【降臨31日目】 所持金2億5004万8500円 「暴力は子供以外の何も生まない。」
身体を搖すられて目を覚ます。
しまった、寝坊したか!?
「トイチさん、申し訳ありません。」
困った表情の後藤が窓を指す。
暗い? 電気? 夜?
『え?』
釣られて振り向くと。
13歳。
窓をコツコツ叩いている。
子供が悪戯に来たような笑顔だ。
…いや、お互い子供か。
仕方が無いので、窓だけ開ける。
『あのぉ。
もう遅いから…』
「私もリンと同じ部屋がいい!」
『え? いきなり困るよ。』
「アタシ3Pも出来るよ!
もう大人だし!」
『え、いや。
大人だからって3Pはしないと思うぞ?』
「リンはしたことないの?」
『あ、いや。
あるけど。』
「え!?
トイチさん3P経験あるんですか!?
いやあ、流石やわぁ。
ホンマにリスペクトですわ。」
「ほら!」
『ちょっと待って、ちょっと待って。
落ち着いて、落ち着いて。
木下さんの宿所もちゃんと割り当てたでしょ?』
「樹理奈って呼んで!」
『…俺、陰キャだから。
女の子を名前で呼んだ経験があまり無いんだよ。』
「お母さんのことは名前で呼んでるでしょ!
このマザコン!
どうせ3Pもお母さんが相手だったんでしょ!」
『ぐぬぬ。』
図星なので言い返せない。
何でオマエラ、一々俺の半生を見破って来るんだ?
「じゅ、じゅりな。」
13歳は勝ち誇ったように笑う。
コイツはコイツで勝負掛けてるよな。
「リン、部屋に入れてよ。」
『だから。
女子部屋は用意しただろ?』
「嫌よ!
キモいBBAが3人も!」
「えっと、木下さんから見たら鷹見さんもBBAなんですかね?」
「あのシネウンコは絶対ヤ!
東横の女子が一番アイツに迷惑掛けられてるんだからね!」
…いや、一番迷惑掛けられてるのは俺だと思うぞ?
『ヒルダとは上手くやれなさそうか?』
「大BBAはまだマシだけど、中BBAが生理的に駄目!!
あんなニャーニャー言ってるキチガイBBAと一緒なんて無理に決まってるでしょ!
キショくて死にそう!」
『確かに。』
「確かに。」
13歳はいきなり窓から侵入を試みる。
「いやいや! 木下さん! それは困りますって!!」
「3P出来るよ!
やったことあるし!」
「ホンマにあきませんって。」
『いやいや、法律的に駄目だろう。』
「法律法律ってウルサイ。
リンも折角反社なんだから、それっぽくしてよ。」
『ええ!?
お、俺は反社じゃない!
…とは思うんだけど。』
「そ、そうですよ。
トイチさんは、反社などでは…
多分、無いのではないかと…」
俺は必死に己を顧みる。
反社会的なのかなぁ。
いや、うーーーん。
結構、俺なりに社会の為に頑張ってるつもりなのだが。
いや、まあ確かにキョンを無免許ロードキルしたり、無許可発砲したり、そもそも鷹見や恩師みたいなマジモンの犯罪者と一緒にいる時点で反社会的ではあるのだろうが…
うーーーん。
面と向かって指摘されると結構凹むな。
「アタシ本気だから。」
うおっ、いきなり脱ぎやがった。
一切の躊躇が無いの怖いな。
『「自分を大切にしなさい。」』
偶然、後藤とハモった。
思わず顔を合わせて笑い合う。
「男同士でイチャイチャしないで!
このホモ!!
ちょっとLGBTが流行ってるからって調子に乗らないで!」
『ホモじゃないよ。』
「ホモやないですからね?」
「早く部屋に入れて!
蚊に刺される!」
…あ、コイツ上手いな。
普通なら言い包めて送り返すのだが、全裸女に《蚊に刺される》って言われたら、何かこっちに落ち度がある気がして思わず入れてしまった。
見せつける様に全裸を誇示してくる。
…勘弁してくれよ、マジでヤバいって。
「やっほー♪」
『…。』
「…。」
再度後藤と顔を合わせる。
この状況、洒落にならない。
これ、セックスしようがしまいが、俺達捕まる状況じゃない?
とりあえずヒルダの棟に内線しようとすると、木下に電話機を蹴り飛ばされる。
『あっ、乱暴はやめろよぉ。』
「あー、電話機壊れてもーたですねえ。
やっぱり弁償とかさせられるんですかねえ。」
「真面目にして!」
『俺はいつでも真面目だよぉ。』
「嘘!
アタシの気持ちに全然向き合ってくれないじゃない!」
『えー、いや。
俺、本当にそういう話に疎いんだよ。』
「アタシとシネウンコとどっちが好きなの!」
『いや、普通に樹里奈の方が無難だけど。』
「無難って全然嬉しくない!」
『男からしたら最高の褒め言葉なんだよ。』
「うんうん。
人間やっぱり無難が一番ですね。」
「じゃあ中BBAとアタシだったら!?」
『あの人は…
まだ捕まってないだけの犯罪者だよ。
別に、どこで野垂れ死のうがそこまでの義理はないし。』
「じゃあ大BBAとアタシだったら!?」
『ヒルダかなぁ。』
「あ、やっぱりヒルダさんが本命なんですね。」
「このマザコン! ばかー!」
『痛い痛い痛い!
ちょ、やめ! ちょ、痛!』
「木下さん!
暴力からは何も生まれませんよ!」
「子供が生まれるでしょ、ばか!」
『確かに。』
「確かに。」
ふーん、コイツは幼いだけあって本質を突いて来るよな。
暴力は子供以外の何も生まない。
ああ、じゃあ少子化問題も解決出来そうだな。
数分、全裸の木下と揉み合ってると、突然ガラスの割れる音がした。
「くぅおらぁあ!!
このメスガキがぁ!!!
誰の男にチョッカイ出しとるんじゃーーー!!!」
振り向くと鬼の形相の鷹見(本当に怖い)が飛び込んで来て木下を殴り倒した。
「ぶっげえええ!!」
「ブチ殺したるわああ!!!」
完全にスイッチが入ってる鷹見を俺と後藤で滅多打ちにして、何とか昏倒させる。
この時点で部屋のあちこちに血飛沫が飛んでおり、俺は脳内で家主への謝罪文を推敲し始めていた。
「トイチさん、顔、顔。」
慌てた表情の後藤が鏡を見ろと指したので、覗くと結構派手目に鼻血が滴り落ちている。
鷹見に裏拳で殴り返された時のダメージか?
『え、これ…
出血量ヤバくないですか?』
「トイチさん、このハンカチで鼻を押さえて!
ベッドに横になって下さい!
真上は向いちゃ駄目ですよ!
あー、これ。
鼻を骨折している可能性もありますね。」
…え?
骨折?
あれ、何で?
異世界に居た時よりアクションシーン多くないか?
なーんでオマエラ封建世界より野蛮かな?
もうちょっとさあ、文明国家の一員としての自覚を持とうよ。
俺が呻いているとヒルダがやって来る。
「少し目を離すとコレですか。」
ゴミでも見るような目で木下・鷹見を眺めている。
まあ、その目線は正しいよな。
『ヒルダ…
鼻血の止め方って知ってる?』
「取り敢えず下を向いて下さい。
右手で鼻を摘まんで、もう少し下。
後、本国では眉間を冷やすと止まり易いとされていました。」
『ウクライナ式で止血してみるよ。』
「ええ、ウクライナ式です。」
後藤が《そのウクライナアピールは逆に不自然》という表情で眉を顰める。
仕方ないじゃん、ヒルダが地球に対して心底興味無いんだから。
そりゃあ雑にもなるよ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
3時40分
深夜と早朝の中間である。
《緊急後宮会議》が俺の部屋で開催される事に決まった。
出席者は俺、後藤、ヒルダ、鷹見、木下。
そしてどこからか湧いた江本。
『エモやんさん、どうしてこんな夜中に。』
「この棟から面白オーラを察知しましたので。」
なるほど。
そりゃあ来るよな。
最初、俺も椅子に座って会議に加わるつもりだったのだが、再び鼻血が垂れて来たので皆に無理矢理横臥させられた。
さっき殴り飛ばされた木下や、俺が(日頃の報復も兼ねて)十数発殴ってやった鷹見は何事も無かったようにピンピンしている。
「それではヒルダさん、この江本が司会進行を務めさせて頂きます。」
「うむ、励むように。」
「はっ。
それでは話を整理します。
木下さんがこの宿舎に忍んだところ、駆け付けて来た鷹見さんと交戦状態に入った。
事実関係は概ねこの理解で宜しいでしょうか?」
鷹見と木下は腕を組んだまま苦々しく頷く。
「敢えて厳しい表現をするなら、これは単なる痴話喧嘩です。
ですよね?
忌憚の無い意見を述べさせて頂ければ、こんな事でトイチさんに負傷されてしまっては困るんです。
我々全員、トイチさんに全betしている状態ですので。」
まあな。
コイツらなんて大学休学して、住所不定生活続けてるからな。
途中で俺に死なれたら困るだろう。
「実は俺、今まで一夫多妻制には反対の立場でした。
だってそうですよね?
モテる者や豊かな者が女を総取りして、自分に回って来なくなる可能性があるんですから。」
背後の後藤が大きく頷く。
「ただ。
トイチさんに関しては…
もうハーレム作っちゃって良くないですか?」
「おっし、江本! おっし、江本!
うおー! うおー!」
「あ、鷹見さん。
少し落ち着いて下さいね。
ヒルダさん。
既に鷹見さんを側室認定されておられますが、これは…
トイチさんが鷹見さんとセックスする事を許可したと解釈して宜しいのでしょうか?」
「江本。
それは料簡違いです。
伽番の人選に関しては奥の総意によってなされるものです。
ルナに白紙委任状を渡した覚えはありません。」
「今《奥の総意》とおっしゃいましたが、要するにヒルダさんの意思なんですよね?」
「ええ、当然でしょう。」
「即ち、セックス資格は与えたが、それがいつどこで履行されるかは未定ということですね?」
「(ニッコリ)。」
「…結論を申し上げますね。
この状態ですと、トイチさんが女性関係に対して何らかの宣言をして頂けないと収拾が付きません。」
『せ、宣言ですか?』
「はい。
我々は基本的にトイチさんの指示に従う事を決めております。
現にトイチさんの進路選定に異議を唱えた事は一度も無い訳ですよね?」
『ええ。
皆様には我儘ばかり申し上げてしまい恐縮しております。』
「なので。
移動スケジュールの宣言に加えて、女性に関しても宣言して下さい。
せめて誰がトイチさんの女か。
明言して欲しいんです。
でないと周囲の我々が対処し切れない。
そういう人間関係の曖昧さが今回の事態を招いたのではないでしょうか?」
俺の女性関係って結局、役所の手続きみたいになっちゃうんだよな。
カネがあるから仕方無いんだけどさ。
もうちょっとこう、手心と言うか、人間味と言うか…
まあ、いいや。
『…正室はコレット・コリンズ。
何があっても、これは不動。』
ヒルダが唇を噛んで俺を睨みつける。
『本来、この者が奥の差配をするべきとは考えておりますが、故あってコレット不在の為、全て義母ヒルダの権限とします。』
「ダーリン様、ウ↑チ↓は! ウ↑チ↓は!」
『前も言ったが鷹見は側室。
指揮系統はヒルダの下。
不満なら出て行け。』
「…。」
『以上!』
「え、トイチさん。
それだけなんですか?
もう少し、こう…」
『いや、エモやんさん。
私の仕事はあくまで大原則を示す事ですから。』
「リン! アタシは!」
『オマエに関しては可能な限りの保護を考えている。
事実、その旨をヒルダにも伝えてある。』
「そーゆーことじゃなくて!!
もっと愛とか恋とかあるでしょ!!」
『男にはない。』
「他の男の人は、みんな真面目に恋愛してるよ!」
『樹理奈…
それは市井の者達の話だ。』
「…愛されたいだけなの。
確かめたいのよ。」
『あのなあ。
13歳の子を愛していたら、普通はセックスしないと思うぞ。』
「奥さんは私より年下なんでしょ!」
『コレットと寝た時点では、そんなに好きじゃ無かった。
《ハニトラとか美人局だったら怖いなあ。》
って考えながらセックスした。』
「それって最低じゃない?」
『女から見ればそうかもな。
でも、俺が妻母に気に入られたのは、そういう猜疑心の強さを備えていた所為もあると思う。
ヒルダ。
女の甘言を真に受けるような俺なら君は愛してくれたか?』
「いいえ、私は馬鹿が嫌いです。
きっとあの女も同様でしょう。」
『そういうことだ。
勿論、俺にも性欲はあるよ?
樹理奈は可愛いし、君みたいな女の子と仲良く出来るのは正直嬉しい。
セックスもしてみたいと思う。
でもな?
動物的な欲を優先させる男は意外に少数派だ。
少なくとも我が国の法律では18歳未満との性交が禁止されている。
だから普通は寝ない。
俺以外でも似たような事を言うと思うぞ?』
「でもウクライナの奥さんとはセックスしたんでしょ!!」
『ああ、スマン。
実はウクライナは関係ない。
正室のコレットは俺が異世界に居た頃に娶った女だ。』
「え? いせ…」
「ちょ! トイチさん!!」
『エモやんさん、やっぱりマズいですか?』
「駄目に決まってるでしょ!!!
命取りになりますよ!!!」
『樹理奈。
こんな風に俺は身内から叱責されるレベルの秘密をオマエに打ち明けている。
どうでもいい女なら、ここまでのリスクは負わない。
分かりにくいだろうが、俺の情愛はこういう形で発揮される。』
「なんかズルい。」
『悪いようにはしない。
以後は何かする前にヒルダに指示を仰げ。』
「…。」
『窮屈なのはわかる。
でもな?
そこが歌舞伎町であれ新大久保であれ、人間が集団で動いている限り…
周囲に話を通さざるを得ないだろう?
少なくとも俺は、仲間には全て行動の事前承諾を取っている。』
「嘘つき! 嘘つき嘘つき!
ウ↑チ↓はダーリン様に話を通して貰ったことなんて一度も無いッス!」
『女は女であって仲間ではない。』
「…お、おう。
斬新な意見ッスね。」
『オマエは俺の女だと勝手に自惚れている。』
「おやおや奇遇ッスね。
ウ↑チ↓もダーリン様のことを自分のモノだと思ってます。」
「リン!! アタシは!! アタシは!!」
『樹理奈に関しては
《この女イケるんじゃね枠》
に入ってる。』
「ナニヨソレ! イミワカンナイ!」
『後藤さん、エモやんさん、理解出来ますよね?』
「「メッチャわかります!!」」
「男って最低!」
『他の男はどうだか知らんが、俺はこういう人間だ。』
唸る女共を無視して、俺は話の〆に入ろうとした。
が、江本に阻止される。
「トイチさん。
話が1ミリも進展しておりません。
異世界カミングアウトしただけやないですか。」
『いやいや、私が進展の必要性を感じていないので。
奥向きなど、あくまで余事ですから。』
「単刀直入に申し上げます。
セックスはしはらへんのですか?」
「「「「…ゴクリ。」」」」
『したくなったら、ヒルダの指示を仰ぎます。』
「殺すぞマザコンーー!!!!」
激昂して俺に殴りかかってきた鷹見を反対側から飛び出したヒルダが殴り飛ばす。
…何も壁にめり込ませなくても。
「皆の者!!
これにて一件落着!!
奥向きに関しては、変わりなくこのヒルダ・コリンズが万事取り仕切る!
行く手を阻む者には死あるのみ!!!」
『…何もかも腕力で解決しようとする風潮やめにしない?』
「リン。
女を従わせたいなら、拳で語りなさい。」
…いや、そういう所だぞ。
「じゃあ、木下さん。
肝心のトイチさんが仰っておられますので
今後はヒルダさんの指示に従って下さいね。」
「…うう。
サユっちばっかりセックスしてズルい。」
「その代わり、ヒルダさんの指示に従っている間…
我々は貴方を準側室として礼遇します。」
「何かお役所みたい。」
「トイチさんという方は、それくらい偉大な方なんです。
禁欲的なのは、この人が王様か何かだからと思っていて下さい。」
…エモやん、悪気なく本質に迫り過ぎ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
午前6時59分。
鼻血は止まったが顔面はズキズキしている。
皆の見立てでは鼻骨が折れている可能性が高いとのこと。
何で異世界の時より生活が血生臭いんだろうな。
「おっはろー♥
おうトイチぃ♪
今朝の恩師料金を徴収に来たニャ♥
って何があったニャー!!!!!」
『ああ、どうも。
色々あって鷹見が壁に埋まってるので掘り起こしておいて下さい。』
「昭和の工業高校でもここまでしないニャーーー!!!」
さて、顔は痛いが篠山の宇田川との約束がある。
早く着替えて出発しなくては。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【遠市キャラバン・メンバー行動表】
「俺」
篠山にて念願の大量殺害レべリング。
「寺之庄」
キャンピングカー運転
「後藤」
田名部の応対
「江本」
搭乗員
「飯田」
名古屋市内にてBBQイベント会場下見
「安宅」
不動産手続き完了の為、鳩野と共に大阪に来訪。
「ヒルダ」
看守業務。
「恩師」
ヒルダ部屋に幽閉
「木下」
ヒルダ部屋に幽閉
「鷹見」
(生きていれば)関西でのプレゼント企画配信の打ち合わせ。
「関羽」
ヒルダの本業(婚活団体?)に従事。
「佐々木」
溢れ出る有能臭に感心したヒルダに乞われ近侍することに。
(給料も出るらしい。)
「弓長」
凄く思いつめた顔でキャンピングカーの助手席に居座っている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
折角の【複利】なのだ、もっと元手を増やさなくては意味がない。
皆には悪いが数億の出資では、俺の性能が活かし切れないのだ。
そういう訳で、安宅・鳩野の専業投資家コンビの来訪は嬉しいし、全betの気配をプンプンさせている田名部は是非共味方にしたい。
元々、高校野球ファンらしいので後藤に接待させておけば好印象を稼げるだろう。
今日で帰還31日目。
最初の一ヶ月をこうも無為に過ごしてしまった以上、これからは更に真剣に取り組まなくてはならない。
(特に今朝は洒落にならないレベルで時間の無駄だった)
午前7時30分。
出発。
「トイチ君。
病院行かなくて大丈夫?」
寺之庄がバックミラー越しに確認して来る。
『湿布貼ってるんで大丈夫です。
痛くなったらヒロノリさんに泣きつきます。』
コテージから10分かけて箕面とどろみIC(変な名前だ)に到着。
ここから高速で30分強の予定。
大阪平野を背後にして丹波の山を分け進む。
車通りは少なく、快適な旅路だ。
コーヒーを飲む間もなく篠山ICを出る。
下呂がそうであった様に、山の中に突然盆地が現れたのだ。
限られた平地に人家と田畑。
推定人口規模は数万、十中八九匿名性はない。
観光はしない。
宇田川が送ってくれた座標に真っ直ぐ向かう。
割とICから近い。
市街の中心を通らず、20分程で宇田川の敷地(大きな農家)に入った。
「どうも!
しつこく催促して申し訳ございませんでした!
宇田川です!」
『ああ、これはこれは御丁寧に。
遠市厘で御座います。』
「ルナルナ配信、いつも楽しく拝見しております。
ちゃんとリツイートもしておりますので御安心下さい!」
…いや、あまり拡散されたくないのだが
まあいいか。
「では早速!
こちらをご覧下さい!
止め刺しには電気槍を好まれると伺っております。
どうぞ。」
宇田川は等間隔に並べた箱罠を俺に披露する。
内心舌を巻いた事だが…
この男は俺の心理を正確に読み取っていた。
即ち、《殺生以外に時間を掛けたくない》という本音を完全に理解してくれている。
なので
「この後、観光名所を案内します。」
とか
「ご当地ランチで歓迎させて下さい」
そういう無駄な話を一切しない。
それどころか、俺が電気槍を使っている間、娘さんらしき人にお土産を持ってこさせていた。
弓長と娘さんが互いに頭を下げ続けている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
2億0584万8400円
↓
2億0374万8400円
※宇田川政則に210万円を支払い。
(日当10万円+イノシシ捕獲褒賞200万円)
【推定経験値】
イノシシ10匹
40×10=400
《経験》 1029→1429
本日取得 400
本日利息 未取得
※次のレベルまでの必要経験値1121
※レベル9到達まで合計2550ポイント必要
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日利が払い出されるまで断定は出来ないが、恐らくレベル8に到達した。
そうそう、これなのだ。
ドラマ性やらトラブル等は一切不要。
カネなら幾らでも払う。
つべこべ言わずに生命を売ってくれれば、それで良いのだ。
宇田川は固辞するが《他の地域でもそうしている》と1頭20万円の褒賞で押し切る。
今後も10匹以上纏めて殺させてくれるなら、10万ではなく1頭20万円出す。
『宇田川社長。』
「はい。」
『このまま帰りますが、貴方の手際と真心に非常に感銘を受けております。
今まで協力をお願いした狩猟者の中でも、貴方の仕事ぶりは突出しておりました!
これからも是非共宜しくお願い致します。』
「ありがとうございます!!!」
…凄いなこの男。
最後の最後まで、好奇と驚嘆を噛み殺し切った。
コスパ/タイパを重視している俺が本心では雑談を嫌っていること、あまり田舎を好きではないこと、観光の為の観光を嫌うこと。
全て把握している。
一切、無駄な詮索が無かったのには心底助かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
9時32分篠山発。
あまりのスピーディーさに改めて感動する。
礼という訳ではないのだが、車内ではずっと宇田川とチャットして感謝を述べ、狩猟用車両の購入も約束する。
宇田川も纏まったキャッシュに感激してくれたらしく、そのカネで周辺猟師を説得する事を約束してくれた。
そうだ。
やはり、預かり資金と同じなのだ。
纏まった分量が必要なら、どんどん中抜きさせて積極営業させなければならない。
浜松の鈴木・下呂の松永・米原の宮田に《狩猟用車両が必要なら寄贈させて欲しい》とメッセージを送り返信を待つ。
宇田川の配慮への感謝として、出来るだけ兵庫の山々を眺め回して目に焼き付ける。
そうか、この県こそが日本で一番イノシシを狩った県なのだ。
…ここはレベリング地として非常に好ましい。
大阪市内から高速道路でも鉄道でも向かう事が出来る。
大切にしよう。
彼が持たせてくれた篠山土産には、ルーズリーフ4枚に掛けて篠山事情が纏められている。
(徹頭徹尾、テキストで済ませてくれる姿勢に強烈に感謝である。)
レポート内で強調されていたのは、兵庫県は南北を海に面し西日本と東日本を分かつ場所に位置しているということ。
《即ち、活動範囲が広いイノシシは必ず兵庫を通る事を意味します》
と、太字のカラーペンでグリグリ強調されていた。
字体からして書いたのは先程の娘さんだろうか?
綺麗な丸文字で大きく書かれている。
やや暴論の気もするが、何となく日本中のイノシシが兵庫県を通っているような情景をイメージしてしまい、狩場としては最適なのではないか、と思い始める。
弓長が机の上に宇田川の持たせてくれた土産を丁寧に並べる。
寺之庄が「ありがとう、真姫」と明るい声色で呼び掛けた時、弓長がとても哀しそうな表情をしていたのが印象的だった。
・松茸昆布
・栗パウンドケーキ
・猪肉 モモブロック(10k)
どれも値の張るものばかりである。
そして最後にアイデア商品?
黒豆麺なる乾麺も1ダース入っていた。
製造業者欄を見ると《宇田川製麺》と記載されていたので、恐らくは御一族なのだろう。
直訳すれば《鷹見に宣伝するように頼んで欲しい》という意味である。
無論、頼んでみるつもりだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
途中、後藤から連絡が入る。
田名部が来訪許可を求めているとの事だったので、快諾。
箕面の拠点で歓待する事を決める。
午前10時35分。
箕面コテージに到着。
管理人に連絡し、部屋を破損させてしまった事を謝罪する。
「え!?」
管理人さんは温厚そうな老人だったが、部屋を見た瞬間硬直して…
当然だが顔が怖くなる。
『私の不注意です!
まずは弁償させて下さい!』
「いや、弁償って…
こんなもの10万20万ではすみませんよ!?
ちょっとこれは…」
『はい、仰る通りです。』
「破損がこのレベルになってしまいますと
私の一存では何とも出来ませんので…
写メ宜しいですか?
社長に報告せざるを得ませんので。」
「あ、はい。」
そりゃあね。
電話壊れたり、部屋中に血飛沫が不着してたり、壁に人型の穴が空いてたらね。
普通は怒るよね?
管理棟に出頭して怒られる態勢を取る。
ヒルダがニコニコしているのは、こういう時に隣で一緒に怒られるのは正妻の特権だかららしい。
まさか、とは思ったが鷹見と木下が悔しそうな表情で歯を喰い縛っていたので、案外そういうものなのかも知れない。
塩崎と名乗った運営会社の社長はどうやら地場の不動産屋らしかった。
言動から察するに夫婦で営む零細業者らしい。
「困りますよぉ…」
鷹見の形に空いた壁穴を見て塩崎社長は絶句する。
そりゃあね、あの野蛮人共には俺も驚いているからね。
「今、売りに出してる最中なので…
本当に困るんですよ。」
『現状回復にお幾ら程掛かりますか?』
「…本格的に直す場合900万はします。
いや、ふっ掛ける訳ではないんですよ?
これ、一体型の3Dプリンター建築なので、建直し+廃棄費用が掛りますので…」
『じゃあ取り敢えず2000万払います。
不足があれば請求して下さい。』
俺はリュックから100万円札束を20個テーブルに置く。
「え!?
いや!?
そんないきなり!!
現金だと会計処理が…」
『領収書とかは不要ですので取り敢えず納めて下さい。』
「え!?」
『この度は、当方の不注意により多大なご迷惑をお掛けしました。
誠に申し訳御座いませんでした!』
「あ、いや。
2000は流石にこちらが貰い過ぎだと…
あの、ダメ元でのお願いなのですが…
このキャンプ場買い取ってみません?」
聞けば、コロナ禍に起こったキャンプブームが一段落した事で、全国の俄キャンプ場が一斉にM&A先を探し始めたらしい。
塩崎も便乗組の1人であり、今流行りの3Dプリンター建設でアッパー向けのコテージビジネスに参入したとのこと。
ただ、塩崎夫妻のアウトドア嫌いが災いしたのか、上手く行っていない。
車で10分の距離に住んでる癖に、週に一度も顔を出さないらしい。
この先どうなるか見当もつかないので、事業購入は固辞したが、さっきのカネで3ヶ月リースさせて貰う事になった。
(但し、現状復帰義務あり。)
ダメ元で車用門扉の取り付けを頼んでみると、あっさりと快諾された。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
2億0374万8400円
↓
1億8347万8400円
※北摂土地産業に迷惑料兼3か月施設リース料として2000万円を支払い。
※原状復帰見積もりが完了次第、弁済するものとする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
塩崎はカネの話に適当に区切りを付けると、表情を緩めて俺に顔を近づけて来た。
「それにしても本当に驚きました。
まさか毎日TVで見ている、あのお2人が宿泊して下さるなんて思わないじゃないですか。
…あの、ス●ローと揉めてるのはヤラセではないんですよね?
最近はそういう自演炎上マーケティングも流行していると伺っておりまして。」
『ああ、そこら辺は本人に聞いた方が早いでしょう。
ヒルダ、鷹見を入室させても構わないか?』
「ジュリナも部屋に入れておやりなさい。
ああ見えてTPOは弁える子ですので。」
塩崎は実物の俺や鷹見と同席出来たのが余程嬉しかったのか、握手を求めて来る。
初対面で馴れ馴れしいとも思うのだが、物件を壊した負い目もあるので無下に出来ない。
結局、施設の正門の前で塩崎社長を2人で挟んで記念撮影してやった。
…冷静に考えれば、俺と鷹見は世界一再生数を稼いでいるカップルだからな。
(俺達には1円の広告料も入って来ない訳だが。)
物件そっちのけで撮影をせがむのも仕方ないか。
騒動の詫びも兼ねて、カップル配信を箕面市内のレンタルスペースで行う事を約束させられてしまう。
態度は柔和だが、やはり関西の商人は押しが強い。
まあ、いい。
中期間使える拠点はあるに越したことはない。
俺はメンバーに急ぎ状況を報告し、独断を形式的に詫びた。
いつの間にか正午を回っていた。
「ダーリン様。」
『んー?』
「900万なんて嘘に決まってますよ。
ウ↑チ↓、ホスクラの壁凹ませた事があるんで知ってるんです。
どうみても部分修繕で済む案件ですよ。」
『だろうな。』
「だったら、どうして自分から倍額払ったんスか?」
『向こうがこちらを値踏みしていたからな。
敢えて想定を越える事で、塩崎を推し量ってみた。』
「いや、それにしても!」
『あのな。
これまでもさ、似たケースは何度か経験してるんだ。
俺も色々実験してみたんだけどな?
相手が吹っ掛けて来た時は、倍額払った時に最大のリターンが見込める事が多かった。』
「え?
そうなんスか?」
『だってそうだろ?
吹っ掛けてる時って、心のどこかに後ろめたさはあるんだから。
そういう心理状態の時に即座に倍額出されてみろよ。
確実に脳が麻痺する。
後は俺をどうやって繋ぎ止めようかしか考えられなくなる。』
「…そこまで計算してやってるんスか?」
『カネの払い方に関しては、色々なギミックを使ってるよ。
同世代の中では、かなり熟達している自信はある。
ちなみに、受け取る時のプロファイリングが一番凄いのがヒルダ。
財布の広げ方で男の年収がわかるらしい。』
「エグいBBAっスねー。
今度、教えて貰おうっと。」
『配信、ゴメンな。
鷹見って自由に撮りたいタイプだろ?
箕面萱野の案件だけ、我慢してくれ。』
「別にウ↑チ↓はいいッスけど。
害悪系配信者に宣伝効果ってあるんスかね?」
『じゃあ、そこでイベントやる?
大型キッチン併設の部屋もあるみたいだから…
何かメシでも振舞おう。』
「ダーリン様って何を企んでるんスか?」
『ん?』
「他人にメシなんか喰わせて何の意味があるんスか?」
『意味はないよ。』
「だったら!」
『全員を喰わせてやらない限りな。』
「ぜ、全員って?」
全員と言ったら全員だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
13時17分。
安宅・鳩野コンビが来訪したので熱く抱擁して再会を喜ぶ。
2人も門扉が無い事を不安がったので、考える事はみな同じらしい。
「トイチ先生、報告します。
私が5億、鳩野君が3億を預けます。
上手く行けば、今月中にもう1億積めると思います。」
『おお、タワマン
売れたんですか?
こんなにすぐに売れるものなんですね。』
「ははは、投げ売りしましたから。
一秒でも早くキャッシュを手元に置きたかったのです。」
安宅は豪放に笑うが、大金を持ち運んだストレスは相当なものらしく、しきりに恐怖を訴えた。
メンバー皆でキャンピングカーに運び込み、分配に対する打ち合わせを簡単に行う。
予め言い聞かされてるのか、鳩野は車両に近寄りもせずニコニコとこちらを見守っている。
「鳩野君は詮索しません。
なので、優しくしてやってくれれば幸いです。」
『わかりました。
歓迎の意を表します。
丹波土産があるんですよ。
後で鳩野さんにも振舞って良いですか?』
「おお!
喜びますよ!
ああ見えて内気な奴なんで。
色々構ってやって頂ければ助かります。」
一番広い棟に皆を招き、イノシシ肉を焼く事にした。
江本が近所の家電量販店で焼肉用のプレートを何台か買って来る。
『エモやんさん、立て替えさせて下さい。
貴方にばかり出させてたら申し訳ないですよ。』
「いやいや!
トイチさんは毎日純金をくれるじゃないですか!」
『アレの元本はそもそも江本さんですから。』
「いやいや!
こんなペースで頂けるとは思わず…
一瞬で元本を追い越しちゃいますよ。」
『日頃の感謝です、御笑納下さい。』
「それにしてもトイチさんのスキルって最強ですよね。
まさかマテリアルにまで【複利】が効くなんて!」
…マジか。
敢えて出さなかったその単語に辿り着くか…
まあ他に表現のし様もない能力だしな。
やっぱりコイツ、勘がいいよな。
「ああ! スミマセン! スミマセン!
勿論詮索するつもりはありません!
俺、この件で情報は深堀りしないと決めてますんで!」
『いや、エモやんさんは…
もう私のこと、全て御存知なんじゃないか、と。』
「いえいえいえ!
聞かされてもいない事が解かる訳ないじゃないですか!
俺がトイチさんについて解ってる事と言えば。
貴方のスキルが、財産を【複利】で運用して、毎日17時にレベル×%の日利を配当として受け取れる事と。
異世界でコレットさんというヒルダさんの娘さんと結婚されておられたこと位なんですから。
いや、勿論ヒルダさんの口ぶりからしてトイチさんが向こうで破格の出世を遂げられたのは理解しておりますよ?
王とか候とか、そのレベルの。
安心して下さい!
俺が把握しているのは、精々その程度の範囲ですから。」
…安心も何も、《その程度》が俺の全てだぞ?
もうオマエが異世界行けよ。
まあいいや。
アンダースローを5分で修得する男相手に隠し事が出来る筈も無いからな。
エモやんが買って来たプレートで猪肉を焼き始める。
後藤によると田名部ももうすぐ到着するらしいので丁度いいだろう。
キッチンを見るとヒルダが木下と佐々木に何かを説明している。
仕草からすると、男同士の饗宴に対しての婦人の立ち位置を説明しているのだろう。
或いは幼き日のコレットにもあんな風に薫陶を与えたのかも知れない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
14時20分。
田名部到着。
あちこちを駆け回った形跡がある。
安宅がそうであるように、現金を搔き集めたのだろう。
見た目よりも愚直な男なのかも知れない。
「嫁がゴチャゴチャ抜かしたんで、家から蹴り出しました。
息子が嫁の肩を持ったんで、ついでに叩き出しました。」
『oh…
どうか御家族を大切に。』
「嫌です!」
『あ、はい。』
「でもトイチさんだって
仕事の邪魔をする家族とか許せないでしょ!?」
『まあ、邪魔ではありますよね。』
「兎に角!
詐欺をして下さるとのお言葉を頂戴出来ましたので!
ご指示通り、有り金全部持って来ました!
このカバン改めて下さい!」
…コイツのコンサルだけは受けたくないな。
『ええ、ありがとうございます。
きっと手間を取って下さったのだと思います。
なので田名部さんには優先して詐欺することにします。』
「やったぜ!!」
俺は猪肉を頬張りながら、田名部に対して簡単にメンバーを紹介する。
ヒルダ・鷹見・木下についてもさっきの取り決め通りに紹介する。
呼んでもいないのに恩師が来たので、紹介に困る。
「ニャニャニャ!?
恩師ちゃんもトイチの愛人枠じゃなかったニャ!?」
『え?
貴方、荒木のでしょ?』
「テツ君には
《え? オマエ、トイチの女だろ?》
って突き放されたニャ!!」
『いやあ、荒木の真意はどうあれ…
友人の彼女に手を出せる訳ないでしょ。』
「ニャオ―――ン!!(涙目)
可愛い生徒に押し付け合いされちゃってるニャーー!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億8347万8400円
↓
1億8337万8400円
※野良猫エサ代として10万円を支払い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ニャーニャーうるさかったので、鷹見につまみだして貰う。
そして田名部に謝罪。
「いや、改めて確信しました。
トイチさん、凄いですね。
その若さで、もう組織を作っておられる。」
『いえいえ。
皆に庇護されているだけです。』
「実は私、色々コミュニティを作ろうと奔走していたんです。
事業者団体とか、レジャーの同好会とか。
ただ、やればやるほど空回り感があって…
だからこそ、この人数を率いておられるトイチさんの凄さが理解出来ます。」
『恐縮です。
また機会があれば色々と御教示下さい。』
さてと、
ここからが本番だ。
間接運用に俺も慣れて行かなきゃな。
まず田名部が持参したカネ。
後藤が計測し、分配も担当する。
既に因果は含められているのだろう。
不満の声はない。
「これはヒエラルキーではありません。」
優しい声色で後藤が田名部に囁く。
そう、つまりこれはヒエラルキーなのだ。
田名部も馬鹿ではないので、ニコニコしながら恐縮したフリをする。
仮に俺との付き合いの長さがヒエラルキーに反映されるシステムだとしても田名部に損はない。
何故なら現段階でのパーティー人数は明らかに草創期のそれだからである。
しばらく皆と雑談して時計を見ると15時を過ぎていた。
…今から外出は無理だな。
本当は大阪市内を見て回っておきたかったのだが。
今のやり方は非効率だ。
改善したかったので、寺之庄にお願いして2人きりで話せる時間を作って貰う。
幸い、彼はキャンピングカーに戻っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億8337万8400円
↓
11億8337万8400円
※出資金10億円を預かり
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
皆は10億2000万円を預けたがったのだが、今日に関しては俺の我儘を聞き入れて貰った。
きっちりとした数字って気持ちいい♪
『ヒロノリさん。
スミマセン、時間を作って頂いて。』
「いやいや、僕もトイチ君と2人きりの時間は好きだから大歓迎だよ。」
言葉の裏を読むと《弓長を押し付けるな》という意味だろうか?
いや、多分そういうニュアンスだろうな。
『今、私の動きが鈍っております。
本当はもっと自由に動き回りたいのですが。』
「ふふっ、まだまだ走り回りたい?」
『本音で話しますね?
一日中、狩場だけを移動したいんです。
静岡から兵庫の間を朝から晩まで疾走して何十匹も殺して回りたいんです!』
「あははは、サイコキラーだww」
『まあ、自分でもキチガイ染みているのは承知してますが。』
「いいよ。
やってみよう。」
『え?』
「面白いじゃない。
僕もそういうレベリングやるよ?
ゲームの中での話だけど。」
『え?
ヒロノリさんでもゲームとかするんですか?』
「あはは、やだなー。
僕だってゲームくらいするよ。
プレステ5もswitchも持ってるし。
最近はやってないけどね。」
『あ、スミマセン。
私が付き合わせてしまっているから。
ゲームの時間まで奪ってしまいました。』
「ははは、違う違うww
今の生活が面白すぎてゲーム欲が湧かないw
ああ、鷹見さんが壁に埋まってるトコ見たかったな。
写メとか持ってないw?」
『松村教諭は性格が悪いので、多分撮影してくれてると思います。
後で保存してないか尋ねておきます。』
「っぷw
楽しみにしとく。」
寺之庄が冷蔵庫から出してくれたペットボトルで喉を潤す。
「レベリングは順調?」
『はい。
兵庫はアタリだと直感的に感じました。
ほりけん@氏の在住する岡山県とも隣接しておりますし。』
「1つお願いがあるんだ。」
『あ、はい!
是非!』
「僕は自由が欲しい。」
『え?』
「前も言ったかもだけど。
実家が田舎の…
まあ旧家だね。
僕、長男なんだ。
親の会社を継ぐこと、親が決めた婚約者、親の縁で通ってる大学…」
『…。』
「もう疲れたよ。」
『お察しします。』
「僕にとってトイチ君は救世主だったんだ。」
『え?
私がですか?』
「現に退屈な日常から救い出してくれたでしょ?
手元のキャッシュも相当増やしてくれたしさ。」
『いえいえ!
こちらこそ、出資して頂いている事を感謝します。』
「何も言わずに、このまま僕を側に置いてくれないか?
勿論、これまで以上の貢献を約束する。
運転もそうだし、SNSに関しても君の方針通りに運用する自信がある。」
『いえいえ!
貢献だなんて、私はヒロノリさんに食わせて貰っているようなものですから。』
「実家を抜ける為の既成事実が欲しい。
田舎者が納得する良い場所に、つまり都内の一等地だね、そこに邸宅を構えさせてくれないか?
ついでに会社も。
上場させてくれると尚ありがたい。」
『意外ですね。
ヒロノリさんってそういうのに興味なさそうなのに。』
「無いよw
でも、福井の重力を吹っ切る為には、それくらいの勢いが必要なんだ。」
『あはは。
重力ってw 大袈裟ですよおw』
「こればかりは実物を見ないと分かって貰えないだろうね。
田舎は凄いよーw」
『…凄いっすかー。』
「うん。
凄いっす。」
しばらく2人で田舎談議に盛り上がる。
【複利】発動まで30分を切ったので、シートを敷いて射出場所を定める。
「ねえ、トイチ君。」
『はい。』
「次から真姫と同部屋にするのはやめてくれるかな?」
『…はい。
ご迷惑でしたでしょうか?』
「いや、あの子の事は別にどっちでもいいんだけど。
僕は君に合わせたいんだ。」
『え?
私にですか?』
「トイチ君。
意識してセックスしてないでしょ?」
『…。』
「いや、責めてる訳じゃないんだ。
寧ろ、逆。
最初から意志の強さは感じてたけど、ここまでとは思わなかったから。」
『申し訳ありません。
別に禁欲を誇示する意図はないのですが。』
「安宅さん?」
『…まあ、特定の誰がということではないのですが。
仲間が不快感を感じないようなパーティー運営をする義務が自分にはあると思います。』
「君の意図を察したのは最近だけどね。
心底、戦慄したよ。」
『いえ…
そんな大したものでは。』
「ねえ。
トイチ君って、異世界でちゃんと勝ってから帰って来たんでしょ?」
『…勝利の定義はわかりませんが
彼らへの義理は果たしたと自負しております。』
「ふふっ、地球でも義理は果たせそう?」
『あ、いえ。
地球人の私が地球の為に働くのは義理ではなく義務ですので。』
「あはは。
こいつは失礼。
君には敵わないな。
どう地球では勝てそう?」
『うーーん。
現時点で私の敵になりそうな勢力って存在しませんからね。
国連人権委員会には目の敵にされてますけど、別に何かされてる訳でもありませんし。
普通に皆を喰わせていく仕組みを淡々と提示していくだけじゃないでしょうか?
強いて言えば、ヒルダとか鷹見とか松村教諭とか…
敵らしい敵と言えばアイツらくらいですかね。』
「あはは、アレは強敵だw
顔も殴られちゃったしねw」
『私、弱いですからねえ。
ワンパンで鷹見に沈められました。
いや、男として情けない事は重々承知なのですが。』
「アレは相手が悪いよ。
鷹見さんって、かなり喧嘩慣れしてる雰囲気だし。
あの子にやられても恥ではないって。」
発動が近いので、寺之庄はトレイルカメラで最終警戒。
俺は軽くストレッチ体操。
《9467万0100円の配当が支払われました。》
『よっし!』
「トイチ君?」
『順調です。
それも貴方のおかげで!』
「ふふっ、素直に取っておくよ。」
何度も頭の中で計算を繰り返す。
8%に到達した。
間違いない、今日レベルアップしたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
11億8337万8400円
↓
12億7804万8500円
↓
12億5804万8500円
↓
2億5804万8500円
※配当9467万0100円を取得
※配当金2000万円を出資者に支払い
※出資金10億円を別に保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数分経って、後藤と安宅が車内に入って来る。
「それでは手筈通りに。」
「支払って来ます。」
『お願いします!』
後藤は田名部に安宅は鳩野に、それぞれ1%の配当を支払う。
即ちコアメンバーには田名部・鳩野の預金額の1%が入って来る寸法。
例えば5億を預かったとすれば、コアメンバー5人に500万のキャッシュが入って来る。
1人頭100万の儲けである。
この構造なので、コアメンバーは新規メンバーを決してブロックしない。
寧ろ腰を屈めて満面の笑みで歓迎するようになる。
「もう問題は重量だね。」
『ええ。
そろそろ洒落にならない重さです。』
「10億って100キロだからね。」
『このキャンピングカーには幾ら位積めるんですか?』
「最大積載量が2.0t未満」
『あ、じゃあ2000億円積めるんですね?』
「ところが、ここに人間の重さが加わっていないんだ。
体重50キロの人間が6人乗ったらそれだけで300㌔の重量になる。
それにベッドや給水タンクの重量も引かなきゃだし。」
『ああ、そっか。』
「2000億は近い?」
『来月には越えてるんじゃないでしょうか?』
「ふふっ、軽く言うねw」
キャッシュが2000億増えた程度で日本経済に与える影響は極めて軽微である。
故にそのラインまでは急ぐ。
目標の日利は20%だが、人も殺さずにそこまで到達出来るとは思わない。
現実的には15%辺りで頭打ちしそうな気はするが…
時間を掛ければ異世界同様に10垓円貯めれるだろうが、今回は分配先行で行くと決めている。
故に考えなければならないのが、《如何に元本を貯め込むか》ではなく《如何に元本を分配するか》だ。
俺は遅くとも年内に殺されるだろうが…
その前に好ましい前例を作っておきたい。
若しくはヒルダ無双もあり得るが、個人的にはそっちの方が嫌だ。
地球の在り方は地球人だけで決定しなければならない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
浜松の鈴木・米原の宮田から返信が来ている。
《可能であれば1台譲って頂けないか》
との内容。
かなり遠慮がちな文面だったが、行間からは《この話を受けてやる事に関しては貸しだ》という本音が見え隠れしている。
そりゃあそうだろう。
彼らに狩猟車を寄贈するのは俺の利益の為なのだから。
宇田川を交えたグループチャットで最終調整。
俺には車が一切解らないので口は出さない。
彼らが何を言っているのかすらわからない。
狩猟用の軽トラを1台ずつ寄贈することで正式決定。
車両はハイゼットジャンボ4WD。
これを狩猟用にフルチューンした上で、米原市・浜松市まで納車させる。
装備は各員と合議の上で微調整するが、下記3点は標準装備。
・垂直式テールリフト
・ウインチ付き油圧ピックアップクレーン
・フロントバンパーウインチ
代金はキャッシュと振込の半々で俺が宇田川に先払いする。
納車までの段取りはグループチャットで調整することになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
2億5804万8500円
↓
2億5004万8500円
※安宅一冬に狩猟車両2台分の発注建て替え代金として800万円を支払い。
安宅一冬は宇田川政則に400万円を《狩猟体験ツアー代金》の名目で振込、残金400万円をJR篠山口駅にて直接受け渡し。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「寺之庄君のアカウント経由なのですが、フォロワーが増えて来てるんです。
それもフェイクでは無さそうな女性が多くて、驚いてます。」
『え?
そうなんですか?』
「彼が画像をアップする度に大袈裟に私を持ち上げてくれるので…
何か私が凄い人みたいな雰囲気になっておりまして。」
『安宅さんは凄い人ですよ。
これまでもそうだったじゃないですか?』
「いや、違うんです。
恥ずかしい話なのですが…
これまでの私は自分で《俺は凄い》を連呼し過ぎてしまっていて
今思えばそういうダサい振舞いで男としての株を大きく下げていたのだと思います。
飯田君や寺之庄君が遠回しにそれを矯正してくれて…
この歳でようやく生き方が解かって来たと言うか…」
『…。』
「ねえ、トイチ先生。
私、これからも一緒に居させて貰っていいですか?」
『ゴメンナサイ。
私、勝手に貴方を身内に数えておりました。
寧ろこちらからお願いしたいくらいですよ。
これからも私と一緒に居て下さい。』
それから2人で、安宅のフォロワー女性の品評会をして遊ぶ。
《コイツは補正し過ぎてて怖い》
《あ、これはAI生成》
《FXやる女は真性の屑》
《このDMは売春防止法に抵触しているのでは?》
《コイツは不細工だから信用出来る》
等と言って爆笑しながら盛り上がる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
21時。
箕面萱野駅に送って貰う。
『jet、この時間帯からでも大丈夫なのか?』
「東横と一緒だよ。
日付変わってから本格的に皆が集まりだす。
先に言っとくけど、グリ下の規模は小さいよ?」
『いや、オマエがいつも楽しそうに話してたからさあ。
ちょっと挨拶に行くだけだよ。』
「関西勢にLINE送ったんだけど。
返事は3人だけ。
夜職組は既読も付かない。
今一番忙しい時間帯だからな。」
『りょうかーい。』
「どうせルナルナも連れて行くんだろ?
オマエが責任持って押さえろよ?
アイツ関西勢とも揉めまくってたから。」
『鷹見はトラブル多いよな。』
「そりゃあス●ローに喧嘩売る位だからな。
結局、あの話どうなってるの?」
『向こうの弁護士が言うには損害賠償を求めて訴訟するんだってさ。
《絶対に配信のネタにするな》って釘を刺されたんだって。』
「それってフリ?」
『わからない。
あの鷹見が真剣に悩んでたからな。』
「ははは、流石は弁護士だなw
話の持って行き方が上手いw」
笑い合ってから通話を切った。
スマホを江本に返す。
今から俺が向かうのは《グリ下》なる関西版の東横のような場所。
道頓堀なる水路の側にあるらしい。
同行者は江本・鷹見の2名だけ。
木下に同行をせがまれたが、当然拒否。
流石にこの時間帯に13歳を連れ回すのは犯罪だろう。
北大阪急行電鉄南北線なる路線でなんば駅まで向かう。
東京で江本に貰ったSUICAはここでも使えるらしい。
「鷹見さん、電車の中で配信せんとって下さいね?」
「ハア? それってフリ?」
「…ええ、フリです。
鷹見さんって広告効果あるから、配信してくれるだけで
俺が儲かるんですわ。」
「チッ、やーめた。
オメーの所為で気分醒めたわ。」
鷹見は長い脚で江本の足を蹴り飛ばす。
だが、ぞんざいながらも、この男を気に入ってはいるのだろう。
俺と江本を両脇に抱えご満悦である。
「ねえ、江本ぉ。
オマエ、佐々木とヤッタの?」
「法律的にヤバい事は記憶に残らない体質なんですよ。」
「いいじゃん、江本も未成年でしょ?」
「ええ。
でも、もうすぐ誕生日なんです。」
「おお、おめでと。」
「ありがとうございます。」
「これで捕まった時、実名顔写真入りだねw」
「ま、その時は鷹見さんが隣で写ってくれるから心強いですよw」
「フラグ立てんなしww」
「お互い逮捕は避けましょう。
ただでさえ鷹見さんはス●ローとの裁判を控えてるんだから。」
「ああ、あれな。
アイツら、滅茶苦茶な金額を払えって言ってるんだぜ?」
「幾らっすか?」
「最低でも5000万円とか抜かしやがって。
裁判で会った時にブッ殺してやるつもり。」
「いや、あの規模の事件で5000万は良心的だと思いますよ?
何せ鷹見さんは日本の回転寿司文化を消滅させた張本人ですからね。」
「えー、あれってウ↑チ↓の所為かぁ?」
「ですです。
まさか回転寿司のレーンから一斉に寿司が消える日が来るとは思いませんでしたもの。
鷹見さん、タイム誌の《世界で最も影響力がある100人》に選ばれてもおかしくない位置にいるんですよ?
少なくともあの後、模倣犯がTikTok上に大量に溢れてますもの。
昨日のニュース見ました?
牛丼屋の?」
「牛丼?
それは初耳かな?」
「ほら、これですよ。
直接紅ショウガ食べてる動画。
この男も《最強害悪系配信者》を名乗ってますね。」
「はぁ!?
害悪界最強はウ↑チ↓なんですけどぉ!?」
「ええ、俺もそう思います。
でも、そこで張り合わんとって下さいね?」
「フリ?」
「フリじゃないっす。」
「紅ショウガの上を行かなきゃ再生数取れないなあ。」
「対抗せんとって下さーい。」
「うーーーん、紅ショウガは盲点だったなあ。」
「そこで悩まんとって下さーーい!!」
「ねえ、ダーリン様。
何かおススメのアイデア無いっスか?」
『…え、俺に話振るの?』
「意外そうな反応しないで下さい!」
『スマン。
今はエモやんさんのターンだと思ってたから脳を休めてた。』
「もー、陰キャなんだから。
だからチー牛野郎とか言われるんスよ?」
『誰だよ、そんな酷いこと言う奴。』
「いや、主にウ↑チ↓なんですけどね?」
『マジか。
俺の被害、9割オマエからだぞ?』
「いやいや!
9割は大袈裟ッショ!
ウ↑チ↓、ダーリン様に絶対忠誠LOVE×2良妻賢母ッスよ!」
『お、おう。
まあ、次からは手加減してくれ。』
…折られた鼻と刺された肩が思い出したように疼く。
「で?
どうっスか?」
『どうとは?』
「いやいや!
もっと真面目に考えて下さいよ!
牛丼でもバズらなきゃぁね?
配信者としてこのオッサンに負けたことになっちゃいます!」
『え?
そこ勝ち負けなの?』
「当然っスよ!!
世界に傷痕を残さずして何の人生ッスか!!」
『ああ、その点は賛同だな。』
「おお、珍しく素直ッスね!」
『世界滅んじゃったら、後は鷹見が何とかしておいてくれ。』
「え?」
さて、ここがなんば駅か。
人が多いな。
江本の案内で10分ほど歩く。
ああ、TVとかで見た事あるわ。
これがミナミって場所か。
漫画とかの舞台にもなってるよな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「トイチさん、ここが戎橋です。
通称《ひっかけ橋》。
見ての通りナンパやキャッチが盛んです。」
『へえ。
凄く猥雑な雰囲気ですね。』
「ちなみに昼間はインバウンド客で満ち溢れてます。」
『ほう!』
「あ、そっちの方が興味あります?
ちなみに、日本一インバウンド人口比率が高いのがこの戎橋です。」
『おおお!!!!』
「そこまで食いついてくれるとは思いませんでした。」
俺達は付近の店でたこ焼きを買って橋のたもとに座った。
3人で地べたに座ってモシャモシャ食べる。
結構熱いな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【3P実況】 ルナルナ夜遊び日記(おおさかへん!) [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
「電波悪いのかな?
ちゃんと映ってる?
誰かコメントして…
《パチ屋の店員》さん、ありがと!
はい!!
という訳で!!
配信始めるよーーー♪
ありがと!ありがと!
最初からこんなに同接あるとテンション上がります!!
はい、皆さん!
ウ↑チ↓のメイン養分である童貞弱男チー牛陰キャ負け犬の皆さん!!
今日も可処分時間をウ↑チ↓に捧げて下さい!!!
お礼におっぱい触らせてあげまーーーーす!!!
へっへっへ、チョロい奴らだぜww
はい!
相模の獅子こと、ルナルナ@貫通済でーす♥
いえーーーい、ドンドンパフパフーーー!!!
忘れないうちに告知しておきますね!
ウ↑チ↓が主演・監修した《主観フェチ動画 黒スト天国》!
FANZAさんからのリリースまで、いよいよ後3日!
サンプルだけでもいいんで見て下さい!
URL貼っときます!
《たぬき13号》さん!
《天草四郎童貞》さん!
《生ポ打ち切られた》さん!
《たぬき鍋》さん!
《ゆう君のパパ》さん!!
養分乙でーーーーーーす!!!
え?
奈々?
アイツは置いて来た。
見ての通り、今日は3Pする日だからな。
あははw
女の友情なんて男が居ない時だけだぞー。
《セガ信者》さん、百合展開希望?
ばーーーかww
今日は3P寝取られ托卵見せつけ配信の日だーーーーwwww
はい、と言う訳で。
さっきまでパコリまくってました。
あー、腰と顎が筋肉痛だわ。
こっちに居るのが、国連のアイドル!
ダーリン様こと遠市厘様でーーーーす!!
ほら、挨拶して。」
『あ、どうも。
いつも鷹見がお世話になっております。』
「何か面白いこと言って!」
『え? そんな急に言われても…
あっ、あっ、あっ。』
「皆、ごめんねー。
世の中には配信に向かない奴って居るんだよ。
ダーリン様はねえ。
見てる分には爆笑要素あるんだけど、基本的に陰キャだからねえ。
あっ、《ゴミ人間》さんシャンパンありがとー。
貢ぎマゾプランに入ってくれた人だよね?
ありがとね!!!
《ブラン・ブラジャーク》さん、お茶爆感謝ですー!
《ダイエット成功139キロまで減らしたぞ!》さん、いつも風船ありがと!
で、反対側のコイツが。
ほら、挨拶しな。」
「えー、俺も映るんすか?
聞いてないっすよ。」
「うおっ、コメント多いw
おい江本、喜べww
リスナーからイケメン判定されてるぞw
《ラスサバ金レート昇格》さん。
ブサメンとイケメンに囲まれてるとNTRリアリティがある。
《たぬき1号》さん。
イケメンが並ぶとショックがデカい、ガルパンは全然気にならないのに。
オマエラーーww
どさくさに紛れてダーリン様をDISるなーーww
この人。夜中にメソメソ泣くタイプなんだからなーーwww
江本、オマエもなんか面白いこと言えw」
「うーーーん。
俺、オモロイネタとか持ってませんよ?
登板日の夜になんJで実名レスバしたら野球規約変わったくらいで。」
「初手笑えるじゃねーかww
はい、と言う訳で。
さっきまでダーリン様と江本に交代交代に犯されまくってました。
気持ち良かったですww
《ブラジリアン・チョップ》さん、花火ありがとー。
でも、ここは上げるタイミングじゃないっつーのww
《たぬき66号》さん、ブスの癖に調子乗るな。
逆逆、親ガチャ外してレールに乗れない奴はさあ、せめて調子くらい乗らなきゃ。
うおっ!
通行人のオッサンが缶コーヒーくれた!
大阪ノリいいなあ。
うん、大阪。
戎橋って言うの?
よくドラマとかの舞台になってるじゃん。
そこで配信してまーす。
ギャラリーも結構居るよ。
江本、数えろ。」
「26人、あ2人増えたんで28人。」
「早えーよww
精密機械アピールかww
えー、どうだろ?
3Pの続きをせがまれてるからなあ。
配信は30分で一旦終わりかな?
《おっさん》さん、俺も混ぜてー。
OKOK、胸くらいなら揉ませてやんよ。
《イチゴフラッペ》さん、男を画面に入れないで下さい!
ははは、オマエ才能あるよww
えっとねえ。
何しに大阪来たのかって…
牛丼屋にテロしに来ました。
なんか紅ショウガ食って逮捕された奴がイキってるみたいなんで。
格の違いを見せつけてやろうと思ってね。
《たぬき小僧》さん、自分を大切にして欲しい。
やだよ馬鹿w オマエが勝手にウ↑チ↓を大切にしとけww
ねえ、ダーリン様。
何か牛丼テロのアイデアある?」
『え? あの話まだ続いてたの?』
「ダーリン様が3秒以内にアイデア出さない場合。
ここに居る奴を片っ端からボコって回ります。
武器も使いまーす。
そこのギャラリーww
嬉しそうな顔すんなwwww
おいオマエ!!
真正面のチー牛眼鏡www
オマエ配信に映れwww
こっち来い。
ダーリン様、チェンジw
一個外側にズレてww」
『ごめんなさいね、私の連れが迷惑掛けちゃって。』
「いえいえ、お2人のファンです。
後で写メいいっすか?」
『ああ、どうぞどうぞ。』
「チー牛同士でじゃれ合ってんじゃねーーーww
オラ、チー牛2号ww
こっち来い。
はい、オマエチビだからウ↑チ↓の膝の上でコロポクってろ。
おい2号、カメラの向こうのリスナーに自己紹介しろ。
本名な!」
「あ、三橋です。」
「フルネームで名乗れww
後、プロフィールww
最後に面白いこと言えww」
「えっと三橋真也です。
コロナで就活失敗して就活浪人になって
フリーランスになったんですけどぉ
案件全然取れなくて生活出来なくて、日本橋でバイトしてます。」
「何のバイトー?」
「オタ系のショップっていうか。」
「見たまんまじゃねーかww
よし命令だ、そのバイトやめてイケてるアパレルショップで働け。」
「ええ!?
いやいや、僕なんか無理ですよぉ」
「バカヤロー、ウ↑チ↓の身になってみ?
キモオタが側に居るだけで世界ランキング下がるんだぞ?
おう、何か面白いこと言え。
リスナーにウケたら、アカBANレベルのエロいことしてやる。」
「え、あ、あうあう。
…実は。
youtube時代からルナルナさんのファンでした!!!
今日、帰ったらこの感触でオナニーしようと思ってるんで!
逆に早く帰りたいです!!!!」
「うーんw
告白系って話が膨らまないんだよなーw
まあ陰キャ君にしては頑張った方かなw
はい、リスナー判定、コメントお願いしますよー。
《ホライゾン》さん、若いなー。
《厭味量産装置》さん、おもんない。
《ギリギリタップ》さん、このタイミングで花火やめろしww
《たぬきそば》さん、三橋君の身長次第。
おい、三橋。
オマエ、身長何センチだw
正直に言えよーw
嘘だと思ったら公開身体測定の刑に処すからなww」
「あっ、16じゅ…」
「お、止まったww
今、コイツの中でプライドと性欲がせめぎ合ってますねーww
おい三橋ぃww
男を見せろw」
「161センチです!」
「ふふふw
今のコイツの反応ねぇ。
ちょっと本当っぽいw
いや、ウ↑チ↓180越えてるでしょ?
だから男さんサイドが身長の話を滅茶苦茶嫌がるのね?
特にねぇ、人権身長届いてない子はムキになるw
はい、リスナー判定!
どうぞ!
《シクラメン》さん、勝った!
いやいや、勝負じゃねーからw
《細川幽霊》さん、171センチワイ高みの見物、鷹見だけにw
全然上手いこと言えてねーからなwww
一斉に優越コメントやめろww
どうせオマエラも似たようなフォルムだろうがww
おい三橋、身長カミングアウトした途端にリスナーがオマエに優しくなったぞ。
男のこういう部分は女々しいよなぁ。
よーしご褒美だ。
三橋はウ↑チ↓のTシャツ内に顔を突っ込むことを許可するww
オラ、抵抗すんなw
おとなしく入ってろww
乳首噛んだら殺すからなww
あははははははwwww
ド根性チー牛www
《たぬき南極2号》さん、うらやましい。
何? うらやましいのかー?
大丈夫、ウ↑チ↓の為に顔出しデジタルタトゥーしてくれたら、オマエにもワンチャンあるw
《よっぴー星人》さん、発狂すんなしww
今度優しくボコってやるから落ち着けw 花火連打すんなw
《敗北者》さん、盛岡配信ありますか?
えー、ロケ地はダーリン様次第だな。
いや、マジマジ。
ウ↑チ↓、ダーリン様の仕事に同行してるだけなんで。
地方案件はダーリン様に頼んだ方がいいよー。
《シロマティ》さん、ガルパンって何の仕事してるの?
ねえ、聞かれてるよー。
ダーリン様って何の仕事してる訳?」
『いや、仕事って言うか…
人類を救済したいだけなんだけど。』
「はい!
以上がダーリン様のお仕事ですw
お、コメ欄に草が大量に生えてるぞー。
《チーズ豚丼》さん、厨二かw
《シクラメン》さん、ラスボスとかが言うやつーw
《永久氷河期》さん、ガンダムで見たw
ねえ、ダーリン様ww
ラスボス扱いされてるッスよーww
そろそろ配信も終わる頃だし、最後に面白い事言ってw」
『いや、俺の発言が笑われるという事は
それだけ社会が平和である証なんだ。
これは喜ぶべきことなんだよ。
正直、多様な言論が許容されている日本に生まれた事に感謝している。
積極的に還元していきたいな。』
「だーれが面白過ぎることを言えって言ったよ。
コイツ、一瞬で場の空気を持って行くんだよな。
コメ欄が異様な雰囲気になってんぞ。
おい、江本中和しろ!
三橋、乳首吸い過ぎ!」
「俺の実家、町中華なんですよ。」
「お、おう?」
「結構繁盛している店なんですけど
所詮、飲食なんて天井見えてるじゃないですか?」
「ああ、そだね。」
「なので、小学生の時。
俺がアイデア調味料を開発したんです。
特許も取りました。」
「おお!!!」
「時間ある時、ウチの店で配信して下さい。
その調味料のプレゼント配信の形だと助かります。」
「…オマエ、中和し過ぎw
わかったわかった、親御さんに許可取っとけ。
忙しい時間に殴り込んで営業妨害配信してやんよ。」
「あざっす。」
「はい♪
という訳で、そろそろ時間になりました!
《ハイパークレイジー君》さん
《たぬき44号》さん
《日めくり包茎》さん
《エッグタルト》さん
《折木砲太郎》さん
《マー君のパパ@FX爆死》さん
プレゼント&コメントありがとね!
余談ですが、ウ↑チ↓がジャケットにもなってる《麗脚崇拝総集編》。
旧作ながらもアダルト動画総合ランキング1位を獲りました!!
かなり異例の事態だそうです。
ウ↑チ↓には1円も入って来ませんが!
ありがとねーwww
それじゃあ配信は!
相模の獅子ことルナルナ@貫通済と!
はい、江本。」
「なんJのアイドル・令和のエモやん。」
「はい、ダーリン。」
『あ、遠市です。』
「三橋!
いつまで幼児退行しとるww
オマエが一番に挨拶せんかww」
「お、おぎゃ?
あ、あ?
幸せです!」
「以上の4人でお送りしましたーーー!!
同接4000越え感謝です!!
みんな! いつもありがとです!!!!
それじゃあ、まったねえ♪」
【この配信は終了しました】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、jetの友人も来てくれたことだし
ここからが本番だ。
23時59分。
生暖かかった道頓堀川の風が、僅かに冷えて来た。
【名前】
遠市 †まぢ闇† 厘
【職業】
東横キッズ
詐欺師
自称コンサルタント
祈り手
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 8
《HP》 鼻骨骨折疑惑
《MP》 強い
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 悪魔
《精神》 女しか殴れない屑
《幸運》 的盧
《経験》 1543
本日取得 400
本日利息 114
次のレベルまでの必要経験値1007
※レベル9到達まで合計2550ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利8%
下2桁切り上げ
【所持金】
2億6004万8500円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
「100倍デーの開催!」
「一般回線で異世界の話をするな。」
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 「日当3万円。」
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げ。」
荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 「子ども食堂を起ち上げる。」
田名部淳 「全財産を預けさせて下さい!」
三橋真也 「実は配信者になりたいので相談に乗って下さい。」
〇木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
〇 「仲間を売るから私は許して♥」
〇鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」