2-5:儂とアヤツの話 強引な展開。ちょっと素敵
「しかしのぅ、今となっては明白なのじゃが、『アストラ村』って名前、この世界で浮き過ぎなんじゃよな。
他の場所はシンプルに王都とか宿場町とかの一般名詞じゃのに、唯一横文字で名前が付けられとるわけで。
しかもルカも『アストラ』って言葉の背景に覚えが無いんじゃろ?オヌシの『生まれ育った村』って設定じゃのに」
「はい。由来とかの話は聞いた事も無いです。それどころか村の名前を口にした事も・・・それこそアリスちゃんに伝えた時だけかも知れないぐらいで」
「となると、やっぱり三人目の意思なんじゃろな。ここにずっとおったはずの『儂の残滓』が『物語の最初の村』に干渉した理由は分からんが。
ま、それは考え込んだところで同じじゃろうな。早速、行ってみるとするか!」
「えー、マジですか。怪我は治してもらいましたけど、今から50階層も登るのは勘弁ですよ。せめて半日ぐらいゆっくりしないと」
「パラメータをダイレクトに弄ったから疲れも飛んどるじゃろ?」
可愛い顔をコテンと傾げているのが軽くムカつきますね。
「・・・精神的なものもありますし」
「そこは我慢一択じゃの。んじゃ、早速始めるとするぞ」
アリスちゃんがサッと手を振ると同時、周囲にあった長閑な光景は消え、元通りの真っ白な空間が。
「転移の設定は超簡単じゃ、なにせ最初の村じゃからの。プレイヤーの初期配置ってやつじゃ。
と言うても儂は森の中に投げ出されとったからルカの設定に同期を取って・・・ほい!出来た!では、いくぞ!」
速い。あまりにサクサクで速すぎます。
「あ、ちょっと待って。久しぶりだから心の準備が」
「嫌じゃ。解決の糸口が目の前にあるんじゃ。待っとられるか」
そんな言葉と共に視界が歪む。
白い空間が揺らぎ、その向こうに木々の緑や見覚えのある建物が並ぶ光景が覗く。
転移が終わる直前、チラリと『本当の私』の姿に目をやった。
ソレは騒がしく慌ただしい私達の事なんて何も気が付いていないかのように、変わらず静かで微動だにしないままだった。
そして
「へい!一瞬で到着じゃ!アストラ村へようこそ!!」
その瞬間、目の前にあったのは懐かしき故郷の村と、村の名前が書かれた大きな看板を掃除中の村長さん。
「よ、ようこそ?」
何がようこそですか。
「ただいま。村長さん、突然の帰還で申し訳ないのですけど、少し教えて欲しい事が」
「え?一瞬で現れて?え?」
うん、混乱中ですね。
「王都で開発された新しい魔術です。便利ですよ?片道しか使えませんけど」
え?は?と村長さんは未だに妙なムーブを繰り広げています。
「便利じゃろ?最先端の魔術は。
で、教えて欲しいんじゃが、この村に何年か前から逗留を続けておるような人物はおらんか?
あるいは儂のような金髪の女性が最近遊びに来たとか、そんなんでも構わんが」
流石アリスちゃん。村長さんの困惑なんて気にもしません。・・・強引な展開。ちょっと素敵。
「あ?金髪?・・・そんなんはいないが、逗留してる変な人ならいるぞ。宿を長期でおさえてる人だ。何をしてるかは知らんが」
「・・・なるほどの。ちょっと会いに行ってくる。ソヤツが儂らの訪ね人やも知れん」
そうなんです?
よく分からないけど、アリスちゃんが言う事に間違いなんてあるはずも無いですし。
でも、干渉を受け続けているであろう村長さんの言葉を真に受けて良いんでしょうか?軽い参考程度が精々なのでは?
「ほれ、行くぞ、ルカ」
村長さんに軽く頭を下げて速足で進むアリスちゃんを追いかけます。さっきから何故か急いでいるような?
「ねぇ、アリスちゃん、素朴な疑問ですけど私の村に宿屋なんて昔からありましたっけ?」
「少なくとも儂が初めて来た時は無かったわな。そじゃからルカの家に世話になっておったわけで。
恐らくはヤツが自分の身体で『アストラ村』を訪れる際に居場所として追加設定したんじゃろな」
「なるほど。それで私の知る過去と食い違いが・・・ってあの建物ですか。確かにアレは後から追加してますね」
「あからさまじゃの。世界の設定より自分の快適さを選びよってからに」
村の外れに見える大きな建物。それは王都にも滅多にないガラスの窓がふんだんに使われていて
「うわ、エアコンまで付けておるwwww 自由かwww」
アリスちゃんが道端でお腹を抱えてケタケタと笑い転げています。
「大丈夫じゃ。こんだけ世界を楽しでおるやつなら話し合いも十分に出来そうじゃ」
少なくとも殺し合いにはならんじゃろ、笑い終えたアリスちゃんから零れた小さな呟きは流すとして
「良かったですねぇ。平和に話を進められそうで」
気が楽になった私達は宿屋の入口に手をかけ
「いらっしゃい。お二人さん。出迎えの場は用意してあるから、そっちでお願い出来るかしら?」
不意に背後から話しかけられた。
私にもアリスちゃんにも気が付かれる事なく近づくなんて。
いくら気を抜いていたとしても有り得ない。
「・・・ほぅ、それが本当の姿なんか?」
「いいえ、本当の私はもっと可愛いわよ。今の姿は、そうね、どっちか言えばアナタの昔の姿よ」
「儂の?」
「そう、貴方が真っ当に化け物をやっていた時の。『わたしのマスター』と出会わなかった世界の貴方の姿」
「・・・オヌシが何故それを知っておる?」
「そうね、それも合わせてお話しましょうか。
ほら、あそこの喫茶店、ちゃんと個室を予約してあるから」
「やりたい放題じゃの、こんなクソ田舎に現代風の喫茶店なんてあるわけ無かろうに」
「ええ、そうね。でも、ここは夢の世界ですもの。それぐらいしても罰は当たらないでしょ?」
くすんだ金髪の女性は、何故か笑顔で私にそんな事を確認した。
私が誰かを罰するなんて出来るはずも無いのに。
今週も読んでくれてありがとう!忙しくなる前に完結させようと思ってたのに想定より忙しくなるのが早くなったのでご覧の有り様でございますの!少なくとも来月の頭までは不定期更新でございます!すまんな!!




