1-5:儂と見知らぬ場所 おったような、おらんかったような?
「ほぅ、確かに怪しいのぅ。なんか魔力が漏れ出とるし」
村の中央の広場に黒っぽい柱のような物が浮かんでいた。
ちょっとだけ地面から離れた状態で特に意味なく空中にピタリと静止して浮かんでいた。
「確かに何かピリピリした感じありますね」
「なかなか敏感なんじゃの、漏れとる魔力の量は僅かじゃというのに。
せっかくじゃし、ちょっと調べてみようかの?ヒアリングでは役に立てんようじゃから」
「そこは気にしないで良いですよ。遠くから来た人に森の魔物の事を聞いたところで・・・本当なら私がもっと色々と気が付いていないといけなかったのでしょうし」
「それこそ無茶じゃよ。命のやり取りをしておる最中に観察やら分析なんぞ普通は出来んからの。・・・儂の主殿は当たり前のようにやっとったが、あれは例外じゃろうし」
にしても、ゾロゾロと村の人間が集まって柱?の見物をしとるんじゃが、これ危なくないんじゃろな?
村の顔役とやらも森にでた魔物の話を聞いても対策の一つも思い付かんかったようじゃし、全体的に危機意識が弱いんと違うか、この村?
そんな風にボンヤリと柱を眺めておると、なんか小奇麗な服を着た年寄りが云々かんぬん説明を始めおった。妙にまどろっこしい上に長ったらしい説明であったが、要は・・・要は・・・
「どういう事なんじゃ??」
「えとですね、あの柱から『異界』の入口が生えて来るって事らしいです。
そして異界の存在が周囲に魔物を呼び寄せるので、異界を消すか結界で覆って封じるかしないと、村の存亡の危機になってしまうって。
たぶん森に現れた魔物も、その前兆って事じゃないんですかね」
「なるほど。すまんな、ルカ。手間をかけた。
で、異界ってなんじゃい?」
「・・・色々です。中に迷宮が産まれている事もありますし、強大な魔物がいるだけの場合もあるそうです。
うまくコントロール出来れば大量の資源を創出する場になりますし、制御に失敗すれば大変な事になってしまう、そんな場所です」
「なるほどの。迷宮でもボスでも危なっかしい事に違いあるまいし、儂が中身の確認をしてこようかの?
よかったらルカも一緒に来るかの?ええ経験になるじゃろうて」
ルカの仕事柄、これからも巻き込まれる事があるやも知れんしの、みたいな事を思っておったんじゃが・・・おや?、なんで浮かない顔じゃ?
「でも、私は魔術も使えないし、体術も槍が少し使える程度で」
「最初は誰だって素人じゃ。今の能力が足りない事を悩んでも仕方が無かろ?
魔術の使い方ぐらい儂が教えてやるから心配するな。最初のコツさえ分かれば戦闘用の術式なんて簡単なもんじゃよ」
「教えてくれるの?・・・でも貴族様に払えるものなんて」
「貴族と違うと言うとるのに。まぁ、ここで使われとる『魔術』とは少し違うものかも知れんが、儂のやり方でも同じような事は出来るでな。それで良ければ教えてやるぞ」
遠隔通信で魔術を起動ってのは儂にも分からんから『儂なりのやり方で』って事じゃな。
迷子の儂を助けてくれた事へのささやかな恩返しじゃ。
「・・・分かりました!お願いします!!」
ルカは覚悟を決めたような顔でズバッと頭を下げた。
あれじゃの、礼儀作法も日本風。やっぱナホンじゃの、ここ。
「じゃあ、これからはアリスちゃんの事を師匠って呼ばないとダメですね。よろしくお願いしますね、アリス師匠。
もっと強くなったら魔物が出て来ても村のために働けるようになれるし、それに私の・・・って師匠、どうしました?いきなり困ったような顔で」
「いやの、なんか師匠って呼ばれ方に引っ掛かりがあっての。
そう呼ばれた事があったような?無かったような?弟子みたいな存在がおったような??」
あれ?おかしいぞ?思い出せん。
魔術師が自分に弟子がおったかどうかさえ分からんとか・・・有り得んじゃろ?
もしや、これは・・・
「あれ?ねぇ師匠、柱の様子が」
そう呟いたルカの声を切っ掛けに儂の視界は暗闇に閉ざされた。
後から聞いた話じゃと柱から噴き出すように広がった闇が儂とルカを飲み込んだって事じゃったそうな。
いきなりの展開は、ちょっと困るんじゃよな。良い感じのリアクションとかも出来んし。
今日も読んでくれてありがとう!謎の平日の更新です!ちょっと時間が出来ましてね!
次はまた土日にお会いしましょう!




