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【降臨4日目】 所持金1万4176円 「貧乏人のカス共に混じって泣く泣くサッカーを始めました。」

異世界と地球の最も大きな違い。


《自らのステータスを視認できるか否か。》


どうやら異世界人達には己の能力を可視化する技能が備わっているらしく、転移した俺もその技能を普通に使用する事が出来た。

この技能の有無こそが、2つの世界の文化を大きく異なるものにしている主因であると俺は推測する。


異世界人達が理知的に見えたのは、彼らがHP残量を含めた自らのステータスを目視出来てしまうからではないか?

俺はそう仮説立てている。


常に死が見えているから蛮勇が発揮されにくい。

幼い頃から自身が卓絶していない事を認識させられているから、分相応の最適解的な生き方を選択する。


それが俺の分析だ。




つまり、無事に地球に帰還しステータス確認手段を喪失した俺は、自分自身について常に分析・研究し続けなければならないのだ。

地球人にとっては当たり前の事なので特に悲観はない。




だがヒントはある。

今のところ、俺の【複利】は1%しか配当してくれていない。

(勿論、日利1%というのは法外極まりないチートだ。)

つまり地球帰還でレベルが1までリセットされた可能性が高い。


無論、地球ではレベル1縛りという可能性こそあるが。

もしも我々地球人が認識出来ていないだけでレベルが存在するとすれば工夫の余地はある。


さて、誰を殺すか…





「怖い怖い怖い!」



『え?』



「トイチ君、今のキミ 人殺しの目をしとったで!」



『気のせいではないですか?』



「いや!

明らかにヤバかった!

リトルの監督の次にキチガイ入っとった!」



『…もうリトルリーグ廃止しましょうよ。』



「トイチ君、それは浅はかやで。

野球という檻があるから、一定数の狂人を社会から隔離出来てるねん。

リトル廃止したら、甲子園のバックネット裏にタムロしとるようなオッサンが大量に野に放たれるねんで?」



『ああ、それは国益を著しく損ないますね。

ではリトルリーグは存続の方向で行きましょう。』




後藤の部屋で仮眠を取った俺達は、明け方に寝っ転がって取り留めのない話を続けていた。

本人は《ボロアパートの汚い部屋》と自嘲していたが、小奇麗なワンルームマンションである。

掃除も行き届いており非常に気持ちが良い。


『これ普通に女性を呼べるんじゃないですか?』


と言ったら照れたように笑っていた。




生年が同じだったので、後藤は親しみを持ってくれた。



「タメ年なんやから、タメ口利いてーな。」



『いや、生まれ年は同じなのですが…

事情があってコールドスリープ的な歳の取り方をしてしまいまして。』




「今度はコールドスリープ詐欺かいな!」




『実年齢は17なんですよ。

だから大学生の人って何となくお兄さんに感じてしまって…

その証拠に、ほら顔とか幼いでしょ?』




「いや、そのゴツイ傷が威圧感あり過ぎて…

最初年上の人かと思っとったわ。

話し方も妙に落ち着いとるし。」




『やっぱりこの傷目立ちますか?』




「うん。

今時ヤクザでもそんな奴はおらん。」




『参ったな。

ステルス的に生きて行く予定だったのですが。』




「あんな大それた詐欺を仕掛けておいて…

ステルスというのは…

流石にムシがええんちゃうやろか…?」




『あ、じゃあ後藤さんはもう止めときます?』




「待って!

今日も詐欺して!!」




『わかりました。

後藤さんには色々親切にして頂きましたし

東京にいる間は、極力後藤さんを優先して詐欺る事にします。』



「やったぜ!!」



『ただ、私も色々と予定や構想が詰まっておりまして…

必ずしも後藤さんだけに構う事が出来ない事だけはご了承下さい。』



「え?

どっか行くの?」



『お部屋にこれ以上お邪魔することも出来ないでしょう?』



「いや、キミはオモロイし。

別にいつまで居てくれても構わんのやで?」



『いやいや。

部屋の間取り的に、ここは明らかに単身者向け物件ですよね?

そんな場所で男2人が暮らせば近所迷惑になってしまいます。

恐らく入居規約的にも同居は禁止されている筈ですが…』




「おお、流石に高校で宅建取っただけの事はある。

言葉の重みが違うわ。


…で、でも女を連れ込んでる奴とかおるで?

正直羨ましいわ。」




『後藤さんイケメンなんだから誘えば来てくれるでしょ?』




「いや、俺大学入るまで野球しかしとらんかったし。

マジで男社会しか知らへんからな。

ファンの子はおってんけど、寮が死ぬほど厳しいトコやったし。

恥ずかしい話やけど、女との接し方がわからへんねん。」




『そこまで堂々と自己開示出来る男性は普通にモテるのでは?』




「キミ、ホンマにおだて上手やな。

詐欺師に失敗したら宗教団体作りーな。」




…俺、多分神聖教団に管理職側として籍が残ってるからな。

戒律的に分派は作れないんだよな。




「で?

これからどないするん?

所持金2000円って客観的に見たら人生詰んでるで?」



『しばらく身体を鍛えたいんですけど。

どこかで合法的に殺生が出来る場所、知りませんか?』



「うおー!

またトイチ君のキチガイスイッチが入ったーww」



『すみません。

私もあまり荒事は好まないのですが。』



「嘘つけw

滅茶苦茶好戦的な生き方しとるやんけw」




俺が物珍しそうな目で見ていた所為か、後藤がグローブを貸してくれる。

そのまま公園でキャッチボールを教えてくれることになった。




「キミ、野球初めてか?」



『ええ、子供の頃からやってみたかったんですけど…

近所にリトルもありましたし。』



「お、ええやん。

入らんかったん?」



『父とスポーツ用品店に行って…

野球道具のあまりの高さに驚いて…


これは金持ちがやるスポーツだな、と諦めました。』




「なるほど。

それでトイチ君は世界を呪うようになった、と。」




『ええ。

それで仕方なく貧乏人のカス共に混じって泣く泣くサッカーを始めました。』




「お、おう。

キミ、ある意味サッカー向きのええ性格しとるで。」




『でも、嫌々サッカーやってるのが周囲に伝わったみたいで

すぐに追放されましたね。

隣のグランドがリトルの練習場で、そっちばっかり見てたんですよ。』




あの時に付いた追放耐性が異世界で役に立つのだから、人生とはわからないものである。




「せやね。

俺が監督でも絶対に追放するわ。」




『いやあ、野球って素晴らしいですねえ。

このグローブ5万はするでしょ?』




「ミズノプロの投手用やからね。

定価で6万6000円や。

今はナンボするんか知らんけど。」




『はえー。

まさしく貴族のスポーツですね。』




「それウチのオトンに言ってやってくれ。

めっちゃ喜ぶわ。」




給水+朝食の意味も込めて後藤がプロテインを溶かしてくれたので、御相伴に預かる。




『あ、美味しい。』



「運動に優る調味料は無いからな。

今度、ゴロゴロしてる時に飲んでみ?

めっちゃマズいで。」




『勉強になります。』




「…キミ、ホンマに殺生がしたいんか?」




『え、はい。

出来れば纏まった数を。』




「害虫駆除とか、そういう求人やったら たまに見るで?」




『うーーん、虫かぁ。

もう少し大きな生き物を殺さないと経験にはならないなあ。』




「頼むから人間だけは殺さんとってくれよ?」




『いや、殺人なんてする訳ないじゃないですか。

日本の警察は優秀ですし。』




「怖い怖い怖い。

サイコパス特有の倫理が欠落した思考!」




『倫理は誰よりもあると思うんですけどねえ。』




「ブラック企業の社長は全員同じこと言っとるで?」




『世の為人の為に殺せる相手ってどこかにいませんか?』




「怖い怖い怖い。

この世で一番有害な思想やんけ。」




『すみません。

以前も友人に同じ指摘をされました。』





  「天国だとッ!?

   ふざけるな!!!!

   こんなやり方があるか!!!

   キサマはただの人殺しだ!!!!

   頭のおかしい人殺しだ!!!

   救済ってそういうことじゃないだろう!!

   社会ってそういうものじゃないだろう!!

   誰かの独善が世の中を変えちゃいけないんだよ!!

   皆の意見を擦り合わせながら一歩一歩改善するべきんだ!!

   世の中はッ!!!」





「その子こそが本物の友達や。

大切にせなアカンで。」




『…。』




「アカンで!」




『…善処します。』




荒木は必ずオーラロードを越える。

到着が俺より先か後かは知らんが…

進む道の先に必ず互いが存在するのだ。

避けては通れない。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




俺がシャワーを浴びている間、後藤が色々と検索してくれた。

我が国で合法的に殺生をする最短ルートは【狩猟】らしい。



「ほら、猪とか熊とかおるやん。

それが田んぼ荒らして田舎は困ってるみたいやで。」




…そっか。

異世界も地球も社会構造は大して変わらんな。




「えっと、この狩猟免許っていうもんを取ったらええんかな?

へえ、18から取れるんや。

俺らイケるやん!」




『あ、そっか。

戸籍の上では18になってたんだ。』




「で、でたー。

トイチ君お得意のコールドスリープ詐欺!」




『あーでも時間掛かりますね。

俺、今日にでも殺したいんですよ。


ちょっと急いでて。』




「怖い怖い怖い!

今、殺人鬼の目をしとったで!」




『この近所で殺せる生き物って居ないですかね?』




「ね、ネズミとか?」




『もっと大きい生き物じゃないと意味ないですね。』




「…の、野良猫?」




『もう少し大きい生き物を殺さないと意味ないですね。

抵抗能力を持ってない相手を殺しても経験は積めないと思うので。』




「うおー。

オトン・オカン・アニキ・バーチャン、ゴメン!!

俺は今、シリアルキラーの誕生を手助けしてしまっているーーー!!!


トイチ君、絶対人殺しするつもりやろ!」



『やだなー。

社会の要請でもいない限り、殺しなんかしませんよー。』




「うわー!

漫画とかの悪役が言うセリフーー!!!」




そう言いながら後藤は色々な漫画を見せてくれる。

驚いたことに大抵の悪役が俺と似たような発言をしていた。



「キミ、悪役やで!

絶対悪やで!」




『…いや、その見方は一方的ですよ。

現代日本の価値観が、俺やこれらの悪役の思想を否定する方向に捻じ曲げられているのではないでしょうか?

つまり、我々の思想こそが現代社会を救済するためのキーパーツであると逆説的に言える訳です。』




「ああ言えばこう言う奴ーー!!!

今風の悪役やで!!

令和!  

令和型の悪!」




正直、この男の存在は助かる。

これから俺が戦う相手は地球世論、いや地球の価値観そのものなのだ。

その為にも、市井の人々のごくごく一般的な感性を理解していなければならない。


…なるほど、現時点の俺は大量殺人鬼に映っている、と。

まあ異世界では似たようなムーブをしたし、そう思われても仕方がないだろう。

早めにレベルを上げて、直接手を汚さないように持って行かなければな。


親切な事に後藤は、その後も東京近郊で狩猟が出来そうな場所を熱心に探してくれた。




「まあ、ここから近い所で言えば千葉やな。」



『千葉?』



「千葉の南とか過疎ってるらしいからな。

絶滅したって思われてたイノシシも復活して猛威を振るっとるみたいやし。

キョンも爆増してるしな。」



『え? きょ、何?』



「ん? 知らんか?

キョンはたまにニュースになってるやろ。

動物園から逃げた鹿が繁殖して、今の千葉凄い事になっとるらしいで。」




『へえ。

その記事、見ていいですか?』




「おう、これや。

地元紙のインタビューやな。」




『ふむ、今から殺してきます』




「判断が早い!


電車賃掛かるんやで!?

今、検索したら蒲田から千葉まで950円掛かるって書いてるで!」




『大丈夫です。

2000円持ってるので。』




「キチガイかー!

小学生でも、もうちょっと考えるで!


メシとかどないするねん!」




『ふーむ。

そのキョンって食べれるんですかね?』




「台湾とかやったら高級食材として…


いや! そこやないねん!

キミ、冷静な顔してる癖に、行動の全てが行き当たりばったりやねん。

せめて正気に戻ってくれや!」




『自分じゃ本気のつもりなんですけどね。』




「正気を問われとる時に本気を語る奴ーー!

話のすり替えとか、そんなチャチなレベルやないー!」




そう言いながらも後藤はキョンの生息地や、千葉への電車賃を丁寧にメモ書きしてくれる。

動物愛護法、狩猟法なども即興で調べて厳しく注意してくる。

いやあ、ありがたい。




『貴方には感謝しかないです。

纏まった数を殺させてくれたら、後藤さんには特別に1%の利息をお支払いします。』



「うおっ、詐欺師が牙を剥き出しにしおった。」



『じゃあ、自粛しましょうか?』



「あ、毎日詐欺して欲しいです。」



『善処しますので、出来るだけ多く殺させて下さいね。』



「に、人間以外やったら手伝うから。

人間はアカンからな!」




やはり人間社会では人殺しは最大のタブーのようだ。

皆が俺に殺人を戒めて来る。


うむ、社会の改善を志す者として、真剣に受け止めなくてはならないな。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





結局、後藤は野球時代の後輩に頼んで車を出してくれた。

勿論謝礼はいずれ出世した時に支払う。



「エモやん、スマン!

寸志やけどお礼は払う。

何も言わずに千葉まで流してくれ。」



「ははは、響さーん

犯罪だけはやめとって下さいよー。」



「…。」



「いや、急に黙らんとって下さいよ

めっちゃビビるやないですか!」



「いつもゴメンな。」



「マジな顔で謝るのヤメテー。


で、そちらのトイチさんでしたっけ。

この方は、野球絡みではないんですよね?」



「うん、このトイチ君はサッカー。」



「へえ、響さんも大学入って付き合いの幅広がったやないですか。

昔はサッカー部と揉めまくっとったのに。」




「ちなみに本職の詐欺師やから気を付けてな。」




「えっ、怖っ!

トイチさん、やめて下さいよー。

怪我で引退しはったけど、響さんは俺らのヒーローなんですわ。

甲子園のスーパースターや。

それを穢されたくないんですわ。

頼みますよ!」




『あ、スミマセン。

やっぱり凄い人だったんですね。』




「野球とか見いひん人ですか?

響さんの名前で検索したら3年前のあの伝説の7者連続三振動画がソッコーで映し出されますよ。」




ゴメン。

その頃、入れ違いで魔王やってた。




「エモやん。

その話はもう終わりでええやん。」




「野手転向はしてくれへんのですか?

プロでもそんな人いっぱいいてはりますやん。

田辺サンとかも高校までは投手専やったんですよ。」




「俺はエースナンバーしか付けた事ないからな。

野手とか言われてもよくわからへんねん。」




まるで青春ドラマに出てきそうなジョック会話に感動しながら聞き入る俺にエモやんが振り返る。




「野球やってはらへん人には言いにくい事ですけど。

この人は本当に凄い人なんですよ。

同年代で検索して、こんなに動画とかニュースとかヒットする人おらんのです。


試しにトイチさんも自分の名前を検索してみて下さい。

一個でもカスったらええ方ですよ!


有名人やから特別扱いせえとは言いません。

ただ少しは配慮して欲しいんです。」




「うおっ!

負けた!

え!?

嘘お!?」



「?」



「エモやん!

俺、トイチ君に検索順位負けとる!」



「嘘ぉ!?」



あー、バレたか。




「こ、このお方は異世界転移してはるー!!」




「ど、どひゃー!!」




ネットの普及って、絶対に人類を駄目にしてるよな…




「いやあ、トイチ君。

水臭いでぇ。

キミが異世界帰りって知ってたら、焼き肉食べ放題でも連れて行ったのに。

ほら、エモやんもちゃんと謝れ。」




「先程は大変失礼致しました。

まさかトイチさんが異世界転移をされておられたとは露知らず。

たかがセンバツ出場如きでイキって申し訳御座いませんでした。」



『あ、いや。

甲子園行った人の方が普通に凄いと思いますよ?

エモやんさんは日本代表に選ばれた事もあるんですよね?

俺からしたら雲の上の人です。』



「いえいえいえ!

代表と言ってもUnder12止まりですし…

異世界帰りの方の前では、とてもとても。」



俺は例の異世界動画が悪意ある中傷に過ぎない事を伝えたが、2人に言わせればバズったという事実が何より重要らしい。



「でもトイチさんは《おとわっか》に勝ってるやないですか!」



『いや、俺…

その《おとわっか》って見たことないんですよ。』



「ほらー!

《おとわっか》を知らないなんて、異世界転移してた証拠やないですか!」



野球部の連中って人のアラを探す天才だな。

緻密なスポーツだから、嫌でもそうなって行くのだろうか。



『あの、エモやんさん。

あまり目立ちたくないので、異世界の話は控えて頂けませんか?』



「控えるも何も、トイチさんの名前入力した瞬間に《異世界》って候補が出てきますよ。」



それな。

異世界と違って地球ではネット網がある。

この違いを理解しなければ、地球平定など夢のまた夢であろう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



鴨川。

ここら辺は《外房》と言って文字通り房総半島の外側にあたるらしい。

ふーん、かなり景色がいいな。




「じゃあ高速降りたら道の駅に入りますよー。」



「スマンなー。

お詫びにエモやんの好きなプリキュアチョコ買ったるわ。」



「そのネタ、女の前では擦らんとって下さいよ!」



「ははは!

安心せい、女には毎晩ロマネコンティ飲みながらシャム猫撫でとるって言っといたるわ。 」



「それ、滅茶苦茶イタい奴ですやん!」



3人でわちゃわちゃと騒ぎながらプリキュア絵が入った菓子を貪った。


エモやんがアンダースローを披露してくれたのだが、それが死ぬ程格好いい。



「え?

トイチさん、今から野球始めたいんですか?」



『私もエモやんさんの様なアンダースローピッチャーになりたいのです。』



「いやー、このフォーム足腰に負担大きいですよ?」



『えー、それは困ったな。

実は最近まで車椅子生活で、今も歩くのが精一杯なんですよ。』



「まずはリハビリに専念して下さいー。」




3人で笑い合う。




「トイチ君!

おった!

キョンや!」



不意に後藤が声を押し殺して叫んだ。



「うわあ、響さん相変わらずエグい視力してますねー。

あんな所におる生きもん、見つけるとかヤバ過ぎでしょ。


トイチさん、マクドの看板の延長上です。

かなり距離ありますけど、2匹居るのわかります?」



エモやんが丁寧に指差してくれて、何とかそれらしいシルエットを確認する。

俺に言わせれば彼らの視力や注意力こそがチートである。


すぐに車に戻ってギリギリまで近づく。




「うおー、俺も実物は初めて見たわ。」



『へえー、本当に小さな鹿ですね。』




言いながら俺は、異世界の記憶を必死で手繰っていた。



《ホーンラビット》



俺が最初に倒した魔物。

見た目はややゴツい兎。

性格は凶暴で、額に大きな角がある。

非常に俊敏な生き物であり、全身のバネを活かした角攻撃は脅威であった。

俺の頬の傷もホーンラビットに付けられたものである。



そのホーンラビットの経験値は5ポイント。

レベル1から2への必要経験値が10だったので、あの時の俺は2匹殺して人生初レベルアップを遂げた。



さて、眼前のキョン。

想像以上に小柄である。

見た所、爪も牙も無い。


明らかに、ホーンラビットよりも格下の生物である。

こんな生き物に、ホーンラビットと同等の経験値があるようには思えない。


ホンラビが5であるなら、眼前のキョンは良くて3ポイント。

いや、多分1ポイントあれば御の字だろうなあ。



『えいっ!


ははは、届きもしませんでした。』



「いや、リリーフで俺が投げさせられると理解しとるだけに笑えん。」



「え?

響さんも投げはるんですか?」



「千葉まで来て、手ぶらで帰ったらアホやろ?」




そういうと後藤は腕を大きく振った。

風圧に顔を押される。

驚いた俺が先を見ると、いつの間にかキョンが痙攣していた。


ああ、これこそがスペック差なのだ。

異世界でも思った事だが、やはり男は動けてナンボの生き物だ。

俺もそっち側の住民になりたかったなあ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『いやあ、後藤さんは本当に凄いですね。

恥ずかしい話ですが、動作が早すぎて軌道が全然見えませんでした。』



「トイチさん、あれは手投げです。

実質、手首しか使ってません。

全盛期のこの人はもっとエグいですよ。

全国の舞台で三者連続見逃三振とか普通に量産してましたから。」



『はえー、すっごい。』



「いや、凄いのはトイチ君やで。

キョンが倒れた瞬間、飛び掛かって叩き殺したからな。


石で100回殴る奴、初めて見たわ。」



『じゃあ、後9匹だけ手伝って貰っていいですか?』



「え?

まだやるの?」



『17時までに10匹殺さないと検証出来ないんです。』



「殺害ロードマップが緻密過ぎて怖い。」



怖い怖いと言いながらも、後藤の手は僅かすらも止まらず、エモやんの車に積んであったロープでキョンを俺の前に引き摺って来てくれる。


俺は撲殺に向いた棒や石を色々試行錯誤してみたのだが、逆手に握り締めた石で滅多刺しにするのが性に合ってると分かったので、以後の殺害作業はこの《馬乗り石刺しパウンド》で統一する事に決めた。



後藤の手際があまりに鮮やかだったので、16時には10匹を殺せていた。

俺一人なら、殺すどころか捕まえる事すら出来なかっただろう。

やはりトップアスリートは全てが別格だった。




「どうする?

裏の小川にも2匹おるけど?」




『いえ、整数で止めさせて下さい。』




俺と後藤は車に戻り、人気のない国道の路肩で互いの労をねぎらった。




「エモやん、大丈夫か?」



「スンマセン。

途中で精神的に限界来ました。

アイツら凄い悲愴な声で鳴きますね。

検索したら、《必死で命乞いするから猟師でも殺すの嫌がる》って書いてましたわ。


トイチさん、よくあの声に耐えられましたね。」



『声?』



「あっ!

この人、最初から聞く耳持たへんタイプの人や!」




「トイチ君は異世界帰りやからしゃーない。」



「いや、この人多分。

異世界関係なく、こういう人ですよ。

キチガイ特有のキチガイオーラ放ってますもん。」



バレたか。

エモやん鋭いなー。



「じゃあ、トイチ君。

そろそろ詐欺の準備始めてもろーてええか?

今日は区切り良く100万用意した。

整数の方が楽やろ?」




  「ちょ!  響さん!

  100万ってどういうことですか!?

  え!? え!? え!?」




『助かります。

もしも俺が成長していれば1%の日利を支払わせて下さい。』




  「トイチさん!? トイチさん!?

   俺の先輩を喰い物にするのやめて下さいね!?

   この人、地元の星なんですわ!」




「エモやんは幾ら出すん?」




  「うわーーー!!

  当然の様に俺まで巻き込まれてるー!!

  この理不尽極まりない体育会系システムー!!

  でも、独特の居心地の良さがあるぅーーー!!!」




『あ、エモやんさんスミマセン。

もう時間押してるんで、そろそろ締め切りますねー。』




  「うわーーー!!

  詐欺師の常套句来たー!!!

  時間切れをアピールして出資者を焦らすやつーーー!!!」




「エモやん現金主義やから最低10万はもっとるやろ?

おっ、その膨らみ具合は20万以上あるな。


トイチ君、エモやんは20万で。」



  「うわーーー!

  先輩の鶴の一声で財布を広げてしまう愚かなる体育会系奴隷根性ーー!!

  そら就活無双するでーー!!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】


2673円

  ↓

120万2673円


※後藤響から100万円を借入。

※江本昴流から20万円を借入。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「じゃあ、後は好みの女の話でもして時間潰そうか。

トイチ君はどんな女が好きなん?」



『うーーん。

童貞を捨てるまでは、

《誰でもいいから、まずは早く童貞捨てたい》

って思ってましたね。


俺、貧乏ですし身体もヒョロいし

正直、相手を選べる立場じゃないんですよね。』




「いやいや、そうやって卑屈になるのはよくないんちゃうかな?

彼女おらへん俺から見たら、非童貞ってだけで十分凄いことやで。」




  「ちょっと待って下さいよー!!」




「ん?

エモやんはプリキュアやろ?」



  「ではなく!!!

  え!? え!? 

  た、大金を預けてしまったこの状態で

  俺は何をすればいいんですかー!!」



『あー、俺は時間が余ったら祈ってますね。

カネカネカネナンマイダーって。』



「うっわw

関西人に受けそうな念仏やなw

何それ?  トイチ教?」



『いえ、神聖教という宗教があって。

それの詠唱を俺なりにアレンジしたと言いますか。』




   「うわーーーー!!!!

   遂に宗教まで登場したーーー!!!

   アカーーーン!!  アカーーーーン!」




「トイチ君、気にせんとってな。

エモは昔から神経質やねん。

それがピッチングにも反映されてて

配球とかメッチャ緻密で評価されとった。」




『ほえー、カッコいい。

俺、そういうデータキャラって憧れます。』




「おお!

エモやん、オマエのデータ投法が評価されとるぞ!」




  「カネカネカネナンマイダー。」




ん?

そろそろかな。




《24503円の配当が支払われました。》



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


120万2673円

 ↓

122万7176円


※配当24503円を取得



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『しゃあ!』




思わず拳を握り締める。

地球でもレベルアップはする。

そして異世界同様にレベルアップの為の必要経験値が10スタートだとすると。

キョンは1以上3未満の経験値を有する。



「え? トイチさん?  え?  ちょ?」



『ああ、失礼しました。

まずは車を出して下さったエモやんさんにお支払いしますね。

最初に元本の20万、ちゃんと数えて下さいね。

本来の利息は0.5%なのですが、後藤さんのたっての願いなので本日は1%を適用します。

はい、2000円。』



「え? え? え? ちょ待? ちょ待?」



『次に後藤さん。』



「待ってました!」



『今日はありがとうございました。

流石に野球ガチ勢は身体のキレが別格ですね。

感動しました!』



「いやあ、照れるでー。」



『それでは、お金の事なのでキッチリしましょう。

まずは元本の100万円、封をしていたとは言えちゃんと数えて下さいね?


はい、そしてこちらが配当の1万円です。』



「うおおお…」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


122万7176円

  ↓

1万5176円


※後藤響に元本+配当として101万円を支払い

※江本昴流に元本+配当として20万2千円を支払い



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「じゃあエモやん。

これはガソリン代、とっといてや。

今日は突然誘ってゴメンな。」




「いやいやいや!

5千円も出しちゃったら響さんにメリットないじゃないですか!」




「そうか?

カネも増えたし、トイチ君とのコネも深まった。

何よりエモやんと久しぶりに遊べた。

最高やん。」




「…俺も響さんが声掛けてくれて。

それで、思ってたより表情も明るくなってはって…


嬉しかったです。」




そんな遣り取りを後部座席から眺める。

体育会系の奴らって環境厳しくて大変そうだけど、反面チームの絆みたいなのはカッコいいよな。

勿論、俺はああいうの苦手なので輪に入りたいとかは思わないのだけれど。

横から眺めてる分には素晴らしいと感じた。




「え? そういう理由でウーバーしとったんですか?」



「うん、俺みたいに野球しかして来なんだモンがやで?

普通に大学出ても精々ソルジャーとして使い潰されて終わりや。

野球部は就活無双とかいうけど、あんなん騙されたらアカン。

世の経営者は頑丈な奴隷が欲しいだけや。」



「まあ、思い当たるフシはありますね。」



「折角東京出て来てんから。

コネの一つでも作らな、オトンに申し訳なくて地元帰れへん。


そう思ってな。

金持ちが住んでそうな場所でだけ宅配やっててん。


宅配の奴らって汚いカッコでボソボソ喋る奴多いからな。

俺は元気にハキハキと気に入られやすい若者像を演じとった

好感度アップの為に化粧水まで塗ってんねんで?」



「ええ!?  響さんが化粧水とか塗るんですか?」



「俺らみたいなアホが一人前になる為には

人の100倍1000倍努力して勝率上げなアカン。


だってそうやろ?

皆が真面目に勉強しとる時に、俺ら球遊びしかしてへんやん?

スタート地点からして何十周の周回遅れや。」



「いや、それは学業と運動のトレードオフであって…」



「それは詭弁やで。

世間様から見たら、所詮野球は遊びや。

それに引き換え勉強は仕事に生きる。

現にプログラミングや語学、法学を身につけた奴は社会人1年目からでも優遇されて高給を取っとる。

逆に何も持たへんモンは飲食やら介護やらの薄給重労働でみんな使い潰されとるやん。

先輩のこと悪くいいたくないけど、田仲さんとか伊藤さんもそういう扱い受けとるやん?」



「いや、俺の口からはあの世代の人らの事はコメント出来ませんけど…」



「まあ、そういう動機からや。

自転車乗って東京グルグルしとったのは。

六本木、赤坂、麻布。

東京は世界中から大金持ちが集まっとるな、インドとか中国の金持ちはエグイで。」



「はええ、そこまで考えてはったんですね。」



「それで最近は三田界隈がカネが動いてるって聞いて

ほら沼田さんが慶応行ったから。」



「あの人、2年から正捕手でしょ。

別格ですよね。」



「沼田さんクラスになるとプロからも普通に声掛かっとるし

金持ち遊びの噂も耳に入って来るんや。」



「それで…

三田の噂が立ってるんですか?」



「ウクライナ難民の女がな?

日本一の婚活コンサルになってるらしい。」



「え?

戦争って最近の話でしょ?」



「だから話題なんや。

来日して数か月で、婚活界の頂点に立ったらしい。」



「エグイっすね。

言葉の壁とか大丈夫なんですかね?」



「いや、日本語ペラペラらしいで。

上級市民相手の婚活業界で台風の目になっとるらしいんや。

10代の女の子と50のオッサンを結婚させたらしい。」



「犯罪ですやん!」



「オッサンって言っても大企業の社長らしいから…

金目当ての女にとったら悪くないんかも知れん。」



「はえーー。」



「まあ、そのウクライナ女が三田に住み始めてからは…

全国の女に縁の無い経営者連中が三田参りを開始したって噂や。

いや、噂というより、明らかに地方ナンバーの車が激増してる。」



「世の中、やり手はおるもんですねー。

俺が戦争難民になったら、ショックで動く気にもなれませんわ。」



「そういう経緯があったから、何かチャンスはないかと思って三田・田町の依頼ばっかり狙ってたんや。

蒲田からチャリで行けるしな。」



「チャンスとかあるんですか?」



「何件か経営者に社員登用誘われたで。」



「マジっすか!?」



「いや、外れや。

居酒屋チェーンとかドラッグストアとか。

そういうマンパワー産業ばっかりやな。

youtuberにも誘われたで、俺は知らんかったけど登録者40万人おった。」




「やっぱり響さんは凄いですわ。

常に先を見てはる。」




「どれもしっくり来んかった時にな?

当たりを引いた。」




「それがトイチさんなんですね?

後ろで寝てはるみたいやけど。」



「アホ、あれは狸寝入りや。

絶対悪口言うなよ!」



「ひえっ!!」



『あ、すみません

御友人同士の話に割って入るべきではない

と思ったので黙っておりました。』




「ひゃいっ!」




「今、エモやんビビったやろ?

正解や。

コネってな?

こっちがビビって声掛けるのも勇気いるレベルの相手やないと意味ないねん。

だから居酒屋社長の名刺には魅力を感じへんかった。


この人は最初から飛ばしとったで。

目につくウーバー全員を口説いて回っとったからな。」




「えー、トイチさん

そうなんですか?」



『だって、金持ちが多いエリアにいる配達員って明らかにチャンスを求めて外からやって来てる人な訳でしょ?

金持ちエリアの地元民が配達員なんてする訳ないから。

だから、ここで配達員に声を掛け続ければ、能動的に動く層と逢えると思ったんです。』



「ええ、まあ。

理屈ではそうですけど。」



『10人に断られた後、11人目の後藤さんから声を掛けて貰えました。

所要時間40分も無かったんじゃないかな?

かなりコスパのいい縁探しだと思いません?』



「うーーん、理屈では理解出来ます。

ただ、それを実践するのが素直に凄い。

お2人の行動力を俺なりに学んでみようと思います。」




「トイチ君、エモやんは逸材やで。

学習能力が突出しとる。

本来野球なんかより進学校に向いた人材やな。」



『あ、わかります。

1を聞いて10を知るタイプですよね。』



「アンダースローを5分間でマスターした男として淀川の伝説になっとる。」



「盛らんとって下さいー。」




『天才ってどこにでもいるものですね。』




「せやな。

他人様は全員天才や。

そもそも世の中なんぞは天才の決勝会場やねん。

凡人の俺は天才同士の決勝戦にお情けで交ぜて貰っとる。」




『肝に銘じます。』




「まあ、そういう訳でトイチ君が真っ当な詐欺を仕掛けるんやったら

三田は正解やで。

タワマンの人、彼女さんやろ?

同棲したらええやん。」




『うーーん、まあ考えておきます。』




「結局、カネってカネのある所に集まるモンやからな。

素直に渦の中心におったらええ。


ま、今の東京のど真ん中はその胡桃倶楽部やな。」



…胡桃?




「響さん、何で胡桃?」




「アメリカとかで子孫繁栄の象徴やからな。

ほら、映画の結婚式とかで胡桃まくシーンあるやん?

日本では餅をまくけど。」




「ああ、何かまいてはりますねえ。


胡桃倶楽部かー。

金持ちは何か色々考えはりますねー。」




「そういう層との接点探すのも努力やで。

ボンクラの俺はいずれ何かの縁を作れると信じて打席に立ち続けるのみや。」





帰りに3人でバッティングセンターに寄った。

俺は全然駄目駄目だったのだが、彼らの教え方が相当合理的だったせいか、最後の方には何とかボールにバットを当てることが出来るようになった。

打球が真芯に当たって大きく飛んだ時は胸が熱くなった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


1万5176円

  ↓

1万4176円


※船橋バッティングセンターに4ゲーム(100球)プレイ代金として1000円を支払い。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





父さん、夢が一つ叶ったよ。

【名前】


遠市厘




【職業】


無職



【ステータス】 (地球上にステータス閲覧手段無し)


《LV》 2

《HP》 ?

《MP》 ?

《力》  ?

《速度》 小走り不可

《器用》 三振がデフォルト

《魔力》 ?

《知性》 ?

《精神》 ?

《幸運》 ?


《経験》 10と仮定。


※キョンの経験値を1と仮定




【スキル】


「複利」 


※日利2%


新札・新貨幣しか支払われない可能性高し、要検証。




【所持金】


1万4176円




【所持品】


ヒルダのワイシャツ。

警察病院パジャマ     (本来貸与品なので返却義務あり)

エモやんのアンダーシャツ (貰った。)

エモやんの海パン     (ズボン代わり)

エモやんのパーカー    (スポーツブランドの結構上等なもの)




【約束】


古屋正興     「異世界に飛ばす」

飯田清麿     「100円を1万円にして返す。」

後藤響      「今度居酒屋に付き合う(但しワリカン)」

江本昴流     「後藤響を護る。」


ヒルダ・コリンズ 「芋羊羹を喰わせてやる」

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― 新着の感想 ―
くるみクラブ良いね
[良い点] 約束どんどん増えてくねえ。 [気になる点] 日本は安全とはいえいつまで楽しくやれるのかなあ
[良い点] ウクライナ女、一体何コリンズだというのか。 こういう、行間に隠されてた行動の真意とかを後で知れるの、世界観が深まって良いよね。 更新ペースも良いので伏線も忘れにくいし。
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