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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
2章:儂とアヤツと世界の仕組み
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2-5:儂とアヤツと地下迷宮 パワーと突撃が全てを解決するのです



「先手必勝じゃ!!」


 サイケデリックな何かに青色に輝く槍が何本も突き刺さり、その身体を地面に縫い付ける。


「飛ばれたら堪らんからの!

 んじゃ、行けルカ!抑えは儂に任せろ!!」


「合点です!」


 私の手の中にあるのはアリスちゃんが魔術で投影した槍。短時間しか使えないけど発揮出来る力だけは随分と大きな魔術の槍。


 ノタノタしている赤と紫の何物か、それに速攻で槍を叩き付け無力化するのが私の仕事。


 強化魔術を全開にし距離を詰める。


 神輿の残骸を踏み越え、地面を強く踏み切り、赤と紫の塊に向け宙を舞う。


 私は突き進む、そこかしらに突き立つアリスちゃんの槍を足場にして。


 そして、私は見つけた。


 サイケデリックな何かの中央。羽の根本に丸い塊がある。それは虫の腹部のようであり、人の頭のようにも見える。

 実際にはどちらか分かったものでは無いけれど、まぁ、急所である事に違いはないでしょう。つまり、私が狙うべき場所である事は確実。


 目標近くの槍の上で踏切り、私は大きく跳躍する。


 中空で槍を大きく振りかぶり、目標を確認する。


 うん、大丈夫。これは私が知っている距離だ。


 必中を確信し投擲する。


 私の手から離れた槍が想像通りに目標に吸い込まれた。


 その直後、目標の周囲で青い光が明滅し、視界を混乱させる。


 アリスちゃんが作った槍が込められた力を周囲に撒き散らしている。 

 でも、私は着弾の音を耳にしていない。

 投げ放った槍が目標を貫く前に自壊するなんて有り得ないはず。

 となると、光で確認出来ないけど、サイケデリックな代物には強力な障壁が?


 そんな事を考えながら私は一旦着地した。そして、先の推論を裏付けるように私の前に再度『武器』が投影された。


 それは突き通すための鋭い槍じゃなく、力で打ち倒すための大きな刃が付いた斧槍。


 長柄の武器を手に取り、私は大きく振りかぶる。重量級の武器なんて技で扱えるものじゃない。投擲なんてもっての他だし、繊細な移動を交えて振るう事も出来やしない。だから・・・


「でぇぇぇぇいいい!!!!」


 目の前にあった虫の羽のようなモノを薙ぎ払う。


 赤と紫の甲殻のようなモノを打ち砕く。


 陶器を地面に叩きつけたかのような音が幾重にも響き続ける中、私は何もかもを砕きながら再び距離を詰める。

 

「見えた!」 


 そして目標に近づくと同時、サイケデリックな巨体のあちこちが震えた、まるで飛び立って逃げようとするかのように。


「逃がすわけ無かろうが!」


 アリスちゃんの声が響き、無数の青い槍が目標の全身に向け降り注いだ。


「■■■ッ■■■■■■■■!!!」


 悲鳴のようでいて奇妙な音としか表現出来ない何かが響く。


 それを背景に私は斧槍を振り下ろし続ける。


 一枚また一枚と甲殻を打ち砕き、一歩ずつ丁寧に歩みを進めて行く。


 そして唐突に鉄を打つような音と共に斧槍の侵攻が食い止めれた。


 これか?!この壁が投擲を防いだんだ。なんてインチキな。


 それに向け私は斧槍を愚直に振りかぶり叩き付けた。

 敵はアリスちゃんに動きを封じられている。だから私は自分のやる事だけに注力すれば良い。守りなんて気にせず、ただただ全力で攻め続ければ良い。


 だけど叩きつけても光の壁は壊れない。だから、もう一度叩き付ける。


 明滅するも、まだ壁は健在。


 更にもう一度叩く。やっぱり壁は破れない。


 でも、衝撃の全ては支えきれなかったようで先端が少しだけ壁の向こうに食い込んでいる。


 右足を大きく後ろに引き斧槍の構えを変える。出来る限り水平に、そして先端を敵に。

 普通なら加速無しじゃ意味の無い構え。けど、私の魔術があれば。


 瞬間的に強化魔術の出力を上げる。


 世界が粘り気を増したように重くなり、音が遠くなり、そして消える。


 極限の集中の中、引いた右足を全力で踏み出すのに合わせ、上半身の捻りも加え、斧槍の先端へと全ての運動エネルギーを集める。


 分厚い壁を破るのは、いつだって突撃だ。私の経験がそう教えてくれる。


「貫けぇ!!!」


 全身の力を乗せた私の突撃が障壁に突き刺さる。


 障壁の抵抗を食い破った実感と目標の丸い部分に斧槍が食い込む感触、それらが私の心を満たしてくれた。

 

 あぁ、これで私も役に立てたのだと。


 そして、気が緩んだからだろうか、強化魔術と意識の過集中に唐突な限界が訪れた。

 音が戻り、視界の情報量が減り、それに何より動きが重く遅くなる。


 さっきまでは身体の一部のように扱っていた斧槍が途轍もなく重い。私は重さに振り回されながら、突撃が開けた大穴の近くに斧槍を叩き付けた。もうそれで精一杯。


「よっしゃ、よっしゃ。これで十分じゃ。後は任せておけ」


 後ろから聞こえるアリスちゃんの声がイベントの終了を教えてくれる。


 ぼんやりと眺める私の眼の間でサイケデリックな赤と紫の塊がピシピシと薄い氷に包まれ始めている。


「よく頑張ったのルカ。儂一人では飛び立たせずに封印する事なんて無理じゃった。今日の勝利はオヌシのおかげじゃ」


 アリスちゃんはニコニコと笑っている。

 良かった。頑張って良かった。


「しかし、急な難度の上昇が気になるの。普通の探索者が来ておったら確殺じゃよ、こんなん。

 ・・・これ流石に次のボスは考え無しで行ったらヤバイやも知れんな。今回も余裕かましておったせいで神輿が爆散しとるわけじゃし」


 ええ、その通りです。少しの油断で丸一日かけて造った快適な神輿が木っ端微塵。タイパ最悪です。同じ物を作っても次のフロアでまた壊される可能性が高いでしょうし、そうなると・・・


「ハッキング終わったら、次の階層を覗いてみて、それから移動手段を考える事にしようかの。

 結構なハイペースでここまで来とるし、何日か止まったところで文句言われる筋合いもなかろ。それに今日は結構な死闘で疲れたしの」


「・・・確かにそうですね。ありがとうございます」


 アリスちゃんは大丈夫みたいですけど、私はちょっと駄目みたいです。疲れで立っている事さえ出来そうにありません。


「あぁ、ええよ、ええよ。ちょっと座っておれ。過度な集中は肉体と言うより脳みそに疲労が来るからの。無理せんでええ」


 脳ですか。なんだか不思議ですね。何時の間にか私もそんな事を気にするぐらいに進んでいたなんて。


「ほたら、とりあえずは今日の寝床だけ先に作るとするかの。マジでアイツ滅茶苦茶にしよってからに」


 そう言ってアリスちゃんは神輿の残骸の中へと探索に向かいました。


 あんな大変な戦闘・・・何回も大規模な魔術も発動してたのに・・・それなのに何故アリスちゃんは少しも疲れた様子を見せたりしないのでしょう?


 痩せ我慢?それとも、あの程度は彼女にとっても物の数では無いという事?


 よくよく考えると謎の存在ですね、アリスちゃんも。



今日も読んでくれてありがとう!いやはや最近ちょっと時間が無くて大変です!カワック(というか換気扇)が壊れて家の中の湿度も高いしね!(除湿器サイコー!)

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