第1話 スタート
初投稿です、よろしくお願いします。
トントンと無意識のうちに足が床を鳴らす。
腕を組んで目をつむり、頭の中で広がるイメージに頬がゆるむ。
テロリンッ『データのダウンロードが終了しました。ゲームを起動します。』
ついにやって来たこの日が!
話題のVRMMO、インフィニティオンラインで遊べる日が!
あまりに人気で予約殺到し、実際の発売から手にできるまでに1ヶ月も経ってしまった。
待ち遠しい日々も昨日まで、ようやく到着したソフトをVR機に読み込ませ、ダウンロードをする。
一刻も早くプレイしたいと待ちわびる気持ちを煽るかのようなダウンロードの長さ。それだけのグラフィックやストーリーに期待が高まる。
そして視界が暗転する。
『インフィニティオンラインへようこそ!』
再び明るくなると目の前には見渡す限りの草原と青い空、白い雲。あまりの明るさに目が少しくらむ。
シュンッ
ふっと瞬きをする間に電子的な残像を映して目の前に羽のついた大きめペットボトルサイズの少女が現れる。
「こんにちは、私があなたをこの世界に案内するナビゲートAI、イクシーよ。まずはあなたの名前を教えてくれる?」
背中に2対の水色の透ける羽、金髪碧眼にワンピースの愛らしい少女、名前はピクシー(妖精)から来ているのだろうか?子供らしい見た目に反して大人びた雰囲気をまとっている。
俺は他のゲームでも同じ名前を口にする。
「カワタだ。よろしくイクシー。」
「カワタ、ね?いい名前ね。さてじゃあこの世界、それから操作方法について軽く説明するわ。準備はいい?」
「ああ、いつでもできてる!」
イクシーからされた説明をまとめると大体事前に調べた通りだった。
この世界は今も拡張が続いていて、その最果てと終わりを調べること。それが目的らしい。
「あなたのこの世界に降り立つときの見た目を決めてね。あっでも身長と体重は本来の姿から基本的に弄れないからね!」
さて、俺のメインはここではないので、本当にざっくり顔を少しイケメンに、ほんの少しちょっとだけ気持ち程度に寧ろ誰もわからないくらいイケメンに整える。髪色は黒のままで。
「よし、できたぞ!」
「さて、じゃあお待ちかね!ステータスとスキルの時間ね!」
「いよっ!待ってました!!」
俺の拍手と共にイクシーから説明がある。
「この世界には職業なんてものはないわ、自分で自称することはできるけどね。さて、それではステータスオープンと唱えてみて?」
「ステータスオープン!」
カワタ Lv.1
ステータスポイント (30)
HP 55/55(0) MP 30/30(0)
攻撃 10(0) 防御 10(0)
魔法 10(0) 精神 10(0)
速度 10(0) 器用 10(0) 幸運 10(0)
スキルポイント (20) 4/5
スキルなし
「さて、見えるかしら?上から説明していくとLvはレベルね、レベルが上がるとステータスポイントが10ずつ貰えるわ。それから1レベルにつきHPとMPが5ポイントずつ増えるの。
HPはつまり、体力。なくなると倒れてしまうわ。
MPはスキルを使うのに必要なものよ。こっちはなくなってもスキルが使えないだけで倒れたりはしないわ。
どちらも非戦闘時には時間経過で回復するの。
どっちもステータスポイントを1振ることで5上昇するわ。
さて、それから下の7つはそれぞれステータスポイントを振ることで強化できるわ。こっちは1振ると1上昇するわ。
攻撃は物理攻撃力に関わるわ、高いほど物理攻撃で与えるダメージは大きくなって、相手の防御に応じてダメージが減衰するの。防御力はその逆ね。高いほど相手の物理攻撃からダメージを受けにくくなるわ。
魔法は今度は魔法攻撃力ね、高いほど魔法攻撃で与えるダメージが大きくなって、相手の精神に応じてダメージが減衰するの。精神はその逆ね。攻撃と防御の関係と同じよ。
速度は行動速度全般に関わるわ、高いほど速くなるの。ちなみに走ったときには足が速く感じるようになるわよ。
器用は簡単に言うと命中と回避ね。基本的に高いほど攻撃が命中しやすくなったり、回避がしやくすなるわ。
最後に幸運、高いとラッキーなことが起こりやすくなるわ。他にもクリティカルが出やすくなったりもするのよ。
さて、長くなったけど大体わかったかしら?一言でまとめると全部大事ってことよ?」
ふむふむ、長かったけどなんとなくわかったぞ。他のゲームみたいに攻撃特化とかが通用しないんだな?バランスよく上げろってことか。
「もう早く出発したいでしょうし、最後にざっくりとスキルは選択肢の中から好きなのを取れるわ。ただし合計で5種類までしか持てないの。スキルポイントはレベルアップで3ポイント手に入るわ。じゃああとは好きにポイントを割り振ってね。時々声をかけるからなにかわからないことあればその時に質問してちょうだい。」
よし、じゃあやるぞ!
俺はヒーラーをしてみたいんだよな…そうなると、スキルは『光魔法』と…
えっと…よし、できた!
タイミングよくイクシーが声をかけてくる。
「どうかしら?なにか決まった?」
「あぁ、できたぜ!ちょっとどんな感じか見てくれよ。
ステータスオープン!」
「あ、ごめんなさい。他の人にステータスを見せるときは、ステータスフルオープンと唱えないとダメなの。まだ教えてなかったわね。」
「ふむふむ、ステータスフルオープン!これでいいのか?」
「えぇ、なるほどなるほど…」
カワタ Lv.1
ステータスポイント (0)
HP 55/55(0) MP 80/80(10)
攻撃 10(0) 防御 10(0)
魔法 20(10) 精神 10(0)
速度 20(10) 器用 10(0) 幸運 10(0)
スキルポイント (0) 4/5
光魔法Lv.1 消耗軽減Lv.1
杖適正Lv.1 支援魔法Lv.1
予想通りイクシーは顔を曇らせるが、それは想定の範囲内。
「うーん、まぁカワタがいいならいいけど、あまりおすすめはしないわよ?もう少しステータスはバランスよくした方がいいんじゃないかしら?」
「まぁ、全くのダメって言われないなら大丈夫だろ!俺はこれで行くぜ!」
「そう、ならいいわ。装備は向こうに降り立った時には身に付けているわ。じゃあいってらっしゃい!まずは街を目指すのよ。」
イクシーの言葉と共に視界は暗転した。
そして視界が開けるとそこは再びの草原と青空だった。
ただし今度は左手遠くに森が見え、右手には山々が連なり、正面奥には外壁っぽいものが見える。
恐らく目の前の道を行くとイクシーの言っていた街だろう。
ふっと自分の姿を見下ろすと麻っぽいローブに右手には太い木の棒を持っている。これが杖なのか?まぁいい。
「よし、行くか!」
そして俺はインフィニティオンラインの記念すべき第一歩を踏み出した。
そして数分後、突如草むらから俺の目の前に青いサッカーボールサイズの半透明なぷるぷるが飛び出してきた。目がついているが、恐らくスライムだろう。
さて、戦うのか。どうしたらいいんだ…もしかしてあれか?
すると、イクシーの声が耳に響いてきた。
「さて、じゃあ初めての戦闘ね。大丈夫、スライム系はノンアクティブモンスター、こっちから攻撃しなければ攻撃されないわ。ゆっくりで大丈夫よ。まずは相手をじっと見つめなさい。」
「ふむ。」
俺はスライムを睨み付けるようにじっと見つめる。すると、
ミニスライム Lv.1
「おお!」
「表示が出たみたいね。さて、じゃあ戦闘方法だけど、勿論杖で殴ってもいいのだけれど、せっかくだから魔法を使いたいでしょう?さっき自分でスキルを確認した時にわかってるんじゃないかしら、スキルの中にそれぞれ詠唱があるでしょ?それを唱えて魔法を発動するのよ。」
俺は先程のスキル設定の時を思い出した。
「ステータスからスキルをタップしてもらえば、スキル効果以外にも使える魔法やそのMPも書いてあるわ。」
ふむふむ。撃ってみるか。
『ライト!』
ミニスライムに67ダメージ!
ミニスライムは倒れた!
カワタはレベルが上がった!
「1番最初だとこんなもんか?」
「おめでとう!これでチュートリアルは完了よ。それじゃあ
今度こそ冒険頑張ってね。」
そして、プツリと接続の切れたような音がしてイクシーの声は聞こえなくなった。
よし、やるか!
以下はゲーム内データ解説となります。
光魔法
光輝の神よりもたらされる力の一部を発揮する魔法。
闇属性のモンスターやアンデッドに特攻がある。
使える魔法
ライト MP消費3 光属性
魔法×10の威力 器用×100の精度
まばゆい光は全ての存在を浄化させる。
ヒール MP消費5 光属性
魔法×10の回復力
自身以外に使う場合は 魔法×5の回復力
安らかな浄化の光で対象の傷を癒す。
ダメージ計算式としては、
威力÷精神(防御)の1/2=ダメージ(端数切り上げ)
となります。
カワタvsミニスライムのライトでは
20×10÷3=67ダメージとなります。
ちなみにミニスライムのステータスは
HP 35/35 MP 20/20
攻撃 10 防御 30
魔法 5 精神 5
速度 5 器用 10 幸運 10
です。カワタは魔法キャラでしたが物理攻撃キャラだと苦戦するタイプの敵でした。
ちなみにスキルのヒットの判定式は
器用×スキル命中率×距離補正÷敵器用の1/2=ヒット率%です。
距離補正は敵との距離が近づくほど上がり、1mにつき1増え、相手との距離が1m以下で11、最大10mで1、それ以上離れるとマイナス補正がかかります。11mで0.5、12mで0.1、13mで0.05と数字が小さくなっていきます。
同じくカワタvsミニスライムですと、
10×100×9÷5=1800%
つまり確定ヒットとなります。