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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
2章:儂とアヤツと世界の仕組み
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1-1:儂と混乱する王都 こんな事もあろうかと(後付け


「アリスちゃん!どうしたら良いの?!」


 屋根の上で茫然としているとルカも登って来た。じゃが・・・


「分からん。儂にもどうしたものやら。そもそも、これから何がどうなるか想像も付かん」


 王都の『柱』は特殊なんじゃ。まだ扉も産んでおらぬのに『王都ダンジョン』という異界が存在しとるし、しかも4本もあるし。

 恐らくはサヤカ様とやらが世界の仕組みに干渉して王都を支えるためのリソース源として異界を使い倒しておるんじゃろうが


「となるとじゃ、いま王都に吹き荒れておる魔力は異界由来のものか。ダンジョンから王都に向けて魔力が流れていると、そういう事か?」


 だが扉、つまり魔力の流れの出口が無いはずじゃ。足を運んだ事は無いが、王都ダンジョンは短距離転移の仕組みを用いて人員を内部に送り込んでおるそうじゃし。

 であれば50層か?


「考え難い事ではあるが、誰かが50層に到達した事で王都ダンジョンの本来の扉が開いてしまったという事かの。・・・まぁ、だとしても柱が伸び続けている意味は分からんままなのじゃが」


 しかし、どうなんじゃろな?魔力が吹き荒れて相当にビビってしまったが、よくよく考えれば特に害は無いのかも知れんの。

 強いて言えば王都の結界の中の魔力濃度が上がっておるから『魔術を使うと暴発しやすいですよ』って事ぐらいか?


「ねぇ、アリスちゃん。王都ダンジョンの扉が開いて、しかも、それでもまだ柱が残っている状況って大丈夫なのかな?

 扉になる前の柱の傍で魔術を使うと汚染される可能性があるんですよね?」


 汚染のリスクのぅ。『儂が近づいたら異界が展開されるタイプの柱』であれば汚染の可能性はあるが、王都は儂がこの世界に来る前から立派に柱を生やしておったそうじゃし、普通に考えると『ノーマルタイプの柱と異界』じゃろうから、その心配は無いかの?

 王都ダンジョンの最下層にもコインロッカーと儂が待っておったら、ある意味ではおもろいとは思うが。


「大丈夫じゃと思うぞ。調査の途中ではあるが、柱と異界には2種類あっての。王都のタイプは柱が昔からある事から考えて『大丈夫な方』に該当するはずじゃ。

 じゃから、もう少しここで様子を見ておるのが良いじゃろうな。少なくとも儂らより役所の人間の方が調査に向いとると思うし」


「そうですか。なんだか嫌な予感がしてしまって」


「儂もそんな感じじゃよ。正直に言えば『早くルカを逃がした方がええんとちゃうか?』みたいな事を頭の中でグルグル考えておるし。

 不安になると逃げ腰になってしまうのは誰しも同じじゃからの。

 さぁ、下に降りて少し情報を集めるとしようぞ。ここで焦っても仕方が無いからの」


「そうですね。ところでアリスちゃん、さっきの」


 言葉の途中でルカが形相を変えた。


「あっちです!あっちから悲鳴が?!それにこれは!!」


 ルカの気付きに儂も追随する。


 クソッ!これは・・・黒い魔物の声じゃ!

 あの田舎の村で聞いたのと同じ、人が魔物に転じた際に散々聞いたあの声じゃ!


「ルカ!行くぞ!」


 屋根から飛び降りギルド内へと駆け戻る。

 目的はカウンターに放置したままの荷物一式。土産やら装備やらをグチャクチャに詰め込んだ背嚢から、念のため作っておいた儂の短槍を取り出した。


「アリスちゃん!ギルドの人に魔術を使うと危ないって伝えておいた!次はどうしたら良い?!」


「出来る限り広範囲に魔術封じの結界を貼るしかなかろうな!柱をハックして槍の術式を拡大してみる!と言うか、今はそれしか思い付かん!ルカよ!露払いを頼むぞ!」

 

 それだけ告げると儂は走り出す。

 後ろから「合点です!」と威勢の良い返事が聴こえた。


 儂はルカの出せる全力程度に合わせ王都の中を飛ぶように走る。


 柱が伸びだして、まだ数分しか経っていないと言うのに酷い有り様じゃった。

 火も出ておるし、何かが倒壊する音は聞こえて来るし・・・それに魔物の気配もする。


 人が魔物に変じ、魔術で対応しようとして更に魔物が増え、そして荒れた環境で発動させた魔術が暴発し・・・みたいな悪循環が発生しておるのじゃろう。


 もう一刻の猶予も無いのは明らかじゃ。


 通りを駆けながら槍に込めた術式を弄り始める。これは異界から採れた素材を使った『魔術封じの機能を込めた槍』。魔力障壁を使う相手でもルカ単騎で打ち倒せるよう作った特製の槍。儂の分はその端材で作ったオマケみたいなものなんじゃが・・・こんなところで使い道が産まれてしまうとはな。思いもよらなんだわ。


 儂の前を行くルカが槍で魔物を打ち倒した、

王都の誰ぞが変化したであろう魔物を。


 儂の歩みを止めぬために、被害を最小限に食い止めるために。

 ただ、それだけのために槍を振るいルカは手を汚す。


 儂が地下の話を役人にしたせいか?

 それとも特に理由も無くダラダラと王都で過ごしてしまったせいか?

 なんで儂がルカに汚れ仕事をさせねばならんのだ?


 思考が乱れる。が、もちろん理解はしておる。今の儂の速さについて来れるのも、意図を理解してくれるのも、ルカだけという事は。


 ただ少しやるせない気持ちなだけじゃ。


 儂らが目指しておるのはギルド本店から最も手近にあった柱。市場を抜けた先にある一本。

 今も勢いよく上に上に伸びているおかげで道に迷う心配はちっとも無かった。


 大きく跳躍し何処ぞの建物の屋根に着地。

 木製の屋根を踏み砕きつつも、更にそこから大きく跳躍する。


 眼下に広がるのは混乱の広がりつつある王都。魔術の力に依存した人間ばかりでは、この混乱を納める事は出来んじゃろうな。


 肉体の強化を最大に。


 視界が広がり、音が消え、世界の解像度が上がる。


 高速で接近しつつある柱の細部も、屋根の上から儂を見つめているルカの気配も、なんだって観察出来るし、なんだって理解出来る気がした。


 じゃが、いま集中するべき事は一つだけ。


 柱を観察する。見た目には石か何かで出来ているようにしか見えないが、実態は大量の術式の塊をそう見せかけているだけの代物。


 そして、儂は術式の隙間を、綻びを探す。


 幸いにも柱を構成している術式の精度はそう高くはない。むしろ雑多なコードを力技で押し固めたような、そんな雑な仕上がり。


「ここじゃ!」


 全身の力を込めて槍を投げ放つ。


 一瞬の破砕音と共に槍は柱の中へと取り込まれ・・・


 投擲の反動で錐揉状態で落下しつつも、新たな結界が王都の上空から広がりつつあるのが見えた。


「よっと!やりましたね、アリスちゃん!」


 ルカに受け止められ視界の回転が止まる。次いで何処へと着地し懐かしい地面の安定感。


「ナイスキャッチャじゃ。回転したまま地面に激突コースかと思ってビビッておったんじゃ」


「大事な師匠が落ちるのを見てるだけなわけが無いじゃないですか。で、これで納まったんですよね?」


「とりあえずはの。王都の中で魔術を使えんようにしただけじゃが。まぁ、全てはこっからじゃよ」


「・・・そうですね。今からが大変そうですね」


 役人の腕の見せ所じゃな。


「ところで、そろそろ降ろしてくれんかの?お姫様抱っこスタイルはなんだかむず痒いんじゃ」


「もう少し良いじゃないですか?お疲れですし?」


 えぇ?お疲れやったらええもんなんか?

なんか儂でさえ空気を読み間違っとる感じがするぞ?気のせいか?



今日も読んでくれてありがとう!サラッと今日から2章です。なんで章が変わっているか?を考えると筆者の思考が読めて面白いですね??

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