6、心霊スポットへ行こう! その1
読んでくれている方、ありがとうございます。
話のテンポが遅くてすみません。ようやく、ここらへんから動きます。
もう少し先で魔法少女とかも出ます。
「そんで? そのバット君がどうしたって?」
蝉がうるさく鳴くので、声を張ってジョーに聞く。
「だから心霊スポットだって! ちょっとは人の話ちゃんと聞けよな」
ジョーが呆れた声で答える。
「でもよー、心霊スポットって、なあ? しかも情報源がバット君だべ?」
言いながらテツを見やる。するとテツも、
「ああ、正直興味ねーよ。それにさっきも言ったけど、知ってるべ? 俺バット君嫌いだったしなー」
テツの言葉に被せるようにジョーが、「この場合嫌いかどうかは関係ないだろ」と言うと、「うーん」とテツはしかめ面でうなった。
「あ、わかった。もしかしてテツ、ビビってる? おばけとか怖い系?」
ジョーが小馬鹿にしたような含み笑いを浮かべる。
「はあ!? ビビってねーだろ!」
テツが大声で否定する。
「じゃーいいじゃん、行こうよ」
とジョーが誘った。続けて、「明日休みだしさー」とジョー。
「もうそろ夏休みだしよー、夏休み入ってからでよくない?」とテツ。
「いや、今日じゃなきゃだめなんだって」とジョー。
「なにそれ? なにがあんの? バット君が言ってたの?」と俺。
その質問にジョーがこちらを振り向き、ニヤっと笑った。なんだよ一体、その顔、腹立つー。
「まあいいじゃん」と何かを含んだ言い方のあと、「だって暇じゃん?」
の一言で片が付いて、どうやら行く流れになった。
「お前も、いいよな?」
と俺に聞いてくるので、「ああ、別に、もうどっちでもいいよ」と根負けした。
テツはまだ、「うーん」とか、「でもなー」とかブツブツ言ってる。
虚勢と恐怖が漏れ出てしまっているテツの状態をジョーはニヤニヤと眺めている。
ジョーの狙いがなんとなくわかった俺は、ジョーに加勢してやることにした。
あまり煽ったりいじったりすると、テツが拗ねるのを知っていた俺達は、これ以上刺激しないように注意を払って、話を前へ進める。
「ところでジョー、どこなんだ?」
「え? あー心霊スポットね。化けトンだよ。ほら旧道沿いの脇道入ったとこに新しくラーメン屋出来たじゃん? そのラーメン屋抜けて更に奥に進むと山道になってんだけど、そこに今は使われていないトンネルがあるんだって」
「おいおい、心霊スポットはいいけど、山登りはめんどくせーぞ」
正直にそう答えると、テツがすかさず乗ってきた。
「山登りかー、山登りはなー俺もめんどくせーなー。心霊スポットは俺も別に行ってもいいんだけどよー、この暑い中、山登んのはなー。しかも山って蚊も出てダルくない? 俺昨日も寝る前に蚊に刺されて痒くて眠れなくて今日も寝不足なんだよ。だから、ふわぁ……あー欠伸出た。眠いってのもあるし、ぶっちゃけさー、わざわざ山登って、心霊スポット行って、え、なにすんの? って感じじゃない?」
と、よく喋る。
ジョーはテツの姿に今にも吹き出しそうになりながら、「登るって言っても十五分かそこらでトンネル見えてくるらしいよ。二人なら楽勝でしょ?」と言った。
俺も俺で、「まーそれくらいならいいか」と答えると、テツはとうとう俯いて黙ってしまった。
こちらも黙って俯いたテツを眺めて、敢えて沈黙の時間を作る。
テツは堪らずチラリと目線を上げ俺達の顔を確認すると、「だー! もう! わかったよ! 行くよ!」と観念した。
ジョーは嬉しそうに満面の笑みを浮かべて、「よし! んじゃー今夜な! どうする? 十時にココでいい?」と楽しそうだったのも束の間、テツが、
「でもお前、お前んち、大丈夫なの?」
と俺の顔を見た。
「あ、そっか」
とジョーからも笑顔が消えていた。
「ああ、大丈夫。でも十時じゃ家の奴らまだ起きてるだろうから、早くて十二時とかになるかも」
「そっか、おっけ」とジョー。
「俺は何時でもいいよ。なんならここでこのまま夜を待ってもいい」
テツはさっきまでとは別人のような口振りで言った。
「俺も、一回帰んなきゃまずい」
ジョーからは、さっきまでのふざけたニヤニヤ笑いは消えていた。
「うん、わかってる。俺も隙見て、出来るだけ早くくるよ」
俺がそう伝えると二人とも頷いた。
夕日が辺りを真っ赤に染めていた。