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【転移40日目】 所持金33億7900万0000円 「紙は紙でも神より良い紙だ!」

目が覚めてから着替えようとすると背後から声が掛かる。



「リン。

風呂に湯を張ってある。

先に入っておけ。」



『おはようございます、猛人さん。

朝食が終わってからでは駄目ですか?』



「いや、地元の者が挨拶をしたがっているようだからな。

念の為に身だしなみを整えておけ。」



『挨拶…

ですか?』



「一昨日会った連中がな?

オマエが出立する前に礼だけでも述べさせて欲しいと申し出ている。」



『…岐阜とか三重とかの議員さんですよね?

最後に話した7世帯?』



「ああ、掃除を手伝ってくれた連中だ。

全員近辺に分宿している。

先程、飯田君がメール応対してくれていたが…

どうする?」



『…承知しました。

挨拶を受けます。


…朝食、多めに用意できますか?』



「いや、それが…

ここら辺に良い店が無くてな。」



『昨日の食材、まだ残ってますか?

特にパンとノンアルコール飲料。』



「パンならそれなりに。

飲み物はワインなら余っている。

数は少ないがノンアルコールワインもだ。



『それだけで結構です。

予定が合えば、朝食を共にしましょう。


俺は身を清めて参ります。』



「わかった。

皆に伝えておこう。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



丹念に身体を洗い、丁寧に拭く。

湯船にはくぐる程度にしか浸からなかった。


服を着ようとして、チョイスに迷う。

俺はjetとエモやんから貰った服しか持っていない。

別にこれで押し通しても良いのだが、それも傲岸だ。


考えた末にフォーマルな衣装を用意する事を決意した。

と言っても、俺が纏った事のある正装は神聖教団の法衣だけである。


…まあ、地球側には妥協して貰うか。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



着替え終わった俺は、皆が上げてくれたレポートを読み漁る。

飯田・寺之庄・後藤・江本・安宅。

皆が俺の知能に合わせたレポートを丁寧に上げてくれている。


昨日の今日で恐縮なのだが、穀物倉庫・ばら積み船の売り主や相場を皆が調べ終わってくれていた。

船の相場など想像も付かなかったのだが、案外安かったので驚く。

(寧ろ船体よりも維持費が問題。)

今の俺の手持ちで人類を十分に救済可能な事が判明したので、とても清々しい気分になった。


うむ。

いよいよ全ての人民が平等に救済される日が目前に迫ったのだ。

思わず目頭が熱くなるが、ぐっと堪える。


油断してはならない。

一部の蒙昧な者は必ず俺の妨害に回るだろう。

崇高過ぎる理念は、俗人の目には悪徳か何かと映ってしまうのだから。

俺は最後の最後まで絶対に気を抜かない。


正義とは、完遂して初めて正義なのだ。


挿絵(By みてみん)



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「トイチ君。

吉永先生が来られた。

野村社長もさっきホテルを出られたそうだ。」



『ありがとうございます。

すぐに向かいます。』



「ああ、ゆっくりおいで。

向こうもリビングのソファーでくつろいでいる。」



『これ以上のんびりすると逆にしんどいです。』



「急がば回れ、万事にね。」



『肝に銘じます。』



寺之庄に気負いが悟られてしまったのかも知れない。

少しクールダウンするか。

俺の事は俺以外の人間にこそよく見えているのだから。



リビングに通されると、すでに皆が着席しており、パンとワインだけが並べられていた。

来客は二人。

やや表情に緊張がある。


岐阜の地方議員、吉永幸成。

てっきり30代かと思ったが40代後半らしい。

当選3回、見た目に拠らず地方行政に熟達している。

肉を焼くのを代わってくれた。


伊勢志摩で養殖業を営む野村東。

関ケ原前から根強く蟠踞している有力な家系

先日、毛受翁に引き合わされた議員とも面識があるとのこと。

従業員を連れて会場案内を手伝ってくれた。


この2人は一昨日残った7人の中でも特に熱心だった。

入れ込んでいるからこそ、我が校の集団失踪事件からポンジ合戦まで全ての流れを把握している。


挨拶も贈答も既に終えているので《私に望む事はありますか。》と率直に問う。

直訳すれば、《こちらからは用が無い》という意味である。



『お二人の願いが相反していないなら、意に沿いますよ。』



冗談めかしてそう付け加えると、ようやく二人の緊張がほぐれた。

まずは吉永。

要望は極めてシンプル。

岐阜に俺を誘致したいとの趣旨。



『誘致ですか?』



「妻の実家が不動産業を営んでおります。

全国的には無名ですが、美濃においては誰もが知る大手です。

遠市先生が諸国で徳を積まれている事は伺っております。

場所を提供させて頂けませんか。」



成程、目敏い。

俺の使い道をよく理解出来ている。


『大型のキャンピング場があれば長期リースさせて頂けませんか?

高速の降り口から近ければ助かります。』



「羽島と養老で思い当たる物件があります。

後ほど報告を送らせて下さい。」



手短に話を区切ると、吉永は野村に振り向き発言権を譲った。

野村は吉永に品よく会釈して、目線で俺に《話をしても構わないか?》と訴える。

俺が頷くと野村は口を開いた。

この男も非常に率直。



「神聖教に帰依する方法を教えて下さい。」



やはり、この男も巧いポイントを突いてくる。

そうだよな、アーリーアダプターにそこまでの馬鹿は居ない。



『近年では、入信手続きが煩瑣かつ強制的になっているのですが…

本来は互助善隣を呼び掛けた単なる問題提起グループです。

帰依も何もありません。

隣人を助け、皆が平和で豊かに暮らせる社会作りに貢献する者は、等しく神聖教徒の同胞です。』



「素晴らしいお考えです。」



『ただ、野村社長がお尋ね下さったのはそういう事ではなく、組織としての神聖教団に加盟する方法なのでしょう。


結論から申しますと、加盟方法はありません。

私に拡大意志がなく、また宗教法人として登記する意思が無いからです。

生活上の便宜から法衣を用意しようと考えておりますが、特に神聖教のものにデザインを似せるつもりもありません。』



「…法衣ですか?」



『ええ、お二人を迎えるにあたってもう少しフォーマルな服装をしたかったのですが。

これは、そこに居る江本さんのお下がりでして。』



話はそれで終わりである。

二人が教義を尋ねて来たので、聖典を簡略化して伝える。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【神聖教団の教義根幹  ~開祖の言葉~】


・人間はみんな平等です。

・富は独占してはならず、分かち合わねばなりません。

・暴力や戦争は悪い事、まずは話し合いで解決しましょう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



期せずして御開祖様が征服王エドワードに述べた言葉を一言一句違えず語ってしまった。

少なくとも、聖典には御開祖様が実際にそう発言したと記載されている。

フェリペ司祭もなあ。

カネや選挙の話ばかりせすに、こういう大事な話を聞かせて欲しかったなあ。

真面目に接してくれれば、寄付くらい幾らでもしてやったのに。


後日譚。

引見の翌週、教義を危険視した王国の凶刃によって御開祖様と高弟達は非業の死を遂げた。

そりゃあね、真正面から封建君主を否定した教義だもんね。


2000年後。

王国を侵食した教団は容赦無い資産接収と怪物の召喚を行いその崩壊の引き金を引いた。

見ようによっては報復だが、2000年間も国家に協調したとも言える。


さて、俺はどちらかな?



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



出発間際、阿閉なる近江の豪農が尋ねて来る。

当然の様に議席を持っている。

この男も7家族の一員である。

俺の再分配論を警戒しながらも、当面の行動に関しては概ね賛同してくれている。

どうやら思想的な妥協点を探りに来たらしい。

どのみち米原で降りて宮田に挨拶する予定だったので、キャラバンに伴走する事を許す。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【遠市パーティー行動表】


①西進組


寺之庄  (側近、運転手)

金本   (大阪にて別離)

後藤   (大阪にて別離、身辺整理、関西圏勢力との折衝)

江本   (同上)

阿閉   (滋賀県ガイド)



②東進組 


安宅  (倉庫購入)

鳩野  (安宅のサポート)

平原  (身辺整理、鯨狩猟準備)



③待機組


飯田  (残務整理・中京圏勢力との折衝)

毛受  (飯田の補佐・人脈仲介)



【所持金】


28億3145万6410円

  ↓

26億3145万6410円

  ↓  

24億3145万6410円

  ↓

22億3145万6410円



※関東対策に工作費として2億円支給

※中京対策に工作費として2億円支給

※関西対策に工作費として2億円支給



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



改めて飯田に謝罪。

明らかにこの男の負担が過大である。



『帳簿とかお釣りとか不要なので、2億はご自由に使って下さい。』



「そうだね、派手に遊び歩くとするよ。」



言葉とは裏腹に瞳は真摯だ。

こんなに真面目な男だと知っていたら、早々に纏まったカネを退職金として渡して幸福になって貰ったのに。

いや、そもそも俺なんかと出逢わなければ、飯田清磨は平穏な日常を続けることが出来たのだ。


この男は俺にコミットし過ぎた。

既にネットにも俺の秘書として本名と顔写真を晒されている。

もはや添い遂げるしかない。



「リン君、チャリティBBQの話だけど

残りの46都道府県でもやってみよう。

ほら、SNSでかなり好評だろ?

《名古屋BBQを見た方から要望があったので。他都道府県でも開催します。》

とアナウンスすれば、自然に全国で開催出来る。」



『…私に出来るでしょうか?』



「もうね、リン君は名前だけ貸すステージに来ている。

信用出来る人間にお金だけ払って、実務をやらせて…

開会と締めのスピーチだけを君がやる。

幾らでも協力希望者はいるよ?

現時点で岐阜・三重は確保済みだよね?

静岡は鈴木社長にお願いすれば喜んでやってくれると思うし…

ヒロノリ君のコネで福井でも開催出来るだろう。

君が思っている以上に簡単だよ。」



『…確かに。

地方を回っているだけで実現しそうですね。』



「この後、岡山まで足を伸ばすんでしょ?

ほりけん@氏に会う為に。

断言するけど、中四国の協力者も普通に獲得出来るよ。」



『…やってみます。』



飯田と固く抱擁し再会を約束する。

この男には何かの形で報いなければならない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



寺之庄が運転する車両に阿閉も乗り込む。

2人で後部座席に移動し、改めて互いの自己紹介。

地主の阿閉は俺のチャリティが共産主義運動に変化するのではないかと心配している。

気持ちは理解出来るが、仮にそうだったとして翻意させる方法はないだろう。


『資本の国有化を必要とする共産主義と異なり

私が行うのは分配のみですので御安心下さい。』


当然、余計に不安そうな顔をされる。

確かにな、俺が資本家でもビビるわ。

ぶっちゃけ共産主義革命よりも危険度は高いだろう。


一旦米原で高速を降りて宮田がストックしていたイノシシを殺害する。

これに優る自己紹介などある筈も無い。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


22億3145万6410円

  ↓

22億2345万6410円


※宮田大輝に800万円を支払い。


(日当20万円+イノシシ捕獲褒賞240万円+シカ捕獲褒賞40万円+慰労費500万)



【推定経験値】


イノシシ6匹

40×6=240ポイント


シカ2匹

20×2=40ポイント


《経験》 29360→29640


※レベル13到達まで合計40950ポイント必要

※経験値計算は全て仮説



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『宮田さん、色々準備して頂いたのに申し訳御座いません。

事情があって、狩猟は継続しない事になりました。』



最近はイノシシ80匹分強の経験値が自動的に入って来ている。

お互いにもうリスクを負う必要はない。



「いえいえ!

色々、備品を支給して頂きましたし

こんな纏まったおカネ…

想像もしておりませんでした。」



『恩返しの意味も込めて提案があります。』



「おお! 遠市さんの提案なら大歓迎ですよ!」



俺は率直に47都道府県BBQイベントの構想を話す。

この件に纏わる滋賀利権に関しては宮田に譲渡しても良いとも明言した。

敢えて阿閉の前で話したのは、断りにくくする為、何より相互監視させる為だ。

2人共大人なのでそれがわからない程馬鹿ではない。

なので、『このような形になってしまい恐縮です』と頭だけ下げておく。

俺にコミットする事には明らかに多大な金銭的価値があるので2人は顔の前で大袈裟に手を振りながら《いえいえ》を連呼する。

もっとも、来年も金銭に価値がある保証などどこにもないが。


悪いようにはしない。

全人類に対し平等に悪いようにはしない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



宮田・阿閉と別れ、再度高速に乗る。

草津ICでトイレ休憩をしてから、小一時間掛けて大阪入り。

後藤江本は身辺整理の為に一旦実家に帰っていった。

道が空いていたのですぐに千林に辿り着けた。

商店街に車両は入れないので、寺之庄は京阪国道沿いの駐車場で待機。

光戦士1人を連れてアーケードに足を踏み入れる。



「ボクの名前はずんだもん。

パパ上からDQNネームを授かったので、将来は絶対に普通の就職は出来ない哀しき枝豆なのだ。

いやあ親は選べないっすね。

ここは千林商店街。

何度か動画で紹介した事もあるボクの生まれ故郷なのだ。


地下鉄谷町線千林大宮駅から京阪千林駅にアーケードを歩いて行くと…

はい、今市商店街と交差するT字路に《洋菓子のカネモト総本店》がありますね。

相変わらず商店街規約を無視した立て看板。

オーエスドラッグさんの敷地に平然と侵食しているのだ。

あ、店員さん。

いつも叔父上が迷惑掛けて誠にゴメンナサイなのだ。

はいはい、看板を下げりゃあいいんでしょ。

よいしょよいしょ。

ドラッグストアにはみ出しを注意されるなんて弊社くらいのものなのだ。


振り返れば掟破りの全選挙ポスター上書き宣伝ポスター。

自公民共維N社幸に纏めて喧嘩を売る全方位狂犬戦略よ。


賢いボクは近隣店と揉めない選択肢を選ぶんすよ。

弊社は中内功、ウォルト・ディズニー、横山ノック、三木谷浩史と4連戦してるっすからね。

これ以上世論を刺激するのはイタイイタイなのだ。」



『へえ、駅からアーケード繋がってるのはいいよね。

なるほど、このまま進むと京阪電鉄に乗れるのか…』



「雨に濡れずに大阪と京都に行ける神立地。

大阪三大商店街! 激安の聖地!

それがこの千林商店街なんすよ、もんもん。

立地が良過ぎて出戻りBBAがこどおば籠城してて困るくらいなのだ。」



  「誰が出戻りBBAやねん!! (ドカッ)」



「ぐえっ! セブオバチャン!

どうしてボクが店の前に居るってわかったのだ!?」



  「アホ、ずっとアンタの配信見とったわ。

  ディズニーとの決着はまだ付いてないから口に出したらアカン!

  最高裁の判決が出るまでは互角やねんからね!」



「リン兄ちゃん、紹介するのだ。

この人がボクのパパ上の妹。

金本七感カネモトセブン

ボクやピカ兄ちゃんはセブオバチャンって呼んでるのだ。」



  「あらあ、キミがトイチ君?

  ピカ君のお葬式してくれてありがとうねぇ。

  いやあ、配信で見るより小っちゃい子やわあ。

  せめて人権身長あれば良かったのにねえ。」



『はじめまして、遠市厘と申します。

甥御さんには生前お世話になりました。』



  「クロ兄ィーーーーーー!!

  トイチ君きはったでーーーー!!」



店頭でそんなやり取りがあり、無駄に豪華な総本店にお邪魔する。

一階フロアは関東支店同様にありとあらゆる著作権を侵害していた。

ゆっくり動画のキャラが好評なのか、巨大なきめぇ丸ケーキが店の中央に鎮座している。

その横には安倍総理やドナルド・トランプや福沢諭吉や西村ひろゆきを模したケーキが陳列されていた。

ふむ。

金本宇宙率いる関東支店がアニメ冒涜に特化しているのとは対照的に、金本聖衣率いる総本店は実在人物愚弄に寄せてあるらしい。

やはり兄弟といえど軒を分かつと徐々に経営方針が乖離していくものだな。



「どうもー。

金本聖衣カネモトクロスでーす。

いつも動画拝見させて貰ってまーす。

身内が纏めて世話になっててゴメンねー。

あ、クッキー食べる?

安倍晋三遺影クッキー。

結構売れてんねんで?

左翼にも右翼にも売れる商品って初めてやわ。

売れるのは嬉しいんやけど。

メルカリで転売するアホが多くて困っとるんですわ。

まったく、アイツラときたら

神聖なるワイの著作権を何やと思っとるやろね。」



『はじめまして。遠市厘です。

甥御さんには生前お世話になりました。』



「コスモの奴から聞いたでー。

異世界転移楽しかった?」



『あ、いえ。

まあ、悲喜こもごもでした。』



「ピカの奴、夢が叶って羨ましいわぁ。

トイチくーん、今度異世界行く時はワイも連れてってチョーダイね。」



『あー、どうでしょう。

不用意な往来は摩擦の元でしょうから。

だって我々の目からは区別が付かないスラブ人同士ですら

血みどろの戦争をしてるんですよ?』



「あっはっは、地球人にも困ったものですなー。

じゃあ、ワイの持ってる製菓知識!

これを異世界に持ち込めば無双出来るんちゃう?」



『うーん、地球のレベルが低いとまでは申しませんが

異世界菓子は相当レベルが高かったですし、レパートリーも豊富でした。』



「はえー。

異世界にも菓子屋があるんでっかー。

あー、それは誤算やった。


あー、しもたー。

地球の菓子知識を持ち込んで

モテモテハーレムを作るという壮大な計画が崩壊しもうたー!」



『一緒に転移した中でレストラン兼菓子屋に婿入りした者もおりますから。

主だった地球菓子知識は既に伝播済なのでは?』



「え!?

ピカ以外にも製菓系の子が居たのん?」



『あ、いや。

卜部君の実家は…

商売はしてなかったような。』



「え!?

卜部君ってあの卜部君?

女の子みたいな顔した子?」



『ああ、ご存知なんですね。

はい、その者です。

私も彼と詳しく話した訳ではないのですが

菓子屋の親方に気に入られて娘さんを貰ったと聞いております。』



「へえ。

ワイもDiscord越しに数分話しただけやけど、モテそうな雰囲気ではあったわ。

今時のシュっとした感じの子やな。

ワイ、ホモは嫌いやけどあの子ならアリ。

異世界間恋愛アリな世界やったの?」



『私も含めてクラスメイトが何人か現地人と結婚しているので、文化的差異は少ない方かと。

無論、異世界側には打算もあるのでしょうが。』



「ピカは? ピカは?

アイツ、どう考えても非モテやけど

彼女の1人でも出来たんですやろか?」



『うーん、どうでしょう。

私は初日にクラスから追放されて…

以後はほぼ没交渉だったんです。』



「わかる!

トイチ君って典型的な追放顔してる!」



『えー、何ですか追放顔って。』



「友達居なさそう!

バイト先で理由なくハブられるタイプ!」



『いや、否定はしませんけど。

あー、それ甥御さんにも似たような事言われた記憶あります。』



「ゴメンなー、関西人はズケズケ物を言うから。」



『いえいえ、私が人と話すの苦手なので

光宙君みたいに踏み込んでくれる相手はありがたかったです。

彼のおかげで関西のイメージ良いですよ。』



「ああ。

せやから、わざわざポンジ合戦しに来てくれてんね。

あの動画、爆笑したわ。

至高のポンジ(笑)」



『からかわないで下さいよw

誰だ動画にアップした奴は。』



「いやいや、あんなオモロイ遣り取りを公開せえへんのは人類の損失やで。

ワイはアップした奴は偉いと思う。」



『そうっすかねえ。』



「せやせや。


…なあなあ、ワイも異世界連れてってや。」



『いや、宇宙さんからも頼まれてるので。』



「兄弟やねんからワイもついでに連れってーな。」



『ああ、じゃあまあ

ついでで良ければ。』



「やったぜ!


そうと決まったら前祝や!

オッチャンが千林グルメを御馳走したる。」



『はあ。』



金本聖衣に連れられ千林商店街を散歩。

70円のコーンコロッケ、110円のうどん(小)、200円のタコ焼きを御馳走になる。



「どや! 安いやろ?」



『ええ、庶民の味方ですね。』



「こうやって客をもてなすのが金本家が先祖から受け継いだ流儀ィィッ!!やねん。

ちなみに、ワイは自分の食事に関しては谷町線で梅田に出てからええモン喰うことにしとる。

腹一杯フグチリ食って、兎我野で女抱いてから、愛する家族への土産として阪神百貨店でイカ焼きを購入して帰るな。」



『なるほど。』



「そして。

この商店街をちょっと中に入ると。


じゃーん。

ここが何やかわかるか?」



『ん?

…料亭。』



「よく見てみ?」



『あ、扉に《18歳未満立ち入り禁止》と書いてありますね。』



「うん、ここは滝井新地。

旧遊郭地帯やな。」



『その割に寂れてますね。』



「元々ショボかった上に値上げしたからな。

ナンボ可愛い子揃えた所で、こんな汚い街並みで30分16000円は誰も払わへんで。

客も嬢もみんな今里に流れた。

14000円の今里には勝たれへんで。

ワイも忠告したったんやが、夜の業界の人間って意外に保守的やからな。

アイツら聞く耳持たへんねん。」



『へえ。』



相槌を打ちながらも、俺の意識は王国に戻っていた。

転移直後の俺は宿を探し回り、その売春業との密着ぶりに辟易したのだ。

地球同様、異世界の売春業も反社っぽい連中がバックについており、俺の警戒心を強く煽った。

で、リスクを避けて唯一売春婦を置かない宿を見つけたのだが…

まさかたまたま入った宿屋の女将さんがラスボスだとは思わないじゃないか。



「どや?

ピカやズンが世話になってる礼や。

一発やってくか?」



『いえ、お気持ちだけ受け取っておきます。』



もう諦めてる。

この滝井新地とやらで遊んだところで、抱いた娼婦が敵キャラとして再登場するに決まっているのだ。

…どうすれば後腐れの無いセックスが出来るのかなあ。

カネなら幾らでもあるんだが。

幾らでもあると言う事は女にその気配を悟られて粘着されるということだからな。



帰路、京阪千林駅前のダイエー1号店跡(ここにもオーエスドラッグが店舗を出している)で、金本一族VS中内一族の仁義なき安売り戦争の逸話を面白おかしく語ってくれる。

千林での覇権争いに勝利した中内家は巨大スーパーマーケットチェーンを築き、敗れた金本家は著作権侵害の闇菓子店に落ちぶれて今日に至る、とのこと。

勝った筈の株式会社ダイエーも既にイオンに完全子会社化されている事を鑑みれば、商売とはつくづく苛酷なものである。



『金本社長。』



「んー?」



『光戦士君、ここに預けて行きますよ?』



「ズンは一緒に行くつもりみたいやで?

君に随分懐いとるし。」



『いやあ、流石に中学生を長期間連れ回すのはマズいでしょう。

神奈川でも大阪でもいいんで、学校に通わせた方が良いのでは?』



「うん。

ワシも元々は通学推奨派やで?

コスモの奴にはそう言うとった。


ただな?

君と縁が出来た状態で、このコネクション放棄したらアホやろ?

誰がどう見ても君、勝ち確やん。

可愛い甥っ子には勝ち馬に乗らせてやりたいやん?

100人おったら100人がワイに賛成してくれると思うで?」



『ええ、まあ、そりゃあ、否定はしませんけど。』




「あ、勿論対価は払う。

店の奥が工房になってるんやけど、ウチは床面積あたりの生産量に関してはヤマザキパンより上やから。

洋菓子カネモトの強みはパクリだけではないねん、アレは客寄せパンダや。

親族経営としては破格の量産能力。

こっちが真骨頂や。

当然、関東のコスモも君には全面協力する腹づもりや。

役には立つと思うで?」



ふうむ。

危ない橋を渡り続けて来た商売人だけあって、売り込みも上手いな。

思わず丸め込まれそうになる。

彼らの供給能力って、大手メーカーの様に全国はカバー出来ないのだけど、イベント毎にスポットで生産させる分には最適だからな。

正直、俺とは滅茶苦茶相性がいいんだ。

しかし、その為に義務教育期間の光戦士を連れ回すというのもなあ。

道義的に問題があるだろう。

どうしたものか。



『えっと、金本社長は私が宗教活動をしている事も御存じなのですよね?』



「うん、神聖教やろ?

カネカネカネカネナンマイダー。

今、流行ってるやん。」



『え!?

流行ってるんですか?』



「いや、そんな驚いた顔されたら逆にこっちが驚くやん。

TikTokとかで普通にバズってるで?」



『あれ?

私、そんな話…

そこまで外ではしてないと思うんですけど?』



「そんなこと言われても。

トイチ君はルナルナの彼氏やねんから、言動や性癖が全世界に拡散されるのは当然やん。

たまにあの子の配信で悪意ある君の物真似を奈々ちゃん共々やっとるし。」



『マジっすかー。

それは知りませんでした。


…性癖まで吹聴されてるんですか?』



「オイオーイ。

付き合ってる女の配信くらいチェックしたれよー。

薄情な男やなー。」



…ん?

これ、俺が悪いパターン?

え?

こっちは被害者なんですけど?


…性癖?  性癖!?



『…。』



  「クロ兄ぃ、若い子の恋愛事情に口挟んだらアカン!

  それでバイトの植原君やめてもーたやん。

  今はもう昭和のノリはアカンねんで!」



「お、おう、スマンスマン。

ワイ、恋バナに目が無いねん。

異世界行ったら気を付けるから、ゴメンなー。」



  「トイチ君、3階上がっておいで。

  オバチャンがお茶入れたるわ。」



『あ、はい。

ども。』



「おーい、セブ子。

ワイの分は?」



  「クロ兄ぃは納期あるでしょ?

  アーニャキャンディー、今週中やで!

  ベッキーverのリテイク、ちゃんとやったん?」



「わかっとる!

明日には梱包まで行けるから!」



金本聖衣が横目で予約シートをチラ見しながら「お茶してきて」と謝ってきたので、バックヤードを通ってプライベートスペースである3階に誘導される。

(冷静に振り返れば、金本家の取り込み策の一環だったのかも知れない。)



「ゴメンねー、ウ↓チ→の長男話長いでしょー。

ピカ君が居った時は辛抱強く聞いててくれててんけどね。」



確かに。

今、思えば金本光宙はペラペラ喋る反面、人の話もじっくり聞いてくれたよな。

荒木の鉄オタトークにも付き合ってやってたし。



『あ、いえ。

聖衣さんも宇宙さん同様、素晴らしい方ですので

これからも懇意にさせて貰えればと考えてます。』



「コーヒーと紅茶、どっちにするー?

あら大変、クリープ切らしてるわ。」



『あ、じゃあ紅茶で。』



「ズンは何飲むの?」



  「ボクはメロンジュースが欲しいのだ!」



「はい、出枯らしの緑茶。」



  「この糞みたいな遣り取りをすると

  実家に帰って来た実感がするんすよ。」



「ゴメンねー。

今、締め切り前やからお構いも出来へんで。

ズン、そこのお菓子トイチ君に出してあげて。

ウ↓チ→、今晩中にHUNTER×HUNTERをアップせなアカンから。

人気作家は辛いわぁ。」



『え? 七感さんは、漫画家さん?

え? HUNTER×HUNTERってTVアニメの?』



  「セブオバチャンはHUNTER×HUNTERの続きを

   勝手に連載して荒稼ぎしてる人なのだ。」



『え? それって著作権…』



「ちょっとズン、人聞きの悪い事言わんとって。

連載と言ってもダークウェブ上のことやから、仮想通貨でしか報酬は受けとれてないの。

こんなんボランティアよ? ボランティア?」



  「オバチャン、あれから続きはどうなったのだ?」



「テータがツェリードニヒの妃としてナスビーに承認されたことで、ウンマ派とドゥアズル派の確執が表面化する展開にしたわ。

これにセヴァンチが食い下がる構図。

カキン王族としてのヒソカが正式に継承戦に名乗りを上げる流れはここに繋げるつもり。

ヒソカ関連の伏線回収は次々回に持っていく予定かなあ。

これ結構賛否両論でね?

ムスリム読者からは好評やねんけど、ラテン系読者は《早く暗黒大陸に行け》との反応が増えて来たわね。

前回で死に際のルズールスがバショウに託したIDチップ、要するにノンポリがキャスティングボードを握ってしまった状態ね。

それを回収に来たカチョウが怒り狂ったフェイタンに見つかる所が今週のヒキ。

思った以上に回想に尺を使っちゃったからねえ。

マラヤームとヒリンギの退場は次回に回すことにしたわ。」



『え? あの?

話の流れが1ミリも理解出来ないんですけど。

え? 冨樫先生でもない貴方がどうして連載を?』



「ちゃうねん。

これには深い訳があるねん。

トイチ君、信じて!

オバチャンは私利私欲の為にやってる訳やないねん!

稼いだと言っても、せいぜい400万ドルくらいよ?

税金は当然払わんとしても、賠償金やら追徴金で7割以上持って行かれるし

全然割に合ってへんの!

ホンマホンマ!

オバチャンの目を見て!」



『え? いや?

でもHUNTER×HUNTERの版権って集英社さんと冨樫先生が持ってるんですよね?』



「ちゃうのよー。

オバチャンの話を聞いて。

これはピカ君にも関係のある話やの。」



『え!? 光宙君にもですか!?』



  「それでは回想スタートなのだ♪」



『あの、別件あるんで手短にお願いしますね。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【旦那に溺愛されてコミケの締切がヤバい私が

断腸の思いで出戻りしたら(断じて不仲ではない!)

屑な義姉が有罪判決受けててざまぁww】




「ウ↓チ→の名前は金本七感。

スーパーハイパー美少女漫画家にして、夫と息子を愛する良妻賢母♪

今日も家業の手伝い頑張るぞい♪」



 「…う、う、ぐすんぐすん」



「あーら、ウ↓チ→の可愛い甥っ子の光宙やないの。

何を泣いてるの?」



 「ボクの友達の亀井戸クンの病気が重くなってきて

 もう長くないみたいなんや。」



「あらあら、まあまあ。

それは大変やねえ。」



 「亀井戸クンは

 《死ぬ前にHUNTER×HUNTERの続きが読みたい》

 って言ってるねん。

 せめてイラストでも見せたろ思って

 お母ちゃんに頼んだんやけど。」



「あらぁ。

晴海義姉さんは描いてくれへんかったの?

それは不思議な話やねえ。

あの人、セラムンと幽白の抱き枕+オンリー主催で荒稼ぎした人やのに。」



ドスドスドス(足音)



 「ちょっと七感さん!

 ウ\チの息子に変なこと吹き込むのヤメてくれる!」



「あーら義姉さん。

折角コミケ出禁になってんから

イラストくらい描いてあげたらええのにw

おほほほ。」



 「ピカ!

 昨日も言ったでしょ!

 ママは忙しいの!

 今期始まったスマイルプリキュア!

 これは絶対当たるわ!

 特にヒロインの母親の星空育代!

 未曽有のロングテール商品になると見たァ!

 YARIGAI搾取奴隷共を総動員して増産体制に入らねばァ!」



 「ボ、ボク…

 亀井戸クンにイラストだけでも見せてあげたいねんけど。」



 「やっかましいわぁ、ボケぇええ!!!

 グチャグチャほざいている暇があったら

 家業手伝えやあ! ウ\チは手伝わへんけど!」



「あらあら♪

晴海義姉さんは小規模事業主に嫁いできた自覚があらへんみたいやねえ。

あらあらうふふ♪」



 「ちょっと七感さん。

 さっきから黙って聞いてればアナタ。

 旦那さんと上手く行ってへんからって

 一々つっかからんとってくれるゥ↑

 アナタ、ディア×イザとかトチ狂った価値観してるから

 旦那さんに愛想尽かされちゃったんとちゃうゥ↑

 どう考えても釣り合ってへんもんねぇ↑」



「はァ↑

そっちこそ何を血迷ってはるのかしら!

イザ×ディア出禁は業界の決定事項なんですけどぉ↑

旦那からも愛され過ぎて困ってるくらいなんですけどぉ↑

ウ↓チ→、溺愛され系やれやれヒロインなんですけどぉ↑

そもそも糞不細工のコス兄ぃなんぞと結婚した晴海義姉さんほど

顔面偏差値が釣り合える人なんて全宇宙に存在しないんですけどぉ↑」



 「え? 

 …オバチャンってお父ちゃんのことそんな風に思ってたの?」



「「キー! キー! キー! キー!」」



 「2人共もうやめてよーー!!!」



「もうあったまきた!

ピカ君!

HUNTER×HUNTERの続きはセブオバチャンが描くから!」



 「ハア? 飛×蔵とかトチ狂ったカップリングする人が

 冨樫先生ぴゃんの続きを描くなんて冒瀆なんですけどぉ↑!!!」



「「キー! キー! キー! キー!」」



 「はあ。 人はどうして争うんやろう。

 ボクはどうしてこんな家に生まれてもーたんやろう。

 現実って辛いな。

 クラスの吉川君が奨めてくれた

 《ラノベ》とやらでも読んで気を休めるか。


 ふむ、《異世界》か…。」



「「キー! キー! キー! キー!」」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「こういう経緯があってオバチャンは冨樫義博を襲名したの。

私利私欲ではないの。

全部、晴海義姉さんが悪いの。」



『…金本君の心の闇の原因はやはり家庭環境だったのか。』



「あらあ、ウ↓チ→はディズニー家より結束力高いわよ?

懐かしいわぁ。

連邦控訴裁判所でのディズニー家vsカネモト家の頂上決戦。」



『よくアウェイでアイツらと法廷闘争する気になりましたね。


…あの、光戦士君も年齢的にはそろそろ高校受験も考える時期ですので

パロディは控えられた方が、良いのでは?』



「わかってる! わかってるの!

オバチャンもズンの将来の事は誰よりも真剣に考えてるの!

だからこそ、こんなに頑張ってるのよ!


その証拠に!

オバチャン、喧嘩商売の連載も再開したから。

今、控室の関修一郎(柔道)を佐川睦夫(軍隊格闘技)がガス弾で奇襲した所まで描いたところ!」



…うーーん、光戦士は総本店に置いて行くつもりだったが。

これ、教育に悪いなあ。

せめて親元に返すべきだな。



「待って!!

トイチ君怒らんとって!

これはオバチャンなりの愛なの!


あ、そうや!

いい事思いついた。

糞チビ成金のトイチ君の好感度を少しでも上げる為に

これからのHUNTER×HUNTERはチョウライに活躍させるから!


これでいいでしょ? 

ね? ね? ね?

ダークウェブやからセーフでしょ?

裁判対策にぃ!

冨樫義博の生霊を降霊したからセーフ!


《もし結婚でもして子供でもできたら

放送禁止用語名前にしようかな。ケケケケ。》


ね? ね? ね?

せめてオバチャンの誠意は認めて!」




金本聖衣とも話し合った結果。

光戦士は俺が責任を持って関東支店に帰す事になった。



『光戦士君。』



「はいなのだ。」



『大人になれば環境は自分で選べるようになるものだ。

その時、より好ましい選択肢を見つけられるように

今から頑張って勉強しよう。』



「…選べるんすかね?」



『君は難しいかもだな。』



「ですよねー。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】


22億2345万6410円

  ↓

22億1345万6410円


※洋菓子のカネモト総本店にイベント用菓子発注費用として1000万円を支払い


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ワイは、くれるもんなら犬の糞でも貰う人間やけど。

いきなりのカネは怖いなあ。

カネモトだけに。」



『近く大阪でチャリティイベントを開きます。

それを支援して頂けませんか?』



「1000万円分の菓子を納品しろと?」



『色々助けて下さい。

無論、ちゃんと健全な利益も抜いて欲しいです。』



「ふむ。

バイトの時給は1円たりとも上げへんけど

ワシは毎日ソープ行くことにするわ。」



『どうやったらアルバイト時給は上がるんですかね?』



「そらあ、賃金相場が上がって人手不足になったら

上げざるを得ないんちゃう?」



『あ、じゃあ金本さんへのオーダーを変更します。

時給3000円で人を雇ってみて下さい。』



「?

いや、雇ってどうするの?

そんなに仕事あらへんで?」



『いえ、時給を上げること自体が目的なので。

5人雇ってくれたら1000万円ボーナス払います。

TVか新聞で記事になったらさらに1000万上乗せします。』



「わかった。

やってみる。


一応念を押しておくが…

雇った人間の業務は、こっちで指定して構わへんねんな?」



『ええ。

労働基準法を遵守して下さるのであれば、私は干渉しません。』



「了解。

契約成立や。

雇ったバイトにも酷使はしないと約束する。

何せワイのカネではないからな。

腹は痛まん。」



土産を持って行くように言われたので無難にプリキュアキャンディを貰う。

人気商品の安倍晋三遺影クッキーも数箱持たされた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『ヒロノリさん。

待たせてしまって申し訳ありません。』



「お疲れ様。

ん? 光戦士君の帰省じゃなかったの?」



『…すみません。

もう少し彼を同行させて下さい。』



「いや、僕は別に構わないけど。

何かあったの?」



『こういう商品を売る店だったので。

はい、お土産。』



「うおっ、安倍総理!?

ああ、こういう死者を茶化すような行為は良くないなぁ。」



『はい、私もそう感じたので

光戦士君を連れて来てしまいました。』



「味はいいねえ(ポリポリ)」



『ええ、腕は悪くないんですよ(ポリポリ)』



「僕ねえ。

親の仕事の関係でねえ。

官房長官時代の安倍総理と話したことがあるんだ(ポリポリ)」



『あ、そっか県議をされておられるから(ポリポリ)』



「だから、知ってる人間をこんな風に茶化すのは…

ちょっと違和感あるよねえ(ポリポリ)」



『はい、まったくです!(ポリポリ)』




当初、江本の実家で食事をする予定だったのだが、いつの間にか17時が迫っている。

極力、配当が出てる間は動きたくないので、ブラインドを閉じてここで配当を出す事に決める。



『ヒロノリさん。

予定とは異なりますが…

光戦士君も恩寵の儀に立ち会って貰っていいですか?』



「え…

いや、彼の年齢では…

まだ…」



『ええ、本来であれば私も反対です。

でも、光戦士君に限っては、お兄様を亡くしている訳で…

その死因にこの能力も大いに絡んでいる以上…

黙っているのもどうかな、と。

それに、どうせ近いうちに世界がコレを知るでしょうから。』



「わかった。

僕は反対しない。

ただ、彼はまだ少年だ。

その成長が健全なものとなるよう配慮するべきだと思う。」



あの家庭に生まれ育ったにしては、光戦士は兄同様マトモだけどな。

そもそも金本3兄妹の生き方を俺は嫌いになれない。

聖衣・宇宙・七感、いずれも楽しそうな顔で(悪事を)働いていた。



『光戦士君。

私が宗教団体の代表である事は前に話したね?』



「うわーーー!!

つつつ、遂に勧誘が来たのだー!!!

恐れていた事態になったのだー。

わー国は、既にカルトが飽和してるのだー!!!

壺おとわっか大勝利ですよイタコ芸!!

カルトが多すぎて議席が幾らあっても足りないのだーー!!


あ、実家の壺クッキーあるっすね(ポリポリ)


とにかく!

ボクは宗教が大嫌いなのだ!

何をされても絶対に入信しないのだ!」



『安心しなさい。

私も宗教団体は嫌いだし、幾つかの改革案も既に準備済みだ。

今日は光戦士君に、私の真の姿を見せておきたいだけなのだよ。』



「う、うあわあーーー!!!!!

典型的なカルト論法なのだーーーー!!!!

比叡山を焼き討ちせよーーーー!!!

ボクは絶対何も見ないのだーーーー!!!!」



『はっはっは。

すまないな、もうタイムリミットだ。

お兄さんの供養も兼ねての事だ。

不躾は許して欲しい。』



「臆面もなく死者を利用したよコイツ。

吐き気を催す邪悪なのだ!!」



『さあ、光戦士君。

お兄様のご冥福を共に祈ろうではないか。


さあ御一緒に。』



「うわーーーーー!!!

カルトが本性を剥き出しにしたのだーー!!!」



『カネカネカネカネナンマイダー。』



「例のキモイ念仏キターーー!!!!」



  「カネカネカネカネナンマイダー♪」



「寺之庄さん!?

この人だけはまともな部類だと信じてたのに!

リン兄ちゃんみたいな不細工が宗教に逃げるのはまだ理解出来るんすけど。

寺之庄さんみたいなイケメンがカルトにハマってるのは絵面的に本当に怖い。

ボク、ポアされちゃうんすかね?」



『「カネカネカネカネナンマイダー!」』



「ギャーーーー!!!

宗教色のない政党助けてーーー!!!


あ、そんなのわー国にはありませんでしたね(ニッコリ)

中世ジャップランド、マジ糞っすね。

もうボクは終わりなのだーーー!!!」



『「カネカネカネカネナンマイダー!」』




《13億4561万4800円の配当が支払われました。》




「ぐわああ!!!!!

いきなり車内が謎の紙で充満したああ!!!

カルト怖-----い!!!

死ぬー!!  死ぬ―!!」



『落ち着きなさい光戦士君。

紙は紙でも神より良い紙だ!

きっと君も好きになれる筈だ。

まずは瞼を開けて自分の目で確かめなさい。』



「ぐわああ!

やめて! ボクに酷い事するつもりでしょう!

宗教行為みたいに!

宗教行為みたいに!

ぐおっつ、涙で思わず目を開けてしまったのだ。

そしてボクの手元に落ちていたのは…


意外! それは紙幣!」



『これが君のお兄様を追いつめてしまった私の能力だ。

もっとも、向こうで私は役立たず扱いされていたので…

きっと彼は私なんかより、遥かに有意義で健全な能力を持っていたことだろう。』



「ハアハア!

ハアハア…


おカネを出す能力なのだ?」



『ああ、そうだ。

正確に言えば、際限なくカネが増える能力とだけ申告しておこう。』



「相変わらずやたらピンピンしてるけど…

偽札?」



『はっはっは、安心しなさい。

ちゃんと印刷局のチェックは通過済だ!』



「うわ!!

コイツ偽札スキルの持ち主だったのだ!」



『落ち着きなさい光戦士君。

確かに権限の無い私が紙幣を発行することは違法だ。

その事実はちゃんと認識しているし、罰も受けるつもりではいる。

ただ、さっきも申告した通り…

公的機関がこのカネを本物だと判定した。

更には公安関係者にも、この紙幣を献金済みだ。


いいかい?

このカネは国家にとっては偽物かも知れないが…

このカネが支える国家は紛れもない本物だ。』



「盗人猛々しいとはこのことなのだーーー!!!!

まさか洋菓子のカネモトを凌駕する悪党が存在するなんて

世界は広いのだ!」



『うむ。

君の言う通り、百歩譲ってこのカネは偽物かも知れない。』



「…造幣局やら日銀を経由してない時点で真っ赤な偽札だと思うんすけど。」



『だが、いつか本物になる日が来るかも知れない!

そしてそれを本物にするか偽物にするかは

我々1人1人の行動に掛かっているのだよ!』



「え? ボクは現時点での違法性を指摘してるんすけど。

何を良いこと風に言ってるんすかね、コイツ。

どうりでボクの実家に馴染んでるわけなのだ。」



『さあ、光戦士君。

君の取り分だ。

遠慮なく受け取っておきなさい。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


22億1345万6410円+x

  ↓

35億5907万1210円+x

  ↓

35億5900万0000円+x



※配当22億1345万6410円を取得

※金本光戦士に小遣いとして7万1210円を支給

※出資金額不明の為、「x」と表記

※コアメンバーの承諾を得次第、出資及び配当の報告過程を割愛



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「えっと、どう考えても端数を押し付けられただけなんすけど。

っていうか、この夏目さんもピン札なんすね。

これ持ってたら逮捕されるんじゃないかとボクは危惧するのだ、もんもん。」



『一度、警視庁に拘束されたのだがね。

財務省チェックも無事に通った。


安心し給え。

合法だ。』



「賢いボクは知ってます。

色々理論武装して合法アピールする奴。

これ全員犯罪者です。

実家の食卓で何億回も聞かされた論法なのでピンと来たのだ。


このカネはこの場で返すべきなんすけど…

未成年者のボクには現時点で生活力がないのだ。

なのでこのカネを写メで撮っておくんすね、ぱしゃ♪


はい、この画像。

万が一、トイチ一派が逮捕された時に

《裁判での証拠になるかと思って撮影しておきました》

と体制側に擦り寄る道具になるんすね。


問題は体制そのものがトイチ一派に取り込まれていたケースなんすけど。

その場合は

《トイチ猊下に頂戴した記念に撮影して毎日拝んでました》

と一派に擦り寄るムーブをするんすよ。

いや、そんな状況になってたら、もうわー国終わってるんすけどね。」



『ふむ。

素晴らしいな。

流石に御一族の薫陶が行き届いている。

泉下のお兄様もきっと君の成長を喜んでくれていることだろう。』



「…弟が偽札一派の片棒を担いでたら、普通に悲しむと思うんすけど。」




さて、と。

今回、異常に配当額が多かった。

つまり巨額の出資をコアメンバーの誰かが受け取ったということだ。


えっと、俺の元々の手持ちが22億チョイで、配当が12億チョイだから…

えっとえっと。

要するに大口出資者が現れたのだろう。

タイミング的に坊門会長って人あたりかな。



  「天空院はんのポンジはカスや。」



まあ、今晩会食か何かに付き合わされるのだろう。

参ったなあ、洋菓子のカネモトで腹一杯食べちゃったからなあ。

高い食事用意されたのに若い俺の箸が進まないと、変な空気になっちゃうんだよなあ。


等と考えていると寺之庄がスマホを渡して来る。

どうやら後藤チームからの連絡らしい。




  「トイチさん、今お時間宜しいですか?」



『ああ、後藤さんであれば最優先ですよ。

ご実家は如何でしたか?』



  「あ、いえ。

  バタバタしてて、まだ立ち寄れてないんですよ。

  今、江本の店から電話しております。


  えっと、事後承諾で恐縮なんですけど…」



『坊門会長との会食ですね。

出資へお礼を述べておいて下さい。』



  「え!?」



『えっと、現在地は千林なのですが、どこに向かえば良いですか?』



  「…。


  あ、失礼しました。

  可能であれば西梅田の会長のビルで接待をさせてくれないか、とのことです。

  ヒルトンの隣なので分かり易い場所ではあると思うんですけど。」



『ああ、了解です。

それでは今から向かいます。』



地図を見る限り電車でなら15分程度で行けそうな場所なのだが、流石にこんな大金の詰まった車両を放置する訳にもいかないしな。

寺之庄に頭を下げて混み始めた国道を走って貰う。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そりゃあ駅前にビルくらい持ってるよな。

JR大阪駅に到着した俺達は坊門会長の持ちビルを見上げる。

俺はこの辺の地理に疎いのだが、恐らくは大阪の一等地なのだろう。

ヒルトンやらリッツやら俺でも聞いたことのある高級ホテルと同じ区域なのだからきっと地価は高い。


地下駐車場で江本と合流。

どうやら最上階のレストランラウンジで坊門会長が待っているらしい。




「ボクの名前はずんだもん。

家族がキチガイなので偽札宗教団体に売られてしまった哀しき枝豆なのだ。

本日やって参りましたのは大阪の西梅田駅。

奈良や兵庫の田舎金持ち共が地元で節税(笑)したカネを浪費する街なのだ。


はい、このジジーは大阪の金持ちだそうです。

接待の名目でビルを見せびらかしてます。

一体、著作権侵害ケーキを何億台売り捌いたらこんな金持ちになれるんすかね?

和服、ハゲ、ロレックス。

わかりやすいですねー。」



  「遠市猊下。

  改めまして初めまして。

  坊門万太郎で御座います。

  《究極vs至高のポンジ》には感動致しました。」



  『楽しんで頂けたようで何よりです。

  御丁寧な挨拶痛み入ります。

  遠市厘で御座います。』



「お、何か高級っぽい料理がいっぱい出て来たのだ。

食べたいのは山々なのですが…

さっき安倍晋三遺影クッキーを食べてしまった所為で、満腹中枢が拒絶しちゃうんすよね、ぴえん。」



  「あの、こちらの少年は?」



  『亡くなった友人の弟でして、彼の御両親から預かっております。

  光戦士君、坊門会長にご挨拶しなさい。』



「はじめまして、ボクの名前はずんだもん。

毒親に自分をずんだもんだと思い込まされてる哀しき児童相談所案件枝豆なのだ。

まさかこの歳で偽札軍団の片棒を担がされるとは前途万難なのだ。」



  「こ、これは凄いキャラクターが出て来ましたな。

  天空院はんもそれなりに笑えるピエロやったが…

  この子は…  全てが別格!

  国際社会で通用するコンテンツでっせ!」



  『ええ、彼の実家がかなりのやり手でして。

  面白い使い道はあるかな、と。

  ほら、こんな不謹慎な物を作ってる家なんです。』



  「あ、安倍はんを冒瀆しとるゥ!!

  ワシがアベノミクスでどれだけ儲けさせて貰ったことか!!

  桜を見る会でも優しく声を掛けて下さりましたでー。」



「そりゃあ、誰だって金持ちには優しい言葉を掛けるのだ。

このジジーがホームレスになっても態度を変えない奴だけが石を投げなさい、えい♪」



  「痛! クッキーぶつけられた。」



  『光戦士君、乱暴なことをしてはならないよ。

  会長、申し訳ございませんでした。』



  「あーいやいや、全然。

  安倍はんクッキーをずんだもんにぶつけられる経験なんてカネでは買えませんからな。

  モノ消費よりもコト消費ですな、わっはっは。」



  『なるほど、確かに。』



  「さて、今ワシは最高の経験を猊下にさせて頂いております。

  この歳になって奇跡を体験出来るとは思いもよりませんでした。」



  『いえ。

  本日、出資を頂いたと伺っております。

  先程、大阪担当の後藤に資金を預けましたので、後ほどお受け取り下さい。』



  「あの不躾なのですが、猊下は幾らくらい財産をお持ちなんでっか?」



  『えっと、あのバッグに35億入ってまして…

  配当を引くと、えっとえっと。

  純資産は30億ほどですよ?』



  「この大雑把さ! 本物の金持ちの御風格です!」



  『あ、いや計算が苦手なだけです。

  坊門会長がお幾ら預けて下さったのも、上手く計算出来ませんでしたし。』



  「僭越ながら50億円を預けさせて頂きました。」



  『ありがとうございます。

  後藤さん、今日は全体で幾らに… はい、はい。

  坊門会長、本日の出資金が90億円とのことですから…

  貴方は半分以上出資して下さったことになります。

  この場を借りて御礼申し上げます。』



  「やったで!!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



x=90億円と判明


【所持金】


125億5900万0000円

  ↓

123億7900万0000円

  ↓

33億7900万0000円



※配当22億1345万6410円を取得

※金本光戦士に小遣いとして7万1210円を支給

※配当金1億8000万円を出資者に支払い

※出資金90億円を返還



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



  「こ、この5000万円はこの場で頂けるんですか?」



  『ええ、まあ。

  早いに越した事はないでしょう。』



  「え!? え!? りょ、領収書とか申告とか。

  い、いらんのですよね?」

 


  『既に伺っておられると思いますが、領収書は不要ですよ。

  これは経済行為ではなく、神事なのですから。』



「はい犯罪者発見ー。

それ脱税ー。

早速、悪行ポイントが加算されてしまったのだ。」


 

  「ええ勿論です!!  神事です!  神事!!

  ワシは神聖教団に深く帰依しております!!

  四天王寺はんの懇親会からもきっぱりと縁を切りますよってに!」



  『本来、神聖教では他宗教への信仰を禁止しておりません。

  寧ろ、地域や親族の祭祀は推奨されていた程なのです。

  近年、ここら辺が歪められてしまっておりましたが…

  私は本来あるべき姿に戻そうと考えております。

  神聖教は既存の祭祀に深く敬意を払います。

  会長はご友人も多いようですので、貴方の口から皆に伝えておいて下さい。

  特に他宗を貶めるような発言は慎むこと。

  もしも宗教団体の皮を被った犯罪組織を発見したとしたら

  宗教者としてではなく、一市民として警察機構に通報するように。』


  

  「はい!  猊下の仰せの通りに!!」



「天才のボクは考えます。

えっと、宗教団体の皮を被った犯罪組織って

それはまさしくトイチ一派のことではないんすかね?」



  「あ、猊下! 忘れておりました。

  大阪中から一流ホステスを集めさせたんです。

  直ちに酌をさせますので!」



  『申し訳ありません。

  当面は女犯戒とさせて下さい。』



  「え!? 神聖教はセックスに関して

  何らかの制限があるのでしょうか!?

  いやあ、それは困るというか。

  カネは欲しいんですけど、女を我慢するのはちょっと。」



  『ああ、いえ。

  聖職者に関しては性方面の内部規定が多少は存在します。

  ただ在家の皆さんに対してあれこれ申しませんので…

  荒淫やセクハラはやめましょうね、程度の呼びかけに留めます。』



  「おお!! カネをくれる上に性的に寛容!!!

  神聖教って最高の宗教ですやん!!!

  ワシ、本気で信者になります!

  毎日毎時毎秒念仏唱えます!!!

  カネカネカネナンマイダー!!

  うおお、最近下火やったビジネス欲が再び湧き上がってきたあ!!

  万博株の空売りで大儲けするでーーー!!!」



「もんもん。

これって所謂一つのカルト宗教なんじゃないっすかね。

カネと女で金持ちを入信させるなんて、悪徳宗教以外の何者でもないとボクは思うのだ。

どうしてこの人達警察に捕まらないのだ?」



  『ホステスさん達ですが

  控室で飲んでいる寺之庄達を接待するように指示して頂けませんか?』



  「おお! これは気が利かずに申し訳ありませんでした!

  おーーーい! 姉ちゃんたち! あっちの別室や別室。

  粗相のないようになーーー!!!」



  『お気遣い感謝します。』



  「猊下! 実はですね、急遽帝塚山の別邸を猊下用の金庫に改造致しました!

  猊下の金庫で御座います!

  秘蔵のルノワールもワインセラーのドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティも!

  全て猊下に献上致します!

  是非明日お披露目させて下さい!」



  『ああ、いえ。

  明日、岡山に向かう予定ですので。』



  「ええ!? 岡山みたいな辺鄙な大都会に行かれはるんですか!?」



  『ええ、以前からの約束がありまして。

  現地の猟師さんと面会致します。』



  「りょ、猟師!?」



  『いや、獣害や和牛盗難が社会問題になってるでしょう?

  その解決を各地の狩猟従事者に公約しておりますので。』



  「あ、いや、それは、素晴らしいことやと思います。

  猊下は宗教家というより、本質は政治家ですね。」



  『まあ、太古においては祭祀も政務も同じマツリでしたから。

  本来宗教家には政治問題を解決する義務はあると思いますし

  同じく政治家には祭祀を援ける義務もあるのではないでしょうか?

  社会がこれだけ複雑化して来ると難しいのでしょうけど。』



  「うーーーむ、深い。

  天空院はんの2023倍は深い。」



「ゼロに何を掛けてもゼロなんじゃないっすかね?

このジジー、その場その場で勢いのある若者に乗っかってるだけで草。」



  『あ、もし天空院さんと面識があるのでしたら

  彼の写真集が手に入らないか聞いておいてくれませんか?

  私、vol.4しか持ってないんですよ。』



  「はい、お安い御用です!

  すぐに持って行かせます!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



会長が隣のリッツカールトンに宿を取ってくれていたので、御言葉に甘えて案内に従う。

何故か会長も部屋まで付いて来たので入れてやった。


改めて、寺之庄・後藤・江本・光戦士を正式に紹介し、シャワーを浴びてガウンに着替えてから晩酌に付き合った。

ふと思いつき、前から立場が宙ぶらりんであった田名部を呼び、会長に引き合わせた。

地元財界のドンを紹介するのなら、これまでの彼の献身にも報いられるだろう。



さて、明日は岡山だ。

ほりけん@と大分の浦上にさえ挨拶すれば、レベリングで声を掛けた連中への義理は果たせる。

後は淡々と鯨狩に専念して、それが一段落したら本腰を入れるか。


早めに寝よう。

【名前】


遠市・コリンズ・厘



【職業】


神聖教団 大主教

東横キッズ

詐欺師



【称号】


女の敵



【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)


《LV》 12

《HP》 慢性的満身創痍

《MP》 万全

《力》  女と小動物なら殴れる

《速度》 小走り不可

《器用》 使えない先輩

《魔力》 ?

《知性》 悪魔

《精神》 吐き気を催す邪悪

《幸運》 的盧


《経験》 32883


本日取得 0

本日利息 3523


次のレベルまでの必要経験値8067



※レベル13到達まで合計40950ポイント必要

※キョンの経験値を1と断定

※イノシシの経験値を40と断定

※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定

※クジラの経験値を13000と仮定

※経験値計算は全て仮説




【スキル】


「複利」 


※日利12%

下2桁切り上げ 



【所持金】


33億7900万0000円




【所持品】


jet病みパーカー

エモやんシャツ

エモやんデニム

エモやんシューズ

エモやんリュック

エモやんアンダーシャツ 

寺之庄コインケース

奇跡箱          

コンサル看板 

荒木のカバン  

天空院翔真写真集vol.4  



【約束】


 古屋正興     「異世界に飛ばして欲しい。」

 飯田清麿     「結婚式へ出席して欲しい。」

〇         「同年代の友達を作って欲しい。」

          「100倍デーの開催!」

          「一般回線で異世界の話をするな。」

          「世襲政権の誕生阻止。」

〇後藤響      「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」

          「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」

 江本昴流     「後藤響を護って下さい。」

×弓長真姫     「二度と女性を殴らないこと!」

×         「女性を大切にして!」   

〇寺之庄煕規    「今度都内でメシでも行きましょう。」

×森芙美香     「我ら三人、生まれ(拒否)」

×中矢遼介     「ホストになったら遼介派に加入してよ。」

          「今度、焼肉でも行こうぜ!」

〇藤田勇作     「日当3万円。」

〇堀田源      「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」

〇山田典弘     「一緒にイケてる動画を撮ろう。」

〇         「お土産を郵送してくれ。」

          「月刊東京の編集長に就任する。」

 楢崎龍虎     「いつかまた、上で会おう!」

 警視庁有志一同  「オマエだけは絶対に逃さん!」

×国連人権委員会  「全ての女性が安全で健(以下略)」

〇安宅一冬     「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」

 水岡一郎     「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」

×平原猛人     「殺す。」

          「鹿児島旅行に一緒に行く。」

          「一緒にかすうどんを食べる」

 車坂聖夜Mk-II   「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」

 今井透      「原油価格の引き下げ。」

〇荒木鉄男     「伊藤教諭の墓参りに行く。」

 鈴木翔      「配信に出演して。」 

×遠藤恭平     「ハーレム製造装置を下さい。」

〇         「子ども食堂を起ち上げる。」

〇田名部淳     「全財産を預けさせて下さい!」

 三橋真也     「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」 

 DJ斬馬      「音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用する。」

 金本宇宙     「異世界に飛ばして欲しい。」

 金本聖衣     「同上。」

 天空院翔真    「ポンジ勝負で再戦しろ!」

 小牧某      「我が国の防諜機関への予算配分」

 阿閉圭祐     「日本国の赤化防止」

 坊門万太郎    「天空院写真集を献納します!」



〇木下樹理奈    「一緒に住ませて」


×松村奈々     「二度と靴は舐めないにゃ♥」

〇         「仲間を売るから私は許して♥」


〇鷹見夜色     「ウ↑チ↓を護って。」

〇         「カノジョさんに挨拶させて。」

〇         「責任をもって養ってくれるんスよね?」


×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」

          「王国の酒…。」

          「表参道のスイーツ…。」 

×         「ポン酢で寿司を喰いに行く。」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒルダ一派の動きが見えない回、そこはかとなく恐ろしい! 写真集コンプリートできるかな?
[良い点] ボクの名前はずんだもんからのライム感が良い。ラップを聴いてるかのようだ [一言] 喧嘩商売の再開はまだですかねえ
[良い点] ギャーーーー!!! 宗教色のない政党助けてーーー!!! [一言] 転移39日目の誤字報告が反映されていないようです いつも手あたり次第の報告でご不快な思いをさせてしまっていないか心配して…
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