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1-3:儂と見知らぬ場所 知らない星空


 交易者が手綱を握る荷車。儂達はその業者席に同乗させてもらっておる。

 ゴトゴトと揺れる荷車の上でルカと雑談しつつ到着までの時間を潰しておるわけじゃが、既に辺りは薄暗く、夕暮れ時となっておった。


「いやはや、アリスちゃんがいてくれてホント良かったです!私だけなら交易者さんと一緒に死んじゃってました!ラッキーです!」


「あ?お役に立てて嬉しい事じゃが、ここって村の近所の森なんじゃろ?」


 大量の死亡リスクがご近所さんとか有り得んじゃろ?


「ええ、でも今まではこんなに『魔物』が出た事なんて無かっんです。今日のお昼からで、もう六回。有り得ないですよ、こんなの」


 ルカは困惑した様子を浮かべている。


 という事は、この状況が盛大なドッキリでない限り『儂と偶然出会わなかったらマジで命の危機じゃった』って事なのじゃろう。

 まぁ、交易者とか呼ばれている中年の男も疲れ切った顔で馬的なサムシングの手綱を引いておるし、そこは疑っても意味の無い事じゃとは思うけどの。


 つまり、ここは儂が主殿達と暮らしていた日本とは少し異なる場所みたいなんじゃよな。人型のトカゲやら超大型の鹿やら熊やらが普通に闊歩する意味不明な土地なわけじゃし。ついでに言えば、そこの住人は・・・


「アリスちゃんはお貴族様だから知らないでしょうけど、交易者さんが運んでくれている『賢者の石』が無かったら田舎の村なんて食べるものが無くなってアッと言う間に滅んじゃうんですから。村の近くの森に魔物が発生してるなんて死活問題ですよ、死活問題!

 戻ったらギルドに調査依頼を出しておかないと」


 お貴族様・・・一体どれほど世俗から離れて生活しとるんじゃろうな・・・現代で貴族、そりゃおらん事は無いのかも知れんが。


「あー、ところで賢者の石って何なんじゃ?凄い名前だから少し気になるんじゃが」


 んと、それはですねぇ、と目線を泳がすルカとやら。大切さを力説しとったわりには詳しくないんかい。


「お嬢ちゃん、これだ。土に埋めると作物が育つ快適な環境を整えてくれる。効果は土壌の改良と肥料の代わりってとこだな」


 交易者が『白く小さな石』を此方に向け掲げていた。


「ほぅ、凄いやつなんじゃの、ここの魔術師は。さっぱりロジックの想像がつきやせんわ」


「へぇ、アリスちゃんでも無理なんですか。あんなに凄い魔術を使ってたのに。

 あれって標準術式じゃ無いですよね。私、あんなに素早く力強く動ける人なんて見た事なかったですもの」


「儂も主殿の真似をしただけなんじゃが、術式自体はそんなに難しいもんでもないぞ。制御が難しいだけじゃな。

 オヌシも体術はそれなりに出来るようじゃったから、練習すればどうにかなると思うぞ?」


「・・・いえ、私は無理ですよ。魔術はからっきしで」


 俯き暗い雰囲気を醸し出しておるが


「さっき、使っておったではないか?握り飯を頂く前の時に。青く光って綺麗にしてくれるやつ」


「あれは・・・私もあれだけは使えるんです。

 でも、他の術式はどうしても呼び出せなくて。刻印に問題は無いはずなのに」


 呼び出す?あれか?ここの人間は儂が知っとるのと違う方法で魔術を使っとるって事かの?

 言葉の響きから判断すると主殿がやっておったような『遠隔地にある装置』を起動みたいなノリかえ?

 じゃが、あの方式を実現するには、後ろ側でそれなりの計算能力を構えとかんとあかんはず。こんな山の中でトカゲ擬きに苦戦しとる素人が扱えるような代物では


 そんな風に儂が思考を内側に向け黙り込んでしまったからじゃろうか。ルカは不意に話題を変えた。


 そして儂は気が付く事になった。


 いや、薄っすらと理解してはおったんじゃ。おったんじゃが


「ほら、アリスちゃん。今日は月が綺麗ですよ」


 まだ夕暮れだというのに妙に大きな月が儂らを見下ろしている。


「・・・妙に綺麗な満月じゃの」


「マンゲツ?独特な呼び名ですね?」


「いや、そんな事は無いと思うのじゃが。

 なぁ・・・少し確認させて欲しいんじゃ・・・ここでは月の満ち欠けをどう表現しておるんじゃ?」


 正直なところ検討は付いておる。儂はあんなんに『大きく青白く光る月』なんて見た事が無いのじゃから。


「みちかけ?何の事です?私あんまり学のある方じゃないから良く分からなくて」


「いや、良いんじゃ。忘れとくれ。儂の勘違いじゃ」


 あぁ、この少女、ルカとやらの頭がおかしくない限り、ここは儂の知る場所では無いという事なのじゃろうな。もちろん、コヤツの頭が正常かどうかは交易者にも話を聞けば分かる事ではあるが。


「まだ夕暮れじゃと言うのに、ここは本当に星が綺麗に見えるんじゃな」


「ええ、そうですね。王都では街の明かりが強いから星が見え難いんですよね?」


「・・・あぁ、そうじゃな」


 そんな風に適当な返事をしながらも儂は星空を眺めておった。


 そこにあるのは儂が知っておるのとは全く異なる星空。長い間、随分と長い間、見つめ続けていた星空と随分と違うもの。


 まだ日も落ち切っていないのに明るく瞬く星々。見た事も無い星の配置。

 まぁ、配置に関してはワンチャン「ここが南半球である」という可能性もあるかも知れんが。


「・・・いや、もう認めるべきじゃろうな」


「どうしたんです?」


「なんでも無いんじゃよ。ところで、村はもうすぐなんかの?」


「ええ、もうちょっとです!今晩は私の家に泊まって下さいね。歓待しますから!」


「手をかけるの。すまんが、よろしく頼む」


 そんな事を言いながらも儂は星空を眺め続けていた。明るすぎる程に星が瞬き、大きな月が青白く輝く星空を。


今日も読んでくれてありがとう!ジワジワ進む、ジワジワと世界観を語り始めているわけです。と言うわけで明日もよろしく!

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