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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第3話 真夏の全裸大事件
19/61

5時間目 深夜のドキドキ初体験(2)

 学園の七不思議の一つ“人体デッサンの少女”。

 旧校舎の美術室で深夜に現れると噂されている全裸の少女。

 その少女は自分をモデルにして絵を描く事を強要し、完成した絵が気に食わなければ襲ってくる。

 もちろんそれは完成しなかった場合も同じ。

 それ故に、脱がされてしまうと少女たちから恐れられている怪異である。




 夜も深まった24時。

 こくりとみっちゃんは手を繋いで旧校舎の廊下を歩いていた。

 もちろんこくりは既に臨戦態勢で、お尻から“燐火りんか”の尻尾を揺らめかせている。

 しかし、今回はいつもと違う服装……いや、服装と言うか肌着と下着のみだった。


 上はシャツで下はカボチャパンツ。

 そして、裸足。

 まるで家にいるようなラフすぎる格好。


 みっちゃんはと言うと、お泊りセットを親が届けてくれたので、その中にあったチェック柄のドッキングワンピースを着ていた。

 それに、ちゃんと学園指定のシューズもいている。

 何故ここまで差がついてしまったのか、それは誰にも知る事は出来ないが、これだけは言える。


 こくりは大真面目だ。


「こくりちゃん、やっぱりその格好で歩くのよくないよ。着替えて来ようよ」


「これはこくりの正装です。いつも野山をこの姿で駆け回っていました」


「え? 野山……?」


「でも、パパに見つかると怒られます」


「じゃあ着替えようよ!」


 流石はこくり。

 相変わらずの眠気眼な無表情の奥底に隠れたドヤ顔をして、みっちゃんが最早お馴染みになったツッコミを入れた。

 しかし、残念ながらタイムアウト。

 みっちゃんのツッコミが入った所で、旧校舎の美術室に辿り着いてしまう。


 お狐さまがいない今、こくりは野山を駆け回る日々に思いをせ、解放的な気分をぺたんこな胸に抱き扉を開いた。

 すると――


「誰もいないね」


「いないです」


 ――何か変わったものがあるわけでも無く、噂の“人体デッサンの少女”は見当たらなかった。

 それに、ここに来た事で、こくりはある事に気がついた。


「変態の気配がしないです」


 そう。

 変態……ではなく、変異体の気配が全くしなかったのだ。


 もし本当にここで怪奇現象が起きていれば、お狐さまと同じように、こくりもその気配を感じる事が出来る。

 しかし、ここにはそれを全く感じない。

 つまりこれは、所詮はただの噂話のデマだったと言う事。


「なんだ~。ちょっと怖かったんだけど、なんだか拍子抜けしちゃったね。じゃあ、こくりちゃんの部屋に戻って寝よう? 実はわたし今すっごく眠いんだよ~」


「……こくりはもう少し調べてから帰ります。みっちゃんは先に帰って下さい」


「え? 何か調べるなら、わたしも手伝うよ?」


「寝不足はお肌の大敵って山園やまぞの先生が宗内むねない先生とお話してました」


「え? 誰? 幼稚舎の先生?」


 実はみっちゃんは初等部からこの学園に通い始めたので、幼稚舎の先生を知らない。

 しかし、今はそんな事はどうでも良い事。

 みっちゃんは尋ねたものの、直ぐに「そうじゃなくて」と言葉を続ける。


「わたしがお泊りするって決めたのは、旧校舎にこくりちゃんを一人で行かせない為だもん。だからつきあうよ」


「わかりました。それなら、こくりはここに似た教室がないか探してきます」


「え?」


「みっちゃんは念の為にここに残っていて下さい。何かあったら、叫べば来ます」


「叫べば!? それ襲われるの前提だよね!?」


「いってきます」


「えええええ!? 別々になったら、わたしが来た意味が――――」


 悲しいかな。

 みっちゃんの魂の叫びはこくりには届かず、この場に一人取り残されてしまった。

 みっちゃんはしょんぼりと顔を悲しませ、そして、周囲を見回して顔を青ざめさせる。


「……やだ。一人だと雰囲気が凄く怖いよここ。こくりちゃん待ってよー!」


 旧校舎だけあって使い古された感じも極まり、雰囲気はとても不気味だった。

 だから、みっちゃんは飛び出すように美術室を出て、こくりの後を追いかけて行った。

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