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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
3章:儂とアヤツと望みの形
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2-2:儂とアヤツの話 世界五分前仮説って何でしょうか?



「私?私が誰って・・・」


 私は私ですよ?


「今の『この世界』は、サヤカ殿の夢と儂の人格の元にされた記憶からのイメージが混在しておる中途半端なもんなんじゃ。

 サヤカ殿による漫画的なヨーロッパ風のイメージに・・・主殿が好きだったゲームのイメージを混ぜ合わせてでっち上げた世界、それがここじゃ。

 分かり易い所で言えば、魔術の仕組みやギルドがあったりするのはゲーム由来じゃわな。異様に清潔なのはサヤカ殿の理想からじゃろうが」


 確かに言われてみると、少し違和感があるような。


「んでの、さっき怪我の治療をする際にルカに掛かっておった制限を無くしたんじゃ。ちんたら普通にやっておったら死んでおったかも知れんからの。

 そんなわけで今のルカなら、この世界のおかしな点に簡単に気が付けるはずじゃ」


「・・・いえ、よく分からないのですけど」


 私はアリスちゃんみたいに頭が良くないのだから、ちゃんと教えてくれないと。


「ヒントじゃ。いくつか並べるから考えてみぃ。

 オヌシと訪れた宿場町の名前、交易者の本拠地、ギルドの同僚や攻略部隊に参加しておった者の本名、王都の正式名称」


「それが何のヒントに?」 


「疑問に思うのは分かるがの、まずはちょっと考えてみるんじゃ。自分の中に答えを探す感じでの。

 そじゃの、儂も気が付いた時はビックリじゃったから同じ驚きをルカと共有したいんじゃ、そんな風に思ってくれてよいぞ」


 用意してもらったお茶を頂きながら思いを馳せる。


 でも、まぁ、それほど時間は必要なかった。


 今まで何で気が付かなかったんだろう。


 私、何も知らない。


「ふむふむ、それは答えに至った表情じゃな。

 では、次が最後のヒントじゃ。

 ルカよ、オヌシ、儂に出会うまでは何をしておったんじゃ?」


 私は・・・新人のギルドマンで・・・故郷の村で雑用みたいな仕事を・・・


「両親の名前は?前任のギルドマンは?定常的に行っていた業務はなんぞいや?」


 何処か楽しそうなアリスちゃん。その様子に釣られるかのように私も気軽に自分の記憶の中を掘り進んでしまう。それは思いのほか簡単ですぐに終わる事だった。だって、何も無いんですもの。


「・・・分かりましたよ、アリスちゃん。本当は何も無かったんですね、この世界には」


「そうじゃ、この世界で名前有りの登場人物は儂とルカだけじゃ。それ以外の全てはモブ的な何かに過ぎん」


「そして、それを考えないようにしていたのが『制限』というわけですね」


「そうじゃ。舞台の上におる者が冷めてしまえば面白く無いからの」


 この世界に過去は無い。そして、住人は私達二人だけ。

 多分、この世界が出来上がったのは、私とアリスちゃんが出会った時?・・・いえ違いますね、正確にはアリスちゃんが森の中で目を覚ました時、それが世界が産まれ直したタイミング。


「世界五分前仮説って考えがあるんじゃが、まぁ、マジでそんな感じじゃよ。当事者からすると、どうでも良い事じゃったのが意外ではあるがの。

 さて、ここまで来ればルカの正体は明白じゃろ」


 いいえ。


 ・・・なんだか『分かりません!』とアホ丸出しの発言をするのは、ちょっと駄目な感じがしますね。場の雰囲気的に。

 ここは黙ってコクリと頷いてアリスちゃんが自然に結論まで話してしまう事に期待するとしましょう。


「ここはゲームみたいな世界ではあるんじゃが、だからこそ他人が遊んどるのを外から見ておるだけなんはつまらんわな。

 どんな形であれ参加したいのが人情じゃ。ましてやサヤカ殿は『自分が過ごそうとした夢の世界』を一度壊されておるのじゃし」


 訳知り顔で頷く私。もちろん。流れの速さに付いていけてません。


「出来上がった世界が『外の情報』とのチャンポンでよく分からん物になってしもうても、『世界に参加したい』と言う気持ちは変わらんかったんじゃろうな。儂には推測しか出来んが。

 しかしじゃ、『夢の世界』が現実の形から乖離してしまったせいで、『自分そのもの』ではフィットせんようになってもうたわけじゃな。剣と魔法のファンタジーみたいになっとるわけじゃし。

 そこで生まれたのがルカ、オヌシじゃ」


「へ?」


「サヤカ殿には無い『普通の魔術を操る才能』や『強靭な肉体能力』を付与された『世界を楽しむためのアバター』、それがルカの正体じゃ。つまり、ルカの意識はサヤカ殿そのものじゃ」


「・・・へー、そうなんですか」


 場に妙な沈黙が落ちた。これは困りましたね。


「・・・・・・のぅ、オヌシ。今までの話、付いて来れておったかの?」


「ごめんなさい。ちょっと情報量が多かったです」


「・・・そっか。すまんかったの。久しぶりじゃからペースが分からんで」


「いえ、こちらこそすみません。理解が遅くて」


「・・・とりあえず茶のおかわりでもしながら、ゆっくり頭を整理しておくれ。あぁ、質問は随時受付中じゃ」


「すみません、大事な話なのに」


「ええんじゃよ。・・・そういや記憶の中の主殿もこんな感じじゃったの、懐かしいような気がしておもろいわ」


 カカッとアリスちゃんは謎の笑いを吐き出した。


 よく分からないですが、夢の世界で会うのじゃ、きっと意味が無いのでしょうね。


今日も読んでくれてありがとう!SFっぽい用語を使ってもSFにはならない!それが私!

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