1-5:アヤツとアヤツの夢 もう祭りは終いじゃ
「おぉ、めっちゃ感じ悪いの。どうなっとるんじゃ?ちょっと前まで部下思いの隊長っぽいムーブしとったではないか??」
中ボスを倒したルカ一行の様子を覗いてみれば、なんと言う事でしょう、そこには撤退を主張する部下の面々と、それを冷たくあしらうルカ隊長の姿が?!
「なんでじゃ?なんでじゃ??ちょっと前まで気分よく攻略しとったではないか。儂が目を離しとる隙に何をしとくれとるんじゃ」
儂とルカ達の過ごしておる時間に『圧縮率の差』を生じさせてはおるが、まだそこまで極端なものではない。それにアヤツらが下に降りて来ておるから、その差自体も縮まって来ておるはず。
じゃから、そんなに長い間ほったらかしにしておった事は無いはずで
となると・・・
「ルカも気が付いておるのやも知れんな。で、その上で飽きて来たから早めに切り上げようとしておると・・・
あり得るのぅ。実に有り勝ちじゃのぅ。ゲームでも『ラスボスに挑もう』と準備しておる時は楽しいんじゃが、実際にボス直前になると先が見えて面倒になったりするもんじゃし」
それを防止するために多彩過ぎる育成方向と魅力的なサブキャラまで用意したのじゃが
「中ボスの時点で仲違いしておるし、キャラの魅力で引っ張るのは無理じゃな。
育成要素も・・・ルカが強化魔術で中ボスに対応してしまった時点で関心を引く事は無いじゃろうな」
手詰まりじゃ。儂なりにアヤツの気を引ける要素を並べたつもりではあったんじゃが・・・
「まぁ、仕方ないかの。意思確認も出来ん状態での突貫工事で満足度が上がらんのは当然の事。もう祭りは終いじゃ」
最低限の『必要な対処』を行う時間が稼げただけで御の字かの。
「んじゃ、出迎えの用意を始めるとするかの。ルカ達も50層、ラスボスまではスルスルと進むじゃろうしな。
途中で一晩休憩を挟んだとして・・・時差を考えると半日弱。・・・思ってたより時間がないの。少し急がんといかんか」
間に合うはずが無いであろう作業は一旦止め、説明用の資料を引っ張り出して起動の準備。ゴミを片して、後は・・・
「・・・オヌシの姿もちょっとぐらい綺麗にしてやりたいんじゃが。儂では干渉出来んからのぅ、残念じゃ」
初めて見る姿が荒れた状態ってのは可哀想ではあるんじゃが、この白い部屋に施されていた『装飾』は、儂が『この世界』に干渉を始めた際に全てリセットされてしまったんじゃよな。
もう少し『この世界』への把握が進めば見た目程度なら好きに弄れるようになるんじゃが・・・
「そう言えば、あの装飾は誰の手によるものじゃったのかの?
奥方は心の機微みたいなものは気にせんし、昔の儂が出来たようにも思えんし、となると・・・」
儂はチラリと目を向けた。
白い空間にフヨフヨと漂う、今にも死んでしまいそうな、いや『何故死んでいないのか』不思議なぐらいに損傷してしまっている女性の姿に・・・儂は目を向けた。
「そんな状態になっておっても、誰かに見られる時は少しでも綺麗な姿でありたかった、って事かの?」
その気持ちはよく分からんが、きっと大切なモノではあるのじゃろうな。
「・・・なぁ、サヤカ殿。オヌシ、会いたい者はおらんのかの?
教えてくれれば夢の中で合わせてやれるぞ。まぁ、その程度しか出来そうにないって話ではあるんじゃが」
そんな儂の言葉が届くはずもなく、この世界を作り出した『魔術師の残骸』は、静かに白い空間を漂い続けていた。
独りで静かにフヨフヨと、いつまでも漂い続けていた。
今週も読んでくれてありがとう!盆休みは休めるので来週後半から更新頻度があがりますよ(たぶん)




