2-1:儂と王都と違和感と ナーロッパの王都
「おぉ、改めて近くで見ると凄いもんじゃな。これが王城か」
「凄いのは同意ですけど、王城じゃないですよ、ここ」
「そうなんか?王都で城って言えば、王様が住んどるとこかと思ったんじゃが」
「そもそも王様はいないですよ」
「なんでじゃ?王国なんじゃろ??」
「始祖であるサヤカ様以降の統治は議会がやってるので。ちなみに選挙は4年に1回です」
「なんで聖サヤカ王国とか名乗っとるんじゃ???」
「あっ、ついでに言えば宗教も自由ですよ、この国。国家宗教とかも無いです」
「あぁ、もう、これだから日本人は!変なところでリベラル臭を醸し出しよってからに!!」
思わず人通りの多いメインストリートでシャウトした儂をルカが困った顔で見つめておる。
が、それでも儂は魂から迸る何かを我慢する事が出来んかった。チグハグ過ぎておかしいじゃろ、流石に。
ここは聖サヤカ王国の都。まさに現代の日本人がイメージする通りの『ナーロッパ』の大都市。石畳が敷かれ、理路整然とした都市計画が不自然に適用され、異様に清潔で現代的な経済活動が行われる『理想通りの現代的な中世都市』・・・王国なのに王様がおらんのは日本人的感性では『ヤバイ』と思うところがあったのじゃろうが
「色々と思うところはあるし、確認したいところもあるのじゃが、今日のところはさっさと向かうとするか」
「そうですね。魔道省の呼び出しなんて一大事ですもの。遅刻しないように早め早めに動きましょう」
省とか言う呼び名がまた日本人よな。サヤカ様とやらは何を思って日本の断片をあちこちに残しておいたんじゃろうか。
「改めて言う事も無いと思うがのぅ。儂たちも詳細を知っとるわけじゃないし」
「まぁまぁ、顔を合わせて話すと伝わる事もあるんですよ、きっと」
「そんなもんかの」
儂らは緊張感もなく駄弁りながら王城風の建物(実態は役所らしい)に向け歩みを進めた。
本日のタスクは魔道省による聞き取り調査への対応。儂らが目撃した『魔術使用による汚染』について意見を聞かせて欲しいとの事じゃ。
と言っても王都に着くまでにギルドの支店で何回も説明し、王都のギルドの本店でも説明しとるわけで、ぶっちゃけ新しく話が出来る事なんぞ何も残っておらん。
あの田舎での出来事から、既に二か月強。儂ら以外の全滅、3つの異界が同時に発生した事、異界の扉の近くで魔術を使うと汚染される事。これらの報告はギルドを上から下まで大騒ぎさせる程のインパクトがあったようじゃ。
もちろん、特に大きいのは『汚染』の話じゃな。今までは柱の状態で先手を打てる事なんぞ無かったから、誰も気が付かなかったそうなんじゃが・・・いや違うの。初動対応しようとすると『汚染されて全滅する』から情報が持ち帰れてなかっただけじゃな。
儂とルカというイレギュラーがおったからこそ、初めて情報を持ち帰れたと。
異界の中に入れば魔術を使っても問題無いのが嫌らしいところじゃな。
儂らの報告を機に扉が産まれる前の段階で手が打てるようになれば良いんじゃが・・・魔術無しで魔物に対抗出来る人間がどれだけおるかは知らんが。
「おぉ、そうじゃ、ギルドの特訓の方はどんなもんじゃ?誰ぞ素質のあるヤツは見つかったかの?」
「いえ、残念ながら一人も。アリスちゃんの言うように『普通の魔術を使えない人』も探してるんですけど、そっちも何も進捗無しです」
「ルカ先生の強化魔術教室は失敗か。うまく行けば簡単に戦力拡充出来るかと思うたんじゃが。結局はお主が特別な事が分かっただけか」
そんな儂の言葉に横を歩くルカは何故か照れておる。
「いえいえ、私なんてまだまだっすよ、へへへ」
褒めたわけでは無いんじゃが。・・・まぁ、ええか、暗い顔をしておるよりかは。あの件からしばらくは随分と凹んでおったからの。魔術の訓練は一生懸命に取り組んでおったが、ちょっと心配じゃったんじゃ。儂には繊細な人間の気持ちとかはよく分からん故に。
「そう言えばアリスちゃんの方はどうなんですか?順調ですか?」
「そじゃの。順調過ぎる程に順調じゃ。昆布も他のドロップ系の食材も普通に店売りしとるから余裕じゃ。しかも儂の知っとる食材とズレも少ないしの」
つまり、ドロップ品とやらは現代日本出身のサヤカ様とやらがデザインした品なわけじゃ。日本で品種改良された後の米が普通にここで栽培されとるのと同じじゃの。
恐らくは原始的な食事に耐えられなかったサヤカ様(笑)が魔術でどうにかしたという事なのじゃろう。
「ただ調理方法がいまいち広まっておらんのがなぁ。儂が自分で作るぶんにはどうでもええんじゃが、ちょっと外食を楽しみたいなと思った時に物足らんのが残念じゃ。食材はこんなにもあると言うのに」
「それなりに値段もするから仕方ないですよ。私達はわりの良い仕事が出来るから意識してないですけど、高級品なんですよ、ドロップ品って」
その辺りの感覚は全然ピンとこん。
そもそも人里で暮らし始めたのも主殿のところに来てからじゃし、金の計算なんかした事もないし、ここは異世界で儂から見れば謎文化じゃし、なんかもう理解するとか無理な感じなんじゃよ。お手上げじゃ。
大体のぅ。中世ヨーロッパ風の世界観なのに巨大都市があって、そこに大勢の人間が暮らしてるのが意味不明なんじゃよ。今じゃって大通りに通行人がワラワラなんじゃよ。祭りがあるわけでも無いし、平日の昼前じゃと言うのに。
こんな光景なんぞ本来なら不可能じゃろ?食料生産の効率が機械化されてない世界じゃとボロクソなんじゃから。
もちろん、それに対する答えなんて、とっくに分かっておる。
「・・・分かってはおるがリスクが大きすぎる気がするんじゃよな」
王都の四隅に聳え立つ巨大な白い『柱』
それこそが食料生産や資源の入手を支える屋台骨。
異界を活用する事でサヤカ様とやらの望む『都』を作り出したと、そう言う事なのじゃろうが・・・
沈んでいたルカの様子が頭を過る。
「あ、あそこですよ、アリスちゃん。私、先に入って受付してもらいますね」
「おぅ、すまんの。よろしく頼む」
いつの間にか目的地に到着しておったようじゃ。長丁場になるのか、あるいは形式的なヒアリングで終わるかは儂には分からん。じゃが、もし魔術省とやらも独自に調査を進めおるようなら
「・・・争点は汚染源の存在じゃろな」
食料生産を支える、いや恐らくは鉱物資源やエネルギーさえも支えておる『異界』を活用する技術。汚染の存在はそれを引っ繰り返す可能性がある。それこそ王都にある『柱』が汚染を撒き散らし始めてしまえば・・・
「賢明な判断をして欲しいところじゃが」
どうじゃろうな?ここの人間どもは。目を逸らすだけが生きがいの生き物で無ければ良いの。
そんな事を思いながら儂はやたらデカくて真っ白で謎に西洋風な王城擬きを見上げておった。
今週も読んでくれてありがとう!土曜の更新が無かった理由?忙しかったからです!ある意味でまだ年度末なので!
というわけで、また来週!良かったら、ぼちぼちブックマークとかポイントとかもしてね!ではでは!!




