
『ああ、そんな事もありましたねえ。』
「思い出した3日前だ。
あの時はさあ、君の気前の良さに内心愕然としてたんだ。
でも3日で1000億リカバリーしちゃったし…」
『何か色々と勝手なことばかりしてスミマセン。』
「いや、スケールの大きさに圧倒されただけだよ。」
『ヒロノリさんも知ってるでしょ?
凄いのは能力だけですよ。
私自身はつまらない人間です。』
「逆だよ。」
『?』
「凄いのは君。
僕はそう思っている。」
2人で芝生の上に敷いたシートに寝転んで話している。
この後、湖山池に戻るのか、ここに布陣し直すのか、俺は考えていない。
『ヒロノリさん。
ここから早いですよ。』
《何が?》と問う程馬鹿な男ではない。
ここから異常に速い展開が待っている事は自明の理なのだ。
複数の省庁が絡んで、スピードレースにならない訳がない。
…予算が掛かるとねぇ、お役人は神速だよ。
少なくともソドムタウンではそうだった。
マジでドン引きするよ。
結局、全車両がこちらに移動して来る。
青島は視界が広がりきっているので、なるべく俺を滞在させたくないらしい。
まあ気持ちは分かる。
眺望が良すぎるのは防衛上好ましくないのだ。
七感が密かに設置して来たトレイルカメラの映像を見ると、幾人かの野次馬がカプセルテントに触れながら覗き込んでいた。
悪気はないのだろうが、確かに身の危険は感じるよな。
皆で今から宿を取るかを相談するが、大事を取ってこのまま野営することになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【遠市キャラバン】 鳥取野営チーム
遠市厘 (宗教家)
後藤響 (配達員)
寺之庄煕規 (大学生)
金本光戦士 (配信者)
金本七感 (漫画家)
金本聖衣 (製菓業)
室野哲也 (パテシエ)
堀内堅造 (元猟師)
堀内信彦 (猟師)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
キャンピングカーを金本一族に譲ろうとしたが謝絶される。
女性に野宿させる訳には行かないので、七感だけは車内組と決めた。
俺が割り振られたのは、大型の高級テント。
米軍が戦地で用いる事もある、かなりガチ目の型番である。
皆で寝転んでお菓子を食べてリラックスする。
月並みな感想だが、遠足みたいで少し楽しい。
朝も早かったので俺は今日はもう動かない事に決める。
途中、高松からアルファード大西が遊びに来たので、小遣いを渡す。
「トイチ君。
俺、君に貰うてばっかりなんやけど。
何かお役に立てることはない?」
『そうですね。
それでは夜の街の女性に《今、一番熱いインフルエンサー》を尋ねて貰っていいですか?
但し、私の事は知らない体で。』
「わかった、任せて欲しい!
ソープ行って来る!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1095億0260万0000円
↓
1095億0160万0000円
※大西竜志に足代100万円を支給
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
続いて、大分から浦上が到着したので皆に紹介する。
合コンで名を上げた男なので、明日は役に立ってもらう。
そして金毘羅TVの国重辰馬代表が単騎で到着。
クルーは付近に分宿させているらしい。
「押し掛けてしまって申し訳ありません。」
『いえ、国重社長には既に取材許可を出しておりますので。』
「猊下。
明日のイベントは…」
『ええ、別に撮って下さって構いませんよ。
ただ、イベント終了と同時に我々は撤収しますが、大丈夫ですか?』
「…動きますねー。」
『いや、今週で最後ですね。
後はもう待ちに徹すると思います。
国重社長。
別に明日じゃなくても構いません。
取材したい事がありましたらここで伺いますよ?』
「え!?
そこまでして頂いて宜しいんですか!?」
『まあ、折角遠い所を来て頂いた事ですし。』
かつてスティーブ・ジョブスなる傑物が居た。
マーケティングの天才として知られている男だ。
報道対策の全てを任せていたフェルナンを異世界に置いて来た以上、地球でのマスコミ戦略は自分で考えざるを得ない。
そのモデルケースとして、前述のジョブスを選んだ。
彼は忠誠心の高い記者に正確な情報を与える事に腐心し、そうでない記者を厳しく排斥した。
これによりジョブスに好意的な記事が世間に流通することになった。
異世界にもこういう手法はあったのだが、育ちの良いフェルナンがこの種の露骨なメディアコントロールを苦手としていた為、魔王軍のプレス対策は概ね賛否に対してフラットだった。
俺は身の程を知っているので、王子様と同じ振舞が出来るなどと思い上がってはいない。
『国重社長には率直に打ち明けます。
私は不器用な人間なので、Apple社がしていた様な報道姿勢を真似しようと思います。』
「その…
ジョブス的な?」
『ええ、自分でもああいうやり方は好ましくないと考えておりますので…
国重社長には厳しくご叱責を賜れれば幸いです。』
直訳すれば《犬になれ》という意味である。
国重も馬鹿ではないので、匙加減を上手くしてくれるだろう。
「残念ながら、ここは日本です。
アメリカの様に露骨な偏向報道は難しいと考えます。」
直訳すれば《忠犬として振舞う》という意味である。
あまり恐縮し過ぎても失礼なので、額面通りに受け取る素振りをしておいた。
その後、星を見ながら報道方針についての作戦会議。
万が一国重が生活に困った場合は、烏天狗仮面ショーで糊口を凌がせる事に決める。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【夜猫@ライブ満員御礼!】 下北沢ゲバラ様にて打ち上げ配信❤ [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
「どうもー。
夜猫@の夜更かし担当!
相模の獅子ッ!!
ルナルナ@貫通済でーーす!!!
つべ・ニコ生・ツイキャス・ふわっち・17LIVE・TikTok・BIGO LIVE・HAKUNA同時配信!!
ウ↑チ↓の視界には見慣れたふわっち画面しか映ってないでーす。
日本語しかわからないよー❤」
「こニャニャちニャー♪
夜猫@の百合営業担当!
仰げば尊と恩師ッ!
奈々ちゃんでーーす!!!
ライブ来てくれてありがとニャ!!
歌詞間違えまくってゴメンニャ―!!!
お詫びに大麻合法化法案通しておくニャ―!!」
「はい、ライブお疲れ様でしたー。
来てくれた人ありがと。
来れなかった人、ゴメンね。
これからはなるべく大箱を確保するようにします。
はい!
本日はライブハウス・下北沢ゲバラさんからお届けしております!
ちょっとねー。
汗かいたままでゴメンね。」
「コテコテのアイドル衣装に和彫りって悪い意味で新しいニャ。」
「たまには組長の顔を立ててやりたかったんだよ。
どうする?
羽織り直そうか?」
「暑いしそのままでいいニャ。
これだけガッツリ動くと、流石に疲れるニャ。」
「8曲+野球拳コントは頑張り過ぎたな。」
「全くニャ。
最後、歌詞間違え捲ってスマンニャ―。」
「仕方ないよ。
練習時間もあんまり無かったし。
ウ↑チ↓ですら息切れしたからな。
さて!」
「さてニャ!」
「告知の通り。
本日のベストソング・アンケートを行いまーす。」
「見事1位に輝いた曲で、リミックスverを制作!
エロエロダンス曲として翌月以降のライブに採用するニャ!」
「…という段取りだったんスけど。
奈々、多分これ無理だね。」
「ガイジン多すぎニャ。」
「何コレ?
スパム?
ウ↑チ↓英語わからないよ?」
「三橋―。
大意はわかるニャ―?」
「えっとですね。
英語圏からの書き込みは概ね遠市君への批判ですね。」
「…まあ、アイツは批判されて然るべきクソガキだニャ。」
「いや、すみません。
これ多分…
動画に遠市君が出演してない事へのクレームです。」
「ん?
ダーリン様は住所不定なんだから仕方ないだろ?」
「…海外勢は殆どが初見っぽいですね。」
「おお、マジかー。
とりあえず、《ダーリン様とは別居中であんまり連絡付かない》って書いてくれ。」
「うーーん。
書き込みしてるのは、殆どがLGBT勢だニャ。
ほら、虹のマーク。
コメ欄でホモ勢とレズ勢が論争を始めてしまったニャ。」
「オイオイオイ。
そういうのは他でやってくれよな。
やっぱりふわっちonlyにして外人締め出す?」
「いや、折角復活したyoutubeアカウントを使わないのは…
あまりに痛手ニャ。」
「そうは言ってもなぁ。
日本語通じてないガイジンを入れて、国内ファンに不便掛けるのは悪手だろ。
ウ↑チ↓らは、基本的に日本市場で戦ってるんだからさ。
爆サイに広告を掲載してる間は、国内重視で行くべきだと思うのね。」
「まあ、確かに海外勢は文句ばっかり言って基本的にカネを落とさないニャ。」
「どうする?」
「ちょっと待って、書き込みを一通りチェックしてからニャ。
よっぴー、漢語圏の翻訳終わったニャ?」
「概ね好意的ですね。
向こうでは日本のAV女優のファンイベントが人気らしいので…
夜猫@の出演を希望する声が多いです。」
「へえ、意外。
ウ↑チ↓、嫌われてると思ってた。」
「ただ尖閣諸島に関する書き込みも散見されるので…
楽観はしない方がいいでしょう。」
「ふーん。
漢語圏はLGBTの話は絡んでないんだな?」
「鄧小平時代に合法化されたとは言え…
基本的に厳しく掣肘されてますからね。
仮にゲイの視聴者が居た所で、書き込みにくいんじゃないですか?」
「へー、みんな大変だね。」
「それより英語圏ですね。
何か、彼ら勘違いしてるみたいです。」
「え? どゆこと?」
「今回、実験的に多言語対応したじゃないですか?
その告知が英語圏で曲解されて…
遠市君の国際記者会見か何かと思って…
視聴している人が少なからずいるみたいです。」
「ライブだっつーの。」
「そうなんです、そのライブというのが
《遠市厘の生中継記者会見》と誤訳されてますね。
今、訂正ツイートしてます。」
「マジかー。
言語って難しいなあ。
外人はGoogle翻訳とか使わない訳?」
「お姉様、Google翻訳もそんなに精度高くないニャ。
今回は《ライブ》って和製英語が裏目に出てるニャ。」
「ああ、大体わかった。
はい、まず国内視聴者の皆さん!
不手際ゴメンな。
多分ツイートラインも荒れちゃってると思う。
今後は、ふわっちメインに戻すわ。
つべとかインスタライブは、ショートのみにする。」
「まあ、いきなり世界配信はハードルが高過ぎたニャ。」
「よっぴー、今からの発言を英訳して貼り付けてくれ。
《この配信は音楽や雑談を中心とした趣旨であり、同性愛を目的としたものではない!
ウ↑チ↓、鷹見夜色は遠市厘の母親から正式に第二夫人の地位を保証された配偶者だが、現在別居中である。
よって自由に出演依頼を出来る訳ではない。》
これで頼む。」
「了解です。
各プラットフォームのプロフ欄でも、その旨を補足しておきます。」
「うーーーーん。
トイチ人気凄いニャ。
アイツ、ホモの利益代表みたいに思われてるニャ。」
「っぷw」
「笑うニャ!」
「ゴメンw
でも、超ウケるw
何でダーリン様は、そんなにホモから支持されるの?
あの人、ゲイにはかなり冷淡だよ?」
「そりゃあ、全世界で一番有名なホモだからニャ。
ティム・クックより有名なホモってトイチ位のもんニャ。」
「ティム? 誰それ?」
「GoogleのCEO。」
「へー。
ホモってどこにでも湧くな。
爆サイもホモの話ばっかりしてたし。
ハッテン場ってトコ、ちょっと見物してみたいんだけど。
女が行ったら怒られるかな?」
「いやいや!
折角爆サイに広告打ったんだから、閲覧者を敵に回すような行為は控えるべきニャ!」
「だな。
うん、我慢する。
あ! ダーリン様に突撃させようか?」
「ぷぷぷw
それは面白そうニャw」
「お! コメ欄が加速し始めた。」
「ルナさん!
ゲイ関係の話を茶化して話すのは相当危険です!」
「ゴメンゴメン。
何? ガイジンホモ勢は結構真面目に視聴してるの?」
「遠市君とバチカンを対決させたがってますね。
彼が宗教家を名乗ってるのが、かなり物議を醸しだしてます。
海外勢、かなり真剣な討論モードですよ?
英語圏・フランス語圏・ラテン語圏…
あー、結構ガッツリ宗教論争になってますね。」
「おーい、この雰囲気で歌えってかーw?」
「果たしてメスガキ太鼓は外人に理解出来るのか。」
「ルナさん! 遠市君に連絡取っていいですか?
このままじゃ収集つかないかもです。」
「うーーん。
あの人、火に油を注ぐタイプだからな。」
「奴は神経を逆撫でする天才ニャ。
担任時代、何度アイツに昭和体罰くらわせてやろうと思ったか!」
「オッケー。
今の窓口は寺之庄さんかな?
繋いでくれ。」
「了解!」
「お姉様。
せめて英語通訳用意しろとか書き込みがあるニャ。」
「ッチ。
うぜえなあ。
Fuck fuck fuck!
Damn you, you faggot!
You're disgusting!
Die, die, die! I'll kill you on sight!」
「お姉様、英語喋れたのニャ?」
「んー?
思ってる事をGoogleに翻訳させて洋画っぽく読み上げただけ。」
「その情熱を授業に向けて欲しかったニャ。」
「必要性のない学問は拷問と同じなんだよ。」
「で? 今は必要性に駆られてると?」
「まあな。
国数英社理を学ぶ意義くらいはわかって来たよ。
3年前に奈々に指摘された通りだったよ。」
「ああ、そんな話をした事もあったニャ…」
「遠市君の出演承諾取れました!」
「おお!
言ってみるもんだな。」
「じゃあ、モニターに出しますよ?」
「うおお!!
はい! オナシャス!」
『三橋さーん、どもですー。
今度東京か大阪で飲みに行きましょうよ。』
「ははは、いいね。
但し、ルナさんを優先してあげて。」
『えー、優先してますよぉw』
「ダ、ダーリン様!」
『あ、鷹見にも繋がってるんだ。』
「そちらのモニターで共有出来ます。」
『へえ、スマホって何でも出来るんですね。
あ、たかみだー。
何かアイドルみたいな恰好してない?』
「ダーリン様…
ど、どうして…」
「と、トイチ…
オマエ、よりによって!」
『あ、先生。
どもどもご無沙汰しておりますー。
私のテント、これ世界中に配信されてるってホントですか?』
「何でいっつもいっつも光戦士と抱き合いながら喋ってるの!!!!!」
「空気読めニャぁぁああーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
『?』
「あ、ルナ姉ちゃん久しぶりなのだー。」
「いや、ダーリン様!
あのね! どうして貴方はね!
いっつもいっつも斜め上なんスか?
もうちょっとね! 常識的に生きましょうよ!」
『え? え? え?
どうして怒られれてるの?』
「トイチー。
やっちまったニャー、オマエ。
毎回毎回ショタを抱きながら登場しニャがって!
ホモ自慢しながらじゃないと喋れないのか!!」
『え? え? え?
私、また何かやっちゃいました?』
「…ふわあ。
寝入り掛けで頭が回らないのだ。
兄ちゃん、早く寝ようなのだ。」
「うっわー。 うっわー。
そりゃあ爆サイユーザーへのサービス案は練ってたけどさ。
そいつはサービスし過ぎっスよお!!!」
『は? ば、バク? え? 何て?』
「おい、志倉!
tweetラインがおかしいニャ!!」
「制御不能ッ!!
書き込み受け付けてくれません!!」
「え? ちょっと?
何で同接が表示されてない?
アレ? 固まった?」
『あ、鷹見。
オマエにも鳥取土産をさぁ。』
「今、忙しいんで黙ってて!」
『あ、はい。』
「これ全プラットフォームがフリーズしてニャいか?
え? 一旦切れる? 切れない?」
「Twitter応答ありません!!」
「コメント制限掛かりました!
こちらからも確認不能です!」
「同接11万ッ!?
違う! これ110万ですよおお!!!
115万! 120万止まりませーーーん!!!」
「世界中のホモが一斉に荒ぶったニャ!?」
「うおおおおお!!!!!!
生きてるプラットフォーム探せええええ!!」
「残機なし!!! コントロール不能!!
Twitter完全に沈黙しましたーー!!!」
「うっわあああ!!!
BIGO LIVEがサイトごと固まってるニャーー!!!」
『あ、あの鷹見?』
「ちょっと黙ってろホモ野郎!!!」
『ひえっ、ごめんなさい。』
「よっぴー!
課金者に絶対負担行かないようにしろ!
返金に応じる告知も出せ!」
「これひょっとして全世界的なプラ…」
《このサイトにアクセスできません。
https://twitter.com/のサーバーのIPアドレスが見つかりませんでした。
次をお試し下さい。
・接続を確認する。
・プロキシ、ファイアウォール、DNSの設定を確認する。
ERR_NAME_NOT_RESOLVED》
【名前】
遠市・コリンズ・厘
【職業】
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 14
《HP》 左頬骨亀裂骨折
《MP》 万全
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 ライジング・カード!
《魔力》 悪の王器
《知性》 悪魔
《精神》 吐き気を催す邪悪
《幸運》 的盧
《経験》 157500
本日取得 0
本日利息 19342
次のレベルまでの必要経験値6330
※レベル15到達まで合計163830ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利14%
下3桁切り上げ
【所持金】
1095億0160万0000円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
荒木のカバン
天空院翔真写真集vol.4
白装束
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
『100倍デーの開催!』
× 「一般回線で異世界の話をするな。」
『世襲政権の誕生阻止。』
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
「空飛ぶ車を運転します!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
『遠市王朝の建国阻止。』
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 『日当3万円。』
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
×警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
「オマエだけは絶対に守る!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げたのんます。」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 『子ども食堂を起ち上げます。』
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
〇DJ斬馬 『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
金本聖衣 「同上。」
金本七感 「17歳メインヒロインなので旦那との復縁を手伝って。」
天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
〇小牧某 「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」
阿閉圭祐 「日本国の赤化防止を希望します。」
坊門万太郎 「天空院写真集を献納します!」
宋鳳国 「全人類救済計画に協力します!」
堀内信彦 『和牛盗難事件を解決します。』
〇内閣国際連絡局 『予算1000億円の確保します』
毛内敏文 『青森に行きます!』
神聖LB血盟団 「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」
〇大西竜志 「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」
坂東信弘 「四国内でのイベント協力」
国重辰馬 「四国内でのイベント協力」
涌嶋武彦 「畜産業界の総力を挙げて遠市派議員を衆議院に最低10名押し込みます!」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
◎鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」
土佐の局 「生まれた子が男子であればリイチ。
女子であればリコと命名する。」