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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第8話 誕生日はケチャップ色
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エピローグ 蒼い炎と狐のワンダーガール

「変態は焼却です」


「ぎゃあああああああああああああ!」


「ひ、酷い」


「何を言う。人に化けて恐怖を与えたのだ。当然の報いであろう」


「……うん」


 ここは、妖女の初等部更衣室。

 みっちゃんの誕生日パーティーがあった次の日で、たった今ここ更衣室に戻って来たドッペルゲンガーを無事に焼却した所である。


 因みにみっちゃんが酷いと言ったのは、言う通りに戻って来たのに、来た早々に燃やされて退治されてしまったドッペルゲンガーを同情しての事だった。

 みっちゃんとしては、どうせ退治するなら戻ってくる必要は無かったんじゃって思わずにはいられない。


 と、言うわけで、今回の事件も無事に解決。

 こくりの燐火の炎が変態をはらい、これで怯える少女たちも普通の生活に戻れるだろう。


「でも、結局ドッペルゲンガーが最後の七不思議かどうか分からなかったね?」


「いや、そうでもない」


「え……?」


 お狐さまが答えると、その予想外な答えにみっちゃんは目を丸くして驚いた。


美都子みつこが驚くのも無理は無いであろうな。実はな、昨晩の内に実果が調べてくれたのだが、ここ妖女学園が開校された当初にあったらしいのだ」


「ええええ!? そんなに前の話なの!? だって、ここって百年以上も昔からあるんでしょ?」


「当時は七不思議もそこ等辺によくある噂程度ではあったが、それでも七つ全てが分かっていた様だ。そして、その中にあったのが“更衣室のドッペルゲンガー”だ」


「でも、それなら何で分からなくなっちゃったんだろう?」


「途中で“鏡の中のわたし”に変わったからです」


 みっちゃんの疑問に答えたのは、こくりだった。

 こくりは狐耳のカチューシャを揺らしてみっちゃんに近づいて、その相変わらずの眠気眼な無表情を向けて答えた。

 その顔を見て、みっちゃんは何となくでこくりの頭を撫でる。


「鏡の中のわたし?」


「はい。ドッペルゲンガーがいつも鏡を通して動くので、どこかで変わりました」


「うむ。狐栗こくりの言う通りだ。“鏡の中のわたし”ではちっとも怖くないからのう。次第に忘れ去られたと言うわけだ」


「あ~。確かに“鏡の中のわたし”だと、鏡に映った自分って感じだし、全然怖くないかも」


「そう言う事だ」


 お狐さまは頷き、燐火の炎で燃やされて消えたドッペルゲンガーが立っていた所に視線を向けた。


「なんにしても、学園の七不思議の最後の一つであったドッペルゲンガーは退治したのだ。これで狐栗も試験勉強に集中出来る」


「はい。来週には試験があるので頑張ります」


「わ! もうそんな季節なんだね。でも、そっかあ。飛び級試験に合格したら、こくりちゃんが先輩になるかもしれないんだねえ」


 こくりの頭を撫でていた手を止めてみっちゃんが話すと、こくりはみっちゃんの顔を見上げた。


「こくりはみっちゃんと同じ二年生になります」


「え!?」


 みっちゃんが驚くと、お狐さまがうんうんと頷いて優しく笑む。


「今の狐栗の学力であれば、実果には中等部への編入も可能だろうと言われたのだが、狐栗は美都子と一緒に学園生活を楽しみたいようでのう」


「え? こくりちゃん凄い。でも、初等部でいいの?」


「はい。みっちゃんと一緒に青春します」


「こくりちゃん!」


 みっちゃんが喜んで満面の笑みでハグをして、こくりもそれをハグでお返しする。

 仲良しの二人は暫らくハグハグすると体を離して、帰る為に手を繋いで歩き出した。


「そうと決まれば勉強を頑張ろう」


「はい。大学教授もびっくりの成績で初等部の二年生になります」


「あはは。理事長先生は中等部のって言ってたみたいだし、流石に大学は無理だけど、気持ちは大学合格なんだね」


「それがのう、美都子よ。実は成績は既に大学に行けるだけあるのだ」


「……え?」


「狐栗に足りないのは学力では無く内申だ。この子は内申だけは悪くてのう。それ故、内申がそこまで重視されない中等部までなのだ」


「えええええええええ!?」


「先生を手の平でコロコロする勉強を頑張ります」


「黒い!? こくりちゃんなんか黒いよ! 真っ黒だよ! コロコロしないで!?」


 みっちゃんのツッコミにこくりが首を傾げる。

 その瞳はいつも通りで、相変わらずの眠気眼で無表情。

 純粋無垢なその瞳は、黒さとは無関係な清らかなもの。

 そして、その背後には、うんうんと頷くお狐さま。


 みっちゃんはそれを見て理解する。

 間違いなくお狐さまの影響であると。

 つまりそれは、お狐さまは悪い妖だと言う事。


「こくりちゃん、大変だよ。お狐さまが変態になっちゃったよ」


「変態は焼却です」


「――!? ぬあああああ! 何をする! やめんかー!」


 みっちゃんにそそのかされて、こくりが燐火の炎をお狐さまに放ち、お狐さまが慌てて逃げ惑う。

 そして、燐火の炎は容赦なくお狐さまを襲い、お狐さまの頭がもじゃもじゃになって場が治まった。







 時が経ち、春が訪れて、少女たちが桜並木の間を歩いて行く。


 そこには初等部の制服に身を包んだ5歳児と7歳児の少女が二人。


 少女等は手を繋いで仲良く歩き、その背後にはふよふよと浮かぶ狐の姿。


 少女たちが通い向かうのは、妖女と呼ばれる名門女学園の初等部校舎。


 奇妙で不思議な妖が出ると噂の少し変わった学園だが、最近は一つ追加で噂が流れている。


“蒼い炎で身を包んだ狐の女の子”


 その女の子の姿は、実際に見たと言う目撃情報が多く、今では新しい七不思議の代表となっていた。


 そして、そんな噂があると知らない二人の少女は、周囲のお姉さまたちを微笑ましい気持ちにさせながら、今日も一緒に仲良く学園に通うのだ。



~あとがき~


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

今回で最終話になります。


今回で最後なので、この場を借りて少しお話させて頂きます。

最後の終わり方を見ると、見方によっては打ち切りエンドっぽく終わりましたが、一応予定通りです。

それに、実はこれでもお話が少し長くなってしまいました。

と言うのも、連載開始当時は10万文字いかない短い作品にするつもりでしたが、なんやかんやで10万文字いきました。

なので、筆者としては満足しています。

ただ、書いている内に、こくりが初等部に入ってからのお話も書きたいなと思い始めちゃったりもしてました。

ですが、正直ぶっちゃけてしまうと設定はあってもネタが無いので、これ以上は続けられませんでした。


最後に次回作についてもご報告します。

次回作は今のところ予定としてはあります。

ですが、いつ頃に開始かは決まっていません。

と言うのも、最近本当に忙しくて時間がなくて、開始の目途が立たないんです。

実際この作品もそれの影響で更新が遅くなってました。

出来れば連載開始して暫らくは毎日更新したいので、ストックがたくさん出来てからになると思います。


少し長くなってしまいましたが、これにて終了します。

全ての読者様に感謝を込めて、この作品とお付き合い頂きありがとうございました。


それではまたの機会があればお会いしましょう。

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