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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
1章:儂とアヤツと旅の始まり
23/66

2-3:儂と王都と違和感と げに恐ろしきは真面目なお役所仕事


 ギルド本店の訓練所。早朝で人気の少ない屋外運動場にルカが槍を振り回す音が響き渡っておる。


 強化魔術を駆使し、儂が投影魔術で作った出来損ないの霊装擬きを握り、『この世界の人間どもでは太刀打ち出来るはずもない速度と強さ』で仮想の敵をぶちのめすかのように素振りを繰り返しておる。

 その姿は堂に入ったもので田舎の村で燻ぶっていた素人に毛の生えた娘の片鱗は何処にも残っておらんかった。


 前の件から、あの田舎の村でギルドの奴等が汚染されて全滅してから、ルカは毎日毎日訓練に全力じゃ。アヤツとしては自分の力不足を嘆いての事じゃと思うが・・・


「ルカよ!そろそろ仕舞いじゃ!」


 そんな儂の声を聞いとるような聞いてないような、そんな素っ気ない態度のままルカはチャージから槍を大きく突き出す動作を繰り出した。


 風を切る音、儂の作った槍が時間切れで砕ける音、ルカが地面にへたり込む音。


 これが最近の訓練が終わる際の合図じゃな。


 遠目に見つめておったギルドマンどもが小さく拍手をしておる中、儂は陶器性のコップを魔術ででっち上げ、水と塩を入れてルカに差し入れる。


「ほれ、お疲れさん。随分と上達したの。持久力も増えとるし武器に魔力も乗せられるようになってきておる。もう単体の戦力としては十分じゃろ。それこそ、今のルカなら単身で扉の向こうに行っても大丈夫じゃ」


 主殿みたいな化け物と比べるとまだまだではあるが、牛とか岩の巨人みたいな奴相手なら瞬殺コースじゃな。


 ルカは疲れた顔で儂を見上げ笑っておる。


 訓練の充足感が迷いを吹っ切ってくれる、みたいな感じなんじゃろうか?儂には人の繊細な心の動きとやらはサッパリ分からんが。


 それにしても、ルカの成長速度には目を見張るものがあるの。儂が教えた魔術に習熟しておるのではなく、まるで魔術を効率よく使えるように肉体を変化させとるような勢いじゃ。主殿やあるまいし、そんな小器用な事が人間に出来るわけ無いんじゃが・・・まぁ、どんな経緯であれ、強く成れるんは良い事じゃの。


「ふぅ、落ち着きました。身体を拭いたらご飯を食べに行きましょう。今日も屋台で良いです?」


「おっ、そじゃのそじゃの。今日であのケバブ風の何かをコンプリート出来るからの。ヨーグルトは食わんくせにヨーグルトソースがあるのは意味不明なんじゃが妙に旨いんよの」


「村には無かったですけど、不思議としっくり来る味ですもんね。んじゃ、行ってきます」


「おうよ、儂は入口の近くで持っとるからの」


 立ち上がったルカは更衣室へ向けスタスタと歩いて行った。体力の回復も奇妙に速いんじゃよな、アヤツ。なんじゃろな?


 というわけで王都に呼び出された儂とルカはわりと悠々自適な生活をしておる。魔術を管轄しとる役所から王都の滞在費が出とるんで良い宿にずっと泊まっておるんじゃが、それにも関わらず放置プレイをされとるんで余裕じゃ。

 で、暇つぶしがてらに王都で仕事を請け負っとるんじゃが、これがまた割が良くて良くて。


 つまり一言で表現すれば超余裕。


 仕事に追われる事もなく、生活に不安も無く、毎日食べ歩きと料理の研究をするだけ。まさに人生の終着点。もうこれ以上に目指すべきところは無いって事じゃ。


 もちろん役所の用事が済めば宿代も支給されんようになるわけなんで、今だけのボーナスタイムじゃけどな。


「・・・しかし、それにしても全く何も言ってこんのは」


 王都に到着して間無しの時に呼び出されただけで後は梨の礫じゃ。世界が変わろうとお役所仕事って時間がかかるもんなんかの?それとも凄い調査とかをやっとるんかの?

 

 そんな事を考えながらも、ポツポツと現れ始めた朝から勤勉なギルドマンに挨拶を返しながらルカを待つ。


 訓練して、仕事を受けて、評価されて、社会的な立場を築く。

 ルカは田舎から都会に出て来た人間としては理想的なコースを辿っている、とは思うのじゃが・・・

 ルカが何のために強くなろうとしておるかと言えば、それは当然『柱』と『扉』へのリベンジじゃろう。


 正直、嫌な予感しかせん。


 アヤツがどれだけ強くなろうとも『近づけるべきではない』そんな思いが儂の中にある。


 儂が一緒におれば、そう悪い事は無いはずなんじゃが『それでも避けた方が良い』と儂の直観は言っておる。


 壁に貼ってある仕事の案内を見やる。


 そこには王都地下に存在する広大なダンジョンでの討伐やモノ探しの依頼がゴロゴロしておる。王都にある巨大な四本の柱、扉が開いておるわけでも無いのに存在しておるダンジョン。

 恐らく儂とルカが出会った『汚染』の問題は、この国を支えておる根幹に大きな影響があるはずじゃ。


「・・・儂が出来る事なんぞ何も無いとは思うがの」


 ましてやルカが関わる必要なんぞ何も無いじゃろうて。アヤツは適当に仕事をこなしつつ、王都で生活基盤を作って楽しく平和に暮らしておれば良いんじゃ。


「おまたせ、アリスちゃん。ん?ダンジョンのお仕事に興味が?」


「嫌じゃよ、暗くて狭い地下迷宮とか行きとうないぞ」


「いえいえ、王都のダンジョンの中って地下じゃなくて異世界的で開放的な快適な空間らしいですよ?」


「意味わからんの」


「私もです。じゃ、行きましょ。私もうお腹がペコペコで」


「そじゃの・・・にしてもオヌシいつも同じ格好をしとるのぅ」


「良いじゃないですか、ちゃんと清潔にしてるんですし」


「それはそうなんじゃが、たまには服でも買いに行かんか?王都はドロップで繊維素材が手に入るから服も安いんじゃろ?」


「安いと言っても私達にとっては高級品ですよ。そんなのにお金使うぐらいなら旅装を新調した方が良いですって」


「そうなんか・・・ルカはせっかく可愛らしいんじゃし少しぐらいはお洒落とかもさしてやりたいと思うんじゃが」


 髪だってツヤツヤのピカピカじゃし愛嬌もあるし、王都におる娘たちのような暮らしをさせてやりたいと言うか。


「あはっ、ありがとうございます。じゃあ、指名依頼でも入るようになったら考えましょうか」


「そうか。先は長そうじゃのぅ。やっぱ定職がないとキツイんか。

 そういや主殿もそんな事をよー言っておったわ」


 奥方に拾われるまでは色々と苦労したとか。


「へぇ、そうなんだ。少し親近感が湧いたかも。ご主人の話、後で聞かせて下さいよ」


「ええぞ、ええぞ。ケバブ屋の道中で早速披露するぞ。儂の主殿は愉快で最強で変なお人じゃったからの。聞きごたえあるぞ!!」


 そして儂はルカに手を引かれ朝飯を食いに出発した。

 二人で歩く王都の街並みは平和でキレイで、月並み過ぎる表現ではあるが、とてもとても素敵な光景に思えた。


 この光景がしばらく見納めになるとは、この時の儂はちっとも思っておらんかった。

 役所の仕事ぶりは日本と同じじゃったんじゃ。時間はかかっても確実に進めておる事はある、そう言うわけじゃ。


 ほんに怖いのは仕事の出来る人間、という事やもな。



今週も読んでくれてありがとう!連休前の最後の追い込みで色々と忙しいshima-taro先生(自称)をブックマークとかポイントとかで応援しよう!

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