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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
3章:儂とアヤツと望みの形
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2-1:儂とアヤツの話 偽物と夢の世界



「まず一番大切で全ての話の土台になる事から話を始めるとするぞ。

 ちなみにティーポットから注いでおるが中身は緑茶じゃ。久しぶりなんで急須のイメージが出て来なかったんじゃ。すまんの」


「いえ、特にこだわりがあるわけでは無いので別に良いですけど。お茶の種類とかよく分かりませんし」


 持ち手の無い小さなカップに注がれたお茶は綺麗な緑色。なんだか懐かしいような、そうでも無いような?


「あそこに浮いておるボロボロの女性だがな」


「あぁ、それですよ。なんで遺体がフヨフヨ浮いているんですか?」


「違うぞ、ルカ。遺体では無い。彼女はまだ生きている」


 風前の灯火ではあるがの。


 アリスちゃんはそう付け足すと静かにお茶を飲んだ。


「あぁ、やはり美味いの。なんだかんだ言うても『記憶』にある味は良い物じゃ」


 そう言って誰かの遺体、いえ大怪我をおった女性を見つめた。


「アヤツはなぁ、魔法使いの一種・・・らしいんじゃ。その身に特殊なオリジナルの術式を宿しておっての。そのせいで魔術師のギルドみたいなもんと揉めたり争ったりと大変じゃったそうな。

 でな、アヤツの特異体質、アヤツだけが実現出来た魔法に目を付けた者が新たに出て来てな。・・・それが全ての始まりじゃ」


 話が見えませんね。


「それが、この場所と何の関係があるんですか?」


「・・・アヤツがサヤカ殿じゃ。王都の立役者で、この世界の創始者」


「世界の創始者?」


 世界を始めた??


「そうじゃ。この世界はアヤツが今際の際に見ておる夢。幻想に過ぎん」


 夢。え?でも、それなら?


「アリスちゃんは誰なんですか?外から来たんですよね?」


 そんな設定の登場人物って事?


「いんや。儂だけは正真正銘の部外者じゃ。元々サヤカ殿が作った夢の世界は一度壊れておるんじゃ。

 それを不憫に思った儂の主・・・いや奥方の気まぐれじゃな、まぁ、とにかく『死にゆく彼女の傍にあったリソース』を使って世界を再構成したんじゃ。

 んで、その過程でうまく力だけを引っぺがす事が出来ずに儂の人格まで新しく構成した世界に混ざってしまったわけじゃな」


「サヤカ様とアリスちゃんは知り合いだったの?」


「・・・それも否じゃ。いや、本来の儂はサヤカ殿の事を知っておったのかも知れんが、今の儂は知らん。今の儂は断片的な情報しか与えられておらんから」


「ねぇ、アリスちゃん、間違っていたらごめんなさい。この話の流れだとサヤカ様に目を付けた人って・・・その奥方さん?」


「そうじゃ、奥方が計画して儂が実行したんじゃ。サヤカ殿をああしたのは儂。

 随分と前の話じゃが、どこぞの爺さんが儂の事を指して魔王とか言っておったじゃろ?あれはサヤカ殿の儂に対する恐怖が世界に出てしまっとるんだと思うぞ」


 あぁ、それで。そう言えば私もアリスちゃんを始めて見た時は怖かったような気が。


「さて、足らぬとこばかりではあるが、これで前提条件は出揃った。

 あそこにおるのはサヤカ殿の成れの果て、この世界はサヤカ殿が見ておる夢、そしてサヤカ殿を追い込み夢の世界が出来る切っ掛けを作り、その後に崩壊しつつある『ここ』を再構成したのが奥方と儂」


 アリスちゃんはお茶の残りをくいっと飲み干した。


「あと追加しておくべき情報としてはサヤカ殿が持っておった魔法は『魂の加工』じゃ。この世界も恐らくはその応用で出来ておる。

 まぁ、奥方が何故それを欲しがったかまでは儂にも分からん。ここにおる儂は必要最低限の情報しか持たされておらんが故に」


「記憶が失われてるって事?」


「そんな感じじゃな。正確に言えば上書きされて残っておらんのじゃ。

 サヤカ殿を破壊するために送られた儂が夢の世界で同じ事を繰り返さんように、奥方が別の記憶と人格で塗りつぶしたんじゃ」


 アリスちゃんは嘆く様な様子もなく淡々と続ける、私の驚きなんて気にもせず。


「つまり、ここの儂は偽物じゃの。本物の儂は料理なんてした事なかったし、緑茶も飲んだ事ないし、主殿とは出会ってさえいない。

 儂は奥方殿に従って暴れておっただけの化け物に過ぎん。

 それさえ黒い鎧のアレから記録を引き上げて間接的に分かっただけじゃがな。

 いまや夢の世界の住人となってしまった儂が分かるのは、ここまで。儂の本体ももう崩壊してしまっておるようじゃし」


 偽物?いま目の前にいるアリスちゃんは本当のアリスちゃんじゃない?あんなにも楽しそうに何度も主さんの話だってしていたのに。


 ・・・でも・・・でも!


「私に料理を作ってくれたのも、魔術を教えてくれたのもアリスちゃんなんだから・・・偽物だなんて言わないで」


 そうじゃな、それだけ呟くとアリスちゃんは悲しそうに笑った。


「ここまでの話を全て踏まえて、今からするのが一番大切な話なんじゃ。

 異物である儂と接触しても不具合を起こさず、未設定の場所でも活動を続けられる、そんなオヌシは一体誰だと思う?」



 のぅ、ルカよ。オヌシは自分を誰だと認識しておるんじゃ?



 その声はとても小さかったのに何故かハッキリと私の心に届いてしまった。 


今日も読んでくれてありがとう!午前の更新なのは今日は原神のアプデで午後から忙しいからです!(昨日の夜に書いてました)

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