【降臨48日目】 所持金195億1000万1000円 「リンチじゃない方の総括を始める。」
起床。
ひんやりした空気に、ここが内陸の街・津山だと思い出す。
隣で寝ている光戦士も身体を曲げて布団に包まっている。
「リン兄ちゃん、寒いのだ。」
『やっぱり山の中は冷えるな。
ほら、私のを重ねてあげよう。』
「ううう…
ボクは都会でないと暮らせない事を改めて痛感したのだ。」
『今思えば、坊門さんも上手く逃げたよな。』
「ボクも坊門のジイちゃんと一緒に帰れば良かったのだ。」
そもそも帰路に津山ルートを推奨したのは坊門だったが、後山参拝案が浮上した途端に冷や汗をダラダラ流しながら必死で自身が別行動を取る必要性を説き始めた。
まあね、彼も歳が歳だからね、消耗の可能性からは逃げたいだろうね。
俺も野山が苦手だから気持ちはわかるよ。
「兄ちゃん。
予めボクは宣言しておくのだ!」
『あ、うん。』
「ボクは絶ッ~対に山登りはしないのだ!
大都会千林大宮で育ったシティボーイ枝豆のボクは自然が大嫌いなのだ!」
『うん、私も街中で育った人間だからね、そこは賛成。
勿論、山登りなんてしないよ?』
「リン兄ちゃんにはもう騙されないのだ!
どうせなし崩し的に山に行くんすよね?」
『いやあ、私は障碍者だし。
そもそも田舎が苦手だしね。
行かないんじゃないかな?』
「絶対に行かないのだ?」
『うーーん。
世の中に絶対はないんじゃないかな?』
「ぴえん、これ絶対に山パターン!」
『ダイジョウブダイジョウブ♪
しんどくない方法を皆で考えよう。』
「要は修験道をリスペクトしている姿勢を見せたいんすね?」
『うん、勝手に山伏のコスプレしてるからね。
この衣装って許可とかいるのかな?
まあいいや。
いずれにせよ、少しは配慮を見せておかないと、いずれ炎上要素になるでしょ。
そういうこと。』
「修業はしないのだ?」
『性に合わないよ。
大体さぁ、人間の人生なんてスペックで決まる訳じゃない?
《修行する才能》がある奴だけ修行すればいいのさ。
私はそういうの無いだろうから…』
「うおっ!
男の風上に置けないZ世代思考来たのだ!
でもボク、兄ちゃんのそういうコスパ思考最高にYESなんすよ!」
『要するに美作地方では後山が修験道の聖地ってことでしょ?
だからさあ。
近くまで車で行って、寄付金を納めて。
偉い人と一緒に握手してる写真を撮って、それでとっとと大阪に帰ろう。』
「賛成!!
リン兄ちゃんの屑ムーブ、楽ちんだから最高なのだ!
最後に念を押しておくのだ!
ボクはエアコンの効いた車内からは絶対に出ないのだ!」
機嫌が直った光戦士がトイレに行った頃合いを見計らって金本七感が耳打ちしてくる。
「それはフラグや。」
『え? フラグですか?』
「漫画的には、絶対にハードな苦行をさせられる場面。
もう心の準備しときや。」
『えー、マジっすかー。
嫌だなあ。』
「オバチャンには見えるんや。
アクションシーン、バトルシーン、修行パート。
トイチ君が今まで避けとった全ての艱難が襲い掛かるという未来が。」
『勘弁して下さいよー。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
皆で仲良く朝食。
堀内兄弟が牛肉を大量に持って来てくれたので朝から焼肉パーティー。
『改めて思いましたが、やっぱり独特の食肉文化ですよね。』
「…牛肉料理の聖地というキャッチフレーズで全国に売り出したいんです。
自分達で言うような事ではないのですが、事実レベルは高いと思います。」
『この干し肉はかなり旨いと思います。
噛み締めると旨味があふれ出す感覚。
あ、私はネギポン酢との組み合わせが好きかも知れない。』
今日は動く可能性が大きいので酒は飲まない。
なので、差し入れられた美作番茶で喉を潤す。
あっさりしていてゴクゴク飲める。
言うまでも無く、このお茶もPRして欲しいという意図だろう。
光戦士と堀内兄弟が相談を始める。
アイツ、結構数字持ってるからな。
子供と侮れないんだよな。
鷹見から教わった事だが、現代社会は何がバズるかわからないので、コンテンツは発表し続けなくてはならないそうだ。
鷹見にせよ光戦士にせよ、暇さえあれば配信や自撮りをしてるからな。
あのマメさには頭が下がる。
『こっちのコリコリした部位も旨いですね。
モツですか?』
「ああ、それは牛の大動脈ですよ。」
『へえ、動脈!?
そんなのもあるんですね。
この味、私は大好きです!』
「結構下処理が大変なので、ヨメナカセと呼ばれているんですよ。」
『へえ、ヨメナカセかあ。
これいいですね。
私の大好物になったかも。』
「え!? 本当に?」
『リップサービスではありません。
好物を聞かれたら津山名物ヨメナカセとPRしておきますよ。』
「やったぜ!」
そんな感じで、一日の出だしは穏やかだった。
さて、肉を貪るのも一段落したので、美作番茶を啜りながら作戦会議。
『えー、皆さん。
私が津山に来た目的は2つ。
1つは日頃お世話になっている堀内社長への恩返し。
美作の名産をPRする方法を模索する為です。
また可能であれば購入ルートを作って、纏まったおカネを落としたいと考えてます。
この辺も和牛盗難で大変な様ですから、少しでも支援をしたいです。』
堀内兄弟が満面の笑みで何度も頭を下げる。
こちらとしても知名度がある上に腕の立つ彼らは何としても手元に引き付けておきたい。
堀内堅造がアニメ化経験のおかげでメディア事情に詳しいのも非常にポイントが高い。
どのみち中四国で何かする時は岡山県を通るのだ。
この2人とは良好な関係を続けておくに越したことはない。
『そしてもう一つが、修験道に対してのフォローですね。
今、我々は勝手に山伏っぽい恰好してるじゃないですか?
多分、厳密に言えばアウトだと思うんです。
もう修験道関係者も私のこの服装を認知していて…
気分を害しているのではないか、と思うんですよ。
いや、恐らく既に嫌われてることでしょう。』
寺之庄が挙手。
「フォローは難しいかもだよ?
修験道って神聖教と違ってピラミッド型の組織じゃないんだ。
近代的な統一組織がない相手だという事は念頭に入れておいて欲しい。」
『そこまで厳密には考えてないんです。
もっとふわっとした感じです。
《恐縮してますよー。》というポーズだけ取っておきたいです。』
「実際問題、トイチ君は恐縮してるの?」
『…別にあんまり。
後からゴチャゴチャ言われたら嫌だなあ…
と言うのが正直なところです。』
「迷惑さえ掛けなければ、そこまで気を遣う必要もないとは思うんだけどねえ。」
『うーーーーん。
最終的に鷹見が絶対に壮絶にやらかして、先方に洒落にならない迷惑を掛けると思うんです。
そうなった場合、交渉そのものが困難になると予測されるので先手を打っておきたいです。』
「ああ、そっか。
鷹見さんも計算に入れておくべきだね。
ゴメンゴメン、そこまで思い至らなかった。」
『なので、前もって鷹見の分の迷惑料を払っておきたいんですよ。
お賽銭箱みたいなのって無いんですかね、修験道?
出来れば寄付受付窓口があると助かるんですけど。
振込対応してくれてるなら更に嬉しいです。』
「今、検索してるけど…
ちょっと見当たらないなあ。」
『えっと、じゃあですねえ。
遥拝という形式にしましょう。
後山の近辺まで車でパッと行って。
皆で拝んでいる写真をインスタにアップして。
…お守りか何かが売ってたら、一番高いのを買います。
それでよしとしましょう。』
要は、修験道に対するリスペクトアピールさえ出来ればなんだって構わない。
ただ、出来れば距離を置きたい。
俺は修行やら苦行が嫌いだ。
想像しただけでもゾッとする。
神聖教の聖典は緻密に体系化されていたので読んでて楽しかった。
また聖職者資格を持つ講師達は、みな高い教育を受けたエリートばかりだったので、彼らとの触れ合いは俺の知的好奇心を大いに満足させてくれた。
…逆に。
検索表示を見る限り、修験道は感覚的・身体的な側面が強そうに見えた。
良くも悪くも多くの部分が明文化されていない。
つまり理屈屋の俺とは恐らく相性が悪い。
なので、距離を置く。
こちらは山伏スタイルを黙認して欲しいだけなのだ。
自動的に好感を持ってくれると助かるんだが、難しいだろうな。
皆で地図を囲み、慎重に行程を練る。
出来れば下車時間も最小限に留めたいからな。
『高速道路で西粟倉村に入ります。
後山は同村にありますので、見晴らしの良い場所で撮影をしましょう。
村内で買い物が可能であれば、厭味にならない程度にカネを落としましょう。』
皆が安堵の笑みで賛意を示してくれる。
そりゃあね、誰だって山登りはしたくないよね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
10時20分。
キャンピングカーに搭乗。
体調が万全ではない寺之庄は堀内堅造と共に待機要員とする。
「トイチ君、僕の居ない間に面白いことしちゃ嫌だよ?」
『えー?
私、面白いことなんかしたことありませんよ?』
「あー、これは絶対に面白シーンが満載な予感。
いやあ、残念だ。」
『安心して下さい。
ちょっとしたドライブ。
すぐにお土産買って帰りますよ。』
寺之庄は意味あり気に微笑んでいる。
どうやら一波乱が起きると信じ込んでる様子だ。
勘弁してくれよ。
流石に今日くらいはのんびりさせてくれよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【遠市キャラバン】 後山遥拝チーム
遠市厘
堀内信彦 (運転担当・案内人)
金本七感 (予備運転手)
後藤響
江本昴流
金本光戦士 (撮影担当)
※搭乗車両は坊門総業提供のキャンピングカーとする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目指すは西粟倉村。
ルート検索する限り、1時間弱の行程。
サッと行ってサッと帰る。
坊門総業の運転手2名は夕方まで休憩タイムとする。
遊ぶ場所は無いかも知れないが、外出も許可した。
『昨日はどうでした?』
「猊下!!
3Pなんて初めてでしたよ!!
ずっと夢だったんです!!!」
『…ッ!?
…そうですか。
…楽しんでくれましたか?』
「はい!
最高でーーーーーーーーす!!!!」
不意にハンス・ヴェルナーの笑顔がフラッシュバックする。
きっと一生忘れられないだろうな。
目の前の貴方達は、どうか俺の心の特等席には来ないでくれますように。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
津山ICから中国自動車道に乗る。
天気は良く他の車影も見当たらないのでピクニック気分である。
堀内信彦から修験道についてのレクチャーを受けながら、各々楽な体勢で身体を休める。
俺は皆の勧めでベッドで横臥させて貰った。
(走行中車両のベッドで寝るのは違法である。)
羨ましくなったのか光戦士が隣に潜り込んで来る。
子供はこういうの好きだよな。
そんな折。
テーブルで腕を組んでいた江本が不意に口を開く。
「トイチさん。
1つお願いがあるのですが。」
『あ、はい。
エモやんさんの希望でしたら喜んで。』
「…。」
『あの?
遠慮せずに仰って下さいね?』
「…俺と勝負をして貰えないでしょうか。」
唐突な発言に脳の処理が追い付かない。
『…勝負? …ですか?
あの、決闘的な?』
「おい江本。
やめとけ、オマエが恥かくだけやで。」
「…いえ、悩んだ末の結論です。」
言われてみれば、今朝も江本の表情は硬かったな。
何か怒らせるような態度を取ってしまったのだろうか?
『勝負と仰られても…
私、貴方とは真逆で万事鈍臭い人間ですからね。
エモやんさんに勝てる分野は何一つないですよ?』
「…またまた、ご謙遜を。
昨日、あれだけの伝説を作っておきながら。」
『え? 伝説?』
「ほら、このTwitterのトレンドを見て下さいよ!」
『えっと、どれどれ。
#大谷翔平
お! 大谷選手がまた世界記録を更新してる!!
素晴らしいじゃないですか!
いやあ、こんなに凄いペースでホームランを打ち続けるって…
まさしく現代の伝説ですね。
カッコイイなぁ、憧れますよ。』
「はい、球史に残る偉業だとは思いますが…
今はその件ではありません。」
『む!
#第二次黒海封鎖
ロシアが黒海通行全船舶への攻撃を宣言!?
これは一大事です!』
「はい、それは大変だと思いますが
今回の議題ではありません。」
『うーーん、他に私でも分かるトレンド…
ん?
#救世主企画
これは何でしょう?』
「ああ、それは鷹見さんですね。
そんな事はどうでも良いので、一番上までスクロールして下さい。」
『何か感覚が麻痺して来たのでしょうね。
鷹見が捕まろうがバズろうが、驚かない自分に驚いています。
どれどれ、スクロールっと』
…ああ、この事か。
『ひょっとして
#ライジングカード
の話ですか?』
「はい。
昨日は衝撃を受けました。
決してトイチさんを甘く見ていた訳ではないのですが
まさかあんな裏技まで隠し持っておられたとは。
見て下さいよ!
世界中のyoutuberがトイチさんに対抗してライジング・カードのチャレンジ動画をアップしています。」
『コイツラその情熱をもっと建設的な事に使えないんですかね?』
「実は俺もサービスエリアでトランプを購入したんです。」
『あ、はい。』
「見様見真似で試みたのですが上手く行かず…
昨夜カードマジックの情報商材を買い漁って徹夜で読破したのですけど、類似の手品は見つかりませんでした。」
…まあ、地球には無いだろうな。
ちなみにアッチソン氏のカード術は剣士である彼が戦闘補助に編み出した技術体系なので、手品よりも剣術や軍隊格闘技から辿って行った方が賢明かも知れない。
江本はブツブツ言いながらカードをシャッフルしている。
流石にアンダースローを5分で体得した男だけあって、恐ろしく華麗な手つきだ。
『…手品勝負をせよと?』
「いえ、そういう小細工で勝ったとしても男としての評価には繋がらないと思うんですよ。」
『はあ、そういうものなのですか。』
「…トイチさん。
少し自分語りをしてええですか?」
『あ、手短にお願いします。』
案の定、江本の回想はグチグチと長かった。
要約すると以下の通り。
01、自分は少年時代から面白人間として笑いを取り続けて来た。
02、ところが遠市厘が世間のウケを独占してしまった。
03、その為、面白人間としての自分のプライドが傷付いた。
※関西人の自分が関東人の遠市の後塵を拝している現状が許せない。
04、面白キングの座を掛けて勝負して欲しい。
ということらしい。
事もあろうに男の癖に啜り泣きながら必死に訴えかけてくる。
その様子だけで既に十分滑稽なのだが、笑ってしまうと江本が怒りそうなので必死に堪える。
『えー? 私は別に面白い事はしてませんけどねえ。』
「いや! 誤魔化さないで下さい!
ほら、このtweetの数々を見て下さいよ!
みんな、遠市さんをネタに大盛り上がりじゃないですか!」
江本が差し出して来る画面を見ると、確かにみんな俺の話題をしている。
盛り上がっているのは事実なのだが、その内容は痛罵したり嘲笑したりと…
かなりえげつない人格攻撃の対象となってしまっているのである。
寧ろ、傷付くのだが?
「…正直に言えば、これは嫉妬です。
俺はバズり続けているトイチさんが妬ましい!」
『…いや、代われるものなら幾らでも代わりますけど。』
「その余裕が妬ましいんですよ!」
『えー。
参ったなぁ。』
江本はイケメンだし甲子園にも出たしインドの経済誌の表紙に載ったこともあるし、おまけに美人の佐々木とセックスしている。
その上、何が不満なのだろうか。
金地金いっぱい持ってるじゃん。
もう満足しろよ。
『いや、しかしですね。
勉強やスポーツでしたら、容易に勝負が出来ると思うんです。
結果が可視化されますからね?
でも、面白さなんて主観じゃないですか?
うーーーん。
そもそも論として、面白さって比較出来るものなんですか?』
「…出来ます!
何故なら、大阪で最も重視される評価基準が《面白いかどうか?》だからです。」
俺は背後を振り返る。
後藤・七感・光戦士が一斉に頷く。
なるほど、そこは的外れではない、と。
何らかの比較方法は存在するのだろう。
『具体的にはどうやって比較しますか?』
「…互いの面白動画を並べてアップするというのはどうでしょう?
そしてTwitter上で世論の審判を仰ぐ。」
『いやいやいや。
そんな事で比較や判定が出来るものなのでしょうか?』
「出来ます!
トイチさん、俺は神を信じませんが…
笑いに神が宿るという事実は知っています。」
『…はあ。』
「これまで色々と恩を受けておいて、無礼極まりない申し出である事は百も承知です。
でも、俺はトイチさんを超えなければ前に進めないんです!
どうか! どうか俺と勝負して下さい!」
『いやあ、私の方が貴方から助けられていると思うのですが…
わかりました。
そこまで仰るなら、正々堂々と受けて立ちます。』
いつの間にか後山の山麓・西粟倉村に到着していた。
江本以外の全員が下車。
面白攻撃の準備をするので待っていて欲しいらしい。
とっとと写真を撮って早く帰りたいのだが、仕方なく付き合う。
車外でボーっと待っていると後藤が隣に立つ。
「…申し訳ありません。」
『あー、いやいや。
後藤さんが謝ることではないですよ。』
「アイツは半年に1回くらい、悪い病気が発症するんです。
俺も昔から注意はしているのですが…」
『ふふっ、結構ハイペースですね。
江本さんは楽しいから好きですよ。』
「そう仰って頂いて安心しました。
ただ、御迷惑をお掛けしているのが心苦しくて。」
『でも、トータルしてプラスの人材だから私に紹介してくれたんでしょ?』
「トイチさんなら、アイツを使いこなせると思ったんですよ。
実際、上手く役目を割り振って下さっていますしね。」
『江本さんには色々期待してますよー。
ヒグマと鷹見とヒルダと遠市王朝を倒して貰いますから。』
「ははは、酷使ですねw
でも、アイツは力が余ってるみたいですし…
もう一試合登板させましょうか。」
『うーん、じゃあウクライナ問題も任せます。』
「いいですねー。
まあ、江本なら何とかするでしょ。」
2人で爆笑していると車内から江本が現れる。
何か変なお面を被っている。
笑って良い場面なのか分からないので誰も笑わない。
『え、エモやんさん?』
「烏天狗です。(コホー)」
『え? から? 何?』
お面で声がこもって聞き取りにくい。
「江本昴流は死にました! (コホー!)」
『???』
「今の俺は! 烏天狗仮面です! (コホー!)」
『え? ここ笑う所ですか?
え? 笑っていいなら笑いますけど…
笑ったら怒られる場面ですか?』
「今から面白い事をします! (コホー!)」
『あー、失礼しました。
まだ笑っちゃ駄目なんですね、失敬失敬。』
「トイチさん、コイツ調子に乗るんで
甘やかさなくていいですよ。(ボソッ)」
「光戦士君!
キャメラスタンバイOK? (コホー)」
「えー、ボクが巻き込まれるんすか?」
「OK? (コホー)」
「まあ、一応録画モードにはしてあげたのだ。
あの、充電器忘れて来たから残量が心配なんすよ。
出来れば手短にお願いするのだ。」
「承知! (コホッ)」
見れば、烏天狗仮面は高下駄?
凄い不安定な履物を履いてる。
俺の位置からは聞こえないが、ブツブツ言いながら光戦士の前をポーズを取りながら何度か往復している。
どうやら何らかの一発芸を披露する前フリらしい。
「烏天狗!
空を飛びまーーーす!!! (コホーーー!!!!)」
江本は木立を高下駄で10メートルほど駆け上がり、木の枝の間で飛行しているようなポーズを取る。
そして身体を小刻みに動かすと…
『うおっ!!
凄いッ!!!
本当に飛んでるように見える!!!!』
「ここ笑う所ですよーー!! (コホーーーー!!)」
『いや、こんなに凄い技術を笑うなんて…
そんな失礼な事は、ちょっと。』
「光戦士君! ちゃんと撮ってるー!? (コホーーー!!)」
「照明が無いからちょっとボヤけてるのだ。
仮面の柄が判別できないっすね。」
「そこを何とか! (コホー!)」
俺は全く笑えないのだが、この光景を面白く思う人もこの世のどこかに居るのではないだろうか?
七感を振りむく。
「ゴメン、オバチャンはこういう男の子のノリってわからへんねん。
江本君は頑張ってるとは思うねんけど。」
後藤に振り向く。
「関西では、ああいう自称面白人間は一番軽蔑されますね。
アイツ、自分で自分のこと面白いと勘違いしてるみたいなんですけど。
単にイタイ奴が笑いもんにされてるだけですからね。
これまで何度も注意はしてきたんですけど。
俺が甘やかし過ぎてしまったんですかねえ。」
後藤は寂しそうな目で顔を伏せてしまった。
堀内信彦に問う。
「俺、アクション映画とか好きなんで、そっちの方向では凄いと思います。
いや、江本君の身体能力は卓越してますよ。
全盛期のジャッキー・チェンと共演出来るかも…
ああ、でも笑いのセンスが乏しいからオーディションで落ちるか。」
『やはり江本さんに笑いのセンスはありませんか?』
「狙ってる時点で笑いの才能無いと思いますよ?
面白い奴って、普通に喋ってるだけで面白いじゃないですか?」
『確かに。』
「江本君は笑いを諦めて、アクション全振りした方がいいと思うんですけどねえ。
今って、ピッチング動画とか流行してるので、そっちを推奨したいですねえ。」
その後も江本は飛んだり跳ねたりしながら、どこかに行ってしまった。
『じゃあ、皆さん。
時間も押しているので、遥拝動画撮りましょうか?』
「「「はーい。」」」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
西粟倉村は岡山県の最北東に位置し、鳥取・兵庫と県境を接している。
岡山県の最高峰・後山を擁する自治体だけあって、見渡す限りほぼ山林であり、豪雪地帯としても知られているらしい。
堀内兄弟の本籍地である美作市の隣村であり、狩猟の関係で兄弟の知人は多い。
見渡す限りの山だが、ベンチャー育成にかなり熱心であるらしい。
その情報を聞けただけで、低い山の空に風穴が空いたような気分になる。
江本の為に数種類の符丁を残してから、画像の撮れそうな位置に車両を移動させる事にした。
《後山》と書かれた標識や看板を見つける度に、みんなで記念撮影。
お洒落インスタ用にニッコリ笑った画像と、プロパガンダ用の真剣な表情の2種類ずつを撮って行く。
途中、堀内信彦の依頼で美作市まで南下。
竹山城なる旧跡で光戦士に短い動画を撮らせる。
「この辺は宮本武蔵の故郷なんです。」
『へー、そうなんですね。』
「武蔵の父の新免無二斎。
祖父の平田将監。
彼らが家老として出仕したのが、この竹山城なんですよ。」
『へー。』
「この城の素晴らしい所はですね?」
『あ、はい。』
「車で、頂上の城跡まで登れます!」
『おおお!!!
凄くいい御城じゃないですか!』
「猊下…
もうここで撮っちゃいませんか?
角度的に後山も見える筈ですし。」
『ちょっと距離あるけど、大丈夫ですかね?』
「うーーん。
城跡からの撮影っていうのが、そこはかとない苦行要素が見えませんか?」
『あー、言われてみれば武張った印象がありますね。』
「それにここら辺は山名家と赤松家の係争地なんです。
ほら、丁度山陰と山陽の中間でしょう?
なので、何度も争奪戦が繰り広げられたんですよ。」
『へー、確かに。
地図で見ても、鳥取市と岡山市の真ん中にありますね。』
「ここで供養を行った体にしましょう。
予防線になります。」
『え?
それ修験道と関係なくないですか?』
「いや、場所や目的はふわっと散らしておいた方が…
逆に突っ込まれにくいかな、と。
だって猊下、修験道のこと、全然詳しくないし。」
『ああ、確かに。
じゃあまあ、ここでそれっぽい写真を撮っておきましょう…
平和祈念がどーたらこーたらって事で。』
「トイチさん、折角なんでウクライナも絡めます?」
『ああ、そうですね。
事態の早期解決を祈った事にしておきましょう。
カネカネカネカネナンマイダー♪』
「「「「カネカネカネカネナンマイダー♪」」」」
まあ、みんなでナムナム言ってる画像を併せてアップすれば、それなりに真面目ぽく見えるだろう。
結構時間が余ったので、堀内の提案で後山神社なる場所まで向かう。
名前からして後山を神体としているっぽい。
ここの写真も撮ったら、敬意はともかく誠意は伝わるだろう。
車内、皆で大阪に帰って何がしたいかの話題で盛り上がる。
七感が「都会の爽やかな空気が吸いたい。」と言ったので、皆で賛同。
話が二転三転して、フグチリで打ち上げをする話の流れになった。
当然、堀内兄弟も招待する。
堀内信彦が遠慮がちに「女のいる店だと嬉しい」と打ち明けると、七感が「レディならここにおるやん!」と言って場を盛り上げた。
小学生の頃から卑猥な漫画を描き続けてきただけあって、七感は話のわかる女だった。
その場で金本聖衣に通話して、堀内兄弟を夜の街で接待する約束を取り付けてしまった。
これには謹厳な堀内信彦もニッコリ。
そこから猥談タイムに突入し、車内は爆笑で満ち溢れる。
皆で楽しく笑いながらの道程だったので、あっと言う間に後山神社に到着した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
しまった!
神社の階段を登り切った瞬間に後悔の念に襲われる。
居たのだ、境内に。
山伏の集団が。
何かの集会をしていたのだろうか?
かなり真剣な表情で集団祈祷(?)をしている。
護摩(?)、結構高く火を焚いている。
その全員と完全に目が合う。
向こうは心底驚いた表情をしている。
恐らくは俺も似た顔をしていたのだろう。
互いが息を呑んでしばらく硬直する。
やはり俺は修験道業界から完全にマークされていた。
それは相手の敵意の籠った表情を見れば一目瞭然。
何人かの山伏が錫杖を強く握り直している。
これは洒落で済ませて貰えない空気!
「トイチ君、挨拶や!」
耳元で七感が素早く囁く。
声の緊迫感が、俺を我に返らせる。
『あ、ど、どうも!
は、はじめして!
遠市厘と申します!』
何とか声になる。
相手もかなり戸惑っているらしく、目を見開いたまま硬直している。
恐らく反応に困っているのだろう。
中央に居たリーダーらしき老人が意を決したように進み出て口を開いた。
「存じております!!」
日頃、荒業で鍛えているのだろう。
老人とは思えない程、気迫に満ちた声だった。
『あ、そ、それはどうも…
きょ、恐縮です。』
「本日の議題こそが!
遠市さん!
貴方に関する事だったからだ!!」
老人が錫杖を乱暴に地面に叩きつけると、我に返った一同も錫杖で地を鳴らした。
…これは滅茶苦茶ヤバい展開。
多分、非は俺にあるんだろうなあ。
『誠に申し訳御座いません!』
俺は丁寧に頭を下げる。
別に悪いとも何とも思わないのだが、腰を低くしていればこの場を…
「悪いとは思ってないんですよね!?
わかりますよーーー!!!!」
頭を完全に下げ終わらないうちに指摘されてしまう。
…バレたか。
後藤が無音タンギングの符丁で殺害許可を求めて来るが、一応保留。
堀内が目線で送って来た合図によるとあの中に知己はいないらしい。
「修験者を名乗って悪行を働いているそうですな!」
老人の隣に居た巨漢が叫ぶ。
『あ、いえ。
悪行と仰いましても…
何が何やら。』
悪行?
何だろう?
俺、何かしたっけ?
狩猟法と出資法に違反している点は認める。
後、鷹見の犯した罪は流石に把握し切れていない。
「誤魔化そうとしても無駄ですよーー!!
貴方、修験道の呪術を騙って日本全国で詐欺を働いてるでしょうが!!」
全身から冷や汗が噴き出る。
面と向かって詐欺を指摘されると、事実なだけに反論の余地がない。
『えーー!?
いや、心当たりは…
あるような気もするんですけど…
私にそういうつもりは無いというか…』
彼らの憤怒に満ちた目線から察するに、かなりの迷惑を掛けているのだろう。
やばいなー。
この人達、多分山伏ガチ勢だ。
冗談やカネが通じなさそうな雰囲気がある。
おいおい、錫杖を構えたまま包囲するのやめろよ。
そんなので殴られたら後藤でも怪我をしかねないし、俺は普通に死ぬ。
「何でも、神を自称して大阪にカネを集めてるとか!
公然と脱税を宣言しているらしいじゃないですか!
白を切っても無駄ですよーーー!!」
あー、それ絶対に聖徳太子だよなあ。
アイツ、余計なことばっかりするタイプだもんなー。
『えっと、えっと。
口の回りそうな七感さんお願いします。』
「トイチくーん。
オバチャンの背中に隠れるのは最高にダサいで?」
『すみません。
私の代わりに釈明を。』
七感は溜息を吐いてから、リーダーの老人と協議を始める。
帰りたいのだが、勿論退路は完全に塞がれている。
助けを叫んだ所で、この山村だからな。
声が誰かに届くとは思えないし、届いたら届いたで駆け付けた人間が味方してくれるとは思えない。
眼前の修験者達。
どう見ても真面目に山伏修行している人達だ。
一方俺は…
偽札をバラ撒いて、聖徳太子一派のマネーロンダリングに加担している訳だからな。
免許も無いのにイノシシやクジラを殺害してるし、どう見ても悪者だ。
七感と老人は額を寄せ合って、押し殺した声で口論をしている。
問題は、そんな間にも山伏の仲間がどんどん集まって来ている点だ。
包囲が徐々に狭まって来て、いつの間にか殺し合いの間合いになる。
後藤は既にゴルフボールを装填し終わって俺の合図を待っている。
最大装填数は20球と聞いた。
この男1人なら十分切り抜けられるのだろうが、俺と光戦士が洒落にならない足手まといだからな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
長い長い協議が終わった。
途中、何度か怒声が飛び、一度だけ手首を強く掴まれる。
…痛い。
恐怖しかない。
不幸中の幸いだったのは、女性の金本七感が居てくれたこと。
山伏達はかなり生真面目な性格っぽいので、俺同様に女性に暴力を振るえない。
なので、彼女を前面に押し出している限り、いきなり殴られる事はないとも計算していた。
「改めて宣言しますけど。
神聖教団は修験道とは無関係です!
たまたま衣装が同じだけ!」
七感が甲高い叫びで締め括る。
俺は、うんうんと頷いておく。
要するに、聖徳太子が神聖教の詳細を皆に尋ねられた際に
「修験道の一種です。
ほら、猊下のあの服装、山伏さんと一緒でしょ?」
と説明していた事が元凶だったのだ。
それでトイチロンダリングの大元が、修験道組織という風評が立ってしまった。
まるで山伏達がヤクザや悪徳政治家の手先としてマネロンの実務を担っているかのように誤解され始めているのだ。
修験道業界的には明治政府による徹底弾圧以来の艱難らしい。
『皆さん、待って!
少し冷静に話を聞いて下さい!
私はヤクザとは無関係ですよー!』
「見え透いた嘘を!
アンタの嫁さん組員でしょーが!」
山伏が突き付けてきたスマホには鷹見のwiki欄が表示されており、そこには《暴力団準構成員》と太字で明記されていた。
ますます言い逃れが難しくなる。
山伏達はみな結構年配なのだが戦闘的な雰囲気を隠さない。
人垣の後ろの方では「叩き潰す」「殺す」という不穏な単語が飛び交っている。
『…あのォ。
誤解を解く意味でも、御団体に寄進をさせて頂きたいのですが…』
駄目元でカネをチラつかせるも、物凄い形相で睨まれる。
だろうな、カネで転ぶ奴は山伏修行なんてしないだろうからな。
「本性を現したな、詐欺師め!」
如何にも冗談の通じなさそうな初老の男が俺の胸倉を掴んでいきなり殴って来る。
オイオイ、令和だぞ?
最初の一発、いきなり顔を殴られる。
痛ってえ。
続いての2撃目、後藤が割って入ってガードしてくれる。
なるほど、わざと一発目を殴らせたのか。
相手の鬱憤を晴らさせる効果があるだろうし。
何より俺の顔に跡が付いていた方が、裁判になった時に有利だからな。
それにしても頬がズキズキする。
凄く痛い。
他にも俺を殴りたい者は大勢居るようで、幾人かが何とか後藤を避けて俺に接近しようと試みる。
堀内が俺を抱きかかえながら地元の知己の名を挙げるが、向こうは聞こえない素振りをしている。
やばいな。
俺、死ぬんじゃないか?
というか、頬がビリビリと痛い。
いつの間にか協議が打ち切られて、トイチ君をぶん殴るタイムに突入している。
やべえ。
だ、誰か助け…
「そこまでだぁ!!!! (コホーーーー!!!!!)」
いや、オマエはいいよ。
今、真面目な場面だろ?
舞い降りて来た烏天狗仮面がいきなり特殊警棒で、手近な山伏を激しく殴打する。
悲鳴と共に山伏が倒れ、境内に血が飛ぶ。
『え? いきなりやるんですか?』
思わず口に出してしまう。
言われてみれば江本って結構好戦的だよな。
前は普通に鷹見の殺害許可を求めてきたしな。
「我が名は烏天狗仮面!!! (コホーーー!!!)」
普通なら失笑する場面なのだが、奪った錫杖で山伏を攻撃しながらの台詞なので笑えない。
一団の中の1人が腕を砕かれたらしく、凄い悲鳴が挙がる。
「おーい、エモやんー。
暴力は子供以外の何も生まへんぞー。」
「我は烏天狗仮面!! (コホー!)
江本など知らぬわ!!! (コホー!!)」
後藤や七感が堪え切れずにクスクス笑う。
どうやらここは笑う場面らしい。
勿論、俺は関西人程のお笑い感度がないので、どこが面白いのかわからない。
江本は異常に喧嘩慣れしており、常に七感を盾にしながら周囲に暴行を加えていく。
巻き込まれた七感が蹴り倒されるが、悪びれる様子もない。
「卑怯者!!!
女に隠れて恥ずかしくないのか!!!」
「馬鹿め!! (コホー!!)
卑怯など負け犬の遠吠えよ!! (コホー!!)」
倒れた七感とリーダー格を人質に取った後藤が噴き出してしまう。
抑え込まれている光戦士も笑っているので、ここはお笑いポイントらしい。
皆に合わせて笑う方がいいのか少し悩むが、保留。
…だって面白さがわからないもの。
俺、センスないのかな。
山伏の中では一番戦闘力のありそうな巨漢が錫杖を江本の脳天に振り下ろす。
江本は足技を絡めながら何とか防御するも、体格差で押し込まれてしまう。
「体格差を活かすなんて卑怯やぞ!! (コホー!!)」
余程、ツボに入ったのか後藤は声を挙げて笑い出した。
人質を活かすタイミングを完全に逃しているようだ。
…ゴメン、どこが笑う部分?
老人の首を片腕で絞めながら、後藤が好戦的な者の足にゴルフボールをぶつけて行く。
俺の考えすぎかも知れないが、くるぶしだけを正確に砕いている様に見える。
まさかな、幾ら後藤でもそこまで器用な芸当は出来ないだろう。
流石に偶然だろう。
江本と巨漢がしばらく鍔迫り合いを繰り広げるが、七感が「人質を殺すで!!!」と叫んだ事により膠着した雰囲気になる。
何人かが隙を見て俺を人質に取ろうとするが堀内が全力で錫杖を振り回して接近を阻止した。
見ればこの男も口から出血している。
自然に後藤が捕獲した相手のリーダーと、地面に押さえつけられている光戦士を中心に人垣が出来た。
双方、いつでも錫杖で人質の頭蓋を砕ける状態である。
もはや今が令和時代とは思えない野蛮さである。
「どうです、皆さん。 (コホー)
ここは紳士的に人質交換といきませんか。 (コホー)」
「オマエが言うなーー!!」
「バカヤローー!!!」
「先に手を出したのキサマだろうが!!」
この場で一番憎まれている江本が提案した事により、逆に人質交換を言い出しにくい雰囲気になる。
皆が江本を罵倒する。
うん、気持ちはわかる。
戻って来た七感が俺に肩パンしながら「アンタが言わな場が収まらんで!」と叱責してきたので、うんざりしながらもリンチじゃない方の総括を始める。
『えーっと。
実はですねー。
色々誤解があったみたいなんですけど。
私、皆さんとお友達になりに来たんですよ。』
「ふざけるなーー!!」
「嘘つきー!!」
「恥を知れーー!!!」
罵倒に気付かないフリをしながら、出来るだけ明るい声色で頑張る。
喋ってみて、改めて頬の痛みに気付く。
なんか頬を中心に顔全体に痛みが伝播している。
辛い。
『いやいや。
私も無知ながら修験道を真面目に学び始めた所でして。
聖地を参拝と思ったのですが…
皆さんの逆鱗に触れてしまったようですな、ははは。』
人質に取られている老人が「騙されるなよー!」と仲間に叫ぶ。
後藤は首をへし折るジェスチャーで威嚇するが、脅しに屈するような連中ではない。
山刀を抜くと無言で光戦士の首筋に突き付ける。
膠着、依然終わらず。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時間がジリジリと経過する。
俺は手を替え品を替え、修験道への崇敬をPRするのだが信じて貰えない。
そりゃそうだ、別に何とも思ってないもの。
って言うか俺、ぶっちゃけ宗教って嫌いなんだよ。
プロテスタントは認めるよ?
GNPに寄与するからね。
でも、山に籠ってる連中って生産性ゼロじゃん?
なーにが修行だ、アホか。
「トイチさん。」
後藤がアイコンタクトで太陽を見るように促す。
太陽? 何故、この場面で。
いつの間にか日は大きく傾いている。
太陽… 時間…
ハッ!? 複利!?
ヤバい!?
七感に小声で時刻を尋ねると16時25分。
言うまでもなく最悪の状況だ。
興奮状態の彼らが俺のピン札を見ればどうなる?
確実に《偽札だ》と騒ぎだすだろう。
高い確率で戦闘が再開される羽目になる。
『私は修験道の修行の為に来ております!
邪魔をしないで貰いたい!!』
「邪魔をしてるのはそっちだろうが!」
「言うに事欠いて!!!」
「何が修行だ!!! 車で来てる癖に!!!」
割と妥当なツッコミが入る。
彼らの言葉を冷静に反芻。
やはり向こうに理があるな。
『あなた達の様な暇人と違って私は忙しいんだ!!
早急に修行をしなければならない!!
邪魔をしないで貰いたい!!』
老人が後藤に首をロックされたまま叫ぶ。
「あんなチャラチャラした車で遊びに来て!
何が修行だ!!!
何の修行だ!!!
ふざけるなああ!!!!」
もうね、返す言葉ないからね。
坊門総業提供のキャンピングカーはねえ。
派手なサーフボードのステッカーとかデカデカと貼ってあって…
誰がどう見ても金持ちの道楽車両だからね。
そりゃあね、そんなので修行とか言われたらガチ勢の人は怒るよね。
って言うか100%以上俺が悪いよね。
でも最終目的が正義だから逆にセーフだよね。
うん、ミクロの視点では俺が悪い。
でもマクロの視点では俺が正しい。
だから、ここは痛み分けといかないか?
『えっとえっと、滝に打たれたりそういうのです!
丁度、そういうのをしに来ました!』
あまりにとって付けた俺の回答に場が騒然とする。
「いや、それは苦しいのでは? (コホー。)」
オマエに言われたくねーよ。
「稚児淵の滝にでも打たれに来たというのか!」
『そうそう! それそれ!
チゴフチの滝に来たんですよ!』
山伏達が心底呆れたような表情で俺を見る。
心の底から見下げ果てたような雰囲気なので、きっとかなり的外れな回答をしてしまったのだろう。
「じゃあやってみろよッ!!!!!」
堪忍袋の緒が切れた、という表情で端に居た山伏が叫ぶ。
その叫びを切っ掛けに再び怒号が飛ぶ。
周囲の罵声から分析するに、《稚児淵の滝》なる滝が実際に神社の向かいにあるらしい。
皆で口論しているうちに、実際に滝に向かう流れになる。
神聖な境内にはかなりの血痕が飛び散っているが、そこは全員でスルー。
そりゃあね、掃除なんて生き残った方がやればいいだけだからね。
お互い、人質は放さない。
老人と光戦士は縄の様な物で首を固定され、いつでも殺せる体勢のままで歩かされる。
…今、令和だよな?
…ここ、異世界じゃなくて現代日本だよな?
「ワシが殺されたら、殺れ!」
しきりに老人が叫ぶ。
山伏達は力強く「応ッ!」と叫ぶ。
「こ、これはドッキリなのだ?
本当はリン兄ちゃんが仕掛けたサクラなのだ?」
パニックになった光戦士が叫ぶが、山伏に殴られて黙った。
風上から僅かに血の匂いがした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
成程、山伏達が呆れる訳だ。
神社の向かいにあった稚児淵の滝は極めて低く、小岩に沿うように斜めに流れている。
言い出しておいて何だが、こんな形状の滝にどうやって打たれるのか俺が知りたいくらいである。
いや、物理的に不可能だろう。
「かつて女犯戒を犯した稚児がッ!
贖罪の為に身を投げて死んだ!
故に稚児淵の滝だ!!」
巨漢の山伏が叫ぶ。
なるほど、稚児が死んだから稚児淵か。
「ちょっと待つのだーー!!!!
どうしてみんな、ボクを見るんすか!!!
え? 嘘?
賢いボクは知ってます。
この展開、絶対ボクにとばっちりが来るパターンなのだ!」
「言われてみれば。 (コホー)
漫画とかで子供キャラってそういう扱いされるよな。 (コホー)」
「他人事みたいに言ってるんじゃねーー!!!!
全部オマエの所為なのだ!!!!」
「コホ?」
「その当事者意識の欠如したリアクションやめろなのだ!!!」
さっきから後藤がずっと笑っている。
老人の首を絞めたまま笑える神経は中々のものだ。
七感は「この体験は喧嘩商売かハンターに反映せなアカンなw」と上機嫌だ。
オマエラみんな楽しそうで何よりだよ。
俺も少しだけ楽しくなって来たけど。
「遠市厘!
最終警告だ!!!
修験道と無関係である旨を宣言しろ!!!」
1人の山伏が光戦士を淵の側まで引き立てて叫ぶ。
要求を呑まなければ沈めるという意思表示なのだろうか?
後藤も一歩も引かない。
何の躊躇いもなく老人の指を逆さに曲げた。
「ガーッ!!」
一瞬悲鳴を挙げるも老人は歯を食いしばって耐える。
おいおい、これドッキリ?
いや、これ何かそういう企画だよね?
どこかのyoutuberの企画だよね?
報復とばかりに山伏が光戦士を思いっきり蹴りつける。
子供特有の甲高い悲鳴。
…残念ながら、企画ではなさそうだ。
『ですから!
さっきからそう言ってるでしょう!!』
「どうせこの場を去れば、また我々の名を騙る癖に!!」
『私達は神聖教団です!
修験道とは関係ない!!!』
「じゃあ、その服装やめろよ!!」
もうね、何から何まで向こうの言い分が正しくて困る。
どれくらい向こうが正しいかと言うとカネが通用しないのだ。
そう、真の正義はカネなんかに屈しない。
彼らを見てつくづく再認識した。
「今から配信するから!
生配信で無関係だって宣言しろ!!!」
山伏が独鈷を握り締めたまま反対の手でスマホを構える。
「そっちだけ撮るのは不公平やろがい!!」
叫んだ七感も即座にカメラを起動させる。
その場に居た全員がスマホを取り出し、憤怒の表情で互いを撮り合う。
俺だけ仲間外れにされてるようで少し寂しい。
生きて帰れたら平原に手厚く礼を述べよう。
互いの身体には血痕が飛び散っているし、顔や頭部から流血している者も多い。
この事態が刑事事件化した場合、文字通りスマホが法廷での命綱となる。
「遠市ッ!!!
詫びろ! 悔いろ! 誓え!!!」
巨漢が吠えた。
光戦士が首根っこを掴まれ淵の上にぶら下げられる。
地獄絵図だな、まったく。
「ほらあ!
修行してみろやあ!!!!」
山伏達が狂獣のような目をして叫ぶ。
後藤がもっと酷い表情をしているので、非難出来ない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
無題 [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
『あー、テステス。
どうもー、皆さん毎度お騒がせしております。
遠市厘です。
あ、名前だけじゃわからないかな?
えっと鷹見。
じゃない、ネットではルナルナって呼んだ方がいいのかな?
まあいいや。
鷹見を殴った動画で有名になった遠市です。
あーあー、山伏さん。
これもうカメラ回ってるんですよね?
ああ、配信されてるみたいです。
えっと、こういうの初めてなんで、不手際があったらゴメンなさいね。
えっと、えーっと。
ああそうか、《えっと》と言うのは良くないのか。
鷹見とか先生とか、何気なく配信してるみたいだけど
アイツら凄いな。
自分でやってみて難しさがわかったわ。
えーーーーっと。
はは、ゴメンなさいw
また《えっと》って言っちゃったw
言っちゃ駄目だって意識すると逆に出ちゃいますよねww
えっと、私は神聖教団という宗教団体の一応代表なんです。
これみんな知ってるのかなあ?
あーでも、Twitterで題目は流行しているらしいからなあ。
えっと、聞いたことないですかね?
カネカネカネカネナンマイダーって題目。
私が即興で考えたんだけど。
ぷぷw
失礼、改めて口に出すと笑っちゃいますよね。
その宗教なんですよ、神聖教って。
あのー、私人前で話すの苦手なんで
話し方が変でも笑わないで下さいね。
陰キャにカメラってイジメですよねw
えーーーーっとですねえ。
本日は修験道?の皆さんとのコラボ配信となっておりまーす。
血の出てる人や服に血痕の付いた人も居ますけど
山伏さんってそれ位に苛酷な修行をされている人達なんですよ。
いやー、頭が下がります。
いやいや!
私は無理無理w
鈍臭いんですよ、昔から。
マラソン大会が近づくほど口数が減るような…
もうねー、自分で言ってて恥ずかしいんですけど。
そんな軟弱者です。
だから、今日はちょっとだけ荒行に付き合いましたけど
これっきりにしたいなあ、あははははははw
いや、さっきねー。
山伏さん達に凄く怒られてたんですよ。
いやホントホントw
ほら、私が最近白装束をずっと着て、山伏っぽい服装で通してるから。
彼らに風評被害が行っちゃってるんです。
個人名出したくないけど、鷹見とか鷹見とか鷹見とか鷹見の悪評が全部山伏さん達に行っちゃったみたいで。
はい、それはもう誠にごめんなさい。
烏天狗仮面さーーーん、貴方も謝罪してーー!!』
「うるせー馬ぁー鹿! (コホー!)
何が修験道じゃ、死ねカス! (コホー!)」
『はい、弊教団のマスコットキャラの烏天狗仮面さんもね。
この様に深く反省しておりますね。
まあそういう訳でね。
修験道と神聖教団は全くの別物!
ここ皆さん、ちゃんと覚えておいて下さいね。
修験道の人達って、皆さん真面目な方ばかりですので。
何か悪い事が起こったら、犯人は勿論我々ですよー。
山伏さん達を疑わないようにね、気を付けて下さいね。
えーっとねえ。
神聖教団もねえ。
あるんですよ、本当は。
衣装が、制服が。
うーーーん、これ言った方がいいかなあ。
うーーーーん。
あのね?
どうして我々が修験道さんの衣装を着ているかと言うと…
神聖教団の法衣って威厳があり過ぎるんです。
この動画見てる人で異世界アニメとか好きな人居ます?
よくああいう異世界転生もので宗教団体が黒幕ってパターン多いじゃないですか?
その黒幕が着てるコテコテの法衣をイメージして下さい。
それなんですよー。
神聖教団の法衣って。
流石にねー。
私も面の皮がそこまで厚い訳じゃないから。
地球であれを着る気にはなれないですねー。
うーーーーん。
アレは威圧的過ぎる。
自己の無謬性を前面に出すというか…
私は好きじゃなかったなあ。
その点ね?
修験道の人達は立派ですよ。
自分を飾る為じゃなくてね。
自己を研鑽する為の装束ですから。
もし許可が貰えるなら…
出来れば修験道の衣装をこれからも着させて頂ければ…
いや、図々しいお願いだとは自覚しているんですけど。
何とかならないですかねー。
烏天狗さんは、その衣装気に入ってます?』
「息が苦しい! (コホー!)」
『いや、そのお面は貴方が勝手に被ってるだけなので、弊教団としても責任を負いかねますけどね。
服ね、服。 着ている服の話。』
「ミズノのジャージが一番! (コホー!)」
『ああ、企業名出さないで下さいね。
どうせ謝りに行くのは私なんですから。
えっと、何の話だったか。
服か…
やべ、《服》で《複》を思い出した。
ああ、いやこっちの話。
えっと、烏天狗さーん。
今の時間は?』
「16時59分41秒! (コホー!)」
『うお!
マジか!?
やっべ。
えーっとえーっと!!
神聖教団・遠市厘!
荒行チャレンジ企画ッ!!
いっきまーーーす!!!!』
「ちょ!!! (コホー!!!!)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
兎に角、カネを隠蔽したい一心で淵に飛び込む。
というか17時の俺にカメラ向けるの禁止カードな。
風邪引いたら嫌だなーと思いながら、足からドボンと…
《455億7140万1000円の配当が支払われました。》
ああ、そういうオチね。
つまんね。
想定外の事態に驚いたのだろう。
愚かにも山伏が手を滑らせて光戦士を落としたので水面を疾走して拾いに行く。
どんどん固くなる足場にも助けられて、何とか光戦士を抱き止める事が出来た。
『故意では無いからノーカン!!』
叫ぶまでもなく、後藤は目で了解の意志を示して来る。
俺と光戦士は水面に2人。
夕日が緑の髪を鮮やかに染め、それは綺麗だと思った。
『やあ、光戦士君。
本日の感想は?』
「糞オブ糞っすね。」
『帰ったら美作の観光PR配信期待してるぞー。』
「田舎は糞、山奥は糞、宗教は糞!」
『おいおいカメラが回ってるんだぞ。
何かポジティブな話をしなさいって。』
「リン兄ちゃんと来れたのは良かったのだ。」
見れば肩が震えている。
そりゃあね、どれだけ気丈に振舞ってもまだまだ子供だからね。
いや、俺も実は未成年なんだけどさ。
『いつも巻き込んでしまって済まないな。』
淵の真ん中で強く抱き締め合う。
カネが無限に思えるほど湧いて、水中で島になった。
恐怖から解放された所為だろうか、光戦士は安堵の嗚咽を漏らす。
その華奢な身体でよく頑張ったな。
何とか褒めてやりたかったので頭を撫でてやる。
照れたように笑ってから、もう一度強く抱き着いて来た。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『後藤さん、そろそろ帰りましょうか?
津山で何か喰いたいものあります?』
「うーーん、肉は今朝食べましたしねえ。
烏天狗仮面君は?
プリキュアチョコ買ったろうか?」
「プリキュアは卒業した! (コホー!)」
後藤が笑いながら老人を山伏の群れに返してしまう。
特に悪びれる様子はない。
『山伏のみなさーーん。
これにて荒行チャレンジ企画終了しまーす。』
水面の俺が叫ぶと、山伏達はカメラを無言で降ろした。
『いやー、悪いと思ってるのは本当なんですよ。
これからは修験道とは別組織・別教義である事を折に触れて強調して行きます!』
「…。」
『これから大阪に進路を取りますけど。
一緒に行きたい人は居ます?
そこのデカい人、どうっすか?』
「悪行を為すなら制裁を加えに行く!
但し、善行を為すならその限りではない!!」
『ははは、戒めます。』
「…。」
『これにて目標完遂とする!
総員、車両に搭乗!!』
俺は光戦士を抱きかかえたまま淵から上がる。
そして皆でキャンピングカーに乗り込む。
敢えて背中を晒すが山伏達に追撃の気配はない。
きっと彼らの中で一区切りしたのだろう。
『エモやんさん、一緒に帰りましょうよ。』
「我が名は烏天狗仮面! (コホー!)」
「江本、オマエそのネタいつまで引きずるねん?」
「遠市厘に勝つまで! (コホー!)」
「それやとオマエ。
一生そのお面外せへんぞ?」
「え、マジっすか? (コホー)」
『エモやんさん!
今日の勝負、私の中では貴方の勝利ですよ。
プリキュアチョコの場面で思わず笑っちゃいましたもの。』
「それは響さんのお笑いポイントだ! (コホー!)」
どうやら笑いには様々なルールがあるらしい。
無論、俺は毛頭興味がないのだが。
「遠市厘! (コホー!)
今日の所はこれくらいにしておいてやる! (コホー!)」
『じゃあ、エモやんさん。
気を付けて帰って来て下さいね。』
「他人様に迷惑掛けたらアカンで?
まあ程々にな。」
「さらば皆の者! (コホー!)」
俺が江本を偉いと思うのは、何の臆面もなく山伏の群れに入っていってしまったことだ。
先程まで殺し合っていた巨漢と何やら談笑している。
後藤響が俺に授けた最強のカード。
これだけは絶対に手放すまいと決めている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
255億1000万1000円
↓
3255億1000万1000円
↓
3710億8140万2000円
↓
3255億1000万1000円
↓
255億1000万1000円
↓
195億1000万1000円
※合計3000億円を預託との報告
※配当455億7140万1000円を取得
※稚児供養として455億7140万1000円を奉納
※元本3000億円の確認。
※配当用の60億円を別途保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
満身創痍で津山に帰った俺達は、寺之庄が呼びつけていた医者によるメディカルチェックを受ける。
光戦士が四肢の打撲、堀内信彦は口内裂傷、右手首を捻挫していた七感はHUNTER×HUNTER(偽)の長期休載を発表しダークウェブ内を悲歎に暮れさせた。
俺は頬骨にヒビが入っているらしい。
どうりで痛いと思った。
「トイチくーん。
僕の居ない所で面白いことしちゃ嫌って言ったのに。」
深夜の居酒屋で寺之庄から愚痴られる。
死んでも構わないから、今日の山伏バトルに立ち会いたかったらしい。
『烏天狗仮面さんに言って下さいよーw』
七感のスマホに残された江本の雄姿を見て寺之庄は笑い転げる。
もうアイツの勝ちでいいじゃん。
「でも、面白勝負は君の勝ちだね。」
『そうですかー?
私、今日は何にも面白いことしてませんよ?』
「あー!
この自覚のなさ!
江本君にとっては分が悪いなあ♪
…ねえ、トイチ君。
今、君は凄い事になってるんだよ?
ああ、でも凡人の僕がそう思うだけで…
トイチ君にとっては平凡な日常の一コマなのかもね。」
寺之庄はいつまでも手を叩いて喜び続けていた。
【名前】
遠市・コリンズ・厘
【職業】
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 14
《HP》 左頬骨亀裂骨折
《MP》 万全
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 ライジング・カード!
《魔力》 悪の王器
《知性》 悪魔
《精神》 吐き気を催す邪悪
《幸運》 的盧
《経験》 121191
本日取得 0
本日利息 14883
次のレベルまでの必要経験値42639
※レベル15到達まで合計163830ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利14%
下3桁切り上げ
【所持金】
195億1000万1000円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
荒木のカバン
天空院翔真写真集vol.4
白装束
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
『100倍デーの開催!』
× 「一般回線で異世界の話をするな。」
『世襲政権の誕生阻止。』
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
「空飛ぶ車を運転します!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
『遠市王朝の建国阻止。』
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 『日当3万円。』
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
×警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
「オマエだけは絶対に守る!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げたのんます。」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 『子ども食堂を起ち上げます。』
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
〇DJ斬馬 『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
金本聖衣 「同上。」
金本七感 「17歳メインヒロインなので旦那との復縁を手伝って。」
天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
〇小牧某 「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」
阿閉圭祐 「日本国の赤化防止を希望します。」
坊門万太郎 「天空院写真集を献納します!」
宋鳳国 「全人類救済計画に協力します!」
堀内信彦 『和牛盗難事件を解決します。』
〇内閣国際連絡局 『予算1000億円の確保します』
毛内敏文 『青森に行きます!』
神聖LB血盟団 「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」
〇大西竜志 「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」
坂東信弘 「四国内でのイベント協力」
国重辰馬 「四国内でのイベント協力」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
◎鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」
土佐の局 「生まれた子が男子であればリイチ。
女子であればリコと命名する。」