2-9:儂とアヤツと地下迷宮 終着点はすぐそこじゃ
「廃墟じゃな」
「これって建物の残骸か何かですか?」
アリスちゃん作の30層目から50層目への直行ゲートを潜って辿り着いた先、そこは何故か滅茶苦茶な状態でした。
「ボスが暴れたとか、そんな感じでしょうか?・・・それにしたって建物をわざわざ壊して積み上げる意味は分かりませんけど」
なんなのでしょうね、ここ。地面は黒っぽい得体の知れない何かだし、瓦礫ばっかりあちこちにあるし。見渡す限り同じ風景が広がっていて・・・正直、気が滅入ります。
「この瓦礫は上から落ちて来たようじゃな。恐らくはこの50層目は『本来の地下の光景』とリンクしてしまっておるのじゃろう。
探索の情報を持ち帰って来た冒険者の報告では40層目以降には『何も無かった』たらしいからの。
未設定のダンジョンの階層、地下に進む程に濃くなる魔力、儂らが生活しておった世界の下に存在しておったもの。その辺りの要素が重なっておったのが、この場所なんじゃろうの」
なるほど。アリスちゃんはちょいちょい難しい事を言いますね。ちっとも分かりません。
とは言え、何も分からない状態ですと一緒にいる意味もございません。ので、彼女の視線を追って思考を辿ろうとしてみると
「おぉ、なんです?!何かが空から生えている?!!」
「気が付くの遅いのぅ。ゲートを出た瞬間に上方向からの圧迫感があったじゃろ?」
分かりませんって、そんなの!
「儂もハッキングの途中で気が付いたんじゃが、アレはこの世界の前段階の名残じゃな。恐らくは作り切れんで路線変更して今の文明レベルになったんじゃろうて」
「前段階?」
「あれじゃ、神様目線的な話なんで気にせんでもええ部分なんじゃが・・・そうじゃな、ここにある瓦礫の材料になってるのな、儂が元々おった世界にあった物なんじゃ」
「それは、つまりアリスちゃんの世界は空から建物が生えている??」
「おー、なるほど、そう来るか。建物はちゃんと地面から生えとるぞ。安心しとくれ。ここは『儂の世界の模倣』、その天地をひっくり返した状態なんじゃ、たぶんの」
ついでに言えば崩壊もしとるがのー、そんな事を言いながらアリスちゃんはポテポテと歩みを進めて行きます。
残骸ばっかりの寂しい場所で何処に向かって歩いているのでしょうか。
「探索班はいくつかの部隊に分かれて調査を行っておったはずじゃ。で、そのうちの少なくとも一つが『魔力の流れ』に影響する何かを発見し、いらん事をしてもうたせいで『王都で魔術を使うと汚染される』って事態が起きたんじゃろう。
で、問題はそやつらが何を見つけて、何をしてもうたかって事なんじゃが・・・はぁ、予想通りじゃ。ほれ、ルカ、見てみぃ。もう危なくないから」
ん?いったい何を?
「・・・これは探索をしていた人達の成れの果てですか」
瓦礫の傍に黒い人型の魔物の遺体がまとめて置いてありました。同士討ちなのか、あるいは50層の守護者みたいなのが存在しているのか。
「そじゃな。世界の下にある魔力源と魔力の通路であるダンジョンの間にあった『栓』あるいは『蓋』的な物を外してしまったんじゃろうな。
恐らくの話ではあるんじゃが、この世界の住人は『下の世界にある魔力』をそのまま使えるようには出来ておらんのじゃ。危険な要素を丁寧に漉して、安全に使える状態にして放出する、それがこの王都ダンジョンの役割、そんな気がするんじゃよ、儂は」
「すみません。よく分かりません。それで私達は何処に向かえば良いんですか?
ここは長時間彷徨うには辛い場所ですし、場合によっては早めにキャンプの用意をしないと」
そんな私の言葉にアリスちゃんは何故か遠い目をしていました。まるで何かを懐かしむような、そんな不思議な瞳。
「あぁ、それもそうじゃな。じゃが、大丈夫じゃ。ここまで深層に降りて来れば鈍い儂でも分かる。この世界の底に何があるのか、この世界の構成要素として何が含まれているのか。
それにじゃ、ここまで近距離におるなら干渉する事もさして難しい事では無いからの」
アリスちゃんが静かに小さな手をかざす。
何かを掴むように、あるいは何かを放り投げるかのように。
「・・・少し長くはなるが階段でええじゃろ」
黒い大地に現れたのは何かで切り取ったような真四角の穴。そして、その中には下り階段が
「行くぞ、ルカ。途中で少し足踏みをしてしもうたが、終着点はすぐそこじゃ」
吸い込まれるようにして暗く黒い階段を下り始めるアリスちゃん。
私はただ付いて行く事しか出来なくて・・・
その先で、私は彼女に出会いました。
それが私の物語の始まりだったのか、終わりの始まりだったのか、あるいは最初から何も始まってすらいなかったのか。
私はそれすら分かっていません。
今もまだ何も分かっていません。
今日も読んでくれてありがとう!次で一段落!と言うわけで、また来週!




