【降臨44日目】 所持金324億4014万0000円 「俺に俺を赦す予定はない。」
宇多津。
瀬戸大橋の四国側に位置する街。
日本で最も面積が狭い県である香川県の中で、更に最も面積が狭い自治体である。
四国は不景気だと聞いていたが、随分賑わっている様に見える。
ここで江本昴流が待っていた。
「どうもー。
夜中やから声は潜めますけど。」
『どもですー。
エモやんさんに逢いたくて海を渡りました。』
メンバー全員で順に江本とグータッチして再会を喜ぶ。
その際、光戦士をまだ寝かしつけてない事に気付く。
「やーなのー。
こんな移動移動で眠れる方がおかしいのだ!」
『うむ、確かに。』
「昴流兄ちゃん。
何でこんな真夜中に海の果てまで呼び出したの?」
「いや、人目のない時間に口裏合わせておきたいやん?」
「発想が悪の秘密結社のそれなのだ!
この偽札軍団! カルト宗教!」
『はっはっは、それほどでもないさ。』
「あっはっは、照れるやん♪」
「褒めてねーのだ!」
江本が笑いながら虚空を指す。
妙にテンションが高いな、と思って不審に思っていると、後藤が「コイツは更に3段階くらい調子に乗りますよ」と説明してくれる。
どうやら、これでもまだセーブしている方らしい。
「アレを皆さんに見せたくて!」
彼の指す方向には、光の塔…?
ビル?
「じゃーん!
あれが! 聖地・ゴールドタワーですよ!
地球上でもっとも荘厳な建築物です!」
『え? アレを見せたかったの?』
「はい!
夜景がインスタ映えするんですよ!
昼間は内部の天空金魚鉢がワンダホーなんです。」
『え、ああ。
確かに綺麗ですよね。
瀬戸大橋とのコントラストとでも申しましょうか。』
「トイチさん! トイチさん!
記念に! 記念に!
パシャっと! パシャっと!」
『え、私を撮るんですか?』
「いやいやいや、主役はトイチさんですやん。
俺の写真なんかアップしても、地元の人は喜ばんでしょう。
それと、光戦士君。
君も撮っとくか?」
「うーん。
夜中に遊んでるとアンチが騒ぐのだ。
まあ、いいや。
あの塔、バズリそうだし。
自撮りますか♪
リン兄ちゃん、身体支えててー♥」
『うむ、身を乗り出しすぎて転ばないようにな。』
「もっとちゃんと支えてて♥」
『わかったわかった。
これでいいかい?』
「あははは、くすぐったいのだ♥」
『どうしろと言うんだw』
「ショート動画撮りまーす♪
みなさーん、ボクの名前は光戦士♪
リン兄ちゃんと瀬戸大橋を渡ったところなのだー♥
後ろのピカピカした塔はゴールドタワーって名前みたいっすね。
兄ちゃんが好きそうな名前ww」
『えーww
私、そんなにカネカネ言ってるかなーww』
「言ってるのだ♪」
『いやー、参ったなー。
猛省猛省w』
「わっはっはー。」
『はっはっはー。』
俺達が笑い合っていると地元のDQNのお兄さん達がやって来る。
絡まれるのかと思って一瞬身構えるも、どうやら鷹見のファンらしい。
(後藤に至っては笑顔のままで殺害用ゴルフボールを装填していた。)
「あ、あの。
ガルパン君やよね!?」
『ああ、どもどもお騒がせしております。
遠市厘で御座います。』
「うおーー!!
本物やーーん。
こんな所でなんしょんですか!?」
『ああ、どもども。
岡山に滞在していたので、四国まで足を伸ばしてみました。』
「おお!!!
有名人キター!
俺らルナルナ動画のファンなんすよー。
いや、彼氏さんの前で言うたらいかんのやろうけど。
FANZA動画買うてしまいました。」
『あー、いえいえお構いなく。
きっと本人も喜ぶでしょう。
通話する機会があれば、香川県にも支持者がいた旨を本人に伝えます。』
「おお、マジっスかーw
あ、折角なんで最初に一言だけ。
俺のツレが常々言いよることなんですけど。
ルナルナって脚綺麗じゃないですか?
フードクラッシュ系のフェチビデ撮ったらガイジンが喜ぶと思うんすよー。」
『え、フー 何?
ちょっとメモしますね。
フードクラッシュ、と。
じゃあ、それも本人に伝えておきますね。』
「うっはーw
流石のレスポンス!!
猊下w猊下w」
『猊下はやめて下さいよーw』
「『あっはっはww』」
DQNのお兄さん達に頼まれたので、神聖教団&昭和の残滓軍団で記念撮影。
(流石に光戦士はアングルから退避させた。)
すっごくキショイ絵面になる。
『それにしてもカッコいい車ですね。
お兄さん達、モテるでしょ。』
「またまたw
宗教やってはる人は口が巧いっすねー。
アルファードの30系です。
流石にノーマルは恥ずかしいんで足回りだけ鬼キャンにしとります。」
『意味はわかりませんけど、はぇー。』
「うわっw この人酷ぇww
女くらっしゃげるだけの事はあるわw
俺ら女釣る時、五色台線にドライブするって誘うんすよ。
結構チョロイっすよ。」
『五色台線?』
「ああ、高松と坂出を結んどるんじゃわ。
夜景が凄くて、まあ《一発ヤロウや》って記号っすね。
ええ車さえあったら、ホイホイ女釣れますよ。
四国ってアホタレしかおらんけんww」
『そんな事でセックス出来るモンなんですか?』
「そんなん解かるわけないですよww
でも確率は上がりますやんww」
『あ、あの。
30代後半の経営者男性がモテるには…
どういう車に乗ったらいいですか?』
「え?
いや、その人金持ちなんですか?」
『あ、はい。
カネには困ってないと思います。
綺麗なタワマンに住んでおられますし。』
「じゃあフェラーリ一択っすよ。
それも赤!」
『えー、赤色は派手過ぎないですか?
ちょっと乗るのに勇気が要ると言うか。』
「やけんヤリの記号としてええんじゃないですか。
女はアホばっかりやけん、赤いフェラーリに乗ってたら
勝手に脳内で準備してくれますよ!」
『へー。』
「猊下は車とか乗らへんのですか?」
『周りに禁止されてるんですよ。
《オマエは鈍臭いからハンドル握るな》って。』
皆で大笑する。
話が盛り上がったので予約してあるグランピング場までアルファードに先導して貰う。
俺は我儘を言って彼の助手席に乗せて貰った。
瀬戸内の夜景を眺めながら打ち解ける。
「ガルパン君。
これからどうするんか?」
『え? どうすると申しますと?』
「スペインの反日デモ収まらんみたいじゃわ。
日本大使館の人が火炎瓶で火傷させられたみたいやし。
ガルパン君には殺害予告が出とったよ。」
『え? 私を殺害?
何で?』
「ほら、レズの人を死刑にするとか言よったやないか。
あれで全世界のレズの人がガルパン君殺す決意したみたいなんや。」
『えー、異世界ではそうだったと話しただけで…
別にそういう法律を地球に持ち込むつもりは無いんですけどねえ。』
「やけど、そもそも異世界推しだって聞いたわい?
ガルパン君の落ち度じゃわ。
ネット社会は切り取り社会やけんなぁ。
発言の一番過激な部分勝手に切り取られて
ほんで拡散炎上が定番コースやわ。」
『うわあ。
ネットって怖いですねえ。』
「いやいや、ガルパン君。
今はもう令和じゃわ?
アップデートして行かないかん。」
『あ、はい。』
お兄さん曰く、俺の発言を母語で確認可能な日本語話者達はまだ寛容らしい。
問題は悪意ある翻訳字幕だけを真に受けている連中。
《We need to pass a law immediately to execute all lesbians.》
というテロップが俺の口の動きに合わせて表示されている。
寺之庄に訳して貰ったところ
《レズビアンを全員処刑する法律を早急に可決しなくてはならない。》
という意味らしいのだ。
俺がそう発言した事にされてしまっている。
ちなみにその後にホモセクシャルに対して寛容な発言をしているテロップが表示されている。
要は国際社会における遠市厘は、《自身も同性愛者の癖にレズビアンをスケープゴートにしてホモのみの合法化を画策するLGBT界の裏切者》という立ち位置らしい。
「あの、ガルパン君はホモじゃないわいなぁ?
いきなり襲うんはやめてね?」
『いやいや!
私はヘテロですよ!
普通に妻帯者ですし!』
「えっと、ルナルナと結婚しとるってこと?
そこら辺ちょっとわかりにくうて。」
『いえいえ。
異世界に妻がおりまして。
我が国では重婚が禁止されておりますので、必然的に鷹見は内縁関係となってしまいます。』
「ああ、そりゃ可哀想にねえ。
ルナルナはちゃんとした結婚に拘っとるのに…
愛人のポジションかぁ。
まあ、そなん星の下に生まれたのかも知れんね。
異世界におる奥さんも大事にせないかんよ。」
その後、DQNのお兄さんと離婚談議で盛り上がる。
お兄さんは中卒で結婚したそうだが、離婚相手に子供の養育費を払ってないらしい。
「四国は仕事ないけん。
養育費なんて夢のまた夢じゃわい。
毎月ソープ行かないかんしね。」
『ああ、無い袖は振れませんものね。
仕方ないですね。』
「女はそなん道理が分からんけん困るんじゃわい。」
『四国ってそんなに仕事ないんですか?』
「高松はまだマシな方じゃわ。
材木とか金属やっとる奴は儲けて城東のソープ行きまくっとるし。
高知とか徳島は死んどるみたいなあ。
俺には関係ないけど。」
『金属…?』
「ほら、銅が滅茶苦茶値上がりしとるちゃん?
EVに使うとかで。
俺のセンパイも銅線盗んで捕まったしね。
いやあ、あの案件は俺にも回って来とったけん断って正解やったよ。」
『鉄も値上がりしてるんですか?』
「ん?
勿論、鉄も高止まりしとらい。
俺の後輩もグレーチング盗んで逮捕されたしね。
アレにはコツがあるけん一人ではやるなって忠告したったのにねえ。」
『へえ。
あの…
弊教団では、窃盗摘発キャンペーン中なんですけど。
もしそういうのに詳しければ、情報提供頂けませんか?
知り合いからも頼まれてるんです。
和牛盗難とかも流行ってますし。』
「ああ、和牛は儲かるらしいなぁ。
俺も盗み方考えたんやけど思いつかなんだんじゃわい。
…情報提供はねえ。
ツレが組の盃貰うとるけん。
結果として裏切りになってしまうけんなぁ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
188億9000万0000円
↓
188億8800万0000円
※大西竜志に情報提供料として200万円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いやあ、悪いなあ。
催促するつもりはなかったんやけど。
じゃあ、俺が知っとる限りで盗品ルートの説明するね。
あ、松山の方は疎いけんわからんわい。
あくまで阿讃のルートね。」
電気自動車の急伸やら、インドネシアをはじめとする資源国の輸出規制やら、ロシア事情やら。
色々な要素が複合して、和牛や銅線が盗まれているらしい。
『そいつら絶対に資源安でも泥棒してますよ。』
と俺が言うと大西は手を叩いて爆笑していた。
いずれにせよ彼はグランピング場まで送ってくれ、再会を堅く約束して別れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めると眼前に瀬戸内の島々が広がっていた。
南北の光の差異なのか、牛窓からの風景とはまた異なる気がする。
振り返れば高松の街が一望出来る。
なるほど、屋島とはよく言ったものである。
9時は官公庁にとって朝礼の時間なので、9時30分になってから新宿署に電話を掛ける。
水岡は不在だったので部下の印西に、先ほどの金属窃盗の情報を伝達した。
『すみません。
管轄外の案件ばかりお願いしてしまって。』
「いや、管轄同士の連絡調整は我々の仕事だよ。
オマエが気に病むことじゃない。
トイチはよくやってくれている!
みんな、オマエには感謝してるんだぞ。」
『え?
感謝ですか?』
「そりゃあそうだよ。
オマエが和牛事件を各地で聞き取ってくれたから
警察庁全体でも対策チームが組まれた訳だしな。
被害者の皆さんにとっては遅すぎる対応に見えると思う。
だが、これはかなり異例の編成速度なんだ。
水岡さんも、オマエの想いに何とか答えてやりたくて
各所を走り回っておられたしな。」
『いやあ、仕事を増やしてしまいました。』
「署長がな。
オマエに感謝していた。
御実家が酪農だから。
近所でも被害に遭われた方がおられたそうだ。
中々、地方に目を向ける人間は少なくてな。
警察全体としても反省して行こうという風潮が生まれている。」
『いえ、私などは大した事も出来ず。』
「そんな事より。
スペインではとんでもない事になってるな。
オマエの顔写真が焼かれてるニュースを見た時は肝が冷えたぞ。」
『ははは、ご心配をお掛けしました。』
「笑い事ではない!
LGBT運動は危険だよ。
異世界に居たオマエにはわからんかも知れんが…
年々先鋭化しているんだ。
身辺には気を付けろ!
もしもヤバいと感じたら新宿署に逃げ込んで来い。
オマエなら全力で守ってやる!
俺だけじゃないぞ、署の全員がオマエを心配している。
マスコミの偏向報道でオマエが悪者にされてるのが我慢ならんのだ!
…国連なんかに負けるなよ、トイチ。」
『ありがとうございます。
印西刑事にそう仰って頂いて心強いです。
ええ、危険な事は致しません。
ちゃんと周囲に人を置く事を心掛けます。
署の皆さんにも、私が感謝していたとお伝え下さい。』
その後、電話口に何人かの刑事が順番に出て、ホスト売掛問題の進展を説明してくれた。
どうやら異例のスピードで法制化されるらしい。
なるほど、今までが異常だったとは言え悪い流れではないよな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
グランピング場の管理会社が新鮮なタコを始めとした食材を持って来て、それを寺之庄がキッチンでカルパッチョを作ってくれる。
備え付けのBBQ台は時間が掛かるので火を起こさない。
カルパッチョの上に半熟のスクランブルエッグを乗せて、思わぬパワーモーニングとなった。
「で、エモやん。
何でこのタイミングで四国なん?
トイチさんが忙しい事はオマエが一番知っとるやろ?」
「響さんが白装束の写メ送ってくれたやないですか?
それを見た瞬間に、脳に電流が走りました。
お遍路行かなアカンって。」
「いや、お遍路って…
トイチさんにそんな時間ないで?
この後、東京に戻られるんですよね?」
『あ、はい。
しばらく離れてしまったので。
あ、でもお遍路は賛成です。』
「おお! トイチさーん!!
俺の作戦を気に入ってくれたんですね!」
これ以上俺の資産が膨れてしまうと東京を離れるのが難しくなる。
省庁との連携も考慮に入れれば、下手をすると神奈川にすら帰れない過密スケジュールになるだろう。
何せ内閣国際連絡局への予算配分を約束してしまったのだ。
どうせ配分先はこれからも急激に増えるだろう。
青森の毛内も含めて、最後に地方を回ってしまいたい。
四国なんて忙しくなれば2度と来る機会はないだろうからな。
『ただ、そんなに日数は掛けれませんよ?
大分の浦上さんも楽しみにしてますし。』
「…トイチさん。
浦上さんの方から来て貰えませんかね?」
『え?
そんなの先方に悪いですよ。
大分から高松なんて、かなりの距離でしょう?』
「いやいや、そもそもトイチさんは関東の人間でしょう?
可能な限り西進したと言っても過言ではないですよ。
周りもそこは配慮して頂かないと。
加えて、もう狩猟の重要性はかなり落ちているんですね?
レベルアップの倍乗ルール上、必要経験値が膨大になってしまっているんですよね?
いや、正直に言いますよ。
毛内さんにしても、ただ青森でボーっと待ってるんじゃなくて
せめて仙台か新潟まで出て来るべきやと思いませんか?」
『いやいや、エモやんさん。
相手はご高齢ですし。』
「それは勿論理解してますよ?
でもね、トイチさんが忙しいのは誰が見ても明らかじゃないですか。
今や世界一の有名人やねんから、少しは我儘言っても通るんちゃいます?
俺、国連に名指し批判されてる人なんて初めて見ましたもん。
もっと周りが配慮するべきでしょう。」
『いやあ、まあ
国連云々は私の都合ですし。
それに、最後に色々見ておきたいじゃないですか。』
「…不吉な言葉は使わんとって下さい。
不吉な事も考えないで欲しいです。」
…口が滑ったな。
でも、皆だって俺の締め括り方なんてとっくに看破済だろう?
「お遍路は車で回れる所を数カ所回るだけで十分やと思います。
要は既存の宗教・風習へのリスペクト姿勢を可視化して貰いたいだけですので。」
『仰ることはわかります。
新興宗教なんて、社会にとっては不安要素でしかありませんからね。』
「神聖教、仏教の一宗派という事にしてしまいせんか?
それが一番摩擦が減ると思うんです。」
『それも考えたのですが、仏教界に迷惑が掛かってしまうので…
事実の通り異世界の宗教という事で通させて下さい。
ただ私が日本人なので、説く教義にどうしてもバイアスが掛かっております。
原典は再現出来ていない事は承知しております。
仏教・神道・道教が習合した修験道の衣装を取り入れるのは今思えば最適なんです。
陰陽道や原始シャーマニズムの影響も大きいみたいですしね。
異世界宗教を日本的価値観のフィルターに通した教義。
それが地球における神聖教だと私は認識しております。
嘘は吐きたくないので、この路線で行かせて下さい。』
「公式に異世界カミングアウトされるということですか?」
『カミングアウトも何もないですよ。
世間様は私が異世界帰りである事を前提に話を組んでおられますので。』
「…それは否めませんね。
今更否定した所で、却って疑念を抱かせてしまいますか。」
『勿論、積極的に異世界を吹聴する気はありません。
地球に対して宗教的な強要を行う意図もないです。
ただ、彼らが長い年月を掛けて作り出した文化や哲学を剽窃したくないだけなんです。』
「…仰る通りだと思います。
じゃあ、香川・徳島の巡礼所だけ軽く顔を出して下さい。
車で楽に行けるところをリストアップしておきましたので。」
『ありがとうございます。
巡礼と言うより、挨拶の心掛けで伺います。』
「トイチさん。
俺が待ち合わせ場所に指定した宇多津。
元は四国の中心地です。」
『ええ、車内でヒロノリさんに教わりました。
管領細川家が四国を制圧する為の拠点だったようですね。
そういう願掛けもあったから、わざわざ待ち合わせ場所に指定されたんですよね?』
「流石です。
貴方に対しては俺如きが何かを申し上げるべきではないのかも知れません。」
『いや、そういう視点は私に欠けているので…
エモやんさんが側に居てくれることで、きっと色々補ってくれているのでしょう。
感謝してますよ。』
江本は、俺を使って陣取りゲームを楽しみたいと考えている。
色々計算した結果、《天下取りなら四国から》という結論に至ったのだろう。
それは的外れではない。
古来より歴代政権は四国へのケアを明らかに怠っている。
江本は《そこを突ける》との結論に至ったのだろう。
俺が選挙屋であれば大いに賛同したに違いない。
彼を責めるつもりはない。
俺も男だから、そういう策を弄する歓びは理解出来る。
ただ、天が与えた超常を世俗的な欲を満たす為に用いるのがアホらしいだけなのだ。
複利は最強である。
故にこの力は万民への分配に使い切り、そして消滅するべきなのだ。
神は顕現せぬが故に神なのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
皆でタコを貪っていると田名部が来訪する。
勿論、分配金を回収する為にだ。
この後、すぐに帝塚山に帰り社長連中に配当を配るらしい。
日利1%の口約束は全く守られていないらしいが、それには皆が納得しているということだ。
「17時に大主教の御前に参上せよ。」
というのが後藤が定めた配当ルール。
毎日金利が欲しいなら俺のエンドレスマラソンに同伴すれば良いだけの話なのだから。
無論、預金者には高齢者が多い。
俺の移動ペースに合わせるのは不可能なのだ。
(90台の老人が俺の生活リズムに合わせればすぐに死んでしまうだろう。)
だから、安全な都市圏で嬉々として俺を応援しているらしい。
マドリードで開催されている反遠市デモも娯楽として楽しんでいるそうだ。
どうやら聖徳太子が近所の自邸でパブリックビューイング飲み会を開催しているらしい。
そこで欧州のレズビアン達が発狂しながら俺の顔写真を焼いている様子を肴に親睦を深めているとのこと。
世の中には色々な娯楽があるものだと感心する。
『田名部さん。
これ、岡山で買った《飲むきびだんご》です。
良かったら、どうぞ。』
「おお、面白いですね。
いいんですか?
これ最後の1本みたいですけど。」
『娯楽は仲間で共有したいじゃないですか。
田名部さんには申し訳ないと思ってます。
連絡役みたいな退屈な仕事をさせてしまって。』
「いえ!
少しでも猊下の役に立てていれば嬉しいです。」
『田名部さん…
近いうちに、預金要らなくなります。』
「え!?」
『私のポケットマネーで全部完結してしまいますので。』
「…あ、あ、あ。」
『ただ、貴方は優遇枠です。』
「え!?」
『以前、仰ったじゃないですか。
私に全てを賭ける、と。
じゃあ、私にも貴方に特別な配当を支払う義務があります。』
「…お、おお。
そこまで気にかけて下さるとは思いもよらず。」
『特別配当、何が欲しいですか?』
「と、特別配当!?」
『関西での運営がここまで円滑に進んでいるのは明らかに貴方の功績です。
通常の配当に加えて、プラスアルファで還元したいのです。』
「わ、私は!」
『はい。』
「痛快な人生を歩みたかったんです!
今の猊下みたいに!」
『私、ですか?』
「そりゃあそうですよ!
毎日色々な街へ移動して!
鷹見さんや光戦士クンみたいな可愛い恋人も居て!
世界中でニュースになってて!
痛快大冒険じゃないですか!!
私も… そんな人生を歩みたかった。
今、猊下に促されて初めて言語化出来ました。」
『ああ、それは失礼しました。
貴方を誤解していたかも知れない。
じゃあ、大阪捨ててもいいですよ?』
「え?」
『年寄りの世話なんて退屈でしょう?
白装束、まだ余ってますんで。』
「わ、私も同行して宜しいんですか!?」
『仲間でしょ。
田名部さんが居てくれれば嬉しいです。』
「行きます! 行かせて下さい!」
『ちなみにね?
高松にもクラブがあるそうなんですよ。
今夜、皆で遊びに行くつもりなんですけど。
田名部さんも来られます?』
「うおー! うおー!」
田名部はカネを大阪に届けた後、他の誰かに連絡役を押し付けてパーティーに合流する。
連絡役が決まらなかった場合、配当はいつになるか知らん。
どうしても日利の恩恵に預かりたい者は、自分で車両を用意してキャラバンの後ろで待機しておいて欲しい。
さっきの江本の言葉ではないが、俺は忙しいので、運搬のような雑務は預金者個々の負担にして貰いたいのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、まだ日も高いし江本構想に従うか。
交通の便の良い巡礼所を車で回る。
場合によっては多少は歩く覚悟もある。
無論、車椅子を手放せなかった異世界生活は忘れていないのだ。
決して自分を健常者だとは過信していない。
「エモやん。
オマエ、ある程度ルート構想もあるんやろ?」
「はい。
まず、この屋島には84番・屋島寺があります。
山の反対側ですので、行きか帰りに顔を出してみましょう。」
「ふむ。
一つ目は行けそうやな。」
「隣の牟礼半島には85番・八栗寺。
山寺ではありますが、ケーブルカーで登れます。
その隣の86番・志度寺。
港湾道路沿いにあります。」
「今、トイチさんへのデモが激化しとる。
人目の少ない所は避けてくれ。
トイチさん!
ケーブルカーは却下させて貰ってええですか。」
『ええ、後藤さんの判断にお任せします。』
「エモやん。
最小の案も用意してるんやろ?」
「四国四県で一カ所ずつ、計4か所巡礼。
具体的には香川では88番・大窪寺。
徳島では1番・霊山寺。
この2つは距離的に近い上に、最初と最後という区切りの寺です。
そして、高知の29番・国分寺。
高知東道路から近い位置にあります。
以上の3寺は今日中の撮影が可能です。
そしてやや離れますが、愛媛の51番・石手寺。
松山市内の国道沿いにあります。」
「地図を見る限り…
ちょっと露骨かな。
意図がバレバレや。」
「無論、通り道にある巡礼所にも顔を出せば、10カ所は確実に抑える事が出来ます。
全体の1割も顔を出したら十分でしょう。
遍路なんて一回で回るルールも無いんですから。
香川県内で数カ所回るだけでも受けは悪くないと思うんです。
《近いうちに他の3県も回りたいね》
ってトイチさんがコメントするだけで、四国の人は親近感持ってくれると思うんです。」
『エモやんさん。
それでは今日は88にだけ顔を出します。』
「通り道に87もありますが。」
『OK、87にも顔を出します。』
皆で協議して、まずは88と87に顔を出す事を決める。
江本の献策が正しいのだ。
これなら万が一、急遽帰還しなければならない状況に陥っても
《逆打ちで遍路回りをする予定でした、残りの86カ所は先送りですね。》
と無難なコメントが出来る。
後々、遍路の話を蒸し返されたとしても
《素晴らしい所でしたので、是非いずれ再訪したい》
とリップサービスに徹することで、話を収める自信はある。
どうせ短期決戦なのだ、未来の手形は幾らでも切ってしまって構わない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
寺之庄ばかりに大型車を運転させるのは心苦しいのだが、車内くらいは仲間で固めたい。
俺・寺之庄・後藤・江本・坊門・光戦士の6人でお遍路ドライブ。
堀内兄弟は岡山に帰り、急いでイベント準備。
俺も美作訪問を約束した以上、出来得る限りのサービスをするつもりで居る。
「ヒロノリさん。
この辺です。
B級グルメの店。」
「ああ、さっき見せてくれた
《かっしゃ焼き》だよね。
ナビではこの辺なんだけど。
…あれかな。
幟が立っている。」
助手席の江本が熱心にナビを弄っている。
《ご当地B級グルメを可能な限り食べる》
というのも江本の献策。
この男は俺の短期決戦構想を聞いた上で、長期戦を想定している。
要するに全国的な選挙運動をさせたいのだ。
具体的には2025年の衆院選をターゲットに絞っている。
なので、俺に全国各地を回らせシンパを増やさせたい。
俺は懐疑的。
その時まで我が国の民主政体が存続しているという見方はあまりに楽観的過ぎる。
と言うより、地球人類が俺を相手に2年も耐えられると到底思えない。
「ボクの名前は光戦士♪
今朝未明、四国に上陸した人生は冒険枝豆なのだ。
はい、今から食べるのは高松名物《かっしゃ焼き》
見た目は… 関西人のボクが見慣れたタコ焼き?
すみませーん。
これがかっしゃ焼き?
滑車?
ああ、なるほどなのだ。
鶏肉を意味するカシワが訛って
《かっしゃ》って呼ぶらしいのだ。
ふむ?
鶏肉タコ焼き?
むしゃむしゃ❤
お!
カレー味!?
ああ、いい意味でB級なのだ。
割と万人受けする味っすね。
ちなみにボクはタコ焼きとカレーは別々に食べたい派なのだ。」
『光戦士君。
ちゃんとお店の人に配信許可は取ったのかい?
後でちゃんと御礼を言わなくてはならないよ?』
「ちっ、っるっせーな。 (はーい、了解なのだ❤)
リン兄ちゃん、カレー味食べてお口辛い辛いなのだ♪
かき氷買ってぇ❤」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
188億8800万0000円
↓
188億7800万0000円
※寺之庄煕規に補給用雑費として1000万円を支給
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
光戦士が騒いでしまった事を店主に詫び、飲料の類をここで買い込んで行く。
最初、高松名物だと思っていたのだが、この店のオーナーが発表してから20年経っていないとのこと。
ご当地グルメではなかったのだろうか、と一瞬考え込むと背後から坊門が耳打ちして来る。
「猊下。
逆ですよ。」
『え?』
「むしろ、公知されてない位がええんです。
ウドンだけ食って日帰りしても香川の人間の琴線には触れてくれません。
騙されたと思って、その土地のモンにしか通じない場所に行きなはれ。
選挙、勝てますよ。」
『いや、私は選挙とかあんまり考えてなくて。』
「じゃあ、ワシらが勝手に勝ってもいいんですな?」
『ええ、干渉の意図はありません。』
「猊下が地方を回れば回るほど…
親猊下派の議席は増えます。」
『…でしょうね。』
「解散が無ければ次の衆院選は2025年。
ワシも江本君に賛成なんです。
早期決戦の方が有利だと考えてます!
仕掛けてええんですね?」
『うーーん。
まあ、世界が2年も保つのであれば…
どうぞ、皆さんのご自由に。』
「…。
猊下ぁ。
地球滅ぼさんとって下さいね?」
『いやあ、別に私がどうこうするつもりは無いのですけれど。
人類は自らの欲に押し潰されて滅びるのではないでしょうか?』
「やめてー、ワシが真っ先に滅びますやんw」
言いながらも坊門翁はかっしゃ焼きをバクバクと貪っている。
この爺さんは皆が死んでもしぶとく生き残るタイプだろう。
気遣いは不要、と。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【第87番札所 補陀洛山観音院長尾寺】
何が素晴らしいかと言うと、この寺は平地にある。
しかも琴電の終点から徒歩数分なので、電車で高松市街に戻れる。
お遍路などと言うと、山道を巡るイメージを持っていたので、この時点で感涙する。
自動販売機のジュース旨ぇ。
境内で涙を流している俺を向こうから江本が隠し撮りしている。
どうせ脚色してインスタに上げられるのだろう。
絶対にネットって人類を不幸にしてるよな。
俺が平原からスマホを受け取ったら平和利用を心掛けよう。
そうそう思い出した。
せめて一度、スマホでエロ動画を見てみたいと思ってたんだよ。
「コロナ前は精進料理も出していたのですけど。」
申し訳なさそうに受付のお姉さんが詫びて来る。
無論、謝られても困る。
俺はエチケットとして何かでカネを落としたいと思っただけなのだから。
何気なくお守りコーナーを眺める。
『これは、何ですか?』
「厄除け玉です!
穴に息を吹き込んでバリンと割れば厄除けの御利益があります!」
ふむ、面白いな。
機会があれば神聖教団でも導入してみよう。
『へえ、色々な種類があるんですね。』
「はい!
黄色の玉は、金運UPの効果です!」
『これ以上金運が上がると足の踏み場が無くなってしまうな。』
「ではこちらの青玉はどうでしょう!
仕事運です!
職場の人間関係でお悩みの方に是非!」
『あ、いや。
私は仕事仲間を全員愛しておりますので。』
「お羨ましいことです。
ピンクは恋愛う…『他には何がありますか?』
「え!?
黒はストレス解消効果があります。」
『今はストレスはないですねえ。』
「緑は健康運アップ!
怪我や病気を避けてご長寿♪」
…長寿も何も、年内生き残れば俺の構想は完遂出来る。
『ふーん。
じゃあ、まあそこの甘納豆おはぎでも…
ん?
この赤い玉は?』
「ああ、それは縁切り効果がありますね。」
『おお!
じゃあ赤い玉全部買います!!』
「え!?」
『おお!!
お遍路素晴らしいですねえ!!
来て良かった!!!
えっと、これはどうやって使うんですかね?』
「あ、穴に息を吹き込んであそこのお祓い所…
ほら、注連縄で囲っている中です。
そこに玉を投げつけ、割ります。」
『あははははは。
ヒロノリさーーーん!!!
ここの支払いお願いしていいですか!?』
へえ、お遍路なんてジジババの道楽だって思ってたが。
結構、素晴らしいコンテンツ揃ってるじゃないの!!
四国来て良かったなあ。
『ふむ、ここがお祓い所か。
ああ、なるほど、あそこにぶつけて縁を切る訳ですな。
あっはっはっは!
いやあ、素晴らしいシステムだ。』
「トイチさん、どうしたんですか。
そんな晴れやかな表情初めて見ましたよ?」
『エモやんさん!
誘って下さってありがとうございます!
いやあ、遍路って素晴らしいですねえ。
神聖教に関わる前に天台宗に入信しておくんだった!!』
「え? え?」
『はーい、エモやんさん。
そこ空けて下さいねー。
私の華麗なピッチングを見守っていて下さい♪』
「あ、はい。」
ふふふ。
縁切玉♪
誰が考えたのかは知らないが、素晴らしいアイデアじゃないか。
俺は土製の玉の中に力強く息を吹き込む。
異世界転移からもう半年か…
色々あった。
奴らには散々泣かされた。
もう疲れた。
『南無南無南無南無!
悪縁よ、切れろーーーー!!!!!!』
ガチャガチャ――――――ン!!!
『ふー、スッキリした。
エモやんさん、今晩は派手に遊びましょう。』
「な、何かええことでもあったんですか?」
『ふふっ、神仏の加護に感謝していた所です。』
「?
まあ、喜んで下さったんやったら嬉しいですけど。
あ!
またアイツや!」
『どうしたんですか?』
「佐々木がねえ。
こうやってたまに電話してきて探りを入れて来るんですわ。
一応、俺も躱しているんですけど。
あまり着信を取らないのも…
3回に1回くらいは取ってるんですけど。
アイツ、根掘り葉掘り探って来ますから…
油断ならへんのです。
そろそろ出といた方が無難かなぁ…」
『あ、じゃあまあ。
着信取って貰って大丈夫すよ。』
「そうですね。
丁度、トイチさんも居られることですし。
奴らの手口を知っておいて下さい。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【江本昴流VS佐々木紗由】
「おお!
サユちゃん、全然電話取れんとゴメンなー!」
「えー、そんな事ないですよー。
私、スバル君のお仕事の邪魔をしてたらどうしようって
いつも不安で!」
「ちゃうねん。
俺、正直言うと仕事なんかどうでも良くって
サユちゃんと話したいねんけどさぁ。
どういう訳かいつも運転中でな。
先輩が法律面五月蠅い人やから
電話取ったらアカンって言われてもーて。」
「ゴメンナサイゴメンナサイ!
迷惑なのは自覚してたんですけど。
私、どうしてもスバル君の声が聞きたくて!
本当にゴメンナサイ!」
「いやいや、俺もさあ。
仕事一段落したら、サユちゃんに会いに関東戻りたいって思っててんで。
先輩らの目を盗んで電話しようと思ってたらな?
丁度、サユちゃんから掛けてくれた訳やろ。
ちょっと感動してしまってな。
柄にもなく涙ぐんでしまったんや、それで出るの遅れてゴメンな。」
「わぁ、嬉しい♪
私も! 毎日スバル君のことばっかり考えてたんですけど。
お仕事の邪魔になるのが怖くて…
それで、今も勇気を振り絞って電話しました!」
「いやあ嬉しいわぁ。
俺もな?
恥ずかしい話やけど、サユちゃんの事ばっかり考えてるんや。
昨日も先輩に怒られたわw
女のことばっかり考えとるやろ、ってww
自分では隠してるつもりやねんけど。
やっぱり周りにはバレバレみたいやな。
俺が仕事そっちのけでサユちゃんの事ばっかり考えてるってww」
「…感激ですぅ。
私達、離れていても同じことを考えていたんですね。」
「うん、こういうの心が通じてるって言うんかもな。」
「あの!
スバル君、怒らないで聞いて下さいね。
1つだけお願いがあるんです!」
「俺がサユちゃんを怒る訳ないやん。
何? 何でも言うてや。」
「…逢いたい …です。
せめて一目。」
「奇遇やな。
俺もずっとそう思っとった。」
「…嬉しい/// …です///」
「俺さあ、結構周りが見えなくなるタイプやから。
遠慮してサユちゃんに電話出来へんかってん。
ほら、今ってストーカー事件とか増えてるやん。
そんな風に思われたくなかったから。」
「スバル君だったら、こっちから追い掛けたいくらいです。
…今、大阪?」
「…せやね。
実家を拠点にあちこち回っとる。
サユちゃんは?」
「うふふー。
じゃあ当ててみて下さいー♡」
「うわー、どこやろうなー♪」
「案外近い所に居たりして♪」
「あっはっは、運命感じるわーw
あ、そうや! 今度どっか遊びに行かへん?
2人っきりで。」
「うわぁ、嬉しいです❤」
「サユちゃんの行きたいところ
教えてや。」
「えー、感激しちゃって
いきなりは決められないですよー♪
でも一番居たい場所はねー。
スバル君の隣かな❤」
「お!
奇遇やん!!
俺もサユちゃんの隣を狙っててん!」
「うふふふ。」
「はははは。」
「あの、図々しい女だって叱られるかも知れないけど。」
「んー?」
「今度、スバル君の生まれ育った街を案内して貰えれば嬉しい…
ゴメンナサイ!!
私、何勝手なことばっかり言ってるんだろう。」
「ええよ。」
「え!?」
「淡路って何も無いトコやねん。
同じ大阪の奴でも淡路島と勘違いするような、マイナーな場所やねん。
来いよ。
いや、来て欲しい。
俺、是非サユちゃんに見て貰いたい。
俺な!
実家が町中華って言ったやん。
店、見てくれ。
親も居るから。」
「え、そ、それって。」
「サユちゃんに来て欲しいんや。」
「は、はい!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
明るい口調とは対照的に江本の表情は機械の様に冷徹だった。
相当に考えながら計算して喋っているのが伝わって来た。
電話を切り終わってから数秒、江本は顎に手をやってブツブツと呟いている。
きっと脳内を整理しているのだろう。
「大体、こんな感じです。」
『え、ええ。
仲が良いようで…』
「隣にヒルダさんが居ました。」
『え!?』
「音の反響が左側だけ不自然だったでしょう?
佐々木よりも身長の高い人間がほぼ密着の距離で聞き耳を立てている気配です。
いや、厳密に言えば気配を殺している気配でした。
さっきの通話、発声ペースからして佐々木は直立状態で通話しておりました。
身長179センチの佐々木より高い関係者って言ったら…
消去法でヒルダさん一択でしょ。」
『…。』
「あの、念を押しときますけど
佐々木の推理力・洞察力は俺と同等かそれ以上ですよ?
相当勘が鋭い。
つまり、トイチさんが側に居た事もあちらに察知されています。」
『え? え? え?』
「さっき俺が《サユちゃんの行きたいところ教えてや。》と発言しましたよね?
佐々木はそれに対して時間を稼ぎながら話を繋いできました。
これは何を意味するか?
ヒルダさんの指示を仰いだということです。
普通この場合ですと、ハンドサインか筆談で指示を出すんですけど。
その気配は一切ありませんでした。
空気が一切流れなかった!
ただ、微かに佐々木が眼球運動を速めた人間特有の口調になりました、
つまり、アイコンタクトでヒルダさんの指示を受け、かつその後の会話に反映させた事を意味します。」
『…な、なるほど。』
あれ?
何でいつの間にか能力バトルみたいになってるの?
異世界パート終わったんだよね?
「ヒルダさんのパーティーは全員そこまでの信頼関係で動いてると考えて下さい。
弓長さん、森さん、渋川さん。
あの3人も間違いなく同様の立ち位置に居ます。」
『まあ、あの女なら…
それ位の芸当はこなすでしょう。』
「一応確認しておきますね?
俺はヒルダ・コリンズはトイチさんの敵対勢力と認識しております。
それで宜しいですか?」
『ええ、まあ。
あ、一応弁護しておきますと、私の敵側であるという事は
それだけ彼女が社会的規範に沿った人間である事を意味しますからね。』
「…要するにトイチさんが人類の敵やから、その敵のヒルダさんに大義あり、と?」
『ははは、言語化しちゃうと酷い話ですよね。
私は、資本の世襲を禁じたいんです。
資本とは社会の共有財産であって、個人や家系の独占物であってはならないと考えているので。』
「うっわー、そらあ女の人は怒りますわ。
アイツら、旦那のカネは自分のカネやって思い込んでる生き物ですからね。
女からしたら、トイチさんって我が子に対して強盗しとるようなモンですよ?
奪ったカネを社会と言う名の他人に渡そうとしている鬼や悪魔みたいな存在ですわ。」
『争点はハッキリしてるんですよ。
私の財産。
受け継ぐのは私の子孫か、それとも社会全体か?』
「…トイチさん。
冗談抜きでヒルダ・コリンズに…
いや、女という機能そのものに殺されますよ?」
『まあねえ。
私は女の敵らしいですから。』
「それはDVやのレズビアンやの、そういう表層の話でしょ。
現時点では表層だけが敵視されてますよね。
ただ女性は勘が鋭いから、既にトイチさんの思想の根底を本能で理解してると思います。
だから感情的に嫌悪されてるんとちゃいます?
本質の部分もすぐに暴かれますよ?
誰かが言語化して、それがネットを通じて一瞬で共有されます。」
『恨まれますかねー?』
「まあ、そら…
旦那の財産を我が子に移すのが女性の仕事ですから。
カネとか権力とか、全部そうですやん?
端的に言えば世襲ですよ。
アイツらはそれが仕事の生き物ですから、そらあ必死ですよ。」
『ですよねー。』
「予め申し上げておきますね?
この先もトイチさんの味方を貫くつもりですけど。
そこまで次元の高い話になると、俺如きでは役に立てませんよ?」
『何とか助太刀して貰えませんか?』
「うーーん。
釈迦とかソクラテスに頼んでみては如何ですか?」
『ああいう浮世離れした連中って実務の役に立たないんですよねー。
いや、私も同類なんだそうですけど。』
「じゃあ、まあ。
俺は衆院選頑張るんで。
トイチさんは女性やら宇宙やらと戦っといて下さい。」
『宇宙は何とかしますので、女共を始末しておいてくれませんか?』
「えー、宇宙やったら何とかしますけどねー。」
参ったなー。
別に難しいことをしたい訳じゃないんだ。
俺は世襲を禁じたいだけなんだけどなー。
そりゃあ、世の母や妻からしたら酷い話に見えるだろうな。
やっぱり俺なんて殺すしかないよな。
車内に戻ってそういう事を考えていると光戦士が声を掛けて来る。
「ルナお姉ちゃんから鬼電入ってるのだ。
怖くて取れないから、リン兄ちゃんが代わりに出て。」
『…。』
なーにがお遍路だ、なーにが厄除け石だ。
全然効き目ねーじゃねーか!
なんなら逆効果だったわ!
はい、やめやめ。
もう俺が拝んでる画像はインスタにアップしたでしょ?
はい、お遍路しゅーりょー。
高松市街に戻って皆で遊ぼうぜー!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【NTR被害報告】 脳がぁぁ~! 脳が痛えぇぇ~!! [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
「…。」
「おーい、いつまでフリーズしてるニャ?」
「…。」
「はーい、鷹見さん。
黙っていても授業は進みませんよー。」
「…。」
「どもニャー♪
夜猫@の枕営業担当!
実は純情可憐、まっさら処女乙女!
仰げば尊と恩師ッ!
奈々ちゃんでーーす♪」
「…あうあうああ-。」
「はい!
この度、FANZAさんから連絡がありましてですね。
上半期の人気女優10傑になーんとルナお姉様が選出されましたニャ。
はい!
これも皆様のご声援の賜物ですニャ!
はくしゅー、パチパチパチー♪」
「あ…… あ… あ あ……」
「大丈夫ニャ。
さあ、座りましょうねニャ。」
「あうあう。」
「はーい、今日もルナルナ配信は大盛況ですニャー♪
スポンサーも増えて、とうとう海外からも貢ぎマゾプランの加入者が現れて。
オリジナルの新曲もね、そろそろ出せそうですニャ!
いやー、今までカバーばっかりでしたからニャ。
ん?
あー、そろそろ歌のコーナー?
えっと、今日の曲は…
はい、レーベル・ボトムズさんから提供された2021年の楽曲!
《すきすきだいすきうそぴょんぴょん♪》
ですニャ!
いやあ、これだけ色々なレーベルさんからカバーのお誘いがあって
夜猫@一同感謝感激雨霰ですニャ!
作詞の宮沢鬼龍先生!
作曲の小西にこ(なろう担当のチョッパリ)先生!
わから戦隊メスガキーズの皆様!
それでは!
心を込めて歌わせて頂きますニャ!」
「あー、あー。」
「好き好き大好き、うそぴょんぴょん♪ (チラッ)」
「あうあう。」
「ちゅきちゅきだいちゅき ごろにゃんにゃん♪(チラッ)」
「あー、あー。」
「ちゅーしてぎゅーしてもっとして♪
お腹のマグマ大噴火♡
クリクリこねあうクリムゾン!(チラッ)」
「あ、あ、あ、あー。」
「パパなんて呼んであげない♡
オマエがパパになるんだよ♡(チラッ)」
「あ、ぅ… た…」
「この鼓動目覚めた子宮
溺れて溶けていきなさい♡(チラッ)」
「ぅ、ぅ、う、う。」
「はーい、ご清聴ありがとうございましたニャー♪
この《すきすきだいすきうそぴょんぴょん♪》は!
現在制作中の、夜猫@コンピレーションアルバム!
《大麻はおかず》に収録される予定ですニャ!
ルナお姉様のパワフルな歌声に痺れて欲しいニャ!」
「ぅ、う、う… ぅ。 た。」
「え?
この衣装可愛い?
お目が高いニャ!
本日、奈々ちゃんが着ているこのドレス!
お水系アパレルの最老舗!
創業大正2年!
MOGA様からの提供でーす。
極限まで攻めたハイウェストベルト!
いやあ、100年間も同じ商品作れる度胸には頭が下がるニャ。
そして!
お姉様への衣装提供は!
な、なんとあのオラオラ系ブランドがレディース進出だー!
旧・株式会社無駄無駄様!
代表が殺人死体遺棄で逮捕された後も、カンボジアに逃れた残党が頑張っておられますニャ!
腕の刺青を見せつける為だけに不自然に短縮された三分袖!
背中の刺青を誇示する為だけに不自然に開いた背中!
刺青ゾーンの周囲は敢えて無地にする事により、モンモンが映える仕様ですね。
いやあ、カタギの人間には中々思いつかない発想ですニャ。
なお、わー国とカンボジア王国の間には犯罪人引渡し条約が締結されていない為。
残党の皆さんの逮捕に警視庁の捜査チームが同国入りして協議中らしいニャ。
いやー、ルナルナ配信も国際色豊かになってきましたニャー。
ねー、お姉様。」
「あ、う… ィお。」
「ん?
どした?
言うてみ? 言うてみ?」
「じょ… ふ… おき…」
「うん、うん。
なるほど、海外逃亡の時に不利になるね?
うん、ううん。」
「あ… こう ざ…。」
「確かに!
夜猫が国内で指名手配された時に、逃亡先は確保しておきたいニャ。」
「ふぃ、ふぃ、ん。 …ど。」
「わかるニャ!
マニラとドバイは外せないニャ!」
「たい… あ。」
「おお! 両国とも大麻が違法な点を心配してくれてるのニャ!
いやあ、お姉様がそこまで気を遣ってくれて嬉しいニャ!」
「あ… ひ、ひひ。」
「はーい、涎をフキフキしましょうニャー♥
無理しなくていいからニャ?
あんな動画を見せつけられたら、脳が破壊されても仕方ないニャ。
たっく、あのホモ野郎。
宇多津って言ったら《恋人の聖地》の聖地として全国的に有名ニャ。
それをわざわざ、ホモっプルぶりを見せつけて。
発狂したお姉様を鎮静化するのに、手持ちの大麻を全部使っちゃったニャ。」
「あう、あう、あう。」
「あー、コメント欄のみんニャ。
いつもゴメンねー。
大丈夫!
ルナお姉様は強い子だから!
いつも数時間でリカバリーしてくるニャ。
いや、ホントニャ。
今も回復の兆候があったから、カメラを向けて力業リハビリを…
お!?
ルナお姉様!!!
光戦士から電話ニャ!!
出る? 出る? 出るよ!?」
「あうあうあー。」
「もしもし、松村です。」
『遠市です、折り返し電話しております。』
「ちょっとアンタねえ!!」
『うわっ、急に怒鳴らないで下さいよ。
びっくりするなあ。』
「アンタがホモ動画を公開したから!
夜色が精神崩壊しちゃったんでしょ!」
『え? ホモ?
いや、何が何だか。』
「光戦士君といちゃついてたでしょ!!!
アンタ本当に何考えてるの!!」
『え、ちょ。
別にいちゃつくとか…
自撮りを手伝ってやっただけですよ。』
「そういうの夜色にもやってあげなさいよ!!」
『あー、うー。』
「夜色! トイチから連絡来たよ!」
「あー、うー。」
「オマエもかい!!!
はい、ちょっと受話器渡すから。
2人で! 若い2人同士で!
いやアタシも勿論若いけど!
楽しくおしゃべりしなさい!」
『えー、まあ、別にいいですけど。』
「夜色がちょっと不安定だから!
優しい言葉を掛けてあげなさい!!
いいわね!!」
『えー?
俺は鷹見にいつも優しいと思うんですけど。』
「夜色。
ほーらトイチ君でちゅよー♪」
「だー♪ だー♪」
「うん、良かったねー。
さあ、トイチ君とおしゃべりちまちょうねー♪」
「だー♪ ふひゅー♪ ふひゅー♪」
『おう、鷹見ー。
久しぶりー。』
「あうー♪」
『いやあ、元気そうで何よりだよ。』
「あー♪ あー♪」
「うーん、退職後も学級秩序を守る義理はあるのだろうかニャ?」
『俺さあ。
今日オマエのファンに会ったよ。』
「ふぁー♪ ふぁー♪」
『改めて鷹見って有名人だったんだなって。
ちょっとリスペクト深まった。』
「あー♪」
『あ、ファンの人からリクエスト聞いてるんだ。
えっと、メモはこっちのバッグに、あったあった。』
「ちゃーん♪」
『えっとなあ。
ほら鷹見って脚が綺麗じゃん。
俺は脚だけじゃなくて
オマエの背中のラインとか締まってて好きだけどな。』
「だーだーだー♪」
『それでさあ、ファンの人が
《フードクラッシュ》っていうので合ってる?
それがガイジン受けするんじゃないかって
提案してくれたんだよ。
ほら、今って政府もインバウンドに力を入れてるだろ?
オマエも海外勢を意識した展開したらどうかなって…
あ、松村先生。
フードクラッシュって英語?
意味わかります?』
「…そういうのは英語科の先生に聞きなさい。
アンタは教科によって授業態度にムラがあり過ぎるから
職員室でも問題になってたのよ?
特に英語科目からの評判最悪。」
『えー、そうでしたっけ。
私はどの授業も真面目に聞いていたつもりだったんですけど。』
「あー♪ あー♪」
「自分がどう思うかの話じゃないの!
人からどう思われるかでしょ!
私の言ってること間違ってる!?」
『うーん、まあ、そっすね。
なーんか、前もこんな説教された気がします。』
「指摘されてるうちが華よ。
矯正して行きなさい。」
『はーい。』
「はいは伸ばさない。
…FOODは食品、CRASHは破壊。
これ中学レベルの英語よ?
アンタ大丈夫?」
『ああ、いや。』
「ただでさえ学歴が高校中退になっちゃったんだから。
隙を作るような発言は戒めなさい。」
『あ、はい。』
「あうー♪」
「海外の性癖にね?
フードクラッシュってジャンルがあるの。
女が食べ物を台無しにする行為に興奮する特殊性癖のことね。」
『へー。』
「私も出演した事はあるけど。
国内からの批判が強いジャンルだから続編のオファーは断ったくらいなの。
やっぱり食べ物を粗末にする事への抵抗は強いんでしょうね。
180分拘束でギャラは5万~10万が相場かな。
当時の私はJKブランド込みで知名度あったから30でオファーが来てた。
カラミもないし出たがる子は多いよ。」
『はえー、色々あるもんですね。』
「だー♪ だー♪」
「フードクラッシュ自体は悪くない着眼点。
ただね?
ここまで、この子の知名度が上がっちゃうと…
かなり繊細なヘイトコントロールが求められるのよ。
食べ物を玩具にするような行為。
日本的な価値観からして、一番のNGでしょ?
何か良いアイデアがあるなら採用はしてるけどね。」
『ああ、確かに。
私も食べ物で遊ぶのは嫌いだなぁ。
最近、猟師さんや農家さんと話す機会が増えたんですよ。
それで、やっぱり第一次産業の大変さは伝わって来ましたし。』
「賢明ね。
それに我が国は選挙区の関係もあって地方の発言力が強いから。
無理に刺激する必要もないわ。」
『先生の授業でも一票の格差の話ありましたものね。』
「…そんな話もしたかしら?」
『ほら、所得が低い地方に政治力だけ与えたら、
その土地が政治団体化しちゃって…
普通に住んでる人が逃げちゃうって。
あの授業は妙に印象に残ってるんですよ。』
「だあー♪」
「…多分、それは内心アンタに向けて話したことだからじゃない?
親御さんの事でブツブツ言ってた時期あるでしょ?」
『ああ、教職ってそこまで考えて喋ってるんですね。』
「考えてないのはアンタくらいのものよー。」
『私だって考えてますよー。』
「口では何とでも言えるけどね。」
『例えば、フードクラッシュ(?)でしたっけ。
それにしたって話の持って行き方次第だと思うんです。
今、フードロス問題が騒がれてますよね?』
「…続けなさい。」
『通常のフードクラッシュ動画を販売する際に
フードロス問題のテロップを流すだけでも予防線にはなります。
私が撮影会社なら、廃棄食材で企画を練りますね。
加えて、厄払いの要素を足します。』
「厄払い?」
『ほら、我が国には古来より厄払いの文化があるでしょう?
なので病魔や疫病神などを踏み付ける
というタテマエの動画にするんです。
それを廃棄食材で作ってしまえば、理論武装の穴が減ります。』
「あー♪ あー♪」
「…ああ、それ使えるわね。
ビジュアル的にも映えるし、大義名分も獲得し易いわ。
例えば、コロナ鎮静とかウクライナ和平祈願とか、
そういうことでしょ?」
『ええ、仰る通りです。
以前、金本社長から教わったのですが
洋菓子業界は構造上、食材の廃棄が多いらしく。
活用法に悩んでおられるみたいなんですね。
例えば、廃棄食材で作った悪鬼の像を踏みつけて払うとか。
私ならそういう方向に昇華した企画にします。』
「いいんじゃない。」
『ありがとうございます。
即興にしては悪くないアイデアだと思ってます。』
「あいー♪ あいー♪」
「アンタのことよ。
私の中で卒業証書を贈っておくわ。」
『…2年間お世話になりました。』
「手間の掛かる生徒は印象に残るわぁ…
…卒業おめでとう。
夜色、トイチがアンタの為に色々考えてくれたよー。
そろそろ正気に戻りなー。」
「うー♪」
「正気に戻らないなら通話切っちゃうよー?」
「あー! あー!」
「10・9・8・7。」
「やーーー!!!」
「6・5・4・3.」
「うあああああああああああ!!!!」
「2・1・ゼ「うおおおおお!!!!」
「…。」
「おおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
「…。」
「ハアハア!!!
奈々! アタシは何分昏倒していた!?」
「ほんの数時間ニャ♪」
「フー、フー。
三橋ィー、歌唱コーナー終わっちまったのか?」
「…はい!
奈々さんがソロで歌って下さりました!」
「随分迷惑掛けちまったみたいだな。
三橋、よっぴー、カントク、ゲンさん。
…奈々。
そして視聴者のみんな。
待たせたな。」
「おかえりニャさい♥」
「ただいま、奈々。」
「…♥」
「どうもー。
夜猫@の夜更かし担当!
相模の獅子ッ!!
ルナルナ@貫通済でーーす♥
皆様のご声援が導いてくれたから!
地獄の底から這い上がれましたぁ!!!
いつもありがとうございまーーす!!!」
「ぱちぱちぱちニャー♥」
「ゴメン、記憶飛んでるから状況教えてくれ。」
「はいニャ!
宇多津イチャホモ動画を閲覧したルナお姉様は絶叫と共に廃人化。
精神科医の見立てでは、海馬を中心とした脳機能が著しく損傷。
再起不能と診断されていたニャ!」
「大丈夫、脳が焼けた位じゃウ↑チ↓は止まらねえ。」
「はい、信じてましたニャ♥
ショック療法も兼ねて光戦士に打診。
トイチとのコラボ動画まで漕ぎつけましたニャ!」
「うむ、この短期間によく実現してくれた。
改めて皆に感謝する!」
「丁度、トイチがルナお姉様の為に企画を持って来てくれたところニャ。
よっぴーが企画書に起こしてくれてるから、後で目を通しておくニャ。」
「おお、僅か1日でそんな激動の展開が…」
「おいトイチ!
お姉様に何か一言!」
『あ、もう喋っていいんですか?』
「ダーリン様!!」
『あ、うん。』
「愛してます!!」
『え? ありがと。
俺も鷹見は好きだよ。』
「光戦士君とウ↑チ↓!!
どっちが好きですか!!」
『いや、光戦士君は男性だし。
そもそも、そういう対象ではないからな。』
「そうなのだ!」
「え!?
ず、光戦士君と一緒に居るんスか?」
『あ、うん。
金本家からお預かりしている訳だからね。
責任を持って面倒を見なくちゃ。』
「ちゃんとボクの面倒を見るのだー♥」
『あ、コラw
通話中にやめなさいw』
「あははは、くすぐり攻撃ー♥」
『ははは、コイツーww』
「…。」
「ト、トイチ。
オマエも忙しいみたいだし、そろそろ通話を切るニャ!」
『?
いや、今は時間に余裕があるんで大丈夫ですよ。
どうかお構いなく。』
「ずっと兄ちゃんと2人きりで退屈なのだ!」
「…。」
「い、今オマエどこにいるニャ?」
『ああ、丁度みんなでサウナに来てたんですけど。』
「熱かったのだー。」
「!?」
「ニャ!?
サウナ!? ホモ御用達のサウナ!?」
『いや、それ風評被害ですって。
入ってるの普通のオジサンばっかりでしたよ。』
「サラリーマンの聖地って言ってたのだ。」
「あ、あ、あうあう。」
「くっ! 回復した脳が再破壊されそうニャ!!」
『あの、そっち大丈夫ですか?』
「頭だいじょうぶっすか?」
「あー、あー。」
「だいじょばにゃいニャ!
で?
サウナに行って、そこはどこ!?」
『えっと、このホテルに酸素BOXがあって。
光戦士君が入ってみたいと言うので。』
「あんまり効果がわからないのだ。」
「あーあー。」
「密室見せつけやめろニャ!!!」
『やることなくて退屈だったんですよ。』
「枕が1個しかなくて、サービス悪いのだ。」
「あうーーー!!!
あうーーーー!!!」
「ヤバい!!!
パルスが逆流してるニャ!!!
よっぴー!!!
緊急遮断ッ!!!」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
【この配信は終了しました】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アルファードの大西からクラブに行く前に汗を流せと忠告されたので、瓦町のサウナに来た。
(瓦町というのは高松の中心地で、ここを起点に日本一長い商店街が伸びている。)
高松ではかなり有名な店らしく、夜遊びの友として地元男性や出張族に愛顧されているのだそうだ。
さっき結構汗をかいたので、念入りに身体を洗う。
俺はサウナは苦手だったのだが《空海の湯》を称する薬草サウナが案外気持ちいい。
坊門や後藤程に長くは楽しめなかったが5分程薬草の香りを楽しんだ。
(軟弱な俺にしては5分というのは頑張った方である。)
夜遊びが長引く可能性も想定して、念の為に全員分のカプセルルームを確保し、大西が瓦町に来るまで時間を潰すことにする。
年齢的に光戦士はクラブに入れないので寝かしつけようとしたところ、駄々をこねられた。
「ええ!?
ボクもクラブに行きたいのだ!
綺麗なお姉さん達がジュリアナでパリピでヤリマンなのだ!
ロストチェリーならぬロスト枝豆のチャンスなのだ!」
『風営法的に18歳未満は入店出来ない決まりだそうだから。
光戦士君は良くてもお店側が困るだろう。』
「やーなのだー!
行きたい行きたい行きたい!
やりたいやりたいやりたい!!
槍隊槍隊歩兵隊!!」
『そのフレーズは君のお兄さんも多用してたなあ。
光宙君の影響でね?
歩兵隊ネタは、ウチのクラスでも流行したんだよ。
懐かしいなあ。』
「うー! うー!」
『じゃあ、そういう訳だからそろそろ眠りなさい。』
「まだ夕方4時なのに寝れる訳がないのだ!!」
『坊門会長なんかカプセルで快眠されておられるぞ?』
「あんな死に損ないの後期高齢者と一緒にしないで欲しいのだ!
ボクも遊びたい!!
何か遊ばせて!!」
『うーーん、そうは言ってもなあ。
ここは単なるカプセルホテルだし。
6階の漫画コーナーでも行って来るかい?』
「天下の金本家を越える漫画コーナーなど存在しないのだ!」
『ああ、確かに。』
「…ねえ、リン兄ちゃん。」
『ん?』
「ボク、この酸素BOXに入ってみたい。」
『酸素BOX?』
「響兄さんが言ってのだ。
故障したピッチャーは酸素BOXでリハビリするって。
ボク、そういう修行パートに憧れたのだ。」
『ふむ。
まあ、それくらいなら。
いいよ、行ってきなさい。
代金は払っておくから。』
「ひ、1人では不安なのだ!
兄ちゃんも一緒に来て欲しいのだ。」
『えー、私はあまり興味はないなあ。』
「でも、兄ちゃんは最近まで車椅子だったのだ。
《リハビリ促進》ってポスターに書いているのだ!」
『そっか。
リハビリかぁ。
クュ医師からも怠るなと戒められているしな。
わかった、私も入ろう。』
「やったーなのだ!」
そんな遣り取りがあったので、サウナ併設の酸素BOXに入る事になった。
最初ははしゃいでいた光戦士だが、すぐに飽きて退屈しだす。
「ねえ、暇ぁー。」
『だから言ったじゃないか。』
「やっぱり出たいのだ。」
『店員さんが言ってただろう?
90分は密閉で出られないって。』
「ねえ、何かやることなーい?」
『君にはスマートホンがあるじゃないか。
それで何か出来ないのかね。
ゲームをしたり、友達と電話したり。』
「だーかーらー。
友達の居ないボクに電話なんか。
あ! 鷹見夜色!
着信数3784回!」
『それストーカー規制法を適用するべき場面だぞ?
どうする?』
「どうするも何も…
兄ちゃんへの電話なんだから兄ちゃんが電話するべきなのだ!」
『えー、私かぁ?
嫌だなあ、なんかキショイ。』
「ほら、ボクの退屈しのぎの為に犠牲になれなのだ!」
(中略)
『ほらね、糞だっただろ?』
「凄くキショかったのだ。」
『ま、時間は潰れたから
そこは良かったかな。』
「でも、まだ5時前なのだ。」
『あッ!!!!』
「な、なんなのだ!?
兄ちゃんは知らなくても仕方ないけど
いきなりデカい声出すのは健常者の間では禁止カードっすよ?」
『し、しまった…
恩寵の儀を忘れていた!!』
「あ!!!
偽札が出る時間!!!」
『あ、ヤバい!
今の正確な時間は!!??』
「16時59分56秒なのだー!!!」
『気道確保ッ!
対ショック姿勢ぇーーー!!!!』
《157億1414万円の配当が支払われました。》
『ぐ、ぐっわあああああああああ!!!』
「う、うわああああああああああ!!!」
その瞬間!!
質量が爆ぜた!!!
膨大な紙がそこまで大きくない酸素BOXで急速膨張する。
札束にしてしまえば大した量でもないと思うのだが、紙片が俺達に襲い掛かる。
『がぼぶげええええええ!!!』
「ごぼごぼごぼごぼごぼ!!」
ヤバい、小柄な光戦士が札に埋まった!!
くっ、幣位が俺の首元まで上がって来る。
そしてカネは止まる気配をみせない!!!
『うおおお! 光戦士! 掴まれぇ!!!』
「がっ、げぼお、げぼお!」
『第3波ッ、来るぞーーー!!!!』
「がはっがはっ! も、もう駄目なのだ!!」
『諦めるなぁーー!!! 兄さんの分まで生き残るんだ!!』
「こ、この偽札野郎、何を名台詞みたいに…」
『はあああ、はあああ!!
何とか幣位は落ち着いたが…
くっ、天井との隙間が20センチもない。
まずい、酸素が薄くなってきた。』
「酸素BOX内で酸欠死とか…
ダーウィン賞確定なのだ…」
『ぐっ、意識が遠のく。
父さん… みんな…』
「ああ、ピカ兄ちゃんが川の向こうから手招きしてるのだ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこでブラックアウトする。
光戦士の言葉に釣られたのか、眼前にある筈もない大河が見える。
遠くて見えないが、母校の制服を着た連中がこちらを見ている。
ヒョロっと四肢が長いのがきっと金本光宙だ。
大柄なのは岩田君だな。
その隣に小柄な少女が居て、必死に手を振っている。
胡桃亭を売ってやった時も、あんな風に必死だったな。
どれだけ思い出そうとしても、それぞれの顔は識別出来ない。
不思議と、サッカー部の橋本の顔だけが克明に映し出される。
きっと《アポを忘れるな》という潜在意識からの呼びかけなのだろう。
参ったな、俺アイツが嫌いなんだけどな。
嫌いだからこそ行かざるを得ない。
個人的な好悪で供養を差別するなんて宗教家として許されないからだ。
「コリンズさん!!
俺、3Pなんて初めてッスよ!!
夢だったんです!!」
不意に叫びが聞こえる。
ハンス・ヴェルナー。
俺の所為で死んだ男。
『…楽しんでますか。』
叫びが聞こえた方向に問い掛けるが赦しは聞こえて来なかった。
当然だろう。
俺に俺を赦す予定はないのだから。
「オマエ、すっかり男の顔になったよ。
じゃあな、コリンズ。」
勿論、振り返らない。
最愛の人に慰められる資格はない。
彼岸の友よ。
どうせ俺の旅路もそこに続いている。
だから、安らかに眠れ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「トイチさん!!」
目覚めた俺を抱きかかえていたのは後藤。
派手に破損した酸素BOXの扉を見て大体の経緯を理解する。
振り返ると光戦士がスマホでアニメを見ながら笑い転げている。
どうやら、ダメージは俺の方が大きいらしい。
『ハアハア!
後藤さん。
俺は何分昏倒していましたか?』
「ほんの数時間です。」
聞けば、全ての後始末は完了していた。
後藤・江本・寺之庄・坊門と、異常に仕事が出来る同行者で固めていたお陰である。
彼らは全く取り乱す事なく、ホテル側を懐柔してしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
188億7800万0000円
↓
1208億7800万0000円
↓
1365億9214万0000円
↓
345億9214万0000円
↓
325億5214万0000円
↓
324億5214万0000円
↓
324億5014万0000円
※合計1020億円を預託との報告
※配当157億1414万円を取得
※元本1020億の確認。
※配当用の20億4000万円を別途保管
※ビルオーナーに詫び料1億円支払い
※オーナーの許可を得て従業員に計200万円のチップを贈呈。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
現在、坊門がビルのオーナーと談笑中とのこと。
意外にも例のアルファードで助太刀に来た大西が無双してくれたらしい。
『恩賞1千万円。』
「貰い過ぎじゃわw」
『お釣りを頂けるのでしたら…』
「窃盗の情報じゃろ?」
『御存知の範囲で結構ですので。
無論、ささやかながら警察パイプは確保しております。』
「神戸拠点のオレオレ詐欺グループ。
多分、ここが色々な大元じゃわい。
県警がどこまで把握しとるかまでは知らんけど。」
『和牛には関わってますかね?』
「さあ。
やけど、みんながアソコに上納金払うとるけん。
叩けば埃は出るんちゃう?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
324億5014万0000円
↓
324億4014万0000円
※大西竜志に恩賞として1000万円を贈呈。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ああ、このカネの使い方は有意義だな。
治安とか防衛とか、そういうインフラになら幾ら出しても惜しくないわ。
「ガルパン君、これからどうするんや?」
『いや、普通にクラブ行きますけど。』
「どの面下げてwww」
俺も随分俺の使い方を理解してきた。
多少揉めても構わない、多少の騒動は構わない。
兎に角、動き続けることだ。
俺が動くという事はカネをバラ撒くことと同義なのだから。
そう。
故に、この世で俺だけは止まってはならない。
【名前】
遠市・コリンズ・厘
【職業】
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 13
《HP》 慢性的満身創痍
《MP》 万全
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 悪魔
《精神》 吐き気を催す邪悪
《幸運》 的盧
《経験》 52669
本日取得 0
本日利息 6059
次のレベルまでの必要経験値29241
※レベル14到達まで合計81910ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利13%
下3桁切り上げ
【所持金】
324億4014万0000円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
荒木のカバン
天空院翔真写真集vol.4
白装束
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
『100倍デーの開催!』
× 「一般回線で異世界の話をするな。」
『世襲政権の誕生阻止。』
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
「空飛ぶ車を運転します!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
『遠市王朝の建国阻止。』
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 『日当3万円。』
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
×警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
「オマエだけは絶対に守る!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げたのんます。」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 『子ども食堂を起ち上げます。』
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
DJ斬馬 『音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用します。』
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
金本聖衣 「同上。」
天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
〇小牧某 「我が国の防諜機関への予算配分をお願いします。」
阿閉圭祐 「日本国の赤化防止を希望します。」
坊門万太郎 「天空院写真集を献納します!」
宋鳳国 「全人類救済計画に協力します!」
堀内信彦 『和牛盗難事件を解決します。』
内閣国際連絡局 『予算1000億円の確保します』
毛内敏文 『青森に行きます!』
神聖LB血盟団 「我々の意志を尊重する者が必ずや遠市厘を抹殺するだろう。」
大西竜志 「知り得る限り全ての犯罪者情報の提供。」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
〇鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」