【降臨47日目】 所持金255億1000万1000円 「ただの大魔王です。」
軽い倦怠感に目が覚める。
窓から射す光を見て、6時頃であると見当を付ける。
…あの女は、当然居ないか。
卓上に置かれたメモには「ごめんなさい。」とだけ書き残されている。
きっとあの女には幸福になる才能が無かったのだろう。
それが結果として、これから起こる悲劇に付き合わせずに済むことに繋がる。
どうか無事に生き続けて欲しい。
そして平等に死ね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
視線を感じて振り向くと寺之庄だった。
唯一、あの女との接点を持つ男。
もっとも、彼の表情を見ていれば痕跡を消し終わった事は何となく予測が付く。
『ヒロノリさん。』
「ん?」
『DJイベントを誘致しておいて何ですが…
クラブ遊びはもう止めます。』
「…そうか。」
これで一連の話は終わり。
俺達は忘れる事で彼女を守る。
それだけだ。
『では、本題。』
「うん。」
寺之庄が目線で朝食を勧めてくるが、当然俺は首を横に振る。
『渋川さん、随分ご活躍のようで。』
「その件で先程後藤君から怒られてしまったよ。」
『ヒルダなら官邸にパイプを作っていても不思議ではないです。
そこは驚いてません。
あの女にとって1年は充分過ぎる時間ですので。』
「…。」
『忌憚のないご意見を伺わせて下さい。
渋川さんは官邸や経団連と渡り合える器ですか?』
「…適性はある。」
『論拠は?』
「渋川家の女性で唯一、公の場での意見表明が許されている。」
『他の女性はそうではないのですね?』
「勿論、大きな節目に薫子さんのお母様が渋川正彦議員の側に立つ事はあるよ。
でも、その場合も型通りの挨拶を手短に済ますだけだ。」
『渋川さんは異なりますか?』
「うん、明らかに家中で別格の扱いを受けている。
渋川家全体が彼女に公的な場所に出る機会を積極的に与えている印象は受けているね。
通常ではあり得ないことなんだ。
ただでさえ、あの家は福井の中でもかなり封建的な気風を残している上に、嫡男であるお兄様の時彦氏もニューヨークでアナリストとして活躍されておられるからね。
女性をあそこまで前に出すのは異常だ。
つまり彼女は後継候補としての期待もされている。
単に時彦氏の予備以上の期待は掛けられているのだろうね。
即興の分析で恐縮だけど。」
『なんだ、結構把握されておられるじゃないですか。』
「敢えて考えないようにはしていたよ。
顔に出てしまう可能性があるからね。」
成程、素晴らしいアプローチだ。
この男から学ぶことはまだまだ多い。
俺ももっと思考をコントロールしなくてはならないな。
『…ヒルダ・コリンズと渋川薫子。
相性はいいと思いますか?』
「…いいね。」
『根拠は?』
「彼女は馬鹿が嫌いだから。」
『馬鹿のフリをする男は?』
「さあ、フリをするまでもない身だから。」
『ご謙遜を。
彼女は権力志向のあるタイプですか?』
「…自己実現欲は高いと思う。」
『地頭はかなり良い?』
「生憎、人間は自分より賢い相手を計れるようには出来ていない。」
『同感です。
私もヒロノリさんの事だけは分かりません。』
「上手いね。
僕もそういう柔軟さを身に着けたかったな。」
『最後に聞かせて下さい。
渋川さんはヒロノリさんに好意を持ってましたか…』
「…仮想敵。」
『まさか!?』
「半年くらい前だったかな。
年始の会合で彼女と同席した際のことだ。」
『ええ。』
「普段はお互いに無難な話しかしないのだけれどね。
《最近は女性向けのライトノベルを好んでいる。》
彼女はそう言った。」
『どういう文脈で?』
「…思い出せないな。
いや、老人達に趣味を尋ねられたのだったか。
それで僕は… 確かこう答えた。
《父のキャンピングカーを借りて全国にドライブに行っている》とね。」
『それで、御周囲が渋川さんにも話を振ったんですね?』
「ああ、彼女は不意に僕だけを見て、さっきの台詞を言ったんだ。」
『…。』
「いや、わかるよ!
流石に僕もそこまで物のわからない男ではないよ。
例え形式的でも構わないから薫子さんを誘っておくべきだったんだよね?
要は、そういう気遣いを欠いていた事への皮肉でしょ?
わかるよ、流石にそれはわかる。
でも、仕方ないじゃないか。
僕がキャンプに行く理由が、あの人と顔を合わせたくないからなんだから。」
『私、昔クラスメイトになろう小説を読むように強く勧められて…
図書館のパソコンで読み漁った時期があるんですよ。
男向けは冒険とか最強とかハーレムとか、そういう単純な欲望を満たす前向きなものばかりだったのですが…
女向けは駄目ですね。
異常ですよ、アレ。
復讐とか見返しとか離婚してスッキリとか、そういう負の感情ばかりで気持ち悪かったです。』
「うん、前に少し検索した事があるけど。
要は気の合わない旦那さんや彼氏さんと別れた後にもっと素敵な男性と幸せになる趣旨だろ?
元旦那さんや元彼氏さんが落ちぶれるとこまでがワンセットみたいだね。」
『渋川さんが本心からそれらの小説を好まれているかどうかは不明ですが…
寺之庄さんの無配慮に対する皮肉ですね。』
メタ的に自分達のおかれた構造を把握して婉曲に要望を伝えるだけの知能がある…
やや攻撃的…
恐らくは小説は好まない、むしろ逆…
フィクションに一喜一憂するような同性を見下げているが故の随筆刊行…
僻陬の名門…
有能でありながら婚姻要員としての立場…
そんな自分を俯瞰で見物して楽しんでいる…
勿論、寺之庄を手放す気はさらさらない…
『ええ、大丈夫です。
プロファイリングはこれで十分です。』
「その結果、薫子さんはどんな女性?」
『ヒルダと気が合います。』
「そっか。
…ゴメン。」
『いえいえ。
あの女を野放しにしている私が諸悪の元凶ですので。』
「胡桃倶楽部、大活躍みたいだね。
普通に経団連とか日経連と席を並べちゃってる。
あの人達、何を企んでるの?」
『聞いて驚いて下さいよ。
アイツらは幸せな結婚をして永遠に愛される事を望んでます。』
「ふーん、その願いが叶うといいね。」
『でも標的は貴方ですよ?』
「えー。
勝手にリストアップされるのは迷惑だなあ。
せめて本人の同意を取るべきだよ。」
『それが《愛》らしいですよ。』
「女性って《愛》が好きだよねぇ。」
『彼女達の性分担において有利な要素をひっくるめたものをそう呼称しているのでしょう。』
「僕は昔から恋愛映画とかが生理的に駄目なんだよ。」
『ではヒロノリさんの遺伝子戦略とは相反しているのでしょう。』
「僕はどんな戦略で生きるべきなの?」
『無責任種馬。』
「えー、それは酷いなぁ。」
『でも貴方なら出来ちゃうんですよ。
女性側も喜んじゃうんですよ。』
「トイチ君が言わんとする事は理解出来るけどさ。
男として胸を張れる生き方じゃないなあ。
少なくとも僕はそういう男性に敬意は持てない。
じゃあ、薫子さんにとって最善の遺伝子戦略は?」
『本来ならヒロノリさんと順当に純愛を育む事だったのでしょうけど。
恐らく戦略方針を転換しました。
政治もフル活用して女性としてベストの着地点を自分から獲りに行ってます。
貴方との結婚もまだトロフィの1つに含まれている可能性が高いです。』
「まさしく政略結婚だね。」
『渋川さんって、花嫁役と権謀家役を1人でこなせるから強いんでしょうね。
そうなる決断の切っ掛けがゲームチェンジャーであるヒルダとの邂逅。
恐らくは、すぐに結託関係になった。
だって不自然だったでしょ?
我々がヒロノリさんの御実家に挨拶に伺った時。
渋川さんは一切の迷いなくヒルダの車両に飛び乗りましたから。
それ以前から連絡を取って居たとしか考えられない。』
「うーーん。
しかしあの時の帰郷は突然決まったことだしね。
決定プロセスにヒルダさんは関与していなかったでしょ。」
『…いえ、ヒルダは俺がヒロノリさんと接点を持った事はそれ以前から把握していました。
あの女ならすぐに婚約者の存在にも到達するでしょう。
なので先手を打って仲間に引き込んでいた。
…いや、意気投合したのでしょうね。』
「ありえなくもないか。」
『最後に一点。
渋川さんって、ひょっとして面白キャラですか?
内面がドス黒かったり意地悪だったり欲深かったり。』
「言うまでも無く、あの階層の女性はそういう面を見せないように教育されるのだけど。
極稀に皮肉屋的な側面を垣間見る事があった。
エチケットとしてそこに目を向けないようには心掛けていたんだけどね。」
分析完了。
渋川薫子はエルデフリダ型。
権力志向で欲が深く、それを仲間内で面白おかしく話せるタイプ。
別腹で女としての幸福もしっかり確保する。
女子社会では人気者になりがちと聞く。
そして、この型の女はヒルダと極めて相性が良い。
理由はシンプル。
ヒルダは同性をあまり好きではないからだ。
いや、内心見下げ果てている。
これは俺の勘だが、アイツは優秀過ぎることもあって、心の底から信頼し合える友人を持った経験がない。
だから女を味方に付ける為に組織や福祉を提供していたのだ。
娼婦師団。
皇帝謀殺。
教団殲滅。
そこまでしてアイツはようやく同性の輪に入れるのだろう。
胡桃亭に娼婦が居なかった理由。
今思えば極めてシンプルである。
ヒルダ・コリンズには売春婦1人とすら折り合いを付ける力量がなかった。
それだけの話だったのだ。
どこかに嫁いだ長女の存在は頑なに伏せていた。
似た気質の次女コレットとは結局内戦にまで至った。
同性と仲良くするという、多くの女子が幼稚園段階で行う妥協が出来ない。
能力と孤独、鶏が先か卵が先か…
いずれにせよ、それがヒルダ・コリンズの本質。
だからエルデフリダの様な面倒見の良いボスママ気質の女に介護される必要があるのだ。
俺も要介護男子なので、その構造は痛い程理解出来る。
渋川薫子。
ヒルダはまたもや介護士の確保に成功した。
結果、官邸訪問という形の戦果を挙げた。
おもしれー女、とでも言って欲しいのか?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どうりでリビングで明るい声が聞こえると思ったら、懐かしい顔が居た。
金本七感。
陽気に笑いながら光戦士をあやしている。
昨日の今日でやって来る迷いのなさに心底驚嘆させられる。
「おーう、トイチくーん♪」
『あ、ども御無沙汰しております。』
「猊下って呼んだ方がええかー?」
『ははは、勘弁して下さいよw』
笑いながら七感は卓上に置かれた業務用タッパーを開く。
昨日の通話が終わってからまだ24時間も経過していない。
にも関わらず、神奈川で考案されたレシピが大阪で出力され高知に届いている。
これこそが仕事なのだ。
彼らのこのスピード感を真摯に学ばなくてはならない。
金本一族やヒルダ一派の神速を見れば、自分が如何に怠慢であるかをつくづく思い知らされる。
今の様な温いやり方では駄目だ。
もっとだ。
もっと早く、もっと精密に、もっと苛烈に。
俺は戦い続けなくてはならない。
そんな事を思いながらタッパーの蓋を開く。
地球の辻占煎餅と異世界の恋愛成就クッキーの融合。
恋辻占。
見た目は一見変わった変形クッキーだが…
やや小さいか?
「ええねん、小さい方が。
女が一口で食べれんかったら、秘密の占いにならへんやろ?」
『確かに。
1つ食べさせて頂きますね?』
ライチ大の大きさ。
外観では練り込まれているドライフルーツの存在は認知出来ない。
なるべく意識せずに無造作に口に含んで…
むっ!
これはイチゴ!?
俺は七感を見つめる。
「アホ!
オバチャンをからかうんやないで!(ポカッ)」
頭を軽く殴られる。
俺に足りないのって、こういう家族とのフランクな遣り取りなんだよな。
明朗なコミニュケーションの見本を家庭で見てこなかったから社会で再現出来ないのだ。
ダン・カズコ、スマンな。
「どうや?
味とかも感想教えてや?」
もう一つ口に運ぶ。
クッキー生地が思いの外軽い。
それでいてリンゴの風味と混ざった時に嫌味が無い。
…自然。
悪くない。
存在感を主張しない事をコンセプトに味が組み立てられている。
何より満腹中枢を刺激しないように配慮された食感。
恋辻占が1個ずつの服用を前提に設計している以上、これは中毒性の誘発を目的とした工夫だ。
咀嚼するまで占い内容が分からないと言うのは面白いな。
恋愛という番人受けする題材、小洒落た甘味。
それが無料で配布されるのだ。
純粋に娯楽として優秀と言っても差し支えない。
「おーい、トイチ君。
包装陳列が完了するまでは、何も始まってないのと一緒やで?
次はこのギミックを最大限活かす包装の選定や。」
『ですね。
可能であれば神道に寄せるのが無難でしょう。
フランクだとありがたいのですが…』
「神道はフランクではないからねぇ。
あ、思い出した。
ウ↑チ→、一応お参りしてきたけど写真見る?
瓢箪山稲荷。」
『え?』
「ああ、補足するね。
この神社は辻占の総本社やねん。
鶴橋から近鉄奈良線でチョコット行ったとこにある。
境内で占いとか出来てオモロイで。」
『七感さんも占ったんですか?』
「待ち人来たらず(号泣)」
『いつか旦那さんとも御復縁出来ますって…』
「そうやとええねんけどねー。
境内の画像一覧、気になったのあるか?」
『包装紙…
御守っぽくするか、絵馬っぽくするか…
ちょっと露骨過ぎますかね。』
「うーん。
寺社勢からクレーム来るんちゃう?
やっぱり文化盗用はアカンで。」
『ですねえ。
私も従来の宗教に対しての侵害行為は極力避けたいので。
誤認狙いになってしまわないように最大限留意します。』
「一応神社で買った辻占を見せるで?
価格は300円や。
他にも子供御籤、御守、稲荷像、暦。」
『ああ、昔は朝廷が暦を発表していたから、その名残の。』
「君は高校中退した割には博識やな。」
『社会科の授業で習っただけですよ。
…皇紀2683年か。』
「ん? どないした?」
『ウチのフリーぺーパーでも皇紀を記載してみます。』
「フリ?
テコンダー朴的な展開を誘ってる?」
『えっと、それネットミームになってる漫画ですよね?
ちょっと見た事がないので。』
「マジかー。
テコ朴くらいは一般教養としてチェックしとかなアカンわ。
今はもう令和やで? アップデートしていきや。」
『あ、はい。』
「しゃーないな。
いつもズンが世話になっとるからサービスや。
…スウぅ。
盗賊の極意!!」
『うおっ、いきなり叫ばないで下さいよ。』
「説明するのだ!
セブおばちゃんはダークウェブ上において
三ツ星ハンターとして崇敬されている存在!
プルトニウムをイランに売ってる奴や
南米の人身売買チームでも二ツ星が限界!
その評価の源泉こそが秘技・盗賊の極意!
なんと、一度見た漫画を完全剽窃する事が可能なのだ!
代償として親権は放棄させられちゃったんすけどね。」
『あ、うん。
それは当然の報いだと思うけど。
絶対にお子さんの教育に悪いよね、それ。』
「シャーカシャカシャカ!
シャーカシャカシャカ!」
『うわキッ(キッショと言い掛けて自粛)
…凄いスピードで漫画が描き上がっている。』
「シャーカシャカシャカ!
シャーカシャカシャカ!」
『うわー、もう1ページ出来てる。』
「実際、岸部露伴の次くらいに手が早い人っすよ?」
『へー。
それが誰だか知らんけど、へー。』
「ハアハア! 校了ッ!
この原稿を人権派義士の名を騙ってTwitter上に投稿!
そのままダークウェブの販売サイトに誘導や!」
パラっ。
『ふーん。
こんな漫画なんですね。
差別は良くないんじゃないですか?』
「ハアハア! ハアハア。
そうや、オバチャンはこの宇宙から差別や偏見を無くすために
日々パクリ漫画で荒稼ぎしとる。」
『それは良い心掛けです。
まあいいや。
要するに諸外国の感情も尊重しろという事ですね?
逆手に取る場面が増えるとは思いますが、なるべく配慮は致します。』
「ハアハア、フー。
この原稿をフリぺに掲載させたってもええで?」
『いや、この人権派義士って人の著作でしょ?
必要でしたら、この人に打診しますよ。』
「フー、フー。
せやね。」
その後も七感が皆にクッキーを配って盛り上がる。
「むう…
生地の配合は完璧、トレハロースの加減も申し分ない。
黒糖を使っているが、キツイ香りを巧みに抑えてある。
ふむ… 全体的にわざと香りを抑えとる…
リンゴ・イチゴ・モモという風味の異なる3つと整合する生地の食感!
!? そのまま包んどる訳やないやと!?
いや待て… かすかに… かすかに何か香りをつけてあるで!
このわずかな香りが、この平凡なクッキー生地を別物に昇華させとる!
何や? 何がこんなに鮮やかでふくよかな風味を与えとるんや?
この香りはなんや?
おのれ!!
この坊門万太郎の味覚と嗅覚を試そうというんかっ!!
…問題はこの香りや。
3種のドライフルーツに風味付けしたこの香り…
はっ!
木の実や! 木の実をもいで酒に漬けておいて…
木の実の色と香りのついたその酒にドライフルーツを漬けた!
そう!味の秘密はこの木の実や…
木苺でもない、すぐりでもない…
さくらんぼでもない、コケモモでもない…
(クワッ!!)
桑の実や!!!
そうやろ!?」
「ジジイ、黙って喰えなのだ。」
味に五月蠅い坊門が太鼓判を押したという事は、味覚面での死角はないということ。
後は包装紙だな、なるべく有難みのある形状が良い。
俺は七感のタブレットをスライドさせ続ける。
『ねえ、七感さん。
これは何ですか?』
「依代や。
漫画とかゲームの定番やろがい?」
『あー、すみません。
私、そういうの疎い方なんですよ。』
「おいおいー、トイチ君大丈夫かー?
月華の剣士とか境界のRINNEとかに出て来るやろ。」
『あー、本当にゴメンナサイ。
仰る事が1ミリも理解出来ないです。』
「…まあええ。
盗賊の極意の発動条件を満たしたら、今度実物(実物とは言っていない)を見せたる。
話を戻すでー。
その画像は大祓の依代や。
まあ人の形を模した白紙やな。」
『ふむ。』
「これに息を吹きかけて水に流すと穢れが浄化される。
日本で仏教の影響が強まってからは、燃やすというバリエーションも増えたけどな。」
『…決めた。
恋辻占は依代で包みます。』
「そんな使い方は聞いたことないな。」
『そりゃあオリジナルですもの。
こういうギミックが欲しかったのです…
娯楽要素は多いに越したことがない。』
「…続けて。」
『よし決めた。
依代同士をキスさせれば…
持ち主同士は神に祝福された正式な恋人となります!』
「ほう!」
『これだけでは既婚者層の取り込みが難しいか…
よし!
更には、重ねた依代を枕の下に敷くことにより、神が子宝を授けます!
うん、異世界でもそうなってる事にしましょう!
神聖教団の公認クッキー、恋辻占!!』
「おおおおお!!!!
…いや、行ける! それメッチャ受けるで!!
バズる! 100パーバズる!!
君、チー牛の分際でそんな洒落たアイデア、どこから捻り出したんや!!」
『…いや、自分が女にされて一番嫌な事を挙げただけです。』
「お、おう。
男の人はこういうノリ嫌なん?」
『恋愛関連において女性の願いって、男にとっては呪いでしかないですからね。
頼むから勘弁して欲しいです。』
「いやー、ウ↑チ→はロマンチックやと思うねんけどねえ。
これで旦那と復縁とか出来へんやろか?」
『うーーーん。
七感さんの場合は、まず盗賊の極意を封印するところからかな。』
「この奥義は手放せんなー。
法律的にはグレーやけど、最強のチートスキルやからな。」
『うーーーん。
グレー? なんですかねえ?
ぶっちゃけ違法にしか見えないんですけど。
少しは自覚して下さいね? 御自身の犯罪行為に。』
「人は誰しも罪を犯すもんやで?
ウ↑チ→だけ責められるのは心外やわ。
トイチ君やって犯罪はしとるやろ?」
『いやー、どうっすかねー。
心当たりがないですねー。』
「少しは自覚しろなのだ、この偽札野郎。」
何はともあれ、恋辻占のフォーマットは決まった。
金本兄弟とチャットして、詳細を詰める。
千林総本店の近所に付き合いの長い印刷業者があるので、まずはそこで見積もり。
金本宇宙の見立てであれば、関東支店だけでも日産5000個は堅いとのこと。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
852億2565万0000円
↓
852億1565万0000円
※金本七感に足代として1000万円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、高知商工会有志がやって来た。
殆ど昨日の面子のままである。
いや、それどころか数が増えて、30人くらいで乗り込んで来る。
「猊下、クジラの件。
全部話を付けときましたきに!」
第一声がそれ。
あまり機密保持への配慮はないらしく
「おまんらわかっちょるな!?
猊下がクジラを殺す話は絶対に内緒やぞ!」
と屋外にまで響く大声で叫んでる老人も居た。
あー、この話は一瞬で拡散するなあ。
まあ田舎の人に細かい気配りとか強要するのも申し訳ないしな。
リビングに皆を招き、茶菓子で接待。
金本七感が冷蔵庫のカツオや蛸を刺身にして老人達に食わせる。
これが意外に好評。
老人達は勝手に畳で寝転がったり、カラオケを始めたり。
まあ、楽しんでくれて何よりだ。
皆で騒いでいると徳島の金毘羅TVがやって来る。
県外の放送局なので微妙な空気になる。
「あのォ、猊下。
一言宜しいですか?」
『あ、はい。』
「何で徳島のTVさんが?
高知は? 高知は?」
『えっとですねえ。
マスコミ各社からの出演依頼には、こちらからも条件を出させて頂いております。
金毘羅TVさんは社長直々に承諾メールを下さったので。』
「高知は? 高知は?」
『課長さんが来られましたね。
条件は持って帰って検討されるそうです。』
老人が「あー!」と嘆く。
「土佐人はねえ。
こういう要所要所で鈍いんですよぉ。
あー! あー!
やっぱり田舎は駄目ですね。
その点、徳島の方はねー。
大阪に近い所為か、商機を掴むことが多いです。
あー! あー!」
老人は直感で理解している。
俺が二度と高知に足を踏み入れない事を。
これが最後のチャンスだったのだ。
だからこそ、商工会は血眼になって俺のクジラ狩の為の根回しをしてくれた。
が、肝心のメディアのレスポンスが鈍かった。
こればかりは仕方ないよな。
自由民権TVの社長は89歳って話だし。
即日対応を求める方が酷だろう。
一方、金毘羅TVの社長は44歳。
精悍な顔つきをしている。
そして聡い。
第一声が「メールでも報告しました通り、全て猊下の御指示に従います」である。
そこまで譲歩されたら、こちらも返礼や便宜を検討せざるを得ない。
商売ってこういうものだからな。
「金毘羅TV 代表取締役社長。
国重辰馬と申します。
猊下の御活動には常々感銘を受けておりました!」
『神聖教団 大主教。
遠市厘で御座います。
国重社長にお目に掛かれて光栄です。
社長の迅速なメール返信、とても助かりました。
改めてお礼申し上げます。』
金毘羅TV側は、持参した機材の説明を寺之庄達に開始する。
メールでも宣言していた通り、俺の要求を全て飲む気らしい。
ここまでしてくれたとなると、やはり通常以上の返礼が必要だな。
『国重社長。
折角来て下さったのです。
宣伝したい事柄がありましたら、告知協力致しますよ。』
「ああ、お気遣い感謝致します!
実はですね、弊社阿波踊りの協賛をしておりまして。
県外の富裕層の方をお招きして、VIP席で豪華徳島料理を振る舞いながら解説をするイベントを行うのです。
要は県外への裾野の拡大ですね。
もし可能であれば…」
『ええ、承知しました。
光戦士君、いつも当てにして申し訳ないが。』
「しゃーねーっすね。
一肌脱いでやるのだ。
阿波踊りのショタエロ衣装を着用。
PVを稼ぎつつリンク誘導してやるのだ。」
これ絶対に教育上悪いよな、と思い七感をチラ見するが…
意外、GOサイン。
「トイチくん。
内心では君もわかっとるんやろ?
正解はこっちや。
この案件はズンのキャリアにとって間違いなくプラス。
乗るしかない、この鳴門ウェーブに!」
『…しかし、中学生に性的な仕事をさせてしまうというのは。
倫理的に好ましくない気がします。』
「アホ。
アイドル・俳優で大儲けした連中を見てみ。
10代の頃から性を売り物にしとるやん?
若さと大胆さで作った優位性を活かして20代・30代のさらなる躍進に繋げとる。
勝ち筋! これは勝ち筋なんや!
オバチャンの言うこと聞いとき!」
『うーーーん。
ですが過激になり過ぎるのは控えるべきかと。』
「逆ぅ!
ここは尖るべき場面!!
若いうちだけやで!
ヤンチャ出来るのは!」
『七感さんは今もヤンチャしてるじゃないですか。』
「ウ↑チ→はまだまだ若いわ!!
実は17歳ッ!!
実はこの物語のメインヒロイン!!」
『…それはそれは。』
結局、光戦士の出演を許可。
先方も馬鹿ではないのだろう。
当然、装束は子供用サイズも含めて一式持参している。
「セブおばちゃーん。
紐結んでー!」
「はいはい、手間の掛かる子やね。」
俺と国重社長は臨時CMの打ち合わせ。
VIP席販売のキャッシュバックを提示されるが謝絶する。
その場でDJ斬馬にメールし、徳島方面でのイベント出演可否を確認する。
また、徳島人が県外に売りたがっている名産品も確認した。
向こうの方では江本がカメラマンと機材の前で談笑している。
どうやら撮影面は問題なさそうだ。
『では、そろそろ始めましょうか。
カメラ回ってますかー?』
「オッケーでーす!
猊下っ!
半歩だけ左にお願いします!」
『了解でーす!』
「アングルも完璧です!
照明眩しければ仰って下さい!」
『土佐の力強い太陽に比べれば、全然大した事ないです!』
俺のリップサービスに背後の老人達が安堵の溜息を漏らす。
県外メディアに場を仕切られて、内心気が気でないだろうからな。
可能な限りの配慮はするさ。
それにしても撮影用照明ってキツいな。
正直、目が痛い。
…無論、大望の前ではこの程度は障害でも何でもない。
屈辱や苦難から逃げる俺なら勝つ資格がないのだから。
『はーい、それではですね。
高知市の商工会である土佐荒波会の皆様に地元を案内して下さったお礼に、隠し芸をやりまーす!
荒波会さーん、昨日は楽しかったでーす!
また是非、ご一緒させて下さーい!』
ようやく背後から歓声が挙がる。
よし、顔は立てた。
少なくとも恥はかかせずに済んだ。
『それでは、四国巡礼キャンペーン!
平和祈願隠し芸を開始しまーす!
野田社長、準備オッケーですか?』
「えっと、ウチの商品なんですけど。
こんなので良かったですか?」
『全然オッケーです!
はい、隠し芸用の商品は高知県内で7店舗を展開されておられる黒潮スーパーマーケット様の提供です!
下にテロップ出まーす。
同社は通販にも注力されておられますのでね!
特に特大藁焼き鰹のたたき!!
お歳暮お中元には是非おすすめですよ!』
「え? え? そこまでして貰えるのですか…」
『はーい!
取り出したのは、黒潮スーパーマーケット様で取り扱いのトランプ!
年末の定番ですね~♪
私の父がねー、忘年会の前になると必死で練習するんですよ。
不器用な人なんですけど。
いやー、あの時は《柄にもない事はやめとけ》とか生意気な事を親に言ってしまったんですが!
まさか自分がやる羽目になるとは(笑)』
俺のシャッフルがあまりに拙いので、場の全員が不安な表情をする。
そりゃあね、俺が鈍臭いのは今に始まった事じゃないからね。
いつも彼らには心配を掛けてるし、俺みたいなトロい奴の下知に従うストレスもあるんだよ、きっと。
だからこそ、君主は福利厚生の一環として例え詐術を弄してでも武勇を身内に示す義務がある。
『はい、ちゅーもーく!
では。手短にー。
ライジング・カードッッ!』
鳥が落ちる。
「え?」 「え?」 「いや?」 「え?」 「ちょ?」
そして、もう1羽。
「あッ!」 「え?」 「ちょ!」 「あ。」 「うそ?」
しばらくしてから、ヒラヒラとトランプが舞降りて来る。
「おおおおおおおおお”!!!!!」
「あああああああああ!!!!!」
「うおおおおおおおお!!!!!」
「うわあああああああ!!!!!」
「うおー! うおー!! うおーーーー!!!!」
「うああああああああああああ!!!!!!」
「ああああああああああああああ!!!!」
「…ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」
「「「「「「「「「「うおーッ! うおーッ!!」」」」」」」」」」
アッチソン流奥義・ライジング・カード。
驚愕の声が止まない。
まあ、驚くだろうな。
異世界最強の男が編み出した秘中の秘。
俺でも放てるように念入りにチューンしてくれたものだ。
カードを舞い散らせるという俺の要望も気前よく取り入れてくれた。
この世に驚嘆しない者など居る筈がない。
その妙技を障碍の所為で直進歩行にすら苦労している俺が放つ。
このギャップが見た者の脳を著しく混乱させ、判断能力を容赦なく奪うのだ。
この技を見せるタイミングをずっと計っていた。
カメラが回っていなくてはならないし、人目が多過ぎてもボロが出る。
ずっと計算し続けていた俺だからこそ断言出来る。
これは今この瞬間にのみに許される一射だったのだ。
俺はゆっくりと周囲を睥睨する。
皆の興奮と怒号は止むどころか徐々に高まっていく。
そうなのだ。
俺達男子は武芸が大好きなのだ。
何故ならオスは闘争の為の消耗品だから。
故に群れの構成員には強悍である事を望む。
群れに足手まといが混じっていたら全体が損害を受けてしまうからな。
特に男社会のリーダーには神輿として担ぐだけの男性的価値が求められる。
だってそうだろう?
君は軟弱者や愚鈍者に頭を下げられるか?
そんな奴の為に命を懸けたいと思うか?
俺は嫌だ!
そしてそんなモヤモヤを仲間に抱かせ続ける不義理は絶対に出来ない。
振るうか否かはどうでも良い。
リーダーは暴力性と戦闘能力を備えている事を周囲に証明する義務がある。
そりゃあカネで地位を買う事は出来るよ?
チビやヒョロガリの社長なんてそこらにいっぱい居るじゃない。
でもそれは買われた側の尊厳を踏み躙っているだけだ。
弱者が群れのリーダーに君臨するなど、本来なら絶対にあってはならないことである。
それが男社会の掟なのだ。
ゆっくり、ゆっくりと舞っていたカードが落ち切った。
皆は怒号を挙げながらも、必死に鳥の死骸とカードを盗み見ている。
真相が知りたいのだ。
鳥の死は俺の技量によってもたらされたものか、カネで買えるギミックか。
皆が俺の顔色をチラチラと伺いながら、地面に落ちたカードを凝視している。
カメラの画角からゆっくり外れる。
落ちた鳥やカードは放置する。
仕掛けが無い事を彼らの目で確かめて貰わなくてはハッタリとして機能してくれないからな。
後藤と目が合う。
ふむ、この沈着な男が呆気に取られてくれたと言う事は成功だな。
更に半秒…
聡い男だ、意図に気付いてくれた。
後藤響。
この妙技は単なる俺のイメージ向上パフォーマンスではない。
貴方への報恩の一射だ。
リトルの頃からエースナンバー以外を付けた事がなかったんだってな。
肘さえ無事なら今頃プロ野球のマウンドに立っていたんだって?
メジャーからも普通に視察が来ていたらしいな。
そんな貴方が俺の様な矮躯の成金野郎を立ててくれている現状。
どう考えても異常だよ。
俺には伏せていてくれたが、裏では色々言われてたんだろ?
プロに行った野球仲間からもあれこれ指摘されていたらしいな。
体育会系業界の価値感じゃ、俺みたいな陰キャ野郎の下についてるなんて嘲笑の的だよな。
それでも貴方は愚痴1つこぼさず、ずっと微笑で俺を守り続けてくれたよな。
…感謝しております。
地球での生活が軌道に乗ったのは全て貴方のおかげです。
…今日、武張った面を一度だけ世間に見せた。
こんな奇術は最初で最後。
俺はずっと貴方に恩返しがしたかった。
これが俺の精一杯です。
どうか貴方の名誉が少しでも埋め合わされますように。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
高知の県民性は知っていた。
歴史を顧みれば容易に想像が付くのだ。
…こういう尖ったパフォーマンス、好きでしょ?
殺生を脳死で非難する軟弱な気風ではないでしょ?
寧ろ、それに卓越した者は評価される土地柄でしょ?
貴方達が尊敬する坂本龍馬。
身体が小さな幼少期は苛められていたが、江戸の剣術界で頭角を現した瞬間に掌を返したんだって?
多分、坂本はそんな故郷を内心見下げ果てていたんじゃないかな?
俺が坂本なら絶対に君達を軽蔑する。
結局は暴力が全てなのだ。
弱者を嘲笑し、強者には諂う。
それが人の摂理なのだ。
土佐人はそこら辺を取り繕えるほど器用ではないだけ。
そう読んだからこそ、詐術の舞台にこの土地を選んだ。
ただそれだけ。
明らかに俺を見る目が変わった。
特に荒波会の老人達。
今までは単なる成金小僧に対しての馴れた目線しか向けて来なかったが、妙技を見せた瞬間に緊張感が生まれた。
これは暴力の可能性への緊張なのだ。
ヒルダや鷹見に怯え続ける俺だからこそ、この心理は手に取るように理解出来る。
自分を害する可能性のある者への応対に神経を遣うのは生物として当然の事だ。
例え小鳥であっても、悪意によってもたらされた死を看過出来る程人間は鈍感ではない。
皆で浜に向かいクジラの薬殺を案内させる。
当然、撮影も他言も許さない。
誰も文句を言わなかったし、意見すら述べなかった。
俺は命を奪い、カネを押し付けるだけ。
『南国市という街に漂着している分も処分させて頂けませんか?』
そう言っただけで、皆が勝手にお膳立てをしてくれた。
俺は老人達の車に同乗し、30キロ東の海岸で大型の注射器を操作しただけ。
命の手応え。
経験値が入ったことを確信する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
852億1565万0000円
↓
851億1565万0000円
※土佐荒波会に協賛費として1億円を支払い。
【推定経験値】
クジラ2頭
13000×2=26000ポイント
《経験》 67253→93253
本日取得 26000
本日利息 未取得
※レベル14到達と断定
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
罪無き2羽を力の誇示の為に殺す。
罪無き2頭をカネ欲しさに殺す。
宗教家としては言語道断の行為だが、俺の戦略構想には極めて合致している。
いるのだが…
流石に短時間に殺生を重ねると周囲が委縮してしまうな。
先程から老人達は恐る恐る俺の顔色を伺うだけで一言も発しなくなった。
当然、そっちの方向性での天下平定は望んでないので、今度は場の雰囲気を和ませる為の努力をしなければならない。
『実はですねえ。
各所で食事振舞を安請け合いしてしまったのですが…
手元に食品のストックが全然無くて途方に暮れてるんですよ。
助けると思って日持ちのする食品を売って貰えませんか?』
俺ほどカネを持ってる人間が調達に困る訳がないのだが、ここはそういうタテマエで押し通す。
困窮している俺を四国人が助ける、という構図を用意してやる。
まだ周囲の表情は固いが、それでも大盤振る舞いされるのは悪い話ではない筈だ。
取り敢えず藁焼きカツオやら和三盆やら酒やら、単価の高そうなものを縁ある各地に郵送して貰う。
名古屋の飯田や千葉の安宅に急遽泣きつき、物資の受け入れ態勢を整えさせる。
九州の土地勘は全くないのだが浦上にも泣きつく。
随分身勝手な提案である事は百も承知なのだが、青森の毛内翁にも拝み込んで引き取りを頼む。
毛内翁は東北人特有の脅威の粘りを発揮し、青森県内でのイベント開催を約束させられてしまう。
(泣きついて、どうにか青森市内への訪問だけで許して貰えた。)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
851億1565万0000円
↓
850億1565万0000円
※寺之庄煕規に物産購入資金として1億円を支給。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この時点で15時を過ぎている。
俺への挨拶を望む者が荒波会を通じてアポを取って来たが、謝絶。
リゾートに引き篭もる。
施設への立ち入り禁止を徹底させる。
『さて、坊門さん。』
「はいな。」
『四国での仕事は一段落したと見て関東に戻ります。
ここまで知己が増えたのであれば、後はリモートで回せそうですからね。
今後、私が四国を訪問するとしても宿所は高松か川之江のみとなるでしょう。』
「猊下、川之江は未見の筈ですが。
大丈夫ですか?」
『ええ、以後の宿割りは四国人に任せますので。』
「あ!」
『お互いにとって、それがベストだと考えます。』
「…でしょうな。」
『さて、帰路のルート選定なのですが。
少し迷ってます。
当初の予定通り、再度瀬戸大橋を渡って堀内兄弟に挨拶し中国道経由で大阪入りするか…
国重社長の提案を採用し、吉野川を下って淡路島経由で大阪入りするか。』
「中国道!」
『論拠は?』
「修験道の聖地、後山。
現時点で猊下が最も神経を遣うべき存在です。
敬意を払うポーズは見せるべきかと。」
『ありがとうございます。
坊門さんに相談して正解でした。
御助言の通り、中国道で帰ります。』
脳内に日本地図を思い浮かべる。
俺の通るべき道、避けるべき道。
大阪で聖徳太子に金額制限を掛ける。
話の展開次第では、今後出資を拒絶しなくてはならない。
ここで数日を費やすだろう。
問題はその後。
どのルートで関東に戻るか?
実は北陸道経由の関東入りも考えていた。
だが、陸路で日本海に沿ったルートを通る場合、渋川家の影響が非常に強い福井県を通過しなければならない。
…悪手。
動向全てがヒルダに筒抜けになるだろう。
脳裏に渋川薫子の流暢な取材対応がフラッシュバックする。
あの女の目的が自己実現だと仮定すると、俺の大奥弱体化構想と真正面から対立する。
内助の功など俺は絶対に許す気はない。
なので、渋川が俺の味方をしてくれるとは到底思えない。
どう考えても駄目だ、北陸道は通れない。
飯田とは早急に合流したい。
あの男には秘書としての役割を期待している。
何より社会経験のある飯田が不在だと、俺達は年齢的に学生集団としか見做されないのだ。
それを避ける為にも飯田・安宅の両名は常に手元に置いておかなければならない。
東海道か東山道か…
岐阜・長野・山梨に顔を出した方が俺にとって好ましい事は理解出来ている。
だが真面目に土地土地に顔を出してしまえば1週間程度のタイムロスが発生しかねない。
(その偶発性こそが、俺の力の源泉となり得るのだが。)
何度も自分に言い聞かせている事だが、正解は存在しない。
俺がカネを持ち過ぎている以上、義理挨拶を欠いた相手であっても、俺に迎合してしまうからである。
例えば今後一生九州や東北に顔を出さなかったとしても、彼らは表面上俺に好意的な態度を取るだろう。
不義理という名の不正解を強引に正解と納得させてしまうだろう。
天下一の大富豪の行動は、周囲が正当化せざるを得ないのだ。
その齟齬は極めて不健全であり非常に危険だ。
必ずや後々悪い方向に潜在的な不満が噴出する。
目に見えている。
全ては回れない。
1県2泊のペースでも100日掛かってしまう。
その途中で、話が一国規模では収まらない金額になる。
出来れば、全県に足を踏み入れ、皆の顔を立ててやりたいが。
以下の4点の必要性を鑑みれば、急ぎ関東に戻るべきだろう。
01、内閣国際連絡局への措置
(ロシア情勢が悪化している以上、防諜機関へのテコ入れは必須。)
02、応じてくれるなら荒木との調整
(手持金額は彼の許容値を大幅に越えている。)
03、平原からのスマホ受取
(連絡手段の確保)
04、木更津倉庫の検分
(資産・資源の備蓄効率化)
…駄目だ、考えれば考える程、己の至らなさが浮き彫りになる。
ヒルダがそれを逆算して待ち構えている事がわかっているだけにもどかしい。
「兄ちゃん、リン兄ちゃん。」
『ん? 光戦士君か。』
「またキチガイの目になってたのだ。」
『私は極めて正気だが?』
「パパ上やママ上や聖衣オジサンやセブオバチャンと同じ目をしてたのだ。」
『…なら正常じゃないか。』
「ああ言えばこう言う奴。」
『何かゴメン。』
「そろそろ偽札の時間っすよね?
今日こそ二次被害を出さないように気を付けて欲しいのだ。」
『うむ。
分かってはいるのだがな。
カネが増え過ぎて、どれくらい噴出するかの見当が付かないのだ。』
「インフレ対策とかしなくていいんすか?」
『多少の混乱があったとしても私が死ねばいずれ収まる。
問題ない。』
「兄ちゃんの《多少》が信用出来ないんすよ。」
『うむ。
実は私も深く考えてない。』
光戦士は国重から贈呈された徳島土産をムシャムシャと貪っている。
フィッシュカツ。
彼らにとってのソウルフードらしい。
半分分けて貰ったが、これもカレー風味。
みんなカレー好きだよなあ。
《Endia》を発明した江本の着眼点に改めて感服する。
『さて。』
外では全ての準備が終わったようだ。
いつもの4㌧車に加えて、四国で調達した2トンウイング車。
浦上がアルミ製のウイングを両方跳ね上げて見せてくれる。
結構、容積あるな。
聖徳太子と飯田に確認。
彼らの申告を信じれば、預金額は3000億円を越えていない。
今、大阪がヤバい事になっているらしいからな。
表に出せないカネを貯め込んでいる事業家連中が帝塚山参りを始めているらしい。
聖徳太子には《預金を増やすな》と厳しく戒めているのだが、気の弱い男なので押し切られているらしい。
(或いは気弱キャラで通すのが彼の処世術なのかも知れない。)
荒波会との商品購入会議を終えた田名部が駆け寄って来て、俺にリストを見せる。
…まず、これを直接全国に配布するのは現実的ではない。
何故なら運送・保管・配付・告知にもコストが掛かるからである。
なので、ここからは「子供食堂」への食材提供のターンに入る。
要は世の中に幾つかあるボランティア的な機能を持つ飲食店に食材を提供し、彼らの活動を支援するのだ。
問題はそれが民業圧迫に確実に繋がってしまう点である。
なので食材提供の条件を徐々に上げて行く事で絞るしかない。
条件とは当然公益性。
無論口には出さないが、俺は飲食店は国家によって統制されるべきであると本心では思っている。
「10分前です。」
リストに夢中になっていた俺を田名部の控えめな声が現実に呼び戻してくれる。
俺は礼を述べ、『息子さんとは連絡取ってますか?』と冗談めかして尋ねてから配置についた。
椅子が用意されていたが着座はしない。
ペットボトル飲料が何種類か用意されていたが口は付けない。
より正確に札束を荷台に放出する事だけを考える。
本当は荷台に搭乗した状態で【複利】を発動したいのだが、周囲に懇願されて距離を取った。
まあ、確かに危険だよな。
質量は凶器である事は、数えきれない人間をミスリルで圧殺した俺が一番知っている。
「60秒ーーーッ!!!!」
寺之庄が叫んだ。
俺は深呼吸をして周囲を見回す。
よし、全員安全距離は保っているな。
後藤がやや俺に近い気がするが、彼の身体能力なら事故はない。
『何やってんだろうな、俺。』
思わず苦笑する。
誰よりもカネカネ言いながら、そのカネに怯える己の不様さがあまりに滑稽なのだ。
テンカウントが始まったので、笑いを消して集中態勢に戻る。
《455億0219万1000円の配当が支払われました。》
無事に大半の紙幣が荷台に納まる。
我ながらかなりの精度で射出出来たと満足する。
見届けて、ややよろめく。
「トイチさんッ!」
後藤に抱き止められて、案外消耗している自分に気付いた。
『大袈裟だなぁ』
と言い掛けて、呂律が回っていない。
無言で差し出されたポカリを飲み干す。
「散らばっても俺らが拾えばええだけですよ。」
空になったボトルと入れ替えに渡されたタオルで汗を拭おうとするも…
ヤバいな、滝の様な汗をかいている。
皆の勧めで風呂に入る。
浴室内の事故を心配されていたので、扉は敢えて閉じなかった。
仕方ないだろう?
打ち出の小槌にプライバシーなんて許される訳がないのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
850億1565万0000円
↓
3250億1565万0000円
↓
3705億1784万1000円
↓
1305億1784万1000円
↓
1305億1784万1000円
↓
1257億1784万1000円
※合計2400億円を預託との報告
※配当455億0219万1000円を取得
※元本2400億円の確認。
※配当用の48億0000万円を別途保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
風呂から上がると撤収準備は完了していた。
挨拶も終え、贈答の交換も全て済んでいた。
皆の手際の良さに内心舌を巻く。
白装束に着替え終わりキャンピングカーに乗り込んだ直後、外から声を掛けられる。
「げ、猊下。
先程、本社での会議が終わったのですが。」
見ると、先日話した自由民権TVの課長だった。
聞くところによると、社長・専務が週明けの面談を望んでいるとのこと。
撮影条件に関してもかなり前向きに捉えているらしい。
『申し訳ありませんが、撤収する所です。』
他に何も言いようがないので、そう伝える。
課長は驚愕の表情を見せるが、驚くのは寧ろこちらである。
どうして昨日と同じ今日が続くと思うのだろう。
『目標、津山市。
小休止地点は四国中央市・岡山市。
全車発進!!』
元から予定になかった事もあり高知での滞在は形式的なものだった。
寺に参り、酒宴に出て、芸を披露し、命を殺めた。
そんな平凡な想い出しか作れず恐縮はしている。
もう来ることも無いだろうが、どうかこの地に幸福ありますように。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【遠市キャラバン】
遠市厘
寺之庄煕規
後藤響
江本昴流
田名部淳
坊門万太郎
金本光戦士
金本七感
浦上衛 (川之江まで同行)
坂東信弘 (川之江まで同行)
【所持金】
1257億1784万1000円
↓
1257億1734万1000円
※高知市から大阪市まで金本七感車両の運転代行費用として50万円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
18時30分、四国中央市到着。
三島川之江ICで降りた瞬間、拠点として使えると直感する。
イオンの駐車場の最端に停車し、皆を休憩させる。
浦上がパーティーへの合流を強く希望したので承諾。
大分での身辺整理が済み次第、大阪に移動するとのこと。
続いて坂東にもサービスをしてやる。
録画ボタンの音が聞こえたので、やや背筋を伸ばす。
「どうもー、猊下猊下w
四国お疲れ様でしたー!
楽しかったですか?」
『いやー、これと言って何の貢献も出来ず
あちこちで飲み食いしただけでした。
申し訳ございません!』
「またまたーw
ライジング・カードやってくれたじゃないですかw
早速バズってますよw」
『信弘さーんw
もうその話は勘弁して下さーいw』
「四国で印象に残った場所とかあります?」
『えっと、どこだろ。
割と色々行かせて貰ったんですけど。
高松のサウナが気持ち良かったです。』
「それ四国じゃなくても入れる奴ーーww」
『「あっはっは。」』
「じゃあ、食べ物はどうっすか?」
『んーーーー。
結構色々食べさせて貰いました。
何て答えようかなー。』
「うどん以外で!」
『えー、参ったなあ。
じゃあねえ。』
「カツオ以外で!」
『あはははー。
さては徳島名物を挙げさせる作戦ですね?』
「バレたかーww」
『あー、でも高知で食べた鯨刺しは旨かったです。』
「もう一声! もう一声!」
『いやー、徳島は高速で一瞬通っただけですからねー。
…はい、フィッシュカツが良かったです。』
「フィッシュカツ頂きました!」
『言わされちゃったーww』
「あははーww
じゃあ、猊下!
最後に四国民に一言!」
『来れたらまた来ます!!』
「それ来ない奴---ww」
『「あははははwww」』
「はい、それでは!
本日のゲストは神聖教団大主教!
遠市厘猊下でしたーーーー!!!!
ありがとうございましたーー!!!」
『どうも皆様!!
ありがとうございましたーー!!!!』
録画終了。
坂東が編集を終え次第、俺達に提出。
チェックOKなら、そのままアップロードという流れ。
俺はそのままアップしてくれても良いと思っているのだが、ちょっとしたSEやテロップも挿入したいらしいので任せる事にする。
軽く談笑してから別れる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1257億1734万1000円
↓
1257億1234万1000円
※坂東信弘に番組協賛費として500万円を支給。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
20時10分、岡山市到着。
到着と言っても高速からは降りない。
吉備SAで30分ほど休憩。
ハンドルを握っていた者の様子を見て回る。
『ヒロノリさん、貴方には一番大きな負担を掛けていると思います。
身体に違和感を覚えたらすぐに声を掛けて下さい。』
「大丈夫大丈夫。
いい宿を取って貰ってるから。
本当に身体への負担は最小限なんだよ。
運転が長いと言っても、本職の運転手さんはもっと大変な訳だし。
ほら、名古屋港とかさ。」
飯田から名古屋港の画像が送られて来たのを見たが酷い有様である。
運転手、荷揚員、オペレーター、システムエンジニア。
皆が苦しみながらも無言で耐えている。
我が国では報道されていないが、ロシアのハッカー達が勝利宣言を出したらしい。
「我々がその気になれば、日本のインフラなど
いつでも停止可能である事を忘れるな!」
宣言はその様に締め括られていたとのこと。
ネットってロクな使い方されてないよな。
田名部の車両には坊門・後藤・江本が乗り込んでおり、大阪での資金の割り振りを相談していた。
彼らは俺の意を汲み、出資者を絞る算段をしてくれているようだ。
『これからは、せめて直接面識のある相手に絞らせて下さい。』
最近ずっと繰り返している台詞。
「それを伝えた瞬間から帝塚山には来訪者が更に殺到してるんですわ。
みんな口々に猊下に挨拶だけでもさせてくれとの一点張りです。
結構大物が揃ってるんで、無下には出来ませんし…」
『そこまでして利息が欲しいものでしょうか?』
「いや、そりゃあ日利1%って奇跡でっせ?
米国債10年物の年利が3%ですやん?
みんなガンガン投資信託やらなんやらを解約してワゴンにカネ積んで押し掛けて来とるんですわ。
札幌から下道で駆け付けて来た製紙王まで居る始末。」
『えー?
そこまでですか?
だって私、いつ大阪に帰るかすらわからないんですよ?』
「うーーん。
でも、光戦士君の配信に出る時は千林総本店の話をいつも楽しそうにしてはりますやん?
あんなん誰が見ても絶対に千林には立ち寄ると思いますよ?」
『まあ、そりゃあ聖衣さんには絶対に挨拶するつもりですけど。
お土産もいっぱい買いましたし。』
「なので、皆が猊下への忠誠の証として、安倍晋三追悼クッキーを買い漁ってるらしいです。」
『? ? ? え? 何故そうなります?』
「いや、だって猊下への面会ルートが現状存在しない訳やないですか?
そらあ、みんな試行錯誤しますって。」
『…どうしよっかなー。』
「せめて大阪に来た連中の顔は立ててやってくれませんか?」
参ったなー。
俺、早く平原に逢いたいんだけどな。
『わかりました!
それでは、大阪で第二回詐欺実演を開催致します!』
「おおおお!!!!
みんな喜びまっせーー!!!!」
『場所は任せますんで。
他の人に迷惑が掛からない場所…
ああ、もう箕面萱野でいいか。
箕面のあそこで開催しましょう。』
思い付きではあるが、大好評の詐欺実演を大阪で開催する事に決める。
田名部と坊門は津山ではなく大阪に進路を取り、そのまま帝塚山入りすることとなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1257億1234万1000円
↓
1256億1234万1000円
↓
1255億1234万1000円
※田名部淳に工作費として1億円を支給。
※チラチラ嬉しそうに見て来た坊門万太郎にも工作費として1億円を支給。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『坊門さんはカネには困ってないでしょー。』
「いやいや、カネは幾らあっても困りまへんって。」
『幾らでもあったらインフレになっちゃいますよー。』
「せやから自分だけが欲しいんですわ。」
『人間って業の深い生き物ですねえ。
私に言われたくはないでしょうけど。』
「御安心下さい!
このカネはカネを配る為に使いますから!!」
カネを配るのにもカネが掛かるんだからな。
そりゃあみんな必死でカネを集めるよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
22時15分、津山市到着。
津山ICから降りて20分程のグランピング場に到着。
迎えに来た堀内兄弟と抱き合って再会を喜ぶ。
やはり案内人の存在は心強い。
寺之庄の消耗が激しいので先に宿所に入らせる。
マズいな…名門のこの男を運転みたいな雑用で消耗させてしまったら、福井世論を敵に回してしまう。
特に許嫁の渋川薫子が檜舞台に立ち始めた今、世間は必ずこの2人の待遇を対比する。
渋川が官邸で政財界の重鎮達と談笑しているのに、寺之庄が長時間運転で衰弱してしまっていれば?
世間は必ず俺に不信感と悪感情を抱く。
何とかしなければ。
続いてトラックを運転して来た坊門の従業員に改めて労いの言葉を掛け、2名それぞれに個室を割り当てる。
『お2人共、挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。
本当は出発前にお礼を述べたかったのですが。』
「ああ、いえいえ!
会長からも特別ボーナスを頂いておりますし。
まさかこんな豪華な個室を割り当てて下さるなんて…
何と申し上げたらいいのか。」
『あの、これ私からの気持ちなんですけど。』
「いやいやいや!!
流石にマズいですよ!!」
『まあまあまあ、気持ち。
ほんの気持ちです。
同じキャラバンの仲間じゃないですか。
勿論、坊門会長に許可は取っております!
ほら、この名刺の裏の一筆書き。
《くれるモンはもろうとけ!》
ってちゃんと書いてるでしょw』
「うわあ、これ絶対に会長の字だw」
『「「あはははははwww」」』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1255億1234万1000円
↓
1255億1034万1000円
※坊門総業の従業員2名に100万円ずつを寸志として支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『堀内社長、今いいですか?』
「あ、はい。」
『津山ってデリヘル呼べます?』
「おおお!!
猊下もそういう遊びされるんですね!!
はい、お任せください!!
最高の女を用意します!!
あ! 3Pとかも可能ですけど!!」
『あ、ちがくて。
3Pは本当に勘弁して下さい。
運転手さん達にそれとなく話を聞いて…
希望するなら呼んであげてくれませんか?
ついでに堀内社長も息抜きして下さい、勿論信彦さんも。
但し、遊ぶのは敷地の外で。』
「あ、あのお申し出は非常に嬉しいのですが…
猊下は?」
『私、恐妻家なんですよーw』
「あははははははww
じゃあ駄目ですねwwww」
…いや、笑い事ではないんだけどな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1255億1034万1000円
↓
1255億1000万1000円
※堀内堅造に遊興費として34万円を支給。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
寺之庄の様子が心配だったので、再度様子を見に戻る。
どうやら七感が皆に軽食を作ってくれているらしくリビングは明るい雰囲気だ。
皆で四国土産を開封して楽し気な空気。
「トイチくーん。
玉子焼きたべるかー?
甘いのとダシで巻くの、どっちがええんやー?」
『あ、ダシでお願いします。』
「オバチャンも流石に疲れたわ。
今日はゆっくり寝なアカンで!」
『色々引っ張り回して恐縮です。
そうですね、四国では色々ありましたので…
今日くらいはゆっくり寝ます。』
皆は顔に出さないが、環境変化の連続で疲労は確実に溜まっている筈なのだ。
例え車に搭乗しているだけでも、景色や気温の急激な変化が体力・気力を削がない訳がない。
少なくとも、俺はかなり疲れた。
今日熟睡しておかなければ、この先の諸判断を誤る可能性がある。
…出汁巻きを食べたら寝よう。
「トイチさん!」
外でストレッチ運動をしていた後藤が飛び込んで来る。
表情の緊張、ただごとではない。
『何か問題発生ですか?』
「…小牧さんが来られてます。」
『え? 小牧ってあの連絡局の?』
「はい、その小牧さんです。
トイチさんと面会を求めております。
…ちょっと様子がただ事ではないので。」
『…怒ってるということですか?』
「いえ、と言うよりも。」
メンバーの許可を取って小牧を招き入れる。
隣には時任、更に隣には時任よりも年配の男。
建物の外にも数名の随員が整列している。
3人共憔悴し切った表情をしている。
小牧に手短な説明を求めた所、この数日俺の連続移動に振り回されていたらしい。
『寺之庄か飯田に連絡してくれればいいのに。』
「一般回線では無理ですよ。」
『ああ、確かに。』
そりゃあ、そうか。
防諜要員がLineやらインスタやら使える訳ないものな。
何度も俺をロストした彼らは、早速バズっているライジング・カード動画を手掛かりに絶望感と戦いながら津山で追いつく事に成功したとのこと。
時任などは半分涙ぐんでいる。
とりあえず3人だけをリビングに座らせ、七感に頼み込んで外の随員を別室で休憩させる。
…多分、今日は寝れないなあ。
小牧が時任の隣の男を指し「こちらが…」と言い掛けるが軽く咳き込む。
「失礼しました。
以前約束した責任者の紹介に参りました。」
『ああ、どうもそれはアポもなしに御丁寧にどうも。』
最年配の男が背筋を伸ばして立ち上がる。
凄い威厳だ。
怒られるみたいで少し怖い。
「遠市猊下。
はじめまして、内閣国際連絡局の局長を務めております
宇野康夫と申します。」
『ああ、これはこれは御丁寧に。
神聖教団大主教 遠市厘で御座います。』
宇野が名刺を出して来たので驚く。
防諜畑の人間が名刺とか出してしまって良いのか?
と言うよりどうして手袋をしない?
指紋から個人情報が手繰られたらどうするんだ?
一瞬、不満が噴出するが堪える。
『あの?
本日はどのような?』
「いえ!
先日、猊下が多大な御浄財を寄付して下さった事!
局一同、皆が感激しておりまして!
取り急ぎ御挨拶をと思い、急遽駆け付けた次第であります!」
『あ、はあ。
お役に立てたのであれば何よりです。』
異世界でもよくあった事なのだが、官僚社会では上長を差し置いてVIPとコネを作ってはならないという不文律がある。
だって部下がVIPと勝手に仲良しになっちゃったら、自分を飛ばして出世しちゃうからね。
なので部下の階級飛ばしを阻止する為にも、部下がVIPと接点を持った場合、物凄い圧力を掛けて自分との面会をセッティングさせる。
小牧や時任が一言も発さず無言で背筋を伸ばしているのは、宇野からの強烈な圧があった為だろう。
そりゃあね。
宇野からすれば、自分に隠れて部下が大金持ちとコネを作ってるなんて許せないだろうからね。
試しに俺が小牧や時任に話題を振ろうとすると宇野が慌てて会話に横入りして部下を黙らせてしまう。
官僚社会はよくあることなのだろう。
小牧も時任も上品な微笑を湛えながら、俺に対して目線で《上司とだけ話して下さい》と訴えかけてくる。
ソドムタウンでもさんざん見て来た光景なので、それについてはノーコメント。
2人が後でパワハラされたら可哀想なので宇野にだけ向き合い、彼を大袈裟に褒めて顔を立ててやる。
「決して返礼という訳ではないのですが!
我々からのささやかな贈り物をお持ちました!」
宇野が誇らしげな表情で宣言する。
『ああ、そんなお心遣いは不要ですのに。』
「いえいえ!
猊下の為なら!!」
3人がニッコリ笑う。
まあなあ、官僚の仕事って予算を確保することだからな。
いや、わかってるんだけどさ。
社会的地位のあるちゃんとした大人が、俺みたいな若造に媚び諂ってる光景って、見てて辛いんだよ。
俺はこういうので結構傷付くタイプの若造なんだよ。
「お喜び下さい!
関係各所に圧力を掛け!
猊下の恋人であられる鷹見夜色女史のアカウント凍結処分を撤回させました!
イーロン・マスクもねえ、色々偉そうな態度してますけど。
日本市場を手放してやっていける訳がないんですよ。
我々がガツーンと言ってやったら、大慌てで要求を呑みました。
株屋風情がね、生意気を言うからああなるんですよ。
はっはっは。」
『え? それは? 一体?』
「はい!
鷹見女史に対する不当なアカウント剥奪措置を全撤回させたのです!
無論GAFAやツイキャスも含めた全社にです!!!」
…え、馬鹿、何やってんだオマエ。
これ以上、あのキチガイを増長させてどうする?
「いえいえ!
猊下の為ならこの程度の事はお安い御用ですよ!!」
…マジか。
「そしてここからが本題!」
…まだあるのか。
「猊下もご存知の通り、例のホモレズ戦争!」
…え? ゴメン、え? 何て?
「中国共産党外交部との交渉の結果。
鷹見女史には手を出させない協定が成立しました!」
ん? え? ホモの話ではなく?
ゴメン、何一つ話が理解出来ないのだが?
「御安心下さい!
鷹見女史は我々が全力でガード致しますので!」
…国を護れや。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は小牧と話したかったのだが、宇野がぴったりと張り付いて阻止する。
いやわかるよ?
官僚社会ってそういうものだよな?
自分のいない所で部下がVIPと会話なんて絶対に許せないよな。
流石に防諜組織で昇りつめただけあって、宇野は視線監視が巧妙だ。
小牧とも時任ともアイコンタクト1つさせてくれない。
まあ、コイツらのペースに付き合う必要もないか。
『宇野局長のお心遣いには感動致しました。
貴方の様な素晴らしい方が居られるから日本の平和が守られているのでしょう。』
「いやはや。
果たすべき任務を遂行しているだけですよ。
私如きはそんな、はっはは。」
『では、連絡役には小牧氏を指名します。』
「え?」
『私へのパイプは小牧氏のみとします。』
「あ! いや!
弊局には幾つかルールが御座いまして!」
『存じております。
ただ御部署がそうであるように、弊教団にも規則があります。』
「えっと…
こ、小牧君は非常に優秀な職員であり、私も特に目を掛けて指導をしているのですが!
金額が金額だけに…
どうしても部署全体としての判断が求められる状況にありまして…」
『小牧さん!
約束の1000億です。
丁度、貴方にお渡ししようとしていた所です!
時任部長、小牧さんに約束した予算。
今ここで配分します。』
俺はトラックの鍵を小牧に向かって掲げる。
当たり前だが、役人同士が壮絶な雰囲気になる。
実は資本家サイドにとって、この流れは悪くない。
役所の秩序が乱れれば乱れる程、役人同士が憎悪すればするほど、コントロールが容易になる。
要はこちらの圏内に官庁内序列を持ち込ませる事を許すか否かの話だ。
勿論、潰し方にも色々コツがあって、今夜の俺はあれこれと駆使はしている。
対応は難しいんじゃないかな?
俺のキーン流攪乱術を知る者は地球には存在しないのだから。
『ここで小牧さんに受け取って頂けないのであれば…
公安庁さんに振り分けます。』
そう宣言しながら4㌧車の積荷を1000億に調整する。
連絡局の面々にカネの真贋も確認させる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1255億1000万1000円
↓
255億1000万1000円
※内閣国際連絡局に1000億円の予算を分配。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺が時任だけを別室に呼ぶと、宇野は諦めた様に唇を噛んだ。
「局長は良い上司ではありました。
寧ろ、紳士的で気配りの出来る方で、個人的にはやり易かったのですが。」
『…。』
「今月のゴタゴタで、少し疲れも溜まっておられるようでして。」
『現時点の宇野局長は、この先の任務に堪え得ると思いますか?』
「…。」
『どうでしょう?
御意見を伺わせて下さい。』
「人格・能力・経歴、全てが素晴らしい方です。
私の師であり、目標とする人物です。
ですので、今後は後進の指導に専心して頂けると弊局のみならず
日本国全体にとって有益なのではないかと。」
『小牧さんを連絡役にすれば、その後押しは出来ますか?』
「本日の猊下の発言をそのまま部署内で報告するだけで…
皆が全てを悟ります。
すぐにどうなる訳ではないのですが…
ほら役所って空気が全てみたいな所があるじゃないですか?
そういう空気の流れになりますね。」
『では、後の窓口は小牧さんで一本化して下さい。
約束が履行されない場合、翌年度からの予算配分に反映されてしまうと思います。』
時任は一瞬息を呑んでから、唇を噛んで俯く。
この男も馬鹿ではない。
そもそも今回の訪問が醜態である事も自覚しているのだろう。
俺の要求に従う旨の返答をした。
『ああ、それと御部署には大変お世話になっております。
局長級の天下りポスト、ちゃんと用意しておりますので。』
時任は正確にこちらの真意を読み取り、姿勢を正して俺に頭を下げた。
2人で部屋を出て、宇野に茶を勧める。
少し迷った表情をしたが、ちゃんと飲んでくれた。
当然、この意味は伝わっている。
本来、馬鹿の居ない部署ではあるのだ。
『局長。』
「はい。」
『機会があれば貴方ともちゃんと時間を取ります。
小牧さんと少しだけ2人きりで会話する許可を頂けませんか?』
「…はい、先程は誠に申し訳ありませんでした。」
『いえ。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『また少しお窶れになったのでは?』
「うん、誰かさんのお陰でね。」
『あまり御無理をなさらないで下さいよ?』
「自分がまだ死んでいないのが不思議なくらいだ。
来月辺り、過労死していると思う。」
『そんな寂しい事を言わないで下さいよ。
あっ! 私ねぇ、異世界に居た頃製薬会社を経営していたんです。』
「そういう大切な事はもっと早く言って欲しかったな。」
『どうせ調書に反映されないじゃないですか。
それでね?
弊社の自慢の商品が社名にもなったエナドリ!
ここだけの話なんですけどね?
他団体が特許を持ってるエリクサーなる万能薬を剽窃した商品なんです。
入手出来たら小牧さんに贈呈します!』
「剽窃は良くないなあ。」
『だーいじょうぶだいじょうぶ。
ちゃんと裁判で和解しましたから。』
「本当かね?
何か小細工したんじゃないのか?
昔、野崎議員や小峠学年主任を陥れた時の様に。」
『あははは、嫌だなあw
昔の話じゃないですかww
ちょっと原告と被告を兼任しただけですよおw』
「うわあ。
君、異世界でも酷いことばかりをしてたんだな。」
『いやいやいや!
あくまで! 私は世の為人の為!』
「それ、典型的な悪役の台詞だよ。
地球では程々にね。」
『ちゃんと予算配分したじゃないですか。
私が善玉になるか悪玉になるかは小牧さん次第です!』
「うわあ、邪悪な論法だなぁ。
君、きっと異世界では悪玉だったんでしょう?」
『えー? そうでもないと思うんですけど?
どうだったかなー?』
「ここだけの話にしておくから正直に言って御覧。
君、異世界ではどんな役割をしてたの?
悪いことしてたんでしょー。」
『いえ、ただの大魔王です。』
「ほーら、言わんこっちゃない。
悪役じゃない。」
『いやいや!
あくまで役職名!
異世界では大魔王って結構人気者だったんですよ?
偏見は良くないですよぉ。』
「人気ー?」
『はい!
皆におカネを配ったり!』
「それ金権政治じゃない?
やめてね? 我が国に持ち込むの。」
『え、じゃあ予算分配やめましょうか?』
「うわー、魔王だ!
早速、大魔王論法来た!!
君、悪い意味で王の器だよー!」
『いやいや、どうしろと。』
ひとしきり小牧と笑い合った後、連絡局の面々を見送る。
え? 泊めないのかって?
いやいや、夜中にアポなしで来た連中に1000億恵んでやって、これ以上何の便宜を図れと。
『宇野さん。』
「あ、はい。」
『これで一年は何とかなりそうですか?』
「勿論です!
ただ、出所の性質上地下活動に近い組織運用になるとは思いますが!
あ、勿論猊下への報告書は欠かさず!」
『ああ、それは結構です。』
「は!?」
『それじゃあ金権政治と一緒じゃないですか。』
「…。」
『宇野さん。
社交辞令じゃないんです。
今度、一緒にメシでも行きましょう。』
「…はい!」
特に何の感慨も無かったので部屋に帰って寝た。
【名前】
遠市・コリンズ・厘
【職業】
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 14
《HP》 寝不足
《MP》 万全
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 ライジング・カード!
《魔力》 悪の王器
《知性》 悪魔
《精神》 吐き気を催す邪悪
《幸運》 的盧
《経験》 106308
本日取得 26000
本日利息 13055
次のレベルまでの必要経験値57522
※レベル15到達まで合計163830ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利14%
下3桁切り上げ
【所持金】
255億1000万1000円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
荒木のカバン
天空院翔真写真集vol.4
白装束
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
『100倍デーの開催!』
× 「一般回線で異世界の話をするな。」
『世襲政権の誕生阻止。』
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
「空飛ぶ車を運転します!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
『遠市王朝の建国阻止。』
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 『日当3万円。』
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
×警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
「オマエだけは絶対に守る!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げたのんます。」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 『子ども食堂を起ち上げます。』
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
〇DJ斬馬 『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
金本聖衣 「同上。」
金本七感 「17歳メインヒロインなので旦那との復縁を手伝って。」
天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
〇小牧某 「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」
阿閉圭祐 「日本国の赤化防止を希望します。」
坊門万太郎 「天空院写真集を献納します!」
宋鳳国 「全人類救済計画に協力します!」
堀内信彦 『和牛盗難事件を解決します。』
〇内閣国際連絡局 『予算1000億円の確保します』
毛内敏文 『青森に行きます!』
神聖LB血盟団 「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」
〇大西竜志 「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」
坂東信弘 「四国内でのイベント協力」
国重辰馬 「四国内でのイベント協力」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
◎鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」
土佐の局 「生まれた子が男子であればリイチ。
女子であればリコと命名する。」