【転移38日目】 所持金27億3123万3710円 「じゃあ、神になります。」
【完全復活】 大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ!! [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
「どうもー。
夜猫@の夜更かし担当!
相模の不死鳥ッ!!
ルナルナ@貫通済でーーす!!!」
「どもニャー♪
夜猫@のニャンニャン担当!
仰げば尊と恩師ッ!
奈々ちゃんでーーす!!!」
「「2人合わせて!!」」
「「夜猫@でーす♪」」
「はい、最初に謝罪。」
「謝罪ニャー♪」
「同接多過ぎてコメント読めないッス。」
「滝の様にコメントが流れて目視出来ないニャ…」
「なのでコメ返しは割愛。
でも安心して、スタッフにログ取らせてるから。
面白コメントはSNSや合間配信で読み上げまーす。」
「スマンニャー♪
ところで、お姉様死に掛けてたんじゃないのニャー?」
「愛の力で復活しました!」
「本当はイベント会場に棺桶を持ち込んで
ファンのコールに合わせてお姉様が飛び出す段取りだったニャ。」
「冷静に考えたら痛い演出だな。」
「大BBAに喰らわされたダメージ
もう治ったニャ?」
「大丈夫、心臓が凹んだだけで済んだ!」
「普通は死ぬやーつww」
「実際くたばり掛けてたけどな。
ダーリン様の愛が地獄の底からウ↑チ↓を蘇らせてくれたぜ。
よっぴー、カメラ移動!」
「もう自慢したくて自慢したくて仕方ないニャww」
「はーーい、画面の前のみなさーん。
見えてますかー?
はい、このケーキはですね!
な、な、な、なんとー!
ダーリン様からの差し入れなんですねー。
見て下さいよ、この表面のコーティング!
ウ↑チ↓のアイコンに使われてるイラストですねー。
ちょっと美化してくれてますねー!」
「これ、アレだニャ?
金本君の実家だニャ?」
「そこなんですよー。
いや、ウ↑チ↓とダーリンのクラスメートにね?
金本君ってケーキ屋の息子が居たんですよ。
いや、彼の実家がケーキ屋って知ったの葬式動画作ってる時なんですけどw
散々キモオタ扱いしてゴメンね♡
わざわざね?
ダーリン様がウ↑チ↓への差し入れをね?
2人の想い出である2年B組の業者に頼んでくれたところにね?
愛を感じるんですよー。
見て! 見て!
ここのチョコレートプレート!
文字が書いてるよねえ?
文字が書いてるよねえ?
奈々、読んで!」
「えー、キショいニャ。」
「読んで!!」
「はいはい、じゃあ画面の前のみんなもご一緒にー。」
「さんはい!」
「…。
《我が最愛の妻、鷹見夜色へ》
って書いてるニャ。」
「うおーーー!!!
うおーーーー!!!」
「落ち着けニャ。」
「愛!! 愛!! 愛!!
最後に愛が勝んスよーーー!!!
オラあ、ヒルダぁッ!!!
見てるか!!!
見てるかぁ~↑
どんなもんじゃーーーーい!!!!」
「荒ぶり過ぎニャww」
「いやあ、まさかあのダーリン様が差し入れをくれるなんてね。
ウ↑チ↓、あの人を誤解してたかも知れないッス。
ああん♪
ダーリン様って稀に健常入ってる時があるからちゅき♥」
「…担任として言わせて貰えば、奴は精神鑑定オールレッドだニャ。」
「あの人、ウ↑チ↓のイベントには全然興味なさそうだったのに。
前日にサッとね、ウ↑チ↓を元気付けてくれてね、うふふ♥」
「まあ、あんな奴でも自分の女がイベント開く前日くらいは…
義務と自覚を思い出したのかもニャ。」
「はーーーい、それでは勝利宣言しちゃいまーーす。」
「えー、それフラグだニャ…」
「遠市厘争奪ッ正妻戦争ッ!!
勝ったのはぁ~ッ
このッ! 相模の獅子ッ!!
ルナルナ@貫通済様だぁーーー!!!!!
いやほおおおおおッ!!!!!!!」
「お姉様、今日が新作の発売日だってすっかり忘れてるニャ。」
「うん、告知は奈々に任せるーー。
ウ↑チ↓はケーキを食い荒らしておくー。
あ~ん♡
ダーリン様しゅきっ♥
だいちゅきっ♥
ちゅきしにゅーーーー♥」
「マジかー。
彼氏のノロケしかしないってAV女優の風上にも置けないニャ。
にも関わらず、伸び続ける同接数。
プレイなのニャ? そういうプレイが令和では流行るのニャ?」
「まあ、実際。
ウ↑チ↓は養分共のこと好きだよ。」
「どれくらい好きニャ?」
「いや、ダーリン様と出逢ってなかったら
一発位は普通にヤラせてやったんじゃない?」
「うん、何故かお姉様は陰キャ差別しないニャ。」
「ウ↑チ↓も含めて人間なんて平等にキモい生き物だからね。
わざわざ欠点を憎み合う必要もないっしょ。」
「出た!
陰キャホイホイ!
この謎理論でキモブサ共が全員沼ってるニャ!」
「いやいや、理論も何も本当にそう思ってるだけだからな。
売れっ子ホストもキモオタも、広い意味では同列だよ。」
「本音で言ってるから性質悪いニャ。
実際それでトイチなんぞと付き合ってるから…
キモブサ共が夢を見ちゃうんだニャ。」
「失礼なこと言うなよおww」
「今日のイベント、サービスしてやれニャ。」
「うん、するーー♪
来場者に黒スト天国してやるー♪」
「当日に段取りぶち壊すやーつ。
車中泊組だけでもあの人数だニャ。
一々、黒ストってたらお姉様の脚が何本有っても足りないニャ。」
「ねえ、奈々ー。」
「嫌ニャ。」
「松村先~生♪
オナシャスよ~♡」
「困った時だけ教師に媚びるやーつ。」
「いや、マジで。
それくらい人が多いんだよー。
よっぴー、窓の外を映してみて。
うん、道路沿いー。
今日はねー。
それくらい人が多いんスよー。
見て。
路肩の車、あの列は全部遠方組。
愛媛ナンバーとか富山ナンバーとか。
オマエラどんなに暇なんだよw」
「これ捌き切れないかもニャ。」
「根性!」
「でたー、精神論でリカバリー出来ると思ってるやーつ。
まあいいニャ。
可愛い生徒の晴れ舞台ニャ。
そう言うと思って!
実は、この下にはエロエロ網タイツを装着済みニャ!!
三橋!
腿コキはBAN対象か大至急運営に問い合わせすニャ!」
「え!?
マジ!?」
「ほら、見てみニャ。」
「うお! エロ教師!」
「男子生徒の97%が女教師に網タイツを期待しているという調査結果。
奈々ちゃんの脳内が受信済ニャ。」
「それ大麻の副作用じゃね?」
「大麻は安全だニャーーーー!!!!」
「ふはは。
いつか合法な国で大麻オフ会しようぜww」
「パタヤ。」
「ん?」
「タイのパタヤがヌクヌクでエロエロでヘンプヘンプだニャ!」
「わかったわかったww
じゃあ、カネが溜まったら皆でパタヤ公録しようぜw」
「次の衆院選では大麻合法化を争点に!
大麻は安全ニャ!!!」
「怖い怖い怖いww
そんなキチガイ全開のガンギマリフェイスで主張されたらww」
「ま、今日の所はおとなしくしておいてやるニャ♪
イベントイベント♪
大麻合法化の陳情に署名してくれたら、オッパイサンドしてやるニャ♪」
「うっわああ。
大麻こえーーw」
「奈々ちゃんの方がヤニカス共より健全だニャー!!!」
「はははw
ん?
何?
ああ! 安寿さん現場入りしてくれたの!?
え?
うん。
OKOK!!
ここに来て貰ってよ!!
いや全然歓迎。
どんどん告知して。」
「はい、それでは!
元祖爆乳女優の安寿りりなさんが会場入りしてくれたニャ。
画面の前のオマエラに挨拶したいってことだから。
あ、どもですニャン!
どぞどぞ!」
「安寿さん!
わざわざありがとうございます!
はい! こちらどうぞ!
椅子使われますか?
はい、はい。
それでは皆、改めて紹介します!
本日のイベントに出演して下さる!
元祖爆乳女優の安寿りりなさんでーーーす!!!
はい、拍手ーーー!!!!」
「それでは続きは安寿さんのTikTokライブで配信するニャー♪
ふわっちじゃ言えないエロエロトークに乞うご期待ニャ♥」
「三橋ーー!!
URL貼ってーー!!!」
【この配信は終了しました】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて茶番は終わりだ。
ロシア情勢がここまで悪化している以上。
俺も本気を出さざるを得ない。
昨夜大々的に報道されたことだが、ロシアが我が国への核攻撃を再度示唆した。
今度は口先だけのブラフではない。
遂に核ミサイルを搭載可能なTU160超音速戦略爆撃機が極東基地へ配備された。
今、配備式典をこれみよがしに全世界に放映している。
ウラジミール・プーチン大統領が試乗するパフォーマンス動画も東側メディア経由で大々的に報道された。
どうやら先週、NATOが日本の加盟を示唆する発表を行ったことが露上層部に衝撃を与えているらしい。ロシア核戦力の極東配備は、その発表を受けてのカウンターである。
何が何でも日本を対ロ戦に引き摺り込みたいNATO。
是が非でも中立を守らせたいロシア。
先日の荒木の解説通り、我が国を取り巻く国際情勢は急速に悪化している。
帰還した地球がここまで荒れている以上、俺もペースを上げざるを得ない。
…にも関わらず。
先日の大阪での下らないポンジ勝負である。
いや、息抜きには丁度良かったんだがな。
天空院翔真写真集も読み物として面白かったし。
ただ、イベント前日に時間を浪費した事には心からの反省。
名古屋BBQ。
今日のこのイベントで俺の指針を皆に示す。
誰もが幸福に暮らせる平等な社会。
作るのだ、俺が。
その為にも今日のイベントは絶対に失敗できない。
実質、俺にとっての公式な地球デビューだからな。
「リン。
あまり気を張り詰め過ぎるな。
リーダーの緊張は全体に伝染するぞ。」
『そうですね。
猛人さんの仰る通りです。
少しクールダウンしてきますよ。』
平原に指摘された俺は洗面所でもう一度顔を洗う。
そうだ俺が気負ってどうする。
異世界で散々学んだ事じゃないか。
金持ちが気難しい顔をしていると、場の雰囲気が一気に沈んでしまう、と。
俺はどんなに嫌な事や辛い事があっても、表に出してはならないのだ。
それが資本家の責務だ。
「リン。
夜色からメールが来てる。」
『はい?』
「えっと…
《今日がイベントだとわかってるか?》
だそうだ。」
『ん?
ああ、俺があちこち走り回ってるから…
忘れてないか心配してくれたのですね。
ははは。
幾ら俺でも、自分のイベントを忘れる訳ないじゃないですかw
今日は俺にとって最も大事な日です。』
「ふふっw
昨日はオマエ、前日なのに大阪でポンジ屋とじゃれ合ってたからなw
そりゃあ忘れてると思われても仕方ないさ。
よし、夜色の奴には《忘れる訳がない、今日は一番大切な日だ》と送っておくぞ?」
『はい、お願いします!』
無神経な女だと思っていたが、あれで案外俺を気遣ってくれてるらしい。
少し見直した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝食の為に市街地まで足を伸ばす。
外から様子を伺うと、尾張食堂の朝ラッシュは終わったようなので、パーティーを半分ずつ入店させて注文する。
「賢いボクは知ってるのだ!
このヘンテコな名古屋メシを面白おかしく茶化せば数字が取れるのだ!」
『…短期的にはそうなんだろうがな。』
「のだ?」
『光戦士君。
考えてもみてごらん。
中京都市圏の人口規模は1000万人を越えている。
また、現在中京圏から進学や就職で出ている者も合わせれば…
中京圏に所縁のある者は我が国人口の1割を越えていても不思議ではない。
たった一本の動画を盛り上げる為に、潜在顧客1割以上からのヘイトを買うのは賢くない。』
「な、なるほど。
リン兄ちゃんは顔の割に意外と考えてるのだ。」
『名古屋の食事は口に合わないのか?』
「…ボクは味噌の匂いが苦手なのだ。
枝豆的には失格かも知れないけど。」
『誰にでも苦手はあるよ。
逆に、好きになれそうな食べ物はあるかい?』
「…どれもマズそうなのだ。
味噌とかタレとか手が汚れそうで気持ち悪いのだ。
きしめんも、麺だけなら食べれるけど…」
『ああ。それは気が利かなくて済まないな。
私の器から分けてやるから、麺だけでも腹に入れておきなさい。
体調は空腹から崩れるものだからね。』
「これくらいなら食べれるのだ♪」
『うむ。
ゆっくり噛んで食べなさい。』
「…あの。
怒らないで聞いて欲しいのだ。」
『ん?』
「このお店の前の自動販売機に変なジュースがあって。
…どうせならアレを飲みたいのだ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
21億8274万4510円
↓
21億8274万4310円
※金本光戦士の為に清涼飲料水ローヤルトップを200円で購入
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ありがとなのだーー♪
ボクはジュースが大好きなのだ。
これはご当地ジュース?
ゴキュゴキュ♪
このジャンク感、最高かよ♪」
『そっちの方がいいかもな。』
「のだ?」
『苦手さを語ってる時よりも、褒めている時の方が人間は魅力的ということだ。
もしも君が本気でこういう生活を続けたいのなら。
単に嫌いや苦手を連呼するのではなく
《苦手だったけど、ここは良かった》
という妥協点を探るアプローチが好ましいだろう。
動画に限ったことではないがな。
そのジュース、気に入ったか?』
「美味しいのだー♪」
「その感動と笑顔を皆に伝えてあげなさい。
それが旅人が街に遺す義理だ。」
「ほえー。
何を言ってるのかわからんが
良い事言ってる風なのは伝わって来たのだ!」
無論、普段からそんな事を考えて生活している訳ではないが。
光戦士が金本家からの預かり物である以上、真っ当な対応を心掛け続ける義務がある。
隣席の飯田が優しく微笑んでいるという事は、先程の説諭はそこまで的外れではなかったのかも知れない。
そう信じたい。
きしめんを啜り終わった頃に毛受夫妻が厨房から出て来て、暖簾を下げてしまう。
「今日はもう店じまい。
夕方のイベントが本命だからね。」
『店主。
告知ありがとうございました。
商店街の一等地にポスターを張らせて貰えるとは思っていなかったので、助かりました。』
「いやいや!
君から十分以上の報酬を貰ったし
何より、志が素晴らしいよ。
東京の… 歌舞伎町でもボランティアしてるんだろ?」
『そんな大したことじゃありません。
友人と肩を寄せ合っているだけですよ。』
「ふふふ、謙遜謙遜。
SNSチェックしたけどさ、君の鰻丼祭りは随分評判いいよ。
私の友人達も最初は懐疑的だったんだけどね?
関連動画をチェックしているうちに、君を支持する側に回った。
アレはパフォーマンスなんかじゃないと断言出来る。」
『恐縮です。』
「その…
差し出がましい提案か知れないが…
この商店街にフリーペーパーを発行している子が居てね…
紹介しても構わないだろうか?」
『え?
ふ、フリー…
ペーパーですか?』
「ああ、失礼。
フリーペーパーというのは…
説明が難しいな。
個人で発行する新聞というか…
たまにポストとかに入ってない?」
『えっと、選挙前とか…?
運動員の人が配ってるチラシ… ですか?』
「ああ、そうそう。
そこから政党色を抜いたような…
まあいいや、斜め向かいの喫茶店の息子なんだけど
今から行ってみるかい?」
よく分からないまま、向かいの喫茶店ジューアミに。
案の定、名古屋人達がモーニングを食べている。
マスターに勧められるが、これ以上の炭水化物は拒絶、紅茶だけを頼む。
光戦士に栄養を取らせたかったのでリンゴやミカンを用意して貰った。
サービスで中日新聞がテーブルに置かれた。
ん? チュニドラの連敗まだ続いているのか?
で、そこの息子(と言っても平原猛人より年上だが)が名古屋市情報に特化したフリーペーパーを発行しているらしい。
喫茶店の2階にある編集室?子供部屋?に案内されて、インタビュー?を受けた。
「えへへー。
実は僕は意外にもニートなんだ。」
『あ、はい。
そっすね。』
意外も何も親の手伝いもせずに朝からアニメを見ているオッサンはニート以外の何者でもないだろう。
「びっくりした?」
『あ、はい。』
そりゃあね。
必死で皿洗いしている老母の横をチョコアイス食べながら通過するオッサンには驚かざるを得ない。
「親がさあ。
就職しないなら、せめて店を手伝えって五月蠅くてさあ。
あー、ちっくしょー。
僕ねえ、接客業って生理的に駄目なの。
っていうか体質が労働に向いてないのね?
疲れやすいし。
喫茶店なんて糞じゃん、僕絶対やだよ。」
『あ、はあ。』
「資本家サイドに回りてぇなあ。
そうすりゃあ、夢のメイド喫茶を開業出来るのになあ。」
『あの、喫茶は糞なのでは?』
「ちっちっち。
メイドさんは別腹だよ、デュフフ♪」
『そっすか。』
「あ、トイチ君。
今、僕の事を《駄目なオッサン》って思ったでしょー?」
『いやはや、ははは。』
「それは去年までの僕の話♪
今年からは生まれ変わったからね。
そう、この発行部数5万部の!
【月刊名古屋】によってね!」
言うなり、件のフリーペーパーを息子が広げる。
『へえ。』
「あ! 今。
《このオッサンにしてはちゃんとしてるな》
って思ったでしょ!」
『何か、予想してたよりフォーマル感あるって言うか。
官報かと思いましたもの。』
「お、流石だね。
フォーマットは官報からパクった。
名古屋人は馬鹿ばっかりだからね
体裁さえ整えれば進んで騙されてくれるんだよww」
『それで?
これの取材に応じればいいんですか?』
「うん、えへへ。
ちょっと言いにくいことなんだけど…」
『ああ、広告費的なおカネを渡せばいいんですね?』
「ええ!?
どうしてわかったの!!??」
その卑しい表情を見て分らない奴が居たらその方が驚きである。
時間が惜しいので短刀直入に聞く。
『お幾らほど包めば宜しいでしょうか?』
「…え、あ…
いや。
えっとえっと、じゃあ10万円。
って言ったら怒る?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
21億8274万4510円
↓
21億8074万4310円
※月刊名古屋編集長の坂井ゆうすけに広告費200万円を支払。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「え!? ちょ!?
え!? ちょ!?」
『邪魔なら引き取りましょうか?』
「いやいや!!
貰ったカネは返さないけど!!
あ! 領収書切らしてる!?
…どうしよう。」
『領収書いらないですよ。
あくまで、内々の取引ということで。』
「え? そう?
え? そう?
悪いね、うひひ♪
あ! ちなみに先に白状しておくと!
発行部数5万部って言うのは大ウソで、毎回100部しか刷ってない。
いや! そんな目で見ないでよ!!
タブロイドって、100部刷るだけで3~4万円するんだよ!
僕も結構カツカツなんだよ!」
『そっすか。』
「で、でも!
これで人生逆転出来たんだよ!
ほら、名古屋の奴らって見栄っ張りじゃない?
だから、こういう地方誌風フリーペーパーに騙されるんだよ!
インタビュー載せてやるって言ったら5万くらいホイホイ出すんだよ。
商店街のオッサンが広告料払ってくれたりするんだよ!
ようやく僕は金脈を見つけたんだ!」
…ポールの腐ったような奴だ。
『でも、記事はちゃんと書いてて偉いですね。』
「あ、これ中日新聞のコピペ。
後、Newsweek。」
『…そっすか。
お知り合いに記事を書ける方はおられます?』
「うん。
前に編集経験のある幼馴染を誘ったことはある。
タダでやってくれって言ったら断られたけど。」
『OK。
それじゃあ、その200万の半分を渡してその人物を雇用して下さい。』
「ええ!?
やだよ島左近ーーー!?
コピペでいいじゃん。」
『いや、ちゃんとした方を用意してくれないのなら。
この先は別の方に依頼するだけですが?』
「あーーー!!
嘘嘘ゴメンナサイゴメンナサイ!!」
『私の秘書の飯田という者を連絡役にします。
以降はその者の指示通りの紙面を作って下さい。
印刷代等、経費は全てこちらで負担しますので。』
「う、うん。」
『貴方の報道に対する情熱、素晴らしいです。
ところで話は変わりますが、丁度友人から栄のテナントを借りてくれと頼まれてるんですよ。
間取りや内装が特殊過ぎて、メイド喫茶くらいにしか使えない物件なので…
まあ任せられる人間も居ないし、この話はお流れかな。』
「はいはいはい! 立候補します!」
『じゃあ、月刊名古屋が軌道に乗ったら
編集室代わりに店舗をプレゼントしましょうか?』
「やったぜ!!!」
『まあ、とりあえず今日はBBQ大会に一緒に来て下さい。
どのような誌面を作っていくかは、おいおい話しながら決めて行きましょう。
今後経費が嵩むのであれば経費もお渡ししたいですしね。』
「はいっしゅ!
行きましゅ!!」
どのみち、近いうちにメディアを実験的に買収する予定だった。
安宅にマスコミ株を買わせる打ち合わせも進んではいた。
フリーペーパーというのは不覚にも今知った概念だが、こういうゲリラ的なのは極めて俺の好みだ。
武力を持たない俺が世に出て行くには、絶対に初撃は奇襲でなくてはならないからだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
下の喫茶室に降り、毛受翁に仲介を感謝する。
「君なら使いこなせると思った。」
言葉少なく笑いながら、毛受翁はそう言ったので
或いは彼はこの展開を読んで居たのかも知れない。
その後、ポスターを見て問い合わせして来た者と引き合わされる。
隣県三重県市会議員とのこと。
実家が地元密着のクリーニングチェーンを営んでいるらしい。
「あの…
実は遠市猊下の事はガルパン動画以降ファンとして追わせて頂いておりまして。」
『ああ、どもども恐縮です。』
「まさか名古屋でイベントを開いて下さるなんて、感激です。
ちなみに私、名大なんですよ。」
『いえいえ、こんな素晴らしい街でイベントを開けるなんて感無量です。』
まずは社交辞令から入る。
この男は中々本音を明かさなかったが、注意深く話を掘り下げて行くと本音が見えて来る。
要は次の市長選挙に出たいのだ。
それで勝つ為の売名方法を模索していた、と。
『…それで、私ですか。』
「…はい。」
『その、折角来て頂いて申し訳ないのですが…
私は猟官が嫌いです。』
「…ごもっともです。
汗顔の至りです。」
『先程、先生はクラス転移の件に言及されましたが…
異世界でも猟官者は嘲笑と軽蔑の対象になっておりましたからね?
その旨は予め伝えさせて下さい。』
市議は黙り込む。
言葉がキツ過ぎたか…
「猊下は宗教団体を主催されておられるそうですが…
寄付金などは…」
『受け付けておりません。
その予定も御座いません。』
「…左様ですか。」
あくまで平原からの受け売りだが…
地方議員には2種類存在する。
議員報酬欲しさに立候補する運動屋。
逆に議員報酬を休業補償程度にしか思っていない名士層。
三重から来たこの男は明らかに後者だ。
(実家が志摩地方でリゾートホテルを経営しているそうだ。)
要求はシンプル。
《カネを払うので今日のBBQイベントの主賓の様に扱って欲しい。》
《選挙用に写真を撮らせて欲しい》
本気度も高いらしく、200万円を提示してきた。
『200万ですか…』
思わず本音が漏れてしまう。
議員は《しまった!》という表情で
「いや、あくまで200万円は挨拶料という意味ですよ!」
と訂正して来る。
参ったなぁ。
200万なんて、この真上でアニメを見てるオッサンへの小遣いだからなあ。
っていうか俺、もう1億円以下の出資は断る様にコアメンバーに通達を出してる状態なんだよな。
『先生。
おカネの話はやめましょうよ。
あくまでボランティアですので。
お写真撮るのは勝手ですが、スタッフや来場者を絶対に写さないように配慮して下さい。
それと。
私と握手する写真の件ですが、お断りいたします。』
結局、相手の要求は何一つ呑まなかったが、客の1人としての入場だけは許可する。
不本意な回答だったのか、市議は唇を噛んで下を向いてしまった。
気持ちは分かる。
何らかの取引が成立すると思って来たのだろう。
ただ、俺は別にこの人に市長になって欲しいとは思わない。
商売人としての彼は評価している。
俺の商品価値を理解しているし、俺というリスクに臆さず飛び込んで来たからだ。
きっと優秀な事業家なのだろう。
『ただ、折角来てくれたのです。
無下にする気はありません。』
市議の顔が一瞬で晴れ、期待に満ちた表情で俺を見上げる。
『あそこに座っている者は秘書の飯田と言うのですが…
希望されるなら連絡先を交換してくださっても結構です。』
再度、市議が複雑な表情になる。
まあな、気持ちは理解出来る。
俺みたいな若造から直連絡を拒否されるとまでは想定していなかったのだろう。
「ちなみに。
私に接触して来た議員は貴方が初めてです。
そして…
ここだけの話ですが…
実は飯田は私の最初の支援者なのです。
彼とは家族ぐるみでの付き合いです。」
頭の回転の速い男なのだろう。
そこまで話すと、愛想の良い表情に戻って感謝の言葉を述べて来た。
俺は飯田を呼び、《正式に》議員とのパイプ保持を依頼する。
俺への挨拶はこれから増えるだろうからな。
早めにフォーマットを決めておかなければ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
名古屋城に向かう車内で飯田に詫びる。
『…スミマセン。
何もかも清磨さんに丸投げしてしまって。
酷使もいい所ですね。』
「あはは。
君の為になれるなら別にいいよ。」
『名古屋は全部清磨さんにお願いしていいですか?』
「えー。
僕はこの辺に土地勘も愛着もないし…。
困ったなぁ。」
『あ、別に名古屋に住む必要はないです。
とりあえず中京圏と政界とメディア関連の取次ぎをお願いさせて下さい。』
「一介の看護師に権力集中し過ぎww」
『じゃあ、フリーペーパー係で。』
「言葉を変えても騙されないぞw」
『バレたかww』
…でも実際問題、俺達名古屋に全然土地勘ないしな。
一番滞在日数の多い飯田に丸投げしたいんだよな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
宿に戻った俺達は、今日の段取りを最終調整する。
オンライン通話でjetから歌舞伎町の様子を聞く。
向こうは名古屋会場を見物しながら、協力を申し出てくれた居酒屋2店舗で振舞イベントを行う。
効果があるかは分からないが、その2店舗の宣伝を行う事を約束する。
『なあjet。
名古屋のフリーペーパー屋と仲良くなったんだけど。
広告載せて貰おうか?』
「馬鹿、東京でコネを作れww」
『ゴメンてw
じゃあ、月刊東京を創刊するよ。』
「どうせ俺に編集長をやらせるつもりなんだろ?」
『え!?
何でわかったの?』
「わかるよw
リンは考えてる事が顔に出過ぎw」
…そんなに顔に出てるかな。
でも皆から指摘されているということは、俺って感情を隠せないタイプなんだろうな。
通話が終わってから、東京側の協力者への謝礼を立て替えてくれていた安宅にカネを支払う。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
21億8074万4310円
↓
21億7074万4310円
※安宅一冬にイベント運営費として1000万円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
手筈通り、飯田が先に登城する。
現場で色々調整する係は必要だからな。
そして残ったメンバーで、【複利】に備える。
…前から薄々思ってたことだが、17時に必ず身動きが取れなくなる能力って致命的だよな。
「トイチ先生。
申し訳ありませんが本日の出資金は30億のみです。
理由はイベントの邪魔にならないように、外部からの預かりをお断りしているからです。」
『気を遣わせてしまって申し訳ありません。』
…30億か。
マズいな。
もう俺の資産と皆からの出資が逆転してしまう。
あ、ヤバい。
俺の中で出資=ありがた迷惑の構図が生まれ始めている。
参ったなぁ。
こういう事言ったら皆が怒るかもだけど、もう出資要らなくなっちゃった。
「あのトイチ先生?」
当然、数字に強い安宅は俺の心理を完全に理解している。
『大丈夫です。
仮に預かりを中止したとしても、コアメンバーの皆様には存分に謝礼をしますので。』
「やっぱりですよね。
トイチ先生の卓絶した能力を以てすれば…
我々の出資が不要になるのも時間の問題でした。
実際問題、天空院氏の掲げていたハッタリ年利を越えておられますから。」
『越えているのですか?
恥ずかしい話なのですが、私は数字が苦手でして
自分の年利を知らずに行動しております。』
「ええ!?
そうだったんですか!?」
『いやあ、面目ありません。
安宅さん。
日利12%の年利って幾ら位ですか?』
「それはとてつもない数字になると思うのですが…
運用は複利で?」
『ええ、【複利】で。』
能力名をペラペラ喋る駄目な俺。
「えっと、流石に暗算では無理なので、エクセル開きますね。
うーん。
9.21E17ですね。」
『??』
「ああ失礼。
10の17乗という意味です。
1万が10の4乗、1億が10の8乗、1兆が10の12乗、1京が10の16乗。
つまり9E17は90京倍くらいですよね。
それを%に直すために100を掛けたら…」
『掛けたら?』
「年利9000京%ですね。」
『…すみません。
意味がわからないです。』
「安心して下さい。
私もわかりません。」
安心した。
東大出身の安宅にわからないなら、俺が理解出来なくてもセーフなのだ。
1つだけ理解出来るのは、もう数十億の出資は誤差の範疇になったということだ。
…もう締め切っちゃおうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
21億7074万4310円
↓
51億7074万4310円
※出資金30億円を預かり
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時間が少し余ったので、休憩も兼ねて皆で天空院ゴッコをする。
やはり関西人だけあって、後藤や江本は茶化した物真似が上手かった。
聞くところによると、野球部では先輩の物真似が上手い者が人気者になるらしい。
俺も頑張ったのだが、まだまだ特徴を捉え切れていないらしい。
それでもッww
守りたい世界があるんだあああああwww
やってみると難しいな。
小一時間ほど天空院ゴッコで盛り上がった後、新宿署に連絡して通報しておいた。
水岡は不在だったが、俺は署内で有名人なので、すぐに面識のある刑事さん(ガルパン事件の時、この人に取り調べられた)が担当に付いてくれて、送付した昨日の討論動画も確認してくれる。
「…トイチ、大手柄だ!
物証が一番助かるんだよ。
この通報が被害を最小限に留めることだろう。
オマエの功績は非常に大きい!」
『あんなので良かったんですか?』
「ああ、例えば2分17秒の
《絶対儲かります》との文言。
これ一発アウトだから。
うん、これ金商法上で普通に引っ張れるな。
オマエの手柄だよ。
こういうポンジってさあ。
取り締まろうにも中々証拠が集まらないんだが。
動画の形にしてくれると非常に助かる。」
『いえ、功績は私に同行してくれた勇気ある少年のものです。
差し支えなければ、彼に表彰か何かをして頂けませんでしょうか?
経費が掛かるなら全額負担致します。』
「いや、経費はいい。
それだと賞の買収になってしまうからな。
撮影者がその子なら…
俺から上司に具申しておこうか?
普通に通ると思うぞ?」
『ありがとうございます!
友人の弟で現在不登校なのですが…
何とか自信を付けてやりたくて。』
「そうか。
オマエなりに色々考えているんだな。
わかった。
俺が何とかしておく。」
『ありがとうございます!』
「水岡警部も印西先輩もオマエを高く評価している。
無論、俺もだ。」
『恐縮です。』
「なあ、トイチ。
取り調べの時の俺は…
過度に厳しい態度を取っていたかも知れない。
オマエに対して不当な先入観を持っていた。
だが、それは誤った態度であったと思っている。」
『いえ、私は捜査の範疇だと納得しております。』
「…そうか。
何か困った事があったら遠慮せずに連絡して来い。
トイチなら大歓迎だ。」
昨夜のポンジ合戦。
やはり違法性はあったらしい。
まあ、ここから先は専門機関の仕事だろう。
さて、時間だ。
《6億2048万9400円の配当が支払われました。》
大慌てで俺達はカネを纏める。
【複利】の弱点。
忙しい日でも休止出来ない。
たまには休ませて欲しいんだけどな。
でも、そりゃあそうか。
カネを借りてしまったら機械的に利息が増え続ける。
父さんも随分泣かされていたものな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
51億7074万4310円
↓
57億9123万3710円
↓
57億3123万3710円
↓
27億3123万3710円
※配当6億2048万9400円を取得
※配当金6000万円を出資者に支払い
※出資金30億円を別に保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…うーーん。
数十億の出資なら、もうあんまり意味ないな。
今度から100億を下限にしようか…
駄目だ、そんな大金を皆に持ち歩かせるのは治安上の観点から良くない。
まあいい。
イベントを終えてから考えよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
車で名古屋城に登城。
イベント会場に入って運営会社の皆さんに挨拶。
背後に背広を着たオジサン達が数名並んでおり、順に挨拶を受ける。
これも愛知県内の地方議員だった。
わからない。
カネを持てばいずれは議員が擦り寄って来るだろうとは予想していたが…
俺の想定では、まだ議員が擦り寄って来るフェイズではないぞ?
何故、こんなに早い?
異世界に居た頃は超富豪だった俺だが、今は20億程度のキャッシュしか持っていない。
何より鷹見と関わった所為で、洒落にならないレベルの悪評に塗れている。
そんな俺と関わったら、選挙で不利なんじゃないか?
釈然としなかったので、岐阜で建築業を営んでいるという議員に率直に尋ねてみる。
「いえいえ!
トイチ先生は…
そんなの…
どう見たって跳ねるに決まってるじゃないですか。」
『いや、そんな抽象的な返事をされても…』
「でも現に跳ねる事は否定されないんですよね?」
そりゃあ、年内には天下を平定するか、それに準ずる結果は出しているだろうけど…
何せ、俺の年利は9000京%だからな。
『まあ、特に前途に不安はないです。』
「…そこまで勝利を確信されている方に
挨拶に行かないなんて逆にあり得ないですよ。」
『…いや、確信はありますけど。
でも、それって単に私の主観じゃないですか?』
「あの…
私は来年で還暦を迎えます。
人より相当場数は踏んで来たと思います。」
『はあ。』
「トイチ先生からは勝者特有の根拠ある自信が漂っているんですよ。
まるで、やんごとなき身分の方の隠し子か何かみたいに。
…逆にそんな表情をされた方をスルーしてしまうのは愚の骨頂かと。」
『いやいや。
私が誇大妄想狂なのかも知れませんよ。
自分を勝ち確と思い込んでる貧民かも知れないじゃないですか?』
「…でも現にイベントを開かれてますよね?
現に部下の皆さんを引き連れて入城されましたよね?
現に鷹見さんという日本一の有名人と交際されておられますよね。」
『…。』
「トイチ先生にはリアリティがあるんですよ。
上手く言語化出来ないんですけど、ポジションに対しての小慣れ感があるんです。
あの、失礼ですが…
異世界でも相当の役職に就いておられたんじゃないんですか?」
『…。』
「失礼しました!
詮索の意図はありません!
失言を深くお詫びします!」
『…いや、いい勉強になりました。
私は若造なので、年長者の方の忌憚のない御意見は非常にありがたいです。』
「恐縮で御座います。」
『何か私に望むことはありますか?』
「…まずはお近づきに!」
『承知しました。
政界担当の秘書と繋ぎましょう。』
「やったぜ!」
終始こんな感じ。
議員と不動産屋ばかりが順に名刺を持って来る。
『猛人さん。』
「んー?」
『何で不動産屋がこんなに多いんですか?』
「違う。
今、来ている連中は地主。」
『え? そうなんですか?』
「地代で喰ってるなんて言ったら嫉妬されるだろ?
っていうか、地代でプラプラしてたら世間体が悪いだろ?
名刺に地主とか書いたらアホと思われるだろ?
だから地主は資産管理の為のプライベートカンパニーにもっともらしい名前を付けて。
如何にも不動産屋として精勤しているような顔をしているんだ。
でな?
そいつらは時間があり余ってるから…
儲け話の気配があれば遠方からでも遊びに来るよ?」
『地主さんは充分カネ持ちでしょ?』
「そうだ。
にも関わらず儲け話に目敏いから更に富を増やす。」
『…貧乏人にも、そういう話って回らないんですかね。』
「回らない。
回ったとしても生活に精一杯だから会場に辿り着けない。
辿り着く為の知恵もカネも時間も無いんだ。」
『…俺の父が、丁度そんな感じでした。』
「そっか。」
『こういうサイクルって是正できないんですか?
富める者がますます富み、貧しき者は永遠に底辺を這いずり回る。
異常ですよ。
…カネを皆に配ったら、改善出来ますよね?』
「…自分が信じていない答えを他者に強いるのはよせ。
それは卑怯者のすることだ。
オマエにだけはそんな振舞をして欲しくない。」
『俺、1兆円でも1京円でも工面出ます。』
「リンなら出来るだろうな。」
『それで何とか平等な社会を作れませんかね?
同額分配したいんですよ。』
「前も言っただろう?
人類を5人くらいまで減らせ。
公平に配れる。
それでも格差は自然発生すると思うがな。」
『…。』
「そんなに弱者救済がしたいのか?」
『はい、勿論です!』
「…あのなあ。
オマエみたいな小僧に救われた時点で、大半の者はそれを屈辱と感じるぞ?
リンが励めば励む程、皆は不幸になる。
救済とは弱者の烙印なんだよ。
オマエが大衆に与えているのはカネじゃない、屈辱なんだ。
いい加減気付けよ。」
『…神。』
「ん?」
『救済者が俺ではなく神であるのならば…
人々は尊厳を保てますか?』
「そりゃあ、神なんて人間が自我や尊厳を保つために産み出した装置だからな。
オマエ程の男が本来の使い道で運用するなら、当然上手く行くだろう。」
『じゃあ、神になります。』
「それ、オマエが不幸になる事が目に見えてる選択肢だからなあ。
止めてくれると嬉しいんだがな。
俺はオマエだけには幸せになって欲しい。」
『俺の不幸で解決するならコスパ最高じゃないですか。』
「言うと思った。
そりゃあ議員になるような屑が群がる訳だわ。」
結局、不動産屋への応対は寺之庄に任せる。
同業者の平原が推薦したのだから無難な人選なのだろう。
その後も中京圏の有閑階級が挨拶に列を成した。
皆がシャンパンや和牛を持参して来たので、どれだけ参加者が居ても問題なく焼けそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
開会予定時間よりやや早かったが、人が集まり始めていたので運営会社の好意により前倒しでイベントを開く事が出来た。
後藤に教わりながら炭に火を起こしていく。
思っていたより頬が熱い。
「トイチさん、火傷だけには気を付けて下さいね。」
『今更、傷が増えた所で誰も気付きませんよ。』
後藤はクスクス笑う。
「あきませんってw
今はトイチウォッチャーも増えてますから。
もう誤魔化せませんよ。」
『後藤さんと違って私のウォッチャーって女子率低そう。』
「ヒルダさんが居るやないですかw」
『ヒルダかぁ。』
「ふふっw
鷹見さんが居るやないですかw」
『鷹見かぁ。』
「じゃあ木下さんw」
『あいつ年内に鷹見化しますよ。
私には見えるんです。』
「あの年頃の女の子は激変しますからねえ。
ちなみに猫先生は?」
『松村さんかぁ…
まあ、身体だけなら。』
「あの人、ホンマにいい身体してますよね。」
『うん。
私は常々、女性の身体は素晴らしいと思ってます。』
「嘘でもいいから人格も評価してーww」
『あははははww』
万事手際の良い後藤は教え方も上手い。
この男の指導に機械的に従っているだけで、俺の様な不器用者でも形になって来る。
さて、反対側を見ると…
よし!
以前から後藤にレクチャーされていた安宅はもっと完成度が高い。
『安宅さーん♪』
「どうもー♪」
俺が声を掛けると余裕の笑顔で手を振り返してくる。
よし!
かなり格好いい。
上手くは言えないが、良い意味で男性的な雰囲気が醸し出されている。
投資や学問にのみ発動していた有能オーラが、このBBQでも発揮されているのだ。
打ち合わせ通り、寺之庄が小気味よく写メを撮ってインスタにアップしている。
安宅がセックスするまで俺もしないと決めているからな。
頼むぞー。
腰の軽い女、安宅の周りに集ってくれー。
よし、完全に火が回った。
肉を焼いて行こうか…
ふー、結構緊張するな。
「トイチさん、リラックスリラックス。」
来場者の整理をしながら江本が笑い掛けてくれる。
『リラックスしてますよおw』
「ホンマですかーw?」
『ホンマです。』
「ああ、ちょっとイントネーションが違いますねぇ。
本間さんが居られたら振り返るレベルのホンマ違いですよww」
江本の軽妙な語り口に思わず吹き出す。
…なるほど、これがリラックスか。
あの男には敵わないな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、リラックスしたところで。
最初の客…
違うな、マスコミだ。
最初に俺の前に立ったのは名古屋の地元紙の記者。
取材許可を出した覚えはないが、矢継ぎ早に質問を浴びせて来る。
「ス●ローさんに一言!」
『特に思いつきませんねぇ。』
「岸田総理に一言!」
『私の中で総理大臣って未だに安倍さんですねぇ。』
「ウクライナ戦争について一言!」
『戦争は怖いですねぇ。』
「今回のBBQの目的を一言で言うと!」
「人類が飢えない世界を作る為の予行演習ですねぇ。」
どうやら、向こうの期待と全く違う答えだったらしい。
何かを言いたげな表情でこちらをチラチラ見ている。
「いやあ、トイチ社長はもっと恐ろしい方だと想像しておりました。
昔はヤンチャしてたんじゃないですか?」
記者は馴れ馴れしく笑いながら食い下がって来る。
直訳すれば《もっと半グレっぽい乱暴なコメントをしてくれ》ということである。
参ったなぁ。
こっちは時間を割くという形でこれだけ譲歩してやったんだがな…
オールドメディアには、そこら辺の空気が読めないか…
やっぱりマスコミは一括して管理するしかないな。
…地球でもフェルナンっぽいポジションは必要だな。
異世界終盤ではあの男に随分助けられたからな。
地球でも似たようなキャラを抜擢して運用させよう。
寺之庄…
ルックスと育ちを兼ね備えた人間が適任である事は確かなのだが。
いや、これ以上あの人に無茶振りするのも…
どうしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
列の後ろに人影が見えたのでマスコミを追い散らす。
当然肉は分けてやらない。
取材関係者には飲食を提供しないと予め告知しているしな。
マスコミの後ろに並んでいたのは男児2人を連れたヤンママ風。
『こんにちはー。』
「ねえ、ここって駐車場分かりにくいわよ!
もっとちゃんと告知して!」
『ご迷惑をお掛けします。』
「肉、3人。
ウチの子は結構食べる方だから!」
肉を盛ってやったが特に礼は言われない。
男児2人も無言で皿を引っ手繰って行ったので、そういう教育方針の家庭なのだろう。
離れ際に「全部盛りなさいよ、気が利かないわねー。」と言い捨ててヤンママ一家はどこかに行ってしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後に来たのはやけに愛想の良い男。
人当たりのみならず身なりまで良い。
『こんにちはー。』
「こんにちは!
素晴らしい催しですね。』
『ありがとうございます。
楽しんで行って下さい。』
「何かお手伝い出来る事はありませんか?」
と2度聞かれたので、仕事を作り出してやる事にする。
『それではお願いします。
この会場が分からず迷っている方が周辺におられたら
案内してあげて頂けませんか?』
「お安い御用です。」
男は全く笑顔を崩さずに会場の外へ消える。
目線でその背を追おうとするも、来場者が増えて来たのでBBQに専念する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次にやって来たのは作業着のオジサン。
表情が昏い。
『こんにちはー。』
「野菜はいらないよ?」
『え?』
「肉だけ食べさせてよ。
代金無料って本当?」
『ええ、無料です。』
「後からメルアド登録とか言われてもしないからな。」
『それも不要ですよ。』
「…。」
オジサンは皿を引っ手繰って、会場の隅に去って行く。
大きなリュック、ドロドロの運動靴。
嫌でも父を思い出す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
続いて来たのが主婦(?)グループ。
『こんにちはー。』
「接客態度が悪い30点ね。」
「こんな事なら栄の街コン行けば良かった」
「お野菜の種類が少ないわ。」
『焼けた肉です。
どうぞー。』
「飲み物の種類が少ないわよね。」
「あっちでビール配ってるみたいよ。」
「あらぁ♪ 行こ行こ♪」
グループは後ろの人に用意している分の肉まで奪って行ってしまう。
真後ろに並んでいたお兄さんが苦笑。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『こんにちはー。』
「こんにちは。
素晴らしいイベントを開いて頂いてありがとうございます。」
『いえいえ。
至らぬ点ばかりで皆様にお叱りを受けております。』
「いや…
私も仕事柄多くのイベントを主催・出席しているのですが…
こんなに行き届いている催しは中々ないですよ。」
『恐縮です。』
「あの、もしも何かお手伝い出来る事がありましたら。」
『あー、いえいえ。
来場して頂いてそこまでして頂くのは申し訳ないです。』
「ははは、チャリティじゃないですか。
皆で盛り上げたいです。
地元の私達が本来頑張らなくては。」
『ああ、それではお言葉に甘える訳ではないのですが。
私、あそこに捨てられてるゴミが気になるので、少し火を見てもらって構いませんか?』
「お安い御用です。
学生時代は毎週キャンプをしていたのでお役に立てると思います。」
『それは心強いです。』
ゴミ箱の位置もちゃんとアナウンスしていたのだが、先程のヤンママ一家が食べ終わった紙皿をベンチに放り出して去ってしまったようだ。
BBQソースも飛び散っていたので、俺は持参したゴミ袋と雑巾で周囲を清めて行く。
俺がテーブルを拭いていると背後から声を掛けられた。
「ちょっと。」
『はい、こんにちは。』
「こっちのテーブルもちゃんと拭いてよ!」
振り返ると神経質そうな老夫婦である。
彼らの傍らにタッパーが重ねてあったので思わず目線が行く。
「持ち帰り禁止とは書いてなかったよねえ!」
と老婦人に凄まれる。
なるほど、色々な人がいる。
思ったよりも来場者は少ないのだが、兎に角ゴミが散らかるので全てゴミ袋に入れていく。
想定外だったのはBBQソースを引っ繰り返す者が多いこと。
子供連れの奥さん達がひたすら机を汚し続ける。
「子供のやったことなんだから仕方ないでしょ!」
「容器が悪いのよ、これ安物なんじゃない?」
「ちょっと店員さん、早く拭いてよ!」
自分としては肉を焼くつもりで会場入りしたのだが、しばらくゴミ拾いと雑巾掛けをする羽目になった。
他の者も応対に追われていて俺の手助けは難しそうだ。
こんな事ならポールにBBQイベントの話をもっと詳しく聞いておくんだった。
思わず笑みがこぼれる。
ヤバい、地球に還って来てから一番楽しい。
さっきから雑巾掛けてるだけなのになw
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
30分ほど雑巾を掛けていると、さっきの愛想の良い男が戻って来る。
「弊社の社員に案内を任せました。」
と言う。
予想通り事業主であった。
まあ立ち居振る舞いでわかるよな。
肉は余裕をもって用意していたのだが、思ったより減りが早い。
俺が訝しんでいると、後藤がやって来て耳打ちをする。
どうやら容器に入れて勝手に持ち去る者が何人か居たようだ。
「申し訳ありません。
主婦グループがタッパーに大量に詰めている場面を遠目に見ていたのですが…
火を使っている最中だったので持ち場を離れられませんでした。」
『いえいえ。
後藤さんの責任ではありません。
性善説に基づいた企画では、どうしてもこうなりますよ。』
俺はグリルに戻り、火の番を代わってくれたお兄さんの助力に礼を述べた。
『申し訳ありません!
お兄さんも食べて下さいね。
ほら、あちらの焼き台。
大須できしめん屋を営まれているご夫妻なんです。
あそこの焼ききしめん、是非ご賞味下さい。』
お兄さんは軽やかな笑顔で毛受夫妻の元へ焼ききしめんを食べに向かった。
その後はひたすら残った肉を焼く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夢中で皆に配っていたのだが、いつの間にか列が消える。
不審に思い辺りを見回していると、向い側の安宅が「皆さん満腹ですー。」と声を掛けて来る。
彼も火を落とし始めており、どうやら一段落ついたらしい。
テーブルを眺めると各皿には食べ残しが積まれていた。
俺も後藤に指示を仰ぎ火を落としに掛かる。
施設に返却する備品を整理していると、何人かの参加者が俺の周囲に寄って来た。
『どうもー、お疲れ様です。』
「ねえ、その肉余ったんなら頂戴よ。
ウチの子食べ盛りなのよ!」
『え?』
「おい! 俺が先に並んどっただろ!」
「はぁ!? 男の人は自分で働いて買いなさいよ!
こっちは子供連れて来たのよ!」
「順番飛ばしするなって言ってるんだよ!」
眼前で口論が始まったので、不本意ながら参加者同士の間に身体を入れ、皆を呼ぶ。
何故か胸倉を掴まれて怖かったが…
幸い、すぐに後藤が駆け付けてくれ皆に土産を持たせて解散させてくれた。
その様子を見ていた他の参加者が無言で主催ブースに近寄り、勝手に荷物を覗き込み始めた。
「トイチさん、本来の時間も過ぎてますし今日は一旦終わりましょう。」
『そうですね。
では参加者の方にはもう撤収して貰いましょうか?』
「ただ、居座りたそうな雰囲気なんですよ。
特にあそこのテーブルのママ友グループとか…
さっきは勝手にビールケースを持ち去ろうとしてましたからね。」
『ああ、それなら大丈夫です。
私から声を掛けますよ。』
帰らせるだけなら簡単だ。
何せ、さっきまで俺はずっと彼らを観察していたのだからな。
『みなさーーーん。
本日はお疲れ様でしたー!
それではプログラムにもあります通り、清掃タイムに移ります。
ボランティア活動の一環として名古屋城内のゴミ拾いも行います!
手伝って下さる方だけ残ってくださーーーい。』
予測していた事とは言え、哀しい結果となった。
さっきまで余った食料の分配で口論してた参加者達は、俺が言い終わる前に姿を消していた。
後ろの方で子供をドタバタ走り回らせていた主婦達も既にどこにも居なかった。
仲間達は何とも言えない表情で俺を見ている。
少し嫌われてしまったかも知れないな。
こういう心理ゲームみたいな立ち回りは本当に良くない。
案の定、残ったのは議員やら地主やらだけであった。
彼らは率先してゴミ袋を広げ手際よく清掃を始めてくれていた。
言うまでもなく、火の番のお兄さんも周辺案内を手伝ってくれた社長もこちら側である。
誠に遺憾ではあるが…
この文化資本の有無がますます貧富の差を広げるのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
清掃を手伝ってくれた7家族に俺は頭を深く下げ、改めて挨拶と自己紹介を行う。
1人1人の名乗りに耳を傾け、商売人と政治家に分類して飯田や寺之庄に連絡先を交換させる。
「遠市先生。
このイベントのSNSを拝見しました。
先生は日本全国に、いや世界中に広められたいとお考えなのですね?」
滋賀から遊びに来ていた議員が最後に問うてくる。
『はい。
余剰が適切に分配される社会が私の理想です。』
ほんの一瞬だけ皆の反応が止まるが、次の瞬間には何事も無かったかのように笑顔で俺を大袈裟に褒め称え始めた。
…そりゃあね、この7家族の社会的地位を鑑みれば、俺の唱える再分配論は許容範囲を越えてるんだろうね。
『私は高負担高福祉社会を目指している訳ではありません。』
安心させる為にそう言ったのだが、却って彼らの不安を煽ってしまったらしく、何人かが怯えた表情になって俯いてしまった。
…難しいよな、本当に。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【イベント実況】 黒スト天国りりいべ!! [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
「はい、それでは画面の前のみんニャも!
楽しんでいって欲しいニャー♪
本日の司会進行はニャニャちゃんが務めるニャー♥
今、お姉様は来場者に黒ストサービス中ニャ♥
隣では元祖爆乳女優の安寿りりなさんがおっぱいプレスでサービス中ニャ♥
それではゲストのマグナム堀内監督。
本日は宜しくお願いしますニャ。」
「いえいえ!!
ボクみたいなロートルに声を掛けて下さって恐縮です。」
「それでは早速ですが監督。
AV女優としての鷹見夜色の魅力とストロングポイントを教えて下さいニャ。」
「そうですねー。
彼女と初めて会ったのは、コロナ前のボクが野獣企画で専属をしていた頃ですね。
AV女優っていうより、ケツモチの組の人って認識でした。
「あの頃のお姉様は今以上にオラついてたニャ。」
「丁度ねえ、ルナさんが彫り物を入れ始めてた頃ですね。
最初、刺青モノの和風SM企画があったんですよ。
ただ撮影前日に女優さんと条件の折り合いが付かなくなっちゃって。
その時、撮影用に押さえてた物件が組のものだったんですよ。
それで謝罪も兼ねて相談に行ったら、事務所にルナさんが居られて。
組の方に取りなして貰ってるうちに、何故か出演してくれることになって。
カラミなんて撮れる訳がないんで、前倒しではあったんですけど当時まだ企画段階だった麗脚崇拝シリーズに急遽出てくれることになったんですね。」
「AV女優だと思ってた生徒が実はヤクザだったでゴザルの巻ニャ…」
「それからの付合いですね。
魅力はオンリーワンの強さですね。
やっぱりねえ、カメラ越しでも伝わって来るんですよ。
生物としてのエネルギーって言うんですかね?
人を魅了する圧倒的な存在感です。」
「現に動画がバズリまくってるニャ。」
「存在感なんですよ、結局。
ボクもねー、かなりの数の女優さんとお仕事して来たんですけど。
どんなに美人でも存在感の無い人の作品って全然売れないんです。
ハードSMとか流行りのコスプレとか、どれだけ消費者に寄せても無駄。
逆にねー。
ルナさんは圧倒的ですよ。
印象に残るんですね。
だからこそ、サムネイルが並行に陳列される現代ネット商法とは相性がいいんです。」
「お姉様は比較される事を嫌がってるニャ。
ルックスコンプ持ちニャ。
やっぱり最近のAV嬢は美人ばっかりだし、サムネ並ぶと見劣りがするんじゃないかと。」
「いや、ボクの見解は逆ですね。
現代における美人の定義って、いいねを貰えるか否かが全てだと思うんです。
要は人類全員がスマホと言う名の投票スイッチを所有した状態ですよね?
で、結局ルナさんが一番バズってる訳ですよね?
じゃあ彼女が一番いい女ってことで決まりなんじゃないでしょうか。
だって数字が証明してるんだから。」
「流石は数々の実験作を世に出して来た堀内監督ニャ。
着眼点が面白いニャ。
なるほど、スマホは投票スイッチ。」
「松村さん。
今の同接って?」
「15000ニャ。」
「じゃあルナさんは、最低でも15000票は獲得してるんですよ。
これって凄くないですか?
だって夜猫@のアカウントなんて作りたてなのに、普通にいいねが数千付く訳じゃないですか?
それだけの基礎票持ってる人って政治家でも中々いないですよ?」
「ニャるほどー。
ありがとうございましたニャ。」
「いえ、こちらこそルナさんを語る場を与えて下さり感謝しております。」
「イベント終了後、マグナム堀内監督は《AV新法の功罪》というタイトルでプチ講演を行ってくださいますニャ。
講演内容は堀内監督のyoutubeチャンネルで無料公開しますニャ。
皆様、是非共チャンネル登録お願いしますニャ。
URL貼っときますニャー。
また、堀内監督の回想録《賤業!》はKADOKAWAさんから出版されますニャ。
えっといつ頃?」
「はい!
今年度末に発売予定です!」
「みんニャー、要チェックニャ!
それでは堀内監督にもう一度盛大な拍手ー!!」
「どうもー!
ありがとうございましたー。」
「ありがとうございましニャ!
それでは少しだけ会場の様子を映してみますニャ♥
お姉様ー、気分はどうニャーw」
「最高でーーーす!!!」
「ルナお姉様は暴れてる時が一番機嫌がいいニャww
今、何人くらい首四の字したニャー?」
「100人斬り越えてからは数えてない!
ストッキング原形留めてねーしww」
「殺さないように気を付けるニャーww」
「もう何人か死んでるーーww」
「はい、カメラの前の皆さん。
首四の字を受けて気分が悪くなった参加者は、あそこのゴザで転がってるニャ。
死人が出てもおかしくない企画ニャww
それではお待たせしましたニャ!
続きましては!
カリスマヤマンバ・エリザベータ舞桜さん登場ニャーー!」
「どもー、舞桜でーす。」
「色白だしww」
「ガッハッハww
あの頃は日サロの店員だったし。」
「え? そうニャの?」
「日サロ代を節約する為にぃ。
バイトしてたんスよ。
そしたらなんか流れで嬢になってたww
ガハハww」
「イメージ通りのキャラクターですニャ。」
「肌の色以外はあのまんまよ?
アタシ、演技とかできない人だからカラミも全部ガチww」
「おおう、往年のAVファンには嬉しい裏話ニャ。」
「今日は呼んでくれてありがとね。」
「いえいえ。
舞桜さんみたいな有名人が告知してくれたおかげでイベント大盛況ニャ。」
「ガッハッハww
寿司ペロちゃんには敵わないってww
アタシはステーキが好きだから、鉄板焼き屋で鉄板舐めようかな?」
「舌が火傷しちゃうニャ…」
「ガッハッハww
じゃあ、アタシも寿司屋に突撃してくるーーーwww」
「ちょ!
日本文化が死ぬニャ!!」
「ジョークジョークww
二番煎じはカッコ悪いしね。
害悪女王の座はルナちゃんに譲ってあげる。」
「いらねーニャw」
「それにしても…
あの子タフだねえ。
さっきかからノンストップでファンサしてない?
学校の頃からあんな感じ?」
「徹夜明けの目覚まし代わりに通学してたニャ。
担任的には厄介者は来ないで欲しかったけど。」
「あはははw
わかるww
あの子、絶対夜強いよねww」
「舞桜さんはどうだったニャ?」
「アタシ中卒だもん。
何故かヤマンバ女子高生として有名になったけど
ガハハww」
「え? そうニャの?」
「そりゃあ、学校行ってたらステージとか立てないじゃん。」
「ああ確かに。
あ、ステージと言えば告知してきますニャ?」
「そうねー、じゃあお言葉に甘えようかなー♥
今月30日から1週間!
西九条AK劇場にて!
体感型SMショー、サディスティックバタフライ!
特別ゲストとして出演しまーす。
アタシの仲良しの後輩であるアルバトロス蛍ちゃんが座長を務めてまーす。
頑張ってるので是非応援してあげて下さーい!」
「URL貼っておきますニャ!
開催地のJR西九条駅はJR大阪駅から環状線で5分!
関西勢は仕事帰りに是非遊びに行けニャ!」
「ありがとねー。
ふはは、ルナちゃんのお客さん嬉しそうww
ねえねえ、あの子達にもインタビューしてよw」
「相変わらず攻めてる人ニャw
オイ、そこのチー牛。
ルナお姉様の首四の字はどうだったニャ?」
「あ、いえ。
僕が首を痛めてるって言ったらボディーシザースに切り替えてくれて
股間もいっぱい触ってくれて。
生まれて初めて女性にチン●ン触って貰いました。」
「うん、オマエって如何にも女に縁のない顔をしてるニャ。
ご褒美に奈々ちゃんも握ってやるニャ。」
「ガハハww
アタシもーーーwww」
「あっ! ひえっ!?」
「典型的な非モテ反応ニャw
おいチー牛、いい思い出は出来たかニャ?」
「あ、はい。
カルチャーショックです。」
「そっか、頑張って男を磨けニャ。」
「がんばれよーww
ガハハww」
「これ絶対アカBANされるニャ。」
「でもさあ。
これだけ数字持ってたら、優遇されるんじゃない?」
「そういうものですかニャ?」
「アタシもヤマンバブームの頃は普通に地上波出てたけど。
やっぱり扱いがすっごく良かったからね。
プラットフォーマーは確かに強いんだけど、コンテンツホルダーには勝てないんだよね。
だからルナちゃんはあのままでいいと思う。
多分BANされないよ。」
「そうだといいんですけどニャ。」
「あ、あの!」
「お、チー牛2号なんニャ?」
「る、ルナルナさんはボクが守ります!!」
「あっはっはw
そいつはありがとニャww」
「おおう、白馬の騎士ゲットww」
「何ニャ?
お姉様にエロいことされて沼っちゃったニャ?」
「う、生まれて初めて女性に優しくしてもらえたから!」
「オマエ、アホな奴ニャー。
こういう奴がキャバクラにハマるニャ。」
「おめでとー、ガハハw」
「あ、あの!」
「んー?」
「んー♪」
「ぼ、ボクは世間一般で言う弱者男性なんですけど。」
「見ればわかるニャ。」
「昔から居たよ、こういう子。」
「ルナルナさんだけが弱者に目を向けてくれたから!」
「ああ、ルナお姉様はそういう所あるニャ。」
「珍しいよね、ああいう子。」
「だ、だから!!!
ルナルナさんは僕達弱者の救世主なんです!
神様なんです!!」
「ふーん。
まあ信仰の対象があるって幸せな事ニャ。
おい2号、撮れ高の褒美にルナお姉様のスカーフをくれてやるニャ。」
「え? いや、そんな女性のものを勝手に。」
「奈々ちゃんとの共用だから別にいいニャ。
おーーーーーい!!
お姉様ーーーー!!!
さっきのスカーフ、コイツにくれてやる事に決めたニャーーー!!!」
「りょうかーーーいww」
「おめでとニャ。
オマエに正式にくれてやるニャ。」
「…あ、ありがとうございます。」
「騎士には証が必要だからくれてやっただけニャ。
あの子が困った時、駆け付けてやれニャ。」
「はい!!!」
「時代も変わったよねえ。」
「ん? そうかニャ?」
「こういう遣り取りをオープンにするってアタシの若い頃は考えられなかった。
トイチ君だったっけ?
ルナちゃんの彼氏君もそうなんだけどさ。
プライバシー捨て過ぎww」
「担任持ってた頃は注意もしてたけど…
今って、こういうオープン状態がデフォルトの子が増えてるニャ。」
「これが令和スタンダードなの?」
「アップデートであると信じたいものですニャ。」
「ま、いいんじゃない。」
「ルナお姉様がここまでオープンなサービスをするとは想像も付かなかったけど。」
「あのさあ。
これだけ皆が寄ってたかって弱男をイジメてるんだからさ。
1人位、理解的な女が居てもいいと思うよ。
ほら、奈々ちゃん見てみ。
あそこで首を押さえて転がってる連中。
全員吹っ切れたような顔をしてるでしょ。」
「何が嬉しいんだか。」
「愛されて来た奈々ちゃんにはわからない事かもね。
アイツらは今救われたんだよ。」
「…プロレス技を掛けてやっただけニャ。」
「でも、カネを配ってる偽善者なんかよりよっぽど向き合ってると思わない?
ああいう内心で見下してるバラマキ野郎なんかより、ルナちゃんの方がよっぽど誠実だよ。
支持される理由わかるよ。
アタシは親の顔知らないから、ああやって構って貰うのには憧れる。」
「…まあ、楽しそうで何よりニャ。」
「そうだね。
いいイベントじゃないか。
安寿ちゃんがあそこまで笑ってるのも久し振りに見たしね。」
「…私は。」
「うん。」
「…今が一番幸せです。」
「そっか。
あ、そろそろステージ始めないと尺に収まらないんじゃない?」
「…。
うっわー、もうこんな時間ニャー♥
お姉様、そろそろアレを見せる時が来たニャ♪」
「おお! もうそんな時間か!
ウ↑チ↓、今日はひたすらファンをボコってただけだぞww」
「はーい、それではイベントの途中ですが♪」
「ファンのみんなに真っ先に報告がありまーす♥」
「ニャ、ニャ、ニャ、ニャンと!」
「ウ↑チ↓ら夜猫@が!」
「「歌手デビューすることになりましたーーーー!!!!」」
「よし三橋! 準備は出来てるな!?」
「はい! いつでもイケます!!」
「それでは夜猫@のファーストカバー楽曲歌いますニャ♥
お姉様、こっち来て♪」
「はーーーい、みんなー注目ー♪」
「夜猫@の初歌唱ニャ♥
著作権の関係で5分だけ配信を停止するニャ」
「作詞作曲、蒼き流星ボトムズ様!
声優の秋野かえで様が歌唱した楽曲をカバーさせて頂きます。」
「「それでは皆さん聞いて下さい!」」
「「オマエの旦那は私でシコった!」」
【この配信は終了しました】 JASRAC作品コード262-3899-3
【名前】
遠市・コリンズ・厘
【職業】
神聖教団 大主教
東横キッズ
詐欺師
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 12
《HP》 慢性的満身創痍
《MP》 万全
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 悪魔
《精神》 マジモンのサイコパス
《幸運》 的盧
《経験》 26214
本日取得 0
本日利息 2809
次のレベルまでの必要経験値14736
※レベル13到達まで合計40950ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと断定
※クジラの経験値を13000と仮定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利12%
下2桁切り上げ
【所持金】
所持金27億3123万3710円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
荒木のカバン
天空院翔真写真集vol.4
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
「100倍デーの開催!」
「一般回線で異世界の話をするな。」
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 「日当3万円。」
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
「月刊東京の編集長に就任する。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
「一緒にかすうどんを食べる」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げ。」
〇荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 「子ども食堂を起ち上げる。」
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
DJ斬馬 「音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用する。」
金本宇宙 「異世界に飛ばして欲しい。」
天空院翔真 「ポンジ勝負で再戦しろ!」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
〇鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」