【降臨45日目】 所持金541億1045万9000円 「劣っているから貧しいのだ!」
日付が変わってから、高松瓦町のクラブに入った。
四国だからといってとりたて田舎臭さはない。
入口にもちゃんとセキュリティのお兄さんが居て、ボディチェックを受けた。
後藤の殺人兵器であるゴルフボールは…
お兄さんも一瞬だけ考え込んだがスルー。
これで店内で戦闘を仕掛けられても一方的に殺される確率は激減した。
以前、寺之庄にダンスを教わる約束をしたのだが、流石に死にかけた直後に踊る気力はない。
最初からVIP席で飲む事にした。
メンバーは、俺・寺之庄・後藤・江本・坊門・大西。
それに加えて駆け付けて来た田名部。
固く抱擁し再会を祝す。
チップを多めに渡した所為か、支配人がやたらと俺達に気を遣う。
すぐに、ウェイターベストを着た女性店員が俺の前でシャンパンを開けてくれた。
「店内に気になる女の子居たら誘って来ますよー。」
『いえいえ、皆さん素敵なので…
誰が気になるというのはないですね。』
「あはは、断り方が遊び慣れてますねー♪」
『緊張しているだけですよ。』
「緊張してる人は緊張してるって言いませんよー(笑)
… 例の動画見ました。
ガルパン(笑)」
『いやあ、お恥ずかしい。
あれで世の女性達の不興を買ってしまったようで。』
店員さんはクスクス笑って、「本当は良くないんですけど、LINE交換させて下さい。」と囁いて来る。
割と好みの子だったので、寺之庄と交換して貰った。
「ひどーい(笑)
私、こんな酷い扱い受けたの初めてです(笑)」
『ヒロノリさん、私の代わりに口説いておいて下さい。』
「店員さん、アナタ相当気に入られてますよ?」
「えー、本当ですかぁー?」
「いや、本当です。
猊下って普段は奥さんとすら
ロクに口を利かない方なので。」
「ひどーい(笑)」
店員さんはカラカラ笑って持ち場に戻ってしまった。
俺の中では最大限口説いたつもりだったのだが伝わってはいないだろう。
続いて、支配人が「猊下と飲みたがってる子が居るのですが…」と声を掛けて来たので、快諾。
地元の女子大生4人組と盛り上がる。
折角なので隣に座ってくれた子に地元情報を聞く。
「前は田んぼの真ん中にこのクラブがあったんですよ。
みんな車で通ってたらしいです。」
「香川の人はみんなケチなんです。
だからVIPもあんまり埋まらない。」
「呂布カルマ来る時くらいしか盛り上がらない。
今日はその時以来!」
そんな他愛もない話をする。
流行の音楽の話に全然着いて行けずに申し訳なかったので、『DJ斬馬は有名なのか?』と苦し紛れに知ってる名前を出す。
すると場の面子が異様に喰い付いて来た。
アルファード大西も知ってるらしく、どうやら俺の認識以上の有名人だったようだ。
それで話がトントン拍子に進み、斬馬を店に紹介する流れになった。
四国まで来てくれるかは謎だが、《100万振り込むので高松人を派手に喜ばせてやって欲しい》という趣旨のオファーメールを出してみる。
俺はクラブ文化はよく分からないのだが、各分野の人気者とコラボし続けることの旨味は理解しているつもりである。
斬馬はクラブ界では強く支持される有名人なのだ。
利息付かずとも、奇貨はおくべし。
江本がアイコンタクトで、《自由行動してもいいですか?》と確認して来たので快諾。
5分もしないうちに女子大生の1人と姿を消した。
その見事な手並みに、ただただ感嘆する。
そんな風に夜遊びを楽しんでいると、支配人に耳打ちされる。
「あの、猊下。
男性のお客様の話で恐縮なのですが
《是非猊下にご挨拶させて欲しい》
と仰られる方が居りまして…
身元はしっかりした人です。
ウチの常連さんでもありまして。」
無論、快諾。
この為に夜の店に来たのだから当然だろう。
俺が喉から手が出るほど求めているものが偶発性。
四国に数えるほどしかないクラブのVIP席なら必ず何かがあると確信していた。
寺之庄や光戦士にもヒントをtweetさせてある。
俺とコネを作りたくて仕方ない香川人なら絶対にここに駆け付けるに決まっているのだ。
読みが当たるのは非常に心地良い。
思わず笑みが溢れる。
「はじめまして。
こういう店は不慣れなので恐縮です。
…近場で飲んでおりましたら、遠市猊下が御来訪されておられると聞きまして。
御迷惑である事は重々承知ですが、一目御挨拶をと思いまして。」
出された名刺には《備讃ロジスティクス》と記載されている。
運送屋? 倉庫業? 己の世間知らずがもどかしい。
『いえいえ、恐縮です。
小比賀社長にお目に掛かれて光栄です。
こちらこそ騒がしい店に足を運ばせてしまって心苦しく思います。』
「いえいえ!
まずは私もシャンパンを降ろさせて下さい。
さあさ、猊下、猊下。」
『あー、これはこれは恐縮です!
若造の私から注ぐ場面ですのに。』
「いえいえ!
何を仰られますか!
東京・名古屋での御徳業、聞き及んでおります。
それでは、少し手元が暗いですが。」
『おっとっと。
いやあ、ありがとうございます。
社長、社長!
私からも是非、注がせて下さい!』
「ああ、これは光栄です!
おっとっと。
ありがとうございます!」
『それでは小比賀社長。
お近づきの印に。』
「突然押し掛けた私にここまで!
ありがとうございます!」
『「かんぱーい!!」』
『「はっはっは。」』
そりゃあね。
こういう遣り取りは異世界で散々やって来たからね。
多少の作法の違いはあるけど、流れは地球と大して変わらないよ。
こういうアホらしい様式美は初対面の人間同士の本題への最短ルート。
だから、俺の様な結果主義者ほど励まなくてはならないのだ。
「猊下が各地で食事振舞イベントを企画されてると伺いまして。」
遠慮がちに小比賀が見上げて来る。
なるほど、つまり日利の話は四国まで届いているということだ。
『はい、最終的には全ての都道府県で開催したいです。
是非、小比賀社長にも色々と御指導を賜れば幸いです。』
そう答えて、寺之庄と連絡先を交換させる。
…この男の負担がかなり増えているが、大丈夫か?
寺之庄煕規は有能なだけではなく、創意に富みリーダーシップも持ち合わせている。
単純作業で使い潰すような愚だけは犯したくない。
その後も数分話すが、小比賀はかなり慎重に言葉を選んでいる。
まあな、日利の話は切り出しにくいよな。
(そもそも出資法違反だ。)
なので、こちらからも彼の事業について積極的に質問してみる。
要約すると小比賀の本業は運送用コンテナのメンテナンス。
苛酷な環境で扱われているコンテナは消耗が早い。
その為、洗浄・点検・修理を専門的に行う業者が必要となる。
それが小比賀の経営する備讃ロジスティクスなのだ。
一瞬、考え込む。
罠か?
このタイミングで運送関連事業者の登場。
俺にとって都合が良過ぎる。
…怪しい。
恐らくこの男に相談すれば、現金の輸送問題は全て解決する。
その都合の良さが怪しい。
誰かが俺の動向を監視する為に送り込んで来た?
いや、誰かも何も…
俺の脳裏にはヒルダの顔が鮮明に浮かんでしまっている。
アイツは善意で俺を支配しようとして来るからな。
(いや、母性ってそういうものなのかもだけどさ。)
結論。
小比賀にはヒルダ一派の息が掛かっていると判断する。
イベント協力もお願いするし、勿論報酬も支払うがそれ以上は踏み込ませない。
その後も何人かの飲食業者が挨拶に来る。
四国の地酒を扱っている業者が居たので、その場で購入を約束、jetの居酒屋に送る段取りをする。
3時間ほど飲んでから、カプセルホテルの向かいのバーで皆でうどんを喰ってから寝た。
(本当に〆のうどんを前面に出しているカラオケバーがあったのだ。)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
恐らく睡眠は取れていると思う。
カプセルの中で目を開けたまま、身体を休める。
脳だけを回転させて状況を必死に整理する。
Q,俺は何を目指しているのか?
A,社会の公平化
Q,俺が主張する公平とは何か?
A,生まれ育ちに人生の成否が左右されないこと。
Q,それは正義か?
A,…何かを持つ者にとっては悪
Q,それで損をする者は誰か?
A,資本や身分を持つ者。
Q,それで得をする者は誰か?
A,遺伝子的に優れた者。
Q,それは単に原始への回帰ではないのか?
A,人類が蓄積した知識・技術・インフラまでは放棄しない。
Q,それは貧困である俺の単なる私怨ではないのか?
A,否定はしない。
Q,オマエの敵は誰だ?
A,…それはきっと。
「リン兄ちゃん、起きてるー?」
すっかり聞き慣れた声。
意識のピントを現実に戻す。
『ああ、今起きた所だ。
おいおい、入ってくるなよ。』
「ボクのカプセルよりこっちの方が広くない?
ズルいのだ。」
『そりゃあ、多少の誤差はあるだろう。
君は子供用に割り当てられたのではないか?』
「ぶー、すぐに子供扱いするー。」
『はっはっは、ゴメンゴメン。
他の皆は?』
「風呂に行ったのだ。
ボクもこれから。」
『ああ、じゃあ私も向かう。
汗を流してから出発しよう。』
「ねえねえ♪」
『ん?』
「クラブどうだったのだ?
可愛いお姉さんとオフパコしたんすか?」
『いや、私はそういうの全然ないなあ。
地元の商工会の人と飲んでたよ。
あ、今日彼らの飲み会に顔を出すから。』
「リン兄ちゃんって酒飲んでるだけなのだ!
この怠け者。」
『現時点では、これが私の仕事だ。』
「じゃあ、次の時点では何の仕事をするのだ?」
『笑顔で乾杯している場面を写真に撮られることだな。』
「なんかキャバ嬢みたいなのだ。」
『…そんなにいい物ではないよ。』
光戦士と共にカプセルから這い出してスパフロアに向かう。
熱い風呂に浸かり終えてからデッキで外気浴をしていると、江本が隣に座る。
「昨日はスンマセンでした。」
『いえ、見事なお手並みでしたよ。
相手の子、可愛かったですね。』
「スッキリしました。」
『エモやんさんはモテるんだから、もっと遊んでいいのに。』
「さっき響さんに怒られましたw」
『あの人も形式的に怒ってるだけですよ。
あの後、貴方の事を褒めてましたし。』
「え! 何て!?」
『えっと、何だったかな。
《アイツはええ度胸しとる。》
そんな感じ。』
「それ怒ってるパターンwww」
『でもね、表情は優しかったですよ。』
「ホンマですかー?」
『責める気も湧かないでしょう。
随分な長旅になってしまいましたから。』
「長旅、俺は楽しいですけどね。」
『それで?』
「?」
『何か情報を獲得して来てくれたんでしょ?』
「よくわかりましたね!」
異世界でドナルド・キーンが教えてくれたんだよ。
性欲と情報は同時に処理した方がタイパがいいんだってさ。
江本の調査事項は一点。
遠市厘の知名度とその知られ方。
女を殴っている場面があれだけしつこく再生されているにしては、店内の女子が比較的好意的だった。
江本昴流はそこに違和感を感じ、理由を掘り下げて知りたがっていた。
「結論から言いますね。
トイチさんはガルパン以外でも有名人です。
昨日の子はステマを疑ってました。」
『す、ステマですか?』
「ええ、その子が言うにはトイチさんの情報がある日突然同時に流れて来たそうです。
ガルパン・戒名動画・寿司ペロ事件・東横炊き出し・名古屋BBQ・ポンジ合戦・光戦士配信・レズデモ。
それらが突然、あの子のタイムラインに一度に流れてきたらしいんですよ。
仲間内では電通の社長の隠し子説が出てるらしいです。」
『いやあ、私は電通が嫌いなんですけどね。』
「俺らの世代で好きな奴おらんでしょ。
ありがたがってるのって団塊より上の人らだけちゃいますかね。
まあ、あの子は最後までトイチさんのこと電通の隠し子やと思い込んでましたからね。」
『否定はされなかったんですか?』
「…いや、そんな風説があるんやったら
アイツらに悪評全部なすりつけてもいいかなって。」
『ああ、流石ですね。
じゃあ私の死後なら許可します。
但しそれって広告代理店と同じ手口なので、程ほどに。』
「えへへ。」
あ、コイツ程ほどで止める気がないな。
更に3段階調子に乗る、とか後藤も言ってたしな。
『しかし、どうして一度に情報が流れるのでしょう?
私が鷹見を殴ってから光戦士君と逢うまで、期間空いてますよ?』
「空いてると言っても、たったの数十日ですからね。
検索条件によっては、ラグのうちには入らないのかもです。
現代人って気になるニュースを知ってから関連検索しますからね。
あの子も何かでトイチさんのニュースを知って幾つかのキーワードで検索したから、Googleが関連情報を表示し始めたんちゃいます?」
『ふーーむ。
実感ありませんけど、そんなものなんですかね。』
「マスメディアとマルチメディアの差異だと思います。
TV・新聞が編年的やとしたら、PC・スマホはやや紀伝的になってしまうんちゃいますか。」
『ますます実感が湧かない。』
「トイチさんはwikiも作られてますしね。
その子に昨日教えて貰いましたけど。」
『え!?
何て書いてありました?』
「…ホモセクシャルの宗教家。」
『マジっすか?』
「マジっすよ。」
『ホモじゃないんですけどね。』
「ホモ界隈がトイチさんを神輿に担ぎたがってるので気を付けて下さい。」
『え? 何で私!?』
「そらあ、トイチさんは有名人ですもの。
世界的には大谷翔平よりもトイチさんの方が知名度あるんですよ?」
『いやいや!
大谷選手はベーブ・ルースを越えた英雄ですよ?
そんな筈はないです!』
「…俺の口からは言いにくいんですけど
野球ってマイナースポーツですから。」
『…ま、マイナーではないでしょう。
国際大会とかもありますし。』
「でも五輪種目から外されたでしょ?」
『あ!』
「我が国は野球人気高いから勘違いしがちなんですけど、マイナー競技なんですよ。
ちなみに小学生の頃からそれを淡々と周囲に説明していたのが響さんです。
当時の俺はショックでしたけど。」
『あの人、キツいですよね。』
「シビアですよ。
見てないフリして数字関係は全部目を通してますしね。」
『…。』
「その響さんに
《トイチさんは勝確やから絶対に離れるな》
って釘刺されてますからね。
まあ、直訳すれば《裏切るな》という意味なんでしょうけど。」
『ヤバくなったら私を売って下さい。』
「ええ、俺は我が身可愛い人間ですので売ると思います。
だから俺に秘密ペラペラ喋らんとって下さいね。」
『わかりました!
異世界直伝の機密保持法を伝授しますw』
「やめてーw」
大いに笑いあう。
響いた声は高松の青い晴れ間に消えた。
「それで?」
『?』
「伝授伝授w」
『怖い嫁さんを娶れば、そいつが勝手に周囲を口封じしてくれます。』
「ひでえww」
『義母も怖ければ、更に厳重。』
「怖いーww」
『致命的な情報漏洩が殆どありませんでしたからね。』
「で?
オチは?」
『母娘が互いを標的に内戦の準備をしている情報が私にすら漏れなかった。』
「あははははww」
『おあとがよろしいようで。』
「最悪の結末じゃないっすかーーwww」
…問題はその最悪が地球に来ちゃったことなんだよね。
みんな、ゴメンね。
そして今爆笑しているエモやん。
ヒルダ・コリンズとマッチアップするのは君だからね?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日は遍路の88番・大窪寺を訪れる。
余力があれば徳島県内にある1番・霊山寺まで足を伸ばす段取りになっているのだが…
午後に定時連絡があるので、恐らくは早めに屋島に戻るだろう。
リモート会議の準備の為に殆どの者を屋島に残す。
唯一、運転手に田名部を指名して88番に向かう。
『改めてお詫びさせて下さい。
田名部さんには雑務を押し付け過ぎてしまいました。
きっと負担が大きかったと思います。』
田名部淳。
大阪在住のコンサル。
俺と出逢った日に、妻子を捨て去る決断をした男。
以後、文字通り不眠不休で俺を支えてくれている。
「いえいえ。
信じて貰えないかも知れませんが、人生で今が一番楽しいです。
どうして今まで、IT導入補助金やら子供の参観日みたいな無駄な事ばかりしていたんだろうと
深く後悔しております。」
『奥様とお子さん、どうされているのですか?』
「さあ。」
『じゃあ、私からのお願いです。
一度、電話だけでも掛けてあげて下さい。』
「どんな話をすればいいですかね?」
『家族がつまらないのではなく…
たまたま面白い仕事を引き当てただけなのだ、とでも。』
「…まるでウチの子供の内面を見知っているような話の組み立てですね。」
そりゃあ見知ってるからな。
俺と父さんを捨てたあの女がそういう殊勝な一言でも残してくれれば、まだ救いはあったのかな。
それにしても、あれだけ育児放棄を憎んだ俺がだぞ?
孤児院の庇護者を殺し、子供を2人とも捨てて、地球でも捨て子行為の元凶となっている。
酷い話だとは思わないか?
「あー、ここから山道ですねー。」
『おお、流石は山寺。』
県道3号線、結構綺麗な道である。
車窓からは白装束の巡礼者が見える。
一方、同じ衣装の俺は冷房の効いた車内でジュースを飲んでいる。
よくこれで公平性を語れるものだと己に呆れる。
『田名部さん。
この先で停めて貰っていいですか?』
「はい?」
『あ、いえ。
天文博物館という文字列が見えたので。
少し気になって。』
「ああ。ウチの子も好きでした。
プラネタリウムに連れてってやった事もありますねえ。
何が楽しいのかわかりませんでしたが。」
『…きっと、父親と冒険しているような気分になれるからですよ。』
「そうなんですかねえ。」
そうなんですよ。
経験者の俺が言うのだから間違いない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【天体望遠鏡博物館】
何故、足を止めたのか自分でもわからない。
父との郷愁に浸りたかったから?
異世界から帰還する際に天文学者達が尽力してくれたから?
ありもしない彼岸よりも存在する宇宙に惹かれたから?
マイナー施設の写真を撮れば地方回りのアリバイになると感じたから?
恐らくはその全てなのだろう。
何かイベントが開催されているらしく、親子連れが多かった。
《天体望遠鏡(鏡筒)工作教室》と書いてある。
俺達が敷地の外側で親子連れの笑顔を見つめていると、初老の男に声を掛けられた。
服装からしてこの施設の職員だろう。
「飛び入りの方でも歓迎ですよ。」
『…いえ、皆様の団欒をお邪魔しては申し訳ないので。』
話しているうちに俺がトイチだと気づいたのだろう。
職員が一瞬だけハッとした表情になる。
「今、皆さんに紅茶を入れております。
お2人も飲んで行きますか?」
『…いや。』
「茶菓子を余らせておりましてね。
困っております。」
職員の憐れみを堪えるような表情。
きっとそれが俺への正しい態度なのだろう。
別に紅茶など飲みたくもなかったが、少しだけ時間を割く事にする。
『ここは学校ですか?』
「ええ、廃校を利用した施設です。
廃棄されそうになっている天体望遠鏡を全国から引き取り保存しております。」
なるほど、綺麗に掃除されている。
ここまで丁寧に掃き清められた施設なら、きっと預かり物も大切にすることだろう。
聞けば、天体望遠鏡を展示している博物館は世界で唯一であるとのこと。
「性能は悪くないんです。
我が国の天文学が世界レベルであることも幸いして、最高水準の望遠鏡も寄贈されます。」
『なるほど、確かにここのプレートにも書いてありますね。
へえ、世界中のメーカーの望遠鏡が集まっているんですね。』
「天文は…
どうしても金食い虫と揶揄される事が多いのですけどね。」
うん、ソドム大学でも冷や飯を食わされていた。
『必要な学問ですよ。』
「そう断言して下さる方は中々おりません。
我々も中々強く主張出来ないことが多いので。」
『地球も、星の一つだから。』
「…。」
『…。』
「いつか、そのお言葉を引用させて頂いて構わないですか?」
『喜んで。』
その後も職員さんに施設の説明を受ける。
恐らくは設立者が数字のわかる人物だったのだろう。
無駄を省いた設計理念に感心させられた。
「高度成長時代に各地に建設された多くのインフラは、少子高齢化・市町村合併・予算不足などが原因で閉鎖されつつあります。
結果、貴重な施設・備品が廃棄されマイナー分野の受け皿が急速に減少しているのです。」
『…天文所が自治体ごとにあっても仕方ないとは思います。』
「ははは、私共からすれば厳しい意見ですが…
そういうシビアな視点に欠けていていた事が、現在のインフラ危機を招いてしまったのでしょう。」
『良くも悪くも官主導の弊害ですね。』
「仰る通りです。
なので我々は官主導の発想から脱却して民間で出来ることは民間で解決しようと考えております。
廃校で廃棄備品を修復・保存、そして次代に継承していく。
すなわち、天体望遠鏡のリユースというかたちを取った高度成長期の投資の後始末ですね。」
『民間で…
恐らくは限りなく個人に近い民間運営だと推測しますが…
大変ではないですか?』
「ふふふ。
天文のような直接利益にならない分野にはスポンサーも付きませんしね。
あ、でも全く成果がない訳ではないのですよ。
一応、天文学の世界では手柄も挙げているのです。
それも、つい先日!」
『手柄?』
「恐らくご存じないとは思いますが…
北極星付近から巨大なエネルギー波が放出されるのを発見したのです。」
『は、はあ。』
「ああ、やっぱり反応して貰えませんでした。
これ天文学の世界では革命的なニュースなんですけど。
ちなみにエネルギーは我々が住む太陽系に直進しておりまして。
431年後には到達してしまう見込みなのです。」
『へー、大変ですね。』
「NASAよりも先に!
この博物館が現象を発見したのです。」
『あ、そう聞くと凄い気がしてきました!』
「でも駄目ですねえ。
企業さん達も感心はしてくれるんですけど。
《ではそれが何の実利に繋がるんだ》
って真顔で聞き返されてしまいました。
ITや金融工学には皆さん喜んで投資されるらしいのですが…
難しいものですねえw」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
324億4014万0000円
↓
324億2014万0000円
※天体望遠鏡博物館に2000万円を寄付
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…この2000万という数字の根拠は?」
『あ、いえ。
最初は431万円を寄付しようかと思ったのですが…
おちょくっている様に思われるかな、と。
2023万でも良かったのですが、それもふざけてるように取られるかもって。』
「端数歓迎です。
西暦なら幾らでもふざけて下さーいw」
職員さんと歩きながら大笑する。
紅茶には口を付けなかったが、互いに力いっぱい手を振って別れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『さて、屋島に戻りましょう。』
「お遍路は宜しいのですか?
88番は結願の地ですが。」
『願いを叶えるのは人間個々の自助奮励であって、断じて神明ではありません。』
「博物館がお気に召されたようですね。
また来て欲しいと職員も言ってましたが…」
『彼とはもう逢う事もないでしょう。
田名部さん、私の代わりに様子を見に行ってやって下さい。
今度はちゃんと寄付金を封筒に包みますので。』
「え、あ、はい。」
『その時は、是非お子さんと一緒に。』
「…はい。」
話はそれで終わりだ。
結局、その足で屋島に帰り皆に詫びる。
『申し訳ありませーん!
88番行かずに帰ってきましたー!』
後藤が必死で笑いを堪えながら尋ねて来る。
「何をされてはったんですか?」
『星を見てました!』
「お写真は撮られてないんですね?」
『心のフィルムに焼き付けてきました!』
「ああ残念。
最近の画像撮影はフィルム使わないんですよ。」
『え? そうなんですか?』
「デジタル全盛の世の中ですからね。
だから、その星はトイチさんの心の中で大切になさって下さい。」
優しく笑うとそのまま持ち場に戻って行く。
この男には敵わないな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺がシャワーを浴び終わり浴室から出ると、不意に声を掛けられる。
「お着替え、ここに置いておきますね♪」
『あ、どうも。』
反射的に答えてから慌てて振り向く、女?
誰だ?
ヒルダの手先? それとも鷹見関連?
参ったなこっちは丸腰だぞ。
「私ですよー、昨日の♪」
『え? え? え?』
「VIP係で御座います♪」
『あ!』
女の子らしい私服なのでわからなかったが…
瓦町のクラブでVIP席を取った時に世話をしてくれた子だ。
好みのタイプでなければきっと忘れていただろう。
『席の延長料金払おうか?』
咄嗟にそう反応してしまう。
「遊び慣れてますねーww」
そうだよな。
普通は冗談と取るよな。
いや90分5000円って割安だと思って少し気になっていただけなんだけどな。
『えっと。
どうしてここに?』
「やだなー、そっちから口説いて来た癖にww」
『え? 私が… 口説く?』
店員さんは笑いながらスマホ画面を開く。
《今夜は屋島に滞在するので遊びに来て欲しい(恋愛代理人 寺之庄煕規)》
一瞬抗議しようとしてから、寺之庄に『代わりに口説いておいてくれ』と軽口を叩いた事を思い出す。
なるほど、言葉は慎むべきであるな。
「こんな失礼な誘われ方は初めてだよ(笑)。」
『遊び慣れていない証拠だと思ってくれると嬉しいな。』
経緯は割愛するがセックスをした。
普通に気持ち良かった。
いや、不思議そうな顔するなよ。
だって俺、ヘテロだし。
2人でシャワーを浴び直しながら考える。
最近のグランピング場はドーム状の建屋が流行している。
大きな建屋を1棟建てるよりも、小さなドームを複数配置する方がコスパが良いのだ。
1人用のドームを割り当てられたのはその関係だと思っていた。
俺のドームは全体の中央にある上に、全ての死角を車両で塞いでいる。
当然、トレイルカメラもちゃんと仕掛けている。
(鷹見流と平原流を融合させた監視カメラ術である。)
その上で俺のドームに侵入出来たという事は、仲間達の合意の上での招待だったということだ。
何故?
考えるまでも無い。
俺がパーティーメンバーに女をあてがう為に必死だったように、メンバーも俺に対して必死で気を遣い続けていたのである。
光戦士と2人きりになる機会が多かったのも、そういうことだろう。
或いは、江本の中座も俺の背中を押す為の策だったのかも知れない。
ここからは仮説。
俺にホモ説が浮上したことで、皆が腹を立てたんじゃないかな。
一応、俺はリーダー的なポジションだしな。
そりゃあ、俺だって自分のリーダーがホモ呼ばわりされたら許せないよ。
かと言って、ヒルダや鷹見は招きにくい。
俺が奴らに強い警戒心を持っているからだ。
それ以外に性欲を処理する方法だと娼婦を用意することだが…
まあ普通の感性があれば仲間に対してそんな失礼な事は出来ないだろう。
現に俺だって安宅に対してその手を使ってない。
折衷案として、この女に白羽の矢が立ったのだろう。
最初から俺に好意的だったし、何より俺が《好みのタイプ》と皆の前で言ったからである。
ナンパと娼婦の中間くらいのポジション。
勝手にそう解釈することにする。
迂闊だったな。
俺は《皆に女を用意するまでは自分は遊べない》と思い込んでいた。
それは的外れではないのだろうが、彼らも同様に《トイチに女を用意するまでは…》と考えていた可能性は高い。
いや、日頃の彼らの配慮や機転を見れば当然そうなのだ。
寧ろ、彼らの気遣いを気遣えなかった俺の罪は深い。
…この女はまだ俺に対して名を名乗っていない。
そう言い含められているのだろうか?
俺がヒルダや鷹見に拷問される可能性を加味すれば、知らない事が最大の庇護策となるか…
『なんかゴメンな。』
思わず詫びの言葉が漏れる。
俺の頭の中で、如何にあの女共の魔の手からこの子を守るか考える。
いや、寧ろ意識しない方が安全保障になるのかも…
「また高松に来る?」
『うーーん。
多分、来れないと思う。』
「都会の人から見たら田舎でしょ?」
『いや、どんどん忙しくなってるから。
関東に帰っちゃったら、多分身動き取れなくなると思う。』
「ニュースでも色々騒がれてるもんね。
悪く言ってる人が多いけど大丈夫?」
『どうだろう?
レズの人達から殺されるかも知れない。』
店員さんはケラケラ笑う。
「じゃあ、この後はすぐに帰っちゃうんだ。」
『いや、高知に寄ってから帰るよ。』
店員の顔から笑顔が消える。
「何も無い所だよ?」
『…いや、まあ。
出来るだけ色々な場所を回るべきだとは思うし。
何もない事を避ける理由にしちゃ駄目だろ。』
「…。」
店員さんはしばらく目を伏せていたが、無言で着替えると去ってしまった。
気まずい。
外でヒソヒソ話している気配があるし…
多分、寺之庄とさっきの子だな。
到底出て行ける雰囲気でもないので、ソファーに横たわり目を閉じて身体を休めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「通話の準備が出来ました。」
普段よりもやや緊張した表情の後藤響が立っている。
『ありがとうございます。
すぐに伺います。』
「…。」
気まずそうな、申し訳なさそうな態度。
まあ、俺が彼でもそうなるだろう。
『皆さんに伝えて下さい。』
「…はい!」
『私の配慮が行き届かず不自由を掛けてしまっております。
その点は常々心苦しく感じております。
今後は、皆様に相談の上の改善を心掛けます。』
しばし沈黙。
きっと後藤にも葛藤はあったのだろう。
「…はい、責任を以て共有します。」
さて、お仕事だ。
切り替えて行こう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【飯田清磨】
「すまない。
バタバタしていたよ。」
『いえ、こちらこそ。
まさか清磨さんを張り付けてしまう羽目になるとは思っておりませんでしたので。
名古屋を撤収して合流されませんか?』
「うん、朝の事件が起こるまでは、そのつもりだったのだけどね。
ニュースは見れてる?」
『ええ、名古屋港が…
サイバー攻撃で機能停止…?
すみません、地上波もチェックしているのですが…
状況が把握出来ません。』
「要は現代では港湾施設も電子化されているということだよ。」
『あ! だからランサムウェア!』
「問題は攻撃元。
犯行声明にもあったロックビットを名乗るハッカー集団。
世界のランサムウェア被害の3割程は彼らの仕業とされている。」
『物騒な連中ですねえ。』
「…拠点はロシアだ。」
『え? それって。』
「ああ、先日の《日本で最も価値ある企業を狙う》の攻撃宣言を行ったブラックスーツ。
ロックビットの構成員も大量に流入している。
彼らは別系統だと公言しているけど…
それでトヨタ系列の株価があれから更に暴落している。」
『名古屋港が狙われたから、そこからの連想で?』
「最近の株式取引って全部AIなんだよ。
ネガティブニュースが出た瞬間に投げ売っちゃうから。」
『あ、そうか。
《名古屋港》《ランサムウェア》《機能停止》というキーワードがニュースとして頻出した瞬間に。』
「うん、外資が大量のトヨタ売りを行った。
それを年金機構が淡々と落ち穂拾い。」
『ロシアのハッカー集団の狙いはトヨタだと?』
「市場がそう判断したんだろうね。
実際は防衛相とか警察庁の機能を停止させたいんだろうけどさ。
ロシアとしては日本経由でCIAとか米海軍を機能停止させたいみたいだよ。
イージス艦をフリーズさせたり。」
『そんなこと、出来るんですか?』
「難しいとは思うけど。
現に名古屋港が止まっちゃった訳だからね。
これオフレコだけど、米軍っぽい人も現場に駆け付けたらしい。
ややパニック気味なんだって。」
『はえー。
サイバー戦争とはよく言ったものですねえ。』
「いや、本当にサイバー攻撃は怖いよ。
さっきも言ったけど、今って全てが電子化されてるでしょ?
システムを潰されたら、何も出来なくなっちゃうから。」
『これ、ロシアの攻撃ですよね?』
「実質的にはね。
多分、そういう指示も出てるんじゃないかな。
ただ公式には、あくまで露政府と無関係という事になっている。」
『うーーーん。
だからこちらからは手を出せない?』
「欧米も頭を抱えてるくらいだからね。
各国が連携しても対処出来ない…
いや違うな、各国が連携した対処こそが今回のウクライナ戦争の真相なんだろう。」
『…。』
「俺、もう少し名古屋に残ろうか?」
『え? 危ないですよ。』
「いや、直接的な攻撃はないと思う。
あくまで日本経済を麻痺させたいだけだろうから。」
『…。』
「朝の事件があってから、毛受さんや俺の元に名古屋の社長連中からの問い合わせが急増した。
メール交換だけをしていた相手から、今になって急にね。
地域性かな。
大阪の社長さん達とは対照的にすぐにはカネを出すつもりはなさそうだけど、擦り寄っては来ているよ。
君に挨拶したがっているし。
《神聖教団に入信しなくちゃ駄目なのか?》
的なニュアンスが多いね。」
『まあ、自然な反応でしょうね。
私だってカネは欲しいけど、宗教は嫌ですもの。』
「リン君はどうしたい?」
『…正直に申し上げますと、手持ち資金が膨れてしまって。
もう預かる必然性があまりないんですよね。
有っても無くても、すぐに閾値を超えるでしょうし。』
「じゃあ、締め切る?
しつこそうな社長さんが何人かおられるんだけど。」
『…じゃあ、どうしても継続したい方は大阪まで来て貰いましょう。
ほら、帝塚山の拠点。
多分、中京圏の方は嫌がるでしょうけど。』
「経済圏違うと仕切ってるメンバーも全然変わって来るからね。
まあいいや、その方向で調整しておくよ。
手元へ来る金額は多少減ると思うけど大丈夫だね?」
『手元に居るのは清磨さんだけでいいです。』
「お、嬉しい言い回しだ。
さては女遊びを覚えたなw」
この男には敵わないな。
それとも例によって、表情に現れていたのかな?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【安宅一冬】
「関東はちょっと他人事ですね。
《名古屋の人は大変ですねー》
みたいな雰囲気です。」
『まあ、そんなものでしょう。
関東も主要港湾多いので、危機感を持っていてくれると嬉しいのですが。』
「今、木更津ですけど。
現場はそういう雰囲気無いですね。
いつも通りです。」
『倉庫、丸投げしてしまって申し訳ありません。』
「いえいえ!
引き渡しも完了しましたし。
いつでも稼働出来ますよ。」
『…実験も兼ねて一度戻ります。
関東で課題が溜まっておりますので。』
「はい!
お目に掛かれる事を楽しみにしております!
何か他に準備しておく事柄はありますか?」
『…ああ、ではフェラーリを購入しておいて頂けませんか?
色は赤で。』
「ふぇ、フェラーリですか!?
え? また急にどうして。」
『…どんどんお目に掛かる社長さんのランクが高くなってるんです。
経営している事業の規模や従業員数。
私の想定を完全に越えました。』
「ああ、なるほど!」
『遊びの高級車なら密談も無難かな、と。
都内でキャンピングカーは目立つでしょ?』
「ははは、確かに悪目立ちですねw」
『なるべく高いランクを買っておいて下さい。
海外勢と話すときに舐められたくないですから。
タテマエはあくまでも安宅さんのマイカー扱いで。』
「え? 私ですか?」
『どのみち私は免許を持っていないので。
ある程度乗り回して、運転に慣れておいて下さい。
カッコいいインスタ期待してますよ。』
ちょっと話の持って行き方が露骨かなぁ。
いや、VIP係が翌朝再訪するより自然だとは思うが。
まあいい。
大西曰く、赤いフェラーリに乗ればどんなボンクラでもモテるらしいからな。
悪いようにはならんだろう。
…俺も周囲の気遣いでセックスしちゃったし。
貴方も俺の気遣いでセックスしちゃって下さい。
そもそも安宅の功績は滅茶苦茶大きいんだよな。
今回だけに限ってもそうである。
あんな好立地の倉庫をきっちり確保した上で、何も言わなくても清掃まで終わってるんだからな。
報いなくてはバランスが取れない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
324億2014万0000円
↓
323億2014万0000円
※寺之庄煕規に安宅一冬への支給金1億円を委託
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【平原猛人】
「オマエも忙しいだろうから手短に話すぞ。」
『猛人さんなら何時間でも歓迎ですよ。』
「駄目だ。
リソースは他の奴に割け。」
『…はい。』
「現在、東京湾を回遊中のザトウクジラ2頭。
地元漁師の見立てでは、数日内に館山付近で座礁する確率が非常に高い。
確定ではないが、そのつもりでいろ。」
『ありがとうございます。』
「それと、こちらが本題だ。
女房から連絡があった。」
『ああ、奥様から!』
『弁護士を通さない連絡は久しぶりだから驚いた。』
『それで… 何と?』
「MarkⅡを妊娠したようだ。」
『おお!
おめでとうございます!
我が事のように嬉しいです!』
「ああ、俺も肩の荷が降りた。
あの女とも色々あったが、健康な男子さえ生んでくれれば何でもいい。」
『是非、正式にお祝いをさせて下さい。』
「…そうだな。
オマエが都内に戻ってきたら、一杯行くか。」
『隼人に捧げましょう。』
「ああ、そうしよう!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【DJ斬馬】
「行きます!」
『まだ詳細も話してないじゃないですか。』
「絶対に受けるって決めてましたから。
それに俺、実家が神戸なんで高松は全然苦じゃないです。
寧ろ、顔を繋がせて欲しいです!」
『じゃあ、お店の人とお繋ぎして大丈夫ですか?』
「はい、是非!」
『あの…
斬馬さん。
前から質問してみたかったのですが。』
「あ、はい。
何でしょうか?」
『斬馬さん、かなりモテるみたいなんですけど。
コツとかあるんですか?』
「俺は全然モテないですよ?
中学の頃、イジメられてましたし。」
『え!?
いや、全然そんな風に見えないです。
SNSにも女性ファンいっぱいおられますし。』
「ははは。
お恥ずかしい話なんですけど。
モテたくてモテたくて仕方なかったから、ある日Googleに聞いたんです。」
『おお、噂のGoogleに!』
「そしたら、DJかバーデンダーになれば女を食い放題って書いてあったんで
慌ててDJブースのあるバーに就職しました。
初任給12万2千円!」
『おお、その行動力!』
「そしたらね?
今でも覚えてます。
入店5日目でロストチェリーですよ。
ボブカットのエロい遊び人お姉さん。」
『うおおお!!
Googleすげえ!!』
「いや、Googleは神ですよ!?
俺、DJのこととか全然知らなかったんですけど。
《簡単にDJになる方法》で検索したら…
《オーガナイザーに取り入れ》って書いてあったから
《オーガナイザーに取り入る方法》って検索して…
そうこうやってるうちに人気DJになれました。」
『え? そんなもんなんですか?
いや、もっとファッションとか哲学とか…』
「だって俺は非モテ陰キャですよ?
そんな俺の価値観で判断したら悪い方向に向かうに決まってますよ。
なので脳死です! 脳死Googleです!」
『な、なるほど。』
「苦手な分野は得意な人に全丸投げ。
コレが人生のコツだと思います。」
『…あ、じゃあ折角ですので。
イベントを全国で打ちたいんですけど。
斬馬さんならどうします?』
「いや、猊下の場合は実績あるから簡単ですよ。
えっと資金面には余裕があるんですよね?」
『あ、はい。
収支は全然気にしていないので。』
「まずは雛形となる理想のイベントを開きます。」
『はい。』
「開催前から《全国で同様のイベントを開くので協力者募集》と告知を掛けておきます。」
『はい。』
「当然、フライヤー・SNSは予め準備。」
『…ふむ。』
「今、《そんなに簡単に行ったら悩まねえよ。》
と思いましたね?」
『あー、いえいえ!』
「なので、開催時期をずらします。
自分の理想通り行ったイベントのみを実績としてSNSに載せます。」
『あ!!』
「流石に猊下は理解が早いですね。
DJの世界でもそういうことする奴いますよ。
俺がまさしくそういう屑なんですけど。
盛り上がったイベントだけSNSに上げて…
ミスったイベントは打ち上げ風景とかだけを上げる。
だってGoogle様がそう仰ってましたし。」
『イメージ見えて来ました!』
「猊下の場合は資金に余裕があるみたいだから、気の利く奴にカネだけ渡して丸投げ。
それを10カ所でやらせたら、どこかは盛況になるんですよ。」
『ええ、どれかは当たると思います。』
「で、大盛況の写真だけを実績としてアップ。
(主な)と注釈を付けると、予防線になります。
でね?
人間って不思議な生き物なのですよ。
人だかりの写真を見せられると参加してしまうんですね。」
『いやー、そこはどうですかね。
私、人混みが嫌いなので。』
「いや、猊下の様に人ごみの嫌いな人は
そもそもイベントに行かないんですよ。
逆に人ごみを見てテンション上がる奴はイベント参加率高い。
なので広報は、テンション上がる人間をターゲットにします。
確率論ですよ。」
『ああ、確かに。
仰る通りです。』
「それに加えて猊下は貧困家庭の支援がしたいと仰ってましたよね?」
『そうなんですよ。
どうやったら、食うに困ってる人が来てくれるかなって。』
「タッパー持参可。
掴み取り大会。」
『あ!』
「…恐らく猊下は最初から気づいていた筈なんです。
でも、貧乏人を侮辱しているような気がして踏み込めなかった。
違います?」
『…どうしてわかるんですか?』
「ウチ、片親で…
全然カネが無かったから。
何となく、猊下の言いたい事わかるんです。
ちなみに俺、大して食えない癖にランチバイキングが大好きです。
得をしたい訳じゃなくて、不当に損をさせられるのが怖いんです。」
『あの、全面的に賛成です。
いや、こういうのってわかって貰える自信なくて
今まで誰にも言った事がありませんでした。』
「今の猊下なら、本当に必要な物がわかりますよね?」
『安価で数が用意出来るもの。
それこそティッシュとか鉛筆とかそういう方向性の…』
「続けて下さい。」
『参加者全員プレゼント。
食べ放題、つかみ取り企画、ビンゴコーナー。
日持ちのするお菓子を出す予定だったんですけど。
単にクッキーとかじゃなくて、そうフォーチュンクッキー的な!』
「その心は!」
『得をしたような気になります。
自分が情報通になったような、賢く生きているような…』
「…。」
『でも、それは本当は得なんかしないから
金持ちはそんなイベントは来ないんです。
貧乏人は… 馬鹿だから来ます。
馬鹿だから喜んで騙されます…
いや、違うな。
私、本当のことを知ってます。
馬鹿だから貧乏なんです。
無能だから貧乏なんです。
…。
劣っているから貧しいのだ!
そんな簡単な答えも認められないから!
だから、いつまで経っても何の進歩も出来ないんです!』
「…きっと、猊下は本懐を遂げられる事でしょう。」
『…ねえ斬馬さん。
騙す事が救済なんでしょうか。』
「その答え、俺達なら知ってますよね?」
『…無能は進んで騙されます。
馬鹿は喜んで騙されます。
だからいつまで経っても貧しいんです。
こんな救いようのない屑共を救済するには…
騙して救われたような気にさせてやるしかないんです。』
「すみません。
話が変な方向に向かいました。
きっと猊下を傷付けてしまったと思います。
でも、俺は知ってます。
猊下はそういう摂理を悪用しない方だと。」
『…はい、そうありたいです。』
「あの!
俺もクラブのイベントだけじゃなくて手伝わせて下さい!」
『え?』
「カネが欲しいとかそういうのだけじゃなくて!
俺も手伝わせて下さい!
あ、BBQ得意ですよ!
Googleが《得意ならモテる》
って教えてくれたんで必死に覚えたんです!」
『是非、お願いさせて下さい。
上手く言えませんが、斬馬さんが側に居てくれれば
願いを形に出来そうな気がします。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
323億2014万0000円
↓
323億1014万0000円
※寺之庄煕規にDJ斬馬への支度金1000万円を委託
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【金本宇宙】
『申し訳ありません!
アポもなしに。』
「いや、君なら構わん。
寧ろ、息子の面倒を見てくれとる事に感謝しかない。」
『まず最初にお詫びをさせて下さい。
私の配慮不足で、息子さんに不名誉な噂が立ってしまいました。
世上言われている様な同性愛行為は誓って行っておりません。』
「うん、そんなもんは最初からわかっとる。
君は仮にホモであっても子供に手は出さへんわ。
そういう人間やからズンを預けた。
わかる奴は全員わかってる。
わからん奴はどうせ邪推しかせーへんから気にするな。
…アイツ、ええ顔で笑うようになった。
ピカがおらんようになってから、真っ直ぐに笑えてなかったからな。」
『…そうですか。
少しでもお役に立てているのなら幸いです。』
「テキストを読んだ。
要は射幸心を煽るようなクッキーを量産してイベントに持ち込みたいねんな?」
『好ましくない事は百も承知です。』
「…恥ずる必要はあらへん。
世の中、そこまで思慮が至らん奴ばっかりや。」
『この方針転換は、最も避けたい道でした。』
「せやろな。
君にとっては、180度の価値転換や。
宗教もそっち方向に舵を切るんか?」
『…なるべく、避けたいのですが。』
「アホをアホとして扱ってやるのも優しさやで?」
『…。』
「すまんな。
でも、キミ以外の誰かが言語化してやる必要があった。」
『いえ。』
「早速、貧民用クッキーの試作品を作り始める。
俺とアニキはデバイスもアプリも揃えてるから同型商品を出力出来る。
従って、東西同時供給も可能や。
当然、七感も同じ作業が出来る。」
『洋菓子のカネモトは凄いですね。
別格ですよ。』
「ピカの奴の忘れ形見や。
どうかアイツを褒めたってくれ。」
『…私、もっと彼と話しておけば良かったです。
結構フランクに接してくれていたのに、どうしてもっと真剣に向かい合えなかったのか。』
「…その分、ズンを気にかけてくれとるやろ。
ワシらは感謝しとる。」
『…。』
「試作品、完成次第報告する。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
金本宇宙に奥様を紹介されたので、光戦士を呼び出し通話させる。
この年頃の少年が母親との会話を聞かれたいとも思わない筈なので、席を外す。
背後から年齢相応の笑い声が聞こえたので胸を撫で下ろした。
…オマエ、普通に喋れるじゃねえか。
心配させやがって。
さて、偽札野郎は家族団欒に迷惑の掛からない場所で作業をしますか。
江本が帰省も兼ねて現金を大阪に届けてくれているからな。
焼け石に水とは言え、少し気が軽くなる。
坊門が用意した4トン車の荷台に乗り込む。
中を見渡してから小比賀に運輸関連の相談をしなかった選択がやはり正しかった気がしてくる。
疑い出したらキリがないのだが、鈍い俺が直感で感じた危険は積極的に避けて行こう。
《250億0031万9000円の配当が支払われました。》
『ッ!!』
「トイチさん! バックステップ!」
後藤の叫びに突き動かされるように真後ろに飛ぶ。
さっきまで俺が居た場所で札渦が爆ぜている。
『ふう、ふう。』
「やっぱり密閉空間での恩寵は危険ですよ。
多少手間が掛かっても、シートか何かの上に出しましょう!」
『いえ…
もう少し天井が高ければ…
それと予め射出量に見当が付いていれば、まだコントロール可能です。』
「確かに、また一段と増えましたね。」
『ええ、これ絶対に原因は大阪支部ですよ。』
やはり聖徳太子に匙加減は無理だったか。
あの老人は生まれつきの金持ちだからな。
友人関係も関西の有力事業者が殆どらしいし、自然にアホみたいな額に膨れるんだろう。
いや、聖徳太子に罪はない。
俺の捌き方が悪いのだ。
もっと真剣にロジスティクスしなくては。
1人10億配るんだろ?
この程度でパニくってどうするよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
323億1014万0000円
↓
2173億1045万9000円
↓
573億1045万9000円
↓
541億1045万9000円
※合計1600億円を預託との報告
※配当250億0031万9000円を取得
※元本1600億の確認。
※配当用の32億0000万円を別途保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、昨夜のクラブで誘われた高松市の商工業者の集まり。
歓迎が絶対に総意ではない事は重々承知なのだが、行って来るか。
明日は土佐入りの予定を既に組んでいるから、早めに切り上げよう。
いや、知ってるんだけどな。
飲み会って帰りたいときは帰して貰えないし、仲間に入りたいときは帰されるもんだって。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【皆様に感謝】 夜猫コメ返しスペシャル♪ 【嘘じゃボケーw】 [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
「いやっはァッーーー♪
夜猫@の夜更かし担当!
相模の獅子ッ!!
ルナルナ@貫通済でーーす!!!」
「いやっふゥッーーー❤
夜猫@のニャンニャン担当!
仰げば尊と恩師ッ!
奈々ちゃんでーーす!!!」
「はい!
と言う訳でやって参りました!」
「みんなお待ちかねコメ返し日だニャー♡」
「いつもコメ返し出来なくてゴメンねー。」
「それはもう誠にごめんなさいニャ❤」
「早速読み上げて行きまーす❤」
「イエイ!」
「《夜猫命》さん!
好きだー、結婚してくれー!」
「せめてどっちが推しか書けニャ!」
「《チョリソーマン》さん!
どっちがタチでどっちがネコですか?
気になって夜も眠れません!」
「全ての答えは貢ぎマゾプランにあるニャ。
その先は君の目で確かめてくれニャ!」
「《うんこモグモグ》さん!
FXで1億溶かしたんですけど、どうしましょう?」
「トイチが1人10億配るって言ってたからおとなしく待てニャ。」
「《孕みステーキ》さん!
奈々先生ボクに夜の個人授業して下さい。
当方62歳。」
「オマエ定年過ぎとるやんけニャ!」
「《終わらない執行猶予》さん!
お2人の好きな車の車種は?
ウ↑チ↓はセルシオかプレジデント!」
「アメ車全般ニャ❤」
「《強姦魔》さん!
ルナルナとセックスしたいです!
ウ↑チ↓は決殺迎撃するので頑張って下さい。」
「この番組、リスナーもパーソナリティもロクな奴いないニャ❤」
「《どんな気分ねえねえどんな気分》さん!
ホモに寝取られた気分はどう?
拳で奪い返すッ!!」
「煽りにマジレスすんニャ。」
「《WUGよ永遠なれ》さん!
2人のレズビデオが見たいです!」
「貢ぎマゾプランに入れ!
そしてレーベル・紅蜘蛛倶楽部さんと企画を擦り合わせ中ニャ!」
「《うんこー!》さん!
2人はいつウンコしてますか?
したい時にしとる!」
「奈々ちゃんはお姉様とHする時にその気配が残らないタイミングだニャ❤」
「生々しいんだよw
でも、お気遣い感謝です。
はい、ここからは読み手チェンジ!」
「ニャンニャニャーン❤
ここからは奈々ちゃんが読むニャ―❤
《嵐山十郎太》さんニャ!
今、どこで配信してるの?」
「神戸の山!」
「《増税メガネ》さんニャ!
将来の夢はありますか?
大麻合法化ーーーーーーーー!!!!!」
「お嫁さん❤」
「《シクラメン》さんニャ!
スタッフになる方法を教えて下さい!」
「キサマにはまだまだ奴隷根性が足りん!」
「真に受けたらどーするニャ。
《すけべとうだら》さんニャ!
ホモとレズの対立が始まった責任を取って下さい!」
「ウ↑チ↓に責任はない!
ただ、奈々には責任を取る!
そしてダーリン様、責任取れ馬鹿ーーーー!!!」
「《永遠オナニスト》さんニャ!
ウクライナ戦争はどっちが勝つと思いますか。」
「遠市厘!」
「《おちんぽパラディン》さんニャ!
お2人の初体験はいつですか?
12歳ニャ♪」
「未就学時点!」
「《クレイジー大亜門は打ち切られない》さんニャ!
早くオリジナル曲聞きたいです!」
「ほげーーーーーー!!!!!」
「雑w その回答雑w
《パラノイア》さんニャ!
バレンタインチョコ下さい!」
「豆まき形式でそういうイベントしようかって話は出てる。
企画段階だからポシャったらゴメンな。」
「《ウンコマン》さんニャ!
好きな漫画を教えて下さい!
NANAニャ❤」
「悪いが私は百合じゃない。」
「《御座早漏》さんニャ!
大型のプレゼントを贈りたいので宛先を教えて下さい。」
「当方根無し草につき却下。」
「《戦艦デブリン》さんニャ!
最近いつHしましたか?」
「さっきまで奈々とヤッてた。」
「《ラストペラペラー》さんニャ!
遠市の事を本当はどう思ってるの?
アイツきらーい。」
「そのうち殺すと思います。」
「《うーつーばー》さんニャ!
2人の好きな食べ物を教えて下さい!
チ●ポ。」
「チ●ポ。」
「あ、ゴメン!
下ネタ以外でって書いてあったニャ!
じゃあ大麻!」
「回ってる寿司だな。」
「ス●ローを刺激するからやめろニャーww
はい、じゃあコメ返しコーナー終わりニャ―。
くう疲。」
「いやー、予想外にみんな下らないコメントするよな。
これでもマシなのをチョイスしたつもりなんだけどな。」
「恐るべきことにタチネコ論争が全体の2割ニャ。」
「貢ぎマゾプランに入ってても理解出来てない奴がいるからな。」
「非モテの童貞共にはわからニャいと思うが…
普通、カップルでヤル時は何度か攻守交替するニャ?」
「確かに。
経験の有無で理解度変わるよな。
あ、発狂コメが湧きだした。」
「落ち着けニャ―♪」
「ウ↑チ↓はねえ。
奈々に対しては受け受けしい方だと思う。
やっぱり年齢差とかあるからね。」
「奈々ちゃんはねえ。
お姉様に対してはネコネコしい方だニャ。
やっぱり身長差とかあるからニャ。」
「ふっふっふー。」
「にゃっはっはー。」
「「続きは貢ぎマゾプランで!」」
「…ねえ奈々。」
「んー?」
「この芸風も頭打ち早いと思うのね。
やっぱり月額1万払う人間って上限あると思うんだよ。」
「りょ。ニャ♪
なんか新しいシノギ考えとくニャ❤」
「ま、優しくしてやるって基本方針だから。」
「ルナお姉様は弱者男性に甘すぎるニャ。」
「そうかなー?
自分では普通に接してるつもりなんだけど。」
「Twitter見てても、沼ってる奴多すぎ問題。
特にリアイベでボディタッチされた奴は全員脳を焼かれてるニャ。」
「脳なんてガンガン焼けばいいんスよ。
ほっときゃ、そのうち生えてくるでしょ。」
「NTR女スーパーフェニックス理論やめーニャw」
「で?
どうする?」
「何よー。」
「コメ欄。
コメ返しコーナーってなあ、読まれた奴しか楽しめないって弱点があるんだよ。」
「オマエら、もっと面白いコメントを書けニャ!」
「いや、気の利いたコメント書ける奴はこんな配信見ないだろ。」
「マジレスやめーニャ。」
「そうは言われても。
ウ↑チ↓のこの芸風を慕ってみんな見てくれてる訳だからなぁ。」
「世も末ニャ。
あ! 世も末と言えば、あのメールどうするニャ?」
「え?
ああ、神聖レズビアン血盟団な。
三橋ーっ、画面に出せるかー?」
「えっと、原文と訳文両方載せますか?」
「スマン!
それで頼む!」
「例のビアン団体から公開質問状が来てるニャ。」
「せめてこっちの母国語を添付して欲しいよな。」
「概要だけ読み上げるニャ―。
《どうして貴女達は同志であるにも関わらず
卑劣なる男性社会の走狗となるのですか?
共に戦いましょう!》
的なメールが届いたニャ。」
「誰かガイジンに教えてやれよー。
英語オンリーの文章って、それだけでスパム扱いされるってさあ。」
「どうするニャ―?」
「どうするもこうするも。
ホモデモとレズデモの抗争は日本に関係ないしな。
ってか、我が国にだってレズもホモも両方居るけど
別に喧嘩してないんだろ?」
「至って平和ニャ。」
「それって、ホモがどうレズがどうって問題じゃなくて、単にその国の民度が低いだけじゃね?」
「寿司ペロ女に民度を指摘される国辱よ。」
「アメリカだった? 流れ弾でホモの人が死んだ国。」
「うん、カルフォルニャ。
今、凄く揉めてる。」
「いや、そこがわからんのだけど。
何でダーリン様の所為にされてるの?」
「トイチのレズ処刑宣言が独り歩きしているのが発端だからニャ。
これにキリスト教原理主義団体やらライフル協会やらが意見表明を被せてきて収拾つかなくなったニャ。
大領領予備選にも波及してるらしいニャ。」
「余計にわからんなー。
それってアイツらが自主解決するべき問題だろ?」
「多分、解決は難しいと思うニャ。
宗教が絡んでるし…
特にトイチが宗教家を自称している事で話が複雑化してるニャ。
アジア人差別問題とか、日系人収容賠償訴訟とかに波及してるニャ。」
「ふーーん。
どこも大変だね。
日本は平和でしょ?」
「どこぞの寿司ペロ女の所為で回転寿司文化が消滅するくらいで済んでるニャ。」
「おっし、美しい国ニッポン!」
「どの面下げてww」
「あ、またレズ団体からメール来た。
ん? ひょっとしてアイツら…
この配信見てるのか?」
「まあ、その可能性はあるニャ。」
「ガイジンが見て理解出来るモンなのか?」
「さあ、最近は翻訳アプリも充実してるけど…
日本語は一番難しいらしいニャ。
ちなみに語尾に《ニャ》が付くだけで翻訳難易度が5倍くらいになっちゃうらしいニャ。」
「マジかー。
あんまりガイジンイジメちゃ駄目だぞにゃ。」
「ニャニャニャーン❤ ラジャーだニャン♪」
「おい、よっぴー。
翻訳出来そうかー?」
「随時画面に出していいなら!」
「おっけー!
放送禁止用語だけ伏せろなー。」
「ふーーん。
さっきとあんまり変わらないニャ。」
「いや、何だコレ。
中国語?
よっぴー、文字化けかー?」
「いえ! 原文に中国語が添付されてるんです…」
「ん? これマドリード、ユーロからのメールであってるんだよな?」
「あー、この配信BANされるかもニャ。」
「ん? ん?」
「これ多分、中国系工作機関からの指示文章を消し忘れて送って来てるニャ。」
「ああ、そういう。
え? これ、ウ↑チ↓らがBANされるの?」
「後は各国の政治力次第ニャ。」
「ふーーん。
で? このメールは?」
「工作機関が《せめて資金援助分くらいは仕事しろ》って催促してる指示文章ニャ。」
「ほーーん。
ネットって怖いわあ。」
「いや、機関の人達もお姉様だけには言われたくニャいと思うよ?
あ! 変な同接の増え方してるニャ!」
「以前のサーバーダウンと同じ増え方です!」
「あー、これまた落ちるぞー。
さっき三橋が言ってたサイバー戦争ってこれ?
名古屋の?」
「ちょ! ヤバいです!
これふわっちのサーバーが攻撃されてますよ!?」
「はい、みニャさーん♪
このアカウントがBANされ…
「ローカルのっ!」
【名前】
遠市・コリンズ・厘
【職業】
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 13
《HP》 慢性的満身創痍
《MP》 万全
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 悪魔
《精神》 吐き気を催す邪悪
《幸運》 的盧
《経験》 59516
本日取得 0
本日利息 6847
次のレベルまでの必要経験値22394
※レベル14到達まで合計81910ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利13%
下3桁切り上げ
【所持金】
541億1045万9000円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
荒木のカバン
天空院翔真写真集vol.4
白装束
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
『100倍デーの開催!』
× 「一般回線で異世界の話をするな。」
『世襲政権の誕生阻止。』
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
「空飛ぶ車を運転します!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
『遠市王朝の建国阻止。』
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 『日当3万円。』
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
×警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
「オマエだけは絶対に守る!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げたのんます。」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 『子ども食堂を起ち上げます。』
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
〇DJ斬馬 『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
金本聖衣 「同上。」
天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
〇小牧某 「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」
阿閉圭祐 「日本国の赤化防止を希望します。」
坊門万太郎 「天空院写真集を献納します!」
宋鳳国 「全人類救済計画に協力します!」
堀内信彦 『和牛盗難事件を解決します。』
内閣国際連絡局 『予算1000億円の確保します』
毛内敏文 『青森に行きます!』
神聖LB血盟団 「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」
〇大西竜志 「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
〇鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」