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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
3章:儂とアヤツと望みの形
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1-8:アヤツとアヤツの夢 大丈夫、これが正解。


 無手になったからと言って相手の出方を待つ必要は無い。いえ、むしろ無手になってしまったからこそ私から攻める必要がある。

 このままだと余りに間合いが違い過ぎて勝負になるわけ無いのだから。


 強化魔術の出力に頼って黒い鎧へと接近する。

 黒い鎧は摺り足で立ち位置を整えるだけで、その場から動こうとはしない。・・・見た目ではよく分からないけど、片手をもがれているのと同様、足周りにも何かのダメージを事前に仕込まれているのかも知れない。


 そして大きく何歩か踏み込んだ時、黒い鎧が槍の先端を私の方へと向ける。

  

 身体を横にずらしたのは単なる直感。思考さえ伴わない反射的な動き。


 顔のすぐ傍で空気が掻き乱される気配を感じた。それは音さえ遅れて届くような神速の突きの名残り。


 咄嗟に意識を加速させたおかげで、黒い鎧が手元に槍を引き戻す動作だけは目で追う事が出来た。だけど、その反動で頭が刺すように痛む。


 次いで一種の間を置いて放たれる二撃目。もちろん「もう一回避けよう」なんて奇跡を願ったりはしない。


 目の前で閃光が飛び散った。

 仕込んでおいた障壁が槍の一撃を防いでくれた証拠。


 幸いにも槍の攻撃は軌道が読み易い。小さく力を集中させた障壁だけで守りは十分。


 そんな事を思った瞬間、三撃目で障壁が吹き飛んだ。

 でも大丈夫。荷物を捨ててまで確保した魔力で次の障壁を


 展開するや否や右の足先が消し飛んだ。


 あまりの衝撃で声も出ない。


 強化魔術が暴走し意識だけが無限に加速を続け、眼から耳から矢継ぎ早に入る情報が密度を上げる。


 ゆっくりと流れる時間の中で思い知る。小さな盾を構えた程度で安全だなんて馬鹿な発想だったと。

 たとえ魔術の発動前で盾の出現位置が見えなくとも、こちらが守りたい場所を予想するぐらいは容易いのだから。ましてや一度防いでしまった後の話なのだし。


 黒い鎧の動作が見える、意識の加速が暴走気味の今の私なら。

 一度手元に引き戻した槍が再度解き放たれ・・・あぁ、次は胸元へと到達し、そして再度障壁が吹き飛ばされた。


 ゆっくりと流れる世界の中で障壁がキラキラと砕け散っている。


 動きは見える。でも、ただ、それだけ。

 考える時間もある。でも、ただ、それだけ。


 この状態から私に何が出来るだろう?

 走馬灯みたいに目の前の情報や今までにあった事が頭の中をグルグル回るけど、何の打開策も思い付きやしない。


 障壁で黒い鎧の攻撃を防いで、自分の槍を拾いに行こう、なんて無策で愚かな思い付きだったのだろうか。

 あんな武器の扱いに長けた化け物に強化魔術だけで立ち向かおうなんて・・・


 そうだ!アリスちゃんが私にくれたのは魔術だ!

 肉体の強化は、確かに得意だけど、それは一緒に旅をする中で教えてもらった初歩に過ぎない。この黒い鎧がアリスちゃんからの試験みたいなものだとするならば・・・なら黒い鎧の攻略に必要なのは!


 それは前に一度だけ見せて貰った魔術。魔術に憧れる私のためにアリスちゃんがわざわざ見せてくれた、本当は彼女の主さんが振るっていたという・・・・


 術式も何も分からないはずなのに私の手の中に魔術が構築されていく。

 それは白くて何処か冷たくて、そして他の何とも隔絶しているかのようで


 迫り来る黒い鎧が振るう槍、その軌道に右手の平に現れつつある白い光を割り込ませた。


 大丈夫、これが正解。


 そんな思いが何処からともなく湧いてくる。


 術式の展開を待たずに私は右手を振り払った。


 手の軌跡を追うかのようにして明滅する白い光の束が黒い鎧と槍を打ち払う。


 魔術としては明らかに不完全。アリスちゃんがしていたように剣の形を取る事さえ出来ていない。


 でも、それでも効果は十分だった。


 私の前にあるのは消し飛んだ槍と膝を付く黒い鎧。


 やっぱり魔術で攻略するのが正解だった。そんな思いを抱きながら私も地面に膝を付き、怪我を直しながら独り言ちた。


「・・・やっぱり、難度設定、間違えてますって」


 限界を振り絞ったら勝てるかも知れないよ?みたいなのは良くないですって、本当に。



今日も読んでくれてありがとう!連続更新3日目にして既に時間が厳しくなってきたよ?大丈夫?このまま走り切れる??(自問自答)

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