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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
2章:儂とアヤツと世界の仕組み
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2-1:儂とアヤツと地下迷宮 これ絶対に攻略じゃないですよね?



 草原を走る。


 前を行くのは私の師匠。キレイな金色の髪をなびかせ、真っ直ぐ力強く突き進んでいる。


 陽光の下で輝く彼女の髪は本当に綺麗。

 そして、迷いなく前進する小さな背中は信じられないぐらいに頼り甲斐がある。


 その姿は私の憧れそのもの。


 だから私は彼女の背に必死に食らいつく。

 いえ、付いて行くだけじゃ駄目。


 だって、私は、今の私には


 アリスちゃんが走りながら右手を小さく掲げる。


 その先にいたのは異界の定番である岩の巨人。

 身の丈は・・・やはり特別なダンジョンだけあって通常の物より随分と大きく5メートル以上はあるように思える。それこそ周囲に生えている木よりも余裕で大きいですし。


 そんな巨体に目掛け、私は加速する。


 強化魔術の出力を上げ、力強く踏み込み、アリスちゃんを追い抜き、前へと躍り出る。


 すれ違った瞬間、アリスちゃんの少し驚いた顔が見えた。


 距離が近づき岩巨人が戦闘態勢に入る。

 気だるげな立ち姿から、四肢に力の籠った戦うための姿勢へと、一人で突出する私を仕留めるために自分の有り様を変えていた。


 そして、そんな巨人に相対する私が持つのは愛用の槍のみ。

 異界から採れた金属で作られた妙に魔力と馴染む槍。それだけを頼りに私は迷宮の守り手へと突き進む。


 岩の巨人との距離が急速に縮む。


 大きい。怖い。


 彼我のサイズ差が原始的な恐れを呼び起こす。


 でも、私は怯まない。心の中に恐れがあろうとも身体を動かす事は出来る。

 本能に従うのでなく、頭で考えて理詰めで身体と魔力をコントロールする。そうすれば、どんな時だって最高の力を発揮する事が出来る。私はアリスちゃんから、そう教わっている。


 幸いにも私の得意な強化魔術は思考の時間を確保するのに最適。術式によって拡張された感覚器が世界の解像度を上げ、加速された意識が大量の情報を処理し吟味するだけの時間を与えてくれる。


 岩の巨人の間合いまで残り数歩。


 その時、巨大な拳が地面へと振り下ろされた。


 恐らくは牽制目的の一撃。足元の岩肌が派手に砕け、粉塵と破片が敵対者の行動を妨げる、そんな予測に基づき動いているのだろう。


 もちろん、私はそんな思惑に従ってやるつもりなぞ無い。


 瞬間的に強化術式へ流す魔力量を増やす。そして、意識が霞む気さえする程の強烈な踏切り。

 

 極端な強化は瞬く間に失われる。だけど、それで十分。目標はきちんと果たしている。


 私は振り下ろされた腕をすり抜け、巨体の背後へと立ち位置を変えていた。


 背後で響く地面が砕ける音。

 だけど、巨体の身体が壁になっているおかげで私には何の影響も無い。


 いける。


 そう確信し、私は槍に魔力を込める。穂先が蒼く輝き必殺の威力を蓄える。


 槍の利点を捨てるかのように巨体に向け、私は更に踏み込んだ。


 全身を捩じり、槍に力を溜め


 そして解き放つ。


 今の私が出来る最高の一撃。込められるだけの魔力と運動エネルギーを利用した最速で最大の攻撃。


 蒼い光としか表現出来ない一撃が巨体の背後、腰あたりへと吸い込まれ、食い破り、めり込み、突き進み、そして・・・


 唐突に槍が縫い留められた。 


 弾力のある何かに行き当たった事は分かる。

 それは、まるで何かに絡めとられたようで


「退きます!」


 やってしまった。流石ダンジョンのボス個体。自らの体内に罠を仕込むなんて。


 巨体の体内に取り込まれた槍を手放し、私は大きく後ろに飛ぶ。 


 残念だけど、ここはアリスちゃんに任せるしか無い。・・・私が働く事で少しでも負担を減らせればと思ったのですが・・・残念です。


 恥ずかしさと無念さを抱きつつ、アリスちゃんの方へと視線を向けると・・・何故か半笑い。


 そして、土色の巨体はアリスちゃんが何をするまでも無く、氷のような物に浸食され、動きを封じられ始めている。


 私は無意味に華麗な着地を決め、思案を始めます。


 まぁ、何も分からないのですけど。


「なぜ?」


「説明が途中じゃったが、クリアするんでなく封印が目的じゃからの。

 ボスも倒すんではなく、動けんようにする事が必要なんじゃ」


「なるほど・・・先走りました。ごめんなさい」


「いや、ええんじゃよ。どうせ弱らせんと封印なんぞ出来んからの。

 ほれ、この人形もルカが傷つけた所を起点に術をかけたのでな。危うく瞬殺されるところじゃったが」


「・・・もし私が殺ってしまっていたら、どうなったんでしょうか?」


「そじゃの。少なくとも20層までは徒歩で進むしか無かったじゃろうな」


「おぉぉ、ヤバかったです。ホントごめんなさい」


「ええんじゃよ。結果オーライじゃ。にしても、いつの間にか強くなっておったんじゃな。異界のボスなんてベテランのギルドマンでもチームで取り掛かる相手じゃろ?凄いぞ、ルカ。儂も師匠として鼻が高い。誇らしいやら、嬉しいやらで心がポカポカじゃ」


 ハーッハッハッハ!!とアリスちゃんは胸を張って大仰に笑っている。


 魔術の弟子として私はダメダメだったから「せめて自分なりの強さを」って思ったのだけど、良かったのかな、これで?師匠が笑ってくれてるなら、この方向性で良かったのかな?


「ところで師匠、何をやってるんです?」


 氷の塊になったボスに紐みたいなのを沢山刺して。


「ん?ハッキングの用意じゃよ。ほれ、最初の扉の前でもやっとったじゃろ?今回はボスを起点にして中を更に弄るわけじゃな。

 終わるまで、それなりに時間がかかるから野営の準備をしといてくれ。任せたぞ、我が弟子よ」


 戦闘は一瞬で終わり、その後はまた地道な作業。やっぱり、これ絶対に攻略じゃないですよね?


「あぁ、そうじゃった。槍もほじくり出しておいた方がええぞ。ハッキング完了時にどんな状態になるか分からんでの」


 半分ぐらい氷の中なんですけど・・・


「晩飯は角煮にするから頑張るんじゃぞ」


 そんな事を言うアリスちゃんはいつも通りの楽しそうな笑顔でした。


 ・・・ご飯の時間までに出て来るかなぁ、私の槍。



今日も読んでくれてありがとう!ちょっと忙しかったけど、なんとか土曜の投稿出来ました!

と言うわけで気が向いたらブックマークとかポイント評価で、時間に追われている筆者を応援してみよう!喜ぶよ!

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