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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第2話 きぬつたクリーニングへようこそ
8/61

3時間目 お友達の家に行きます(3)

 みっちゃんの家は、妖女学園の最寄り駅から電車で30分程乗った先の駅の近くにある。

 駅の近くと言っても歩いて20分程度かかる場所にあり、更に言うと学園から駅までも10分歩くので、合計すると1時間もかかってしまう。

 そんな場所にあるので、こくりたちがみっちゃんの家に到着する頃には、既にお昼の12時をとっくに回っていた。


 尚、当然の事ではあるが、いつもは親の車で送迎してもらっているので、こうして一人で学園に行って帰って来るなんて事はしていない。

 帰りが遅くなったとしても、帰る時間を学園の電話を使って連絡しているので、それが理由で迎えにきた親とすれ違いになるなんて事も無かった。


 そして、今日はこくりを迎えに行く為の特別な日。

 みっちゃんは親に一人で行って帰ってくると伝えていて、まるで“はじめてのおつかい”のようなワクワク感。

 いつも通っている学園と言えど、まだ6才なみっちゃんには大冒険だった。


 そんなわけで、予定よりも時間がかかってしまったが、みっちゃんはやり遂げたと言う気持ちでいっぱいになる。

 だから、家に辿り着いた時の達成感も素晴らしい。

 黒に青のグラデーションカラーなウェーブがかかった髪の毛を弾ませて、こくりに笑顔を向けて紹介する。


「ようこそ。ここがわたしの家だよ」


「おおー」


 こくりは顔を上げて、相変わらずの眠気眼な無表情で驚いた。

 何故なら、みっちゃんの家は自営でクリーニングのお店をしているようで、とても大きな家だったからだ。

 そんな家だから、もちろん玄関と店の出入口は別にある。

 そしてこの幼女、初めて見たクリーニング屋さんに興味津々である。


「玄関は向こうに――あれ? こくりちゃん? こくりちゃん何処? ……あ!」


 こくりはクリーニング屋を見上げると、みっちゃんが玄関の方へと案内する前に、お店の出入口から入って行った。

 みっちゃんは丁度こくりがお店に入って行ったタイミングで気がつき、慌ててこくりの後を追う。


「いらっしゃいませ。あらまあ。随分と可愛らしいお客様だこと」


 こくりがお店に入ると、カウンターにはとても綺麗な二十代後半くらいのお姉さんが立っていた。

 そして、こくりを見ると優しそうな笑みをして、こくりと目を合わせる。


「お嬢ちゃんどうしたの?」


「ご馳走を食べに来ました」


「ご馳走……? あ、もしかして――」


「こくりちゃん! ダメだよ! こっちはお店だから玄関じゃないよ!」


「――あら。おかえりなさい、美都子みつこ


「あ、お母さん。うん、ただいま」


「この子が美都子が言ってたこくりちゃん?」


「そうだよ」


「こくりはこくりです。おばさんはみっちゃんのママですか?」


「そうよ~。美都子と仲良くしてくれてありがとね、こくりちゃん。良かったらここから上がってってね」


「お邪魔します」


「え? いいの?」


「今日は特別。でも、靴はちゃんと玄関に持って行くのよ」


「はーい!」


 会話の内容からして察する事が出来るが、一応ここ絹蔦きぬつた家では、普段はお店で出入しないようにしている。

 これは普段お店にいる母親が真面目な為で、公私混同をしないようにと決めた事だった。

 しかし、今日は違った。


 その理由は、言うまでも無くこくり。

 96.5センチしかない小さなお客さまのこくりの可愛さにあてられて、みっちゃんのママがオッケーサインを出したのだ。

 しかし、それもその筈。


 こくりはお店に入るなり、相変わらずの眠気眼な無表情を変えずに瞳をシイタケの十字のようにして目を輝かせて、あっちへこっちへと顔を向けて見ていたのだ。

 その姿は妙に可愛らしくて、みっちゃんのママもニコニコである。

 と言うわけで、こくりとみっちゃんはお店から家の中に入って行き、くつを脱いでしっかりと玄関へと持って行く。

 そしてそれ等が終わると、みっちゃんの部屋へと二人は向かった。


「いらっしゃい。お腹空いたよね? ちょっと待っててね。お昼はお母さんがピザを頼んでくれてると思うから、取ってくるね」


 みっちゃんはこくりを部屋に案内すると、直ぐにそう告げて出て行った。

 因みに、今日のご馳走の話はお昼ご飯では無く夜ご飯の話なので、これは別件である。


狐栗こくりや、気付いたか?」


 不意にこくりの目の前に姿を現す白い毛並みのお狐さま。

 こくりのパパにして宙に浮かぶ稲荷神社の神様が、何やら深刻な顔してこくりを見つめた。


「気づきました」


「うむ。やはり儂の子じゃ。この家、何やらあやかしの気配が――――」


「ピザ初体験です」


「――っ。…………そ、それより狐栗よ――」


「楽しみです。丸いパンの上にチーズです。パパにお供えします」


「――っ! 流石儂の子じゃあ。なんて親孝行な子だ」


 大事な話をしていた筈が、親ばかなお狐さまは喜びの涙を流し、みっちゃんの部屋にあったベッドの上に勝手に座る。

 そして、人の家のベッドの上に座るその姿は、図々しく凛々しく神々しい。

 するとその時、みっちゃんがピザを持ってやって来た。


「お待たせこくりちゃ――――狐!? え? え? 何で!? わたしの部屋に狐がいる!」


「どうも初めまして。狐栗の父です」 


「喋ったああああああああああああ!?」

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