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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第7話 年越しノーズ
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5時間目 年末挑戦ガール(3)

「みっちゃん、起きるです」


「……んん…………あさぁ……?」


「朝じゃないです。まだ深夜の11時です」


「ええぇ……。それならもう少しぃ……え? 深夜の11時!? いつの間に寝ちゃってたの? 初詣に行く準備を――あれ?」


 ガバッと上体を起こして直ぐに、みっちゃんは驚いて周囲を見回す。

 何故なら、ここは神社では無く、初等部の旧校舎にある生物室だったからだ。


「うそ? なんで?」


 直ぐには信じられなくて確認するも、真っ暗でよく見えないけど、間違いなく初等部旧校舎の生物室だった。

 決してこくりのお家の神社では無い。


「わたし、こくりちゃんの神社にいたはずなのに……」


 みっちゃんはわけが分からず必死に思い出す。

 記憶では、31日に生物室で集合して、その後直ぐにこくりのお家である稲荷神社に向かった。

 そして、大掃除とお狐さまのブラッシングをして、味がぼやけたクッキーを食べていた。

 だけど、何故かその後の事を思いだせない。

 こくりに呼ばれた気がして、その後に目の前が真っ白になった気がしないでも無い。

 あれは夢だった? とも考えたけど、でも、どこからが夢だったのか分からない。


「ハナだらけの生物室です」


「……っあ!」


 その時、みっちゃんは思い出した。


 生物室で待ち合わせと聞いて、みっちゃんはワクワクで待ちきれず、今朝の早い時間に生物室までやって来た。

 こくりとお狐さまは生物室を調べると言っていたし、早めに来たら直ぐに会えると思ったからだ。

 だけど、生物室に来ても誰の姿も無くて、扉の鍵もかかったままだった。


 そこで暇つぶしをしようと考えて、校内をぶらりと歩き出した。

 すると、理事長の実果みかと偶然会い、こくりが旧校舎の生物室に向かったと聞く。


 みっちゃんは実果にお礼を言って、旧校舎の生物室に行ったが、すれ違いで会えなかった。

 そして、事件が起こった。


 また入れ違いになるのも嫌だと考えたみっちゃんは、約束の時間までまだ一時間以上も余裕があったので、その場にとどまった。

 しかし、それがいけなかった。

 突然バンッと大きな音を上げて扉が閉まり、みっちゃんは驚いて逃げようとしたけど、かぎがかかる。

 そして、生物室に閉じ込められたみっちゃんはとんでもないものを見てしまった。

 みっちゃんはそれを見て、その直後に気を失って、今に至ってこくりに起こされたのだった。


「思い出したか、美都子みつこよ。まさか、お主がここに来ておったとはなあ。しっかり確認するべきであった」


「お狐さま……?」


「みっちゃんごめんなさい」


「え? なんで謝るの?」


 こくりが相変わらずの眠気眼な無表情の眉根を、珍しく少し下げたのでみっちゃんは驚いて、お狐さまが申し訳なさそうに説明する。


「実果から美都子が生物室に先に来ておると聞いていたのだ。しかし、妖の調査を終えた後に行った時は、ここで美都子を見つけられなかった。だから、実果と一緒に既に神社に向かった後だと思ったのだ」


「えっと…………?」


 みっちゃんはお狐さまの説明では理解出来ず、首を傾げた。

 すると、お狐さまが「すまぬ」と謝ってから、更に詳しく説明する。


 それで分かったのは、みっちゃんは聞いていなかったが、理事長の実果も一緒に神社に行く予定だったと言う事。

 そして、こくりとお狐さまは待ち合わせ時間に遅れて、実果が「先に行きます」と書き置きを残していなくなっていた事。

 更には、実果はみっちゃんと会った後直ぐにこくりとお狐さまに会い、みっちゃんが生物室で待ってると伝えた事。


 そう言った偶然が重なって、こくりとお狐さまは勘違いして、みっちゃんと実果が一緒に神社に行ったと思ったのだ。

 そして、旧校舎を調べる事もせず、そのまま神社へと帰ってしまった。

 もちろん神社には実果しかいなかったので、こくりとお狐さまは急いで戻って来たわけである。


 それ等の説明を丁寧にお狐さまが教えると、みっちゃんはようやく理解して、ぶるりと体を震わせた。


「わたし、ハナだらけの生物室にかされてたの? なんか、すっごくリアルな夢だったよ?」


「恐らくそうだろうな。儂のお守りをバッグに入れたままだったろう?」


「え? あ! そうだったあ!」


 みっちゃんは更に思い出す。


 実は、お守りをバッグに入れて、そのバッグを初等部の生物室に置いて来てしまっていたのだ。

 しかも、性格的に端っこの目立たない所に置いてしまっていて、こくりもお狐さまも最初はそれに気がつかなかった。


 お守りをバッグに入れたのは、今朝持ち物をチェックしたのが原因だ。

 持って行くものを並べて確認したのだが、その時にお守りも律儀に並べたのだ。

 そして、そのまま無意識にバッグに入れて、そのままにしてしまった。


 つまり旧校舎に向かった時に、みっちゃんはお守り無しで行ってしまったのだ。


「どうぞ」


 こくりがみっちゃんのバッグを差し出し、みっちゃんはそれを受け取った。


「ありがとう」


「さて、狐栗こくり。こうして美都子は無事だったわけだが、このまま家に帰るか?」


「変態を焼却します」


 大切なお友達のみっちゃんが被害にあった事で、こくりの眠気眼で無表情な瞳はいつになくメラメラと燃えたぎっていて、眉根も少し上がっている。

 そして、っぺがフグのようにぷっくらしていた。


 こくり、珍しく激オコである。

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