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【降臨34日目】 所持金6億6451万4610円 「希望者には負債を分配する事を約束します。」

壁に空いた大穴、ベッドに付着した血飛沫、割れたガラス。

あっては困るのだが既視感がある。



『えっと、この状況は…』



床に横たわる平原夫妻を見ながら俺は周囲に問う。

痙攣しているという事は、まだ死んではいないのだろう。



「あのねリン! 私は悪くないの!

大手柄なんだよ!」



木下がドヤ顔でそう言ったので、事情は概ね察する事が出来た。

皆の話を総合すると、事態の推移は以下の通り。



1、休息中の平原母を別棟から訪問した平原父が強姦。

2、悲鳴を聞いて駆け付けた佐々木が平原父を殴打。

3、便乗した木下が更に殴打。

4、平原夫妻、共に負傷し昏倒中。

5、夫妻の顧問弁護士が交渉開始。



『うむ。

暴力は良くないな。』



他にコメントのしようも無いので、取り敢えずそう言っておく。

異世界人は総じて紳士的であったのに、帰還した途端に低劣な流血沙汰の連続である。

地球人である事が恥ずかしくなる。


夜も更けて来たので、場を解散させた。

俺も流石に眠いからな。


平原母はヒルダが面倒を見る事になった。

犯される時に数発顔面を殴られたらしく、顔の左半分が大きく腫れている。


皆から順当に嫌われている平原父の世話係は…

まあ、消去法で俺しかないだろ。

レンガの様な物で滅多打ちにされていた割には元気である。

社会にとっては死んでくれた方が好ましいのだが…

残念ながらこういうオッサンほど無駄に長生きする事を俺は知っている。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「おう、リン。

大阪来てから何か旨いもの喰った?」



『いや、バタバタしてて殆ど大阪で食事してないんです。

昨日は名古屋でモーニング食べました。』



「お、名古屋飯。

どうだった?」



『無駄に炭水化物比率が高かったです。

食の人海戦術でした。』



「ほーん。

まあ所詮名古屋だしな。

ところでオマエ、タコ焼き食ったか?」



『あ、まだですね。

大阪に来たら、串カツとたこ焼きは食べたいと思ってたんですけど。

なかなか時間取れなくて。』



「結構忙しいんだな。

まあ、串カツもタコ焼きも東京にあるから今度食わせてやるよ。

あ、カスうどん食った?」



『え?

何すか、それ。』



「おお、リンはカスうどん知らねーか。

車出すわ、今から喰いに行こうぜ。」



『いやいや、頭部から流血しながら何言ってるんすか。

猛人さんは絶対安静!

ちゃんと寝ていて下さいね。』



「へいへい。

隼人もそうだったけど、オマエラの世代って口煩いよな。」



『また今度、カスうどん食わせて下さい。

楽しみにしてます。』



「ふっw

そうだな、楽しみだな。」



『じゃあ、おやすみなさい。』



「おう、おやす…  

あ!

思い出した!」



『何すか。

寝かせて下さいよ。』



「オマエ、今レベル上げしてたんだよな?

ヒグマとか殺してる訳?」



『いやあ、ヒグマは怖いんで江本君で実験して安全性を確保してからですね。

今はねえ、東海道沿いの猟師さんにカネを払って

イノシシとシカのトドメを譲って貰ってますよ。

もう少し規模が欲しいんですけどね。』



「ふっふっふw

その口ぶりじゃ、頭打ちなんだろ?」



『え?

ああ、まあぶっちゃけ俺のレベルが上がった所為もありますし。』



「リン、鯨を殺すぞ!」



『く、鯨っすか?

いや、ああいうのって捕鯨船の資格とか…

何かそういう漁業的な資格が居るんじゃないですか?』



「はっはっはww

頭が固いなあw

鯨なんて今も海岸に打ちあがってるじゃねーか。」



『あ!!』



「ニュースとか見てないのかぁ?

関東だけでも、千葉と伊豆に打ちあがってるぞ。」



『…いや、いいっすね。

猛人さんもたまには役に立つんですね。』



「オイオイ、男なんて《たまに》役に立つくらいで丁度いいんだよ。

行くか?」



『行きます!!』



「はっはっはww

殺生の時だけ目が輝くよなww

オマエ、才能あるよ。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



結局、興奮して殆ど眠れなかった。

鯨の経験値ってどれくらいだろう?

ずっと考えていた。


キョンが1ポイント。

ホーンラビットが5ポイント。

シカが20ポイント。

イノシシが40ポイント。


…どう考えても鯨の方が高いに決まっている。

平原猛人に検索して貰ったが、我が国に頻繁に漂着するザトウクジラの体重は30㌧(3万㎏)程度。

イノシシの体重が100㎏程度なので、単純計算で300倍。

もしも体重と経験値が正比例するとすれば、12000ポイント。

旨味はある。

うん、狙う価値はあるのだ。



『猛人さん。

資金は、あります。

俺が仕留める道筋はありますか?』



「ある。」



『…おお。』



「座礁鯨は注射で安楽死させて処分するんだ。

大抵、地元の獣医が依頼を受けて遂行する。」



『あ!』



「そう。

ここまでわかれば後は何となるだろ?

鯨処理に携わった経験のある獣医をピックアップ。

次に日本全国で鯨の漂着ニュースをチェック。

今なら夷隅と伊豆だな。」



『おお!!』



「後は交渉、だろ?

水産庁のマニュアルだ。

目を通しておけ。」




『凄い。

《鯨類座礁対処マニュアル》

スマホってクリック一つで、こんなものが瞬時に手に入るんですね。』



「ん?

ああ、オマエもスマホまだだったか。

契約しないの?」



『いや、俺…

事情があって銀行口座持ってないんすよ。

それでスマホを買う手段もわからなくて。』



「ああ、じゃあ俺が買ってやるよ。」



『え?

いいんですか?』



「だってオマエ、俺の身元引受人だろ?

連絡付かないと俺が困るんだよ。


どうせ隼人にも新しいのを買ってやる予定だったしな。」



『…俺は隼人ではないですよ。』



「似たようなものだ。」



『似てませんよ。

俺なんか、アイツの足元にも及びません。』



「妙に糞真面目で。

他人様の為になろうと空回りし続けているところ。

全部裏目に出ているところ。

そっくりだよ。」



『俺、空回ってますか?』



「隼人の奴が壮大に空回ってたからな。

親の俺が言うんだから間違いない。

オマエ、息子の空回り仲間だよ。


気を付けろよー。

視野が狭いのはリンも一緒だから。」



『まあ、俺の視野はそうだと思いますけど。

隼人の視野が狭かったっていうのが、実感ないって言うか。

俺なんかよりずっと大人に見えてました。』



「それだけ隼人がオマエを気に入ってたんだろ。

リンの前では頑張って背伸びしてたんだろうな。

アイツ、昔からそういう所あったから。」



『…そっすか。』



「俺の名義か、会社の名義か…

いずれにせよスマホ準備するから。

オマエ、自由に使っていぞ。


アホな使い方したら、ちゃんと怒ってやる。

親ってそういうものだからさ。」



『…ありがとうございます。

あの、幾らか包ませ…  「バカヤロウ!」



「ガキの分際で要らん気遣いするな。

どうしても礼がしたいなら、MarkⅡやMarkⅢにしてやってくれ。

遺伝子的には隼人と同じだからな。」



『MarkⅡはロールアウトするんすか?』



「ヤリ続ければ、いつかは産むんじゃない?」



『いや、理論上はそうでしょうけど。

裁判とかどうするんすか?』



「関係ねーよ。

女の仕事は産む事だ。

男の仕事は産ませる事だ。」




…変なオッサン。

お似合いの夫婦だよ。

さぞかし隼人は大変だっただろうな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



起床。

ヒルダに頼んで恩師を呼ぶ。



『おはようございます、松村先生。

いやあ、今日も絶好のキャンプ日和ですねえ。』



「ザケンニャ!

突然、叩き起こされた上に大BBAに小突かれながら引っ立てられたニャ。」



『ふーん。

荒木にちょっと用事があるんで電話掛けて下さいよ。』



「テメー!

恩師に向かってその態度はなんニャー!

トイチの分際で生意気だニャーッ!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


4億6131万8010円

  ↓

4億6121万8010円


※電話交換手に賃金10万円を支払い



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「いやあ、えへへ。

いつもスイヤセンね。


ささ、トイチさん。

今、除菌シートでお清め致しますね。

どうぞ!どうぞ!


あ、通話中フェラしておきましょうか?」



『スマホの使い方分からないんで

荒木が出るとこまでお願いします。』



「あ! こりゃまた失敬致しました!

うぇひひ♪

はいニャ! 直ちにコール致しますニャ!


prrrrrrrrr


あ、テツ君?

おはよう、今ちょっといい?」



  「奈々か。

  忙しいから連絡してくるなって言っただろう。

  じゃあな、切るぞ。」



「あ、いえ。

トイチさんのお申し付けで電話しておりまして」



  「おお!

  本当か!?

  すぐに代わってくれ。」



「あ、はい。」



『荒木、忙しい時にスマンな。』



  「いや、オマエなら大歓迎だ。

  いつでも掛けてきてくれ。

  受電出来なくても必ず折り返すから。」



「え? 奈々ちゃんと対応違うくない?

全然違うくない?」



『わかった、どうやらスマホを調達出来そうなんだ。

入手出来たら、真っ先にオマエに報告するよ。』



  「おお!

  そうか!

  いやあ、良かった。

  LINEかDiscordが中心になると思うが宜しく頼むぞ。

  楽しみにしてるからな!」



「え? テツ君LINEやってないって言ってなかった?

え? え? え?」



『おう、色々教えてくれよ。

それでな、今日から一旦関東に戻る。

東京湾沿いのどこかに拠点を定めると思う。


伊藤先生の墓参り一緒に行かないか?』



  「…墓参りか、律儀なのはオマエの美点だよ。

  顔は出すべきなんだろうけどな。」



「あ、そーゆーカネにならないイベントは奈々ちゃん欠席でオナシャス。」



『行かないのか?』



  「あ、いや。

  生徒として義務がある事は理解しているんだ。

  なあ、落ち着いたら時間を作るから。

  その時に正式に参拝しないか?」



「あのお、奈々ちゃんにも時間作ってくれないんすかね?」



『…いつ、時間出来るんだよ。』



  「今は情勢が情勢だろ?

  この後、富山に飛ばなきゃならないんだ。

  21時までには霞が関に戻る必要もある。

  明後日はバンコク、来週はクアラルンプール。

  結構タイトなんだよ。」



「あ♪ 奈々ちゃんも海外旅行行きたーい♪

大麻吸っても死刑にならない国に行きたーい♪」



『…そうか。』



  「遠市が腹を立てる気持ちもわかる。

  ただな、本当に切羽詰まってるんだ。

  今の戦況がマズいって話くらい、オマエでも知ってるんだろ?」



「知らないニャー♪」

 


『ウクライナの話か?』



  「ああ、まさかセヴァストポリがあそこまで堅いとはな…

  今週の連敗で周辺国がロシアの優位を確信してしまった。

  黒海の制海権も含めて、取り戻すのは不可能かも知れない。」



「あれ?

テツ君、奈々ちゃんにはそういうお話全然してくれないよね?」



『そっか。

みんな大変だな。』



  「日本だけだよ、TVでウクライナ報道の規模が小さいのは。

  下劣なバラエティばっかり映しやがって。

  今、プーチンの勝利演説が世界中の主要メディアで生中継されてるのにな。

  俺達は歴史的ターニング・ポイントに居合わせてしまったのかも知れない。」



「あ、今日ルナお姉様が下劣なバラエティに出演するニャ♥」



『最近、ニュースを全然チェック出来てないんだけど、日本もヤバいの?』



  「…世界全体で物流が麻痺させられてるんだ。

  穀物と原油の高騰が止まらない。

  円の下落に歯止めが掛からんしな。

  非常に危険な情勢だ。」



「へえ、どの株買ったら儲かるニャ?」



『そっか。

だから墓参りは出来ないんだな。』



  「スマン。」



「墓前3Pしようぜー♪」



『いや、供養が政治に優先する事があってはならないと理解はしている。』



  「いずれ埋め合わせはする。」



「奈々ちゃんのマ●コも埋め合わせして欲しいニャ、デュフフフww」



『あ、先生。』



「はいニャ♪」



『邪魔なんであっちへ行ってて下さい。』



「ニャビャガ―――――ン(絶望号泣)」



『まあいい。

荒木が忙しいのはよくわかったよ。』



  「スマン。

  近いうちに遠市にも事情を説明する。」



『…互いに目指すものが近ければいいな。』



  「…そうだな。」



恩師にスマホを返却して下がらせる。

仲間を集めてから、ロシア情勢のレクを希望した。

寺之庄が挙手して口を開き出す。



「じゃあ、僕から解説するね。

結論から言えば、現在のウクライナ情勢は西側が大幅に不利。


理由はシンプル。

ウクライナ軍が総力を挙げて敢行したセヴァストポリ攻略戦が大失敗したから。」



『あれ? 前のニュースではロシア不利とか言われてませんでした?』



「うん、ウクライナ軍には英米の最新型攻撃ドローンが供与されていたからね。

先週まではロシア側の陣地に多大な被害を与えていたし、T-72ってロシアの主力戦車を相当数撃破していた。

だから、西側メディアは楽観論一色だった。


ただ、やっぱり流石にロシアは超大国だね。

戦力の投入ペースが全然落ちないんだ。

多少の犠牲はお構いなしに、面で前線に圧力を掛けて来る。


で、先週一カ所だけウクライナ側の陣地が突破された。

そこから一気に逆転だよ。

やっぱりロシアは地上兵力が膨大過ぎる。


で、先日のセヴァストポリ攻略戦。

ウクライナ側の主力師団が文字通り壊滅した。

中国から供与された自爆ドローンが洒落にならない程、高性能なんだよ。

現在、ネット上では中露がウクライナ艦船の乗組員を爆殺する瞬間の動画を世界中に拡散してるからね。

それで西側世論の心が完全に折れてしまった。


…イスラエル軍の高官が《我が国よりも高精度である可能性が高い》と分析コメントを出した位だからね。

クリミアは、もう奪還出来ないかも知れない。」



俺は寺之庄の博識に感心したが、どうやらそれは的外れなリアクションだったらしい。

ニュースサイトやSNSでは、かなりのトピックとして報じられているらしい。

そこら辺に詳しい江本が口を挟む。



「いや、トイチさん!

日本でもロシア情勢はかなり注目されてますよ?

特にセヴァストポリは、大谷翔平・ちいかわ・みそきん・藤井聡太・AI絵師・エスコンフィールド・蛙化現象・どんでんに次ぐランキング9位に入ってますからね!」



『あ、いや。

むしろ大衆の関心が致命的に欠如している気がするのですが。

というか《みそきん》って何ですか?』



「えーーー!!?

トイチさん!

みそきんを知らんのはヤバいッスよ!

超有名youtuberがプロデュースしたカップラーメンなんです!

俺も喰ってみたいんですけど、転売ヤーに買い占められてもうて!

それで全然買えへんのですよ。

今、ネット上では転売の是非について激論が巻き起こってます!」



『…ひょっとして大衆は国際情勢に興味ないんじゃないですか?

戦局、全然注目されてないじゃないですか。』



「いや、まあ

そうと言えばそうなんですけど。」



『今、そんな場合じゃないですよね?

え? だって小麦が高騰して困ってるって話でしょ?

じゃあ食糧防衛の為にもラーメンなどの小麦食を意識的に減らして

国民が一丸となって、この国際情勢に備えるべきなんじゃないですか?』



「あ、いや。

俺に言われても…

勿論、トイチさんの仰る通りだとは思うんですけどね。


あの、怒らないで下さいね?

大衆にとってはウクライナ情勢よりも、AIがエロ絵を描く事の是非の方が重要なんです。」



『…なるほど。』



「トイチさん、今メチャクチャ怖い顔してますよ?」



『別に怒ってないですよ。』



「でもちょっと位は怒ってはるでしょ?」



『いや、怒って無いです。』



「でも本当は?」



『だから! 怒ってないって!!


…すみません、ありがとうございます。

エモやんさんのお陰で自分を客観視出来ました。』



「いえ、無礼をお詫びさせて下さい。

今、ヒロノリさんが仰られた情勢と、俺が説明した実際の世論。

何かの参考にして頂ければ幸いです。」



『…勉強になります。』



普段TVは見ないのだが、国際情勢チェックの為に管理棟の大型TVを江本と視聴することにする。

次に荒木と会った時に、ある程度の社会常識は頭に入れておく必要があるからな。



「トイチさん、この時間は午前のニュースバラエティばかりやと思いますけど

適当にチャンネルを変えて行きますよ?」



『ええ、お願いします。

国際ニュース中心で。』



「うーーん、どれどれ。

通販番組が多いですねえ。

岡田監督、札幌ドーム問題、大谷さんの記録解説、そして我らが藤浪晋太郎大先輩。

俺的には野球ニュースが多いのは嬉しいんですけど…

トイチさん的には3S政策への憎悪が掻き立てられるんですね?」



『私が見たいのは報道であって興行ではありませんから。』



「失礼、チャンネル変えて行き…


ん?  なんで?」



『どうしました?』



「いや? 鷹見さん?

え? なんで?」



俺が江本に釣られてTV画面を見ると、パンツスーツ姿の鷹見が映っている。



『あれ?  

TVってふわっち配信も見れるんですか?』



「あ、いや。

そういう機能は…  多分ないです。」



画面下にはテロップが出ており、《寿司ペロ少女に直撃インタビュー》と書かれている。



「あー、鷹見さん…

普通に地上波デビューしてますね。」



『へー、いつもの配信とはまた別なんですね?』



「いや、全然違いますって!

地上波出演はメッチャ凄いことですよ?

人類下位10%の低能はTVを見てますから。」



『おお!

それってかなり優秀な媒体ですね。

健康食品とかスピリチュアル商品のCMが強そう!』



「ホンマにそれです。

アホには情報を精査する知能が備わってないですからね。

健康食品会社の絶好のカモですよ。


ほかにも宝くじ・保険みたいに算数の出来へんカスから搾取するCMも多いですね。

特に地方に行ったらパチンコ屋のCMばっかりですよ。


それにしても鷹見さん、相変わらず喧嘩腰ですねえ。

まあ大衆向けの解り易いヒール役としては、TV受け…」



そんな会話をしていた時だった。

突然椅子から立ち上がった鷹見が司会者?インタビュアー?を殴り倒した。



『え?』


「え?」




俺達が呆然として画面を眺めていると、不意にCMが始まった。




『え?』


「え?」




早く続きを確かめたいのだが、その後は健康食品通販のCMしか流れない。




『エモやんさん。

今ので番組終わりですか?』



「いや! そんな事はないでしょ?

ほら、これ番組表です。

次の番組のゴルフ中継まで、後40分以上ありますからね。」



『あ、じゃあ。

そのうち続きを放送してくれるんですかね?』



続きが気になってTVの前に釘付けになるのだが、一向にCMが終わらない。

それにしても、よくもこんなに健康食品があるものである。



『へえ、シジミって身体にいいんですね。

この濃縮シジミ、関節痛に効くらしいんですね。』



「ああ、トイチさん先月まで車椅子生活って仰ってましたものね。

脚、まだ痛みますか?」



『脚もそうなんですけど。

実は手首が酷いんですよ。

腱鞘炎が癖になっちゃって。

エモやんさんも野球で身体を壊されたんですよね?』



「ええ、俺は腰ですね。

かなり無茶なピッチングしてましたから。


へえ、この濃縮シジミ…

お試し無料…

ふむ、QRコード読むだけで買えるみたいですね。」



『スマホって何でも出来るんですね。』



「お!

トイチさん!

この濃縮シジミ!

今3000円のパックを買えばおまけに3袋付くみたいです!」



『おお!!

結構、大盤振舞ですね。


あ、エモやんさん。

おカネ払うんで買って貰っていいですか?』



「よし、じゃあ折角だから

こっちのスペシャルパックを買います!

シジミ軟膏もセットで付いて来るみたいです!


あ、茨城県の農家。

山村保則さん(73)のインタビュー!

おお、リューマチが治ったそうですよ!!」



『うおおおお!!!

結構信憑性ありますね!!

あ、おカネ出させて下さい。

エモやんさん、2人で濃縮シジミ生活しましょう!』



「はいっ!!!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


4億6121万8010円

  ↓

4億6111万8010円


※江本昴流に商品代理購入費用として10万円を支払い



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「あの、こんなに買ってどないするんですか?」



『いや、4日後にBBQ大会やるじゃないですか?』



「やりますね。」



『関節痛い人が居たら分けてあげようと思って。』



「おお流石はトイチさん!

徳を積んでおられる!!」



『いやあ、ははは。


…って我々どうしてTV見てるんでしたっけ?』



「もー、トイチさん嫌だなあ。

ウクライナ情勢ですよ。

さ、チャンネル変えますよ。」



『あ、そうだった。

では続きお願いします。』



他のチャンネルもバラエティばかりだったのだが、資源価格の高騰は確実らしい。

…参ったなぁ、俺の生命線だった片親パンが1個当たり20円の値上げ見込みか…

今まで100円で買えてたパンが120円になるなんて…

困ったな、生活出来なくなる奴が増えるぞ。


【複利】の強化、急がなきゃな。



『エモやんさん。

今後の予定の発表があります。

皆を集めて下さい。』



「はい、喜んで!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




フロアに集まったのは、安宅・寺之庄・後藤・江本の4人。

よし全員揃ったな。



『関東に戻ります。

目的は鯨狩り。』



「「「「おお!!」」」」



『企画提唱者の平原猛人氏を同行させます。』



「「「「boo!! boo!!」」」」



『皆さんの気持ちは分かります。

トラブルメーカーですからね。


私は彼の身元引受人なので…

いや違うな。

単なる道楽です。

御寛恕頂けると幸いです。』



勿論、皆は納得していないが、《道楽》というキーワードを出した瞬間に矛を収めてくれた。

隼人の名前は皆の前でも度々出しているからな。

私的な情愛に基づいた判断である事は明言しておく義務はある。


なので、これは俺の皆に対する《借り》だ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




身一つで関東に戻る選択も考えていたのだが、周囲が難色を示した。

誰も俺から離れる気が無い。

そりゃあそうだろう。

打出の小槌を手放す馬鹿が居る訳がない。


俺にしても誰かの人手は必要なので文句はない。

何せ地球のカネは重いからな。

現在の資産は50キロに迫ろうとしている。

非力な俺では持ち上げるのが精一杯なので、全財産を持っての単独行動が極めて困難である。

車の免許を取ってもいいのだが、鈍臭さを自覚しているので決断に踏み切れない。

(人身事故とか起こしそう。)


異世界にはミスリル貨なる文明的なインフラがあったのになー。

はー(溜息)、つれーわ。


定住地を定めるまでは、総資産を10キロ程度に収めようか…

俺も男だ、10キロ位なら何とか…

いや、5キロくらいにしとくかな。

まあいい。

墜落中の飛行機と同じだ。

荷物を投げ捨てて重量を減らして行こう。



と言う訳で。

塩崎夫妻に連絡し、新たな建物損壊を詫びる。

無論、強姦事件の件は伏せた。



『一旦、拠点を空にしますが

夜逃げではありません。』



「ええ、それは勿論。

勿論、理解しております!」



『清掃や修理をお願いします。

取り敢えず雑費として追加で500万を置いて行きます。

不足があれば請求して下さい。

余ればご夫妻で収めて下さい。

領収書は不要です。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


4億6111万8010円

  ↓

4億5611万8010円


※塩崎慶賀に清掃料として500万円を支払い。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



500㌘の軽減に成功。

焼け石に水である。



「おお!

これはこれは何から何まで。」



『じゃ、私はこれで。

また逢いましょう。』




まずは名古屋で飯田と合流しなくてはならない。

4日後、BBQだからな。

ちゃんと現地で打ち合わせをしなければ。


ヒルダからの報告では、キャラバンの車列は計5台。

全車が高速道路を用い名古屋に向けて東進する。

愛・地球博公園の近辺にあるオートキャンプ場を確保したので、そこで休憩も兼ねた点呼を行う段取りとなった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【遠市キャラバン車両内訳】



①寺之庄車  

*寺之庄・俺・江本


②ヒルダ車  

ヒルダ・*関羽・弓長・平原母・佐々木・木下


③鳩野車

*鳩野・安宅


④田名部車

*田名部・後藤


⑤平原車

平原父・*倉沢


*は運転員。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




異世界同様、カネや権力の増大に比例して微妙に随員が増えて行く。

もっとも、今の所は面識のある人間しか同行していないので、現時点の俺など大した事はない。

俺もまだまだこれからだな。


さあ、フルメンバーで出発だ!




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「さて、困ったことになった。」



寺之庄がハンドルを握ったまま語り掛けて来る。



『え? 何か問題ありましたか?』



「さっき大阪を発つ時、塩崎社長の持ち物件の宣伝をインスタにアップしたじゃない?」



『ええ、お洒落に撮れてました。

塩崎夫妻も喜んでおられましたよ。』



「その画像を見たんだろうね。

父からメッセージが入ってる。」



『え!?

お父様からですか?』



「江本君。

DM画面をトイチ君に見せてあげて。」



  「はい、失礼します!

  トイチさん、こちらです。」



『えっと、どれどれ。


《旅行が一区切りしたようで安心した。

良き友人にも恵まれたようで薫子さんも我が事の様に喜んでいる。

ところで、その車は車検に出す予定だった。

この前帰って来た時に預かる心づもりだったが入れ違いになって残念に思っている。

こちらにも段取りがあるので急ぎ返却すること。》


…え、これって。』



「要するに《今すぐ実家に帰って来い》って意味だね。」



『ですよねー。』



「…君を関東に届けたら、実家に戻るよ。」



『いや、急ぎって書いてますし…

怒られるんじゃないですか?』



「もう腹は立ててるでしょ。


実家全然帰ってないし。

休学したし。

薫子さんも放置しているし。

谷口翁の件でこっそり福井入りした事もバレてるし。

派手にイベント告知してるし。

そのアカウントには今話題の遠市鷹見カップルが映ってるしね。


勘当で済めば穏当だと思うよw」



『…何か、スミマセン。』



寺之庄はハンドルを握ったまま肩を揺らして笑う。



「楽しいw」



『でしょうねえ。

ヒロノリさん、ずっと機嫌がいいですもの。

実家に顔くらいは出した方がいいんじゃないですか?』



「ええ、ヤダよ。

君と離れるの寂しい。」



『車を返す位なら、付き合いますよ。』



「鯨狩は?」



『皆に準備だけして貰って、トドメだけ買います。』



「はははw

マネーレベリングw」



『自分でも健全でない事は自覚してるのですけど。

鈍臭い私がウロチョロしても邪魔なだけなんですよね。


福井のどこら辺ですか?』



「…今庄の近く。」



『ああ、この地図に表記されてる付近ですね。』



口ごもるのも無理はない。

福井県地図の真ん中辺りに記載されている寺之庄という土地のどこかに彼の実家があるのだろう。

JR寺之庄駅や寺之庄神社という文字列も見えているので、その周辺を長らく支配している一族である事は想像が付く。

そして彼の性格を鑑みれば、自家の富強を恥じる事はあっても誇る事は決してない。

自分のボンボンとしての側面をあまり見られたくないのだろうな。



「…この車、返さなきゃとして。

キミのおカネはヒルダさんのプリウスに積む?」



『俺がカネを渡そうとすると女共が警戒するんですよ。

どうやら手切れ金を押し付けようとしている風に見えるらしくて。』



「はははw

それが本音なんでしょw」



『ばれたかーw

否定はしません。


…で?

手切れと言えば、弓長さんをどうするんですか?』



「…うーーーん。

どうしよう?」



『いやあ、私に聞かれても。』



「もうトイチ君が決めてよ。」



『あーー、じゃあ俺とやり方を統一しましょう。』



「するー♪

僕もトイチフォーマットで生きるよ♪」」



『ははは、調子いいんだからw


薫子さんでしたっけ?

その人が婚約者さんなんですよね?』



「うん、まあ一応。

親同士が勝手に決めた相手だけどね。」



『弓長さんの処遇は薫子さんに全委任ということにしません?』



「え、それ…

ありなの?

男として無責任っぽくない?」



『でも近代以前は正室が奥に対して影響力・支配力を有していた訳ですからね。』



「いや、それは昔はそうなんだろうけどさ。」



『でも私はそれで行きます。

楽ですし。』



「…やっぱり楽なの?」



『楽ですねえ。

少なくとも私なんかじゃ、あの女共を制御出来ませんもの。

ヒルダの発言力が増すのは避けたいんですけど、利便には勝てませんねえ。


だって鷹見をワンパンで沈められるのって、あの女くらいしか居ないでしょうから。』



「異世界の女性ってみんなあんな感じなの?」



『全般的にガタイはいいですよ。

女戦士や女騎士もちょくちょく見掛けましたし。

ただ、それでもヒルダは突出してましたね。』



「はええ。

女傑だねえ。

でも、薫子さんは普通の女の子だからなあ。

側室の管理とか無理だよ、きっと。


そもそも僕、愛人を欲しいって思ったことないんだよね。

いや、更に本音を言えば結婚も嫌なのに。」



難しいものだ。

世の中の大抵の男は受け継ぐ資産と抱く女が居ないことに悩んでいるのに。

生まれつきそれに困らない男に限って拒絶しているのだからな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




出立早々恐縮だが、桂川PAで全車を停止させる。

急遽、寺之庄の車両返却に付き合う事になった旨を皆に説明して予定を組み直す。

お詫びも兼ねて宇治抹茶ソフトクリームを皆に振舞った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


4億6111万8010円

  ↓

4億5611万8010円


※キャラバンメンバーへの詫びとして抹茶ソフトクリームを3420円分購入。


380円×9個



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



女子勢にも勧めたが、凄い形相で睨まれる。

輪の中で泣いている弓長の為に何もしてやらない俺が悪者らしい。

いやあ、俺に言われてもなぁ。


カネの保管場所変更の為に車両の割り振りを思案していると、ヒルダに便所裏に呼び出される。

全く人目が無くて怖い。




「どうするのですか?」



『え、はい。

どうと言いますと?』



「マキの事です。

不憫ではありませんか。」



『あ、いや。

俺が口を挟む問題ではないような気が…』



「家人の庇護は家長の役割でしょう。

リンが動かずして誰が動くと言うのです!」



…封建的には、ヒルダの主張は正しい。

なので、異世界最古の封建都市に生まれ育ったヒルダ・コリンズがこのような発想をする事は自然である。

ヒルダにとって、弓長も関羽も佐々木も大切な使用人。

なので無遠慮に使役する反面、本気で庇護する。

現代地球に適応しているとは言え、根っこの価値観が完全に中世人なのだ。

なので、現代的教育を受けた俺は、彼女の行動原理に対してどうしても拒否感を抑えられない。


確かに俺もメンバーの下半身事情には滅茶苦茶気を遣ってるよ?

でもそれは、少しでも後腐れなくセックスする相手をメンバーに供給するという趣旨であって、婚姻を強いる意図はないのだ。

何故なら、オスの勝利条件は多くのメスに子供を産ませる事だから。

なので、これからも俺は男性メンバーに対して非婚姻状態のセックス相手を提供する為に苦悩し続ける。

メスの分配はリーダーの責務だからである。

無論、現代的価値観で批判される考え方である事は重々承知である。

だが、俺の暴論は男として正しい。

その正しさが伝わっているから、メンバーはカネ以上の情愛を俺に向けてくれるのだろう。


逆に、メスの勝利条件はαオス・リーダーオスを専有することである。

俺と同行している寺之庄や後藤のようなランクの男のことだ。

なのでヒルダが俺の不興を買っている事を自覚してまで関羽や弓長の世話を焼くのは正しい。

その正しさが伝わっているから、異世界でも地球でも女共はヒルダの下に集うのだろう。


…やはり男女は利害が相反するな。

ヒルダも馬鹿ではないので、俺同様にこの摂理について理解している。

さあ、どう折り合いを付けるか。



『なあ、ヒルダ。

肝心の寺之庄煕規が、大して弓長を好んでないんだよ。

問題はそこじゃないか?』



「リンから口添をしてやって下さいと申し上げているのです。」



『うーーーーん。


何故?』



「マキはキャラバンのメンバーです。

浜松BBQや梅田駅セミナー等でも精勤してくれました。

リンには何らかの恩賞を与える義務があるのでは?」



…流石に異世界初の婦人軍隊を作った女だな。

同性の保護に積極的だ。

かつ押しも強い。



『それを言うなら、寺之庄は更に貢献度が高い。

あの男が居なければ俺の地球生活は軌道に乗らなかった。

そもそも、俺が弓長真姫の同行を許しているのは彼女が寺之庄の友人だからだ。』



「リンの友人でもあるでしょうに。」



『男女は友人にはなれない。

ヒルダもそう思うだろ?』



「…ええ、思います。」



『そもそも、弓長はどうしたいの?

ヒルダは本人から希望は聞かされてるんだろう?』



「言うまでもありません。

寺之庄煕規の伴侶として生涯尽くす事だけを望んでおります。」



何が《尽くす》だ。

稀少資源を専有したいだけじゃないか。



『…いや、寺之庄は初対面の時点で婚約者の存在を明言してるよね?

それは横車なのでは?』



「ですから!

その横車を押して下さるようお願いしているのです。


これはリンの利益になります!

…勝ちたいのなら駒は必要です。

マキはかなり使えます。」



…そりゃあ、関羽にしても佐々木にしても弓長にしても優秀な女性である事は認めるよ。

でも使いこなせるのオマエだけじゃん。

単にヒルダ派を構築・保全したいだけじゃん。



「それだけではありません。

渋川薫子との縁談が進んだ場合、寺之庄は福井に戻る可能性が高いです。

父親の地盤を継承しなければなりませんので。


ですが、例え内縁でもマキと結ばれれば?

地元に帰りにくくなる分、ますますリンの股肱として忠勤を尽くしてくれることでしょう。」



…コイツもわからん女だなあ。

男社会ではそういう小賢しい真似をする奴が一番嫌われるんだよ。

俺があの男に気に入って貰えてるのは、そういう馬鹿な思考をしないからなんだよ。

確かに側に居てくれたら嬉しいよ?

でも友達だったら、まず相手の立場を慮るべきだと思わないか?



『なあ、ハッキリ言うぞ。

弓長を押し付けようとしたら、寺之庄が俺から距離を取ってしまう。

それだけは避けたい。』



俺とヒルダは互いに黙り込む。

いや、わかるよ?

女には女の正義や仁義があるんだよな?

オマエやエルデフリダはそのルールを遵守しているだけなんだよな?

加えてオマエは賢いから、それが男社会では真逆の評価を受ける事を知った上で整合する道を模索してくれてるんだよな。

ヒルダの言動が俺の為になっている側面もある事は認める。

現に、異世界でも地球でも俺はまだ殺されていない。

確かにオマエのおかげだ。

感謝している部分もある。



『わかった妥協する。

実はさっき寺之庄にも提言したのだが…

《弓長の処遇は婚約者に決めさせるべき》

そう彼に伝えたんだ。

これをもう少し強く勧めてみる。


どうだ?』



「…わかりました。

一旦、マキに伝えます。」



ヒルダは足早にプリウスに戻って行く。


…下らねぇ。

俺、さっきまで鯨を殺す気満々だったんだぜ?

最高にテンション上がってたんだけどな。

なーんで、こんなどうでもいい話を長々と聞かされるかな。

正直、こんな無意味な遣り取りに時間を奪われたくない。

いや、わかるよ。

女にとっては凄く重要なことなんだろ?

特に寺之庄なんて同ランクの男が存在しないレベルのハイスぺイケメンだからな。

でも、俺は忙しいんだ。

時間を盗まれたくない。

…マジで辛い。



30分程経って、ヒルダがやって来る。

その間、無駄に便所裏で待たされていた俺。



「…では、それでお願いします。」



その一言だけを言って、ヒルダは再び足早に去る。

車へ戻る際、プリウスを覗くと目を腫らした弓長を女共が慰めていた。

アホらしいので声を掛けずに車両に戻る。



『ヒロノリさん。』



「はい。」



『さっきも申し上げた事ですが…

婚約者さんに、弓長さんの処遇を決めて貰えるよう頼んで頂けませんか?』



「…トイチ君の指示なら従うけどさ。

我が国にそんな旧時代的な風習はないよ?」



『側室に関する古い風習が福井県に残ってるとか、ワンチャンないですか?』



「いや、聞いたことないねえ。

それこそ越前藩祖自体が…

正室さんに承認されないことで認知されなかった人だからねえ。

ウチ、色々あって越前藩政にも深く関与してた家だから、あまり県内世論を刺激するような振る舞いが出来ないんだよね。」



名家に生まれるのも大変なんだな。

勿論、貧家に生まれた俺は更に大変だったのだが。



「でも、まあいいや。

率直に頼んでみるよ。

上手く行けば勘当して貰えるかも知れないし♪」



『ある意味、家を出たがってる長男って無敵ですよね。』



そりゃあね、これだけスペック高い男からしたら、家の財産ってそこまで重要でもないよね。

だってこの人、顔だけで生きていけるもの。



「あのさあ。

ちょっと図々しいお願いになっちゃんうだけど。」



『あ、はい。』



「もしも反対されたら真姫を引き取ってくれない?

君達、人間的な相性はいいと思うんだ。」



『いやー、ちょっと待って下さいよぉ。

ヒロノリさんの頼みであれば大抵のことは叶えたいんですけど。

流石にこればかりは、勘弁して貰えないですかね?

弓長さんの事は嫌いじゃないんですけど。

マジで辛いです。』



「はははw

僕らがこんな話題してるって知られたら女性陣に怒られそうww」



『叱責で済ませてくれる連中ではないですよ。』



アイツら全員俺より喧嘩が強くて狂暴だからな。

冗談抜きで身の危険を感じるのだ。



「じゃあ、僕が死んだら真姫を頼むよ。」



『え、まあそれくらいなら。』



「こう言っておけば、誠意があるように印象付けられるからね♪」



言いながら悪戯っぽくウインク。

冷静に考えれば結構な鬼畜発言なのだが、この男の口から発せられると嫌悪感は湧いてこない。

イケメンってズルいよなぁ。



『ヒロノリさん。』



「はい♪」



『では、その旨を弓長さんに伝えて下さい。』



「おっけー♪」



悪びれもせずに、寺之庄は弓長にコールする。

アホらしいので椅子で背中を伸ばして時間を潰す。

受話器の向こうの弓長が何故か泣きながら謝っているのが聞こえる。

寺之庄は良く言えば鷹揚な態度で接している。


そうなんだよなあ。

女はどんな酷い扱いをされてもイケメンを愛し抜く生き物なんだよなあ。

(つまりどんなに尽くされてもブサメンには見向きもしない事を意味する。)

イケメンは羨ましいよなあ。

そう言えば平原の奴もいつも女を侍らせてたよなあ。

結局、世の中って顔なんだよなあ。



「トイチ君、話は付いた。

皆を実家に招待するよ。

両親に真姫も紹介する。

それでヒルダさんの顔も立つでしょ?」



『え?

私もご実家に?』



「田舎の旧家だよ。

都会で生まれ育った君からするとカルチャーショックな存在だと思う。」



『あ、いえ。

別に地方だからと言って…』



「つまり我が国の代議士のボリュームゾーンだ。」



『あ!』



「別に仲良くする必要はないよ。

でも、一度見ておくことを推奨する。

君が更に上を目指すには、ね。」



『はい!』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



北陸自動車道を北上すること2時間。

今庄ICに到着。


素通りは好ましくないので谷口翁にDMで一報入れ、通り過ぎる不義理を詫びておく。

すぐに好意的な雰囲気の返信が届いた。


《すみません

イノシシは1匹しか掛かってないんです。

後はシカが1匹だけ。

せめて3匹捕らえてと思っておりました。》


こんな感じ。

俺は《獣害が無いのが一番ですよ》と無難な返信をしておく。



今庄ICからすぐ近くに寺之庄なる町がある。

(後から知った事だが、中世越前史は今庄・寺之庄の両荘園による相克の歴史と言っても過言ではない。)

下道で15分程の距離である。

谷口翁の拠点から非常に近く、先日平然と実家を素通りした寺之庄の神経に驚愕する。



「あはは、今度正式に顔を出そうと思ってたんだよ。

ほら、ここからがウチの敷地。」



山を抜けると中規模の集落が広がっていた。

なるほど、視界全てか。

これが地主の言う所の《敷地》なのだ。


距離はあるが寺之庄の実家もすぐに見つける事が出来た。

町を一望出来る高台、側には大きな鳥居が見えている。

東京に巣食う偽物とは違う、寺之庄家はマジモンの上級国民なのだ。



俺が肝を冷やしたのは、館の門前に複数の男女が並んでいたことである。

端正な顔立ちと表情の余裕から、それが寺之庄一族である事が容易に理解出来る。



門前に停車。

俺にそのつもりは無かったのだが、皆が俺を中心に整列してくれた。

後藤・江本・安宅・俺・寺之庄・平原と横一線に並ぶ。

背後の息遣いからして、ヒルダが女共を背後に控えさせたことがわかる。



『遠市厘で御座います。』



俺は作法を知らないのでフォーマルな場で余計な口は利かない。

知っているのは恐縮だけである。



「息子の煕規がお世話になっております。

寺之庄煕顕と申します。 」



寺之庄の父は柔らかい笑顔で握手を求めて来る。

名門だけに挙措が洗練されている。

全く厭味がない。



『ヒロノリさんにはお世話になっております。

私の都合で連れ回してしまい、誠に申し訳御座いませんでした。』



本心からそう思っているので、頭が自然に下がった。

寺之庄煕顕はそれについては何も言わない。



「1時間だけお時間を頂けませんか?」



『…ええ、喜んで。』



「高名な遠市さんにお目に掛かれて舞い上がっております。」



一瞬、脳が混乱し終わってから、《そういう言い回しなのだ》と理解する。

何百年も掛けて寺之庄一族はここまで洗練されたのだろう。



なるほど。

家には2種類存在する。

ただ居住するだけの施設と、迎賓を前提に設計された邸宅である。

俺が暮らしていた団地は前者の中でも最下層のそれに属し、この館は後者に該当する。

まあ県会議員の邸宅だからな。

来賓を迎える造りでなければ話にならんのだろう。



俺が驚いたのは、当主・寺之庄煕顕とサシで面談する羽目に陥った事である。

思えばこの男、息子には一言も声を掛けなかった。

薄情な訳ではない。

先程、皆が俺をまるで主君扱いするかのような整列をした事が理由である。

これにより、寺之庄煕顕は俺を息子の友人ではなく、一群の首魁として扱わざるを得なくなったのだろう。



「茶室と洋室がありますが。」



振り向く当主に《足に障害がありまして》と応えると、上品なソファーが据え付けられた応接間に招かれた。



「貴方のファンなんですよ。」



ソファーに座るなり屈託のない笑顔でそう語り掛けて来る。

なるほど、ポスターの顔写真だけで当選できるタイプの男だ。



『皆様に迷惑ばかり掛けております。』



この男を通して世間様に頭を下げておく。



「新宿の鰻丼祭り、あれは遠市さんが手掛けられたんですよね?

素晴らしいです。」



機先を制される。

そっか、こちらの情報は一通り把握しているのか。

まあ、そりゃあそうだろう。

大切な嫡男を連れ回している相手の事を調査していない訳がない。



『はい、相違ありません。

ただ実際の運用は、山田なる私の友人が行ってくれました。

功は全て彼のものであると認識しております。』



「jetさんのことですか?

一緒に配信されておられましたよね?」



『ええ、プライベートではそう呼んでおります。』



「煕規は。」



『はい。』



「お役に立っておりますか?」



『年長者と言う事もあり、役に立つか否かで彼を見た事はありません。

ただ恩義は感じております。』



「お気遣い痛み入ります。」



『いえ、リップサービスではありません。

色々と指導を賜っておりますし…

未熟な私が過ちを犯さないように、絶えず見守って下さっております。』



あまり良い答えでない事は自覚している。

この当主は、若い息子が一人前面する事を決して好ましく思わないだろう。



「異世界と地球では、どちらが楽しかったですか?」



目から笑いが消えている。

ああ、そっか。

息子の取り巻きが人間か怪物であるかを判別しておく必要はあるよな。



『ヒロインが登場するまでは、どちらも楽しかったですよ。』



俺の回答が意表を突いたものだったのか、寺之庄煕顕は一瞬だけ驚愕を表に出して、すぐに平静を取り戻した。



「もしも不躾な質問であったのであれば御寛恕下さい。」



『いえ。

お気遣いなく。』



しばらく無言で見つめ合う。



「埋め合わせという訳ではないのですが、何か私にお手伝い出来る事はありませんか?」



真摯な目で俺を覗き込む寺之庄の言葉を、急いで反芻する。

何が言いたい?

発言の意図はなんだ?

この男は話をどう持って行きたいのだ?

上級国民語に翻訳すれば、《寺之庄家に関わるな》と解釈するのが妥当そうだが…



『…お心遣い恐縮で御座います。』



「陰徳を積まれておられるようで…

丁度、我が身を恥じていた所です。」



…陰徳?

子供食堂の話か?



『いえ、ただ欲するままに振舞っているだけです。

きっと皆様には多大なご迷惑を掛けていることでしょう。』



「…歌舞伎町を舞台に選んだのは、そういう意図ですか?」



『さあ、どうでしょう。

でも、勇気を出して訪れてみて良かったと感じております。』



「…今の遠市さんですが。

政治的にかなり危ない橋を渡っておられる様に感じます。」



『と言いますと?』



「再分配論をやや前面に押し出し過ぎている観があります。

いえ!

素晴らしいお考えだとは思いますが、現在の国内情勢・国際情勢を鑑みれば…

遠市さん御自身を脅かしてしまうのではないかと心配しておりまして。


申し訳ありません。

あくまで遠市さんのお立場と御安全を案じてのことです。

出過ぎた老婆心であるとは自覚しているのですが…」



ああ、その警告で呼びつけたのか。

まあな、貧民の俺の言動に社会主義・共産主義・国粋主義の要素が混じっていない訳がないし、地主の彼がそれを敏感に嗅ぎ分けれない筈もない。

確かに、名門・寺之庄家の存亡の危機である。



『子供食堂、という名称はいずれ変えたいのですが…

増やすつもりでおります。

ヒロノリさんの出稿した広告にも記載してあるのですが

《全ての人民が住居や食料に困らない社会の構築》

それが活動のゴールです。』



「素晴らしい御志だと思います。

何かお手伝い出来ることがあれば是非。」



言葉とは裏腹に、寺之庄煕顕の笑顔は固い。

そりゃあそうだろう。

俺は彼が想定し得る限り最悪の存在なのだから。



『一つだけ、お願いがあります。』



「…はい。」



「息子さんを下さい。」



とりたて、他に願ってやる事は思いつかなかった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




当然、キャンピングカーは置いていく。

今まで我が物顔で使っていたが、元は寺之庄煕顕の所有物だからである。

ベッドマットを勝手に捨てた事を詫び、弁償を提案するが謝絶された。



「丁度、廃車にする予定でした。」



微笑を湛えながら、そう返して来る。

確かに、俺が彼でも痕跡は可能な限り消すな。



門前の反対側では、ヒルダと婚約者さんが談笑している。

どんな遣り取りがあったのかは想像も付かないが、弓長の表情を見るに、彼女にとってさぞ残酷な一時であったのだろう。


俺が観察していると、婚約者は一瞬だけ振り向いて上品な微笑を浮かべた。

こちらも黙礼しておく。



手筈通り、搭乗車両を割直す。

俺は平原車に乗り込む。

婚約者さんがヒルダ車に乗り込んだようにも見えたが、生憎俺は忙しい。



『寺之庄先生。

窓越しの挨拶で恐縮ですが、これでお暇させて頂きます。

お気遣いありがとうございました。』



「いえ、大したもてなしも出来ず申し訳ありませんでした。」



『…。』



「…承諾します。」



『?』



「お譲り致します。

お役に立てて頂けますと幸いです。」



『ありがたく頂戴致します。

決して粗略には扱いませんし、これが大きな借りである事を認識し続けます。』



当然、寺之庄煕顕はそれについて何のコメントもしない。

極めて妥当な反応である。


お互いアホらしいので窓越しに頭を下げ合って別れる。

随分無益な一時であった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



帰り際に挨拶も兼ねて谷口翁に顔を見せる。

大阪土産を切らしていたので仕方なく名古屋土産を渡しておいた。

ツキノワグマの出没が増えていると聞かされたので、万が一捕らえた場合に江本を実験台として送り込む可能性を伝える。

これは勘だが、ツキノワグマの経験値は恐らく100ポイント。

今後の展開も鑑みて、江本を使ってより正確な数値を割り出しておきたい。


あの男の活躍でシカが20ポイントであると、ほぼ確信出来たからな。

今日から早速積極的に買い取って行く。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


4億5611万8010円

  ↓

4億5551万8010円



※谷口一晃に60万円を支払い。


(日当20万円+イノシシ捕獲褒賞20万円+シカ捕獲褒賞20万円)



【推定経験値】


「遠市厘」


イノシシ1匹

40×1=40ポイント


シカ1匹

20×1=20ポイント



《経験》 3363→3462


本日取得 60

本日利息 未取得



※レベル10到達まで合計5110ポイント必要



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「トイチさん。

殺生が必要なら、牧場や屠殺場を紹介しましょうか?」



谷口翁の提案はいつも的確である。

ただ残念ながら家畜は経験値にカウントされない。

何千年もレベリングを研究していた異世界人達にとっての一般常識である。


地球でも同様だとは思うが、レベリング実験台を江本以外に確保出来たら、そいつは家畜担当にしても面白いかも知れないな。



「人間は殺しちゃ駄目ですよ?」



谷口翁が俺の顔を覗き込んで来る。

どうやら、かなり凶悪な笑みを浮かべてしまっていたらしい。

危ない危ない、自重しなくちゃね。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



福井の空は低い。

幸いにして雨は降らなかったが、《弁当忘れても傘忘れるな》の言い伝えが残っているだけの事はある。

寺之庄曰く、北上して福井市内に抜けても空は変わらないらしい。

西進して敦賀に入ればやや明るいとのこと。



「おう、リン。」



『何すか?』



「結局、あのお嬢さんプリウスに乗ってるみたいだぞ?」



『いいんじゃないんすか?

奥様に話し相手が多いに越したことはないでしょう。』



「なあ、女同士って何の話をしてるんだ?」



『さあ、強姦魔への告訴手順とかじゃないっすかね。』



俺と平原は大笑するが、倉沢弁護士は顔を顰めている。

まあ、笑い事ではないよな。



『それにしても、今夜は名古屋に泊まらざるを得ないですね。』



「オマエ1人なら今日中に東京に帰れるのだろうが…

流石にこの大所帯だと小回りが効かんな。」



『まあ、東京に家がある訳ではないですし。』



「それ、意識してやってるのか?

スマホも銀行口座も住所もないって

ステルス戦術のつもりか?」



『個人的にはステルスが好みなんですけど。

あの女が居る限りステルスなんて夢のまた夢ですよw』



「ああ、夜色なぁ。

アイツ、まーたバズってやがる。

ほら、俺のスマホ見てみ。」



『ん?

Twitterですか?』



「トレンドってあるだろ?」



『ええ、《みそきん》《ワグネル》《大谷翔平》。』



「注目の検索ワードが表示されるんだ。」



『へー、《水星の魔女》《ルナルナ》《藤井八冠》。

色々あるんですねー。


…ん?』



「アイツ、凄いぞ?

特に今日なんかTVで司会者殴ってたからな。」



『ああいう目立ち方は好ましく無いですねえ。

あんな女がもてはやされると、模倣犯が増えてしまいます。』



「報道されてないだけで模倣犯は多いと思うけどな。」



『あ、鷹見が配信始めたってtweet流れてます。』



「勤勉だなぁ。」



『配信聞きます?』



「いや、別に。

名古屋までもう少し掛かるから、オマエが見とけよ。」



『いや、別に。』



「じゃあFMでも聞くか。

女受けのする選局のコツを教えてやるよ♪」



『え、そんなのあるんですか!?

興味あります!』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




【大阪昼の陣】 ルナルナVS空城の計 [雑談]


※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます



「どうもー。


FANZAアダルト動画ランキング1位女優!

めでたく在阪TV局から出禁になりました!


相模の獅子ッ!!

ルナルナ@貫通済でーーす!!!」



「呼ばれて飛び出てニャニャニャニャ―ン♪


大麻解禁は国際化の証!

愛読書はテコンダー朴!

ジャップランドをトリモロス!!


皆のオナキャット♪

奈々ちゃんだニャ―♥」



「「2人合わせて!!」」



「「夜猫@でーす♪」」



「ねえ、奈々ー。

コメント欄が洒落にならないことになってる!」



「というかプレゼントエフェクトが激し過ぎて画面が見えないニャw」



「しゃーない、人気者の宿命だ。

奈々、切り替えて行くぞ!」



「はいニャ!」



「はいっ! というわけで!

本日も大阪府箕面市のコテージから配信しておりまーす。

ウ↑チ↓とダーリン様の愛の巣でーす♥」



「その割に不穏なタイトルだニャ―(呆)」



「いや、まさかねー。

戦い疲れて帰って来た愛の巣が…

夜逃げ済みなんてね。

奈々は残ってくれてありがとね。」



「ランチに行って帰って来たら誰も居なかっただけニャ…」



「と言う訳で、男に逃げられた…

憐れなAV女優2人で、この配信をお届けしまーす。」



「改めて言葉に出すと地獄ニャー(号泣)」



「さて!」



「はいニャ!」



「いよいよイベント日も近づいて参りました!」



「オマエラー、後4日だぞー。

指が砕け散るまで告知tweetをRTし続けろニャ!」



「最近告知ばっかりでゴメンね。


ウ↑チ↓が主演・監修した

《主観フェチ動画 黒スト天国》

のリリイベを、箕面萱野駅前スペースで開催します。」



「いえーい、ぱちぱちぱちー♥

いよいよ4日後リリースニャーー!!!」



「当日は豪華ゲストとして!

孤高のAV職人・マグナム堀内!

元祖爆乳女優・安寿りりな!

カリスマヤマンバ・エリザベータ舞桜!

の3名も来場して下さります。」



「ニャ、ニャ、ニャ、ニャンと!

安寿りりな様からは

《豪華プレゼントを用意している》とのメッセージを頂いておりますニャ!」



「いや、捨て忘れたブラだろどうせw」



「ネタ潰し禁止ニャーwww」



「関西のイベントって事で来れない人も多いと思うけど。

一応オンラインでも催し考えてます。

ファンティアの貢ぎマゾプランに入ってくれてる人には寿司ペロ動画に加えて!

フードクラッシュ動画もプレゼントします!」



「ヒールにご飯粒がこびりついて悲惨だったニャww」



「それで、非課金勢にもサービス♪

リリースから期間限定で足コキ動画公開しておきまーす。」



「お姉様、期間、期間。」



「あ、ゴメン。

1週間限定でーす。

期限過ぎたら消すんで見たい人は早めに御視聴下さい。

8分尺だから気軽に見てねー♪」



「買っえニャー♪」



「はい、告知終わり。

それでは本番、鬱モードに入ります。」



「お姉様ー、気にし過ぎだニャ。

捨てられた訳じゃくて、単に忘れられてるだけニャ。」



「それ、逆に辛い。」



「よーし、よしよし

なでなでー。

はい、本日の百合営業ノルマ達成ニャ。」



「ねえ、恋バナしていい?」



「駄目、新作の初動が鈍るニャ!」



「アイドルは恋愛禁止だからねえ。」



「ちな、AV女優はセックス禁止ニャ!」



「マジかー。

結構世の中厳しいよなあ。」



「ちな、害悪系配信者はカメラの回ってない所で犯罪禁止ニャ!」



「うーーーん。

ちょっと位よくなくない?」



「アイドルの恋顔も!

AV女優の絡みも!

害悪系の暴力も!

カメラの回ってない所でヤラれたら取れ高的に損ニャ!!」



「まあねえ。

じゃあ、ダーリン様をボコるか殺す時は配信中に限定するわ。」



「うんうん♥

これでルナお姉様も同接100億越えニャ♪」



「サーバー持たないだろww」



「あ、質問来たニャ。

《たぬき忍者》さん、イベントではお触りありですか?

だって。

どうするニャ?」



「ウ↑チ↓は別にいいんだけどさ。

女優さんには触るなよー。

怖いお兄さんが出て来るぞー。

向こうのケツモチに詫び入れに行くのウ↑チ↓だからな。

仕事増やさないで欲しい。」



「コイツ、ルナお姉様を触りたがってるニャ。

《ブレーメンの梅澤隊》さん、首四の字を掛けて欲しいです。」



「人数にもよるわな。

来場者数10人だったら、1人6分ボコってやっても1時間で全員にサービス出来るんだよ。

でも100人来ちゃったら1人30秒チョイしか構ってやれない…

あ、100人なら捌く自信あるわ。」



「お姉様なら1000人来ても1人3秒殴りそうな気がするニャ…


うお、コメントの方向性がキモくなって来たニャ!

《呂布水洗》さん、コブラツイストされたいです。

《たぬきボール2号》さん、キャメルクラッチで公開処刑されたい。

《モチモチ団子》さん、縦四方固め希望。」



「プロレス大喜利やってんじゃねーーーwww」



「でも実際、イベント内容。

来場者数で大幅に変わって来るニャ。

見込み何人ニャ?」



「さあ。

当日になればわかるだろ。」



「ここら辺害悪系配信者の強みだニャ。

今のお姉様、事故やトラブルを待ち望んでる笑顔してるニャ。」



「へっへっへーw

どうかなあww」



「お、質問来たニャ。

《リザードフライ》さん、スタッフ募集してないんですか?

どうニャの?」



「いやあ、三橋にしてもよっぴーにしても目に付いたから狩っただけだからな。

労働力に関しては配信中に拳で確保するのが一番楽だからなあ。」



「げ、現代社会で平然と奴隷制を運用する奴ぅ。」



「奴隷じゃねーよ。

仲間だよ。

だから給料払ってないんだけどさ、何せ仲間だから。」



「悪質ぅ!」



「いいんだよ、エロいことを色々してやってるんだから。

ダーリン様が残していった食料食わしてりゃ死なねーだろ。」



「うーーん、でもリスナー達が羨ましがってる事は事実ニャ。

《アベモリゾー》さん、今すぐ自衛官辞めてルナルナの奴隷になりたい。

うん、脱柵野郎は銃殺刑ニャ。

《こんち》さん、九州でなら手伝えますトラクター運転出来ます。」



「九州なぁー。

行く機会あるのかな?

ダーリン様次第。

連絡も付かんけど。

おい三橋、ダーリン様に連絡取ってみて。」



「お、痴話喧嘩実況ww」



「しねーよww


え、マジ?

ワンコールで出たの?

何でウ↑チ↓を毎回無視する癖に三橋には一瞬で出るんだよ!」



「はーい、修羅場実況タイムですニャーww

お姉様、スピーカーONで♪」



「ああ、どうもッス。」



  『あれ?  三橋さんは?』



「第一声がそれかよ。


まあいいや、ダーリン様

今どこッスか!?」



  『ふくいー。』



「またウチの知らん間に知らん土地に…

それどこ? 近所?」



  『福井って県があるんだよ。』



「えー、マジっスか。

ウ↑チ↓は聞いたことないけど。」



「いや、授業で言ったニャ。」



  『あ、ゴメン。

  もう滋賀だわ。

  このまま名古屋に…』



「じゃあ、今日は名古屋に泊まるんスね!?」



  『うーーん。  米原か浜松になるかも。

  あ、そうか。  飛騨方面もあり得るな。

  ちょっとわからない。』



「そっすか。

お忙しいことで。」



  『あのさあ。

  伊藤さんの墓参り、オマエも来るか?』



「え?  誰?」



  『ほら、体育教師の。

  …自殺した。』



「ああ、居ましたね、そんなオッサン。

墓参り行くんスか?」



  『そりゃあ、俺達は当事者だから。

  供養を怠る訳にはいかんだろ。』



「死んだ人間のみに向けられるサイコパスの情愛よ。」



  『生きてる人間も大切にしてるつもりなんだがな。』



「ウ↑チ↓置き去りにされたんですけど。」



  『ん? 拠点はしばらく確保してるから

  そのまま使ってていいぞ。』



「いや! 論点はそこではなく!」



  『? ? ?』



「もういいッスよ。

ウ↑チ↓、大阪で用事あるからしばらく離れられないんスよ。」



  『ああ、イベント開くんだってな。

  頑張れよ、応援してる。

  じゃ、俺は忙しいから。』



「ちょっと待てやーーーー!!」



  『うおっ、いきなり大声出すなよ。』



「寂しいッス!!」



  『え?』



「ダーリン様が全然構ってくれないから!!

孤独で狂いそうっス!!」



  『孤独は思索の友だぞ?』



「哲学の話をしてんじゃねーーー!!!」



  『落ち着けよ。

  どうしろって言うんだよ。』



「抱いて下さいよ。

それでFC2でカップル配信させて下さい。」



  『わかった。』



「お!!!」



  『母に可否を尋ねておく』



「またかよおおおおおおおお!!!!

そのオチ聞き飽きたよおおおおおお!!!!


でも、コメ欄滅茶苦茶盛り上がってるよおおお!!!!」



  『?  …おい。

  オマエ、ひょっとしてこの会話も配信してるのか?』



「してます!」

「してるニャ!」



  『あのなあ、幾ら夫婦とは言えプライバシーに配慮しろよ。』



「…え?  ちょ、今なんて?」



  『いや、俺にもプライバシーあるからさ。』



「その1個前!」



  『いや、この会話も配信してるのかなって。』



「キーワードを外すな―!!!」

「ラブコメのテンプレニャw」



  『? ? ?』



「ウ↑チ↓ら夫婦なの? 

え? え? え?

壊された脳が強制回復してるんスけど。」



  『いや、正式に側室入りが承認されたじゃん。』



「アレはマジな話なんスか?

え? ネタじゃなくて?

法律的に認められないと思うんスけど。」



  『いや、母が認めている訳だからな。』



「お、おう。

脳が混乱する。」



  『じゃ、俺はこれで。』



「あ! ちょ! 待っ!


…切りやがった。


怒りのあまりスマホを叩きつけようとして

三橋のモンだって思い出したわ。

ほい、サンキュっ♪」



「おめでとニャ。」



「めでたいんスかね?

1ミリも嬉しくないし何なら殺意を押し殺すのが大変なんだけど。」



「うーーーーん。

今のトイチは明らかに登り調子。

奈々ちゃんの想定を遥かに上回る大物になる可能性はあるニャ。」



「だなー。

あの人、どんどん取り巻き増えて絡み辛いんだよ。」



「でも、ルナお姉様だって囲いが増えまくってるニャ。」



「…一気に増え過ぎだろ。

特にさっきYahooニュースのトップに掲載されてから

完全に軌道に乗ったわ。」



「カネがカネを産むように

知名度が知名度を産む時代になったニャ。

今日TV局で暴れたのは害悪的には最善手だったニャ。」



「うん、ウ↑チ↓もさっきTwitter見て驚いた。

ほら、感情的にTVを嫌ってる層ってあるじゃん?

ソイツラが《敵の敵は味方理論》でウ↑チ↓を応援してくれてるっぽい。」



「ああ、わかるニャ。

《次は○○をボコって下さい系》の書き込み多過ぎだニャ。


…どうして、あんなことしたニャ?」



「最初から態度の悪い連中だったんだけどさあ。

いや、我慢はするつもりだったよ?

ただ、ダーリン様を侮辱されて…

思わずカッとなって…

気が付いたら警備員にヘッドロックしてたね。」



「お姉様的には通常運転だニャww

その映像見逃したのが残念ニャww」



「告訴されたら裁判の時に証拠として流されるんじゃない?

知らんけど。」



「ス●ローと揉めてる最中にメディアを敵に回してどうするんだニャww」



「うーーーん。

ウ↑チ↓にとっては世界なんてそもそもが敵だからな。

別に減ろうが増えようが…

ダーリン様以外はどーでもいいよ。」



「で?

そのダーリン様はあの調子、とw」



「だな。

…世の中、中々上手く行かないわー。」



「配信者としては順風満帆だニャ。」



「まあな。

1発1000円の花火エフェクトが途切れない訳だからな。

この配信見てる奴、ウ↑チ↓らの顔見てるのか?」



「ツイキャスに移行するニャ?」



「つべとツイキャスは永久BANされてるからなあ。

ニコニコは垢BANで済んでた気がする。」



「ならTVは温存しとけニャ。」



「いやあ、今日生まれて初めてテレビ出たけどさ。

アレは駄目だわ。

発信って自分が編集権持ってないと意味ないのね?

例えばテロップとかもそうじゃん?

照明の向きや共演者のチョイスもそうだよね?

だから、こっちが向こうの枠そのものを買い取る形でもない限り、もう出演する事はないと思う。」



「うーーん。

TV業界には申し訳ないけど正論ニャ。

当面、ふわっちかニャぁ。

予備でツイキャス・ニコ生。」



「じゃあ、今度ニコ生試してみるわ。

ありがたい話だけど、花火途切れねえなあ。

《シクラメン》さん、おカネ勿体ないから連発は止めときな。

他にも10発以上花火上げてくれてる人居るけどさ。

カネは大切にしとけ。」



「うーーん。

ヘビーユーザーが何万円も課金してる感はあるニャ。

特に…

《へっぽこ大明神》さん

《ケツ穴電池》さん

《天草四郎童貞》さん

《味噌カツたぬきしめん》さん

《オラオラオラオラ》さん

花火上げすぎニャ


後、奈々ちゃんが発言する度にハートを連投してくれてる

《やっくんのパパ》さん。

その愛情をやっくんに向けてやれニャ…」



「結論としては。

オマエラ無駄遣いすんなってことで。

後、《次は○○を襲撃して下さい系》のコメントは読まないからな。

男の癖にそういう女々しい生き方はヤメロ。」




「あ、ちょっと待って。

会場が解かりにくいってコメントがあったニャ!

地図が小さい?」



「ああ、確かにな。

初大阪の人も居るからな。

新幹線で来る奴はそのまま御堂筋線で箕面萱野駅に来てくれればいいんだけど。

飛行機勢…

えーーー、関空からは遠いんじゃないか?

おい三橋、関空からここまでって…

ああ、やっぱりそれくらい掛かるんだ。

伊丹空港? ん? そんなのがあるの?

ゴメンね、ウ↑チ↓も土地勘無いから。」



「スタッフ君が新しい地図を貼り直してくれることになったニャ!

完成次第、告知垢で拡散するから、それを参考にして下さいニャ!」



「さて、今日は告知と愚痴だけで特に何もない日だったな。

みんな、ゴメン!

今日はハズレ回。」



「いや地上波で血飛沫飛ばしておいて

《何もない》と言い切れる神経が怖いニャ。」



「ああ、アレな。

TV業界には色々言いたい事があったけど…

ダーリン様への殺意に上書きされちゃった。」



「トイチはなー。

担任してた時からイラつく生徒だったニャ。

そりゃあ、あんなんと付き合ったら殺意湧くに決まってるニャ。」



「でも、ちゅき♥」



「メンヘラやめーニャww」



「えっと、そろそろ時間が無くなってきたので…

明日の話しよっか?」



「はい、皆さん!

明日はストーカー配信するニャ!」



「さっき急遽決まったんだけど。

ダーリン様に置き去りにされて、ウ↑チ↓本当に怒り狂ってるのね?

いや、さっき《妻》とか言われて、もう堕ちかけてるんスけど。」



「明日はトイチへの制裁配信に決めたニャ!

取り敢えず、何も考えずに追跡!

まずは奴を死角から撮影するニャ!」



「それでねー。

もしもダーリン様がウ↑チ↓の知らない女とイチャついてたら…

多分殺すと思う。」



「あ、この目は本気ニャ。」



「まあねえ、仮に成功したら

その直後にウ↑チ↓も姑に殺されると思うんで。

この配信は遺言だと思って下さい。」



「鎌倉武士でもここまでエグイ死生観は持ってないニャ。」



「と言う訳で、明日はラブラブダーリン様への愛の追跡行配信となります。

場合によっては、そのまま殺人実況に移行します!

はい、次回予告終わり。」



「殺人宣言とほぼ同時に同接1万5000突破ニャぁ!!」



「別に殺したい訳じゃないからな?

あくまで愛だからな?」



「愛は免罪符じゃないニャーww」



「はい! と言う訳で、この配信は!

相模の獅子ことルナルナ@貫通済と!」



「可愛過ぎてゴメンニャさい♥

人類の恩師、奈々ちゃんが!」



「「お送りしましたーーーー!!!」」



「「それじゃあ!

まったねーーー♥」」



【この配信は終了しました】



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



名古屋にて飯田清磨と合流。

再会を楽しむ間もなく、急いでカネを積み替える。

この名古屋市中区の宿所は車を2台しか停められない。

なので、とても手間取る。

通行人にチラ見されるのは好ましくないので、皆一様に無言。



『清磨さん。』



「んー?」



『もう名古屋で拠点定めちゃいましょうか?』



「だね。

名古屋駅or名古屋IC付近で決めちゃおうか。」



『駐車場が確保出来て…

ベッドルームが多数あって…』



「自分で建造した方が早そうww


はい、16時40分。

もう建物に入ってー。」



『はーい。』




俺は皆に促され部屋に入る。

平原には一度もスキル説明もした事はないが、何となく概要を理解しているらしく、自分から席を外した。

特にコアメンバーとも同調する気配はない。


後藤・江本・安宅の3人が物凄いスピードで現金のつまったリュックを部屋に運び入れ、シートを敷いてから床に並べた。

俺達は急ぎ、一千万円札束を目視でカウントする。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


4億5551万8010円

  ↓

28億5551万8010円


※出資金24億円を預かり



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『後藤さん。

金額、膨れてないですか?』



「そらぁ、大阪セミナーに居た社長さん達がキャッシュを死に物狂いで集めてますから。

実際、申し入れだけなら100億越えてますよ。」



『へえ。

まあ、ポンジになってしまわない様に、皆さんで細心の注意を払っておいて下さい。』



「あ、それと。

また詐欺実演やって欲しいそうです。」



『実演なんて一回やったら十分でしょ?』



「ははは、わかってる癖にww」



『まあ、そうですよねw

詐欺なんて1回遭ったら十分ですけど、高配当は毎日でも欲しいですからね。』



「何人かの社長さんから

《神聖教に改宗するから直接詐欺して欲しい》と

泣きつかれてます。」



『いや、別に私は布教の意図がないので。

神聖教の話をしたのは、あくまで自己防衛+自己開示の一環です。


…まあ、落ち着いたら大阪には顔を出しますよ。

但し、あくまで篠山のついでにはなってしまいますけれど。』



「例えついででも喜ぶと思いますよ。

オンラインセミナーの希望者も多いんですけど

断っておいてええですね?」



『はい。

映像に残されるのはデメリットでしかないので。』




さて、17時か。

最近、慌ただしいから、もう少し落ち着かなきゃ駄目だな。



《2億5699万6600円の配当が支払われました。》



『はい、出ました。

皆さん、集計お願い致します。』



「…トイチさん。

この高額を見ても全然動じはれへんですね。」



『…個人としては身の丈を越えた高額だと考えておりますよ。

私一人を養う分には充分でしょう。』



「全員食わせるんですか?」



『まあ、成立しないとは思いますけど。

全員に対してのバラマキは行います。

その過程で、皆にとっての益の産み出し方が練り上げられていく事でしょう。』



「俺が受け取ったカネw

インフレで全部消えそうですw」



『カネが消えた世界で、次に欲されるものがあればリストアップしておいて下さい。

穀物であれ貴金属であれ、頑張って増やしますので。』



「うーーん。

トイチさんでも無理ですよ。」



『私では力及びませんでしょうか?』



「だって貨幣経済社会が崩れたら、女性が通貨代わりになりますもん。

目に見えてるやないですか。」



『…なるほど、そうなる可能性は高いでしょうね。

というより、原始社会はそうだったのかも知れません。』



「トイチさんのスキルは

《自分の資産を増やすこと》

ですよね?」



『ええ、保有資産に対して自動的に日利が支払われる能力です。』



「貴方、女性を資産とは思ってないでしょ?

だからスキルが発動しないと思うんです。」



『負債でしょ?』



「うおっ、怖い本音が出た!」



『わかりました。

このスキルに負債を増やす作用が無いかを探って行きましょう。

希望者には負債を分配する事を約束します。』



「この人、怖いーー。」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


28億5551万8010円

  ↓

31億1251万4610円

  ↓

30億6451万4610円

  ↓

6億6451万4610円


※配当2億5699万6600円を取得

※配当金4800万円を出資者に支払い

※出資金24億円を別に保管



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




6億6千万かぁ。

これに日利9%が付いてしまうから…

今後は毎日、6000万円の配当か。


…うーーーん。

マズいな早々に組織が不要になってしまった。

いや、不要と言うのは言い過ぎか。


狩猟のコネとかが完成してしまった事が原因なんだよな。

スマホも平原が買ってくれるらしいし。



「トイチさん。

名古屋城、下見しておきますか?」



『そうですね。

もう4日後ですものね。

是非、検分しておきたいです。』



疲れが溜まっていたので、内心眠りたかったのだが…

皆で名古屋城参詣と洒落込む。

勿論、今日はヒルダに土産を買ってやるつもりである。

こう見えて俺なりに気を遣ってるからね。


同じ中区だったので、タクシーで向かう。



『あー、こういう立地ですかぁ。』



「リン君、どうした?」



『あ、いや。

ここ官庁街ですね。』



「ゴメン、もっと街中の方が良かった?」



『いえいえ、清磨さんは悪くありませんよ。

ただ漠然と繁華街を想像していたもので。』



「じゃ、次は立地からだね。」



『はい。

次は駅地、繁華街、出来るだけ多くの人口をカバー可能な土地で…』



「新宿かなぁ。

あと池袋もだね。

横浜でもいい。

関西だったら梅田・難波になるのかな?

案外難しいよね。」



しばらく堀の周りをグルグル回ってから、城の北側の名城公園で休憩。

名古屋城を肴に軽く呑む。

改めて皆に平原猛人を紹介。

隼人との経緯からをちゃんと説明する。

特に歓迎はされてなかったが、正式に連絡先交換を行う程度には打ち解けていた。



「勘違いするなよ。

俺はリンに世話になってるだけで、オメーらと慣れ合うもりはねーから。」



「平原さーん。

それ仲良くなってまうフラグやないですか。」



一同笑。



その後も、名古屋城の立地を確認する為、周囲を歩き回る。

完全に官庁街、オフィス街だな。


だからヒルダへの土産を買いそびれたのは仕方のない事なのだ。

【名前】


遠市 †まぢ闇† 厘




【職業】


東横キッズ

詐欺師

神聖教団信徒




【称号】


女の敵




【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)


《LV》 9

《HP》 鼻骨骨折疑惑

《MP》 強い

《力》  女と小動物なら殴れる

《速度》 小走り不可

《器用》 使えない先輩

《魔力》 ?

《知性》 悪魔

《精神》 女しか殴れない屑

《幸運》 的盧


《経験》 3774


本日取得 60

本日利息 312


次のレベルまでの必要経験値1336


※レベル10到達まで合計5110ポイント必要

※キョンの経験値を1と断定

※イノシシの経験値を40と断定

※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと仮定

※経験値計算は全て仮説




【スキル】


「複利」 


※日利9%

下2桁切り上げ 




【所持金】


6億6451万4610円




【所持品】


jet病みパーカー

エモやんシャツ

エモやんデニム

エモやんシューズ

エモやんリュック

エモやんアンダーシャツ 

寺之庄コインケース

奇跡箱          

コンサル看板 




【約束】


 古屋正興     「異世界に飛ばして欲しい。」

 飯田清麿     「結婚式へ出席して欲しい。」

〇         「同年代の友達を作って欲しい。」

          「100倍デーの開催!」

          「一般回線で異世界の話をするな。」

〇後藤響      「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」

          「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」

 江本昴流     「後藤響を護って下さい。」

×弓長真姫     「二度と女性を殴らないこと!」

×         「女性を大切にして!」   

〇寺之庄煕規    「今度都内でメシでも行きましょう。」

×森芙美香     「我ら三人、生まれ(拒否)」

×中矢遼介     「ホストになったら遼介派に加入してよ。」

          「今度、焼肉でも行こうぜ!」

〇藤田勇作     「日当3万円。」

〇堀田源      「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」

〇山田典弘     「一緒にイケてる動画を撮ろう。」

〇          「お土産を郵送してくれ。」

 楢崎龍虎     「いつかまた、上で会おう!」

 警視庁有志一同  「オマエだけは絶対に逃さん!」

×国連人権委員会  「全ての女性が安全で健(以下略)」

〇安宅一冬     「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」

 水岡一郎     「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」

×平原猛人     「殺す。」

          「鹿児島旅行に一緒に行く。」

          「一緒にかすうどんを食べる」

 車坂聖夜Mk-II   「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」

 今井透      「原油価格の引き下げ。」

 荒木鉄男     「伊藤教諭の墓参りに行く。」

 鈴木翔      「配信に出演して。」 

×遠藤恭平     「ハーレム製造装置を下さい。」

〇         「子ども食堂を起ち上げる。」

〇田名部淳     「全財産を預けさせて下さい!」

 三橋真也     「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」 

 DJ斬馬      「音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用する。」



〇木下樹理奈    「一緒に住ませて」



×松村奈々     「二度と靴は舐めないにゃ♥」

〇         「仲間を売るから私は許して♥」



〇鷹見夜色     「ウ↑チ↓を護って。」

〇         「カノジョさんに挨拶させて。」

〇         「責任をもって養ってくれるんスよね?」



×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」

          「王国の酒…。」

          「表参道のスイーツ…。」 

×         「ポン酢で寿司を喰いに行く。」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ニコニコがサイバー攻撃で落ちていない [気になる点] 資産扱いされた人間の何が増えるのか
[一言] 「可愛過ぎてゴメンニャさい♥ 人類の恩師、奈々ちゃんが!」 ウチらの某界隈にも全人類の父と呼ばれてるヤツがいるんですが、主語がデカすぎる表現は笑えるので好きですw
[良い点] ヒロインが登場したの最序盤じゃないですかー!やだー! [気になる点] 最能、狙ったのか誤字なのかわからない
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