【降臨33日目】 所持金4億6131万8010円 「MarkⅢ計画始動」
俺の目的は異世界でも地球でも大して変わらない。
言うまでもなく【格差解消】である。
俺は全ての人民が公平に福祉を享受出来る社会を構築する。
その為にはスキル【複利】を用いて巨万の富を築く必要がある。
政治とは《支援と分配》を目的とするべきであるのだ。
誰にも実践する意志が無いのであれば俺が正義を完遂するしかない。
現に異世界では成し遂げた。
地球でもカネ配りを断行する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昨日、夜中に飯田とラーメンを食べに行く約束をしていた。
だが、軽くソファーに寝転んだ瞬間に意識が飛んでいたらしい。
目が覚めると、とっくに朝で身体には毛布が掛けられていた。
飛び起きて詫びる。
『清磨さん、スミマセン。
何か…
寝ちゃってました。』
「ああ、いやいや。
疲れも溜まっていたみたいだから無理しないで。
ベッドまで距離があったから運べなかったんだ。
こっちこそゴメンね。」
振り向いて時計を見ると9時を過ぎている。
思っていた以上に疲労があったのかも知れない。
少し先に起きたらしい寺之庄も向かいのソファで丸まっている。
江本に至ってはフローリングで握力計片手にうたたねしていたので、もう少し睡眠を取って貰う。
「う、う…
トイチさぁん、身体能力に変化はなしですぅ…」
『無理をさせてしまって申し訳ないです。
でも、ちゃんと睡眠は取って下さいね。』
「ベッドで寝たいですぅ。」
飯田と共に江本を担いでベッドに投げ込む。
「リン君、ヒロノリ君。
風呂は沸かしておいたから、汗を流したらコーヒーでも飲みに行こう。
昴流君は… 寝かしてあげた方が良さそうだね。」
言葉に甘えてシャワーを浴びる。
目は覚めないが、レベルアップした事を思い出し充実感がフラッシュバックする。
悪い気はしない。
『ヒロノリさん。』
「んー?」
『私の操縦桿は私以外が握った方が上手く行くと
改めて痛感しました。』
「じゃあ、お母さんに全部任せるw?」
『そうならない様にも天才ゲーマーさんに期待ですねw』
「ふふっ、今日もハードレベリングしようか?」
『いやあ、勘弁して下さいww
効率プレイでお願いします。』
「はははw
確かに昨日みたいな生活を続けていれば身体を壊してしまうね。
わかった、コーヒーを飲み終わったら作戦会議と行こう。
飯田さん、ありがとうございました。
かなり頭がスッキリしました!」
「ヒロノリ君も昨夜は辛そうなイビキをかいていたからね。
もうあんな無茶な運転はやめておこうね。」
「はい!」
髪も乾かしたので3人でフラフラと歩いて近所の喫茶店に入る。
名古屋のモーニング文化には前から興味はあった。
(安く腹一杯というコンセプトは素晴らしい)
店に入った瞬間。
《失敗した!》
と3人で思った。
店主夫妻の距離感が非常に近い店だったのだ。
俺達がドアを閉め終わるよりも早く…
「いらっしゃあい!
あらあ、若い子ね♪
お兄さん達、学生さん?
あら、この辺の子じゃないの?
旅行!? どこから!?」
と奥さんが駆け寄って来る。
『あ、昨日大阪から。』
「あらあ、珍しいわねえ。
私もいつか旅行行きたいわあ。」
好奇心に目をキラキラさせた店主夫妻を見て、ここでの作戦会議は諦める。
さっと飲んで帰ることに決めた。
『…じゃあ、コーヒーで』
「もう一つコーヒー。」
「あ、僕もコーヒー。」
店主夫妻は笑顔でジリジリと近寄って来る。
「うん、普通はコーヒーだけ頼むよね!
でもね?
名古屋は違うの!」
奥さんがドヤ顔で分厚いメニューを開いた。
「名古屋にはね?
モーニング文化ってあるのよ♪
な、な、ななんと!
名古屋は都道府県別の喫茶店数全国2位!
喫茶店王国なのよ!」
『へ、へえ。
勉強になります。』
そこでマスターが満面の笑みでオシボリを手渡して来る。
「ウチはねー。
ここらじゃ一番の古株なんだよ?
一宮市の喫茶店が起源主張してるみたいだけど。
コーヒーに食事付けるのはウチが一番早かったからね!
お客さん運がいいよぉ。
日本最古のモーニングを体験出来るんだから!!
大阪に帰ったら宣伝してよね!」
『あ、はあ。』
続いて奥さんが目を輝かせてメニュー説明を始める。
恐らくこの夫婦には台詞分担があるのだろう。
こちらに一切口を挟ませずに交互に主張して来る。
「な、な、ななんと!
ドリンク料金にたったの200円をプラスするだけで!
この豪華食事プレートが付くのよぉ。」
『あ、はあ。
凄いですね。』
「これが名古屋のモーニング文化♥
じゃあプレート付けとくね♪」
『え?』
「マスター、プレートスリー!」
「あいよ! プレートスリー!」
反論するのも面倒だったので、黙って食べて帰る事にする。
「じゃーん!
ポテトサラダ!
あんかけスパ!
味噌エッグ!
こんがりハム!
プチ小倉トースト!」
『あ、凄いボリュームですね。』
「そうよ!
これが名古屋のモーニング文化なの!」
…俺、朝からこんなに食べれないんだけどな。
まあいいや、心を無にして食べよう。
案の定、胸やけがして気持ち悪い。
そもそも論としてコーヒーは元は高級嗜好品なのだ。
常識で考えてボリューム食と相性が良い訳がないだろう。
「どう!?
名古屋の文化は!!
元祖の味わいは!」
『あ、凄いっすね。』
「うふふ、そうでしょー!!」
『でも、200円でこんなにサービスしちゃったら…
採算取れないんじゃないですか?』
俺が言った瞬間、夫妻は唇を噛んで俯いてしまう。
隣の飯田が肘で《話を長引かせてどうする》と非難して来る。
「…原料価格の高騰が、かなり辛い。
特に小麦… 喫茶店と言えばパンだから。」
眉間に皴を刻みながらマスターが絞り出す。
《喫茶にパンは関係ないじゃん。》
と思うが面倒なので黙っておく。
『ああ、小麦どんどん上がってるみたいですね。』
「戦争が悪いのよ!」
奥さんが叫びながら中日新聞を俺の眼前で広げる。
…チュニドラいつも連敗してんな。
「ほら見て!
ロシアが黒海の制海権を完全に掌握って書いてるでしょ!」
『はあ、海峡封鎖してるみたいですね。』
「黒海がどこにあるかわからないんだけど!
その所為で小麦が上がったってメーカーの人が言ってるのよ!」
これは荒木の受け売りだが…
ロシアとウクライナで世界の小麦輸出額の3割占めてるからな。
その上、黒海経由で海上輸送されている比率が極めて高い。
…そりゃあ嫌でも価格上がるよな。
「何もかも値上がりで嫌になっちゃうよ。
円安も止まらないし!
おまけに近所に子供食堂まで出来ちゃうし!」
ん?
『あの、子供食堂って、あったらダメなものなのですか?』
「…補助金目当てでしょ。
ああいう福祉ってさあ。
本当に必要な人に情報届かないものだし。」
『…母子家庭の子供とかに情報が行き渡ってないってことですか??』
「女子供は何だかんだで強者だよ。
愛されるから。
でも、そうじゃない連中っている訳じゃない?」
『そうじゃない連中?』
「…薄汚い一人者の労働者のオッサン。
名古屋は多いんだよ、工業地帯だから。
ああいうの、最近は弱者男性っていうのかな。」
マスターはそこまで話してから会話を打ち切った。
俺の反応がイマイチ鈍かった所為もあるのかも知れない。
働いてるオジサンなら、そこまで福祉を優先する必要はないんじゃないだろうか?
いや、勿論怪我や病気で困ってるのなら助けてあげるべきだとは思うが…
子供食堂って言うくらいなんだから、まだ自助努力が困難な子供を優先するべきじゃないのか?
コーヒーを飲み終わった頃には、奥さんの話題は中日ドラゴンズに移ったので、日頃勝ち星を恵んで貰っている事に内心感謝しながら店を後にした。
会計は飯田が払ってくれた。
俺が礼を述べようとするとウインク混じりに制止される。
「騙されちゃ駄目だよ。
安い店で奢りたがる奴の魂胆って、高い店に行った時にタカる事だから。
リン君はそういう悪い大人の手口を少しずつ勉強して行こう。」
…多少露悪的だが、戒めたい趣旨は伝わって来る。
本当に俺は良き師に恵まれた。
ちゃんと学ばなくちゃな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「軽く眠気払いするつもりだったのだけど。
お腹がいっぱいになっちゃいましたね。」
寺之庄が腹をさするポーズをしながら屈託なく笑う。
この男は育ちが良い。
作法を見ればきちんとした食育を受けている事が窺い知れる。
なので、ああいう炭水化物で腹を満たすような食事は内心苦痛だったのだろう。
「ははは。
それでも完食したヒロノリ君は偉いよw
あ、そうだ。
お腹と言えば、名古屋城のBBQ。
どうしよう?
何も考えずに会場押さえちゃったけど。」
『俺の目的は困窮者への分配です。
だから、少しでも広く分配する方法を考えてくれませんか?
勿論、食材費・広告費には糸目を付けません。』
寺之庄が少し考えた後、スマホ画面を起動した。
「じゃあインスタ広告にアホみたいな予算を注ぎ込んでみない?
金額次第でそれで周知出来ると思う。」
『あ、じゃあもうヒロノリさんに広告費をこの場でお渡しします。
派手に集客して下さい。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
3億3889万7210円
↓
3億3389万7210円
※寺之庄煕規に500万円を広告費として支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「金額大き過ぎ。
僕の口座にいきなりそんな大金が入ったら怪しまれるから
安宅さんと分担するけど大丈夫?
あの人にとってもフォロワーが増えるから悪い話ではないと思うけど。」
『…この金額が大きいとは思いません。
最終的に全人類が飢えに苦しまないシステムを作りたいんです。
勿論、現時点の私がこの発言をしても誰からも相手にされない事は理解していますが。』
「ねえ、ヒロノリ君。
今のリン君の台詞、表現を柔らかくして広告に落とし込める?」
「…しましょう!」
『え?
こんなのが広告でいいんです?』
「少なくとも俺にはキミの本気が伝わったからさ。
理念先行でもいいと思うよ?
まずはスポットでもいいから前例を作って行こう。」
『はい!』
結局、イベントの告知は皆に丸投げすることとなった。
俺はスマホを借りて浜松西署の遠藤巡査に個人的に報告した。
あくまで義理を果たす為の報告だったが、思の他喜んでくれたのが嬉しかった。
jetにも連絡を送り、約束通り東京・名古屋の同時イベントとなった。
最初なので制度の周知、そして店舗の調べ方、具体的な用い方。
そんなところ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、浜松である。
昨日、鈴木が猟師仲間に一斉告知してくれた事で、今日も大量に連絡が入っているらしい。
「トイチさん、もっと早くこの手を使っていれば良かったです。
何と8頭! 捕らえております!
依頼のあった鹿も2匹キープです。
四肢を縛っておりますので、リスクなしに止め刺し可能です。
ここからはオフレコですが、私の後輩が井伊谷に広い敷地を持っているのですよ。
今、そこに隠密裏に箱罠を集めております!
…やや、ヤバい橋を渡ってます!
狩猟法自体が厳罰化されかねません!
くれぐれも内密に!」
…やはり組織力だな。
無論、関係者が増えればリスクは飛躍的に増大する。
鈴木や松永の怯えぶりを見ればわかる。
害獣の移動は極めてリスキーなのだ。
逆に言えば、地道に信頼関係を築いたからこそ、彼らがここまでの大博打に出てくれたともいえる。
嫌いな飲み会に出席してまでグループを作ってくれた鈴木。
一族で長距離輸送をしてくれた松永。
狩猟免許の没収では済まないリスクを負ってくれている。
俺は彼らの献身に報いる義務がある。
『今日、このまま浜松に顔を出します。』
「…この距離なら、俺の車で行こう。
昴流君もレベリングするんだよね?」
「うう… 飯田さぁん。
俺もモーニング食べたかったですぅ。」
「うん、モーニングは今度食べさせてあげるから。
車に荷物運び込んでおいてね。
ヒロノリ君は静養も兼ねて連絡をお願い出来るかな?
勿論、すぐに帰って来るから。」
「承知しました。
それでは5日後のBBQの打ち合わせを皆さんと行います。
僕と飯田さんで皆からの連絡をトイチ君に繋いで行きましょう。」
その会話から1時間後に浜松西ICに到着。
皆の手際の良さから、レベル10もそう遠くない事を確信する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
3億3389万7210円
↓
3億3189万7210円
※鈴木翔に200万円を支払い。
(日当20万円+イノシシ捕獲褒賞160万円+シカ捕獲褒賞20万円)
【推定経験値】
「遠市厘」
イノシシ8匹
40×8=320ポイント
《経験》 2765→3085
本日取得 320
本日利息 未取得
※レベル10到達まで合計5110ポイント必要
「江本昴流」
《経験》 50→70 (?)
シカ1匹
20×1=20(?)ポイント
※体力測定で身体能力が目に見えて向上していれば、以後は江本をレベル3。
シカの経験値を20ポイントと断定する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特に語る事はない。
既に道筋を立て終わった以上、この殺生も作業に過ぎないのである。
俺は至って平静だが、逆に鈴木とその後輩は大量の害獣を移送している事に怯え切っていた。
なので、あからさまにカネだけ素早く受け取って撤収モードだった。
まあ、確かに。
俺から要望したとは言え、この場所は浜松西ICから近すぎる。
死角はキープしているが、やや獣臭が漏れている。
「トイチさん…
次からもう少し山側に移動して貰っていいですか?
ウチの敷地か、井伊谷なら確実に隠蔽可能です。」
『そうですね。
私としても鈴木社長達に迷惑を掛けたくはありません。
次はこちらから移動します。』
「申し訳御座いません。」
『いえいえ、お詫びするのはこちらですよ。』
「いえいえ!」
『いえいえ!』
「『いえいえいえ!!』」
昔は大人同士が《イエイエ》を連呼している場面を見て、アホらしいと感じていたが…
必要だからこういう遣り取りが交わされているのだと分かるようになった。
お互い様精神が無ければ、仕事は遂行出来ない。
俺の仕事は真摯に謝罪する事、丁寧にお願いする事、きっちりと支払いをする事。
これを徹底しなければ地球では勝てない。
非番だった遠藤巡査がインター近くに遊びに来てくれたので、合流して大阪土産だけを渡して別れた。
帰りの車内で彼がくれた《静岡県内での子供食堂に関するトラブル一覧》に目を通す。
(どうも捜査資料をコピーしたっぽい形跡がある。)
その中で補足されていた《警察が怪しむNPOの特徴》は読み物としても面白く、ついつい夢中で読み漁ってしまった。
途中、寺之庄から通話が入ったので新城SAに停車して応対する。
「大阪勢が騒いでるんだよ。」
『はい、何か不備でも?』
「もっと詐欺をしてくれないと困る、って。」
『えー、もう大阪は後藤さんと田名部さんだけでいいでしょ。』
「いや、本当に騒いでるんだ。
《最後まで責任を持って詐欺をして欲しい》
《詐欺師としての自覚を持って欲しい》
《あれは非課税でええんですよね?》
って言ってた。」
『課税の有無は国税庁が決めることなんじゃないですか?』
「そうなんだけどさ。
君が名古屋に戻ったと聞いて、大阪勢がパニックになっているんだ。
ちょっと収拾がつかないと言うか。
今日、どうする?
どこに泊まる?」
『え?
いや、もう名古屋城BBQまで、後5日しかありませんし…
漠然と周辺リサーチをする予定だったのですけど。』
「…1日だけ大阪戻れない?」
『え? どうしましょう。』
迷っていると飯田が挙手する。
「じゃあ準備は俺がやっておくよ。
肉を搔き集めておく。
リン君は一旦大阪へ戻るべきだと思う。
…騒がれるとマズい。」
『ですね。
じゃあ、BBQの準備は清磨さんにお願いさせて下さい。』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
3億3189万7210円
↓
3億2689万7210円
※飯田清磨に500万円をイベント準備費として支給
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おいおい。
たかがBBQに500万円は過大だよ。」
『余ったら清磨さんの予備費にして下さい。
貴方には負担の大きなポジションをお任せしてしまっているので…
そのお詫びも兼ねて。』
「いやいや。
好きでやってる事だよ。
…わかった。
少しでも良いイベントにする。
社会福祉活動に繋げたいんだね?」
『はい。
誰もが寝食に困らない社会を作る事が目標です。
最初はスポットのイベントですが、徐々に範囲を広げて行く所存です!』
「OK
広報担当のヒロノリ君と密接に連携して…
大胆にカネを使って行こうと思う。」
『ありがとうございます!』
飯田は…
口では《カネが目当てで寄生しているだけ》と言っているのだが、俺の理念に共鳴してくれているフシがある。
俺に隠れて自腹を切る事が多い。
何度か窘めたのだが、笑って流されてしまった。
十数分話し合った末、名古屋市内の宿所に飯田を残して後のメンバーは大阪に戻る事に決めた。
飯田一人では負担が大きすぎるので、ヒルダに通話して関羽を派遣して貰う。
人手… というより、たまには恋人同士水入らずになって欲しいと考えたのだ。
モニターの向こうのヒルダも上機嫌だったので、悪い提案では無かったのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「とりあえず箕面に来てくれ。」
とのことだったので、飯田を降ろした俺達はそのまま西進する。
名古屋ICから箕面とどろみICまで2時間強。
移動時間を無駄にしない為にも、ひたすら皆と挨拶通話。
今まで関わった各地の猟師には特に懇切に頭を下げる。
収穫だったのは今までチャットでしか話した事が無かった岡山牛窓の堀口堅造(ほりけん@のペンネームで著名)と挨拶が出来たことだ。
関東人の俺が兵庫県まで進出した事に感激してくれているらしい。
大阪、兵庫と西進して来たのだから、次は自分の住む岡山県に来るものと信じ込んでいる。
本音を言えば、移動範囲は東京大阪間で収めるつもりなので、言質を取らせないように慎重に応対する。
大阪勢とも話をする。
幾人かの不心得者が勝手に宿所に押し掛けてきたので、ヒルダが塩崎のレンタルスペースに押し込めているらしい。
途中やむなく何発か殴った、と澄ました顔でほざく。
背後に映る木下のドヤ顔を見て何となく情景を想像出来てしまう。
『わかった。
戻り次第俺が応対するから。
暴力は振るうな。
樹理奈もいいな?
絶対だぞ?』
「はーい♪」
返事は素直なのだが、ヒルダとこっそり目線を合わせてニヤニヤ笑っている。
コイツら絶対に自重する気ないな。
『後1時間で到着する!
オマエらは宿所に戻ってろ!』
「「はーーい♪」」
本当に返事だけだな。
コイツラだけは心底信用出来ない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
箕面とどろみICから直接レンタルスペースに向かう。
大部屋に無造作に社長連中が放り込まれており、何人かの顔面には殴打痕があった。
謝罪しようとすると、逆に先方が詫びて来る。
まあ筋道から言えば押し掛けた方が謝るべきだよな。
いや、勿論口が裂けてもそんな発言はしないが。
口元から血を流している老社長ですらも上機嫌で握手を求めて来たので、余程俺に逢えて嬉しいのだろう。
「きょ、今日も詐欺をして頂けるんでっか!」
「女房殴り倒して3000万持って来ました!!」
「ワテは河内長野から駆け付けて参りました!」
みな、目がギラギラと輝いている。
大阪は商都と言うからな、きっと金銭への嗅覚が優れているのだろう。
『落ち着いて下さい。
皆様には、ちゃんと詐欺を行います。』
歓声が上がる。
勝手にトランクを開いて札束を見せて来るお調子者まで居る始末。
『ただ!
大阪の差配に関しては後藤響に任せております。
詐欺を希望される方は必ず彼を通して下さい!』
後藤も毅然とした男だが、父親の友人にだけはあまり強く出れないらしく、今回押し切られてしまった。
アイコンタクトでしきりに詫びて来るので、俺も《気にしないで欲しい》と返す。
この男とは大体目線で会話出来るようになっている。
何人かが《田名部だけ特別扱いされてズルい》と遠慮がちに抗議して来るが
『田名部社長は私の身内の安宅一冬の友人です。』
と宣言して納得させる。
まあ確かに田名部だけが宿所に招かれ、食事を振るまわれているのは不公平に感じるのだろう。
勿論、この場にいる連中は田名部と安宅の面識がつい先日である事を知っている。
故に、田名部の様に全betの姿勢を見せることで、俺に喰らい付こうとしているのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
敷地に帰ると木下が抱き着いて来る。
ヒルダに咎める様子が無いので、例によって女同士で勝手に取り決めをしているのだろう。
「お帰りなさい、リン♪
アタシ新しい挨拶考えたよ!
おかえりん♡
ねえ♪ おかえりん♡」
『うむ。』
「アタシいい子にしてたよ♡」
『うむ。
でも、暴力は控えるように。』
「アタシいい子にしてたよ!」
『…うむ。』
コイツラとは正義を共有出来ない事は流石に理解済みである。
俺は木下との話を程々に打ち切って自分の棟に戻る。
全て同じ外観だが、鷹見型の穴が開いているので見分けが楽でいい。
皆に頼んで2時間ほど、仮眠させて貰った。
車に揺られていただけなのだが、案外疲れる。
異世界の馬車よりも疲労が激しいのは、あの逃避行では外の景色を見なかったからかも知れない。
地球ではついつい流れる車窓を楽しんでしまっているので、それが目に負担を掛けているのだろうと見当を付ける。
そんな事を考えながら微睡んでいると、ふと気配を感じた。
何気なく身を起こすと、後藤が俺の洗濯物を畳んでくれていた。
「ああ、すみません。
起こしてしまいましたか。」
『後藤さん、そんな事まで貴方にさせては申し訳ないです。』
「でも木下さんが入って来たら困るでしょ?
あの子、夜這いする気満々ですよ。」
『…それは困りますね。』
俺の注目度がこれだけ上がっている今、13歳の少女とセックスしてしまうのはマズいだろう。
いや、こうして同じ施設に寝泊まりさせているだけでも大問題なのだが…
『後藤さん、こっそり2人で旅行にでも行きません?』
「女性陣が怒りはりますよw」
『いや、私ねー。
男としての器量が欠けてるせいか、女をコントロール出来ないんですよ。
ヒルダ、鷹見、恩師、木下と敵性女が増え続けているでしょ?
キャパ越えてしんどいです。』
「確かに、この中の誰か1人でも致命傷になり兼ねない破壊力がありますね。
その中でも木下さんはホンマにヤバいです。
今って未成年者淫行を許さない風潮になってますからね。
13歳でしょ?
一発アウトですよ。」
『自称ウクライナ人のヒルダも…
大麻工場を運営している松村教諭も勿論アウトですからね。』
「うーん、既にスリーアウトですね。
そこに寿司ペロ事件を起こしてしまった鷹見さんが加わる訳でしょ?
トイチさん、地味に詰んでないですか?」
『ええ、なので…
ステルスしたいなあって。
私は今、手元に3億強あって…
おまけに皆さんからの預金が無くても毎日3000万円以上の配当が手に入るのです。』
「逆に金銭面では勝ち確ですね。」
『まあ、私個人の人生においては一段落ついちゃったと思います。』
「参ったなぁ。
俺が役に立つ余地がもう残ってないです。」
『いや、逆ですね。
これだけキャッシュと知名度が増えてしまうと…
信頼出来て、かつ腕の立つ人間で身の回りを固めてないと
これから身動きできなくなるんです。』
「そんなモンですかねえ。」
『極端な話、3億って重量30キロなんです。
今でもかなり苦労しているのですが、すぐに40キロ50キロになります。
そうなると、私一人では持ち運べなくなって来るんです。』
「銀行には預けないんですか?」
『…銀行に預けると、預金額が楽々増えてしまう可能性があります。
いや十中八九そうなるでしょう。』
「おお!
ええことやないですか!」
『いや、銀行ネットワークって全世界的に連動しているじゃないですか?
デジタル口座に対して私のスキルが発動しちゃうと…
どんな悪影響があるか想像も付かないんです。』
「ああ、そうか。
SWIFTで全世界が繋がっていますものね。」
『最悪、全世界の銀行システムが停止してしまう可能性すら感じてます。
なので、口座は作らないと決めてます。』
資本主義のシステムを《潰す》分には別にいいのだが、俺の目の届かない所で勝手に《潰れる》のは困る。
俺なりに段取りというものがあるからな。
「うーーん。
となると、これからどうします?
今、指数関数的に財産増やしてはるでしょ?
そろそろ置き場を真剣に考えなあきませんよ。」
『…持ち運べる間に配ります。
BBQも予行演習なので。』
「…いやあ、つくづく格の違いを見せつけられますわ。
やっぱりトイチさんの強みは資産を守ろうとする意識が無い所ですね。
実質的に無敵ちゃいます?」
『うーーん。
ヒルダや鷹見に毎回ボコられてますからね。
あまり無敵感ないです。』
「ははは、確かにw
資本→社会→暴力→資本
でじゃんけん出来ますねww」
冗談めかして言っているが、後藤なりの忠言である。
俺はもっと真剣に身を護る術を考えなければならない。
「金銭的には勝ち確、社会的には詰んでる。
失礼ですけど、トイチさんって面白い生き方されてますよね。」
『女共が私をイジメるんですよぉ。』
「あっはっはっはww
愛ですよ、受け止めてあげて下さい。」
アイツらの愛を受け止める=俺の破滅だからな。
特に木下。
同意があろうがなかろうが、13歳とセックスしたら1発アウトだろ。
常識的に考えて。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
後藤と田名部を前面に出して、自分は表に出ないつもりでいた。
だが、大阪勢は納得せずに騒ぎ始めている。
そりゃあね、有名人とは言え若造の後藤と、事業主とは言え零細コンサルの田名部。
大会社の社長からすれば、この2人が仕切っている事がそもそも我慢ならないのだろう。
「遠市さんにちゃんと挨拶くらいはさせてや!
こっちは姫路から来てるねんで!?」
「田名部クン!
君、遠市さんのお言葉を勝手に捻じ曲げてるんちゃうか!?」
「5分! 5分だけ遠市さんと話させてくれっちゅっとるんや!
こんなん言いたないけど、キミの面倒見て来たの誰やと思っとるねん!」
…駄目だな。
今日集まった社長陣は先日のセミナーに比べて大物が多い。
田名部では抑えるのが難しいだろう。
かと言って、あの程度の連中に臆している様では話にならない。
『ヒルダ。
本日のみの話ではあるが…
田名部に限り恩寵の儀を見学する事を許す。
俺は身を清めてから神に祈りを捧げるので、頃合いを見て入室させろ。』
「畏まりました。
…。」
『どうした?』
「宗教色を前面に出せば、宗教宗派を尋ねられるケースが増えることでしょう。
尋ねられれば、どう答えますか?」
『…宗派も何も、俺は神聖教以外を知らないからな。』
「ではもう《神聖教》の名を出しますか?」
『ああ、出す。
実際、俺の活動は神聖教の教義に沿っているしな。
それに、大主教を務めた身としては御開祖様の理念を伝える義務がある。』
「聖典などは方便で御座います。
教団の坊主にすら真剣に学ぶ者はおりません。」
『であれば、尚更だ。
せめて俺くらいは遺志を受け継がねばならない。
《全ての人間は平等》
《全ての信徒は平等に救済される資格を持ち
その間に如何なる差別があってもならない》
《富める者には貧しき者を救済する責務がある。》
御開祖様達が命を懸けて遺した教義だ。
他の誰が笑おうが、俺が遂行する。』
「リンは…
聖職者としての適性と才能があります。」
表情を変えずにヒルダが言う。
直訳すれば、《オマエは社会不適合者だ》という意味だ。
溜息を吐きながらも、ヒルダは空いている棟に即興で祭壇っぽいものを組み上げる。
関羽・弓長・佐々木と優秀な女性が集まっているのが功を奏したのだろう。
彼女達は手早くスマホで検索したり、猟師から提供された猪頭を大皿に載せたりしていく。
『森さん。
桃園の誓いはまだ有効なんですか?』
「ええ、私はヒルダ様と同じ日に死にます。」
いつの間にか宣誓の対象がすり替わっている気もするが、組織内の性倫理を考えれば関羽の立ち回りは最適解だろう。
『ヒルダ。
森さんが死んだら、オマエは追い腹を切るのか?』
「さあ、どうでしょう。
弔い合戦をするでしょうね、私なら。」
なるほど。
坊主に向いた俺なんかと違って、コイツの方が余程に君主適性がある。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
16時10分。
後藤が詫びながら入室してくる。
顔色の悪さからして、かなりのストレスが掛かっているのだろう。
同時に安宅達が部屋に現金を運び込む。
江本が「閃いた!」と叫ぶなり札束を情報商材の広告のように高くスタイリッシュに積み上げる。
普段であれば後藤が叱責している場面なのだろうが、今の彼は疲れ果てており江本を抑える気力が残っていない。
「おお、トイチさん!
見て下さい、この神々しい札束ピラミッドを!」
『えっと、下品な成金みたいでちょっとアレじゃないですか?』
「いやいや、トイチさんに集まってる連中なんて下品な成金のカス共やないですか?」
キミ、それ安宅とかの前で言うなよ。
まあ、いいか。
俺自身が下品な成金のカスだしな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
3億2689万7210円
↓
18億2689万7210円
※出資金15億円を預かり
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『金額、いきなり膨れてないですか?』
「…関西人はお調子者が多いんですよ。」
疲れ果てた表情で後藤が呟く。
彼の疲労を見れば、何があったかの想像は付く。
『後藤さん。
これだけ苦労させられたんです。
貴方には中抜きする正当な権利がありますからね。』
「ははは。
これからもそう仰って頂けるよう精進します。」
後藤は両手で自分の頬をピシャリと叩いて、いつもの精悍な顔つきに戻った。
流石に切り替えが早い。
この男、俺と同年の20歳なんだよな。
ここまで出来るって凄いよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
16時50分。
手筈通りに田名部だけを入室させる。
『カネカネカネカネ、ナンマイダー。』
関西人はギャグセンスが高いと聞いていたが、カネの懸かった場面では発揮されないらしい。
田名部は神妙な表情で平伏している。
笑いを堪える素振りさえ見えない。
「カネカネカネカネ、ナンマイダー。」
「カネカネカネカネ、ナンマイダー。」
後藤と江本が部屋の両端から唱和する。
アスリートだけあって、実に伸びのある念仏だ。
いい具合に緊張感を演出出来ているな…
「トイチ先生!
後、30秒で御座います!」
骨董物の懐中時計を頭上に掲げて安宅が叫んだ。
どうやらこの男なりに俺を装飾してくれているらしい。
『カネカネカネカネ、ナンマイダー。』
最後に俺がそう叫ぶと、一同も倣った。
《1億6442万0800円の配当が支払われました。》
俺の眼前に据えられた高足膳(こんなものどこから仕入れた?)に空中からカネがボトボト落ちた。
零れ落ちた紙幣や貨幣を関羽と弓長が拾い集めて、澄ました顔で膳に並べる。
「…。」
田名部は何も言わない。
この男は馬鹿では無いので、ここまで見せてやれば自分1人が呼ばれた理由くらいは理解出来る。
要は力関係を間違えないで欲しいだけなのである。
田名部にとってどうであれ、先程社長連中を殴り散らした木下が正しいのだ。
『田名部さん。
私にとって大阪の窓口は後藤・江本の両名。
貴方が強く希望するなら、その補助を許可します。
御存知の通り、私は非常に忙しいです。
アポもなく敷地に押し掛けるような行為は迷惑でしかない。
このような事態が続くのであれば、貴方を含む大阪勢とは今後お付き合い出来ません。
この旨、貴方から徹底させて下さい。』
幸いにして、力関係を理解してくれたらしい。
「重大な誤解をしておりました。」
田名部はそう言って詫びる。
「他の投資案件の様に、別にキャッシュを集めている訳ではないという事ですね。」
『…話が早くて助かります。
勿論、原資が大きいに越した事はありませんよ?
ですが今日の様に集団で押し掛けるのは論外です。
金額の多寡は関係ないと皆さんに伝えて下さい。
私の邪魔をしないで頂けるか否かのみです。』
「仰る通りです。」
『厳しい事を申し上げてしまいました。
田名部さんを信頼しているからこそ、私も本音で接しております。』
我ながら詭弁もいい所だが、嘘は吐いてない。
俺は仕事の邪魔をした家族を殴れる人間は信頼する。
少なくとも優先順位を弁えているからである。
退室した田名部が全員を敷地から退去させた。
一切の挨拶も贈答も許さなかった。
勿論、あの中にも面白そうな人物・役に立ちそうな人物は居た。
味方に出来れば当然有用だろう。
ただ、選ぶのは俺であって彼らではない。
それさえ弁えてくれれば、俺だってもっと柔軟に対応出来る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
18億2689万7210円
↓
19億9131万8010円
↓
19億6131万8010円
↓
4億6131万8010円
※配当1億6442万0800円を取得
※配当金3000万円を出資者に支払い
※出資金15億円を別に保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やや厳しい雰囲気になってしまったので、1人1人を部屋に呼び出してヒアリングを行う。
それこそ3分で良いのだ。
サシで俺と話す特権を享受させる事で連日の献身に報いたかった。
強いチームは日々の雑談によって構築されるのだ。
【後藤響】
まず互いに詫びる。
後藤は社長連中を抑えきれなかったことについて。
俺はそんな連中の応対を押し付けたことについて。
『後藤さん、ちゃんと儲かってますか?』
「滅茶苦茶楽しいですw」
『楽しさは表情を見れば分かりますけど。
金銭的にペイ出来てます?』
「ペイし過ぎですよ。
お陰でカネの隠し場所に悩んでます。
トイチさんの苦労が理解出来ました。」
2人で笑いながら、カネを隠す方法について愚論百出させる。
結局、東海道沿いに土地を買うという陳腐極まりないアイデアに落ち着いてしまったので、2人で苦笑した。
【江本昴流】
レベルの話で盛り上がる。
自分以外の実験台の存在は実にありがたい。
「厳密な測定が必要ですけど。
体力、微増してますね。」
『そうなんですか?』
「垂直飛び。
これって一夕一朝で早々記録が変動する種目ではないと思うんです。」
『確かに。』
「4センチ記録が伸びました。
昨日までは、一切変動無かった分野ですよ?
特に脚部筋トレも走り込みもせずに4センチ。
俺の中では明らかにレベルアップしてますね。」
『…シカは20ポイントですね。
高い確率で。』
「じゃあ前仰ってた通り、クマは100ポイントですか?」
『ええ。
異世界ではクマ100ポイント、オオカミ50ポイントでした。
なので、ほぼ準拠してるんじゃないかと。』
「もっと経験値の高いモンスターは居ないんですか?」
『ジャイアントタートルですね。
800ポイント貰えました。』
「おお!
めっちゃええですやん!
イノシシ20匹分!」
『でも自動車くらいデカいんですよ。
私は冷凍ガス弾を使って駆除したんですけど、普通じゃどうしようもない相手でしたね。』
「やっぱりデカい生物の方が経験値あるんですかね?」
『ええ、取得経験値って危険度と比例するらしいんです。
だからなのか、家畜からじゃ経験値は貰えないらしくて。』
「まあ、家畜でレベリングが出来るなら誰もが屠殺人になりたがるでしょうしねw」
『ええ、おカネ払ってでもなりたいですw』
「うーーーん。
大きい野生動物かぁ。
象?」
『ワシントン条約ww』
「これ以上ワルモンにされたら大変ですもんねww」
その後も色々話して、ヒグマの経験値を江本で実験するか否かで盛り上がった。
【寺之庄煕規】
この男に負担が集中している。
キャンピングカーの運転、各地の猟師との連絡、SNS運用。
本人は《楽しんでいる》と言っているが、明らかにオーバーワークである。
『ずっとヒロノリさんの負担を軽減する方法を考えてました。』
「いや、多少無理してでもキャッシュを貯めさせて欲しいんだ。
信じられない程に良いペースでさ。
テンション上がってる。」
だろうな。
この男にとっては人生の分水嶺だからな。
以前、《福井に帰れば次期社長じゃないですか。》と言った事はある。
だが、その時の彼は弱弱しく笑っただけだった。
そりゃあね、こうもスペックの高い男である。
若くして田舎に閉じ込められるというのが我慢出来ないのだろう。
「でも、トイチ君が本懐を遂げるって事は…
インフレになるってことだよね?」
『申し訳ありません。
恐らくはそうなります。』
「じゃあ、楽隠居は難しそうだw」
言いながらも、この男は実に楽しげである。
俺に画面を見せながら、猟師達にお礼メールを出し続けている。
インスタ広告の仕組みも丁寧に教えて貰った。
それを見ているうちに、やはりスマホが欲しくなって来る。
皆に相談したいのは、山々だが…
俺がスマホを持つのはコアメンバーに嫌がられるだろうな。
『ヒロノリさん。
私がスマホを欲しがったら…
みんな嫌がりますかね。』
「…ッ!?」
『ヒロノリさん?』
「ああ、ゴメンね。
今、如何に自分が強欲な男かを思い知らされたよ。
無意識のうちに、皆さんの申次を務めている状態を…
自分の特権か何かの様に考えてしまっていたよ。」
『あ、いえ。
ヒロノリさんには世話になりっ放しですし。
上手く言えませんが、何かの形で特権を受け取って欲しいと思ってます。』
「君の運転手を務めるのは一番の特権だよ。」
『まさかあ。』
「だって、この先。
トイチ君の運転手役なんて、なろうと思ってなれるポジションじゃなくなるでしょ?」
『まあ、そりゃあ。
この状況ですからね。
余程信頼している相手以外には任せたくないです。』
そうなんだよなあ。
このハードワーク状態は、明らかに寺之庄が望んでいるものなので緩和のしようがないよなあ。
忌憚なく言わせて貰えば、俺の運転手をしているのが一番楽しいし一番儲かる。
異世界でもそうだったが、俺の取り巻きほど旨味のあるポジションはないのだ。
勿論、本人には口が裂けても言えないが。
【安宅一冬】
「私なんか、今日押し掛けた彼らと大して変わらない存在ですよ?」
『でも、人間関係の蓄積があるじゃないですか。』
俺と安宅が話しているのは、コアメンバーと投資家の線引きの話。
本音で言ってしまえば、現状では単なるノリである。
人間関係に厳密な定義など定めようがない。
ただ、心証が単純接触効果に大きく左右される以上、寝食を共にしている時間が長いものほど有利である。
今日の大阪勢の失敗は徒党を組んで押し掛けたこと。
悪手である。
追い返して下さいと言っているようなものだ。
大体、集団でやって来たと言う事は、俺との関係より集団内での仲間関係を上位に据えている証拠だ。
この時点で味方扱いは出来ない。
少なくとも田名部は、商工会の先輩も妻子も切った上で俺に賭けている。
その点を俺達は高く評価している。
ここまでコミットしてくれる相手なら、俺も多少は返礼をする。
それこそ今日、恩寵の儀を見せてやった程には。
安宅とはずっとそんな話をしていた。
後、インスタの女性フォロワーが増えたらしい。
「意識高い系の女性ばっかりで嫌になりますよ。」
『安宅さんの場合は学歴+著書数があるので、そういうのに惹かれるのって
やっぱり意識が高い女の人なんじゃないですか?』
「…ここだけの話。
私はナードなのでナード女が嫌いです。」
『ぶっちゃけましたね。
じゃあ、どんな女性が好きなんですか?』
「女女しててアホ丸出しで可愛い子が好きです。」
『なるほど。』
アホな女に安宅の良さが理解出来るのか?
書いた市況コラムを読めば、安宅の怪物性は嫌でも理解出来るのだが…
アホ女があんなの読めるのか?
まあいい。
乗りかかった船だ。
安宅がセックスするまで俺もしないと誓いを立ててるからな。
意地でも安宅好みの女を調達しなければ、俺の理性が持たん。
【ヒルダ・コリンズ】
ヒルダに関しては部屋に招かずリビングで応対。
「私もコアメンバーに数えて頂いて宜しいのですか?」
『オマエは身内だ。
女キャラ増えてゴメンな、と一言詫びたかった。』
「くすっ。
増えましたね。」
『増えた分はどうしたい?』
「では、全員まとめて打ち首にしましょう。」
『打ち首以外で。』
「特に思いつきませんね。」
しばらく無言でヒルダからの報告書に目を通す。
どちらかと言えば集金名簿である。
「リンはどうしたいのですか?」
『ん?』
「女衆の処遇です。」
『今は木下リスクしか考えられない。』
「ふふっ、逮捕が見えて来ましたものね。」
『まあな。
今この場に警察がやって来て逮捕されても文句は言えない状態だからな。』
「私が地球で蓄えた人脈・財産を使って宜しいですか?」
『胡桃倶楽部だったか?』
「ええ、本来リンの為に作った組織ですので。」
『うーーん。』
「今、9%でしょう?」
『ああ、日利9%。』
「10億やそこらでは大した利益になってないのでは?」
『最近は1日1億ずつ増えてる。』
「1億と言われましても…
私はリンが10垓獲得した過程を見ている訳ですから。」
『まあな。
あの時の俺を知っているオマエから見れば足踏みしているようにしか見えんだろう。
自分でも理解はしているよ。
カネも経験値も全然足りてないからな。」
…いや、異世界で生き残る事が出来たのはこの女のおかげだ。
コリンズ母娘の協力があってこその異世界生活。
『はっきり言ってな?
勝つだけならヒルダ1人で十分なんだ。
それこそあのタワマンに閉じ籠って、オマエが確保して来たカネを淡々と増やしているだけで勝てた。
カネが余って来たら、運用をオマエに任せれば地球でも権力を掌握出来ただろう。』
「…でも、リンは勝利を望んでいる訳ではないのですね。」
『俺が成長しなければ、勝利の先には辿り着けないからな。』
木下(ついでに佐々木も)の処遇であるが、ヒルダが買い取ったNPOが保護するというタテマエになった。
代表は関羽が務めるらしい。
かなり無理筋だとは思うのだが、何のエクスキューズも無いまま連れ回すよりはマシなので受け入れる事にする。
「ああ、それと報告が遅れましたが。」
『ん?』
「ルナがこの箕面で配信イベントを行います。」
『ほーん。』
「今回の件で感心したのはイベント開催にあたって事前承諾を求めて来たことです。
塩崎の物件を使う事で、リンの顔を立てようとしたようですね。
あの女なりに気を遣っているのでしょう。
どうか褒めてやって下さい。」
『へー。
鷹見がなあ。
アイツでも事前連絡とかして来るんだな。
見直したよ。
で、アイツは?』
「ナナと共に準備の為に走り回っているようです。」
『ほーん。
まあ、いいや。
アイツと通話する機会があれば
《イベント上手く行くといいね。》
って伝えておいて。』
「きっと喜びます。
イベント概要、ここに纏めておきました。
お目通し下さい。」
『ありがとう。
寝る前に読ませて貰うよ。』
これで塩崎の面子も立ったことになるのだろうか?
いや、そもそもオマエラが俺の部屋で殴り合いを始めるのが悪いのだが。
…なーんか、回り道させられてるなあ。
正直に言えばカネと経験値にしか興味ない。
もっと効率的にレベルを上げる方法があれば、こんな悠長なことしないんだけどな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あるぞ!」
『猛人さん。
勝手に部屋に入って来ないで下さいよ。』
「え?
俺、リンのルームメイトだろ?」
『いやいや、あれは浜松での部屋割りってだけで
別に恒久的なものではないですからね?
あ、勝手に冷蔵庫を漁らないで下さい!』
「なあリン。 (モグモグ)
この穴なに? (ゴクゴク)」
『女共がじゃれ合ってたんですよ。
おかげで隙間風が辛いっす。』
「へえ、楽しそうじゃん。 (モキュモキュ)
顔の湿布は、じゃれ合いに付き合った時のもの? (ゴクン)」
『女にワンパンで沈められた記念の負傷です。』
「ははは、青春の1ページww」
『笑いごとじゃないっすよw
…あの後ろの女性は、社員さんですか?』
平原猛人の影に隠れて解らなかったが、ワンピース姿の女性が背後に控えていた。
「ん?
嫁だよ。
調停してくれるんだろ?」
『え!?
あんなこと、やらかしておいて
よく一緒に来れましたね!?』
「いや、別々に来たよ?
コイツは弁護士と一緒に来た。
今、俺の弁護士と外で話してる。」
『ああ、倉沢弁護士ですね。
後で挨拶させて下さい。
えっと、隼人君のお母様。
クラスメートの遠市と申します。』
俺がペコリと頭を下げるが、平原の母親は神経質そうな表情で俺を睨みつけている。
皆は美人と評していたが、ヒステリックな顔だな。
平原も色々愚痴っていたからな。
『あの?
お母様?』
「おい、挨拶くらいちゃんとせんか!
リンは忙しいんだよ。」
『…まあまあ猛人さん。』
平原母は下唇を噛みながら押し黙っている。
2分くらい沈黙が続いた。
「この者から邪悪な気配を感じます!」
第一声がそれだった。
言っておくが初対面だぞ?
それも息子のクラスメートだぞ?
言うに事欠いて《邪悪》って何だよ。
いや、反論の余地はないんだが。
「おい! 失礼やろが!」
平原猛人がいきなり妻の髪を掴んで壁に叩きつけようとする。
が、予め鷹見穴が開いていたのでセーフ。
『ちょっと猛人さん!
やめて下さいよ。』
「いや、いきなりこの女が滅茶苦茶言うから。
思わずカッとなって。」
騒ぎを聞きつけたのか、後藤が飛び込んで来る。
背後には2人の弁護士。
鷹見穴に埋まる平原母を見て大方を察したのだろう。
後藤は無言で部屋の中央に割って入った。
弁護士同士が背後で高速ヒソヒソをやっている。
コイツラも激務だよな。
「この者は悪魔です!
隼人を殺した犯人です!」
後藤が鷹見穴から引っこ抜いてやったと同時に俺を指さして絶叫する。
この女と通常のコミュニケーションを成立させる自信がない。
《ウチの母親、ちょっと神経質だから。》
異世界での平原との会話がフラッシュバックする。
…ちょっと?
いや、友人の親にこんな事言いたくないが。
オマエはこんなキチガイ夫婦から生まれた癖に、よくもあんなまともに育ったな。
改めて平原隼人に対して尊敬の念を深める。
「人殺しーー!!」
平原母が突然俺に飛び掛かって来たが、後藤が慌ててカットしてくれる。
頼む、これ以上は部屋を壊さないでくれ。
塩崎に合わせる顔が無くなってしまう。
5分位ワチャワチャやった後。
平原母の弁護士が彼女を羽交い絞めにする事で状況は落ち着いた。
折角司法試験に受かったのに、業務がキチガイの世話なんて世の中厳しいよな。
倉沢弁護士が満面の笑みで平原母の弁護士に語り掛ける。
「川添先生~。
今の《悪魔》というのは聞き捨てなりませんなー。
これ名誉棄損ですよ? 侮辱罪ですよ~?」
「いや! 倉沢先生!
そういう意図の発言ではなく!
依頼人はそういう意図で申し上げた訳ではなく!」
弁護士というのは余程の賤業なのだろう。
延々と相手の依頼人の違法行為をネチネチ責め合っている。
コイツラ、毎日こんなことしてるのか?
大変だなあ。
『えっと、お母様。
私も平原隼人がここに居ない事は心苦しく感じております。
ただ、誓って私は彼を殺害しておりません。』
「…ブツブツブツブツ」
あー、こりゃあ会話は無理だな。
大体、息子ですら匙を投げてた訳だからな。
ゴメン、隼人。
俺もこのオバサンとのコミュニケーションは断念するわ。
「この者は身体に魔を宿しております!
悪魔! 悪魔! 滅びなさい!
その悪魔の力で隼人を殺したァ!!!!」
「千紘さん!! マズいです!!
侮辱罪が適用されかねません!
折角強姦で稼いだ優位ポイントが相殺されてしまいますよォ!!!」
あまりのアホらしさに言葉も無い。
まあ、魔王の俺が悪魔呼ばわりされるのは仕方ないし…
実際、その力で稼いだカネが平原を始めとした級友を殺してしまった訳だしな。
『えっと、お母様。
もうお目に掛かる事もないでしょうから、一言だけ申し上げますね。
私にとって、平原隼人は最愛の友人です。
なので、いつか彼がひょっこり現れてくれることを日々願っております。
お母様とも、いつか共に祈れる日が来るといいですね。』
「祈る? アナタ、キリスト者なの?」
『いえ、違います。』
「国内宗教?」
この女、キモいな。
宗教の話になった瞬間、突然言語が明瞭になった。
『我が国ではマイナー宗教なので御存知ないと思いますが。
神聖教という宗教がありまして。
私はそのフォーマットで隼人君の無事を祈っております。』
「迷惑です!」
『は?』
「隼人には正規の洗礼を受けさせております。
異教の祈りは迷惑です!」
『…。』
平原ァ。
オマエの言うとおりだったわ。
あの時は《ウチの母親、頭おかしいんだよ》の言葉を疑ってゴメンな。
オマエの台詞、一言一句違えずに正確だったわ。
「悪魔! 悪魔! 悪魔!」
『…え、ええ。』
「千紘さん!! 裁判で不利になりまぁああす!!!!」
「ふふふ、川添先生ェ~♪ これは深刻な人格攻撃ですよぉ?」
地球、マジで糞だな。
異世界転移希望者が増える訳だわ。
『猛人さん。
もう会話も成立しないようですし。
退去をお願いして宜しいですか?』
「おう、摘まみ出すわ。
後で口直しに呑もうぜ。」
『えー、貴方は残る前提なんですかあ。』
「俺とリンの仲じゃねーか。」
『本当に強引なんだから。
一杯やったら帰って下さいね。』
「帰るって言っても、この時間だし。
宿も取ってないんだぞ?」
『ええ?
ホテルくらい確保してから来て下さいよ。』
「いや、俺は普通にリンの部屋で寝るつもりだったし。」
『参ったなあ。
ベッドは余ってますけど。』
「お、ラッキー。
じゃあ、ここで寝るわ。
ほい、土産の芋焼酎。
銘は《薩摩はやひと》だ。」
『如何にも薩摩人らしいネーミングですね。
まあいいや、今夜は盃を隼人の奴に捧げましょう。』
「だな。」
俺がうっかり隼人の名を出した事で刺激してしまったのか、平原千紘が再度騒ぎ出す。
『弁護士さーん、首筋に手刀入れて黙らすとか出来ないんですか?』
「トイチさん!
今の発言は脅迫罪や強要罪で切り崩される可能性があります!
発言を撤回して!!」
「おやおや、倉沢先生ェ。
今の遠市氏の発言は言論を暴力で封じようと企図したように感じられますねぇ。
ほら、千紘さんも怯えてるじゃないですか、脅迫は止めて頂きたいものですなぁw」
「いや! その様な意図の発言ではない!!!」
『猛人さーん、この3人に首筋チェストとか出来ないんですか?』
「出来るけど、手加減が出来ないからな。」
『ああ、そりゃあ駄目ですね。
俺の宿所で死人を出されちゃ困りますし。
取り敢えず、そろそろ眠りたいんでお三方を退去させて貰えません?
余ってるコテージ使っていいですから。』
「え?
他の棟も使えるのか?」
『はい、敷地全部をリースしてますので。
ただシーツ等は自分でセットして下さいね。』
猛人と後藤が強く威圧して3人を俺の棟から追い出してくれる。
ふと見ると鷹見穴が心なしか広がっていたので、更にテンションが下がる。
付き合いきれないので、シャワーを浴びてベッドに寝転んだ。
本筋と全然関係ない事でエネルギーを浪費させられてるよな、俺。
疲労が溜まっていたのか、ベッドに横になった瞬間に眠気に襲われ…
やがて意識が遠のいた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ようやく脳が休もうとした矢先。
身体を強く揺すられる。
『はいはい、まだ寝てませんよ。 ふわぁ。
ん? 後藤さん?』
後藤の深刻な表情を見て、緊急事態が発生したことを悟る。
誰だ? 今度は誰が問題を起こした?
ヒルダ? 鷹見? 恩師?
いや、このタイミングだと平原猛人に決まっているのだが。
「トイチさん…
この敷地内で、強姦事件が発生してしまいました。
防止出来ずに申し訳御座いません!」
重苦しい口調で後藤が俺に頭を下げて来る。
眉間に刻まれた皺の数から、事態の深刻さを思い知る。
あの野蛮人め、MarkⅡも未実装なのに…
早くもMarkⅢ計画始動かよ。
【名前】
遠市 †まぢ闇† 厘
【職業】
東横キッズ
詐欺師
神聖教団信徒
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 9
《HP》 鼻骨骨折疑惑
《MP》 強い
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 悪魔
《精神》 女しか殴れない屑
《幸運》 的盧
《経験》 3363
本日取得 320 (?)
本日利息 278
次のレベルまでの必要経験値1747
※レベル10到達まで合計5110ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※うり坊(イノシシの幼獣)の経験値を成獣並みと仮定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利9%
下2桁切り上げ
【所持金】
4億6131万8010円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
「100倍デーの開催!」
「一般回線で異世界の話をするな。」
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 「日当3万円。」
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げ。」
荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 「子ども食堂を起ち上げる。」
〇田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
DJ斬馬 「音楽を絡めたイベントを開催する際、日当10万で雇用する。」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
〇鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」