4-3:私とアナタの世界 幸せな終わり
私達は楽しく日々を過ごしました。
何者にも脅かされず、奪われる事もなく、ただ平和で自分達の幸せだけを考える日々。
それは楽しくて素敵で、まるで夢のような・・・
いえ、もちろん、この世界での生活が夢である事は理解していますよ?
ここが夢の世界である事は理解出来ていますよ?
単に『素晴らしかった』って事を言い表す言葉が、私の中には『夢』ぐらいしか無かったってだけの話です。
それに・・・・・・
「のぅ、ルカや、まだ起きておるか?」
「・・・はい、起きてます。少しボンヤリしてたかも知れませんが」
「そうか、それは良かった。最後はオヌシと話をしながら迎えたいしの」
「ええ、そうですね。そろそろですものね」
私とアリスちゃんは真っ白な場所で二人きり。
今の世界には私達と二脚の椅子しか存在しない。
夢の世界はもう終わりかけている。
私の本体はもう止まろうとしている。
これは予定していた終わり。
でも、元々の予定よりか随分と後倒しになっているみたい。
黒猫さんが上手に調整してくれて重要度の低いところから少しずつ止めて、演算の負荷を下げてくれてたらしいから。
最初は初期村が消えて、次に王都の人が減って、王都の周りの自然が消えて、そして最後には私達の家だけが残って
「クロ先輩も一緒に残ってくれても良かったのにの。変なところで気を遣うんじゃから」
「・・・なんで黒猫さんは先に行ってしまわれたんでしたっけ?」
知ってるはずなのに思い出せません。だから教えてアリスちゃん。
「自分は術式の塊みたいなモノだから存在しているだけで負荷がかかる、とか言うておったよ。
実際のところは、儂とルカが過ごす最後の時を少しだけでも長くするためだとは思うがの。
クロ先輩は少し我儘で気分屋ではあったが、とても優しい猫じゃったから」
そうですね。黒猫さんはとても優しかったです。たくさんお世話になったから、最後にお礼が言えたら良かったのだけど。
「・・・なぁ、ルカや、楽しかったか?この世界で儂らと最期を過ごして」
「えぇ、最高でした。もう何の悔いもありません」
色々と思い出せなくなってますけど、それだけは断言出来ます。
「楽しくて幸せで。あの時、アリスちゃんに手を伸ばして本当に良かったと、そう思ってます」
「・・・そうか、それは良かった」
アリスちゃんの小さな手が私を優しく撫でる。
あれ?私、いつの間に横になっていたのでしょうか?
「大丈夫じゃ。寝たままでええ」
優し気なアリスちゃんの声。でも、微笑んでいるであろう顔さえ見る事が出来なくて。
「儂もオヌシと出会えて、一緒に時を過ごせて良かったと思う。本来なら使い潰されるだけじゃった儂に新しい終わり方をくれて。本当にオヌシは儂の恩人じゃ。ありがとうの、ルカ。儂は幸せじゃった」
あぁ、そうなんだ。アリスちゃんも幸せだったんだ。
頭に感じていたアリスちゃんの手の感触が薄れ始めた。
「いよいよ終わりの時みたいじゃな。長かったような、短かったような、なんだか不思議な感じじゃ。
・・・生まれ変わりを信じるような信心深さは無いんじゃが、それでも、またオヌシに出会える事を儂は願うよ」
そして、アリスちゃんの気配も消え、私自身の身体の感覚も消え、自意識も薄まり、世界が暗い闇へと戻って行った。
この闇はずっと昔に感じた闇。
そこに戻る時が来たみたい。
でも、もう私は怖くない。私には思い出も願いもあるのだから。
もし次があるのなら
もし私達に次の世界があるのなら
私も彼女にまた出会いたい
そんな事を思いながら私は眠りについた。
儂とアヤツと何処ぞの世界 完
最後まで読んでくれてありがとう。
また機会がありましたらお会いしましょう。




