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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
3章:儂とアヤツと望みの形
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1-9:アヤツとアヤツの夢 久しぶりに優しくして下さいよ?


 電撃の魔術は効かなくて、白い光の剣(未完成)は効いた。この二つの違いは何なのだろう?


 そんな疑問を頭に浮かべながらも私は複数の魔術を並列で起動した。


 大して学もない私の事。推論を重ねたところで、しかも戦闘をしながらで、答えに辿り着けるとは思わない。


 だから、まずは思考の材料となる具体例を増やす事にした。サンプルが沢山あれば違いを見出す事が簡単になるかも知れないから。


 アリスちゃんと離れてから急に使えるようになった基本の術式。それを取り揃えて


「ちょっとは効いて下さいよ!!」


 炎、水、雷。それらを順番に解き放った。

 魔力が吸われ複数の術式が自動的に立ち上がる。炎の魔術が爆炎を放ち、高圧の水で穿ち、ダメ押しで雷撃が荒れ狂う。


「・・・やった?」


 雷撃と同時に発生した蒸気のせいで視界が悪い。

 まぁ、でも、こんなパターンだと


「やれてないですよね、やっぱり」


 黒い鎧はその場から動かないまま耐え切っていた。耐えたというかノーダメージみたいな?


 うん、そんな事になるんじゃないかなとは思ってた。だから、次。ちゃんと次も用意してある。 


 電撃を放つと同時に用意していた魔術。持続時間が短くて実戦には全然使えないって思ってたけど。


「役に立つものですねっ!!」


 弾かれる事を想定しての全力の投擲。

 もちろん、無手の私が投げられる物なんて限られている。

 そう、私が投げたのは魔力で形作った槍。アリスちゃんが何度も持たせてくれた青い光を放つ槍。


 もちろん、理屈を分かっていない私では真面な槍が出来るわけも無い。輪郭も曖昧で持続時間もほんの一瞬、それこそ振るう間も無い程に。


 でも、それで十分。この魔力の槍を黒い鎧はどうやって防ぐのか。あるいは、どれだけのダメージが入るのか。それを観察したいだけ。


 形を崩しつつも自らに近づく槍。黒い鎧はそれに対し・・・


 地面へと身体を投げ出し回避した。

 思いのほか重さがあるような鈍重な動きで回避した。


 これは避ける必要があるんだ。他の魔術は動かずに受け止めたのに。


 ・・・そうか、そうだったんだ。


 話は単純だったんだ。この世界の仕組みから引き出した魔術は効かなくて、自分で術式を組んだ魔術なら効く。

 つまり、アリスちゃんに教えて貰った外の魔術なら勝てる!それだけの話なんだ!


 と言ってみたところで私が使えるアリスちゃんの魔術は3種類だけ。強化術式と出来損ないの白い光の剣(擬き)を出す術式、それに槍のような物を一瞬だけ作る術式。

 もちろん、後者2つは連発出来ない。いや、それどころか真面に起動するかも怪しい。それこそ、さっきの槍だって当たったところで殺傷力があったかどうかは・・・


「なら、これしか無いですよね」


 切れる手札は一つしか無い。なら後は切り方を考えるだけ。私は無手、魔術の槍では打ち合う事も出来ない。そもそも武術は遥かに向こうの方が上手。

 そんな条件で私が出来る事は・・・


 強化術式だけを頼りに私は駆け出した。


 障壁は用意しない。どうせ破られる。それなら魔力と集中力を回す意味は無い。大事な事だけに集中した方が、きっといくらかマシなはず。


 前触れなく槍が目の前に出現した。黒い鎧の突きは、限界まで意識を加速しても捉え切る事が出来なかった。


 でも、当たる前に認識出来た。今はそれで十分。完全に避ける事なんて出来やしない。魔術の発動の邪魔にならなければ、それで!


 身体を半身逸らし槍の軌道から少しズレる。

 空気を穿つ音が耳のすぐ傍で響いた。

 穿たれたのは空気だけじゃない。右肩の付け根、それに首の一部と耳がごっそりと持って行かれた。


 意識が霞む。


 だけど、それだけ。もとより身体能力で勝つ気なんてない。勝つには不完全で頼りない魔術を当てるしかない。


 槍が引き戻される動きを感じた。抉られた肉に伝わる振動で十分に理解が出来る。


 ここだ。今この瞬間こそが私が狙うべき時。


 練り上げていた術式を起動させる、不格好な刃とも呼べない白い光を出現させるだけの魔術を。

 もちろん剣みたいに振るう事なんて出来やしない。腕を振るったところで一拍おいて光の束を追随させるので精一杯。


 なら最初から剣として使わなければ良い。


 白い光を出現させたのは私の胸のど真ん中。


『ほら、狙ってくれると思ってましたよ』


 黒い鎧の一撃が吸い込まれるように白い光に衝突し、そして弾け飛んだ。


 眩い魔術の光と共に私は後方へと弾き飛ばされる。不思議と音は何も聞こえない。

 

 硬い地面で摺り下ろされるかのように幾度も転がり。気が付けば仰向けで暗い空が目に入る。


「・・・どうなったの」


 呟やいたはずなのに音が聞こえない。あぁ、至近距離で魔術の爆発に巻き込まれたからか。


 迷走する思考に振り回されつつも黒い鎧の姿を探す。

 視界が揺れ、霞み、うまく状況の把握すら出来やしない。


「・・・あぁ、あれですか。やっと終わりですね。

 ちょっとこれはキツ過ぎですって。変なところでスパルタなんだから」


 黒い鎧は下半身だけの姿になっていた。


 あの白い光の魔術、思ってたより随分と凄い威力なんですね。何がどうなって上半分を消し飛ばすに至ったかは想像も出来ませんが。


 そんな事を考えながら私は地面にへたり込んだ。

 何処から出ているかも分からないぐらいに血がドクドクと流れている。。


「・・・あー、とりあえずは死なないようにしないと」

 

 残った魔力を全て身体の修復に回す。出血は止まるでしょうが、失くした血が増えるわけでも無いですし、削り取られた肉が帰って来るわけでも無い。まさに満身創痍のボロボロです。


「流石にこれ以上の試練は無いですよね、アリスちゃん」


 ここまで頑張ったんだし、久しぶりに優しくして下さいよ?


 そんな事を思いながら私は曇天の空を見上げていた。


今日も読んでくれてありがとう!台風ですね!早めに用事を済ませて明日は引きこもりです!(つまり、明日も更新あります!よろしく!)

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