3-3:儂と秘密の調べもの 現代知識無双とその成果
「よぉ、アリスの嬢ちゃん!良かったら後で味を見てくれよ!」
「おぉ、気が向いたらの」
「じゃあ、うちは新作を宿に送っとくから今度意見をくれよ!」
「おうよ!任せとけ!」
市場をアリスちゃんと歩いていると妙に声をかけられます。と言うか
「アリスちゃん、いつの間にこんなに人気者になったんです?」
「ん?新しいレシピとかドロップアイテムの食材の活用方法をばら撒いておる内にいつの間にかの。
儂としては王都での生活基盤を整えとるだけのつもりだったんじゃが」
「それは特許料とかそんな感じで?」
「いんや、金はとっておらんぞ。生活拠点の近くにある飲食店が旨くないと心が貧しくなるじゃろ?」
なるほど。生活基盤というか生活の豊かさという意味合い。アリスちゃんらしいですね。
「ほれ、飲んでみぃ。これが儂の活動の成果じゃ」
いつ買ったのやらアリスちゃんの手には陶器製のカップに入った澄んだスープが。
「いただきます・・・これ、村で飲んでたのと同じような美味しさが」
油っぽくないのに美味しさが詰まってて、塩辛くないのに味があって。
「昆布じゃ。王都でも使い道に困っておった昆布の活用法を儂が広めたんじゃ!」
アリスちゃんが両手を腰にやり胸を張って力強い目線で私を見ている。
うん、褒めて欲しいんですよね?
「流石ですね、師匠!」
「そじゃろ!!!」
ハッハハー!!とアリスちゃんは往来で高笑いを上げている。
迷惑だから止めて欲しい。けど、周囲の皆がニコニコしているから止めるに止められない。
「こっちの昆布は無駄に大きくてのぅ。それこそ畳ほどもあるんじゃが加工法が未確立じゃったんじゃ。
んで、魔術を使って乾燥させて粉末にする方法を考案させてもろての。その結果、細かい出汁の取り方を省略してダイレクトにどーんと放り込むだけで料理に使えるようになったわけじゃ。ドロップアイテムは不純物ゼロじゃったから簡単で助かったわ!」
凄く楽しそう。
「んでな、それと同じ発想で魚の出汁粉も作ったんじゃよ!残念ながらドロップアイテムでは無いんで扱いは昆布より難しくなってしもうたんじゃが、ある意味で個性も出ての。地域や加工する職人毎の味の違いが料理の多様性に繋がったわけじゃな。さっきルカが飲んだスープにしても王都周辺で採れる野菜と川魚と昆布の合わせ技で出来ておってな。まだまだ雑味はあるんじゃが、昆布の旨味のおかげで全体がなんとなく纏まって良い感じになりつつあるわけじゃ。あとは美味い醤油があれば簡単に仕上がるとは思うんじゃが、こればかりは微生物さん達の仕事次第なんで儂のテクニックではどないもならんのよな。
伝統と工夫と積み重ねが物を言う分野である事は分かっておるんじゃが、やはり儂としては料理人の技術でそこを突破したいという思いもあっての」
良い笑顔で滅茶苦茶に話しますねぇ。普段より随分と早口ですし。
「それでの」
おぅ、まだ続きますか。もう私は頷きマシーンになる事しか出来ませんよ。
そんな風にウンウン頷きながら歩いている間にも色々な人が色々な食べ物を私達にプレゼントしてくれます。
私達というかアリスちゃんにですけど。もう私、完全にアリスちゃんの付き人兼荷物持ちって感じです。
にしても、渡された品はアリスちゃんが話をしている出汁関係の物だけでなく多岐に渡っています。焼き物、野菜、果物、煮物、保存食・・・アリスちゃんは私の知らない内に王都の食を手中に収めたりしているのでしょうか?
「とは言えじゃ、儂だけでは知識を吐き出す事は出来ても、その拡散や定着まではやり切れん。で、そこは食品系の組合に委託したわけじゃな。儂らが所属しとる討伐系のギルドを窓口に、各々の組合を流通経路として、儂の知識と技術が王都中に行き渡り食事の質が向上していくわけじゃ!
まぁ、儂が毎食自分で作れたら良いんじゃけど、どうしても外食に頼る事も多いでな。全体を底上げしておく事が儂らの生活の質の改善に繋がるわけじゃな」
言ってる事は分かりますけど、アリスちゃんって、そんな事をしてるだけの時間ありましたっけ?なんだかんだで結構忙しいと思うんですけど。
「おっ、その目はちゃんと仕事出来てるんですか?みたいな目じゃな?その不安は分かるぞ。じゃが、もちろん、大丈夫じゃ。料理関連の書き物は夜中にやっとるからの。儂はその気になれば眠らんでも大丈夫なんじゃ!完徹でも余裕じゃ!!書きまくりの働きまくりじゃ!!」
あれですね、色々と凄いですね、うちのアリスちゃんは。
「ところで、今日は何処に行くんです?市場が目的地ってわけじゃないんですよね?」
「あぁ、もうすぐ着くぞ。役所の方にも口を利いてもらって、やっとこさ形になったんじゃ。と言っても儂は大して何もしとらんがの。働いてくれたのはは資金と広まった知識じゃ」
何の事でしょう?
「ほれ、あそこじゃよ、今日の目的地は」
市場を抜けた先、飲食店が集まる一角に出来たばかりの店があった。
入口には真新しい看板と大きな鉢植えの花。
「異界を潰した報酬の一部を回させてもらったぞ。ここは儂の料理のコピーを出すお店じゃ。端的に言えば、儂が忙しくても、それなりの物を食える場所って事じゃ。なかなかええじゃろ?」
「ええ・・・・はい。良いと思います」
「うんうん、そじゃろ、そじゃろ」
アリスちゃんは腕を組んで満面の笑みで満足そう・・・え?本当に私達がお店のオーナーなんですか?
「うまく軌道に乗ってくれたらええのぅ」
うわぁ、マジだ。どうしましょう、私、お店の事なんて何も分からないですし、アリスちゃんに至ってはお金の計算すら出来ないのに。
そんな私の不安をよそにアリスちゃんはお店へと駆けて行きました。
この時の私は不安で不安で胸が張り裂けそうでした。主に従業員の方やその家族の生活とか、その辺りを想像して。
まさか開店翌月に多過ぎる予約と人材不足で悩む事になるなんて、ホント思いも寄りませんでした。私、ただの狩人ですのに。
今日も読んでくれてありがとう!GW5日連続の更新ですよ!
明日も投稿するから気が向いたらブックマークとかポイント評価とかしてね!筆者が喜ぶよ!




