1-2:アヤツとアヤツの夢 前の時は、もっと楽しかったのにな
黒く固い地面、荒れ果てた異界の建築物。
そんな廃墟の街に戦闘の音が響き渡る。
「砲撃開始!!」
魔術師隊が後方射撃を開始し、それを追いかけるようにして近接攻撃部隊が勢いよく飛び出して行く。
敵は金属で出来たゴーレムのような何か。
人間より少しばかり立派な体躯の人形がワラワラと数十体群れている。
侵入者を襲う以外の機能は一切無さそうなシンプルで意味不目な何か、そんな物が沢山。
41層以降は私達が直感的に理解出来るような自然の要素由来の敵は出て来ない。素材も行動原理も何も理解出来はしない。
まぁ、そもそも巨大な建築物が大した隙間もなく無数に立ち並ぶ環境自体、私達の理解から随分と遠くにある物なのだけど。
でも、前にアリスちゃんと来た時みたいに『天地逆さま』の状態じゃないだけ分かり易くて助かるかな?
そんな事を考えながらも、私は魔術の用意を行っていた。無数の敵を薙ぎ払う戦場の花形たる大砲役、それを今日も私が担おうとしている。少し前まで何の魔術も使えなかった私が。
「雷撃いきます!!障壁用意!!」
私の注意喚起と共に激しさを増す魔術部隊の砲撃、それに合わせ後退する近接攻撃部隊、そして彼らの前面に広がり出すオレンジ色の柔らかそうな障壁。
仲間を傷つけないかと少しばかりの不安を感じつつ、私は術式を展開する。
前方の敵集団の中央に巨大な雷が現れた。
発生地点以外には大した指向性さえ与える事が出来ていない大雑把な一撃。それこそアリスちゃんの魔術と比べれば幼稚極まりない雑な術式。
でも、雑魚を散らすなら、これで十分。
轟音と激しい光の明滅に合わせ、大量にあった金属人形の気配が消えていく。
雷で砕かれた破片がガツンガツン近接部隊の障壁に衝突しているのが、ここからでも観察出来る。
過去の探索チームが持ち帰った情報にあった通り、あれらは極端に雷撃魔術に弱すぎる。
正攻法に従い剣やら弓で立ち向かえば難しい相手だけど、弱点さえ突けば苦戦する事なぞ有り得ない。
このダンジョンの敵は全て『そんな風』に作られている。前に来た時みたいに『攻略させない事』を目的とされていない。
焼け焦げた『敵だったモノ』を前衛部隊が見分している。
40階層以降の敵は生き物ですらないから戦闘が終了したかどうかの判断はかなり難しい・・・なんか判断を諦めて残骸を一か所に積み上げてますね・・・大事なのは不意の攻撃とかが来ない事なので、あの対処方で別に問題は無いのかな?最後に瓦礫で埋めておいても良いし?
そして戦闘が終了すれば探索が再開される。
とは言え、あそこまで大量の敵がまとめて出て来た以上、このフロアの攻略は既に消化試合と言っても過言では無いはず。
だって、敵さえいなければ、ここって単なる廃墟ですからね。もちろん、私達にとっては珍しい建物が並ぶ変わった場所ではありますけど、それだけの事です。
この廃墟は41層目。ダンジョンの仕組みが代わって10層毎にしか転送出来なくなってしまったので、最も深い中継ポイントから私達はスタートした形となります。
この考えはダンジョンが50層あるいは51層で終わる事を前提にしているわけですが、前に聞いたアリスちゃんの話『王都ダンジョンの50層の下に外の世界との接点がある』という事を考えれば、恐らく最下層が下にズレている事は無いはずです。
しかし、まぁ、今までの探索部隊が4体のボスを討伐してショートカットを通してくれているとは言え・・・
「先は長そうですねぇ」
一層目で一日かかっちゃいましたし。
「そうっすよ。だから、しっかり休まないとダメっす」
慌ただし気な様子の見習い君が擦れ違いざまに囁いた。
ふむ、確かに休息は大切です。アリスちゃんも食事や寝床にはかなり力を入れてましたし。
と言うか彼が慌ただしいのも食事の準備をしているからですが。あっちこっちに調理用具なら燃料を配置して回って大変そう。
・・・私の空間魔術では『時間』が止められないから作りたての食事を全員分用意するとかが出来なかったんですよね。申し訳ない話です、ホント。ご苦労をおかけします。
さて・・・する事が無くなってしまいました。私はろくに料理も出来ないですし、この段階で使う物資は、普通に運んできた物からになるわけですし。
そうですね。使ってないけど槍の手入れでもしますか。とりあえず磨いていると気分が良くなりますし。
「おっ、なんだい、隊長。魔術しか使ってないのに槍の手入れかい?熱心な事だね」
「あら、副長、今日はお疲れ様でした」
ベテラン女戦士と言うか、ベテラン女傭兵みたいな雰囲気なんですよね、うちの副長。
「隊長も凄かったじゃないか、あれだけの敵を一網打尽。大魔術の面目躍如ってとこだな。マジで爽快だったぜ」
「いえ、あれはそんな大層なものじゃないですよ。敵に設定してある弱点を魔術で突いただけの話ですし」
「それを当たり前のように出来るのは、オマエさんぐらいなんだけどな。
それでだ、どうだ?このダンジョン、攻略は問題無く出来そうか?」
「・・・どうでしょう?雑魚戦は余裕でしょうけど、ボスが未知数なので」
「前に来た時の経験からのヒントとかは無いのか?」
「そもそも敵もボスも何も無かったですからね。その意味では40層のボスも同じだったんですけど」
「環境から予測が付くだけで随分と楽だったそうだぞ。反対属性が弱点になるように用意されてるみたいだからな、今の王都ダンジョンは。
で、この流れで言えば、次のボスは雷が弱点になると思うんだが」
「・・・私が得意なのも強化魔術と槍なんですけどね、本当は」
「そう言うなって。オマエが槍を振り回す必要が出て来た時点で結構ヤバイだろ。前線が押し込まれてるって事なんだから。
じゃ、明日以降も頼むぜ、メイン火力さんよ」
それだけ言うと副長はシャッと手を振り颯爽と去って行くベテランムーブ。
・・・副長が言う事は分かるのですが、急に使えるようになった魔術だけを当てにされると、自分の力を認めてもらっている感じがしなくて、少し座りが悪いんですよね。
もちろん、贅沢な話だってのは分かっているのですけど。
そんな風に下らない事を考えながら私は食事の時間まで独りで大人しく槍の手入れをしていました。
アリスちゃんと来た時は、もっと楽しかったのにな、なんて事を思いながら。
今日も読んでくれてありがとう!サクサク進むよ!話の筋は終わりまで決めてるのでグダグダしないよ!




