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1-10:儂と見知らぬ場所 アヤツとの旅立ち



 旅立ちは意外とアッサリしたもんじゃった。


 よく晴れた日の早朝、村の入口まで見送りに来たのは4人だけ。顔役の者と後はルカとよく仕事をしておったという同僚達。


 米作りが主産業の農村なんじゃから、もっとウエットな人間関係がありそうなもんかと思っておったのじゃが。


 そんな事を思いながらも儂とルカの二人の旅路は始まった。

 最終目的地は王都なわけじゃが、直接向かうには遠すぎるんで、まずは最寄りの宿場町に向けスタートじゃ。まぁ、それでも徒歩で何日かって距離なんが田舎の辛い所じゃの。


 で、それはそれとしてじゃ、村からある程度離れたところで、見送りが少なかった事を愚痴ってみたんじゃけど


「私って家族もいないし家業もないしで、村での存在感?重要性が薄かったんで仕方ないんですよ。それに村の人達は今はちょっと忙しいし」


 ルカはそんな事を言っておった。

 良い子なのに可哀想じゃ。可哀想過ぎる。


 人外である儂にはよく分からんが、あえて冷たい態度を取る必要性なんてものがあるのやも知れんな?こんな良い子が軽んじられるとか普通なら有り得んし。・・・まぁ、奥方も『田舎の人は怖い』みたいな事を言っておったし・・・でも、それにしてものぅ


「儂とルカのおかげで村の奴等は儲かって、それで新しく事業を起こそうってんじゃろ?その立役者の出立ぐらい派手に見送っても罰は当たらんくないか?」


「それもそうかも知れませんけど、普通の人達は異界の中の出来事なんて知りませんし、ましてやアリスちゃんの強さも知らないんだから『たまたま巻き込まれた二人』ぐらいにしか思ってませんよ」


 なるほどの。それもそうか。そういや、あの村の中で儂が見た目通りの幼く可愛らしい存在で無い事を知っとったのは顔役と・・・魔王がどうのこうの言っておった爺のみか。


 うむ。そこはしゃーなしよの。


「それにしても数日程度の道のりとは言え、こんなに少ない荷物で大丈夫なんですか?

 ちょっと待てば交易者の人の荷車に乗せてもらう事も出来たのに」


「おぉ、大丈夫じゃぞ。儂には魔術があるからの」


 ニヤリと不敵な笑顔でルカに返答してみたり。


 実際、儂らの荷物は数日とは言え徒歩の旅に出るにはあまりに軽装。と言うか、ぶっちゃけ背負っとるのは簡易のテント的な物と雨具ぐらいのもの。浅い森と平野部の移動のみとは言え、普通に考えると『旅を舐めるな』としか表現出来ないレベルではある。


 いま思い付いたんじゃが、これ、村の者達は儂らがあまりに軽装じゃから『旅に出た』と思っとらんのと違うか?『ちょっと一狩り近くの山まで』みたいな感じじゃと思われとるとか


 ・・・ふむ。まぁ、ええじゃろ。後の祭りじゃ。やってもうたかも知れんが、最早どうしようもない。ここからは先の事だけ考えるのがベターな感じじゃ。


「荷物が少ない理由じゃが、嵩高い水と煮炊きに使う道具が儂の魔術でどうにかなるからのじゃの。食料は持って来ておる米と道すがら鳥やら魚でも刈れば十分じゃし。

 それにの、ルカ、お主、まだ勘違いしておるままじゃぞ?」


「勘違い?」


 小首をかしげ考え込むルカ。深い紫色を帯びた髪が朝日を帯びて輝いておる。生まれたのが都会なら容姿だけで食っていけそうな感じがあるの。


「そうじゃ。儂は何日もかけて宿場町まで移動するつもりなんて無いぞ。せいぜい2日じゃ。野宿は一泊までしか許容せん」


 地面で寝るんは不快指数が高いんじゃよ。


「それは無理ですよ、アリスちゃん。だって普通に歩いたら5日はかかる道程・・・まさか」


「そうじゃ、そのまさかじゃ。道中は強化魔術の修行を兼ねて走ってもらうぞ。仕上がりが良ければ今晩中の到着もあるかも知れんが、そこまでは期待せんから大丈夫じゃ」


「でも、そんな、まだ練習中ですし、一日中走り続けるなんて」


「儂の主殿が言っておった。戦いの基本は走る事じゃと。そんなわけで今までの修行で術式の使い方は分かっておるわけじゃから、今日からは実践じゃ。

 心配するな。ぶっ倒れても面倒は儂が見てやるからの。さぁ、それじゃ走るか」


「そんな!もう?!待って下さいよぅー」


 ルカの少し悲痛な声を背に儂はゆっくりと走り出す。


 何処までも伸びる獣道に毛が生えたような細い街道。

 儂はそれが何処に通じておるかも、最終的な目的地である王都に何があるかも全然分からん。

 正直、ここで何をすれば良いのかも分からんし、何かをする必要があるかも分からん。


 本当に今の儂には分からん事しか無い。


 じゃが・・・


「はぁはぁ、追いつきましたよッ!!」


「おっ、頑張っとるの!んじゃ、このペースで昼まで頑張ろうの!大丈夫じゃ!儂の弟子なら、そのぐらいはきっと出来る!」


「ちょっ?!マジですか?!」


「ハッハッハ!一緒に頑張ろうの!!」


 分からん事ばかりの知らない場所ではあるんじゃが、この新しい弟子となら頑張れる、儂は不思議とそんな気がしておるんじゃ。






序章:儂と見知らぬ場所 完


今日も読んでくれてありがとう!序章完了!二人の旅がこれから始まるよ!!

え?昨日は休みだったのに更新が無かった?それはね、仕事をしていて時間が無かったからだよ。

では、また来週!

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