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儂とアヤツと何処ぞの世界  作者: シマタロウ
1章:儂とアヤツと旅の始まり
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1-4:儂と田舎の小さな異変 ほぅ、なるほどの



「ねぇ、アリスちゃん、今までの話、ちゃんと聞いてましたか?」


「・・・あー、それなりには聞いておったよ?」


 なんか知らんけど褒美をくれるんじゃろ?


「やっぱり聞いてませんでしたか。これから私達は近くの街のギルドに出向いて宿場町であった出来事を説明しないと駄目なんですって。もしかしたら新しい『異界』が産まれてるかも知れないから」


「ほぅ・・・そうなんか・・・」


 関心ないのぅ。そんな事を思いながら儂は机の上に頭を置いて脚をプラプラさせる。

 と言うかの、儂には高すぎるんじゃよ、この椅子。これしか無いから仕方ないとは言え、結構微妙じゃ。



 ここはギルドの出張所と呼ばれておる小さな拠点。儂たちはそこに半日ほど留め置かれておる。

 宿場町の魔物を掃討して救助活動をおこなっておる時にギルドの人員が駆け付けてくれたのはええが・・・疑われての。「救助したのはお前達だとしても魔物を倒したのは違う奴等だろう?」みたいな感じじゃ。


 常識的に考えたら、その通りじゃ。ルカも小娘じゃし、儂なんて童女じゃ。魔物を倒せる要素なんぞ無いもんな。当たり前じゃ。


 で、なんでか知らんがルカがそれに抗弁してハッスルして連行されて今に至るってわけじゃ。救助した者の証言のおかげで、虚言扱いはされとらんようじゃが、扱いには困っとる感じじゃな。


 しかしじゃ、儂としてはそんな事はどうでも良い。なぜならば


「腹が減ったの」


 昼前に宿場町に着くようにしてたのに魔物との遭遇やら救助活動やらで飯抜きじゃ。この出張所とは名ばかりの粗末な小屋まで歩かされて、無駄な問答を繰り返した結果、時間は既に夕刻過ぎ。そろそろ晩飯の時刻。有り得ん。マジ有り得んぞ。


「のぅ、ルカよ。脱走して飯にせんか。小屋に留め置かれとる理由も分からんし、いつまでも付き合ってはおれんぞ」


 机にデコを当てたままルカに提案。今晩はジビエで焼肉じゃ!・・・熟成ささんとイマイチじゃが飢え続けるよりかマシじゃ!


「気持ちは分かりますけど、私も一応ギルドに所属しているわけですから、ここはグッと堪えて。

 そうですね。ちょっと待っていて下さい。小屋の外で炊事をしていいか確認してきますから」


「頼むぞー。ついでに干し肉とか米とかパンとか食べ物があったら分けて貰っとくれ。外の見張りと何処かに行ったヤツの分もまとめて作ってやるから」


 そんな儂の言葉にルカは何か気が付いたようだった。


「何処かに・・・あぁ、つまり今は証拠が確認されるのを待っている時間」


 へぇ、そうなんだ、とかボソボソ呟きながらルカは小屋の外へと出て行った。

 魔物の事を漏らしたくないのか、はたまた儂らが火事場泥棒でもしておったと思うておるのか・・・ほんに人間心理はややこしいもんよな。


 まぁ、儂には関係ない事じゃがの。


 外でごにゃごにゃとルカが交渉しておるが、儂は動きがあるまで寝る事にする。ぶっちゃけメンドイ。こんな事になるなら、さっさと走って逃げておけば良かったんじゃ。


 気の向くままに、いつでも自由に何でも調理出来ていた頃が懐かしい。

 ここには自由も食材も調理器具も何もかもが無い。

 というか飯が美味くない。いや頑張れば、それなりの物が作れるし、主殿に出会う前の食生活と比べれば、今でも十分に良い物を食っとるわけではあるのじゃが。


「・・・美味いもんが食いたいのぅ」


 出来るなら自分の手で作った中華料理が食いたい。


 王都に行けば素材ぐらいは揃うのかの?とりあえず昆布がある事は確定じゃが・・・ついでに香辛料が手に入れば・・・


「アリスちゃん、ご飯の用意して良いんだって、調査してる人も帰って来ないし。って、どうしたの?寝てたの?」


 おぉ、交渉完了?早かったの。


「腹が減って頑張る気が無くなってたんじゃよ」


「あら、珍しい。なら、私が代わりにご飯作っておきましょうか?」


「・・・いや、それは頑張る。それだけは儂が頑張らんといかんのじゃ」


「そんな事も無いと思うけど。あ、そうだ。ギルドの人に茸とイノシシ肉を分けて貰いましたよ」


「ヨシ!今晩は豚汁じゃ!」


「トンジル?あっ、でもパンしか無いんです。もってきたお米は食べちゃいましたし」


「あぁ、それは少し微妙じゃな。まぁ、緊急避難という事で諦めるしか無かろうな」


 本当はおにぎりの用意がしたいところじゃが、ここは堪えるしかない。


 ちなみに炊事場じゃが、小屋を出てすぐのところにあった。と言うか、普通に適当な石を積んだだけの簡易竈じゃった。

 今晩も野宿の延長、野性味が溢れるキャンプみたいな感じで頑張るしか無い。


「すまんな、足止めまでした上に食事の用意までお願いしてしまって」


 急に話かけてきたのはギルド職員とかいう・・・名前は忘れたんじゃが、宿場町に駆け付けてくれたメンバーの一人じゃった。筋肉質の中年男性で東欧系の顔立ちをして髪は真っ黒、たぶん前衛じゃろうが、向こうで言えば何人なんじゃろな?


「いえいえ、こちらもお肉や茸を頂いてますし。アリスちゃんのご飯は美味しいから期待していて下さいね」


「ほぅ、そうなのか、彼女は魔術師だと聞いていたが」


 おぉ、疑いの眼じゃ。儂、疑われておるぞ!って当たり前か。童女じゃからの。


「そじゃの。魔術師兼料理当番じゃ!

 見よ!我が魔術の深淵を!」


 バッ!と両手を天に向け瞳をクワッと開く!

そして、おもむろに竈の方へ手を降ろし。


「とりあえずは鍋からじゃ」


 普通に鍋を投影じゃ。ポーズはとってみたが食事の用意の最中に暴れると危ないからの。


「・・・は?」


 ギルドの者が呆気にとられておる。

 

 ほぅ、なるほどの。


 やはり、ここには投影魔術は存在せんわけか。そらそうよの、遠隔式の魔術しか使えんように『制限』されておるなら、術者の内面を具象化する術式なんて許されるわけないものな。恐らく、その例外は・・・


「お嬢ちゃん、鍋は何処から出したんだね?あれは魔術?でも、そんな術式は聞いた事も無いけど」


「一流の料理人は戦闘に使うものとは異なる技術体系を持っておるんじゃ。知らんでも不思議ではない事じゃよ」


 そんなものかなぁ、と善良っぽいギルド職員は頭を捻っておる。捻ったところで答えなんぞ無いのにな。


「ねぇ、アリスちゃん、山菜とか取って来ましょうか?」


「うーん、今回はパスじゃな。えぐみを抜くだけの時間が勿体ないからの。ぶっちゃけ早く食いたいんじゃ。

 そうじゃ、パンじゃけど保存食のじゃろ?カチカチじゃよな?」


 ふむふむと頷くルカ。


 コチコチのパンと豚汁。

 ないな。有り得ん組み合わせじゃな。

 

「よし。豚汁が出来るまでの間、パンを蒸し焼きにするぞ」


 煉瓦と鉄板、金属性のボールを投影し、長時間燃えるようにした弱火の炎を鉄板の真下へシュートじゃ!


「んじゃ、ルカよ。パンを適当に水で濡らして鉄板の上で蒸し焼きにしておいてくれ。豚汁が出来る頃にはマシになっとるはずじゃ」


「はい、師匠!」


 おぉ、随分と久しぶりの師匠呼びじゃ。魔術もちゃんと教えとるのにな?


 教えとるかの?ほとんど走らせておっただけのような気もするの。


 まぁ、別にええかの。効果は出とるし。



 そうやって、その日は穏やかに終了した。


 倒した魔物の事なんて儂ら二人もギルドの職員とやらも真面に考えておらんままに。


今日も読んでくれてありがとう!わりとギリギリ!時間がギリギリ!(筆者、ちょっと忙しいの)

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