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復讐開始

「考えろ…どうすればマレスにこれ以上ないほどの後悔と苦痛を与えて殺すことができるかを」


俺は空を飛びながら考えていた。しかしなぜ俺は最初からこの力の使い方を知っていたのだろう。この力を手にした時、扱い方を全て理解していた。それにあの声…


『あなたの全てを解放してあげてください』


一体なんだったんだろうか…まぁ今はそんなことを言っている場合じゃない。どうやってあいつに復讐するかだ。


「そういえばこの近くに村があったな…あ」


たった今マレスにどう復讐するかが決まった。



俺は近くにあった村に立ち寄りある家の扉を叩いた。


「はーい、ちょっと待ってくださいねー」


中からそんな声が聞こえてきた。俺は自然と口角が上がってしまう。


「はーい、誰ですかー?」


中から出てきた人物は俺の顔を見て笑顔になった。


「あ、ヒシスさんじゃないですか!いきなりどうしたんですか?」


「やぁ、アーネ。久しぶりだね」


「はい!久しぶりですね!それで今日はどんなよ…」


「ごめんね」


「え?」


-------------------------------------------------------

「…う、ん」


マレスは薄暗く冷たい場所で目を開いた。


「どこだここ…」


さっきまでの記憶を思い出してみる。


(確か王城で酒を飲んでいて…ダメだ、記憶がハッキリしない。とりあえずここがどこかを把握しないと)


そう思い何度か瞬きし、未だぼんやりとしている視界を治す。すると自分の体の違和感に気づく。


「ん?なんだ?」


主に違和感があるのは両手首と両足首。当然、違和感があるのだからそこに目を向ける。そして血の気が引いた。


「はぁ?!な、なんだよこれ!」


マレスの両手首と両足首は大きな十字架に磔にされていた。そしてマレスにはこの光景に既視感があった。


「っ!ヒシスゥゥ!!」


マレスがそう叫ぶと暗闇の中から1人の少年が出てきた。言うまでもない。勇者ヒシスだ。


「おはようマレス。よく眠れたか?」


「てめぇ!俺にこんなことしてタダじゃ置かねぇぞ!」


マレスは磔にされている体をヒシスに近づける。


「おぉ、それは怖い。でもお前も不用心だったんじゃないか?」


「なに?」


「酒に入っていた睡眠薬に気が付かないなんて」


「酒?っ!お前が何か仕込んでたのか!」


そこでヒシスがニタリと笑う。


「まぁ、魔王を倒して王城で女遊びばかりして腑抜けたお前には見抜けないか」


「…どうしてそんなことまで知ってやがる」


マレスは一筋の汗が頬を伝うの感じた。


「お前ならよく知ってるんじゃないか?俺の変装魔法を」


「っ!王城の中の誰かに化けてたのか!」


「ピンポーン。よくわかったな」


「それで俺をどうするつもりだ?生半可な攻撃じゃ俺は死なないぜ?」


マレスまるで反撃の糸口を見つけたと言わんばかりの顔をした。


「そうだな」


「だろ?」


「でもな」


ヒシスはそう言葉を区切り腰に刺していた剣でマレスの胸を肩から腰まで斜めに切った。


「ぐっ!あぁぁあ!!」


当然その傷からは血液が吹き出し辺り一面を真っ赤に染めた。だがマレスの傷は瞬く間に光に包まれて消え去った。


「はぁ、はぁ」


マレスは息を荒くしていた。


「ど、どうだ?分かっただろ?お前の攻撃なんて意味ないんだよ。傷がついたら自動で回復してくれる『自動回復(オートヒール)』があるからな」


「意味が無い、か…へぇ」


ヒシスはもう一度、今度は右太ももを深めに剣で斬った。


「があぁぁ!」


やはり斬られた太ももは淡い光に包まれて次の瞬間には傷があったことが嘘のような綺麗な状態に戻っていた。


「ぐぅうぅ…」


「どうだ?これでも意味が無いと言えるか?確かにお前は生まれ持った能力『自動回復(オートヒール)』がある。たがそれは痛みまで消えるわけじゃない。傷は消えるかもしれないが精神的な苦痛は消えない」


そう言ったヒシスの顔はもはや勇者とは言えないような醜悪な笑みだった。


「う、うわあぁあぁ!!だ、誰か!誰か居ないのか!!俺をここから出してくれ!!」


ヒシスの言った言葉に恐怖したマレスが助けを求め声を上げる。


「無駄だよ。ここは人が1人も居ないような森の中だからな。いや、正確には森の地面の中と言った方がいいか」


そう、この場所はヒシスが魔法で作り出した空間だった。当然そんな場所に助けがいるわけもない。


「な、なぁヒシス。お前を売ったことは謝る。金だっていくらでも払う。だから…だから許してくれ!頼む!!」


「なんだ根性無しだな…でもまぁ解放してやるか」


「ほ、本当か?!」


ヒシスの言葉に希望を感じたマレスが顔をあげてそう言う。


「あぁ、本当だ。ただしゲームで俺に勝ったらの話だがな」


そう言ったヒシスの顔は先程よりも更に醜悪な顔になっていた。


「ゲ、ゲーム?」


マレスは訳が分からずそう聞き返す。


「あぁ、ルールは簡単だ。これからお前を100回斬る。斬る場所は俺がランダムで選ぶ。お前はその間精神を保ち続けたらいいんだ。簡単だろ?」


「そ、そんな…」


希望から絶望へと叩き落とされたマレスは青ざめた表情をしながらそう呟いた。


「なんだ?しないのか?なら延々と俺に切り刻まれるだけだぞ?」


「や、やる!やるから!!」


ヒシスの言葉を聞いたマレスは慌ててそう言った。


「じゃあゲームスタートだ。まずは1回目…ふんっ!」


記念すべき1度目は磔にされていた左腕だった。


「あぁあぁぁあ!」


マレスの綺麗な腕は手首の根元から肩にかけて真っ直ぐに切れていた。剣が深くまで刺さりすぎたのかクパッと開いた傷からは白い骨が見えている。だが命に関わるような傷でも直せてしまうのがマレスの『自動回復(オートヒール)』なのだ。当然こんな傷一瞬で治ってしまう。


「改めて凄い能力だよなぁ…」


「はぁ、はぁ、はぁ…」


マレスはヒシスの言葉など聞こえていなかった。この地獄とも言える苦痛が後99回も残っていることに絶望していた。


「じゃあ2回目行ってみようか」


「ぐあぁぁああ!」


-------------------------------------------------------

「いやぁ凄いな。もうあと1回だぞ。よくそんなに精神保ててるよな」


「はぁ、はぁ、はぁ…」


マレスは歓喜していた。後1回でこの地獄から抜け出すことができるのだと。99回この激痛に耐えてきた自分なのだから後1回など余裕だとそう自分に言い聞かせて。


「あ、そうそう。マレス。お前に土産があるんだった」


「はぁ、はぁ、はぁ…み、土産?」


そう聞き返してきたマレスにヒシスはニッコリと微笑んだ。


「あぁ、きっと気に入ってくれるはずだ」


そう言ってヒシスは右手を体の横に突き出した。するとそこに異空間のようなものが生じた。ヒシスはそこに手を突っ込みゴソゴソと漁った。


「えーっと…どこに仕舞ったかな…あ、あったあった。ほれ」


そして腕を一気に引き抜いて()()をマレスの前に放り投げた。


「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」


「おいおい、どうしたんだよ」


マレスは目の前に放り投げられたものを見て正常に息が出来なかった。


「母親と妹を殺された時の俺みたいな反応してるじゃないか」


「ヒシスウゥウウゥウゥウゥ!!!」


マレスの目の前に転がっていたのは、マレスの母親と妹だった。()()()()()()()マレスの母親と妹だった。


「うわっ!なんでそんなに怒ってんだよ。俺の時なんて合わせる顔も無かったんだぜ?それに比べたら俺は優しいよなァ?だって()()()()()があるんだからなァ?エヒャヒャヒャヒャ!!!」


「なんでだ!どうしてなんだ!!お前が復讐したいのは俺だろ!!どうして母さんとアーネを殺したんだ!!」


「どうしてだって?お前だって言ってたじゃないか」


マレスはその時のヒシスの表情を見て悟った。もうこいつは止まらない。止められない。全てを破壊し尽くす業火に燃える復讐者なのだと。


「俺がお前を嫌いだからだよ」


「あぁあぁああぁあぁぁぁぁああぁあぁぁあああ!!!」


マレスが暴れる。だが当然磔にされている体が動くわけが無い。だがそれでもマレスは暴れ続ける。肩の骨が外れ足首が変な方向へ曲がる。普通の人間なら重症だ。だがやはりマレスには『自動回復(オートヒール)』がある。傷ついた部位は瞬時に回復する。


「はぁ、マレス。どうしてそんなに()()な力を持っておきながらそんな奴になってしまったんだ…お前の母さんだってお前みたいな()()な息子が生まれてきてさぞ嬉しかっただろうに。()()そんな特別な力が欲しかったよ」


(あぁ、そうだったのか。俺は最初から誰よりも特別だったんだ。それに俺自身が気づいていないだけだったんだ)


それに気づいた瞬間、マレスはとてつもない後悔の念に襲われた。それと同時にヒシスへの申し訳なさで胸の中がいっぱいになった。


「じゃあ100回目行こうか」


そう言ったヒシスは剣を握りしめた。そして躊躇いなくマレスの心臓目掛けて振りかざした。『自動回復(オートヒール)』は、というか魔法は術者が生きていてこそ発動できる。だから術者が死んでしまえばどんな魔法でもその効力を失う。

つまりマレス自身が死ねば『自動回復(オートヒール)』も効力を失う。そして当然生物であれば心臓を潰せば死んでしまう。


「ヒシス…すまなかった…」


「アハハハハハハハッ!!!」


自分の過ちに気づいたマレスはヒシスに謝罪したが精神的に参っていたマレスの小さな声はヒシスに届くことは無かった。

もしこの声がヒシスに届いていればこれから先、起こることに何か変化があったかもしれない。



-------------------------------------------------------

「はぁ、はぁ、はぁ…フフ、アッハッハッハッハッ!!!最高の気分だ!!」


ついに復讐を果たした俺は言いようもない幸福感と高揚感に打ち震えていた。なんなんだこの気持ちは。復讐がこんなにも気持ちいいなんて!!さぁ!次はどいつだ?!そうだな、王女にしよう!!俺に優しくしておきながら内心では俺のことを見下していた王女にしよう!!


「さぁ!!俺の復讐はこれからだ!!!」

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