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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
3章:儂とアヤツと望みの形
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4-2:私とアナタの世界 私の一番大切な思い出



「・・・おぉ、猫さん」


 気が付けば小さな部屋に座っていた私。

 そして向かい側にはアリスちゃんと小太りの黒猫。


「可愛いでしょ?ちなみにわたしよ」


 はて?私に言葉を操る猫の知り合いはいないような気がしますが?


「ルカよ、その黒猫がさっきまで話をしておったデカい方の金髪じゃ」


 デカい方・・・分かり易いけど、自分の本来の姿をそんな言い方で


「って、思ってたよりマジで猫なんですね」


「そじゃな、クロ先輩の猫っぷりはまさに完璧。究極の猫じゃ」


 なに?その謎の持ち上げ方。というかクロ先輩?


「ねぇねぇ、二人とも、目の前に素敵な猫が現れた感動は分かるけど、それより先に確認する事があるんじゃない?

 特にルカ、あなたには気になる事があるでしょ?もう記憶だって戻ってるはずなんだし」


「・・・記憶?」


 はて、何の事でしょう?・・・何かを思い出したどころか、今いる場所さえ分からなくて軽く混乱しているのが今の私の状況ですよ?


 小洒落た感じで料理が異様に美味しい喫茶店にいた事までは覚えているのですけど。

 オムライスの話をしている途中で寝落ちして、気が付いたら、ベッドが二つあって大きな窓があってエアコンも付いてて・・・でも壁の素材は自然を感じる木造っぽい感じで??


「どこですか、ここ?」


「そう、まずはそれを聞いて欲しかったわね!」


 真っ白なシーツが敷かれたベッドの上で黒猫がいばって胸を張っていた。そんな面白い光景を目にしつつも、私は思考を世界へと向ける。


 すると、それが当然の事のように、自分が置かれている状況の事が理解出来た。


 そうか。ここが私達の・・・


「今までのアリスとルカの世界をリセットして再構築させてもらったわ。裏世界・異界・ダンジョンをカットして、離れたところに点在していた街も無かった事にしてスリム化してあるの。

 端っこの街なんて、前の時もほとんど行ってなかったし問題ないわよね?」


 問題があったとしても、やっちゃった後で言える事なんて何も無いのでは?


「探索を生業にしておったルカとしては、ダンジョンが無くて都市が成り立つかを気にしておると思うが、代わりにリソースがポップするポイントを郊外に複数置いておる。そじゃから問題は無いはずじゃ。

 ちなみに王都の外にもモンスターは無しじゃ。ルカが冒険を楽しむ余地は残してやりたかったんじゃが、あまりにリソースを食うもんでな」


 アリスちゃんは申し訳なさそうな顔をしていますが


「別に良いですよ。私がしたかったのは冒険とか魔術で無双とかでなく、友達と何処かに行って自由に生きるって事でしたから。

 夢はもう叶っていたんです。アリスちゃんと黒猫さんが、私の夢を叶えてくれていたんです」


 思い返せば私が一番嬉しかったのは、

 魔術が使えるようになる事でも、

 ギルドで認められる事でも、

 部下がたくさん出来る事でも、

 彼らを率いてダンジョン攻略に向かう事でも無く


「田舎の村から王都に二人で旅立った時の事が、私の一番大切な思い出なんですよ」


 自分の生き方を探しに外の世界へと踏み出した。それが私にとって最も重要で大切な事。


 夢の中でしか叶わなかった私の願い。


「そっか、それなら良かったんじゃが」


 少しアンニュイな雰囲気のアリスちゃん。

 そして、そんな空気を無視して黒猫さんが小さく挙手。


 ひょこっと披露された小さな肉球が実にプリティ。


「忘れちゃいそうだから言っておくけど、世界観を現代的にアップデートするのと同時に食材の幅も現代日本並みに増やしておいたわよ。

 食材の種類はアリスの知識ベースだから十分だと思うけど、調理器具の方まで再現は出来てないから、そこは工夫がいるわね。まぁ、アリスなら出来るでしょ?」


「おう、任せとくれ!それに開発は儂だけでなく店の者も使えるでな。加工の手法も人海戦術でちょちょいのちょいじゃ!」


「あー、あれよ、残念だけどリセットしたから店も無いわよ、ごめんなさいね。王都と初期村は残しておいたけど、中身はデフォルト状態まで戻ってるわ。悪いけど、また最初から頑張って頂戴な」


「・・・マジかー、また人集めから始めんといかんのか」


「大丈夫ですよ、アリスちゃん。時間はあるんですから三人でゆっくりやりましょうよ」


「そうね、今回はわたしも手伝うからスムーズに事が運ぶと思うわよ」


「そうは言ってもクロ先輩は猫じゃし」


「そうね、せっかくだし、猫カフェも作ってみる?わたしも猫チームのリーダーとか出来るわよ?流行ってスタッフが増えたら、そこから料理人の素養のありそうな人を引き抜けば良いじゃない?」


「気の長い話じゃのぅ。でも、悪くないやも知れんな」


 そう、悪くない話。三人で時間をかけて新しい事に挑戦する。実に悪くない夢物語。


 私は腰かけていたベッドから立ち上がり窓を開けた。


 そこから見えるのは少しだけ現代的に作り替えられた王都の街並み。

 私達がこれからを過ごす事になる新しい舞台。


 妙に楽しい気分になって私は二人に振り返る。


「これからもよろしくね、アリスちゃん、それに黒猫さん。この素敵な世界で『終わる時』まで楽しく生きましょう!」


 この時の私は、きっと今までで一番良い笑顔。

 自分が幸せだって事を、これでもかってぐらいに理解出来ていたんだもの。


 私は救われた。最後の最後に救われた。


 この幸せな時間をくれた何処かの神様、本当にありがとう。 


今日も読んでくれてありがとう!この話はこんな話でした!と言うわけで明日が最終回です。よろしくお願いします。

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