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【転移13日目】 所持金61万4000ウェン 「要は紐の丈夫なバンジージャンプだろ?」

『レベリングがしたいんですけど、何か必勝法ありますか?』



早朝、目が覚めた俺は朝食も取らずに、開店準備中の武器屋に話し掛けた。



「就業時間前に仕事の話するなよぉ。」



心底嫌そうな顔で拒絶されたので、店前で体育座りをして待つ。



「テメエ、バカヤロウ!

朝っぱらから営業妨害すんな!

邪魔だから入って来い!」



『スンマセン。』



互いにまだ眠いので、あくびをしながら雑談する。



「オマエ、何レベルよ?」



『6レベルです。』



「弱。」



『弱すぎて追放されたくらいですから。』



「何レベルまで上げたいの?」



『まずは10レベルです!』



日利1割なら、カネは加速度的に溜まる。

ニコニコスキームを使えば日収10万ウェン越えである。



「これ、男なら頭の中に叩き込んでおくべき数字なんだけどな?


ラビット系5ポイント

リザード系10ポイント

ディア系20ポイント

ボア系40ポイント

ウルフ系50ポイント

ベア系100ポイント


これが経験値の目安なんだ。

ちなみに、次のレベルまで後どれくらい?」



『161ポイントです。』



「農村に泊まり込んで、猪鹿狩りに混ぜて貰うのが一番無難だな。

余った時間でホーンラビットの駆除。

俺ならそうやってレベル7を目指す。」



『ボアだのディアだのって、炸裂弾で倒せますか?』



「倒せるよ。

元々、楽に猪鹿を狩る為の道具だからな。」



『じゃあ、それで。』



「まあ、最後まで聞けよ。

一発で倒せなかった場合。

アイツらは興奮して暴れ回るんだぜ?」



『…。』



「手負いの猪は大木を軽々とへし折ってくる。

オマエ、止める自信あるか?」



『…いえ。

俺なんて、一瞬で跳ね飛ばされて終わりだと思います。』



「そうだ。

アイツら相手に転倒したら、そのまま首を噛み折られてオシマイだ。」



『うーん、やはりホーンラビットで我慢するべきか…』



「で、ここからが裏技。

レベリング用パーティーを募集する方法もある。」



『レベリング用ですか?』



「そう。

猪鹿に苦戦しないレベルのパーティーを雇用して

一緒に数日過ごさせて貰う。

無論、日当が必要になる。」



『日当の相場ってありますか?』



「裏技だから相場はない。

ただ、5万払えばそこそこ腕利きのベテランが喜んで付いて来てくれる。

ここで気を付けなきゃいけないのが、同じ所属団体から雇っちゃいけないってことだ。


ああ、つまりだな。

パーティーメンバー同士の結託を防止するんだ。

馬鹿正直に雇い主を鍛えてやるより、殺して奪った財産を山分けした方が楽に儲かるだろ?」



『剣呑ですね。』



「昔は、こんな話ザラだったんだぜ?

今なんか、相当お行儀が良くなった方だよ。


ああ、兎に角だ。

例えば農協から1名・冒険者ギルドから1名雇った場合。

彼ら同士が牽制し合ってくれる可能性が上がる。」



『じゃあ、10万で2名を…』



「言っとくけど。

そんな馬鹿な事をしたら、《カネをいっぱい持ってます》

って街中に知らせるようなものだぞ?

オマエは馬鹿じゃないよな?」



『パーティー募集も難しいですね。』



「だから、予め見知った相手と大規模クエストの現場でやるんだ。

1匹当たり歩合幾らでな。」



『あ、俺。

ホーンラビット狩りの時に何匹か制圧したのを譲って貰いました。』



「ほう、一匹幾ら払った?」



『あ、いえ。

討伐チップは譲ったんですけど…』



「そこなんだよなー。

制圧した状態でオマエを呼んだって事は…

暗に謝礼を期待してるってことだぜ。」



『あ!

そうだったんですね。

言ってくれれば払ったのに!』



「いやいや!

向こうからは言い出しにくいよ。

オマエは炸裂弾を自腹で持ち込んだし…

何より勅命クエストだからな。

勝手な価格提示したら、後で問題に発展する可能性だってある。


だから、こういう場合はアラン辺りに最初に内々で打診しておくんだ。

1匹辺り2000ウェン出してりゃ

村中の兎を殺させてくれるぞ?

農業地区は現金収入を得る手段が限られてるから。」



『ああ…

気が利きませんでした。』



「若いうちは仕方ないさ。

オマエも歳を取れば、だんだんそこら辺の呼吸が解ってくる。」



『炸裂弾10個下さい!』



「わかった。」



『他に討伐に有効な武器はありますか?』



「サスマタ…

使い易かったなら、また持って行くか?

7000ウェンだけど。」



『はい、それも貰います。』



「後なあ、農家は毒団子とかで狼を殺すけど。

部外者が毒団子を設置するのは違法だからなあ。」



『幾らしますか?』



「1個500ウェン。

但し、これを購入する場合は誓約書にサインして貰う。

理由はわかるな?」



『悪用防止と事故発生時の責任所在の明確化ですね。』



「70点。」



『販売側への牽制の意味もあるんですか?』



「合格。

そりゃあそうだよな。

トラブルを防ぐなら供給ルートを監視するのが一番だ。

武器屋って結構縛りがキツイんだぜ?

ガチの許認可事業だからな。


俺も常に偉いさんの顔色を窺ってるんだ。

だから、オマエが王様肝煎の炸裂弾を多用してくれるのは嬉しい。」




==========================


【所持金】


84万9100ウェン

  ↓

78万9100ウェン



※ゴードン武器店にて商品6万ウェン分支払


炸裂弾5万ウェン分購入 (1個5000ウェンを10個)

サスマタ1本7000ウェンで購入

毒団子3000ウェン分 (1個500ウェンを6個)


==========================



俺は店主に礼を述べて、農協に向かう。

何人か顔見知りが居たので、雑談で情報取集。


俺が危惧していた通り、狼の季節が始まってしまったらしい。

農業地区にはあまり近づかないのだが、街道沿いをウロウロしているとのこと。

今年は多いようなので、冒険者ギルドからも何人か支援要員が派遣されていた。

農協脇で整列している連中も居る。

50人程綺麗に並んでいるがあれも傭兵だろうか?


冒険者と名乗っているが、彼らの実態は傭兵そのものである。

先月まで対帝国戦線で哨戒業務に従事していた。

一応、帝国とは休戦中ではあるのだが、最前線では民兵や傭兵が入り乱れて普通に凄惨な殺し合いが続いている。

この世界にとって休戦とは《正規軍の休養期間》に過ぎない。

或いは地球もそうだったのかも知れないが、俺はミリタリーにそこまで精通していない。



不意に傭兵のお兄さんが演壇の様な台に上り


「我々は20分後街道を北上する! 

同行を希望する者が居たら玄関前に集合しておくこと」


と会館中に響く声で宣言する。


…怖い。

ガチの軍人さんって雰囲気だ。

俺を含めて3人だけ同行を志願する。

傭兵達は皆ピリピリした雰囲気なので、同行したがる者が少ない。

俺だって本当は嫌だよ。


俺の担当はウェーバー兵長という若い男だった。

年齢は俺と大して変わらなそうだが、妙に落ち着き払っていて威厳を感じる。



「ウェーバーであります。

農業地区で再点呼を行うまで自分が同行いたします。

もしも歩調が速いと感じたら申告お願いします。

勅命故に傭兵料は不要ですが、同意書へのサインは必須となります。

お読みになった上で、問題が無ければ御署名下さい。」



同意書の内容は

《部隊からの退去を宣告されたら従います》

《引率者様の指示に従います。》

《死んでも文句ありません》

的な文言だった。

要は紐の丈夫なバンジージャンプだろ?


農業地区までの移動は極めてスムーズ。

本職の傭兵の行軍速度に合わせるのは大変だったが、途中に見掛けた狼は全て一瞬で処分されていた。

とてもではないが、『経験値売って下さい』などと言い出せる雰囲気でない。

彼らにだって行軍ノルマはあり、今日中に到達すべきポイントは遥か遠い。


ウェーバー兵長は一度だけ上官の命令で抜剣して前方の茂みを索敵した。

「異常ありません!」

彼がそう叫ぶと隊列は元の速度に戻った。

俺が必死で歩いていると、兵長は何事も無かったような表情で俺の側に戻っていた。


農業地区で小休止、部隊長が名主代行(恐らくはアランの長兄)と何やら書類を交換していた。

その間、部隊点呼。

当然、欠員は無し。


俺はウェーバーに礼を述べ、農夫達へ挨拶に行こうとする。

その時、ほんの一瞬だけウェーバーが俺の耳元に顔を近づける。



「異世界の方。

そのまま聞いて下さい。

…もはや神託に神意はありません。」



『え?』



俺が驚いて振り向いた時にはウェーバー兵長は隊列に復してしまっていた。

ウェーバーはいつ知ったのだろう?

俺が地球から来たということを。

《…もはや神託に神意はありません。》

これ、明らかに異世界召喚に対する疑義だよな。

…平原に伝えておこう。




==========================



俺が農夫達へ挨拶回りをしていると、アランがこちらを見つけて駆け寄って来てくれる。



「やあ。

今日も炸裂弾の日かい?」



『ええ、頑張って駆除します。

というのは建前で、レベリングがしたいな、と。』



「はははw

レベルは若いうちに上げるべきだ。

歳をとってからレベルが上がると

《中年デビュー》とか言われて馬鹿にされるからねw」



『そうなんですねw

今のうちに上げておきます。』



「今、何レベル?」



『6です。』



「うーんw

君の年頃の男子なら

もう少し上げておくべきかな。

せめてレベル10は無いと男社会で格好が付かないからなあ。」



『精進します。

それでですね。

前にトドメを譲って貰ったんですけど。

謝礼を支払いそびれておりまして。

良かったら皆さんにお礼を言って回りたい、かなと。』



「うーん。

確かにそういう慣習はある。

私も若い頃、レベリングで謝礼を払ったり受け取ったりしてたから。

ただ、君の場合は炸裂弾持参だからなあ。

心の中で謝礼を欲しいと思ってても、流石に言い出しにくいよ。」



『ですので、今日はもう1匹2000ウェンを支払うつもりで銀貨に両替して参りました。

当然、討伐チップも肉もお譲ります。

10発炸裂弾を持参しましたので、それも積極的に使って頂けると助かります。』



「いやいやいや!

こっちはありがたいけど…

いいの?」



『猪鹿には1頭5000ウェンを支払います。』



「…ちょっと兄貴に相談させて貰っていい?」



『はい、ここにおります。』



30分程経過して、アランが兄の名主代行を伴ってやってくる。



「はじめまして。

アランの兄のトーマスだ。

現在、父の名主業務を代行している。


君が炸裂少年か…

弟から話を聞いて、興味は持っていた。」



『はじめまして!

遠市厘です!』



「どうしてそこまで必死にレベリングを行う?

かなりの費用を掛けていると聞いたが?」



『見せかけだけでも強くなりたいからです!!!』



「っふw

上手い答えだな。

少年に真顔でそんな事を言われては反対し辛いぞw」



『スミマセン。』



「謝らんでいい。

私も若い頃は少しでも自分を大きく見せようと必死だったからな。

謝礼金はありがたい。

今は1ウェンでも村人に持たせておきたいからな。

現金は幾ら用意してきた?」



『50万ウェンです!

但し、40万ウェンは金貨のままです!

こちらが崩した1000ウェン銀貨です。』



「本来、こんな大金を持ち歩いている事を叱責するべきなんだろうがな…

その意気やよし!

私から村人に布告しよう。」



『ありがとうございます!』



「わかっていると思うが…

この件は内々の話だ。

お互いにカネの流れは勘繰られたくないからな。

王宮の連中は農夫が現金を持つ事を嫌っているんだ。

離農を恐れているからな」



===============================



俺はトーマスさんに案内されて名主に挨拶。

名主は布団に伏せたままだったが、若者が農業地区の依頼を頻繁に請けている事が嬉しいらしく、何度も丁寧に礼を述べられた。


今回は全く動く気が無かったのだが、お調子者の一団が炸裂コールを始めたので1投目だけ投げさせて貰う。

何が可笑しいのか一同は一通り爆笑してから、獲物を制圧しに行ってくれた。

俺はアランさんと広場に座り、獲物を持って来た農夫に謝礼を支払っていく。

ただ、個別の歩合に関しては笑って受け取りを拒否する者もおり、当初の計算通りには渡せなかったのが少し意外だった。。



===============================



・ホーンラビット89匹×5経験値=445経験値

・ワイルドウルフ11匹×50経験値=550経験値

・レッドウルフ1匹×70経験値=70経験値

・ジャンピングディア1匹×30経験値=30経験値

・ワイルドボア2匹×40経験値=80経験値



※合計取得経験値 1175ポイント

※合計支払謝礼  23万3000ウェン



【ステータス】


《LV》  8


《HP》  (3/3)

《MP》  (1/1)


《腕力》 1

《速度》 2

《器用》 2

《魔力》 1

《知性》 2

《精神》 1

《幸運》 1


《経験》  1619


次のレベルまで残り931ポイント。



【スキル】


「複利」

 

※日利8%  

 下3桁切上



【所持金】


56万8000ウェン



===============================



最後は手が痛くて『誰かトドメを代わって下さい!』と涙ながらに群衆に訴える羽目になった。

高度なジョークと解釈されたのか、笑いの渦が起る。



「トイチ君w

君の今の発言、村の小噺として永く残るぞww」



トーマスさんや名主も窓の向こうから微笑んでいる。

喜んでくれたようで何よりだ。

身体中が泥だらけになり、疲れ果てたので一泊させて貰う。

明日、王都へ向かう者達と固まって移動する予定となった。



《4万6000ウェンの配当が支払われました。》



俺は農夫達と談笑し、勧められた盃をあおり、長椅子にもたれかかったまま

心地良い眠りについた。

【名前】


遠市厘



【職業】


宿屋のヒモ



【ステータス】


《LV》  8


《HP》  (3/3)

《MP》  (1/1)


《腕力》 1

《速度》 2

《器用》 2

《魔力》 1

《知性》 2

《精神》 1

《幸運》 1


《経験》 1749


本日利息 130

次のレベルまで残り801ポイント。


※レベル9到達まで合計2550ポイント必要




【スキル】


「複利」


※日利8%  

 下3桁切上



【所持金】


61万4000ウェン




【応援よろしくお願いします!】


 「面白かった!」

 「続きが気になる、読みたい!」

 「カネが欲しい!」


 と思ったら

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 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 何卒よろしくお願いいたします。


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