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【降臨9日目】 所持金全額押収 「その手は殴る為ではなく繋ぐ為にある!」

俺が飯田清磨を高く評価する理由は極めてシンプルである。

オープンでありながら、真意が非常に読みにくい。

その一点のみをとっても素晴らしいと思う。

あの男にしても、まだ底を見せていない。


昨夜、50万円を無造作に渡して来た。

好意にも打算にも見える。

つまり、そのど真ん中を渡ってきたのだろう。

年長者として本気で俺の前途を案じてくれているし、投資家として最大のリターンも期待している。

その両方なのだ。

処世術として中庸を心掛けているのかも知れないし、そもそもそういう生まれ育ちなのかも知れない。


出資を受けた身としては、とりあえずは5000万を返済する予定である。

もう今後はそんな下らない約束は誰にもする気はないが、俺は彼に対してだけは100倍を約束している。

当然、俺の中の常識では彼から託された50万円は5000万円にして返済しなければならないし、彼に万が一があれば、関羽やその子を庇護する義理が出来たと思っている。

そんな風に俺を感心させてくれた飯田清磨には、こちらからも一笑を提供する義務がある。



俺が終電で歌舞伎町にやって来たのはそんな理由も少しは含まれている。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


99万3524円

  ↓

99万3204円



※蒲田駅から新宿駅への電車賃として320円を支払い。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



噂には聞いていた。

興味はあった。

意識もしていた。

訪問を勧められた事すらあった。

何より、底辺層の生の声に触れる機会は今が最後であると経験が告げていた。




東京都新宿区歌舞伎町の新宿東宝ビル横。

通称・東横に俺は居る。




早ければ来週には大金持ちになっていても不思議ではない。

なってしまえば、周囲の善意と忠誠が俺の自由を再度奪うだろう。

今、来ておかなければ東横のみならず、こういう場所には2度と来れない。




新宿駅で色々な人に『東横って場所に行きたいですけど』と尋ねていると、ホスト(?)のお兄さんが連れて来てくれた。



「若いうちは真面目に働かなきゃ駄目だよ。」



道中、お兄さんは結構親身に諭してくれる。



『いやあ、本当ですよね。』



「君、幾つ?」



『20歳です。』



「ハタチなんて人生まだまだじゃない!

もっと地に足付けて生きなきゃ駄目だよ!」



『あ、すみません。』



「なーんてね。

俺も人のこと言えないんだけどさ。」



『え?』



「俺、人間関係全然上手く行かなくて…

それで中学の頃からずっと引き籠ってたんだ。


…親戚や友達からも見放されて

それでも婆ちゃんだけはずっと俺の味方で居てくれて。


でも、そんな婆ちゃんも死んじゃって

もう自分でも生きてる意味わからなくなっちゃって

俺みたいな屑が何で生きてるんだろって、毎日泣いてた。


…でも

いつまでもそんなのじゃ

天国の婆ちゃんが心配しちゃうだろ。

だから俺、決めたんだ。


ホストになって真面目に働くって!


最初の頃は本当に辛かったよ。

俺、ブサメンだしコミュ障だし酒飲めないし、部活とか入った事無かったから

男社会の立ち回り方とか全然知らなかったからさ。


でも、それでも歯を食いしばって毎日堪えて。

俺さ、先輩達から苛められてたんだ。

それも年下の先輩。

マジで辛かったよ。

それでも天国の婆ちゃんの為にも頑張らなきゃって。


情報商材とかいっぱい買って、オラオラ営業とか覚えて…

子供の頃習った少林寺拳法とか意外に役に立ってさ。

ああ、人生に無意味な学びなんて無いんだなって

この歳になってやっと理解出来たんだ。


俺、思った。

婆ちゃん、少林寺の師匠、ヤクザに埋められた聖夜さん。

皆の助けがあったから、ここまで来れたんだって。


だから、世界への感謝の意味も込めて…

俺、自分の派閥を起ち上げることにしたんだ!


うん、遼介派。

あはは、自分で言ってて少し照れるけどさ。


俺、遼介派を起ち上げます!


昨日、仲間たちにそう伝えたよ。

ふふっ。

天国の婆ちゃんに少しでも早く一人前になった所を見せてあげたいからさ。


あ、ゴメンね。

ちょっと仕事の電話。



  ハアッ!?

  何で俺が呼んでやってるのに来ねーんだよ殺すぞ!

  カネがねーんならババァから奪って来いッ!!

  知るかっ死ねブスッ!



ゴメンゴメン。

俺も社会に出てから、こんなに仕事が大変だって初めてわかったよ。

お父さんも、こんな思いをして俺を養ってくれたのかな。

いつかまた、口を利いてくれる日、来るのかな…


ははっ、ゴメンね

湿っぽい話になっちゃって。


俺、散々親不孝してきたから。

少しでも早く一人前になって

少しでも真面目に仕事して

いつかまた、家族で食卓を囲める日が来ればいいなって。


それが俺の夢。

小さくて大きな夢。

その夢を叶える為、死ぬ気で頑張ってる!


だから、リン君も。

東横に来るなとは言わないけど。


自分の道を、自分の夢を、駆け抜けて欲しい!


あ、着いたね。

ここが東横。

まるで動物園だろ?

最近はガイジン達の観光スポットになってるんだぜ。


それじゃあね、俺これからまた仕事だから。

いつかまた逢おうぜ(ニカッ)!!」





何か音楽がジャンジャン鳴っている。

これがヒップホップという音楽なのだろうか?

正直、その良さがわからない。

改めて異世界の音楽が優秀であった事を痛感する。



俺はやや浮いてるのだろう。

変な恰好をした女達から、まるで敵でも見るようにジロジロ見られた。




  「チギュチギュ鳴いてそう。」

  「弱男」

  「シネウンコの同類枠じゃね?」

  「歩き方キモくね?」

  「あの頬っぺ、傷?」

  「メイクッしょ、かなり気合入ってるね。」

  「キッモww」

  「まゅ、あのチーにしなよw 傷キャラ好きでしょw」


  「はァあああッ!? まゅわぁ! 

  ※イケメンですけどぉ!!!

  さゅっちもだょね!」


  「…アレ、ちょっとヤバい子かな。

  こっちを見る目、ちょっと男尊女卑オーラ入ってる。

  まゅは近づくのやめときな

  DV彼氏の連鎖はそろそろ終わっとこ?」


  「ふえええ。

  さゅっち心配性ww

  あのチーは弱そうだし論外キャハッw

  まゅわぁ♪

  強くて怖い人以外は論外♪」


  「着てる服、田舎ぽいね。」

  「顔面偏差値は?」

  「シネウンコ並ww」

  「中卒w」

  「じゃあオマエより上じゃんww」

  「はあああ!? うっざうっざうっざ。」

  「ねえ、セーアン来たんじゃない?」

  「アイツらしつこーい!」




ここからでは話の内容まではわからないが、あっちのメス共が俺の悪口を言っている事だけは理解出来た。

…いや、気にしてないよ?

俺、あんな奴ら大嫌いだし。

全然、気にしてないから!





「おーーーーう

お兄ちゃん、新顔クン!?」




俺がキョロキョロしているとゲーセンの壁沿いに座り込んでいるオバチャンの群れに声を掛けられる。

ホステスさん? 女ホームレス? その境目が良く分からない。




『ちわーす。』



「ここ座りなー。」



『あ、ども。』



「お兄ちゃん、鏡月でいい?

あ、そこのコップ自分で取ってね。


キャべ太郎食べる?

どう?

東横いいトコでしょ。


ここは温かい、心がある。

心。

わかる?

東横は誰でも受け入れる場所なのよ。


ああ、お酒苦手?

無理して飲まなくていいからね。


あそこでアホみたいな飲み方してる子いるけど。

結構死んでるからねえ。

今時イッキコールなんて随分珍しくなっちゃって。

あ、ハイボール飲む?


私もね、ホストとFXに嵌って家のお金4000万円溶かして、上の子も下の子も旦那に親権盗られて。

そんな私でも受け入れてくれるのが歌舞伎町。


ここに居るのはね?

みんな、仲間。

ウンコちゃんとかああいうのは別として

みんな仲間♪

家族なの。


世間ではアレコレ言われてるけど

東横は世界一優しい場所。

お兄ちゃんもそれだけは覚えててね(にぱっ)♪」




オバチャンに貰った酒で完全に腹がいっぱいになる。

うぷっ、気持ち悪い。



「お兄ちゃん、ケンタッキー来たよ!

ゲンさんがケンタッキー買ってきてくれたよ!

お兄ちゃんも食べなさい。

肉の多いヤツ貰いなさい。

ちゃんとご飯食べてるの?

栄養バランス考えないと駄目よ?


ゲンさん、この子初めての子。

二十歳だって!

色々教えてあげて。」




食べたくもないフライドチキンを口の中に押し込まれる。

…モシャモシャ。

油がキツイ。

今思えば胡桃亭はレベルが高かったな。


ゲンさん、というオジサンがニコニコしながら周囲を見渡している。

この人もオッサンとホームレスの中間点みたいな風貌だ。




「お!

君、初めての子?

東横初めて?

カーッ! カーッ!

また1人こっち側に来ちまったかー。

じゃあトイレコイン教えとこっか。


俺。

この街長いから。


もう何十年にもなるよ。

歌舞伎町。

色々不義理をしちゃって地元に帰れないだけなんだけどね。

カーッw カーッw


今はねー。

若者を助ける仕事をしてる。

東横のルール説明って言うか…

未来への水先案内人ってトコかな。

トイレコイン、教えてあげるから!


じゃあ早速、お酒買ってあげるから

コンビニ行こ! 行こ!

オジサンのオゴリだから気にしなくていいよー。


大船に乗ったつもりで、カーッ! カーッ!

大船に乗ったつもりで、おごりだから。


はい、入り口狭いから気を付けてねー。

最近の子はリュックを腹に背負うマナーが徹底されてて気持ちがいいね。

カーッ! カーッ!

いい文化は、どんどん後世に伝えて行かなきゃね。

トイレコインとかも、君が次世代に伝えて行かなきゃ駄目だよ?

オジサンと約束出来るね?


おお!

駄目駄目、折角買ってあげるんだから

ロング缶を選びなさい、ロング缶。

銘柄わからないならストゼロっ レモンっ ロングでっ


ほーら(パンパンと手を叩く)レジっ レジっ

ちゃんとストロー貰わなきゃ駄目だよ!


店員さんガイジンさんだから

こっちから言ってあげなきゃ向こうも困るからね。


はい、長い方のストローね!

ああ、駄目駄目!

ちゃんと言わないとトイレコインが貰えないから。

ちゃんと言って!


そうそう。

店員さんも慣れてるから。

言ったらトイレコインくれるから。


それが無いとトイレ使えないから

いざという時にトイレ入れなかったら困るでしょ?


じゃあ、トイレの場所教えるから、ついて来て!

ほらこっちこっち。

狭いから気を付けてね。


はい、ここ。

ね?

トイレコインないと入れないでしょ?

ね? ね?

わかった? わかった?


オジサンはねー。

東横初めての子が困らないように教えてるの。

自分で言う様なことじゃないんだけどね。

カーッ! カーッ!


そう、それ!

ボランティア!


え?

本職はボランティアじゃないよ。


オジサンが新宿に来た頃ね。

世話になった親分が居てね。

向こうはアニキでいいよって言ってくれたけど

俺、そういうケジメはちゃんとしたいから親分って呼ばせてもらってる。

盃は貰ってないけど。

本家の執行部の人だから、超大物。

カーッ! カーッ!

本家の執行部だから。


まあ、親分もね。

歳をとっちゃったから、引退して今は居酒屋のオーナーやってるのね?

西武新宿駅の、もうちょっと下に行ったらへんなんだけど。


うーん、でも執行部まで昇りつめた人を1人で歩かせる訳にはいかないでしょ?

だからね。

若い頃の恩返しの意味を込めて俺が護衛してるの。

ボディーガード。


こうやってね、ピタッと親分の側に張り付いてね。

怪しい奴が近寄って来ないようにブロックしなきゃでしょ?

ほら最近はヤクザ相手に平気で配信する馬鹿も居るから。

女の子の方が変なの多いよね最近は。

カーッ! カーッ!


なんつーのかな。

それがオジサンの仕事。

ちょっと危ない橋渡ってるな、って感じる時もあるけど。


いや、だからこそ若い人達に何かを伝えておきたいのかな。

カーッ! カーッ!

未来を託しておきたいのかも知れないね。


リン君だっけ。

俺もこういう稼業だ、いつどうなるか分らない。

だから、俺に万が一の事があったら…

トイレコイン、新しい子に教えてあげて。


オジサン…

【想い】ってバトンだと思ってる!

俺達全員で繋ぐ未来へのバトン!


任せたぜ、リン(ニカッ)!」




報道ではよくわからなかったのだが。

要するに東横というのは、ゲーセンの入り口の空き地の事だった。

やたらとパンチングマシーンが多いゲーセンだったので、その時点で大体は理解出来ていた。


地べたに座ってオバチャンと酒盛りする俺達を外国人観光客が「Ooh!!!!」とか喜びながら撮影していく。


しばらく観察していくうちに、人間関係の構造が見えて来る。

俺と同年代の東横キッズ(男)はオバチャン達ホームレス集団に挨拶位はするが、東横キッズ(メス)はオバチャン達を蔑み見下している。

オバチャン達もメス共には思う所があるようである。



俺がホームレスの輪の中から、キッズ勢(俺より年上の可能性も高いが)を眺めていたからだろうか?

1人の赤髪のキッズ(男)が話しかけてくる。

右側が赤、左側が白という漫画のキャラみたいな髪型だった。

なるほど、周囲を見渡していると、赤・ピンク・白系の髪色をした男がモテている。

流行しているのかな?




「東横初めて?

こっちおいでよ。」



『ありがとう。

お邪魔します。』



「強引に誘われたんじゃない?

あそこにいる黄色トレーナーのハゲはホモだから気を付けてな。」



『え!?

そうなの?

優しそうな人じゃない。

さっきスルメ貰ったよ?』



「あのハゲはさあ。

俺達の中で酔い潰れた奴が居ると、

擦り寄ってきて介抱と称して、ずっとスリスリして来る。

ちなみに女が倒れててもガン無視w」



『ほええ、怖い。』




「後、勝手に盗撮配信する奴いるから気を付けてな。」




『え? そんな人居るの?』




「しつこい女が居てさ

何度ボコっても来るよ。

ソイツ殺してくれたら王の称号やるわw

入院でも†マジ闇†称号モンだよ。」




『何か殺伐としたトコだね。』




「ははは、昔はもっとヤバかったらしいよ。

ねえ、リンって本名?」




『あ、うん。』




「いいなあ。

今風のシュッとした名前。


俺なんか本名ノリヒロだぜ。

…ダサいだろ。」



『いや、あまり人の名前って意識したこと無い。

御両親が一生懸命付けてくれた名前じゃないの?』




「マサヒロの息子だからノリヒロなんだってさ。

ウチ、両親とも公務員だから全てが固いんだよ。

今はjetって周りに呼ばせてるけど。


兎に角さぁ

子供の頃からスパルタ系の塾に色々行かされてさ。

東大狙いで信大。

ウケるだろ?」



『信大って…

国立大学でしょ?

十分立派だと思うけど。』




「…これ俺の学生証。

写真のトコ、見て。


こっちが俺の本当の顔。

典型的なチー牛顔だろ?


俺、こんなルックスだから全然モテなくてさ。

中学とか高校とかで、他の男子が全員カノジョ作ってても

俺だけ1人ぼっちで…

皆から散々馬鹿にされて、バレンタインとかクリスマスとか

イベント毎に笑いものにされてさ…


漫画とかアニメとか殆ど見た事無かったのに

顔が不細工だから、オマエはオタクだろう。

って決めつけられて…

本当に辛かった。


皆セックスしてるのに、俺だけが童貞でさ。

それがどうしても納得出来なくて…


親に文句言ったんだ。

でも、その度に《いい大学に行けばモテる》って…

強引に納得させられて…


信大って長野ではブランドではあるんだけどさ。

入っても俺なんかがモテる訳ないだろ…

常識的に考えて。


俺、2回生の辺りから

本当に生活が辛くなって…

いや、生活っていうか、生きてることが痛くて痛くて。

自殺しようと思って大学辞めたんだ。


親から発狂したみたいな電話掛かって来たけど

俺もキーってなって、そのスマホ川に捨てちゃった。

所詮親子なんだなって思ったよw


それで残ったカネ持って、福井の東尋坊って所へ行こうとしたんだ。

自殺の名所って聞いてたからさ。


それでJR福井駅に降りて…

東尋坊ってどうやって行くんですか、って聞いたら

自殺しようとしてること、悟られちゃったみたいで

係のオバサンに泣きながら怒られたよ。


人間はもっとやりたい事やらなくちゃ駄目だって。

願いを叶えようと頑張ってたら、自殺するヒマは無いって言われてさ。


それで、真剣に考えて

俺、何したいのかなって…


そしたら、結局モテたいしか無かったんだよね。

馬鹿みたいだろw

それで歌舞伎町を目指したの

モテたいから歌舞伎町w

安直だと思わないw?


残ったカネで歌舞伎町まで来て、最初は居酒屋。

次にキャッチを始めたら、意外と馴染めてさ。

ここで骨を埋めようと思てたんだけど

店がボッタクリだったせいか、社長が逮捕されちゃって…

ああ、覚醒剤バレたのがヤバかったみたい。


それでホストの体験入店とかしているうちに

徐々にこういう系のファッションしてたら…

ああ、これ病み系って言うんだ。

聞いたことない?


リンは似合うと思うよ。

マジマジ!

その傷、メイクじゃないよね?

少しだけ触っていい?

うおっ! 本物だ!


いや、消さなくていい消さなくていい。

この界隈でその傷は武器!


ホントホント、リンのその傷で病み系ファッションしたら

普通にモテるよ?

聞いたこと無い? 病み系とか、地雷系とか。


ああ、そうそう。

メンズにも地雷系ってあるんだよ。


うーーーん、厨二系って言うのヤメテ。

俺はいいんだけど、怒る人多いと思うよ。

後、キッズじゃなくて界隈な?


ちょっとコレ、羽織ってみ?

おお、合うじゃん!!

めっちゃサイズピッタリw


リンはスリムだから、そういうスポーツ系の服より病み系の方が似合うって。

スキニーとかモテるよ?


いや、俺も最初は半信半疑だったんだけど。

スキニーはモテる。

びっくりしたもん。


あ、フードは深く下ろして…  

うん、傷は隠さないように

折角カッコいいだから隠すのは勿体ないよ。


あっ、袖を捲るのは(バッテン)

嘘?

萌え袖って聞いたこと無い?

いやいや、それでヌイグルミとか持ってたら女から声掛けて来るよ。


いやいやいや!

からかってない、からかってない。

寧ろ、この界隈ではこっちが常識なんだって。


それ、やるよ。

ああ、いいんだ。

買い替えの度に友達にあげてるから。


俺さぁ。

病み系の服ばっかり買ってるけど。

自分が病気なんて思ってないから。


親も含めて受験してた頃がビョーキ。

今は完治して、やっと男になれた。


感動してるんだ。

その感動、皆にも知って欲しい。


…自己満だよ、ジコマンジコマン。

でもさ、リンが少しでも喜んでくれたら嬉しい。

ゴメンな、初対面で価値観押し付けちゃって…


俺ってマジで痛いよなww



!?


…ありがと。



あはっ、バカ。

泣いてねーよww

嬉しいだけ。


なあ、リン。

人生を生きような(ニカッ)。」




山田†jet†ノリヒロの口車に乗ってしまって上着を交換する。

…エモやんゴメン。


驚いた事に、本当に女が話しかけて来る。

口ぶりからすると仲間認定してくれているのだろうか。

全員、顔に変なメイク(?)タトゥ(?)をしている。

鼻とかにピアスをしていて、内心ドン引きしたが、女に臆したと思われたくないので平然を装ってやった。

やたらと傷の話を聞きたがるのだが…

あれ?

コイツら、さっき俺の悪口を言ってなかったか?

くっそ、ここに居る女はみんな似たような服装をしてるから…

識別が付かん!




「ねえ、アタシ幾つに見える?」




黒いドレス? ワンピース?を着たお姉さんが突然話しかけて来る。

いや、女の年齢とか本当にわからないからな。

あ、確か若めに言った方がいいんだったけ。

この人は25くらいだから…




『23歳くらいですか?』




「あははw

はずれーーーww

もっと下ぁww」




『21とか?』




「ブ―――っww

13歳だよw

見えなかったでしょ♪」




『え? 本当に?』



「あはは、みんな驚くよね。

13歳♪」



『中学生?』



「そだよー♪」



『親御さん心配しない?』



「こないだボコられたー♪」



『素直に因数分解しときなよ。』



「あははw

そーゆーの無理無理

アタシ成績オール1だし。」



『進学とかしないの?』



「女子大デビュー♪」



『え? 大学?』



「あ、地元にそういう界隈があるんだよ

栄♪

って言ってもアタシは岐阜だけど♪

《女子大通り》ってホス狂の溜まり場ww

みんなの憧れなんだ♪」



『全ての問題にホスト絡んでなくない?』



「あー、今規制しようとしただろー

駄目だぞーーww」



『いや、しないよーw』



何でわかった?




「あ、セーアン来た。」



『セーアン?』



「オマワリ。

生活安全課。

しょっちゅうやって来て逮捕して行く嫌な奴ら。」



『…それ単に保護してくれてんじゃね?』



「保護いらねー。

アタシらの事はNPOの人が助けてくれてるし

すっごくいい人達なんだよ。

中学生でも出来る仕事紹介してくれるし!」



『へー。』



「あ! また規制顔になった!

セージカかテメーww

やめろしーーw」




…わかるのか?

俺、そんなに顔に出てる?




  「ちょっと君、幾つ? 身分証見せて?」

  「ぇー、ちょっと今財布落としちゃっててぇw」

  「スマホか何か持ってない?」

  「それも落としたーw アタシも困ってるww」

  「…ほどほどにね。」

  「はぁーーーいww」 




周囲を見るとあからさまに童顔の連中が、おまわりさんらしき人達に連れていかれてる。




  「リナっちぱくられたw」

  「嘘っw アイツ、ガチ小じゃんww」

  「12ってもう大人だよね、普通に産めるし。」

  「だよね、保護いらね。」

  「キョーセーソーカンw」

  「絶対シネウンコの所為だよ。」

  「リュージ君に頼んでボコって貰おうよ。」

  「リナっちメモ帳大好きっ子だから芋づる来るよー。」

  「援助してくれたおぢが逮捕されるねw」

  「おぢ逮捕ww」

  「おぢ逮捕ww」

  「さらばリナっち&おぢw」




向こうの方でおまわりさんが騒いでいる。

ここからではよく分からないが、12歳の小学生が補導されたとジェットが教えてくれる。

何でも義理の父親から虐待されて逃げて来た子らしい。

女を殴るとか最低の男だな。

許せねえ。




『君は大丈夫なの?

13だろ?』



「へーきへーきw

アタシ、このメイクでしょ

夜職と思われるから

一度もネンカクされたこと無いよー。」



『俺も二十歳でギリギリなんだけどさ。

おまわりさんが全然話しかけて来ない。』



「うそ?

二十歳?

喋り方とか落ち着いてるから

もっと大人の人かと思ってた!」



『落ち着いてるか?』



「えー

二十歳の人でその喋り方ってヤバいよー

カッコいい♪ 顔もだけど。

ねえ、年下イケるタイプ?」




『11歳とは…

付き合ったことあるよ。』




「うっそーーー!!!

マジロリコンww

マジ犯罪ww

やっべーやっべーーww

ヤッタ? セックスした?」




『した。』




「あははは!

どうだった?

痛がってた?」




『いや、突然のことだったから

最初は俺の方が驚いちゃって


痛いとか、どうなんだろ?

今思えば、そこら辺もっと気を遣ってやるべきだったな。』




「…アタシの時には気を遣わなくていいからね♪」




『え、いや。

そんな事言われたら、逆に滅茶苦茶配慮するだろ。』




「余計なこと言わなかったら良かったww」





確かにジェットの言う通り、この上着に変えた途端に女子が好意的になった。

モテるとかそういう事ではなく、身内感というか、仲間的に扱ってくれるイメージ。


但し、話し掛けて来るのは病み系? 地雷系? の男女だけになった。

途中、アラブ系っぽい観光客グループに写真をねだられたので、快く応じる。

最初は不愛想な雰囲気のヒゲオジサンだったが、撮り終わる時には満面の笑みで大はしゃぎしていた。

俺も我が国のインバウンド政策に貢献出来てるのかな?




ホームレス系の人はあんまり話し掛けてくれなくなったが、さっきのグループで浮いていたオジサンが話し掛けて来る。




「キミ、来た早々場の雰囲気に馴染んでスゴカねぇ〜。

おりなんか馴染むのに半月くらい掛かったバイ!」




『ああ、いえいえ。

別に馴染んでるという訳でもなく。』




「今はねえ、おりもすっかり馴染んで、ここは家みたいなもんバイ!

みんなが家族であり仲間!

いやあ、歌舞伎町はええところやねぇ!」




この人馴染んでるかなぁ?

なんか全員からナチュラルにウザがられてる気もするんだけど。




おりはねえ。

年少出てから地元でずっと鳶しとったんやけど

ある日急に思ったんよ。

人生このままでええんかなーって。


それで会社の金庫からカネを借りて

え? 泥棒なんかしおらんよ?

借りただけバイ。

ちゃんと借用書も書いちゃっちゃし。

社長には世話になったけんねー。

1発当てて100倍にして返すつもり。


一発って言ったら、ま〜ずはホストやん?

おりさあ、年少おる時から周りにホスト勧められとったんよ。

顔整っちょるやろ?

ははは、北九州では結構有名やってんぞ?

俺とツレで学校仕切っちょったし。


それでホスト始めて結構順調やったんやけど。

マネージャーの人と折り合いが悪くてね。

遅刻すんなとか先輩には敬語使えとか訳わからんことばっかり言ってきおって

おりも気の長い方じゃないけん…

バチコーンってやってもーたんよ。

いや、殴った言うても軽くよ?

軽く、軽く。

当たり前やん、職場で人を殴るとか非常識やん?

だから軽くしか殴っとらんバイ。

ちょっと眼鏡が割れて顔から薄っすら血が出ただけ。

九州やったらこんなん挨拶やん?

男同士が仲良くなろうと思ったら、飲むか殴るかしかないけん。


ほしたら、何とその場でクビ!


ターッ! タ―ッ!

誰もおりの言い分聞いてくれんし!

普通は喧嘩両成敗やろ?

ルール守って欲しいわぁ。


いや、あの時は驚いたバイ。

おりはあんなに真面目に働いとったのに

仕事と関係ないことでクビなんて夢に思わんやん?


話はここからなんよ。

そこのホストクラブ、ああもう名前出したろ。

チョリソー系列やねんけど、あそこ業界最大手やん。

社長さんは他の系列のホスクラとも付き合いがあったんよ。


それで実質ホスト業界を実質干されてもーて

ターッ! タ―ッ!

夢が断たれたバイ!


いやあ、東京は怖かトコですよ。

東京砂漠とはよう言うたモンやと思った、うん思った。


それで先週キャッチに転職したんよ。

ああ仕事はすぐマスターしたバイ。

おり、男は仕事に命ば懸けるべきやと思っちょるから。

兎に角、そこら辺を歩いてるオッサンとか兄ちゃんとかどんどん店に放り込んで

いやあ、周り見渡してもおりより真面目なキャッチはおらんかったね。

そらあそうバイ。

男が仕事をする時にはテッペン以外見よったらアカンよ?


やのにね?

たまたま揉めてバチコーンした相手がヤクザか何かやったみたいで。

ターッ! タ―ッ!

またクビ。

それが昨日の話。

うん所謂無職やね。


違うんよー。

東京の人間ってみんなシュッとした恰好しちょるから

誰がヤクザで誰がカタギか見分け…  

うーん、おりには無理。


嘘やと思ったら一回北九州来てみんしゃい。

組の人は見たらわかるから。

そらあキミ、カタギさんに迷惑掛けへんようによ。

東京の人間はその辺の配慮が欠けちょるね。

そこは改善していくべきやと思う、うん思う。


ああ、北九州で何かあったらおりの名前出してくれていいから。

おりの直属の先輩が凄か人で工藤会の盃貰ってた時期もある人。

そんなんもあっておりも名前通っとるから安心してくれてええよ。


今はこんなんやけどね。

おり必ずビッグになって故郷に錦を飾るバイ!

そん時はリン君も招待してあげるから。

中州で豪遊させちゃるけん、期待しとって♪


おっ、デコスケがきおったバイ。

ああ、真っすぐおりに向かってきちょる。

いやあ、どの件やろうね?

ボコボコーしたら動かんよーになった相手も何人かおるし。

どの件か見当もつかんバイ。

東京の人はすーぐに被害届出すからね。

そこら辺非常識やわぁ。

デコスケがおりを逮捕する手間も税金から支払われちょるって自覚がないわ。

もっと国民一人一人が意識持たな、日本は大変なことになってしまうよ?


え? 逃げるわけなかよ?

男が困難から逃げてどうするんよ。


じゃあな、ワッパ嵌められてくるわ♪

ここからはお互いの道を行こうや。


リン君!!

男と男の約束バイ!


いつかまた、上で会おうや(ニカッ)!!」





そりゃあ、こんな人の吹き溜まりになる街なら

ゲーセンにパンチングマシーンも並ぶよな。

きっと需要あるんだろう。

やはり暴力は駄目だな。

うん、神聖教の教えにある通りだよ。

暴力は何も産まない。




逮捕者が出た事で、反対側の外国人グループが喝采している。

youtuberか何かだろうか?

撮影機材や照明に囲まれたガイジンさんがカメラに向かって熱く語ってる。

まあ確かに、この広場に居る奴はみんなキャラ濃いから絵になるんだろう。

ざっと見渡して…


参ったな。

マトモなのは俺くらいしか居ないぞ。

これ、日本のイメージとか下がるんじゃないのか?

頼むぞー、みんなカメラの前くらいはおとなしくしててくれよな。





  「ぎゃはは、アタシセックスしに来ましたからぁ!

   セ―ックス! セ―ックス!

   フリーマ●コ!! ぎゃはは!!

   うわっセキュリティのお兄さん超好み!

   抱いてーーー! 抱いてーーーー!

   ファックミー! ファックミー!!」




  「アーイス好き好き!

  葉ーっぱ好き好き!

  たーいま好き好…  

  ちょ、オマっw流れ止めるなよぉww」




  「あー、また円光ツアー来てるw

  ほら、あそこ。 おぢ軍団ww

  モジモジしてるーーwww

  おいセーアン! 仕事しろセーアンwww」




  「俺、東横の王になるから!

  うん宣言!

  ラッパーにもなるし!

  Hey!!

  このカラーコーン落ちてましたー。

  落ちてたから俺のモンww」




youtuberは大はしゃぎで撮影を続けている。

俺、あっちこそ逮捕するべきだと思うんだけどな。




ん?

こんな真夜中なのにどんどん増えてないか?

しかもガラがどんどん悪くなって来てるぞ?



その後も何人かの顔に派手なメイクをした男女から話し掛けられる。

顔にピアスしてる奴に言われたくないのだが、俺の傷は余程coolらしい。




「えー、その傷羨ましいよー。

私なんか接客業だから、リスカ以外出来ないのよ。

りょかーん♪

普段は着物きてるよー♪


ほら、リスカー。

えへへ♪


いや、東横初めてだよ。

うん栃木。

明後日には帰らなきゃ♪


Line教えてよ。

え!?

嘘、スマホ持ってないの!?

うわっ、住所もないんだ。


…カッコいい。

ううん、ホントだよ♪

何か、新宿って感じがする♪

一匹狼ってふいんき♪


東横来て良かったぁ。

うん、居場所って感じがする♪


地元、本当に何もないトコで。

私、こういう趣味だから滅茶苦茶浮いてて

中学の友達みんな結婚しちゃって…


ああ、やっぱり歌舞伎町っていいなあ。

何かね、大きなものの一部になれた気がする♪

やっぱりここにしよ♪

うん、ここが私の居場所なんだ♪


旅館?

やめる。

ほら、Line。

《や、め、ま、す》っと。

はい退職カンリョー。

これから仲良くしてね、リン君♪ (にぱっ)」




向こうの方で喧嘩が始まったのでyoutuber達は満面の笑みでカメラを反転させる。

ヤクザ? ホスト?  理由はよくわからないが、縄張り?か何かの違反があったらしい。


刺された人間も居るらしく、機材を持ったガイジンさん達は「Yes♪」を連呼して喜んでる。

幾ら円安とは言えあの人数で来日しようと思えば莫大な経費が掛かるだろうからな。

そりゃあ撮れ高は嬉しいだろう。




…俺は悟る。

全ての元凶は暴力なのだ。

身近な問題を何でも暴力で解決しようとする、その低劣な精神性が貧困の源になっている。


全ての地球人に訴えたい。

その手は人を殴るためのものか?

違うだろ?


その手は殴る為ではなく繋ぐ為にある!


俺の道。

決まったな。

暴力の根絶。


誰も傷付かない優しい世界を作りたい!

それが俺の、父さんの、神聖教団の開祖達の、いや全ての人々の願いだから。



  「エリオ君が刺されたーーーーー!!!!」

  「うっそ来週、周年じゃん!!」

  「#推しがピンチ」

  「え? じゃあツケとか払わなくてOK?」

  「いやーーん、カッコいい」

  「ホスト同士の喧嘩とかマジ尊い」

  「ギャー、エリオ様ーーーー!!!???」

  「あーんエリ様死んじゃった(ぴえん)」

  「ちょっと誰か救急車呼びなさいよ!」

  「これアフロ田中パターンだわ。 誰も通報してなさそう。」

  「またあのウンコがネタにするんじゃないの!」

  「アイツまぢで死んで欲しいわ」

  「嘘!? エリオ君死んだ?」

  「シネウンコ、さっき見かけたよ?」

  「えーっイケメン死ぬのつらいー!」

  「おぢの命を千匹捧げて蘇生しなきゃ!」

  「エリオーーーーーー!!!」



ホストの人が死んだ?

殺人事件?

ここからじゃよくわからないが、撮影のガイジンさん達が菩薩の笑顔で《来た甲斐があったぜ!》という雰囲気を出しているので、かなりの大事になってるんだろう。




俺が首を伸ばしてカメラクルーを見ていると女に話し掛けられる。

歯のギザギザしたやたら背の高い女だ。



「チューッス。」



『こんばんは。』



「カメラ、気になるっスか?」



『いや、みんなこの状況でよくカメラ回せるなって。』



「ウ↑チ↓も凸したいんスけどねー。

今行ったら、あの喧嘩の原因がアタシの配信ってバレるんスよねえ。」



『え?

君も動画撮ってるの?』



「えへへー、ウ↑チ↓結構ネットでは有名人なんスよ。

GAFA全てから垢BANされるくらいには。

本当はつべでやりたいんすけど、何をどうやってもチャンネル設定出来なくて


あ! 聞いて下さいよー!

登録者20万行ったアカウントが削除されたんスよ。

ひでーひでー。

収益270万くらい没収されちまったッス!


今はTikTokとふわっちだけッス。

それで投げ銭乞食。

ふわっちも警告来てるからなー、マジでBANされる1秒前ッスよ。


あ、チャンネル登録オナシャス。

交換すんのLineでいいっスか?

インスタ永久BANされちゃったんで。」



『あ、ゴメン。

俺、スマホ持って無いんだ。』



「ぴえーん。

フラれたッス。」



『いや、マジで。

俺、本当にスマホ持って無いんだ。』



「ホントっスかぁ~~↑

イケてるオトコノヒトはぁ。

ウ↑チ↓に対しては全員スマホ無くしたって言うんですよ。

チー牛とか弱おぢはキモ顔全開で寄って来るんスけど。」



『ホントホント。

銀行口座も住所も無いから。

周りの人にすっごく気を遣わせちゃってる。』



「え〜、うっそだぁ!

その割に余裕満々オーラ出てるじゃないッスか!

ひょっとしていいトコのボンボンか何かっスか?」



『いや、普通に福祉家庭。


…別に余裕とかじゃないけどさぁ。

男って今何を持ってるか、じゃなくて。

これから何を獲得していくか、だろ?』



「う、うおおお!!

なんかカッコいいッス!!!」



『ありがと。

スマホ買ったら連絡先教えるよ。』



「え、ちょ嬉しい…♥


か、彼女さんとか居るんですか?」



『えっと。

たまに家に行かせて貰う相手とか居るんだけど。

アレ、彼女って言うかお姑さんだしな。』



「え!? 姑?

結婚してるんスか?」



『あ、いや。

結婚はしてたんだけど


俺の勝手で相手の子を置き去りにしちゃって。

皆からは結構怒られて…

もう逢う事はないだろ、距離的にも。


姑さんだけが東京に来てるから

ちょくちょく顔は出してる。』



「いや〜ん♡

何かドラマチックでカッコいい♥

顔の傷も気合入ってるし、ヤバ♥

ウ↑チ↓まぢで惚れそう…


ねえ、繋ぎでいいから…

付き合ってくれたり…  駄目っスか?」



『え!?

と、突然だなあ。』



「駄目っスか?」



『あ、いや。

俺、そんな風に女子から言われたこと無いから

ちょっと驚いちゃって。』



「嘘だぁ。

何か妙に女をあしらい慣れてますよー?」



『違う違う。

金目当ての、そういう売春みたいなハニトラみたいな連中は寄って来たことあるけど。

別に俺の魅力って訳じゃないし。』



「あははw

やっぱりボンボンじゃないッスか♪」



『一時的にカネに困らない時期があっただけ。

今は全然。』



「ウ↑チ↓施設育ちだから分からないんスけど。

金持ちの人がカネなくなるとキツいっスか?」



施設、か。

そんな顔してるよな。

ふと。

孤児支援に全てを捧げていたロメオ・バルトロの陰気な顔を思い出す。

そっか、ああいう大人が居るから、俺やこの子みたいな人間が何とか生き延びれるんだよな。



『そりゃ不便だけど。

男なんだからまた這い上がればいいだけじゃん。』



「うおーうおー

まぢ名言きたッス。

うおっやばっマヂマンヂ惚れたッス。


…ウ↑チ↓と付き合う話、駄目っスか?

歌舞伎町に居る間だけでも…

カノジョにしてくれたら嬉しいッス。」



『俺、彼女とか居たことないから

よく分からんのだけど。

まあ、今だけなら。

何かの力になるよ。』



「う、嬉しいッス!!!!

あ、ヤバい!!

うおーうおー!

人生初彼ピ来たッス。


あ、ヤバ…

幸せ過ぎて涙が出て来た。


スミマセン!

ダーリン様!

付き合う以上は例え一夜の夢でも女としてのケジメを付けます!


今から交際宣言配信しますんで。

ちょっと見守ってて下さいッス。


あ、後ろからラヴいハグしてくれたら嬉しいッス。


はうううううう!!!!

じ・あ゛・わ゛・ぜ・え゛~!!!


はひゅっ! はひゅっ!

イクっ! 幸せ過ぎて脳が焼かれる!!!

あ、愛しゃれてりゅ実感ありゅ!!!

のうみしょアへ顔ダブルピースしちゃうよおお!!!!


あ、ちなみにダーリン様、もう配信始まってますから♡


タイトルはぁ♪

《ルナルナからの大切なお知らせ♪》

でぇ~す♥」



え?

動画配信ってそんなに簡単に始められるものなのか?

じゃあ、後ろのガイジン馬鹿みたいじゃん。



「はぁ〜い、皆しゃまコンチャッチャ♥

東横の堕天使、皆の心のオナホール!

ルナルナ@純愛でぇーす。

養分の皆ぁ~

こんな時間に配信しちゃってゴメンさない♪

でもどーせ不様にシコってたんッスよね?


はい、シコってた人は罰としてルナルナに投げ銭~♡

はい、いつもバラだけ投げてくれるお兄さん

ありがとねー。

アーチクショー同接のびねーな。


あ、また帽子投げてきやがった!

帽子やめーやって

まあいいや。


はーい、今日わぁ

ルナルナのぉ

重大発表しまーす♥


はい、先程からキモおぢのキモコメントが滝のよーに流れてますが!


ウ↑チ↓はぁ♪

とうとう彼ピ出来ちゃいましたー♥

今後ろでハグしてくれてるお兄さんで~す♥

きゃはっ♥


うおっ怒りの薔薇大量投下ww

おぢ激怒wおぢ激怒ww


まあね、そういう訳でね♡

配信者として高みを目指していた…ウ↑チ↓ですが!


専業カノジョに転向する事を決意しましたー

近いうちに!

メス族の最高カーストである専業主婦にクラスチェンジする予定でーす♥

でーすでーすでーす♥

いえー、ドンドンぱふぱふー


今まで貢いでくれた養分のみんなー。

ありがとねー♥


はい、捨て台詞御馳走様です♥

待って! まだ切らないで!

推し変する前に、最後に投げ銭!

最後に投げ銭!


うおっ!

ライオンっ!?

うひゃひゃ!

アンタ最高の養分でしたよー。


えっとぉ

そういう訳でぇ♡

…ウ↑チ↓わぁ♡

これからわぁ♡

配信者を引退してぇ♡

カップル配信者になりまぁす♥


キミタチ糞養分どもわぁ♡

ウ↑チ↓とのワンチャン狙ってた糞チー牛共わぁ♡

ウ↑チ↓が後ろ足で掛けてあげた砂を被りながらぁ♡

惨めに悔し泣きしながらシコッといて下さぁあ↑い♡

ちゃーんとチギュチギュって泣けよーーーwww

それじゃあなあww

風邪引くなよww

これからは羊水腐ったBBAの配信でも見とけww


それじゃあ配信終わり♥

ルナルナルナルナ、さようルナー♥


ぎゃはははははは♥」



俺、配信文化全然わからないんだけど。

この女が結構なファン抱えてて驚いた。

いや、今早朝だろ?

こんな時間にスマホとか見るものなのか?

スマホ持ったこと無いからよくわからんなあ。



「ダーリン様!

ケジメ配信しておきましたッス!

いやあ、引退なんてある日突然ッスね♡」


『え?

配信辞めるの?

結構人気あるんじゃないの?』



「いやいや、女はですね?

本命にのみマンツーマンで配信したい生き物なんスよ!

理屈や損得じゃないッス!!」



『はええ。

ゴメンな、俺スマホ持ったことなくてさ。

適切なアドバイスしてやれないわ。』



「あーーん♡

ダーリン様の小並感対応ッ…  ちゅき♥」



『まあ、俺の所為で困ったことになったら

流石に責任取るわ。』



「え!?

せ、責任!?

けけけけけけっ結婚!?」



『いや、俺もやる事多いし

周りゴタゴタしてるから籍とか入れるのは止めた方がいいと思うけど。

まあ、生活困らんくらいには何とかするわ。』



「そそそ、それって実質結婚じゃないですかー。」



『まあ、配信の仕組みとか全然わかってないから

的外れなこと言うかもだけど。

今の客は大切にして、えっとそのアカウント?

一応温存しとくようにな。』



「はいっしゅ!」



『でも凄いよな、ルナルナって君の名前?

ハンドルネームみたいなモン?

こんな早朝なのにファンがいっぱい見に来てて

正直、尊敬したわ。』



「あ! 本名ルナっス!

夜の色と書いてルナって読む最低DQNネームっすね。

勿論ウ↑チ↓を産んだ女はクソクソ糞嬢っス。」



『あ、俺リン。』



「うおーうおー

《リ》と《ル》で五十音順隣接してるじゃないっスか!!

って言うかダーリン様の本名がリンとかできすぎでしょ!

ウ↑チ↓も《ダー》に改名します!

運命!!  種死じゃない方のデスティニー感じるッス!!!」



『ごめん、俺世間知らずだから

ルナの言い回しわからない事が多いかもだけど

白けている訳じゃないから、あんまり気にしないで。』



「あ、このネタは糞氷河期とか糞ゆとりの下澄み陰キャオタクのネタなんで

分らない方がポイント高いッス。

今のところ、ダーリン様パーフェクトコミュニケーションッスよ!

種死じゃない方の運命の王子様ッス!!!!」



『多分褒めてくれてるんだな。

ありがと。』



「えへへー、ダーリン♥

ギューってして♪


あはぁ♡

ウ↑チ↓、ダーリン様になら殺されてもいいッス♥

寧ろ撲殺されたいッス♥」



『いや、女を殴る奴とか最低だろ。

そんなの俺が許さねーよ。』



「はにゃーーーん♥

ダーリン様カッコいいっしゅ♥

の、脳が焼かれる…

きんもちいぃ♡

護って護ってぇこの残酷な世界からダーリンが護ってぇ♡」



『俺の手の届く範囲でなら

護るよ。』



「あひーーーーーーーーーーん♡

ちゅきいいいっ♥

かっこいいいいいい♡


じゃ、じゃあウ↑チ↓も!

ダーリン様にカッコいい所見て貰います!

少しでも近いステージに居たいから♡」



『え?

ルナのカッコいいとこ?』



「ふっふっふー♥

実はですね?

ウ↑チ↓はですね?

垢BANされるまでは超大物youtuberだったんスよー。

瞬間最大風速ならテイラー・スウィフトとか大谷翔平にも勝ったことがあるッス!」



『あ、大谷知ってる。

友達もスイング研究してた。』



「これ、ウ↑チ↓が上げた動画じゃないのがムカつくスけど。

同じ動画いっぱい出て来るでしょ?

ベトナム勢とかナイジェリア勢がウ↑チ↓の動画パクリまくって本家主張しやがってるんですわ。

垢BANされてなきゃ、今頃大金持ちになれたのに!


あ、これこれ。

見て下さい!


これがウ↑チ↓の人生最高傑作!

おとわっかを倒した最強面白動画!!


《最愛の級友達がクラス転移しちゃいましたww》


です!!!」



『…あれ?

そのタイトル、最近どこかで聞いたぞ?』



「はっはっは!

そりゃあそうですよ!

何せおとわっかを倒した動画ッスから!


いやあ、ウ↑チ↓施設から学校通ってたじゃないっスか?

それでクラスの女共から滅茶苦茶差別されてて

何か犯罪者みたいな目で見られるんスよ!


それで学校にも殆ど通ってなくて

もうクラスの奴らには憎しみしかなくて

そのうち殺そうと思ってたんスよ。


そしたらねwww

バス事故www

社会見学中の全員行方不明wwwww

あはははははははははははははwwwwwwwww


もうねーーーwww

もうねーーーwww

あまりの悦びに全身でガッツポしましたよwww


うはははwww

アイツら全員大嫌いでしたからねww

それが纏めて死んでくれたんだからww


ん゛ん゛ん゛♪  ぎんもぢい゛い゛♥

生きててよかった!!!!

人生辛いことばっかりだったけど!!!

生ぎててよがった!!!!


もうねー

神様信じますわ。

絶対神様どこかに居ますわ。

もうねーもうねー

号泣しながら天に祈りましたもん。


ドンキの家電コーナーで行方不明のニュース見ながらね?

床にゴロゴロ転がって号泣しながら神に感謝しましたもん!!!


あああ♪

ウ↑チ↓幸せっスぅ♪


あー、やっべ

思い出して涙出て来た。

いやー、日頃の行いを神様が見てくれてたんスかね。


糞学校の糞ゴミカス共がピンポイントで死んでくれて

これで死体が東京湾に浮かんでくれたら最高なんスけどね。


うみほたるの真ん中辺りに落ちたんスかね?

海流によっては上がらないケースも多いらしいッスから。


あー、あのゴミカス共の死に顔が見たいわー。

どんな死に方したんスかねww

ウ↑チ↓としては1秒でも長く苦しんで、恐怖と絶望で豚みたいに泣き喚いて死んでてくれたら

ポイント高いんスけどねー。


あー、誰かアイツらの死ぬところ動画に撮ってくれてねーかな。

50万までなら賞金出すんスけどね。

ダークウェブでもかなり念入りに漁ったんすけど

あの糞カス共の死に顔はまだ未発見なんスよー。

あー、画竜点睛!!


いや、それでね?

必死に死に顔探している間にゴミ共の個人情報が集まったんで。

折角ならウ↑チ↓の養分にしなきゃって思ってぇ♡


追悼動画を作っちゃったんですよーwwwwwwww

うわーーーーーーはははははは♥


いやー、力作っスよ。

ウ↑チ↓1人で作りましたからねぇ

徹夜でスマホカチカチして。

そりゃおとわっかに勝つだろ、と♪

なははははーーーーwww


あ、ダーリン様

再生しますね。

ウ↑チ↓のラヴラヴ解説付きでお楽しみ下さいね。


はいスタート!


最愛の級友達がクラス転移しちゃいましたあああww

はい日テレさんの素材をそのままパクりました。

このね?

冒頭ニュース番組風にしたのは正解でした!

権威性って奴でしょうか?

離脱率が滅茶苦茶抑えられたんですよ。


それで徐々にフェードインする面白ミュージックww

っぷw ぷぷw

そしてw 

鮮やかに映し出されるクラスメート全員の個人情報ww

いやー、いい葬式になったわーww


あ、コイツキモイ鉄オタ。

居るんスよクラスにww

変な鉄道のTシャツ着てましたww


あ、コイツ関西から来たアニオタww

コイツの両親が乗ってる車がww

キモエロ痛車www

教育の敗北ーーーwwww


あ、コイツラ双子。

何か共依存っぽいメス共。

どっちか殺したら残りも死ぬか発狂するかするんじゃないッスかね?


あ、チビロリww ソダww

コイツムカつくんで凌辱系のエロコラ作りまくってバラ撒きましたww

いやー、いい事すると清々しいッスよねー。

エロコラ界に大量のフリー素材提供しちゃいましたキャハッww


…ワダ。

コイツ、マジでムカつく。

コイツだけは自分の手で殺したかったっスわ。

何様だか知らないけど仲間仲間って…


ぁ―――ムカつくッ!!!!!


思い出しただけで反吐が出ますね。




あ、スンマセンスンマセンw

ちょっと感情入っちゃいましたwww

気分切り替えましょww



あ、次のキャラが爆笑なんスよwww

いや、ぶっちゃけただの陰キャ野郎なんスけどww

妙に筆が乗っちゃってwww

実質動画のサビ部分になっちゃいましたねーw


ほら、ダーリン見てみて!!!


トイチwwwww


コイツがこの動画の爆笑王なんスよwwww

うははははww


キモい奴って思ってたんスけど

このトイチだけには頭が上がりませんね。

動画バズらせてくれた大功労者ッスから!!!


いやあ、それまでコイツの顔キモくてキモくて

生理的に駄目だったんスけど。

これだけバズらせてくれたら


なーんか、この系統の顔が妙にカッコよく見えちゃってww

だからぁ、同じ系統の顔のダーリン様にもぉ♡

一目ぼれです♪


あ、見てみて

ここから変調してトイチに捧げる鎮魂歌(笑)に繋がりますからwww


あ、ここからです!



《隣の席のトイチ君♪

モデルガンで猫とか小学生とか撃ってそーな奴ぅwww

キモくて暗い癖にやたらとハキハキ喋る奴ぅwwww

そのスぺックのどこから自己肯定感湧いて来るのか不思議ぃwww

背筋を伸ばして必死にお勉強www 放課後も図書室ww

いーしき高高、あーたま悪悪www

折角死んでくれたのにー♪

惨めに死んでくれたのにー♪

キミが低スぺ過ぎたからwww

ウ↑チ↓の世界ランクは上がりませんでしたーーwww

でしたーーーww

でしたーーーww

コイツに愛着ないのでーww

コイツの戒名、コメ欄で募集しまーすwww》



ふふふー。

どうですか?

ダーリン様♪


このトイチ君がねえ

数字稼いでくれました。

やっぱり隣の席ってことで

コイツのお笑いポイントが見えてたのが勝因っスかね。

トイチの箇所編集している時はねー。

流石に自覚してました。

《あ、笑の神が降臨した》

ってね?



もうねー。

このトイチ君だけには足を向けて眠れませんわ。

ウ↑チ↓の人生の最高傑作養分ッス。


いやー、コイツにだけはねー。

もしも生きて逢えたら、焼肉食べ放題くらいは喰わせてやらにゃあ

バランス取れませんわ。


いやー、トイチ君

生きてた時は、如何にも動物虐待してそうな糞ブサキモ陰キャと思って軽蔑してたんスけど。


こーんなに面白い奴だったんスねー。

いやー、折角隣同士の席なんだから、少しは話しておけば良かったッス。

いやー、机の700円パクっちゃって悪いことしたッス~。

いやー、今更言えたことじゃないんスけど

このトイチって奴だけには奇妙な友情を感じるてるんス。


ムシのいい話っスけど。

コイツだけは、また逢えたら嬉しいッスねぇ。」




確かに動画は力作だった。

全クラスメイトを満遍なく侮辱し、御丁寧にも家族や自宅まで晒していた。

特に同性に対する憎悪は相当なもので

《どんな手を使ってもSM凌辱系のデジタルタトゥーを末代まで刻み込んでやろう》

という執念を感じた。



「いやー、こうして改めて最後まで通して見てみると

トイチが突出し過ぎていて、バランス悪いッスね。

困るんスよねー、弱小球団で1人だけ大車輪されると。

エンゼルスかって話っすよwww」



『…トイチ目立ってたな。』



「でしょ!でしょ!

アレは才能あるっすわぁ。

もしも再び出会えたら

彼には惜しみない賛辞を贈りたいッスね。

トイチよ、オマエがナンバーワンだってね♪」



『そうか、そりゃあありがとよ。』



「ふえ?」



俺は掌で頬の傷を隠す。



「あー、ダーリン様って傷を隠すと印象変わりますねー。

んー?

誰かに似てるって言われませんか?

どこかで見たような…」



『…俺が、遠市だ。』



「ほえ?」



ドガアアアアアアア!!!!!



「ぶええええ!!!!!???」



ドタ――――ン!!!!



『…オマエだったのか。

散々好き勝手やりやがって…

御丁寧に全世界に個人情報バラマキやがって!!』



ドゴオオ!!!



「ごええええ!!!」



  「ん?  喧嘩?」

  「別れ話?」

  「DV?」

  「止める?」

  「でも殴られてんのシネウンコだし。」

  「あ! 本当だ♪」



『この拳は平原の分だ!!!!』



バキイイイイイ!!!!



「おばあああ!!!?」



   「何、喧嘩?」

   「あ、シネウンコがボコられてる♪」

   「マジww  やった♪」

   「あれだけ好き勝手やってたら恨み買うよねー♥」

 

   「まゅ、シネウンコが殴られてるよ!」


   「え! まぢ♪  いやーん嬉しい♥

   さゆっち教えてくれてありがとー♥」



『そしてこの痛みは平原の痛みだ!!!!』



バシイイイイイ!!!



「ぶるぐえええええええ!!!!」



   「あー♪ 見て見てシネウンコがボコられてるww」

   「うおっw 最高やんww」

   「殴ってる人誰?」

   「おらー♪ 殺せ♪」

   「殺せ♥」

   「殺せ♪」

   「今日はいい朝になったわ♥」

   「朝日も結構気持ちいいよね♥」


   「あ、さゆっち。

   まゅ、トゥンクした♪」


   「え!? アレは駄目だよ!?」



『そしてこれは平原の分だ!!!!』



ドギャアアアアア!!!



「がはああああ!!!!」



   「ああ、凄い♥

   殴ってる男の人カッコいい♥

   まゅの王子様かも♥

   シネウンコを殺してくれたら、全てを捧げてもいい♥」



   「ちょっと、まゅ!

   女を殴る男だけはやめときな!

   結局、矛先がアンタに向くよ!」



   「さゆっちウルサイぃ。

   だって傷の人カッコいいモン。」



『ふーふー。


後、えっと、これが金本君とかその他大勢の…

まあ左手で。』



ボカッ。



「…うぇ。」



少し呼吸を整えてから、改めて殴り殺そうと思ったのだが

セキュリティ(?)のお兄さん達に羽交い絞めにされて、近くにいたおまわりさんに引き渡され、乱暴にパトカーに押し込められた。

ドアの部分に頭を激しくぶつけたが、血は少ししか出なかった。


身体検査をされた後。

所持品を押収されて新宿警察署の留置所に入れられた。


警察も最初はただの暴行犯への態度だったのだが、俺のリュックから大量の新札が出て来たことで完全に無表情徹底調査モードに移行した。


それまで俺に色々言っていた警官達も押し黙ってしまい、逆に俺から何を話し掛けても全て無視され、警戒と猜疑の目で睨みつけて来るだけだった。




「オマエ、偽札関連?

運び屋?」



留置場区画に入れられる寸前、1人の老刑事が耳元でボソっと呟く。



『え? 偽札?』



「…佐藤!

調べは俺が担当するから!」



  「はい、警部!」



『あの。』



「今日は先約があるから。

オマエの取り調べは明日にずれ込む。

…それまで、俺に言うべき事を整理しておけ。」



徹夜で疲れていたので、熟睡出来た。

同室の5人が全員外国人、中国人?ベトナム人?である事に気付いたのは目が覚めてからだった。



「官弁」と呼ばれる留置場で支給される弁当は正直マズかったが、そのマズさが同室の外国人とのコミュニケーションツールになったのは幸いだった。



俺と外国人達は顔を合わせて《マズいよねw》というジェスチャーをして笑い合った。


ニカッ!

【名前】


遠市 †まぢ闇† 厘




【職業】


詐欺師




【称号】


サイコキラー




【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)


《LV》  3

《HP》  ?

《MP》  ?

《力》  女と小動物なら殴れる

《速度》 小走り不可

《器用》 使えない先輩

《魔力》 ?

《知性》 ?

《精神》 女しか殴れない屑

《幸運》 的盧


《経験》 30 (仮定)



※キョンの経験値を1と仮定

※ロードキルの有効性確認済




【スキル】


「複利」 


※日利3%


新札・新貨幣しか支払われない可能性高し、要検証。




【所持金】


×99万3524円


※偽札疑惑により全額押収。




【所持品】


jet病みパーカー

エモやんシャツ

エモやんデニム

エモやんシューズ

エモやんリュック

エモやんアンダーシャツ 

寺之庄コインケース

奇跡箱           




【約束】


 古屋正興     「異世界に飛ばす」

 飯田清麿     「結婚式への出席。」

〇         「同年代の友達を作る」

 後藤響      「今度居酒屋に付き合う(但しワリカン)」

 江本昴流     「後藤響を護る。」

×弓長真姫     「二度と女性を殴らない」

 寺之庄煕規    「今度都内でメシでも行く」

×森芙美香     「我ら三人、生まれ(拒否)」

 中矢遼介     「ホストになったら遼介派に加入する」

 堀田源      「トイレコインの使い方を皆に教える。」

 山田典弘     「一緒にイケてる動画を撮る」

 楢崎龍虎     「いつかまた、上で会う!」

×鷹見夜色     「俺が護る」


 ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹を喰わせてやる。」

          「王国の酒を飲ませてやる。」

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― 新着の感想 ―
おー。。。 ですてぃにー
そういえば主人公がわざわざ東横に行った理由ってなんだっけ、と思ったので読み返していました。 やはり人生経験として1回はちゃんと見ておく(そのコミュニティの数人と会話をしてみる)べきですかね。どうせ死ん…
[一言] やば
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