【降臨29日目】 所持金1億7010万0000円 「はい、喜んで!」
終わりの見えないウクライナ戦争。
ここに来てロシアの攻勢が更に強まって来ている。。
各国に派遣していた精鋭部隊の帰還・再編成が完了した事がその原因らしい。
ウクライナ軍は弾薬・兵力の不足から各戦線で完全に押し込まれている。
侵攻当初に散見された楽観論は完全に息を潜めた。
国連総会の緊急特別会合でウクライナ侵攻に対する非難決議が採択されたが、ロシアを含む7か国が反対。
中国やインドなどの32カ国が棄権し、露陣営が未だ盤石であることを証す結果となった。
同時刻。
国連人権委員会は《ロシアがウクライナで行っている広範な戦争犯罪》を強く非難。
同国の人権理事会への復帰反対を表明した。
ただ米英が強く望んだプーチン大統領個人への名指し批判に関しては、慎重な意見が多く見送られた。
同会はロシアの他に日本国政府にも非難勧告を出した。
曰く。
「Parental Child Abduction(親による子の奪取・実子誘拐)に適切に対応するために必要な措置を怠っている」とのこと。
そして「深刻なViolence Against Women and Girls:(女性に対する暴力)が横行しているにも関わらず、解決に向かう意思が欠如している。」とのこと。
涙ながらに我が国を非難する調査委員の背後には、巨大スクリーンが設置されており、東横で鷹見を殴っている例の映像が延々と流されていた。
どうやら俺への名指し批判に慎重論を唱える国は存在しなかったらしい。
やれやれ、俺もまだまだだな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
早朝。
便所からの帰りにリビングの冷蔵庫を漁ろうとすると先客と出くわした。
『ふわぁああ。
エモやんさん、おはようございます。』
「ふわぁああ。
どもども、トイチしゃん。
おふぁょうごじゃぃます。」
互いに寝起きなので、気合が入らない。
『何か食料あります?』
「えっと、総菜パンで良ければ。」
『おお、片親パン。
私、片親の上にこういうのばっかり食べてたから
この言葉が流行ってるって知った時に驚きました。』
「今度、ちゃんとした朝食を用意させて下さい。」
『お言葉に甘えます。』
2人でソファーに寝転びながら、ハムマヨパンをモシャモシャ貪る。
誰が買って来たのか500㎖ペットボトルのお茶が2ケースあったので、勝手にゴクゴク。
「響さんは一旦大阪に帰られました。」
『え、そうなんですか?』
「流石に親御さんを放置するのもおかしい話なので。」
『確かに。
…あの、結局山岸さんとは?
…その、結ばれたのでしょうか?』
「…流石に先輩の寝室を覗ける訳がないですよ。
なので、憶測に過ぎないのですが…
…お2人はキスをした、と推理します!」
『おおお!!!
き、き、き、キスをしたんですか!?』
「いや!
あくまで推測!
俺の勝手な推測です!
あのトイチさん。
本来、直属の先輩の恋愛事情をアレコレ噂するのは
野球秩序的に禁忌中の禁忌ですからね?
あくまで今から話す事は俺の独り言ですかね?」
『は、はい。
それは勿論、勿論ですよ。
…き、キス。
したんですかね?』
「いえ、あくまで憶測ですけどね?
…先日の13時07分から22時42分まで。
美里さんの運転でお2人はドライブをされておられました。」
『おお!
俗に言う、ドライブデートという奴ですね!
私も一度でいいから体験してみたいです。』
「帰って来られてから、お2人にほうじ茶を入れさせて頂いたのですが…
異変、それはポジショニング!
明らかに互いのパーソナルスペースを侵食し合っておりました。
…美里さんは実家が食堂ということもありフランクで比較的距離の近い方です。
逆に響さんはオープンに見えて、パーソナルスペースが案外広い。
特に女性に対しては線引きがきっちりしているのか、普段は電車で隣に座られることも忌避される方なんです。
拳3個分よりも接近されると、即座に立ち去る事で強い拒絶の意思を示しはります。」
『あの人、案外厳しいですよね。』
「見た目はソフトなので、判りにくいですが厳しい方です。
特にリスク管理に関しては非常に神経質な一面をお持ちですね。
ピッチャーの鑑やと思います。
話を戻しますね?
お2人がくつろいでおられる時、腿同士が密着しておりました。」
『おお!
腿が!』
「いや、これまでもそういう距離に入ったことがあるのかも知れませんよ?
ただ、あのお2人はそれを他人に見せるような性格ではないんですよ。
にも関わらず、密着の距離で座ってはりました。
更には美里さんの髪型。
髪を一度上げてから、櫛で整えた形跡がありました。
つまり、キス… 若しくはそれに準ずるアクションを取った後に
それによって乱れた頭髪を整えたのではないでしょうか?
これが、お2人がキスまでは行ったであろうと推測する根拠です。」
『あ、あの…
不躾で恐縮なのですが、それ以上の関係にまで進展した可能性は?』
「いやあ。
お2人の性格的にそれはちょっと考えにくいかな、と。
俺も上手く言語化出来へんのですけど
あの人らは、きっちりと手順を踏むタイプなんですよ。
周囲にもかなり配慮しはりますし。
仮にセックスするとしても、まずは互いの家族にそういうシグナルを送ってから
ちゃんと合意を取ってから事に至ると思うんですよ。
少なくとも、響さんはそういう筋や順序に厳格な方ですので。」
後藤研究家の江本が分析するのなら、そうなのだろう。
口に出すのも気恥ずかしいが、《友達以上恋人未満》という関係だろうか?
俺も後藤が山岸の娘と話している場面は一昨日チラッと見ただけだが、距離は明らかに親密なそれだった。
(いや、俺はそういう経験が全然無いので的外れな分析かも知れないが…)
下世話な話なのだが、肉体関係に至っても不思議ではない距離感だったと思う。
…問題は、後藤は俺と同じ二十歳。
まだ本命以外で遊びたいと思っていたのではないだろうか?
という危惧。
あの男はイケメンアスリートだ。
それも高校野球のヒーロー。
地元ではかなりの人気者らしいし、本来女に困らない立場。
そこが気になる。
俺と江本が急いで本命を用意した事に、内心不快感を持っているのではないだろうか?
心配だ。
『エモやんさん。
後藤さん、怒ってはおられませんよね?』
「…俺が強引過ぎましたか?」
『あ、いや。
言い出したのは私ですので。
後藤さんって、明らかにモテるタイプじゃないですか?
だから、ちゃんとした彼女を作る前に
ちょっとだけ遊びたかったんじゃないかなって。
いや、恥を晒すようなのですが
私がそうなんですよ。
全く女性経験ないまま結婚してしまったので…
《こんな事なら商売女相手でも遊んでおけば良かった》
って少し後悔したんです。』
「わかります!
男としてめっちゃわかります!!!
めっちゃアグリーです!」
『後藤さんはどっちなのかなあ
って思って。』
「あの人、本音が読めない人ですからね。
いや、ピッチャーとしては正解なんですよ。
すぐに辛そうな顔とかする奴はマウンド向いてないんで。
響さんは負の感情が顔に出ないんですよ。
指導者ですら本音が読めないらしいです。
俺が密かに嫌われてる可能性すらありますからね。」
『いやいや!
流石にエモやんさんが嫌われてることはないでしょう。』
「いやあ、そうならええんですけど。
…あの人の感情隠蔽能力はエグイですよ?
少なくとも俺如きでは読めないです。」
うーーーん。
小学生時代から私淑していた江本に読めないなら、俺に分かる訳もないな。
誠実に接する以外にないよな。
俺はメンバーに女をあてがうつもりでいた。
…だが、これは本当に難しい。
(そもそも烏滸がましい。)
一口に女をあてがうと言っても色々あるからだ。
例を挙げてみよう。
《生涯の伴侶が欲しい》
《色々な種類の娼婦を買いたい》
この2つは両方女を求めるリクエストだが、当然相反している。
結婚願望の強い者を娼館に連れて行ったり、派手に女遊びをしたい者に見合いを強要すれば、恐らくは反発を買うだろう。
人生経験・女性経験の豊富な人間なら、願望を嗅ぎ分けてケアするのかも知れないが…
俺、実は17歳だからな。
わかる訳ねーだろ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リビングでグダグダしていると、いつの間にか支度を整えたヒルダがサラダリゾットを作ってくれた。
「ああ、ヒルダさん。
気を遣って頂いてスンマセン。
えっと、珍しい料理ですね。」
「ウクライナ料理です。」
平然と嘘を吐く女だ。
このサラダリゾットは純然たる王国料理。
軍隊などで出される定番朝食である。
王都に諸侯が参陣した時には、ヒルダも愛国婦人会の一員として炊き出しに参加して、これを作っていたらしい。
「いやあ、ウクライナ料理は美味しいですねえ。
早く戦争が終わってくれればいいですよねえ。」
俺やヒルダがそこまでステルスに熱心でない所為か、異世界警察のエモやんは気付いていないフリをするのに相当苦慮している。
だよなあ。
地球にこういう味の組み立ては存在しないよなあ。
あれば、グルメ大国の日本で紹介されない訳がないもの。
町中華屋の息子であるエモやんが、そこに気付かない筈もない。
後、今更なんだがヒルダってスラブ系の顔をしていない。
俺、ウクライナ人の画像を結構見たけど…
ヒルダって微妙にスラブ民族とは顔の作りが違うんだよな。
かと言ってゲルマン系やラテン系にも似てない。
コーカソイドっぽさはあるんだけどな。
やっぱり無理があるよ、異世界人が地球人を名乗るのは…
「トイチさん。
ウクライナ・モーニング最高っすね。
いやあ、得をしたなあ。」
ニコニコしながら、エモやんがサラダリゾットをかき込む。
直訳すれば《バレバレだから、外では気を付けろ》という意味である。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
寺之庄、起床。
今日も爽やかお兄さんである。
そして後から付いて来た来た弓長の固い表情を見て、何となくコイツラがセックスしていない事を察する。
寺之庄の内面は全く読めないのだが、弓長は感情が顔に出易いタイプ。
もしも2人がセックスしていたとすれば、弓長が上機嫌になっている筈だ。
だが、あの暗い表情。
《寺之庄に拒絶された》
と見るのが妥当な線。
冷静に考えれば当たり前か。
寺之庄は地元に婚約者がいる。
それとなく聞いたところ、互いの実家が福井の素封家同士。
選挙でも共闘関係にあるとのこと。
…なら、弓長に手を出す方がおかしいよな。
俺、考えたつもりであの部屋を割り振ったが…
失敗だったかもな。
(かと言って、現状以外の部屋割は不自然である。)
寺之庄は俺の生命線だ。
単に車を出してくれてるとか、そういうレベルではなく…
俺の苦手な人間関係の円滑化を積極的に担ってくれているし、遠回しに指導もしてくれている。
何より、これは本当によくない事なのだが、そもそも俺への連絡が寺之庄経由になってるしな。
…クッソ
俺如きが《女をあてがう》とか、あまりに身の程知らずだったか…
断念するか?
いや、駄目だ。
これを怠ったら絶対に人間関係に齟齬を来たす。
飢えは記憶だ。
腹が減った、喉が渇いた、女とヤレなかった。
こういう飢餓の印象と俺が紐づけられると、まずアウト。
苦しみが俺への不満に転換される。
…そもそもの話だが。
俺にも女が居なければ、全ては丸く収まったのだ。
「トイチさーん、女遊びセッティングしますよー。
派手に遊びましょうよー。」
きっと誰かがそう言って、皆で女を買っただろう。
すると、性欲も解消され、更には連帯感が深まった筈だ。
今の状況は最悪。
俺にだけ女が集中してしまっている。
まずヒルダ、露骨に正妻面。
そして鷹見、俺への好意を隠さない。
ついでに恩師、ぶっちゃけ高校時代から俺はあの人に嫌われてるのだが、人目のあるところでは性的な発言を繰り返して来る。
何より美人だ。
最後に13歳。
オンライン通話上での話ではあるが、かなりストレートに求愛された。
(コレットもそうだったが、あの齢の少女は恋愛観が動物的で怖い。)
…非常にマズい。
人間関係相関図が歪になっている。
これでは長期戦向けのチームビルディングが出来ない。
俺の理想はモンゴル帝国だ。
家族や奴隷を引き連れて行軍する。
これなら配下の性的なフラストレーションを心配せずに済む。
それを小規模化した編成をしたいのだが…
俺の器量では無理だな…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
飯田起床。
関羽とは別々に入室して来る。
…やっぱりこの人賢いな。
今、やっと気付いたことだが、飯田清磨は俺達の前では一切関羽に目線を向けない。
まるで他人同士のように距離を置いている。
…これなのだ、本来俺が取るべき姿勢は。
学ばなければ。
「リン君♪
浜名湖名物は鰻♪
じゃあ、名古屋名物はなんだと思う?」
『え?
何だろ?
エビフライでしょうか?』
「あ、エビフライいいねえ。
他には?」
『えっと、えっと。
あんかけスパって聞いたことあります。
後、きしめん?
平べったい饂飩があるんですよね?
清磨さんは何か気になるメニューあるんですか?』
「味噌―。
この辺じゃ何にでも味噌を掛ける文化みたいだからさ。」
『ああ、有名ですよね。
味噌カツとか味噌煮込みとか。』
「ここでBBQイベントする機会があればさあ。
味噌BBQ大会でも面白いかも知れないね。」
飯田は冗談めかして言っているが、
これは戦略の話だ。
俺の狩猟キャラバン。
取るべき方針は大まかに分けて2つ。
オープンにするかクローズにするか。
鷹見と恩師が勝手にペラペラ配信している以上、極秘裏の移動は断念せざるを得ない。
(BBCや国連の所為で俺自身が有名人になってしまっているのもある。)
なら、現在のキャラバンは実質的にオープン状態にある。
どのみち状況を前向きに利用するしかないので、浜名湖でやったようにイベントをもう少し増やしたい。
リスクもあるが、勝つ為には更なる偶発性が欲しい。
もっと視野を広げたいのだ。
飯田の発言は、俺のそんな意図を汲んでのことだ。
彼なりにヒントを出してくれている。
『清磨さん。
味噌BBQなんて、あるんですか?』
「あまり聞いたことがない。
多分、美味しくないから誰もやらないんじゃないかな?」
『ですよね。
名古屋名物は色々聞くんですけど、味噌BBQは初耳なんで。』
「リン君が今後、人や注目を集める時にね?
楽しそうな雰囲気は必要だと思うよ。
浜名湖は成功だった。
皆が楽しそうだったし、今もSNSアカウント伸びてるしね。
ヒロノリ君、見て見て。
君のアップした画像、大人気♪」
「いやあ、ここまで伸びるとは思いませんでした。
#バーベキューというハッシュタグは伸びますね。
地名+#BBQでイベント探している人が多い印象です。」
「ああ、わかる。
結構みんな地元イベント探してるよね。」
要は俺は、カネ配りの予行演習を兼ねて巨大規模の食糧・住居配給をやってみたいのだ。
それも、ポールから聞いたBBQイベントのテイストを加味したい。
器でない事は重々承知だが、俺にだってあの男の様に陽気明朗に立ち回りたいという願望くらいはある。
これが俺の理想。
バラマキで不特定多数を集める。
その過程で巡りあった上澄みと親交を持ち、コミュニティの強化を図る。
大雑把だが、こういう展開を望んでいる。
これが俺の戦略。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
シャワーを浴び終わった安宅がリビングに入って来る。
不動産の引き渡し手続きの為、彼は今日東京に帰る。
安宅はタワマンのみならず、所有の民泊や区分物件を全て売りに出しているので、本来旅先でフラフラする事は許されていないのだ。
「トイチ先生。
おカネ、置いて行っていいですか?
流石にあの額を新幹線で持ち運ぶのは怖いので。」
『ええ、確かに。
持ち上げるだけでも一苦労ですよね。』
「鳩野君と一緒に数日東京に滞在します。
ネット上では結構頻繁に連絡取ってたんですけど。
直接顔を見るのは10年ぶりでしたから。」
『ええ、是非旧交を温めて下さい。』
タクシーを待つ安宅と軽く打ち合わせをして、玄関で見送った。
数億を置いて移動できる胆力にただただ敬意を払う。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
安宅を見送った後、残りのメンバー全員でキャンピングカーに入り、カネの保管方針について真剣に討議する。
俺・寺之庄・飯田・江本。
4人でカネを数え直した後、今後の増加量をシミュレート。
「保管用に車、買おうか?」
飯田がポツリと呟く。
「…車を金庫に見立てるという事ですか?」
エモやんが隣に停車しているヒルダのプリウスを眺めながら呟く。
「買うとしたら盗難されにくい車種がいいよね。
…軽自動車かな。
ダイハツのタントか、スズキのスペーシアあたりが無難かもね。」
『え?
軽自動車って盗まれにくいんですか?』
「盗難車ってその多くが海外に輸出されるんだけど…
軽自動車は日本独自の規格だから、盗まれにくい。
ただ、最近は外国人に軽トラの良さがバレちゃったみたいで
軽トラの盗難増えてるよ。
金庫車を用意するなら、その視点は重要かな。
それと、金庫用として運用する車を買う場合。
どんな車かより、どこに停めるかの方が重要だね。
ここみたいに、大きな門扉のある物件は素晴らしいよね。」
外国人労働者の受け入れが始まってから、日本全国で盗難事件が増えている。
勿論、それらの犯罪全てが外国人によるものだとは考えていないが、出稼ぎ労働者受け入れ自体が貧困の輸入なので、極力避けるべきである。
これはポール・ポールソンの受け売り。
何せ自由都市と魔族労働者の摩擦を見て来た男の発言だからな。
やはり説得力がある。
俺と親しくなった幾名かのゴブリンも「歩いているだけで犯罪者扱いされて辛い」とボヤいてたしたな。
労使双方に著しいストレスが生じる。
だから、労働力の越境には反対。
それで得をするのは資本家だけなのだから。
しばらく盗難の話題に。
どうやら最近のトレンドは黒毛和牛らしく、日本全国で肉牛の大量盗難事件が発生しているらしい。
廃業に追い込まれた畜産農家も少なくないらしいので、胸が痛む。
いずれにせよ不景気も相まって盗難事件が多い世相になっているので注意しよう、と戒め合う。
金額が金額だからな。
本来は神経質になるくらいが丁度いいのだろう。
そんな話をしながら、皆で今後の増加容積を計算する。
今はまだ数億だから、手運びで何とでもなるのだ。
それが百億・千億となると、もう手に負えなくなるからな。
早めに備えなければ。
「次、俺からいいですか?」
エモやんが挙手。
「この金地金。
預けっ放しにさせて下さい。
俺が持っても仕方ないので。」
…コイツも結構攻めるよな。
後藤曰く、これでもセーブはしているらしい。
『ええ、いいですよ。
じゃあ、ベッド下のここ。
ヒロノリさんさえ良ければ…』
「おっけーですー♪」
『あ、はい
ありがとうございます。
それでは、ここの収納を純金スペースにしましょう。
あ、勿論増えた分は支払います。』
「…トイチさん、金以外も増やせるんですよね?」
『多分。』
「レアメタルなどの資源も増やせるんでしょうか?」
『うーーん。
実験した事がないんですよね。
エリクサーっぽい飲料とエモやんが持って来てくれた金地金。
キャッシュ以外で増やしたのは、それだけなんです。』
「もうすぐ中国がガリウムとゲルマニウムに輸出規制を掛けるので。
…我が国には数か月分程度の備蓄しかありませんし。
半導体産業にとってはかなりの打撃なんです。」
『…そのぉ、ガリウムでしたっけ?
一度預けてさえ頂ければ、実験くらいは協力しますよ。』
「おお、意外にイケるかもですね。」
それはそれで問題あるんだよな。
《一旦俺に所有権を移す》というプロセスが発生してしまうから。
結果として、全てを俺が独占する形になってしまう。
増やせる者に資金は集まるというのが資本の性質なのだから。
それって、こっちでの世界でも俺が王になるのと同じ意味だ。
…俺の望みは資本なる現代の王を打倒することなのだが
どうせ皮肉なオチが待ってるんだろうな。
「あ!
後、油田! 油田!
トイチさん! 油田油田油田!」
…エモやん、飛ばし過ぎ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、レベリングである。
まず浜松の鈴木・下呂の松永に箱罠を10基ずつ寄贈する。
その発注は大分の浦上工務店に行う。
11時に4人でオンライン通話。
コロナで流行ったZOOM会議。
浦上が《囲い罠》なる大量捕獲罠具を話題に出したので、それも2基ずつ浜松・下呂に発送して貰う。
俺は1日100匹ずつくらい殺したいのだが、そこは中々伝わらない。
レベル20(日利2割)まで上げられれば御の字なのだが。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億3725万2247円
↓
1億3227万2247円
↓
1億3150万2247円
※松永工務店 IOT捕獲器両開き24万9000円×20基=498万円を協力者に寄贈
※松永工務店反り返り式囲いネットタイプ捕獲罠38万5000円×2基=77万円協力者に寄贈
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
こちら都合での買い物であったのだが、思いの外感謝される。
今知った事だが、罠具の購入に補助金が出る自治体は多いのだが満額補助とは中々ないらしい。
当然、アレコレと書類を書かされる。
(役所仕事だから当然だ)
なので。
(異世界でもそうだったのだが)俺の様に無造作にばら撒く者には自然人が集まり、向こうから積極的に色々と便宜を図ってくれる。
本心を言えばレベルアップしたいだけなのだが、《地方自治がドータラコータラ》とか《一次産業をドータラコータラ》とか、無難な答弁は心掛けておいた。
俺も嘘に慣れて来た。
ヒルダとかエモやんが頼まなくても台本を執筆してくれるからな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
通話の終わり際。
浜松の鈴木が遠慮がちに猪と鹿を一頭ずつ確保している事を告げて来る。
かなり血眼になって近隣の猟師と交渉しているらしいが、中々相手にされていないらしい。
若い頃、チャラい遊びを繰り返していた所為で、付近の老人が鈴木を敬遠している。
と言うより、鈴木は鷹見を人気者だと思い込みプッシュしているのだが、それが裏目に出ているのだ。
俺に言わせればアイツは単なる犯罪者なのだが、中々理解してくれない。
「確かに!
ルナルナさんは世間一般の価値観で言えば、犯罪者と取られかねません!
ですが!
彼女こそが次のミレニアムの標準となることでしょう!」
…仮にそうだとしても、あと千年近く待つ必要があるぞ?
エモやんの運転で三ケ日ICまで向かう。
正直、僅かな獲物の為に移動したくないのだが…
何もしないよりマシだろう。
思ったより獲物を捕獲出来ずに鈴木のメンタルが不安定になって来ているしな。
あのオッサン、見た目の割に妙に小心者で困る。
『エモやんさん。
報酬をお支払いしますので、仕事を頼ませて貰えませんか?』
「待っておりました、その御言葉。
ですが!
どうせなら、仕事ではなくクエストを下さい!」
コイツ、後藤というブレーキが無ければとことん飛ばすよな。
『では、経験値クエストってことで。』
「しゃあ!
全ての少年が憧れる理想の展開!!」
『えっと、エモやんさんって
今のレベルは2ですか?
殺したのはキョン10匹だけ?』
「ええ、勝手な事をして申し訳ありません。
キョン10匹討伐して、握力が僅かに上がりました。
もっと大きな獲物を殺せれば良かったのですが、あはは。」
ああ、それで鷹見を殺したがっていたのか。
鷹見の経験値ってどれくらいあるんだろう?
検挙率の高い日本で殺すのだがら、10万ポイントはなくちゃ割に合わないよな。
『では、今は獲得経験値は10ですね?
キョン10匹を殺して、それ以外は殺してない?』
「…ええ、誓って。」
『握力と跳躍力をかなり厳密に測定していると聞きました。
レベルアップ後も測定は続けておられますか?』
「はい。
握力・垂直飛び・立位体前屈・背筋力は小まめに測定してます。
ヴィラに帰れば再測定可能です。」
『…OK.
では、本日のクエスト。
鹿を一頭だけ殺して下さい。
そして、帰還してから測定結果を教えて頂けませんか?
特別報酬として50万円を支払います。』
「そんな事でええんですか?」
『私にとっては大事なことなんです。』
我が国では、猪と並んで鹿の獣害被害も甚大である。
鹿ばかりが掛かる地域もある。
なので、鹿の経験値を知っておきたい。
異世界ではボア系40ポイント、ディア系20ポイントが相場だったので、恐らくは地球でも似たようなものだと思う。
本当なら猪のついでに鹿も殺害したいのだ。
そりゃあ、鹿の経験値も欲しい。
ただ、シカ科であるキョンの経験値が低かったので、他の一般的な鹿の経験値も低い可能性がある。
今、正確な経験値がわからない状態で、鹿を無造作に殺してしまえば、レベリング状態を正確に把握出来ない。
それでは精神衛生上好ましくない。
レベル2には10ポイント必要、そしてレベル3には20必要なので、エモやんを実験台にしたい。
1匹だけ殺させてレベルが上がれば20以上、上がらなければ20以下と見当が付く。
この男の鷹見殺害を制止して本当に良かった。
三ヶ日ICを降りると見慣れた鈴木のジムニー。
下車はせずに通話しながら獲物の隠し場所に向かう。
鈴木は一般道に降りてから15分ほど走行させた事を詫びるが、幾ら俺が馬鹿でも流石に高速の降り口で殺生が出来るとまでは思っていない。
苦手ながらも笑顔を必死で作りながら
『いやあ、父を亡くした所為か、鈴木さんにはついつい甘えてしまいますよ。』
とリップサービスもしておく。
甘える気はないのだが、この男は何とか繋ぎ止めておきたいのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億3150万2247円
↓
1億3120万2247円
↓
1億3070万2247円
※鈴木翔に30万円を支払い。
(日当10万円+イノシシ殺害歩合10万円+シカ殺害歩合10万円)
※但し、シカ殺害歩合に関しては、今後無くなる可能性を伝達。
※長距離走行手当の支払いに関しては鈴木翔が謝絶。
※江本昴流にクエスト報酬50万円を先払い。
【推定経験値】
イノシシ1匹
40×1=40
《経験》 859→899
本日取得 40
本日利息 未取得
※次のレベルまでの必要経験値371
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
恐らくは異世界向きの人材なのだろう。
エモやんはウキウキで鹿を殺していた。
或いは、相手が鷹見であってもニコニコと電気槍を刺していた可能性すら感じる。
コイツ結構サイコパスだよな。
と思いながら俺もイノシシに止め刺しを行う。
「いやあ、それにしてもトイチさんは殺生に躊躇いがないですねえ。
そこはかとないサイコパス味を感じますわ、怖ぁ~。」
どうやら己を顧みるには、相当の修養が必要とされるらしい。
だが残念ながら俺達は未だ若い。
『申し訳ありません。
別件がありますので。』
一席設けたがる鈴木に陳謝して、すぐに出発する。
礼儀挨拶無用、接待贈答不要、俺はただ生命を奪いたい。
まだ昼過ぎだったので、エモやんが米原行きを提唱。
『あれ?
宮田さんにアポは取ってましたか?』
「今、取りましょう!」
『攻めますねぇw』
「トイチさんが攻めずに誰が攻めるんですか!」
思わず吹き出してしまう。
『ふふっ、ありがとうございます。
早速、宮田さんに電話してみますね。』
米原の宮田大輝。
地元では有名人らしい。
俺達に対しては便利屋を名乗っていたが…
どちらかと言えば何でも屋である。
(さして便利でもなければ何でも出来る訳もないらしい。)
現在はIT導入補助金を利用したスキームで糊口を凌いでいるとのこと。
『もしもし宮田社長。
遠市で御座います。』
「どもどもです!
貴方の宮田で御座います♪」
ノリは軽いが受話器の向こうからは探るような吐息が僅かに漏れている。
勿論、察しているのはお互い様であろう。
『今、高速に乗ってます。
10分後には愛知県に入ります。
もし手が空いておられましたら、そちらに伺いたいのですが。』
「…えっと、大丈夫です!
すぐに米原ICに向かう準備をします!」
受話器の向こうから、ゴソゴソと書類を手早く片づける音が聞こえる。
『先日仰っておられた括り罠のイノシシってまだ生きてます?』
「さっきトレイルで見た時はぐったりしてました。
もし死んでたらゴメンナサイ!」
『ダメ元で向かいます!』
「了解!」
何が可笑しいのか、実に嬉しそうな返答が返って来た。
エモやんが飛ばす。
14時30分。
米原ICを降りたすぐ眼前に中山道が通っているのだが、右折して1、2分程度の場所に宮田の倉庫兼別宅があった。
遠目からは田舎の農家にしか見えないが、庭が無造作に広く隣接した土地には太陽光パネルが敷き詰められていた。
宮田は太陽光発電の営業をかなり強引に行ったらしく、纏まったカネこそ手にしたものの、地元でかなりの敵を作ってしまったとのこと。
もっとも、その悪戯っぽい表情を見る限り、隣人への斟酌や人間関係改善の意思は微塵も感じられなかった。
「我が国最強の英雄であるヤマトタケルノミコトを倒したのは誰か?
そう!
この米原市に聳える伊吹山に君臨した白きイノシシなのです!!」
第一声がそれである。
成程、世の中には色々な人間がいる。
俺は宮田のサンバーに乗り、10分程揺られて多和田なる集落へ連れられる。
そして農道に入りガタガタと進むと、それはあった。
『あー、イノシシ寝てます?』
「誠に申し訳御座いません。
…死んでます。」
『ですよねー。』
括り罠に前足を捉われたイノシシはぐてっと横に転がっていた。
死因は餓死か衰弱死。
そりゃあね、幾らイノシシが頑丈な生き物と言っても飲まず食わずで炎天下に晒され続けたらね。
まあ、死ぬでしょ普通。
「ヤマトタケルを~
伊吹山が~」
『いやいや、仕方ないです。
宮田社長から連絡を頂いて、こちらもすぐに来れなかったので。
あ、エモやんさん。
さっきのお土産、まだ積んでます?』
「社長、遠州名物
三ケ日みかんジェリービーンズで御座います。
どうか御笑納下さいませ。」
「あー、どもどもども!
全然お役に立てていないのに恐縮ですー。」
宮田は恐縮するが逆である。
東海道を往来する俺にとっては、その中継地の知己と顔繋ぎ出来ただけでもありがたい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億3070万2247円
↓
1億3050万2247円
※宮田大輝に20万円を支払い。
(日当10万円+イノシシ捕獲褒賞10万円)
【推定経験値】
イノシシ0匹
40×0=0
※到着時には既に死亡
《経験》 899
本日取得 40
本日利息 未取得
※次のレベルまでの必要経験値371
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
遠慮する宮田にカネを無理矢理握らせたのは、こちらの本気度を伝えたかったからである。
礼儀挨拶無用、接待贈答不要、生命以外の何物をも求めてはいない。
「あの、中抜きしたら怒ります?
イノシシの話…
猟師仲間に声はかけれるので。」
『怒りません。
要は内密に殺害させて頂ければ良いのです。』
「それなら…
自信あります!」
親の経営してた便利屋を継いだ宮田だが、手先の不器用さと根気の乏しさで常連客を逃していた。
反面、営業能力は高い。
現に、集落にあるソーラーパネルの大半は宮田の営業成果であるとのこと。
うん、むしろ中抜きして欲しい。
俺は米原市への罠具提供を申し出てから帰還した。
滞在時間40分弱。
宮田は恐縮していたが、俺にとっては有意義な一時だった。
「トイチさん…
凄いマネーレベリングですね。」
帰路、エモやんが呟く。
『私、腕っぷしが弱いので
皆さんの力を借りなくては、とてもとても。』
「クマとか倒さんのですか?」
『エモやんで検証し終わってから、私も対クマ戦に参戦しようかな、と。』
何がおかしいのかケラケラ笑う。
「お任せ下さい!
クマ倒しますよ!
要は経験値が知りたいんですよね?
キョンの時みたいに。」
『ええ、キョン1・イノシシ40…
ベア系は多分100だと思うんですけど。』
「異世界ではそうだったんですか?」
『はい。
武器屋の親父さんに
《男なら経験値相場は頭に叩き込んでおけ》
って言われました。
ラビット系5ポイント
リザード系10ポイント
ディア系20ポイント
ボア系40ポイント
ウルフ系50ポイント
ベア系100ポイント
です。』
「へー。
じゃあゴブリンの経験値ってどれくらいなんですか?」
『いやー、私向こうではゴブリン寄りだったので…
彼らをそういう目で見たことはないですね。』
「あ、知らぬ事とは言え申し訳ないです。」
『いえいえ。』
帰還してから幾つかのラノベアニメを見せて貰ったが、ゴブリンもオークもコボルトも、地球人の感性だと《殺してもいい生物》として認識されているようだ。
なので、エモやんの無邪気なゴブリン観は責めない。
俺だって実際に異世界に行って魔族と会話するまでは、彼らを駆除対象の一種程度にしか見ていなかったのだから。
17時前到着。
慌ててキャンピングカーに飛び込む。
冷静に考えれば実りの乏しい1日だった。
折角、通信インフラの整った世界に戻って来たのだ、明日からはリモートの比率をもっと増やそう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億3050万2247円
↓
5億8050万2247円
※出資金4億5000万円を預かり
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
5億か…
うーん、ペース鈍って来たな。
今思えば、異世界では経済面でも恵まれていた。
到着早々に高利貸のカイン・D・グランツや不動産屋のドナルド・キーンと縁を結べたのだから。
うーん、あそこはなあ。
スキル社会だったからあ。
俺が自分の能力を曖昧にしていても、周囲が勝手に使い道を考えてくれたんだよなあ。
地球でのパーティーメンバーも俺が異世界帰りだとは認識しているが…
そもそもここがスキルの存在しない社会だからな。
俺もあまり大胆になれないんだよな。
『皆さん。
俺は幾らでも増やせます。
もう少し預金金額を増やして頂けませんか?
また、もっと纏まった数を殺したいです。
1日100匹くらい機械的に殺害させて下さい。』
「えっと、人間は?」
『エモやんさん。
私は殺人鬼ではありません。
人間はなるべく殺さない方針です。』
地球は監視カメラ多いからね。
おまけに勝手に配信する馬鹿まで居るし。
人なんて殺せる訳ないじゃないか。
「リン君、そろそろ17時でーす。」
『あ、はい!
スミマセン!』
慌てて配当射出体勢に移行する。
真面目にやらないと、結構カネがバラけるのだ。
新札が床に落ちると拾いにくいからね。
そこら辺、ちゃんとやらなきゃだね。
《4063万5200円の配当が支払われました。》
俺は思わず唇を噛む。
やはり増加ペースが遅い。
こんな端金では何も出来ない。
脳裏にヒルダや荒木の顔を思い浮かべる。
俺にはアイツらのような必死さが足りていないのかも知れないな。
いや、資本家が必死になるのは負けフラグなのだろうか。
敗因は何だ?
猟師達が当初豪語していた程に獲物をキープしてくれないこと?
彼らなりにベストは尽くしてくれている。
だが、俺のオーダーが伝わってないのではないだろうか?
今日、宮田に会ってようやく本気は伝わった気がする。
俺は殺生以外に興味がないのだ、と。
そうだな。
伝達への熱意が乏しかったのかも知れない。
兵庫の宇田川にも早めに会いに行ってみよう。
「あの、トイチさん怒ってはります?」
『え?』
「いや、今凄く怖い顔してはりましたので。
その…
俺はカネが増えるペース順調やと思ってたんですけど。
御不満ですか?」
『あー、いや…
えーっと。』
否定の言葉がどうしても出て来ない。
マズい。
これでは彼らに対して不満を持っていると白状しているようなものではないか。
普段微笑みを絶やさない飯田や寺之庄までもが顔中から冷や汗を流している。
しまった!
雰囲気がぶち壊しだ。
…俺は馬鹿か。
1人じゃ何も出来ない癖に、何を贅沢を言っているのだ。
『己の至らなさに呆れていただけです。』
殊勝にそう答えてみるが、額面通りには取ってくれそうにない。
「トイチさん!
貴方に甘えすぎておりました!
何かノルマとかリクエスト的な物があれば…
俺に課して下さい!」
野球部ってこういう時のレスポンスが神速だよな。
きっと野球指導者って感情で物を言う屑ばかりなのだろう。
俺は己を厳しく戒めねば。
『いえいえ!
実はですね!
皆さんへの謝礼が足りていないのではないか、と!
自己反省していたのです!
誤解させてしまったのなら申し訳ありません!』
…駄目だ。
俺は嘘が下手過ぎる。
彼らの勘が良い所為もあるが、こういう場面で誤魔化し切る才覚がない。
悔しいが、これが器か…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
5億8050万2247円
↓
6億2113万7447円
↓
1億7113万7447円
※配当4063万5200円を取得
※配当金900万円を出資者に支払い
※出資金4億5000万円を別に保管
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
雰囲気を変える為に、配当を払う。
また、金地金の増加を大袈裟に喜び江本の機転に感謝を述べる。
みな、大人なので何事も無かったように接してくれるが、俺としては背中の冷や汗が止まらない。
…魔王生活から何も学んでないじゃないか。
力のある者が不機嫌な表情をしているだけで、周囲に多大なストレスを与えるのだ。
自省せよ。
遠市厘は到底王器に非ず。
俺は飯田・寺之庄・江本の3人に個別に時間を取って貰い、それぞれに平身低頭した。
当然だろう。
王は表情すら自儘に振舞ってはならないのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おやおや、今日もカネの臭いがするニャン♥」
『また貴方ですか…』
「トイチは17時を過ぎると必ずカネの臭いをさせるニャ♪
クンクン、ククンのクン♪
はぁ~、恩師ちゃんこの匂い大好きニャ♪
諭吉がいっぱい夢いっぱい♥」
『あの先生。
別件あるので、もう宜しいですか?』
『ニャ―ン! ニャ―ン!
捨てないでニャ!!
恩師ちゃんお小遣い貰えなきゃ死んじゃうニャン!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億7113万7447円
↓
1億7110万0000円
※乞食に3万7447円を贈呈。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「にゃにゃにゃ!!!
いつもより金額が少ないニャー!!!
しかも意味深な端数!」
『…先生。
老子の教えにも《吾唯知足》とあります。
もう満足しましょうよ。』
「バカヤロー!
それ恩師ちゃんが授業で教えてやったことだニャン!」
『え?
そうでしたっけ?』
「そうだニャー!!」
『申し訳ありません。
ちょっと覚えてないです。』
いや、確かに何かの授業で聞いた気もするが
一々どの教師から聞いたまでは誰も覚えてねーだろ。
「10万円寄越せニャ!!」
『え?
仰る意味がわかりません。』
「恩師ちゃん恩師ニャンだから恩師料払えニャ!
オラオラオラ♪」
『鷹見ー!
おい、鷹見ーー!!
居ないのか!?
助けてー!!』
「ふっふっふ。
ばかばかばーかww
ルナお姉様は奈々ちゃんの味方だニャ♪
トイチの言葉なんて聞く訳ないニャ!」
『フラグ立てるのやめて下さいよ。
鷹見ーーー!
居るかーー?
ちょっと助けてくれーー。』
「スイマセーン!!
今、配信中なんで!!!」
『あ、ゴメン!』
「くっくっく♥
ルナお姉様の手が塞がってるタイミングを見て襲撃に来たのニャ♪
おとなしく有り金全部置いてけニャ♥」
参ったなあ。
こんな屑に1億も渡しちゃったら、絶対大麻工場の建造資金にされてしまうぞ。
「おっぱい攻撃にゃーーー♥
おい、トイチ!
担任を性的な目で見た事はあるニャ!?
正直に白状するニャww」
『ありますね。
先生はお綺麗ですし、やっぱり話しているとドキドキします。』
「…お、おう。
マジにゃ?
性欲? 奈々ちゃん性欲対象?」
『ええ、嘘を吐いても仕方ないでしょ?』
「…。
君凄いね。
そういう感情、全く伝わって来なかったわ。」
『そりゃあ、神聖な学び舎で生徒が教師を性的に見て良い訳がないでしょ?
当然、逆も然りですが。』
「…お、おう。
オマエ、マジモンのサイコパスだニャ。
社会的には成功するけど、社会そのものに甚大な被害を与えるタイプだニャ。」
…身に覚えがないな。
相変わらず的外れな女だ。
その遣り取りで恩師は少し大人しくなったが、衣服を脱ぎ捨てカネをせびって来るので、思わず鷹見の声の聞こえた部屋に飛び込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ルナルナ夜遊び日記(なごやへん!) [雑談]
※この配信では「たぬきの葉っぱ」で匿名コメントができます
「はーーい、どもーーー♪
久し振りにホスクラで散財してちょっとメンタル回復しました!
相模の獅子こと、ルナルナ@貫通済でーす♥
《イチゴフラッペ》さん、花火感謝です!
《たぬ基地外》さん、シャンパンありがとうございます!
《親の霊圧が消えた!?》さん、風船10連感謝です!
はい、最近はね。
ちゃんと告知していればスタート時の同接が1000越えてる日が多いですね。
ホントねー、感謝してます。
おい養分共!
ありがとね。
今度、おっぱい位は揉ませてやるからね。
《ダブルコロネ》さん、花火ありがとです!!
《ルナルナ担当》さん、首4の字されたい?
キッモw
オマエ、終わってんなあw
しかも同調コメント多いし。
はいはい、わかったわかった。
プロレス技オフ会は別の日に開催ねー。
ファンとキモファンは峻別しまちょうねーw
《シクラメン》さん、シャンパンありがとです!
いやー、やっぱりね。
奈々とも話してたんだけど、女は浪費が好きだね。
不っ細工なホストとチョロッと飲んだだけで、諭吉君が何人も天に還って行くんだからさ。
《へっぽこ大明神》さん。
そうだねー、奈々が映ってないねー。
ゴメンねー、推し変相手が居ないって寂しいよね。
奈々はねえ、後から合流するよーん♡
アイツ馬鹿だから、テディデキャンタ入れてたわww
やめろって言ったんだけどねww
ああ、そういうボトルがあるのよ。
《ギリギリタップ》さん、帽子やめろしww
ウ↑チ↓首が長いから被り物似合わないんだよw
《ゴリラ》さん、お茶連打ありがと。
はい、ゴクゴク、美味しい♪
話戻すね。
ぬいぐるみ一体型のブランデーボトル。
奈々の奴、20万ボラれてたわww
原価2万ちょっとなのになww
えー?
20万は入り口だよー。
マジマジ、女はみんなホスクラ行ってるし。
ん?
立ちんぼやったり、AV出たり、風俗勤めしたり。
《たぬき3号》さん、ドーナツありですー♥
《寿司男》さん、もりあげ猫ありがと。
今度ペロペロしてやるからな♪
はい、AVの話。
みんな出てます。
いやいや、皆って言ったら皆だよ。
そりゃあ、男の人から見たら信じたくないだろうけど。
現にウ↑チ↓みたいなブスでもAV出てる訳じゃん?
いやいや違う違う。
貞操観念とかそういう問題じゃないんだって。
女はみんなと一緒が好きなの。
皆が結婚してた時代は、25過ぎた程度でも焦ってパニクってたし
皆がAV出てる時代なら、中坊でも出演するんだよ。
ん?
ショック?
あ、ゴメンね。
いや、男の人ってAVの話好きじゃん?
だから、それ位は分かってるのかなって。
《あっきー》さん、花火ありがとです。
《たぬきつね》さん、ハート嬉しいよ♪
はい、ハートポーズ♥
あははw
チョロ過ぎだろww
で、AVの話か。
FANZAの新作欄見てりゃ解るっしょ。
みんなAV出てるんだって。
フェルミ推定的に明らかだろ?
女は嘘つきだけど、FANZAの新作本数は正直だぞー。
一回計算してみ?
《よっぴー星人》さん、大花火ありがとうございます。
あんまり無理しないでね?
こんなモン、文字通り投げ銭の範囲でいいんだからね。
《ギャラんどー》さん、KP感謝です!
え?
名古屋の感想?
えっとねー。
内輪感がかなり強い。
こっちが余所者ですって言っても
遠慮せずにローカルネタをぶち込んで来るのね?
《ウンコ太郎》さん、ハートありがと。
へえ、近場なんだ。
一宮? っていう街が名古屋の近くにあるのね?
OK、今度チェックしておくわ。
《ギロチンドロップ》さん、初見?
ありがと!
寿司ペロ女でーすwww
えっとね、何の話
ああ、そうか名古屋人の内輪感の話か。
多分、ローカルの自覚ないんだろうね。
ナンザンダイガクって何だよw
知らねーよww
…これ別に悪口じゃないんだけどさ。
名古屋村。
まあ、村人が満足してるのなら別にいいんだけどね。
お、同接1800越えた。
マジかー。
ふわっち始めた時は全然人が集まらなかったけどな。
みんな、ありがとね!!
さて、名古屋。
何か褒める所…
うーーん、来たばっかりだからね。
ゴメン、まだ何とも言えない。
でもまあ、村人感は長所だよ。
長く住んでれば居心地がいいってことでしょ?
スイマセーン!!
今、配信中なんで!!!
ああ、ゴメンゴメン。
ダーリン様が奈々の奴にカツアゲされてたww
えー?
助けないのかって?
いや、勿論ダーリン様は大切な人だよ?
でも、今はオマエラとの時間な訳じゃない?
そりゃあオマエラを取るよ。
当たり前じゃん。
《たぬき13号》さん、お茶爆連打感謝です。
《ハイハイタラちゃん》さん、トロピカルフルーツありがとうね。
《たぬき77号》さん、風船ありがとです!
はい!?
ああ、どうぞー。
カメラ回ってるッスよ?
ははははww
はーい、今日のスペシャルゲストww
国連のアイドル、遠市厘様でーーすwww」
『仕事中ゴメンな。』
「いーえー、旦那様を匿うのも妾の仕事っスよっとw」
『視聴者の皆様。
お楽しみの途中、申し訳御座いません。』
「あはははww
真面目かww
ほら、ダーリン様
自分へのコメントは自分で読んでww」
『え、この右側だよな?
《シクラメン》さん、ルナルナを苛めるな。
ええ、猛省しております。
苛められているのはこちらなのですが。』
「うおっw
同接がキモイ伸び方しとるww」
『鷹見、俺画面の外側に出てようか?』
「ああ、いえいえ。
大衆は刺激を求めているからww
ヒールを全うして下さいや。」
『それ国連で済ませたよ。』
「あははははwww
ダーリン様は人類のフリー素材っスからね♪
ウ↑チ↓も鼻が高いッス♥」
『えっと。
《よっぴー星人》さん。
ファンの前で寝取るな!
不快な想いをさせてしまったこと、深くお詫び申し上げます。
状況が落ち着き次第、すぐに退室する事を約束致します。
《怪々カイザー》さん、花火のエフェクトありがとうございます。
あの、これっておカネが掛かるんですよね?
みなさん、本当におカネは大切になさって下さいね。
うおっ!
みんなが一斉に花火エフェクト!?
え、何で!?』
「今のはダーリン様が悪いですわ。
いや、ダーリン様がおカネ持ってるのは知ってますよ?
こんな立派な1棟貸しのホテルに集団で連泊出来るって凄いことだと思うんです。
20歳でこういう事出来る人って、野球かサッカーのスーパールーキーくらいのモンですよ。
でもね?
今の言い方、ちょっとマウント入ってましたよ?
鼻についても仕方ないッス。」
『え!?
俺がマウント!?
いや、そんなつもりじゃないし!』
「いやいや、それは受け手次第じゃないっスか。
花火が高額アイテムって言ってもせいぜい1000円っス。
大花火でも2000円っス。
確かに高額だけど、社会人から見れば遊びの金額じゃないっスか?」
『まあ、そうだけど。
でも、無駄遣いは良くないよ。』
「ほらー、そういう所ー。
リゾートをハシゴしてる小僧に心配されたらね?
リスナーもムキになるッスよ。」
『…不適切な発言・態度を取ってしまった事を深くお詫び致します。』
「はい。
みんなー、花火大会終了。
はーい、ダーリン様も悪気は無かったから
許してあげて。
しゅーりょーーー♪」
『鷹見。』
「はいー?」
『場の空気を壊して悪かった。
スマン。』
「あははw
こんな人です。
高校の頃からね、ちょっとズレてるんスよ。
まさか自分が沼るとは思ってなかったけどww
じゃあ、区切りもいいし…
配信終わろうかな。
《チョコチョコチンコ》さん。
シャンパンありがとねー。
《直結厨》さん。
えー、名古屋でもオフ会して欲しいの?
ゴメン、イベント関連はダーリン様&糞姑の許可が居るわww
ダーリン様、ファンミ開いていい?」
『え?
ふぁ、何?』
「ファンミーティングって言って。
アイドルやらAV女優やらが、まあ一緒だけど。
ファンを集めて交流するイベントがあるんスよ。」
『はあ。』
「止めてくれないと開いちゃうよ?」
『え?
開きたいなら開けばいいんじゃない?』
「カー、カー。
こういう人ですわ。
悪気ないんですけどね。」
『なあ。
俺がイベント開く話したっけ?』
「は!?
突然!?
いや、初耳ッスけど。」
『名古屋でもBBQ開くわ。
広めの会場押さえるから、鷹見も自分のコーナー作ってもいいぞ?』
「お、おう。
ズレとるなー、コイツ。
じゃあ、まあ御言葉に甘えますわ。
ウ↑チ↓のファンには邪魔しないように厳しく言っときますんで。
BBQ頑張って下さい。」
『?
いや、鷹見のファンの皆様にも肉を振舞うよ?』
「え!?
結構いい肉使ってるでしょ!?」
『そりゃあ、人をお招きするんだから…
変な物は出せないだろ。』
「あの…
会費幾らくらいっスか?
ウ↑チ↓の客層、そんなにカネ持って無いんで。」
『いや、カネはいいよ。
あくまで振舞だからさ。
それに、オマエの身内からカネを取るつもりもないし。』
「一応、念を押しときますけど
ウ↑チ↓のファンって、みんなワンチャン狙いのガチ恋勢っスよ?」
『鷹見は魅力あるしな。
そりゃあ、本気で好きになるだろ。』
「…。」
バン!バン!バン!
『痛! 痛! 痛!』
「恥ずかしいッショ!!!」
『いきなり叩くなよ。
オマエに刺された肩、まだ治ってないんだからさ。』
「はい!!
配信終わり!!!
この後、ダーリン様とセックスします!!!」
『あ、ゴメン。
それは母の許可を…』
「殺すぞマザコン!!!」
ドガッ!!
『ぐえ。』
【この配信は終了しました】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
鷹見に蹴られて部屋の反対まで転がる。
タタール人でももう少し暴力に躊躇するぞ。
「ルナお姉様、配信お疲れ。」
「おう、お疲れー。
オマエのファンが嘆いてたぞ。」
「あの雰囲気に割って入るほど無粋じゃないってw
おい、トイチカネ寄越せニャ。」
『無粋な人ですねー。』
「るせー。
女には色々あるんだニャ。」
「あ、ダーリン様
奈々、マジでカネ無いんで幾らか恵んでやって下さい。
昨日、メシ奢って貰ったんスよ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億7110万0000円
↓
1億7100万0000円
※側室の友人に10万円を贈呈。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「テツ君もそうだけど。
トイチは感情のツボがズレてるニャ!」
『そうでしょうか?』
「キチガイ! キチガイ!
バーカバーカ!!」
『先生。
これは誰からの受け売りかは忘れましたが
《泥を打てば面へはねる》と言いましてね。』
「それは恩師ちゃんが授業で言ったことニャー!!」
『そうでしたか?』
「授業なんぞ聞いてる暇があったら、恩師様に授業料払えニャーー!!」
『それは斬新な教育論ですね。
まあいいでしょう。
何はともあれ、鷹見と仲良くして下さってありがとうございます。
私は多忙なので中々構ってやれません。
なので、これからも遊んでやって下さい。』
「セリフだけ立派なのはサイコパスの証だニャ―!!」
『…どうしろと。』
「ねー、奈々ぁ。
アンタ、鉄オタ以外も男キープしてるって言ってたじゃん。
何でそんなに金欠なの?」
「だから、これだけ移動が多いと
《頂き女子マニュアル》を使う暇がないのよ。
早くおぢ共からカネを奪わないと、電気代がヤバい。」
「電気代払ってからホスクラ行きなよ。」
「ぐぬぬ、ロジハラぇ~。」
「頂き女子マニュアルってあれでしょ?
奈々が寝る前にブツブツ音読してる。」
「女のバイブルよ。
ルナちゃんも熟読すればいいのに。」
「うーーん。
アレは量産型の女に向けて書かれたものだからね。
ウ↑チ↓や奈々は、自分向けにカスタマイズした方がいいよ。」
『頂き女子マニュアル?』
「そーゆーのが糞ビッチ共の間で流行ってるんっスよ。
要はホスクラとかキャバのノウハウを転用した疑似恋愛詐欺ッスね。」
『詐欺!?
それは良くない。』
「ハア!?
オメー、トイチ!
陰キャの分際でなーに、おにゃのこ様にイチャモン付けてる訳ェ~?」
『先生。
貴方は仮にも教職者でしょう。
そういう不心得は止めなさいよ。
貴方みたいな人が居るから
真面目に仕事をしている教員の方が迷惑をするんですよ。』
「ねえ、ルナちゃーん。
コイツうざーい。」
「昔はウ↑チ↓もそう思っていたんだけどね。」
『先生。
聞いてしまったからには看過出来ません。
その詐欺マニュアル、渡して下さい。』
「はぁ↑!?
トイチてめー、ちょっとカネ持ちになったからって
なぁにチョーシ乗ってるんだニャ!
ニャっ殺すぞ!!
頂き女子マニュアルは、女の未来!
この苛酷な世界の中でなあ!
女が生き抜いていく為の希望の光なんだよ!!!
女には女の絆ってものがあるんだよ!!!
夢を語り合ったあの美しき日々!!
姉妹の掟に懸けて仲間は売らねぇえええニャ!!!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
1億7110万0000円
↓
1億7010万0000円
※犯罪者から証拠品を100万円で徴発。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えっへっへ、トイチさーん。
もー、やだなー♥
うぇひひ、いつもありがとうございやす♪
そうならそうと最初に仰って下さいよー♥
あ、おっぱい揉みます?」
『えっと。
詐欺組織の中で、Lineグループってのを作ってるんですよね?
それプリントアウトは可能でしょうか?』
「あ、はい!
可能ですニャ!
あ、こちら印刷したマニュアルですニャ!
まずはお納め下さいませニャ!
どぞどぞどぞ♥」
『どうも。
じゃあ、こちらは押収します。
鷹見、松村先生のスマホを没収しろ。』
「ニャ!?」
「え? そこまでやるんスか?」
『…。』
「あ、スンマセン。
奈々、寄越せ。」
「生徒が恩師を苛めるニャー。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺も考えなきゃならない事が山ほどある。
なので、お願いだから仕事を増やさないで欲しい。
のだが、国民としての義務は果たさなければな。
『水岡警部。
夜分恐れ入ります。』
「おお、遠市か。
オマエなら歓迎だ。
どうした?」
『詐欺事件の情報を提供します。
警視庁では既に把握されておられるかも知れませんが…
《頂き女子グループ》なるもの達が徒党を組んで悪事を働いているのを発見しました。』
「…いや、俺は聞いてないな。
後でチェックしてみる。」
『どうもコイツラはオンライン上で結託しているようなのですが
プリントアウトした詐欺マニュアルを押収しました。』
「押収って、オマエ。」
『御安心下さい。
暴力は用いておりませんので。』
「うむ、それなら…
いいな、どれだけ事件を見聞きしても暴力での制圧はやめろよ?
今は私人逮捕系YouTuber なんてものも社会問題になってるからな。
オマエが捕まるとか、俺は嫌だからな!」
『お気遣いありがとうございます。
それで、一味の者からスマホも借りております。』
「え!?
いや、スマホなんて普通貸さないだろ!」
『彼女に関しては協力者、ということで。』
「…なるほど。
そういう事か。
了解。」
『現在、名古屋に滞在しております。
証拠品を警部に提出したいのですが、東京駅で落ち合う事は可能ですか?』
「…管轄とかあってな。」
『ああ、失礼!
新宿まで参ります。
それで宜しいですか?』
「スマン!」
『いえいえ、当然のことですよ。』
ヴィラを歩き回って、メンバーに明日朝に帰京することを宣言。
しばらく帰る気も無かったんだが…
まあ、詐欺事件を見逃すわけにはいかんからな。
「トイチさん。
響さんからの電話です。」
『あ、ども。
後藤さん?
お電話代わりました、遠市です。』
「どうもー、後藤です。
大阪から掛けておりますー。
夜なんで本題だけ。」
『あ、はい。』
「えっと、前に少し話したことなんですけど。
段取りはこっちでしますんで…
大阪で詐欺して貰っていいですか?」
『はい、喜んで!』
予定が詰まって来たので、熱いシャワーを浴びて寝た。
【名前】
遠市 †まぢ闇† 厘
【職業】
東横キッズ
詐欺師
自称コンサルタント
祈り手
【称号】
女の敵
【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)
《LV》 7
《HP》 弱い
《MP》 強い
《力》 女と小動物なら殴れる
《速度》 小走り不可
《器用》 使えない先輩
《魔力》 ?
《知性》 悪魔
《精神》 女しか殴れない屑
《幸運》 的盧
《経験》 962
本日取得 40
本日利息 63
次のレベルまでの必要経験値308
※レベル8到達まで合計1270ポイント必要
※キョンの経験値を1と断定
※イノシシの経験値を40と断定
※経験値計算は全て仮説
【スキル】
「複利」
※日利7%
下2桁切り上げ
【所持金】
1億7010万0000円
【所持品】
jet病みパーカー
エモやんシャツ
エモやんデニム
エモやんシューズ
エモやんリュック
エモやんアンダーシャツ
寺之庄コインケース
奇跡箱
コンサル看板
【約束】
古屋正興 「異世界に飛ばして欲しい。」
飯田清麿 「結婚式へ出席して欲しい。」
〇 「同年代の友達を作って欲しい。」
「100倍デーの開催!」
「一般回線で異世界の話をするな。」
〇後藤響 「今度居酒屋に付き合って下さい(但しワリカン)」
「大阪を滅ぼさないで下さい!!!」
江本昴流 「後藤響を護って下さい。」
×弓長真姫 「二度と女性を殴らないこと!」
× 「女性を大切にして!」
〇寺之庄煕規 「今度都内でメシでも行きましょう。」
×森芙美香 「我ら三人、生まれ(拒否)」
×中矢遼介 「ホストになったら遼介派に加入してよ。」
「今度、焼肉でも行こうぜ!」
〇藤田勇作 「日当3万円。」
〇堀田源 「トイレコインの使い方を皆に教えておいて。」
〇山田典弘 「一緒にイケてる動画を撮ろう。」
〇 「お土産を郵送してくれ。」
楢崎龍虎 「いつかまた、上で会おう!」
警視庁有志一同 「オマエだけは絶対に逃さん!」
×国連人権委員会 「全ての女性が安全で健(以下略)」
〇安宅一冬 「浅草寺周辺を一緒に散策しましょう。」
水岡一郎 「タックスヘイブンの利用・移住をしないこと。」
×平原猛人 「殺す。」
「鹿児島旅行に一緒に行く。」
車坂聖夜Mk-II 「世界中の皆が笑顔で暮らせる、優しい世界を築く」
今井透 「原油価格の引き下げ。」
荒木鉄男 「伊藤教諭の墓参りに行く。」
鈴木翔 「配信に出演して。」
×遠藤恭平 「ハーレム製造装置を下さい。」
〇 「子ども食堂を起ち上げる。」
木下樹理奈 「一緒に住ませて」
×松村奈々 「二度と靴は舐めないにゃ♥」
「仲間を売るから私は許して♥」
〇鷹見夜色 「ウ↑チ↓を護って。」
〇 「カノジョさんに挨拶させて。」
〇 「責任をもって養ってくれるんスよね?」
×ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹…。」
「王国の酒…。」
「表参道のスイーツ…。」
× 「ポン酢で寿司を喰いに行く。」