1-1:アヤツとアヤツの夢 全ては、この時のために。
「たいちょー、まだっすかー?」
「はーい、もう行きますよー」
外から私に呼びかけるのは見習い探索者の一人。まだ実力不足ではあるけれど、熱意と将来性を考え雑用係として起用された。
「荷物の最終便はゲートの前に積んであるっす。予備の武具と追加の食糧っすね。隊長が魔術で格納する分と『もしも』に備えて分散して持って行く分っす。
まぁ、俺個人としては隊長に何かあった時点で探索は終了だと思ってるんで、重かったら置いていくのもありかと思ってるっすよ」
「うーん、それは私の評価が過大な気がしますね。私なんて少し魔術が『得意』なだけの何処にでもいるギルドマンに過ぎないですから。それこそ下層のボスに瞬殺されたって不思議は無いですよ」
「いやいや。隊長より対応力のある人なんてそうそういないっしょ?だからこそ、王都ダンジョンの攻略部隊にも抜擢されてるわけだし」
「そんな事ないですよ?私なんて師匠と比べたら全然ですし。まだまだ子供の真似事の域を出ていません」
空間魔術の容量も小さいですし、魔術の展開は遅いし。
「それ隊長の師匠のレベルが意味不明なぐらいに高いだけっすよ。と言うか、攻略部隊の人達からも実在の人物か疑われてたっすよ?」
あら、それはいけませんね。
「そうですね・・・王都の創作料理のレストランあるじゃないですか?あの煮込み料理が凄く美味しいお店」
急な話の転換に見習い君の顔に疑問が浮かぶ。
「あのデッカイ店っすよね?弁当でも何でも異常に旨い店」
「そこのオーナーが私の師匠です」
「は?!貴族かなんかだったんすか?!」
「いえ、師匠の気まぐれで作った店が大成功しちゃっただけです。と言うわけで、師匠の実在性の証明は完了ですね」
「えぇ?!ますます意味不明になっただけじゃないっすか・・・」
困った顔の新人君を見ていると自然にフフフと笑いが漏れる。そうですよね、客観的に見れば『彼女』って本当に意味不明ですよね。
その時
「おい!そろそろ出発だって言ってるだろうが!!何してんだ二人とも!!」
「はーい、いま行きますよ」
そそくさと新人君を引き連れゲート前へと向かう。
そこには既に部隊の皆が勢揃いしていた。近接攻撃部隊、遠距離攻撃部隊、魔術師隊、索敵・調査部隊、補給部隊、その他諸々、総数で50名を超える本格的な集団です。
「おまたせしました。さぁ、行きましょう、皆さん。私達のこれからのために」
おぅ!と大きな声がゲート前に響き渡る。
私達は4番目の探索部隊。生まれ変わった王都ダンジョンを探索し、災害が再び発生しないようにコントロールする事を最終的な目標としている。
「いよいよだな、隊長。頼りにしてるぜ」
私と同じ槍使いのベテランが戦意の燃える笑顔で呟いた。
ちなみに腕利きの女戦士で私とは違って凄みのあるカッコ良い系の人だったりする。
「ええ、私も頼りにしてますよ、副長さん、私には圧倒的に経験が不足してますからね。お願いしますよ?」
「そこは任せておけ。隊長の魔術があればアタシ達は無敵だからな!」
そんな彼女の言葉に私は曖昧に笑って答えた。
私の魔術は、あの日、唐突にダンジョンから帰還した日、前触れもなく極端に発達した。
強化魔術しか使えなかったはずの私が一夜にして『ありとあらゆる魔術』を使えるようになってしまった。
いえ、それどころかアリスちゃんが使っていた術式の一部さえも・・・
そして、夢にまで見ていた『憧れの魔術』の力を駆使し、私はギルドの中で存在感を強めて行った。全ては、この時のために。
彼女は、まだきっと、あの真っ白な場所にいるはずだから。
「・・・いま迎えに行きますからね、アリスちゃん」
あれから二年。
彼女に会うための探索がいま始まった。
昨日は前作をアルファポリスに移植してたのでお休みでした。向こうのアプリ版の方が読み易いのは読み易いんですよね。気が向いた人は読んでみて?
と言うわけで今日も読んでくれてありがとう!




